小規模M&Aとは?メリット・デメリットや手法の選び方を解説!成功事例も

2023年10月12日

小規模M&Aとは?メリット・デメリットや手法の選び方を解説!成功事例も

このページのまとめ

  • 小規模M&Aとは、比較的小規模な会社や事業を買収したり売却したりすること
  • 小規模M&Aの定義は定められていないが、年間売上高が1億円規模の会社の取引が多い
  • 小規模M&Aでよく用いられる手法は「株式譲渡」と「事業譲渡」の2種類
  • 小規模M&Aのメリットは「譲渡益が得られる」「後継者問題を解決できる」など
  • 自社が希望する小規模M&Aにあったマッチングサービスを利用することがおすすめ

「小規模M&Aとは?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
小規模M&Aとは、小規模の企業・事業を買収または売却することです。小規模M&Aを行うメリットには「後継者問題の解決」「優秀な人材の確保」などが挙げられ、譲渡側にも譲受側にも数多くのメリットがあります。

このコラムでは、小規模M&Aの概要や成功のポイントを解説。マッチングサービスや成功事例も載せているので、ぜひ参考にしてください。

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小規模M&Aとは

小規模M&Aとは、中小企業や個人投資家等が株式譲渡や事業譲渡などの方法で小規模の会社を買収または売却することです。「スモールビジネスM&A」と呼ばれることもあります。

M&Aマッチングサービスの増加に伴い、小規模M&Aが増加すると予想されています。
小規模M&Aの明確な定義はありませんが、現在増加している小規模M&Aの多くは年間売上高が1億円規模の会社です。

なお、小規模(スモール)M&A以外にも「マイクロM&A」という会社の売却方法もあります。マイクロM&Aは年間売上高が1,000万円未満の会社を対象としたM&Aを意味することが多いとされています。

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小規模M&Aが増えている背景

小規模M&Aが増えている背景には、後継者不在による事業承継ニーズの高まりがあります。日本では少子高齢化が進んでおり、経営者の高齢化および後継者不足に悩む企業が増えています。それに伴い、会社や事業を譲渡できるM&Aの需要が高まっている状況です。

また、インターネットでM&Aの売り手・買い手を探せるマッチングサービスが普及してきたのも小規模M&Aが増えている理由のひとつです。
マッチングサービスの登場で、小規模会社でもM&Aに取り組みやすくなり、これまではハードルの高かった個人の参加も比較的容易にできるようになっています。

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小規模M&Aで用いられるスキーム

小規模M&Aはさまざまな方法で行われますが、主な方法は株式譲渡と事業譲渡の2種類です。それぞれの方法には概要や対象となる企業形態に大きな違いがあります。

この章では株式譲渡と事業譲渡それぞれの概要や特徴を詳しく解説します。

1.株式譲渡

株式譲渡とは、売却会社の株主が保有する株式を他社に売却する手法です。買収側は企業の支配権を取得したり経営に参画する権利を得たりします。

株式会社を対象とした小規模M&Aで、他の方法に比べると比較的簡単に取引できるため、株式会社の多くは株式譲渡を採用しています。

ただし、株式譲渡は株券の交付が必要となるケースがあったり、株式を発行していない会社は当事者間の契約のみで株式譲渡ができたりするなど、会社法に関連した注意点もあります。株式譲渡の取引方法はシンプルですが、全ての小規模M&Aで利用できる方法ではないためご注意ください。

株式譲渡のメリットとデメリット

株式譲渡で取引する売り手側のメリットは、「売却益を得られる」「早期リタイヤしやすい」「取引先への影響力が小さい」などです。
買い手には「資本構成への影響が小さい」「売り手の権利義務全てを引き継げるため許認可を含む承継ができる」といったメリットがあります。

しかし一方で、売り手には「過半数以上の株式を売却すると経営権を失う」というデメリットがあります。
買い手側のデメリットは「不要な事業や資産を引き継がなければならない」「簿外債務も引き継ぐ恐れがある」などです。

