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建設業のM&Aとは?メリット・デメリットや注意点について紹介

このページのまとめ

  • 建設業M&Aは以前は活発でなかったが、現在は増加傾向にある
  • 建設業M&Aは、異業種からの新規参入が増えている
  • 建設業M&Aは、海外進出のためのクロスボーダーM&Aが増えている
  • 建設業M&Aは、建築業特有の会計基準が障壁となる場合がある
  • 建設業M&Aは、後継者問題の解決や従業員の雇用安定などに役立つ

建設業のM&Aの動向が気になっている方も多いのではないでしょうか?
建設業のM&Aではスケールメリットが得られにくいこと、公共工事の入札の参加機会が減ることなどから、これまでは活発に行われてきませんでした。しかし近年、建設業のM&Aは増加しています。

このコラムでは、建設業のM&Aの動向やメリット・デメリットなどを紹介。建設業M&Aの特徴を掴み、成功させるべく行動を起こしましょう。

建設業M&Aの状況

これまで、建設業のM&Aは積極的に実施されてきませんでした。
建設業M&Aがあまり行われてこなかった理由は、「規模を拡大してもコスト削減効果があまり見込めない」「入札機会が限定される」などです。

しかし現在では、建設業界でも盛んにM&Aが実施されています。
建設業界のM&Aには、以下のような動向があります。

異業種からのM&Aが増加

ハウスメーカーや不動産会社、家電メーカーなどの異業種から新規参入するためのM&Aが増えています。
これは、異業種から進出すると、自社事業の多角化や、技術やノウハウを生かしたシナジー効果が期待できるためです。
また、外注にかかるコストを削減することを目的にM&Aを実施する会社もあります。建設に関連する会社をM&Aによって譲り受ければ、全工程を自社内で完結させることが可能です。

後継者問題を解決するためのM&Aが増加

多くの中小企業が問題視している後継者問題は、建築業でも深刻化しており、人手不足による廃業の危険性が高まっています。さまざまなノウハウや経験を積んだ職人の高齢化が進み、定年退職になったり、経営悪化したりしています。高齢の職人が現場に出ることは事故の増加にもつながるため、後継者不足は早急に対応すべき問題です。

譲渡企業は後継者問題を解決するためにM&Aを利用するケースが増えています。

海外進出のためのM&Aが増加

建設業界の国内需要は、これから落ち込むと予想されています。
そのため、建築業界では海外に目を向けたクロスボーダーM&Aが増えています。
クロスボーダーM&Aとは、国際間での取引のことで、譲渡企業または譲受企業のいずれかが外国企業であるM&A取引のことです。

建設業の基礎知識

M&Aを利用して建築業への新規参入を検討するには、建設業を経営する上で必要な建設業の許可や、建築業を取り巻く問題などを知っておくことが望ましいでしょう。
ここからは、建築業について紹介します。

建設業の定義とは

国土交通省の「建設業許可の業種区分」によると、建設業界の業務は、住宅やビル、公共施設などの建物を建築する建築業と、インフラ工事や設備をする土木業に分かれています。
さらに29の業種に分類されており、業種は以下の通りです。

土木工事業
建築工事業
大工工事業
左官工事業
とび・土工工事業
石工事業
屋根工事業
電気工事業
管工事業
タイル・れんが・ブロツク工事業
鋼構造物工事業
鉄筋工事業
舗装工事業
しゅんせつ工事業
板金工事業
ガラス工事業
塗装工事業
防水工事業
内装仕上工事業
機械器具設置工事業
熱絶縁工事業
電気通信工事業
造園工事業
さく井工事業
建具工事業
水道施設工事業
消防施設工事業
清掃施設工事業
解体工事業

建設事業をする際には、基本的に国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要です。

参照元:
国土交通省の「建設業許可の業種区分

建設業許可が必要

建設工事をする際には、原則として建設業許可が必要です。建設業務には29種類があり、「土木一式工事業」と「建築一式工事業」の一式工事と27種類の専門工事があります。

