工場を高く売却する方法を紹介!かかる費用・税金や必要な書類も解説します
このページのまとめ
- 放置すると価値が下がっていくため、不要な工場は早めに売却しよう
- 工場を売却するときは、自分で相場を調べることと査定を複数社に依頼することが大切
- 工場を不動産として売却する際は、不動産会社と媒介契約を結ぶことが一般的
- 工場を売却するときにかかる税金には、「法人税」「地方法人税」「消費税」などがある
- 工場売却の方法には「不動産M&A」もあり、節税効果が期待できる
「工場を高く売却するにはどうしたらよい?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?工場を閉鎖するときには廃業費用がかかるため、できるかぎり高価格で売りたいものです。
本コラムでは、工場を売却する方法や手続きの流れを紹介。また、工場売却に必要な書類や、かかる費用・税金の種類なども解説します。そのほか、媒介契約や不動産M&Aについても詳しく紹介しています。自社工場を売るための最善の方法を知り、売却を成功に導きましょう。
不要な工場は早めに売却しよう
稼働率が悪かったり、使わなくなったりした不要な工場は、早めに売却をすることがおすすめです。
放っておくと工場の老朽化が進み、価値が下がっていってしまいます。また、工場を活用していなくても、固定資産税などのコストはかかり続けます。工場を売却するかどうか、迅速に判断しましょう。
工場を売却する前に確認すべき2つのこと
不要な工場は早く売却したほうがよいですが、何も考えずに売りに出してしまうことは危険です。
工場を売却する前に、以下の2点について確認してください。
1.ほかの事業への悪影響はないか
当該工場を売却することによって、ほかの事業に悪影響がないかどうかを確認しましょう。
たとえば、その工場が作る製品が、ほかのメイン事業の製品を作るための重要な部品だった場合、工場を売却してしまうと生産に支障をきたしてしまいます。工場を売却する前に、その工場がどのような役割を果たしているかをチェックしてください。
2.一時的な赤字ではないか
工場の売り上げが落ち込むと焦って売却を考えるかもしれませんが、売り上げの下落が一時的なものではないか、一度考えてみましょう。
まず、工場の売り上げが落ちている原因を追究してください。そして、その原因が一時的なものなのか、それとも今後回復しうるものなのかを確認します。もし今後売り上げの向上が見込まれるのであれば、売却してしまうのはもったいないことです。工場の稼働について、長期的なスパンで考えましょう。
売却相手が見つかりやすい工場の3つの特徴
ここでは、売却先が見つかりやすい工場の特徴を3つ紹介します。
- 工場の構造が単純である
- 建築確認済証と検査済証が交付されている
- 現行の建築基準法に沿っている
それぞれ理由とともに紹介するので、工場売却の際の参考にしてください。
1.工場の構造が単純である
工場の構造が単純なものだと、同業の売却相手が見つかりやすくなります。
工場の構造が複雑でなければ改築もしやすいので、同業の買い手に好評を得られます。仕切りがあまり多くなければ、スペースも有効活用しやすいでしょう。
2.建築確認済証と検査済証が交付されている
「建築確認済証」と「検査済証」が交付されている工場であれば、滞りなく売却に進むことができます。
建築確認済証とは、建築基準法や自治体の条例を守っている計画であることを証明する書類です。建築確認を終え、建築確認済証が交付されることによって、工事への着工が可能になります。
検査済証とは、建物の建築にあたって建築基準法を遵守していることを証明する書類です。検査済証は工事完了後の検査をクリアしたときに交付されます。
建築確認済証と検査済証がそろっていれば、工場が違法建築ではないことが証明できます。工場に対する信頼性が高まり、売却相手が見つかりやすくなるでしょう。
3.現行の建築基準法に沿っている
現行の建築基準法に沿っている工場は、売却先が見つかりやすい傾向にあります。
