病院買収を行うメリットや方法は?買収の種類や事例を合わせて解説

2023年11月8日

病院買収を行うメリットや方法は?買収の種類や事例を合わせて解説

このページのまとめ

  • 病院買収は、経営悪化や後継者問題などから増加傾向にある
  • 病院買収のメリットは、事業拡大のしやすさやスケールメリットの獲得、病床規制対策
  • 病院や医療法人は主に4つに分類され、それぞれ買収方法が異なる
  • 病院買収は、一般企業の買収とは異なる方法で行う

近年、経営の立て直しや後継者不足の解消などを背景に、病院や医療法人のM&Aの件数は増加傾向にあります。高齢化社会の進展により、病院や医療業界に関心が集まっていることもあり、病院や医療法人の買収を検討している経営者の方もいるのではないでしょうか。病院買収は、一般企業とは買収方法が異なります。本記事では、病院買収のメリットや方法、一般企業の買収との違いなどを解説します。

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病院や医療業界とは

医療業界は幅広く、「病院」「一般診療所」「歯科診療所」などを含めた業界のことを指します。医療業界で買収が行われる際には、業種や規模間によっても変わります。覚えておきたい点は、病院と診療所の違いです。病院とは、「病床が20床以上ある医療機関」と定められています。病床が19床以下の場合には、診療所やクリニックと呼ばれることを覚えておきましょう。現状では、入院が必要な患者は病院、入院が必要ない患者は診療所やクリニックとすみわけが行われています。病院買収を進める際には、この違いも知っておくことが大切です。

病院や医療業界の課題

病院や医療業界では、コスト増加などによる経営難が課題になっています。人件費の増加や診療報酬引き下げなどが実行されたためです。また、経営者の高齢化が進み、後継者不足も課題になっています。医療業界は、このような経営難や後継者不足に対処するための行動が求められています。

病院や医療業界の売上・施設数の推移

厚生労働省によって、2000年代から医療費抑制政策が行われてきました。その中で、前述のように診療報酬の引き下げや薬価基準の引き下げが実施され、それに伴い売上が落ち込み、経営状況が厳しい病院が増えています。

厚生労働省の「医療施設動態調査」によると、2023年7月時点における全国の病院数は8,130施設でした。2000年10月には9,266施設であったため、この23年間で約1,000施設減っていることがわかります。

参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和5年7月末概数) 」
参照元: 厚生労働省「平成12年(2000)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」

病院や医療業界での企業売買の動向

病院や医療業界での企業売買は、急速に進んでいます。経営難や後継者不足に悩まされているためです。たとえば、経営難に悩まされている病院は、経営を安定させるために買収を希望しています。また、買収によって後継者不足を解消し、存続を目指す病院もあります。このように、病院や医療業界での企業売買は増加傾向です。経営難や後継者不足などの問題は、今後も続くことが予想されるため、企業売買の件数は増え続けていくでしょう。

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病院を買収するメリット

近年では、病院の買収を考える経営者が増加しています。病院買収では、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には、次のようなメリットが期待できるため、参考にしてください。

  • 新しい拠点を獲得できる
  • 地域医療を継続できる
  • スケールメリットが発生する
  • 従業員や設備を引き継げる
  • 開業よりも楽に実施できる
  • 後継者問題が解決する
  • 病床規制対策になる

新しい拠点を獲得できる

病院買収には、新しい拠点を獲得できるメリットがあります。事業規模の拡大に効果的でしょう。病院を経営する場合、企業規模を拡大するには、拠点の増加が必要です。診療費を増加させ、収益を上げることが難しいからです。病院を買収すれば、すでに患者がいるため、事業規模の拡大が見込めます。新しい拠点を獲得し、規模拡大が見込めることは、病院買収のメリットになるでしょう。