一式工事とは、受注から完成まで一貫して1つの会社が手掛ける工事のことです。自社で一貫して建設したい場合は一式工事の資格、各工程の専門的な工事をする際には、工事内容に応じた資格が必要です。

ただし、工事の費用が500万円に満たなければ、建築業の許可がなくても工事ができます。また、建設業許可には2種類あります。

一般建設業許可

一般建設業許可は1件の請負工事が500万円、一式工事は1500万円以上のときに必要となる許可です。

一般建設業許可を取得する際には、経営業務管理責任者や専任技術者がいることや、誠実性と財産的基盤(金銭的信用)があること、欠格要件に該当しないことが求められます。
経営業務管理責任者とは、営業の取引において責任を持つ地位にある人で、建設業の業務を総合的に管理した経験を持つ人を指します。

特定建設業許可

特定建設業許可は、1件の工事(元請工事)の合計額が4,000万円。建築工事業で6,000万円以上のとき、下請に出す場合に必要となる許可です。建設工事の額には、材料の費用は含まれません。

特定建設業許可を取得する際には、経営業務管理責任者や営業所ごとに1級の国家資格を持つ専任技術者がいることが求められます。また、誠実性と財産的基盤(金銭的信用)があること、欠格要件に該当しないことが求められます。

人材が不足している

建設業界に限らず、多くの中小企業が抱えている問題に、人材不足や後継者の不在があります。経営者が高齢になり引退を考えていても、後継者がいなければ事業承継をできないため、廃業の危機に瀕している企業も多くあります。

元請けと下請けから成り立つ

建設業は、発注者から工事全般の進行管理を請け負う「元請け」と、専門的な仕事を元請けから請け負う「下請け」の2つに分けられる受注産業です。発注者から一式工事の資格を持つ元請けへ、元請けから専門的な27種の工事の許可を持つ下請けへと業務を請け負ってもらう構造が一般的です。

M&Aとは

M&Aとは、エムアンドエーと読み、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略語で、企業の合併と買収と訳されます。M&Aの代表的な手法には、複数の企業がひとつになる「合併」や、譲受企業が譲渡企業の事業や株を買う「事業譲渡」や「株式譲渡」などがあります。

M&Aは、企業や事業の移転を伴う取引において、企業の成長戦略や経営戦略の手段です。また、合併や買収だけではなく、経営的な協力関係をM&Aとする「業務提携」や、「資本提携」を含むことがあります。

M&Aの代表的な方法

M&Aの譲渡方法にはいくつかの種類があり、会社や事業、株式など、譲受するものや規模も異なります。
ここからは、M&Aの代表的な譲渡方法を6つ紹介します。

事業を第三者へ切り出す:会社分割

会社分割とは、会社の事業を全て、または一部を譲受企業に譲渡するM&Aの方法です。
会社分割には大きく、譲受企業で新設した会社に事業を引き継ぐ「新設分割」と、既にある会社に事業を引き継ぐ「吸収分割」の2種類にわけられ、株式によって4つのパターンがあります。

新設分割は、事業部門を分割して独立させ、経営の効率化を図る際に利用される方法です。株式を割り当てる対象次第でさらに「分社型新設分割」と「分割型新設分割」にわけられます。

吸収分割は、承継する対価に株式を選択すると、資金がなくても大企業とのM&Aが可能です。株式を割り当てる対象次第でさらに「分割型吸収分割」と「分社型吸収分割」にわけられます。

事業を第三者へ譲渡する:事業譲渡

事業譲渡とは、企業全体ではなく事業の全て、または一部を譲受する方法です。事業譲渡では、有形無形を問わず指定範囲の全てが取引対象になり、譲受企業は譲渡企業から譲り受けた事業を運営します。

譲渡企業は収益が見込める事業を残し、見込めない事業だけを選んで売却可能です。ただし、譲受企業は譲受したい事業の範囲が指定できるため、負債や債務までを引き継ぐ必要はありません。事業譲渡は、事業の全てを譲渡する「全部譲渡」と、一部門単位で譲渡する「一部譲渡」に分けられます。