2.事業譲渡

事業譲渡とは、事業の一部または全てを譲渡するM&A取引です。株式譲渡は資産や事業全てを引き継ぐ必要がありますが、事業譲渡は譲渡する資産を自由に選べるという特徴があります。

小規模M&Aの方法の一つとして会社分割もありますが、会社分割は資産を個別に選択できないため、引き継ぐ資産を自由に選びたい買い手の多くは事業譲渡を利用しています。

事業譲渡のメリットとデメリット

事業譲渡をすることで、売り手側、買い手側にはそれぞれ以下のメリットがあります。

売り手

  • 売りたい事業だけを売却できる
  • 必要な資産を残せる
  • 法人格を残せる
  • 後継者問題を解消できる

買い手

  • 買収したい事業のみを買収できる
  • 必要な技術や従業員を獲得できる
  • 新規事業を一から立ち上げる必要がなくなる
  • 負債を引き継ぐリスクがない

一方で、事業譲渡にはメリットだけではなく売り手側、買い手側それぞれに以下のデメリットがあります。

売り手

  • 株主総会で認められなければ売却できない
  • 取引の手続きが複雑
  • 従業員や取引先への対応が必要
  • 負債が残る可能性がある

買い手

  • 買収資金が必要
  • 許認可は引き継げない
  • 大企業の場合、手続きや税金の負担が大きくなる

小規模M&Aの手法は、これら株式譲渡や事業譲渡以外にも複数の手法があります。それぞれで取引方法やメリットとデメリットが大きく異なるため、取引する際の優先する内容に応じて自社に合うものを選びましょう。

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小規模M&Aを行う流れ

小規模M&Aのメリットや注意点を知る前に、M&Aを行う流れをみていきましょう。流れを知ることでM&A全体をイメージでき、具体的な準備も始めやすくなります。

小規模M&Aの流れは、以下の8つの手順で行います。

  1. M&A仲介業者の選定
  2. M&A相手候補とのマッチング
  3. M&A相手候補とのトップ面談・条件交渉
  4. 基本合意書を締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終条件交渉
  7. クロージングの実施
  8. PMIの実施

それぞれの流れを、具体的に紹介します。

M&A仲介業者の選定

小規模M&Aの実施には、まずM&A仲介業者の選定を行います。M&Aの実施では財務や税務、法務など、さまざまな分野の知識が必要です。また、買い手との交渉を行うスキルも求められます。すべてを自力で行うことは難しく、現実的ではありません。

小規模M&Aは取引金額が小さいことから、これまで対応する仲介業者は限られていました。しかし、近年は小規模M&Aも積極的に受け付ける仲介業者が増えています。これらの仲介業者を利用すれば、M&A失敗のリスクを避け、スムーズな取引を行えるでしょう。仲介業者であれば、相手先の選定から交渉、成約に至るまで、一貫したサポートを得られます。

また、M&Aの仲介業者では売り手企業と買い手企業の仲介を行うだけでなく、必要書類の作成など事務手続きの支援も受けられます。

M&A相手候補とのマッチング

次に、M&Aの相手候補を探し、マッチングします。相手候補を探す段階は非常に重要であり、ここで選定を誤るとM&Aの成功は難しいといえるでしょう。

M&A仲介会社に紹介してもらうのが一般的ですが、自社に合う相手候補を見つけるには、これら仲介業者の力を借りながら、自らも積極的に情報を収集するなどの対応が必要です。

M&A相手候補とのトップ面談・条件交渉

相手候補が決まったら、トップ面談において条件交渉を行います。トップ面談とは、M&Aを行う経営者同士が面談することです。M&Aを決意した経緯や経営ビジョン、今後の経営方針などを話し合います。

トップ面談は、トップ同士が顔を合わせることで、売上や業績など数字の情報だけでは確認できない経営理念や経営者の人格などを把握し、相互理解を深める目的で行われます。トップ面談でお互いの理解を深めたのち、基本的な条件交渉を行うという流れです。