建築確認済証と検査済証により工場が違法建築ではない証明になると先述しましたが、時が経つにつれ、建築基準法自体が改正される可能性があります。現行の建築基準法に合っていない工場である場合、売却に不利にはたらくことがあるかもしれません。建築から時間が経っている古い工場を売却する際は注意しましょう。
売却相手が見つかりやすい工場敷地の3つの特徴
次に、敷地の特徴にフォーカスして紹介します。売却相手が見つかりやすい工場敷地の特徴は、主に以下の3つです。
- アクセスが良好である
- 車両が利用しやすい環境である
- 土壌が汚染されていない
以下で詳しく解説します。
1.アクセスが良好である
住居用ではなく工場であっても、アクセスが良好であることは買い手に評価されるポイントです。
工場がアクセスしやすい場所にあれば、製品を運びやすくなります。また、工場での雇用を希望する人も集めやすくなるでしょう。
2.車両が利用しやすい環境である
工場を稼働する場合、車両を利用することがほとんどです。敷地の周りの道路の幅が十分に広かったり駐車スペースが広かったりと、車両が利用しやすい環境だと、売却相手が見つかりやすくなります。
3.土壌が汚染されていない
土壌が汚染されていないことが証明できれば、売却先が見つかりやすくなるでしょう。
自社工場が汚染物質を利用していないかを確認してください。少しでも土壌汚染の可能性があるのなら、土壌の調査をすることがおすすめです。万が一あとから土壌汚染が発覚した場合、売買契約が無効になったり、訴訟に至ったりする恐れがあります。
もし土壌汚染があった場合は、専門業者に依頼して土壌浄化をしましょう。
工場売却の流れ
ここでは、工場売却の一般的な流れを紹介します。
- 工場売却の価格相場を調べる
- 査定を依頼する
- 媒介契約を締結する
工場を事業用資産として売却する予定の方は参考にしてください。
1.工場売却の価格相場を調べる
まずは、工場を売却したときの価格相場を調べてみましょう。相場を知らないまま業者に売却を任せると、相場よりも安く見積もりを出されても気づけません。不当な価格で購入されることを防ぐためにも、最初は自分で調べることが大切です。
工場売却の価格相場は、チラシやインターネット上に掲載されている売り出し中の物件情報を参考にします。また、国土交通省が運営しているサイト「土地総合情報システム」の情報も参考にしてください。
2.査定を依頼する
工場のおおよその相場価格を把握したら、不動産会社に査定を依頼します。査定金額は業者によって異なるため、複数の不動産会社に依頼することがおすすめです。
また、査定の際、提供しているサービス内容や価格、担当者の誠実さなどをチェックしておきましょう。
3.媒介契約を締結する
査定を依頼した不動産会社の中から、最も良いと思った業者と媒介契約を交わします。
媒介契約とは、工場をはじめとする不動産の売買の契約成立を不動産会社に依頼する際に結ぶ、仲介契約です。工場の売買の契約が成立した場合、業者には仲介手数料を支払います。
不動産会社の媒介契約の3つの種類
不動産会社と結ぶ媒介契約には、3つの種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
媒介契約の違いは、主に「自己発見取引の可否」「複数業者への依頼の可否」「経過報告の有無」「流通システムへの登録義務の有無」の4つの観点で分けられます。
下記の表は、違いを一覧でまとめたものです。
(契約名) | 自己発見取引 | 複数業者への依頼 | 経過報告の義務 | 流通システムへの登録義務 |
一般媒介契約 | 可能 | 可能 | なし | なし |
専任媒介契約 | 可能 | 不可 | あり(2週間に1回以上) | あり(7日以内) |
専属専任媒介契約 | 不可 | 不可 | あり(1週間に1回以上) | あり(5日以内) |
特徴を押さえ、自社工場の売却に合った契約方法を選びましょう。
以下で各契約形態の特徴を詳しく解説します。
1.一般媒介契約