株式を第三者へ譲渡する:株式譲渡

株式譲渡とは、譲渡企業の株主が保有する対象企業の株式の全て、または一部を譲受企業に売却する方法です。経営権を移転して譲渡するため、株式譲渡でのM&Aは、手続きが簡単であることや、取引上の契約を引き継げるなどの特徴があります。

譲渡企業の株主が保有している株式の割合が過半数を超えている際の譲渡では経営権を掌握でき、全て取得すれば完全子会社化できるため、「会社譲渡」と呼ばれます。
ただし、譲渡企業の債権や債務に関しても、譲受企業に引き継がれるため、譲受企業側は本当に利益を出せるのかを慎重に検討する必要があります。

対象会社株式を全て買い取る:株式交換

株式交換とは、完全子会社になる会社の発行済株式を全て完全親会社となる会社に取得させるM&Aの方法です。発行した株式の全てを取得された会社のことを「完全子会社」、発行した株式の全てを取得した会社のことを「完全親会社」と呼びます。

株式交換の対価が「完全親会社の株式」であるとき、「完全子会社」の株主は、M&A後は完全親会社の株主になります。対価が株式であるため、現金がなくてもM&Aは可能ですが、譲受企業が上場会社ではない場合にはあまり利用されません。株式交換の対価が現金であるとき、「完全子会社」の株主は、「完全親会社」に株式譲渡をしたことになります。

株式の全てを新設会社へ取得させる:株式移転

株式移転とは、会社が発行した発行済株式の全てを、新設会社へ取得させるM&Aの方法です。株式移転をすることで、株式を発行した会社は「完全子会社」になり、新設された会社が全ての株式を保有することになるため、完全親会社になります。

株式交換との違いは、完全親会社になる会社が既存の会社である場合には「株式交換」、新設会社である場合は「株式移転」です。

複数の法人をひとつに統合する:合併

合併とは、複数の法人をひとつに統合するM&Aの方法です。合併には、「新設合併」と「吸収合併」の2つに分かれています。

新設合併は、新しく会社を設立し、統合する対象会社全て(消滅する全ての会社)の資産や負債などを移す方法です。

吸収合併は、消滅する会社が廃業の手続きを行い、存続会社が消滅する会社の資産や負債など全てを取り込む方法です。

建設業M&A譲渡企業の3つのメリット

M&Aを利用する企業が増えている建設業の、譲渡企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、建設業M&Aの譲渡企業のメリットを3つ紹介します。

1.後継者・廃業問題の回避

建築業でのM&Aで最も大きなメリットは、後継者問題の解決や廃業問題の回避ができることです。
経営が順調であったとしても、後継者が不在であるため事業の継続が難しい建築会社が増えています。
M&Aをすることで事業を引き継いでくれる企業が見つかれば、後継者がいないという問題が解決できます。

2.従業員の雇用安定

企業は廃業になってしまうと従業員の雇用が失われてしまうため、廃業せずにM&Aで会社や事業を売却することで従業員の雇用が守られることにもつながります。
事業を譲受する企業は、従業員を含めて譲り受けるかを検討するためです。
建築業界では後継者だけではなく人材不足も深刻化しているため、従業員を含めた譲受を受けてくれる可能性が高く、大企業とM&Aすれば、従業員は安定した環境で働くことが可能です。

3.売却利益・創業者利益の獲得

M&Aによって会社や事業を売却すると、売却利益が得られます。
まとまった現金が手に入るため、老後の生活資金にすることもでき、新事業を立ち上げることも可能です。
株式譲渡では、経営者個人に売却対価が支払われます。
また、創業者利益の獲得ができます。
創業者利益とは、譲渡企業の創業者が、自社の株式を譲受企業に売却して得る譲渡益のことです。