地域医療を継続できる

病院買収によって、地域医療を継続できる点もメリットです。地域住民の生活を守ることにつながるでしょう。病院が少ない地域も多く、廃業してしまうことで、十分な医療を受けられない可能性も出てきます。廃業しそうな病院を買収できれば、地域医療の継続に貢献できるでしょう。高齢化で医療がさらに必要になる社会だからこそ、病院買収を行い、地域医療を継続させることは大切です。

スケールメリットが発生する

病院買収により、スケールメリットが発生します。スケールメリットとは、規模拡大によって発生する、生産性アップや知名度アップのことを指します。病院買収に成功すれば、企業規模が拡大し、資金力も向上するでしょう。すると、新しい施策を行いやすく、挑戦できる幅が増えます。このように、病院買収を行うことで、スケールメリットが発生します。企業規模や資金力を生かして、成果を出しやすくできることがメリットです。

従業員や設備を引き継げる

病院買収の場合、従業員や設備を引き継げる点もメリットになります。自社で準備する手間が省けたり、コストを抑えることができたりするでしょう。病院買収では、買収先の従業員を再雇用でき、設備も譲渡されます。そのため、一から用意するよりも、すばやく事業を実施できるでしょう。自社の負担を減らしながら、事業を実施できる点も、病院買収のメリットです。

開業よりも楽に実施できる

病院買収には、開業よりも楽に実施できるメリットがあります。一から開業するとなると、人材や設備など、準備が大変になるでしょう。病院を開業したい場合、さまざまな手続きや認可も必要です。時間が掛かり、なかなか開業できないケースもあります。一方で、病院を買収すれば、許可なども引き継ぎ可能です。開業よりも楽に実施できる点は、メリットになるでしょう。

後継者問題が解決する

近年増加している、後継者問題を解決できる点もメリットです。売り手側は後継者が見つかることで、安心して事業を行えるようになるでしょう。現代は、経営者の高齢化が進み、後継者問題が多発しています。後継者がいなければ、廃業になってしまうケースもあるでしょう。病院買収が行われれば、後継者問題が解決し、従業員の雇用も守ることができます。買い手側も、病院を活用できるため、双方にとってメリットがあります。

病床規制対策になる

病院買収には、病床規制対策になるメリットもあります。病床規制とは、地域ごとに決められた病床数のことで、病院は許可なく病床を増やすことができません。そのため、既存の病院が規模を拡大したくても、自由にはできない状況があります。一方で、病院買収の場合、病院をグループとして買収可能です。新しい病床増加ではないため、病床規制に引っかからないメリットがあります。このように、病院買収の実施は、病床規制対策になります。規模を拡大する手段として、有効な方法です。

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病院や医療法人の分類 

病院買収を行う場合は、病院の分類を覚えておくことが大切です。分類が違うことで、監督省庁が違っていたり、買収時の手続きが違ったりするためです。病院や医療法人の分類は、基本的に次の4種類で行われます。

  • 社会医療法人
  • 特定医療法人
  • 拠出型医療法人
  • 経過措置型医療法人

社会医療法人

社会医療法人とは、次の3つの条件を満たした医療法人の事です。

  • 都道府県や市町村、公的病院の機能を代替している
  • 公的医療機関と並ぶ5事業を担う
  • 地域医療支援病院の主体として位置づけられている

また、公的医療機関と並ぶ5事業とは、次の5事業が該当します。

  • 救急医療
  • 災害時における医療
  • へき地の医療
  • 周産期医療
  • 小児医療

このように、社会医療法人とは、公共性が高い病院のことです。都道府県の管轄になっていることも覚えておきましょう。

特定医療法人

特定医療法人とは、医療法人のなかでも医療の普及に貢献し、公的に運営が行われている期間のことです。国税庁の承認を受けた医療法人のみが、特定医療法人に該当します。特定医療法人に認定された場合、法人税で軽減税率が適用されます。

拠出型医療法人

拠出型医療法人とは、医師や基金から出資をもらい、運営している医療法人のことです。管轄に関しては、「2つ以上の都道府県で運営されている場合は厚生労働省」、「1つの都道府県で運営されている場合は都道府県」の管轄になります。