基本合意書を締結

基本的な条件の合意ができたら、基本合意書を締結します。基本合意書に記載する内容には特に決まりがなく、主に以下の内容が記載されています。

  • 買収対象
  • 使用するM&Aスキーム
  • M&Aのスケジュール
  • デューデリジェンスへの協力義務
  • 独占交渉権
  • 秘密保持義務
  • 善管注意義務

基本合意書は合意内容を確認する目的で作成されるもので、法的拘束力はありません。ただし、秘密保持義務・善管注意義務・デューデリジェンスへの協力義務・独占交渉権などには例外的に法的拘束力を持たせ、その旨を明記しておくのが一般的です。

デューデリジェンスの実施

基本合意書で大まかな契約内容をまとめたら、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買い手が行う売り手に関する詳細な調査のことです。財務・税務・法務・労務などの分野ごとに、専門家に依頼して綿密な調査を行います。

基本合意書を締結した時点ではわからなかったことが判明する可能性もあり、デューデリジェンスの実施は不可欠です。デューデリジェンスの結果によっては、基本合意書に記載された条件が変わることもあるでしょう。

最終条件交渉

デューデリジェンスを実施したのち、特に問題がない場合には最終条件の交渉に入ります。売買条件のほかに従業員の処遇や最終契約までのスケジュールなど、細かい内容を決定する段階です。

条件交渉で最終的な売却価格や各条件を決定したら、最終契約の締結を行います。最終契約書は、譲渡の内容や売買価格などM&A契約における当事者の権利や、締結後のトラブルへの対処方針などを明文化したものです。

トラブルが発生した場合などの判断基準となるため、最終契約書の内容は細かい点もしっかり確認しておかなければなりません。

なお、最終契約の締結には、取締役会や株主総会の開催が必要な場合もあります。

クロージングの実施

すべての内容に合意して最終契約書を締結したら、最終的な手続きとしてクロージングを実施します。クロージングとは、株式譲渡や事業譲渡など各スキームの引渡し手続きと代金の支払いにより、経営権の移転が完了することです。

一般的に、クロージングは最終契約から一定期間を空けて行われます。最終契約の締結からクロージングまでの期間は、およそ1ヶ月〜1年程度です。

クロージングまでに期間を設けるのは、デューデリジェンスで発見された問題点の修正やM&A取引実行に必要な多くの手続きがあるためです。

PMIの実施

クロージングが済んだら、PMIを実施します。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A後の経営統合のことです。

M&Aが成立しても、PMIをうまく進めなければ成功とはいえません。経営陣が統合の基本方針や経営方針を決定し、シナジー効果(M&Aによる相乗効果)による目標を確認し、スタッフや業務方法の連携などを行う作業が大切です。

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譲受企業側|小規模M&Aを展開する6つのメリット

小規模M&Aによって事業を買収することには以下の6つのメリットがあります。

  • 取引先やマーケットを拡大できる
  • 生産性が向上する
  • 創業にかかるリスクとコストを抑制できる
  • 企業成長を遂げる相乗効果が期待できる
  • 新規事業へ割く時間が省ける
  • 優秀な人材を確保できる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

1.取引先やマーケットを拡大できる

小規模M&Aを実施するメリットの1つは、取引先やマーケットを拡大できることです。
新たな事業を立ち上げる際に、新たに取引先を探したりマーケットの拡大を図ることには時間も労力もかかります。しかし、小規模M&Aで譲り受けることで事業だけではなく取引先や顧客基盤も引き継ぐことが可能です。

2.生産性が向上する

小規模M&Aは事業・取引先だけでなく技術も引き継ぐことができるため、生産性が向上するというメリットもあります。

新たに技術を習得しようとゼロから研究開発を始めると、膨大な時間とコストがかかります。しかし、小規模M&Aで必要な技術を買収すれば、研究開発にかかる時間とコストが削減できます。
生産性は中小企業において重要であることから、生産性の向上を目的に小規模M&Aをする企業は少なくありません。
また、生産性が向上すれば効率良く商品を生産できるため、売上の向上にもつながります。