一般媒介契約は、3つの中で最も自由度が高い契約方法です。同時に複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができます。
また、自己発見取引も制限されていないので、自分で購入希望者を探して直接売買をしても構いません。
一般媒介契約は、依頼中のほかの不動産会社を知らせるか否かで2種類に分けられます。ほかに依頼している不動産会社を知らせるのが「明示型」で、知らせないのが「非明示型」です。明示型の契約を選んだ場合、ライバル会社を意識し、積極的に販売活動をしてくれる可能性が高まります。
一般媒介契約のメリット
制限が少ないので、より良い条件で買ってくれる相手を自ら選ぶことが可能です。売却したい工場が魅力的であれば、満足のいく金額での売却が叶います。
また、売却予定の工場が売れやすい物件であれば、依頼先の不動産会社が「我こそは」と販売活動に注力してくれます。不動産会社がより好条件で購入してくれる相手を見つけてきてくれるでしょう。
一般媒介契約のデメリット
一般媒介契約のデメリットは、不動産会社が販売活動をないがしろにする可能性があることです。不動産会社が報酬を得られるのは売買成約時であるため、他社に先を越されてしまうと売却先を探すために費やした労力がすべて無駄になります。一般媒介契約では複数の不動産会社に依頼するため、売れる見込みが薄い工場に関しては販売活動に力を入れない不動産会社も存在するでしょう。
また、一般媒介契約の場合、流通システムへの登録義務はありません。そのため、自社工場の情報を日本全国に広めることは難しくなります。
そのほか、販売活動状況の報告が義務付けられていないこともデメリットの1つです。不動産会社から販売活動の状況報告をすることは基本的にないので、もし現在の進捗を知りたい場合は自分から連絡して確認する必要があります。
2.専任媒介契約
専任媒介契約においては、選び抜いた1社のみと仲介契約を結びます。複数の不動産会社と契約を結ぶことはできません。
ただし、自己発見取引は禁止されていないため、自分で工場の売却先を探すことも可能です。
専任媒介契約のメリット
1社のみと契約する専任媒介契約の場合、他社に成約の機会を奪われることがないので、依頼した不動産会社が販売活動に精力的に取り組んでくれます。工場の売却先を見つけるために奮闘してくれるでしょう。
また、専任媒介契約では、媒介契約の締結から7日以内に不動産を全国に広める流通システムに登録することが義務付けられています。売却したい工場の情報が全国各地の不動産会社の目に触れるようになるので、売却先が見つかる可能性が高まります。
さらに、2週間に1回の現状報告をしてくれることも、専任媒介契約のメリットの1つです。やりとりをする不動産会社も1社のみなので、最低限の手間で済みます。
専任媒介契約のデメリット
専任媒介契約のデメリットは、悪質な不動産会社にあたってしまったときに生じます。
不動産会社の中には、売買を成立させるために嘘の情報を伝えたり、あえて情報を隠したりする悪徳業者もいます。いわゆる「囲い込み」という違法行為です。契約する不動産会社が1つだけだからといって、違法行為を行う業者もいる可能性があるので注意しましょう。最初の業者選びが非常に大切です。
3.専属専任媒介契約
専属専任媒介契約では、1つの不動産会社としか契約を交わせないうえ、自己発見取引も禁止されています。専属専任媒介契約は、3つのタイプの中で最も制約が多い媒介契約です。制約が厳しい代わりに、手厚いサポートを受けることができます。
専属専任媒介契約のメリット
専属専任媒介契約の場合、工場が売却できるかどうかは不動産会社の力量にかかっています。責任を一身に負う分、力を入れて販売活動に従事してくれるでしょう。
また、不動産の流通システムへの登録期間は、5日以内と定められています。工場の物件情報を、日本全国の不動産会社にすぐに知らせることが可能です。
販売活動の進捗報告についても、専属専任媒介契約は専任媒介契約より多い頻度で行っています。専属専任媒介契約では報告を1週間に1回の頻度でしてくれるので、現状に合わせた売買戦略の変更をスピーディに行うことができるでしょう。