経過措置型医療法人

経過措置型医療法人とは、2007年よりも前に設立された、出資持分ありの医療法人のことです。現在では、第五次医療法改正により、経過措置型医療法人の設立はできなくなっています。管轄に関しては、「2つ以上の都道府県で運営されている場合は厚生労働省」、「1つの都道府県で運営されている場合は都道府県」の管轄です。

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病院を買収する方法

病院買収の方法は、一般企業を買収する場合と異なります。病院ならではの特徴を知っておくことが大切です。ここでは、病院買収を行う際に活用できる、4つの方法を紹介します。

  • 出資持分譲渡
  • 合併
  • 事業譲渡
  • 事業分割

出資持分譲渡

出資持分譲渡とは、病院に対して出資が行われている資金を譲渡してもらう方法です。一般企業の買収に例えると、株式譲渡と同じ方法になります。出資持分譲渡の特徴は、手続きが行いやすい点です。登記変更を行うだけで、病院買収が完了します。

また、出資持分譲渡の特徴は、病院全体を買収する点です。そのため、個別の契約がいらず、すべてをまとめて譲渡してもらえます。買収後も継続して事業を行える点は、メリットになるでしょう。そのほか、簿外債務を引き継ぐリスクが少ないことも出資持分譲渡のメリットです。簿外債務とは、何らかの事情で貸借対照表に記載されていない、買掛金や引当金などの負債のことです。

一方、デメリットとしては、買収前の出来事にも責任を負うことや手続きが複雑になりやすい点が挙げられます。

合併

医療法人同士の場合、合併を行うケースもあります。合併の場合も、病院全体を買収すると覚えておきましょう。そのため、雇用されている従業員や医師、設備なども引き継げます。合併の場合も、実施前に行政の許可を取っておくようにしましょう。管轄がどこか、事前に調べておくことが大切です。また、合併前に、都道府県ごとに「医療審議会」で審議してもらう必要があります。審議で認められることで、合併ができるようになるため注意しましょう。

合併は、医療法人同士が同一の医療圏内にある場合、病床の移動が可能である点や、消滅した側の取引先や医師や看護師との関係を継続できる点がメリットです。ただし、消滅側の負債も引き継がなければならない点がデメリットといえるでしょう。

事業譲渡

特定の科を譲渡する場合は、事業譲渡に該当します。一般企業の事業譲渡をイメージすると良いでしょう。病院を事業譲渡する場合の注意点は、行政の許可がいる点です。病院や医療法人は国の管轄下にあるため、許可を得てから買収を行う必要があります。また、事業譲渡の場合には、手続きが多く、時間も掛かることを知っておきましょう。従業員や医師の再雇用も、個別に行う必要があります。

必要な部分だけ譲渡してもらえるメリットがありますが、負債を移転する場合は、対象の医療法人の債権者から個別に同意を得る必要があるなど、手間が増える点には注意しましょう。

事業分割

事業分割とは、事業の一部を切り離し、ほかの病院や医療法人に移転を行うことです。既存の病院に移転させる吸収分割と、新しく設立した会社に移転させる新設分割があります。事業分割と事業譲渡の違いは、事業分割は事業全体を移転させることです。事業譲渡の場合は、譲渡内容を個別に選択するため、譲渡方法が変わります。事業分割の方が手続きが楽になるため、事業分割を選択するケースもあります。

事業分割は、病院の廃止届出や新規の開設許可、債権者の個別同意などを取得する手続きが不要な点がメリットです。しかし、合併のケースと同様に、都道府県知事の許可の取得や債権者保護手続きが必要なため、スケジュールが柔軟に組めない点がデメリットといえます。