3.創業にかかるリスクとコストを抑制できる

小規模M&Aは既に事業運営している企業を買収することができるため、創業にかかるリスクとコストを抑制できるというメリットがあります。

小規模M&Aの中には、ある程度安定している企業を買収できる場合もあります。この場合、企業ごと買収できれば従業員やノウハウ、売上も引き継ぐことが可能です。創業時のリスクを大幅に抑制できます。

4.企業成長を遂げる相乗効果が期待できる

小規模M&Aを使って新規事業に参入すれば事業の多角化が図れるため、企業成長を遂げる相乗効果が期待できるというメリットもあります。

企業が成長するためには、メインとなる事業を拡大させることはもちろん、事業の多角化が必要となるケースもあります。特に、事業を多角化することで収益源を安定させることができ、新規事業の売上によっては企業の成長だけではなく企業規模の拡大も可能です。

また、新規事業を立ち上げることでこれまで自社になかったノウハウを獲得できたり、川上から川下にバリューチェーンを拡大できたりするなど、企業成長につながる多くのメリットがあります。小規模M&Aで企業の成長を図る場合は、新規事業を買収することも一つの手です。

5.新規事業へ割く時間が省ける

小規模M&Aを行うメリットは、新規事業へ割く時間を省くことができることです。

通常、新規事業を立ち上げる際にはマーケティングや従業員の確保および育成、技術開発などが必要となるため、多くの時間がかかります。しかし、小規模M&Aを行うことによって既に出来上がっている事業を買収すれば、新規事業の立ち上げにかかる時間を大幅に削減できます。「小規模M&A=時間を買う」という捉え方もできるでしょう。

6.優秀な人材を確保できる

優秀な人材を確保できるという点も、小規模M&Aのメリットです。

新規事業の立ち上げや新たに起業する場合、対応する従業員を確保しなければなりませんが、その事業に特化した人材を確保するのは多くの時間と労力がかかります。しかし、小規模M&Aは従業員ごと買収できるため、その事業のノウハウを多く持っている優秀な人材を確保できます。

優秀な人材の確保は、生産性や売上高の向上など多くのメリットがあります。今後の企業成長のために、小規模M&Aで優秀な人材を確保しましょう。

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譲渡企業側|小規模M&Aを展開する4つのメリット

小規模M&Aで企業や事業を売却することには以下の4つのメリットがあります。

  • 後継者不在問題の打開策となる
  • 譲渡益を獲得できる
  • 事業が継続して従業員の雇用先を確保できる
  • 投資金を回収する時間を短縮できる
  • それぞれのメリットについて詳しく解説します。

1.後継者不在問題の打開策となる

小規模M&Aのメリットは、後継者不在問題を解決できることです。経営の権利ごと企業や事業を売却できるため、買収してくれた人に企業や事業を任せることができます。

先述の通り、日本の少子高齢化に伴って企業や事業の後継者が見つからないと悩んでいる経営者は少なくありません。後継者不在問題の打開策となる小規模M&Aは、譲渡企業側の大きなメリットといえるでしょう。

2.譲渡益を獲得できる

小規模M&Aで企業や事業を売却すれば、多額の譲渡益を獲得できるというメリットがあります。

小規模M&Aで企業や事業を売却する際には、現在価値に今後数年間の営業価値などを加算した金額で売却することができます。つまり、買い手側が企業や事業に魅力を感じてくれているほど価格が高くなり、その分多くの譲渡益を獲得することが可能です。

ただし、譲渡益には税金がかかるため全額を受け取れるという訳ではありません。譲渡益を目的に企業や事業を売却する場合は、譲渡益にかかる税金を確認したうえで売却するか否かを判断しましょう。

3.事業が継続して従業員の雇用先を確保できる

小規模M&Aのメリットは、従業員の雇用先を確保できることです。

業績の悪化に伴って自社で事業を継続することが困難になった場合、事業自体を辞めてしまうとその事業に携わっていた従業員が雇用を失います。しかし、小規模M&Aで事業を売却することで、自社で継続できなくなった事業を他社が継続し、従業員も職を失わずに済みます。