専属専任媒介契約のデメリット
専属専任媒介契約のデメリットは、専任媒介契約と同様、囲い込みをする業者に気を付けなければならない点です。専属専任媒介契約を結ぶときは、複数の不動産会社にコンタクトをとり、しっかり比較してください。工場売却の成功を左右する選択になるので、熟考したうえで最も信用できる不動産会社に依頼しましょう。
工場を売却する4つの方法
工場を売却する方法は、主に下記の4つです。
- 不動産会社の仲介で買い手を探して売却する
- 業者に直接売却する
- 買い取り保証付きで売却に出す
- 不動産M&Aをして売却する
ここまでで紹介した、不動産会社を仲介する方法のほかにも、工場を売却する方法はあります。
以下で詳しく説明するので、参考にして適した方法を選択してください。
1.不動産会社の仲介で買い手を探して売却する
不動産会社に仲介してもらって工場を売却する方法です。
不動産会社に依頼すると仲介手数料がかかりますが、自分で売却先を探したり価格交渉をしたりする手間が省けます。
2.業者に直接売却する
業者に直接工場を売却する方法です。工場の買い取りを受け付けている業者を探して、買い取りを依頼しましょう。
3.買い取り保証付きで売却に出す
不動産会社に仲介を依頼することに加え、買い取り保証をつけて売却する方法です。購入希望者が見つけられなかった場合は、契約時に決めた価格で業者が買い取ってくれます。
4.不動産M&Aをして売却する
工場を不動産M&Aによって売却する方法です。不動産M&Aにおいては「株式譲渡」か「会社分割 + 株式譲渡」の手法をとることが多いです。
不動産M&Aを行うと高い節税効果が期待できます。
工場を売却するときに必要な7つの書類
ここでは、工場を売却するときに必要な書類を紹介します。
必要となる書類は、主に以下の8つです。
- 登記識別情報通知書(登記済権利証)
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税の納税通知書
- 工場(指定作業場)廃止届出書の控え
- 建築確認済証
- 検査済証
- 公図
- 工場の図面
工場売却の方法や工場の状況によってはほかの書類が求められる可能性もあるので、都度対応しましょう。
1.登記識別情報通知書(登記済権利証)
「登記識別情報通知書」とは、不動産の所有権取得の登記が完了したときに発行される情報の通知書です。2006年以前は、同じ役割を果たす書類として「登記済権利証」が発行されていました。
登記識別情報通知書(登記済権利証)は、不動産の所有権移転登記の申請を行う際に使用します。
2.登記事項証明書(登記簿謄本)
「登記事項証明書」とは、不動産の所有者や不動産自体の詳細情報が記録されている書類です。「登記簿謄本」は以前書面で発行されていたときの名称ですが、「登記事項証明書」を指して使用されることもあります。
工場売却の際、登記事項証明書(登記簿謄本)は、自分が工場の所有者であることを証明してくれます。
3.固定資産税の納税通知書
「固定資産税の納税通知書」は、所有者の納付状況を確認するために必要な書類です。移転登記での登録免許税を算出するときにも必要になります。
通知書は基本的に再発行されないので、自宅に届いたら大切に保管しておきましょう。
4.工場(指定作業場)廃止届出書の控え
「工場(指定作業場)廃止届出書」は、工場や指定作業場の事業を廃止した際に提出する書類です。
工場・指定作業場を廃止したことを証明するために、控えをとっておいてください。
5.建築確認済証
「建築確認済証」とは、工場の建築の計画が建築基準法などを遵守している適切なものだったことを証明する書類です。買い手が工場の安全性を確かめる安心材料になります。
6.検査済証
「検査済証」とは、工事が完了したあとの検査に合格したときに発行される書類です。
検査済証は、工場が建築基準法に則って建築されたことを証明します。
違法建築ではないことが分かるので、売却先探しにプラスにはたらきます。
7.公図
「公図」とは、法務局が管理している法的な図面です。