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病院を買収する際の流れ 

病院を買収する際に向けて、どのような流れで行われるかを知っておきましょう。ここでは、病院買収の方法別に、基本的な流れを解説します。

  • 出資持分譲渡の場合
  • 合併の場合
  • 事業分割の場合

出資持分譲渡の場合

出資持分譲渡の場合は、次のような流れで実施します。

  • 役員の選任と解任
  • 定款の変更
  • 登記変更

役員の選任と解任は、社員総会で実施します。医療法第46条にて、「すべての社員のうち過半数が参加し、参加者の半数以上が賛成すると決議できる」と定められているため覚えておきましょう。また、医療法人の名前を変えるためには、定款の変更が必要です。定款の変更も社員総会を実施し、「すべての社員のうち3分の2以上が参加し、参加者の3分の2以上が賛成」すると決議できます。

持分ありとは

そもそも出資持分ありの医療法人とは、医療法人を設立する時の出資者が、その医療法人に対して財産権を持っている医療法人のことを指します。

持分なしとは

出資者が財産権を持たない場合は、出資持分なしの扱いになることを押さえておきましょう。2007年3月31日までに設立された医療法人は出資持分である一方、同年の4月1日以降に設立された医療法人は、出資持分なしであることがポイントです。

合併の場合

合併を行う場合は、次のような流れが一般的です。

  1. 合併契約の締結
  2. 既存社員の合併契約への同意
  3. 都道府県知事に申請
  4. 財産目録と賃貸対照表を作成し、開示する
  5. 合併に対する異議申し立てを受付ける
  6. 異議があった場合、担保提供などの対応実施
  7. 合併の効力発生
  8. 合併の登記実施

既存社員が合併契約に同意する場合、社団医療法人の場合はすべての社員が、財団医療法人の場合は理事の3分の2以上の同意が求められるため、覚えておきましょう。

事業分割の場合

事業分割の場合は、次のような流れで実施します。

  1. 吸収分割契約の締結
  2. 既存社員の合併契約への同意
  3. 都道府県知事に申請
  4. 財産目録と賃貸対照表を作成し、開示する
  5. 労働者保護の手続きを行う
  6. 事業分割に対する異議申し立てを受付ける
  7. 異議があった場合、担保提供などの対応実施
  8. 事業分割の効力発生
  9. 事業分割の登記実施

事業分割の場合、労働者保護の手続きが必要になるため、注意しましょう。商法等改正法附則5条に従って、手続きを進める必要があります。具体的には、「分割前の病院へ残留するか、分割後の病院に移動するか」の選択を提示し、従業員や医師に決定してもらいます。従業員や医師の権利になるため、必ず実行しましょう。

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株式会社がM&Aで病院を買収する手法

病院や医療法人は非営利事業です。そのため、株式会社などの営利法人が、それらを直接経営することは基本的にできません。ただし実際には、株式会社が実質的に医業経営に関わっているケースは少なくありません。その場合、以下のような手法が用いられています。

「社員交代+出資」のスキームを利用する

「社員交代+出資」のスキームとは、以下のような方法を指します。

  • 既存の医療法人の社員が持つ出資持分を、営利法人の株式会社が買い取る
  • 医療法人の社員に辞任をしてもらい、株式会社の関係者を新たに社員にする

なお、医療法人の社員とは、最高意志決定機関である社員総会を構成する社員であり、株式会社における株主のようなイメージです。いわゆる従業員ではないことに注意しましょう。

営利法人は、医療法人の社員になることはできません。しかし、株式会社を辞めた者が社員になることは問題ありません。したがって、株式会社の関係者を社員にすることで、株式会社は間接的に、医療法人の経営に関わることが可能になります。

なお、出資が関係するのは、前述した「出資持分あり」の医療法人のみです。2007年4月以降に新設された医療法人は「持分なし」に限られており、そもそも出資という概念がありません。しかし、M&Aが俎上にのぼるような医療法人は、それ以前に設立されているケースが多いため、「社員交代+出資」のスキームが主流なのは変わりません。