4.投資金を回収する時間を短縮できる

小規模M&Aには、投資金を回収する時間を短縮できるというメリットがあります。

投資した場合、投資金を回収するためには通常多くの時間がかかります。投資は、売上が上がったとしてもその間に業績が悪化して経営が苦しくなったり、投資しても思うような利益が得られなかったりするケースも考えられます。

しかし、小規模M&Aでの取引であれば、引き継ぎ完了とともに売却資金を受け取ることが可能です。投資金を回収する時間を短縮できます。

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小規模M&Aを成功させるポイント・注意点

小規模M&Aを成功させるには、押さえておきたいポイントと注意点があります。ここでは、成功させるポイント4つと譲受企業側・譲渡企業側それぞれの注意点を解説します。

小規模M&Aを成功させる4つのポイント

小規模M&Aを成功させるポイントは、以下の4つです。

  • デューデリジェンスの実行時は細心の注意を払う
  • 契約書の内容を専門家にチェックしてもらう
  • M&A成立後のPMIや関係者との信頼関係に注意する
  • M&Aの知見が豊富な専門家に依頼する

それぞれ、詳しくみていきましょう。

1.デューデリジェンスの実行時は細心の注意を払う

小規模M&Aを成功させるには、デューデリジェンスでリスクを明確にすることが大切です。簿外債務や脱税、贈収賄などがないかを徹底的に洗い出す必要があります。

M&A実施後に問題が発覚し、投資が無駄に終わることだけは避けなければなりません。小規模M&Aの場合でも、財務・法務・税務のデューデリジェンスは専門家に依頼することをおすすめします。

2.契約書の内容を専門家にチェックしてもらう

契約書の内容は、専門家のチェックを必ず受けましょう。M&Aの契約書はインターネット上でも手軽にダウンロードできますが、テンプレートが自社の取引に合っているとは限りません。

予算の関係で無料のテンプレートを使う場合でも、あとから無用なトラブルが発生しないよう、最終的には専門家のチェックを受けることが大切です。

3.M&A成立後のPMIや関係者との信頼関係に注意する

M&Aを成功させる鍵は、PMIの成功が握っています。最終契約を締結すると経営統合プロセスのPMIの実施に移りますが、小規模M&Aの多くはPMIを疎かにしがちです。

PMIがうまく行われないと、M&A実施後の業務に支障が出る可能性があります。思うようなシナジー効果を得られず、M&Aの失敗につながりかねません。

従業員など関係者との信頼関係にも注意が必要です。M&Aに反発する従業員への対応を怠ると、大量離職につながるケースもあります。そのような事態に陥れば、事業の存続が難しくなるでしょう。

4.M&Aの知見が豊富な専門家に依頼する

近年はM&Aのマッチングサービスも普及しており、小規模M&Aでもコストを抑えながら実施しやすくなっています。しかし、交渉や契約締結などはすべて自分たちで進めなければならず、リスクを伴うでしょう。小規模M&Aの取引を安全に進めて成功させるには、最終的にM&Aアドバイザーなど専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

M&Aアドバイザーによって得意なM&Aの内容や規模は異なるため、小規模M&Aの実績が豊富なM&Aアドバイザーを選ぶようにしましょう。

譲受企業側の小規模M&Aを失敗させないための注意点

譲受企業側が小規模M&Aで失敗しないために、以下の点に注意が必要です。

  • 譲渡企業との融合に時間がかかる場合がある
  • 譲渡企業との間に想定していた相乗効果が発生しにくい可能性がある
  • 締結後に簿外債務が発生するリスクがある

社風や従業員への待遇の違いなど、文化の違いが大きい場合、譲渡企業との融合に時間がかかる点に注意が必要です。譲渡企業との融合に時間がかかると優秀な人材が退職するなど、不利益が生じるリスクがあります。