公図には土地の形状や地番、道路、水路などが示されています。
公図を確認し、自分が所有している土地の範囲を確認しましょう。
もし認識していた所有権の範囲と公図の内容にズレがあった場合は、工場売却の前にズレを修正する必要があります。
法務局に相談して、実測図を作成してください。
8.工場の図面
「工場の図面」は、工場の物件情報を作成するために必要です。
工場の設計が分かる設計図やリフォーム図などを用意しましょう。
工場売却にかかる3つの費用
ここでは、工場売却をする際にかかる費用を3つ紹介します。
- 工場の解体費用
- 土壌汚染の調査費用
- 土壌の浄化費用
上記3つの費用は必ずしもかかるわけではありません。稼働していた工場の内容によるので、必要かどうか確認してください。
1.工場の解体費用
工場をそのまま売却せず土地として売却する場合は、工場の解体費用が必要です。工場を解体し、更地にしてから売却します。
更地にすれば土地活用の自由度が上がるため、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
2.土壌汚染の調査費用
工場が建っている土壌が汚染されていないかどうかを確認する調査にかかる費用です。有害物質を扱っていた工場を閉鎖するケースなど、土壌汚染調査が法律で義務付けられている場合は、必ず土壌汚染調査を実施してください。
義務付けられていない場合も、土壌汚染の可能性が少しでもあれば調査しておくことがおすすめです。
土壌汚染調査を実施して安全だということが証明できた状態で売却に出すと、買い手が見つかりやすくなります。
3.土壌の浄化費用
土壌汚染調査の結果、汚染されていることが判明したら、土壌の浄化費用がかかります。業者に依頼して土壌の浄化を行いましょう。
もし土壌汚染を隠蔽して工場を売却した場合、罰則を科されたり訴訟問題に発展したりする危険性があります。
工場売却にかかる5つの税金
法人が工場を売却した場合、売却益に対してかかる税金は、主に以下の6つです。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 地方法人税
- 消費税
かかる税金を知らずに工場売却すると、あとから想定外の納税額に頭を悩ませることになります。
納めるべき税金について、あらかじめ把握しておきましょう。
1.法人税
「法人税」とは、法人の事業活動によって得た所得に対して課せられる国税です。
法人税は、課税所得に規定の税率をかけて算出します。なお、税率は法人の種類や資本金などによって変動します。
2.法人住民税
「法人住民税」とは、事業所が所在する地方自治体に対して法人が納める地方税です。
法人住民税は、法人税割に均等割を足して算出します。法人税割は法人税の金額をもとに計算されます。均等割は法人の規模に応じて課税される仕組みです。
3.法人事業税
「法人事業税」とは、法人の事業活動に対して、法人が所在する都道府県から科される地方税です。
法人事業税は、課税所得に法人事業税率をかけて算出されます。法人事業税率は資本金額や出資金額によって変動します。
4.地方法人税
「地方法人税」とは、法人の事業活動で得た所得に対して課されます。地方法人税は、地域間の格差を縮小することを目的とする国税です。
地方法人税の税率は、2019年10月1日以後に開始する課税事業年度からは10.3%の一律です。
5.消費税
「消費税」は、土地のみの売却であればかかりませんが、工場を売却する場合は課税されます。
ただし、2期前の課税売上が1,000万円に満たない場合は免除対象です。
不動産M&Aとは
不動産M&Aとは、不動産取引を目的のメインとするM&Aのことです。
工場売却の手段として不動産M&Aを選んだ場合、解体費用がかからなかったり、節税ができたりするなどのメリットが見込めます。
不動産M&Aは、不動産会社の仲介や買い取り業者を利用して工場のみを売却する一般的な方法とは大きく異なります。不動産M&Aでとられる方法は、主に「株式譲渡」か「会社分割」のどちらかです。