MS法人を設立する

MS(メディカルサービス)法人を設立することで、病院の経営に関わる方法もあります。MS法人とは法令上、医療機関でなければできない業務以外の、病院運営に関わる事業を行う法人のことです。
例えば、保険請求業務や会計業務などが、MS法人が行う業務に該当します。

医療法人は、医業で計上した利益の一部を、MS法人との取引を通じてMS法人に移せます。つまり、株式会社が投資を行ったMS法人を介して、医療法人の収益の一部を得ることが可能であるため、実質的に医療法人を経営している状態になるでしょう。

MS法人は、法的に規定されているものではありません。単に事業内容を表す通称であり、法人の形態としては株式会社や合同会社などの営利法人です。そのため、MS法人を株式会社がM&Aで譲り受けることや、MS法人を設立して医療法人と取引を行うことが可能です。

一般社団法人を設立する

一般社団法人を設立することで、株式会社が実質的に医療法人の経営に関与する方法もあります。一般社団法人とは、「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」に基づき設立される法人のことです。

一般社団法人も非営利法人であり、最高意志決定機関である社員総会は、社員によって構成されます。ただし、一般社団法人の特徴としては、株式会社も社員になれるほか、株式会社が直接、一般社団法人の開設者になれる点が挙げられるでしょう。

さらに、一般社団法人は非営利法人のため、医療法人の社員になることも可能です。したがって、株式会社が設立した一般社団法人が医療法人の社員となり、ワンクッション挟む形であれば、営利法人であっても医療法人の経営に乗り出せるでしょう。

ただし、一般社団法人の実質的な経営を、株式会社が行っていると自治体から判断されると、許可を得られない場合があります。そのため、医師が一般社団法人の理事長に就任しているケースが多くみられます。

関連記事:医療法人のM&A動向を解説!病院買収のスキームやメリット、事例も紹介

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病院の価格算出方法 

病院買収を成功させるためには、買収価格を適切に把握しておくことも大切です。どのような価格算出方法があるかを知っておきましょう。ここでは、病院買収を行う際に実施できる、3つの価格算出方法を紹介します。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • コストアプローチ

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、今後の収益を基準に、企業価値を算出する方法です。事業計画書をもとに、計算を行います。インカムアプローチのメリットは、将来の収益を予測し、企業価値を算出できる点です。一方で、売り手の事業計画書を基準にするため、客観性に掛ける部分は注意しましょう。インカムアプローチの代表的な計算方法には、「DCF法」があります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場と比較し、価格算出を行う方法です。過去に行われた買収を参考に、決定する場合もあります。マーケットアプローチのメリットは、過去の事例と比較できるため、基準を出しやすい点です。一方で、特殊な業種など、事例が少ない場合には、算出が難しいため注意しましょう。

コストアプローチ

コストアプローチとは、賃貸対照表を基準に、価格算出を行う方法です。計算方法としては、次のように実施します。

純資産+営業利益×3年〜5年=企業価値

コストアプローチの特徴は、賃貸対照表を使うことで、客観的な価値が算出しやすい点です。一方で、長期的な企業価値は算出できないことを覚えておきましょう。

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病院を買収する際のポイント 

病院買収に向けて、実施する際のポイントを知っておきましょう。病院ならではの特徴を知り、買収を進めることが大切です。具体的には、次の4つを意識して買収を行いましょう。

  • 医療業界ならではの特徴を知る
  • 医療法人ごとに、手続きが異なる
  • 買収の目的を決める
  • 既存の従業員や患者に説明を行う

医療業界ならではの特徴を知る

病院買収を行う場合、医療業界ならではの特徴を知っておきましょう。たとえば、次の4つが一般企業とは異なります。

  • 診察内容
  • 従業員数
  • 従業員の引継ぎ
  • 患者数

診察内容に関しては、科目によって人気が変わります。たとえば、内科や外科は買い手が多くなることを知っておきましょう。また、患者数が多い病院ほど、規模が大きく、経営も安定しています。しかし、現在の患者数が多くても、今後人口が減少する地域では、患者数が減っていく可能性もあるでしょう。このように、医療業界の場合は、一般企業とは違った観点で買収を進める必要があります。業界の特色を知り、買収を進めるようにしましょう。