また、譲渡企業との間に想定していた相乗効果が発生しにくい可能性もあります。想定していた相乗効果が発生しにくくなるケースは、譲渡企業との間に溝が生じたままPMIを十分に進めなかった場合です。溝が生じたまま放置してしまうと、譲渡企業で働いていた従業員と自社の従業員とで派閥が分かれるなどのトラブルが発生することにもなりかねません。相乗効果がないだけでなく、ネガティブな影響が生まれる恐れがあります。

そして、デューデリジェンスをうまく進めないと、M&A実施後に問題が発生するリスクがあります。買収交渉後に貸借対照表には記載されていない簿外債務が発覚して、思わぬマイナス資金が生じたというケースは少なくありません。そのため、特に株式譲渡で小規模M&A取引をする場合には簿外債務のリスクがあることを念頭に置いておきましょう。

譲渡企業側の小規模M&Aを失敗させないための注意点

譲渡企業側にも、M&Aを失敗しないための注意点があります。主な注意点は、以下の4つです。

  • 株主総会を開く必要がある
  • 希望価格での事業譲渡ができない可能性がある
  • 取引先から反発を受ける可能性がある
  • 事業譲渡益には法人税が課される

まず、株主総会を開く必要があることに注意が必要です。株主総会で小規模M&Aが認められなければ、譲渡はできません。

株主総会で株主に理解してもらうために、なぜ小規模M&A取引をするのかを明確にしておきましょう。小規模M&Aを行うことで発生するメリットや今後の動向なども詳しく説明してください。
小規模M&Aで「将来性が見込めない」「希望価格が高すぎる」と判断された場合、希望価格で事業譲渡できない可能性があります。希望価格で売却したいのであれば、企業価値を高める必要があるでしょう。収益構造を再構築し、企業がキャッシュフローを生み出しやすい環境を整えることが重要です。

また、M&A実施後に取引先との契約条件を変更したり、担当者が変わったりしてこれまで築き上げた関係を崩さないことも大切です。取引先から反発を受けると契約を打ち切られるなど、今後の経営に大きな影響を及ぼすリスクがあるでしょう。

事業譲渡で小規模M&A取引をすると、法人税を差し引いた金額を受け取ることになります。譲渡益全額を受け取ることはできない点にも注意が必要です。

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小規模M&Aの成功事例

小規模M&Aを成功させるには、実際に成功させている事例を参考にするとよいでしょう。ここでは、成功事例をいくつか紹介します。

株式会社PoliPoliと毎日新聞の事例

ソフトウェア開発を手がける株式会社PoliPoliは、2018年に俳句のSNSアプリ「俳句てふてふ」を毎日新聞社に事業譲渡しました。

「俳句てふてふ」は「俳句を身近に」をコンセプトに開発されたSNSサービスで、毎日新聞社の俳句事業担当者が目に止め、毎日新聞の新規事業として進めたいという話をもちかけたことがきっかけです。

俳句に関するコンテンツを長年提供している毎日新聞のリソースを活かせることが、M&Aを決めた主な理由ということです。

PoliPoliの代表はアドバイザーという立場で事業展開をサポートし、毎日新聞の既存事業とのシナジーを生み出すという方針でM&Aが実施されました。

参照元:毎日新聞「毎日新聞社が俳句のSNSアプリ『俳句てふてふ』をPoliPoliから事業譲渡

株式会社Clearと川勇商店の事例

ベンチャー企業と老舗企業が小規模M&Aを成功させた事例です。2018年、日本酒専用のサイトを運営するベンチャー企業・株式会社Clearは、1965年に創業された老舗酒屋の川勇商店の発行済み株式をすべて取得し、完全子会社化しました。

川勇商店が持つ「酒類小売業免許」の取得を主な目的として行われたもので、株式会社Clearでは酒類小売業免許を活用した新事業として、オリジナル日本酒を開発・販売する小売業に参入しています。