株式譲渡と会社分割については、次で詳しく解説します。
不動産M&Aの2つの方法
不動産M&Aの主な手法は、「株式譲渡」と「会社分割 + 株式譲渡」です。自社の経営戦略に合わせて、2つのうちのどちらかを実行します。
それぞれの概要は以下のとおりです。
株式譲渡
「株式譲渡」とは、株式を第三者に売却するM&Aの手法です。売却する株式が過半数以上になると、経営権が移転します。
工場を所有している会社の株式を買い手に譲渡することによって、工場の所有権も移ります。
会社の経営権ごと工場を譲渡する方法です。
会社分割 + 株式譲渡
会社分割を実施したうえで、株式譲渡を行う手法です。
「会社分割」とは、会社が行っている事業の一部あるいはすべてをほかの会社に移転するM&Aの手法です。会社分割には、既存の会社に事業の権利を移す「吸収分割」と、新設の会社に移す「新設分割」の2種類があります。不動産M&Aにおいてよく利用される手法は、新設する会社に事業を移転させる「新設分割」です。
子会社を新設して工場を所有する事業を移転させて、その子会社の経営権を株式譲渡によって買い手へ移します。
不動産M&Aでの売却にかかる税金
不動産M&Aをした際、売却益に対してかかる税金は以下のとおりです。
法人の場合は「法人税」
株主が法人の場合は、「法人税」がかかります。
法人税は、譲渡益に法人税率をかけて算出します。法人税率は29〜42%ほどです。
個人の場合は「所得税」と「住民税」
株主が個人の場合、納める税金は「所得税」と「住民税」です。
所得税と住民税の計算には、譲渡益の金額を使用します。譲渡益は、譲渡額から取得額とかかった経費を引いて算出します。
所得税の計算式は、「譲渡益×15%」です。
住民税の計算式は、「譲渡益×5%」です。
【売却側】不動産M&Aのメリット・デメリット
ここでは、売却側の不動産M&Aを行うメリットとデメリットを紹介します。
メリット
不動産M&Aによって工場を売却するときのメリットは、主に以下の4つです。
- 節税効果が見込める
- 解体費用がかからない
- 後継者問題が解決できる
- 従業員の雇用を継続させられる
順に解説します。
1.節税効果が見込める
不動産M&Aを行う大きなメリットは、節税効果が得られることです。
不動産M&Aではなく一般的な方法で工場売却をした場合、法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人税・消費税を納める必要があります。
一方、株主が法人の不動産M&Aでは、法人税のみです。株主が個人の場合でも所得税と住民税です。不動産M&Aであれば納税の負担が軽減されるので、手元に残る利益が多くなります。
2.解体費用がかからない
不動産M&Aを行うメリットは、工場の解体費用がかからないことです。
工場を売却する場合、閉鎖にともなって解体が必要になることがあります。しかし不動産M&Aでは会社や事業の権利とともに不動産である工場も移行されるため、解体費用はかかりません。
3.後継者問題が解決できる
不動産M&Aを選ぶメリットの1つは、後継者問題が解決できることです。もし後継者がいないために工場を閉鎖せざるを得ない状況だった場合、不動産M&Aをすれば会社や事業を存続させることができます。
不動産M&Aによって後継者に承継できれば、これまで積み上げてきた歴史や技術などを守り続けることができるでしょう。
4.従業員の雇用を継続させられる
不動産M&Aを行うメリットは、従業員の雇用を継続できることです。
工場をただ閉鎖して売却した場合は、従業員は職を失うことになります。
しかし、不動産M&Aを実施して会社や事業を第三者に引き継ぐと、従業員も譲受側の企業に移行されます。
今まで工場で働いてくれていた従業員の雇用を守れることは、不動産M&Aを行う大きな意義となるでしょう。
デメリット
不動産M&Aによって工場を売却するときの懸念点は、以下の2つです。
- 手続きが増える
- 時間がかかる
不動産M&Aにはたくさんのメリットがあるので、実施にあたって大変なところをあらかじめ押さえて、準備に取り掛かりましょう。