医療法人ごとに、手続きが異なる

医療法人ごとに、買収の手続きが異なることを覚えておきましょう。たとえば、財団医療法人の場合、財団の意思決定者が変わることで、買収が行われます。一方で、社団医療法人の場合、社員の出資持分を買い取り、かつ、社員総会の過半数を買い手側の社員が構成した場合に買収が成立します。このように。医療法人ごとに、買収の手続きが変わります。買収先の病院が、どの医療法人に該当するか、事前に把握しておきましょう。

買収の目的を決める

病院買収を行う際には、買収の目的を決めましょう。目的を決めることで、案件を見つけやすくなったり、交渉がスムーズに進みやすくなったりします。また、買収を行う際に、希望する条件や譲歩できる条件も決めておきましょう。柔軟に交渉を行うことで、マッチング成立や買収の成功確率が上がります。

既存の従業員や患者に説明を行う

買収先が決まれば、既存の従業員や患者に対し、十分な説明を行いましょう。買収に関する説明を行うことで、従業員や患者からの信頼を獲得できます。たとえば、従業員に対し、買収後も待遇が変わらないと説明しておくことは大切です。患者にも、運営が変わってもサービスを継続すると伝えておくことが求められるでしょう。十分な説明がない場合、反発を受ける可能性もあります。トラブル防止のためにも、既存の従業員や患者に対し、買収に関する説明を行うようにしましょう。

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一般企業を買収する場合との違い

病院買収では、一般企業との違いも意識して進める必要があります。次のような違いが発生するため、確認しておきましょう。 

経営権を獲得する方法が異なる

病院や医療法人の場合、社員総会で経営権を獲得するケースが多いため、覚えておきましょう。株式会社のように、株式譲渡での買収は実施できません。また、「直接経営」と「間接経営」の場合で、経営権の獲得方法が変わることを覚えておきましょう。

直接経営

医療法人が直接経営で行われている場合、出資持分と社員総会の2点で経営権を獲得します。まず、出資持分に関しては、過半数の買取を行うことで経営権確保につながります。また。社員総会に関しては、全社員のうち、過半数の賛成が必要になります。このように、直接経営で経営権を獲得する場合、出資持分と社員総会の2点が必要になることを覚えておきましょう。

間接経営

関節経営の場合は、医療法人の出資持分を所持している法人の株式を取得すると、経営権を獲得できます。また、病院の不動産を担保にする場合でも獲得可能です。ただし、間接経営の場合、行使できる経営権は一部になります。基本的には、直接経営で経営権を掌握する方が望ましいでしょう。

従業員へ出資金の返還を行う

出資持分のある医療法人の場合、従業員へ出資金の返還が必要になるため注意しましょう。出資している従業員が退職する場合、該当の従業員に対して出資金の返還が必要です。一般企業では、株式を購入するために資金を使用します。一方で、病院買収の場合、出資金の返還で資金が必要になる可能性に備えておきましょう。

営利企業は開設者になれない

営利企業の場合、開設者になれないため注意しましょう。病院やクリニックを開設できる対象は、医師や歯科医師などの個人、非営利の法人になります。営利企業の場合、開設できないことを覚えておきましょう。病院などを開設する場合、自治体に申請を行い、許可をもらう必要があります。その際、営利性があると判断されれば、許可が下りません。厚生労働省のデータからも、病院の開設者は医療法人、クリニックの開設者は医療法人と個人が占めていることが分かります。このように、営利企業の場合は、開設者にはなれないことを覚えておきましょう。