建設業M&A譲受企業の4つのメリット

建設業をM&Aで譲受すると、事業の拡大や相乗効果、新規事業への参入がしやすくなるなどのメリットがあります。
ここからは、譲受企業のメリットについて4つ紹介します。

1.異業種への新規参入

建設業の特徴のひとつとして、高い地域性があります。建設業に新規参入して新しい地域に進出しても、成功するのは難しいとされてきました。

しかしM&Aを利用し、地域性の高い建設業の会社や事業を譲受すれば、高いブランド力や取引先などを譲受した状態で周辺領域や新規エリアに進出できます。
また、建設業には29もの業種があるため、同じ建設企業同士のM&Aであっても、事業の拡大が見込めます。

2.人材不足の解消

建設業では、建設業許可が必要になるため、営業をするためには技術を持った人材や一級建築施工管理技士の免許を持った人材などの確保が重要になります。
M&Aを利用すれば、人材を育てなくても技術や資格を持った優秀な人材をまとめて確保できます。

3.スケールメリットが期待できる

建設業M&Aを利用すれば、譲渡企業の持っている技術やサービス、ブランド力などを取り込めます。そのため、譲渡した企業の技術やブランド力が高い場合には、譲受企業はブランド力を得られるため、スケールメリットが期待できます。
譲受企業が持っていない技術や、自社とは異なったサービスを譲渡企業が持っていれば、シナジー効果も期待できることも、大きなメリットです。
また、小規模な建設会社では資材を少量ずつしか購入できません。
購入する度に送料がかかるため、ひとつの材料にかかる単価が高くなり、購入費が高額になる傾向があります。
M&Aを利用し、会社の規模を拡大すると、大量の資材を購入しやすくなります。

4.事業成長にかかる時間の短縮

建設業M&Aでは、譲渡企業から技術を持った従業員・ノウハウ・取引相手・顧客などが譲受でき、すでに育っている事業を譲受できます。
技術やノウハウ、サービスなどをゼロから成長させるためには、時間や費用がかかります。
同じ業種の事業を拡大する場合でも、従業員の確保や建設業許可の取得、機器の購入などの時間や費用が必要です。
一方、M&Aを利用して事業を拡大する際には、従業員や設備の機器が揃っているため、事業拡大にかかる時間や費用を最小限に抑えられます。

建設業M&Aにおける注意点

建設業M&Aを検討するとき、粉飾決算が壁になることがあります。
粉飾決算とは、会社の利益が赤字であるにもかかわらず、黒字決算であるようにみせることをいいます。赤字決算では納めなくてもよい税金を、粉飾して黒字決算にしてまで税金を払う理由は、株主や取引先、金融機関などに信用されたいからです。黒字決算だと偽り、信用をだまし取ります。
建設業界では、年度や会計期を跨ぐ工事もあるため、特殊な会計基準が設けられています。特殊な会計基準により、売上や利益の前倒しや後ろ倒しをして粉飾決算が発生しやすくなっているのです。

粉飾決算が行われていることを知らないまま、建設業の会社を買収するのは危険です。後に発覚した場合、民事責任に問われたり、懲役や罰金が科せられたりする恐れもあります。
リスクを避けるために、買収先の建設業会社について調査する「デューデリジェンス」を徹底することがおすすめです。

譲渡側の建設会社は、粉飾決算が発覚してM&Aが破談になってしまわないように、財務面をクリアな状態にしておきましょう。

まとめ

近年、建設業でのM&Aは活発化しています。建設業M&Aが増加している理由は、後継者問題の解決や海外進出、コスト削減などさまざまです。
建設業M&Aを実施すれば、譲渡側は廃業を免れたり、従業員の雇用を守れたり、売却利益を得られたりします。譲受側のメリットは、優秀な人材を確保できる・新規参入できる・スケールメリットを獲得できることなどです。双方にたくさんの利点があります。
一方で、建設業界では粉飾決算が横行しており、M&Aを行うときは念入りな調査が必要です。後々トラブルにならないよう、専門家のサポートを得ながら建設業M&Aを進行させましょう。

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