1.手続きが増える
不動産M&Aは会社や事業を譲り渡すことになるため、単に工場を売却するよりも手続きが多くなります。取締役会・株主総会を実施したり、株主名簿の書き換え請求など、多数の手続きが発生します。
不動産M&Aを行う場合も、サポートしてくれる支援機関を利用することがおすすめです。
M&A仲介会社を利用すれば、相談から成約まで一貫してサポートしてくれます。
2.時間がかかる
不動産M&Aのデメリットの1つは、時間がかかってしまうことです。
踏むべき手続きが多い分、売却完了までに多くの時間を要します。
【買収側】不動産M&Aのメリット・デメリット
ここでは、不動産M&Aによって工場を取得する買い手側のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
不動産M&Aによって工場を取得するときのメリットは、主に下記の3つです。
- 節税効果が期待できる
- 従業員やノウハウを獲得できる
- 相場よりも安く購入できる可能性がある
以下で一つずつ解説します。
1.節税効果が期待できる
工場を不動産M&Aで取得する大きなメリットは、節税効果があることです。
一般的な方法で工場売却をする場合には、登録免許税や不動産取得税、印紙税などを納める必要があります。しかし、株式譲渡を行う不動産M&Aにおいては、買い手側に税金はかかりません。
2.従業員やノウハウを獲得できる
不動産M&Aでは工場だけでなく、従業員も買い手企業に移行します。技術を備えた従業員を獲得できることは、不動産M&Aを行うメリットだといえるでしょう。
専門性の高い工場で働いていた従業員のノウハウ獲得により、会社のさらなる成長を目指している場合は、不動産M&Aを検討してください。
3.相場よりも安く購入できる可能性がある
不動産M&Aは、工場の売却側にとっても節税効果がある方法です。工場売却で発生する手取り額が節税効果により大幅な増加が見込まれる場合、売却額を下げて相場と比べて安価な価格で購入できる可能性があります。価格交渉も比較的応じてくれる傾向があるでしょう。
デメリット
不動産M&Aによって工場を取得するときに発生する懸念点は、以下の2つです。
- 負債を引き継ぐリスクがある
- 混乱を招く可能性がある
不動産M&Aを検討する際は、あらかじめリスクを把握し、対策をしておく必要があります。
1.負債を引き継ぐリスクがある
不動産M&Aでは工場を譲受するだけではなく、マイナスの資産も引き継ぐ可能性があります。「どのような負債があるのか」「負債を上回るメリットがあるのか」などを事前にしっかり確認しましょう。
また、簿外債務という隠された負債があとで発覚することも。想定外の債務を抱えることになった場合、経営が傾いてしまう恐れもあります。不動産M&Aを実施する際は、相手の会社に対して入念な調査をしましょう。
2.混乱を招く可能性がある
不動産M&Aの実施は、会社に大きな変化をもたらします。売り手側の従業員が入ってきたり、社内ルールが変更されたりすることにより、現場が一時的に混乱する可能性があります。
不動産M&Aを行う場合は、経営統合プロセスの計画を組みましょう。綿密な計画を立てて経営統合を円滑に進めることができれば、不動産M&Aによるシナジー効果が得られるはずです。
不動産M&Aを行う場合、通常の工場売却とは手順が大きく異なります。そのため、M&Aに関する専門的な知識を持った仲介会社を利用することがおすすめです。仲介会社を活用して、不動産M&Aをスムーズに進めましょう。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。専門的なノウハウを有したコンサルタントも在籍しており、各プロセスで的確にアドバイスいたします。
料金体系はM&Aご成約まで料金が発生しない「完全成功報酬型」です(譲受会社のみ中間金あり)。もちろんご相談料も無料!まずはお気軽にレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社にご相談ください。