川勇商店が持つ酒類小売業免許は小売業における課税移出数量・品目・地域の制限がないため、今後はインターネット上で幅広い事業展開が可能となりました。

参照元:株式会社Clear「お金のカタチ」に、Clearが買収した老舗酒屋のインタビューが掲載

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小規模M&Aを扱う仲介会社の選び方

小規模M&Aは仲介会社を介すと確実かつ安全に取引を完了できます。小規模M&Aを扱う仲介会社は多数あり、良い仲介会社を選ぶことでより良い条件で取引できる可能性が高まります。

良い仲介会社を選ぶためのポイントは、以下の3つです。

  • 専門性の高いサポートを受けられるか
  • 適正な料金体系であるか
  • 精度の高いマッチングを実現できるか
  • それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1.専門性の高いサポートを受けられるか

M&A取引の仲介会社にはそれぞれで専門分野があり、専門分野によって受けられるサポートが異なります。そのため、どのようなサポートが受けたいのかを明確にしたうえで、そのサポートを専門としているM&A仲介会社を選んでください。

2.適正な料金体系であるか

M&A仲介会社の料金は仲介会社によって異なります。安い料金設定の場合、必要なサポート内容が含まれていない可能性があります。また、安すぎる場合はサポートにあまり時間をかけてくれない可能性も。適正な料金体系であるかも重要なポイントです。内容と料金を照らし合わせて判断しましょう。

M&A仲介会社の料金体系は主に「完全成功報酬型」「着手金+成功報酬型」「月額報酬型」の3種類に分けられます。また、仲介会社によっては別料金が発生したりオプションサービスがあったりするなど、内容が大きく異なるため、依頼前に必ずご確認ください。

3.精度の高いマッチングを実現できるか

精度の高いマッチングを実現できるかどうかも確認しましょう。

小規模M&A取引をするうえで、条件が合致した相手を見つけることは非常に重要です。紹介できる企業を数多く保有している仲介会社を選べば、マッチング率の高い相手と出会える可能性が高まります。また、小規模M&Aを実施したいと考えている分野・業界を得意とする仲介会社を選ぶこともおすすめです。

精度の高いマッチングができる仲介会社を選び、好条件で売買しましょう。

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M&Aマッチングサイトとは

M&Aマッチングサイトとは、インターネット上の専用のシステムを用いてM&Aの譲受企業と譲渡企業をマッチングするサービスです。

売り手と買い手がそれぞれサイトに会員登録し、売り手側は売却案件情報、買い手側は企業情報や買収ニーズを入力します。買い手側は売り手側の売却案件情報から売り手に買収交渉をして、相手側が承諾すればマッチング成立となります。

M&Aマッチングサイトの運営者は、マッチング後の売却額に応じた成功報酬やサイトの利用料を利益として受け取る仕組みです。

M&Aマッチングサイトの3タイプ

M&Aマッチングサイトには、大別して以下の3タイプがあります。

  • 一般的なM&Aマッチングサイト
  • アドバイザー紹介型のM&Aマッチングサイト
  • 仲介会社が運営するM&Aマッチングサイト

「一般的なM&Aマッチングサイト」は、売り手と買い手にマッチングの場所を提供するのみで、交渉や手続きに関するサポートなどは行いません。マッチングサイトのみを提供するという形から、最も低コストで利用することが可能です。ただし、交渉や手続きを自分で行わなければならないため、手間がかかります。

「アドバイザー紹介型のM&Aマッチングサイト」は、売り手と買い手がマッチングしたらアドバイザーが仲介に入って相手企業と交渉するプラットフォームです。契約したアドバイザーがさまざまなサポートをしてくれます。

「仲介会社が運営するM&Aマッチングサイト」とは、仲介会社が管理するマッチングプラットフォームのことです。運営している仲介会社と契約することで、マッチングサイトでM&A取引が可能になります。

このように、M&Aマッチングサイトには複数のタイプがあるため、特徴を把握したうえで利用しやすいサイトを見つけましょう。

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M&Aの成功事例

最後に、M&Aの成功事例について、株式譲渡と事業譲渡に分けて一例ずつご紹介します。

株式譲渡|M&Aで新規事業を拡大

まずは、株式譲渡によって新規事業の拡大に成功した事例をご紹介します。
今回ご紹介する株式譲渡の譲渡企業と譲受企業の概要は以下のとおりです。

譲渡企業

  • 事業内容 SES、インフラの保守および運用
  • 売上高 1,300百万円
  • 営業利益 90百万円

譲受企業

  • 事業内容 開発系技術者と製造系技術者の派遣、子会社ではIT受託開発事業も展開
  • 上場区分 東証一部
  • 譲受金額 1,500百万円

M&Aに至った経緯

譲渡企業が株式譲渡でM&A取引をした理由は、SES事業に限界を感じたからです。受託・自社開発の体制が整っている企業に譲渡したいという希望と、譲受企業の事業内容が一致し、M&A取引が成立しました。

M&A成約後の結果

M&A取引が成約したことで得られた効果は以下の3つです。

  • 受託開発および自社開発の体制が整備された
  • 採用力が強化されてクライアント基盤が共有できた
  • 創業者利益を確保できた

譲受企業は子会社で受託開発事業を展開している上場企業でした。子会社と連携することで、受託開発および自社開発の体制をスムーズに整備できました。

また、譲受企業は開発系技術者と製造系技術者の派遣事業も展開していることから、親会社のネームバリューによって経験者を採用しやすくなっています。

そのほか、得られた創業者利益をもとに新規事業へ挑戦することが可能になりました。

M&A成約に至るキーポイント

このM&A成約が成功した理由は、譲受企業と譲渡企業の希望が合致したからです。M&Aを成功するためには、事業優位性を明確にしつつ譲渡企業の将来性を分析検証することが重要です。

今回の事例では、譲渡企業が譲渡企業の傘下になることで新たな事業をスムーズに始めることができ、多くのノウハウを入手できました。また、譲受企業もSES事業のノウハウを入手して新たな事業を展開できています。

このように、M&A取引を成功させるためには、両者にメリットがあることが必要です。

事業譲渡|M&Aで経営安定。後継者問題も解決

次に、事業譲渡によって経営が安定し、かつ後継者問題も解決した成功事例をご紹介します。
今回ご紹介する事業譲渡の譲渡企業と譲受企業の概要は以下のとおりです。

譲渡企業

  • 事業内容 SES
  • 売上高 100百万円
  • 営業利益 -1.8百万円

譲受企業

  • 事業内容 受託開発、SES
  • 上場区分 JASDAQ
  • 譲渡金額 32百万円

M&Aに至った経緯

譲渡企業は、営業利益がマイナスで不安定な状況。さらに若手人材の獲得に課題を抱えていました。
そこで、「ブランド力が高い企業」「経営が安定している企業」「若手人材採用を強化する効果が得られる」の3点を条件にM&Aを検討しました。

M&A成約後の結果

上場企業の譲受企業とクライアントを共有したことで、高い営業力を活用して経営を安定させることができました。
また、譲受企業はエンジニアの新卒採用に力を入れていました。子会社となることで、親会社のネームバリューによって若手人材を確保しやすくなりました。
さらに、取締役に実務譲渡したことで後継者問題も解決。長年抱えていた悩みも解消できました。

M&A成約に至るキーポイント

譲渡企業の経営は不安定になっていましたが、高い技術を持つ従業員が多く在籍していることをアピールポイントに譲受企業を探しました。譲受企業はこのアピールポイントに魅力を感じ、さらに譲渡企業の希望と譲受企業が合致したことで、M&Aが成約しました。

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まとめ

株式譲渡や事業譲渡によって中小企業が会社・事業を売却する小規模M&Aは、今後も増え続けると予想されます。
小規模M&Aには「売却益を得られる」「新事業に参入しやすくなる」「後継者問題の解決」など、譲受側・譲渡側それぞれにメリットがあります。注意点を押さえて小規模M&Aを実施し、企業や事業の更なる成長を図りましょう。
なお、M&A取引の成功率を高める方法としてM&Aサービスを提供している会社に依頼する方法があります。

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