営利企業は病院・医療法人の社員になれない

営利企業は医療法人の社員にはなれないことにも、注意が必要です。病院や医療法人は人命に関与するため営利性が認められません。病院や医療法人が営利性を目的にすると、お金のある患者を優先したり、治療費が上がったりするリスクがあるためです。そのため前述のように、営利法人は原則、医療法人の社員や理事にはなれません。

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病院買収の事例

病院買収の実施に向けて、これまでの買収事例を知っておきましょう。ここでは、厚生労働省が紹介する事例も含めて、これまでに行われた病院買収の事例を紹介します。

参照元:厚生労働省「近年行われた病院の合併・再編成等に係る調査研究報告書

医療法人伯鳳会 

医療法人伯鳳会は、「医療法人十愛会 国仲病院」「小国病院」「社会福祉法人大阪暁明館 大阪暁明館病院」、3つの買収を実施しました。まず、国仲病院は資金繰りが悪化し、10億円以上の負債を抱えたことから、経営再建が必要になったからです。続いて、小国病院に関しては、院長の体調不良により、事業の継続が難しくなったためです。最後に、大阪暁明館病院に関しては、経営が悪化し、伯鳳会に経営支援を依頼したことがきっかけになりました。これらの病院買収の結果、3病院とも経営が改善され、運営継続に成功しています。地域社会の医療を継続する観点からも、病院買収の成果が出ています。

医療法人沖縄徳洲会

2019年、医療法人沖縄徳洲会は、社会医療法人木下会を買収しました。買収目的は、「経営の合理化」「コンプライアンス強化」「ガバナンスの強化」などです。沖縄徳洲会は、この買収により、事業拡大に成功しています。

医療法人啓仁会 

医療法人啓仁会は、「医療法人社団礼仁会 吉祥寺南病院」の買収を実施しました。吉祥寺南病院は、診療所から個人病院へと変化した病院であり、規模拡大に成功していました。しかし、人材不足や過剰投資の結果、経営失敗を発生させています。この病院買収では吉祥寺南病院の設備や従業員をそのまま引き継ぎ、事業を継続しました。買収の結果、指揮命令系統の簡素化や、事務処理の効率化などのシナジーが発生しています。

医療法人清和会

医療法人清和会は、「医療法人斉藤会 斉藤病院」の買収を行いました。買収経緯は、斉藤病院は低収益の経営を続けており、債務超過に近い状態を迎えてしまったからです。買収の結果、経営状況が改善され、黒字化も達成しています。買収時に移転などを行い、設備投資も実施しましたが、資金回収にも成功しています。

医療法人クオラ

医療法人クオラは、「医療法人京整会 姶良整形外科病院」の買収を実施しました。姶良整形外科病院の経営は安定していましたが、後継者がおらず、廃業の危機を迎えていたからです。また、医療法人クオラ側も、事業拡大の実施を考えている状況でした。病院の増床ができずに悩んでいたところ、姶良整形外科病院が話題に挙がり、買収を実施しています。買収後は、従来の療養病床から回復期リハビリテーションに転換したことや、病床稼働率が上昇した結果、利益が倍増しました。

医療法人社団中川会

医療法人社団中川会は、「医療法人仁井会」と統合を実施しました。双方とも診療報酬改定が原因で経営が悪化し、医師不足などの問題も抱えていたためです。統合に伴い、需要の高い回復期リハビリテーション機能への転換も進めています。統合後は経営改善の兆しが見え、銀行からの新規融資も獲得できる状態になっています。

NTT西日本

2018年、NTT西日本は、医療法人警和会へ病院事業の譲渡を実施しました。地域医療へのさらなる貢献を目的としたと説明されています。NTT西日本と医療法人警和会が以前から連携が行われていたことも、譲渡理由の1つに挙げられています。事業譲渡後も運営は継続され、利用者なども引き継がれました。

NTT東日本

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)は、2016年9月に東北医科薬科大学へNTT東日本東北病院を譲渡しました。病院の医師不足の問題や、地域が抱える医療の課題の解消に貢献することが目的といわれています。現在は、東北医科薬科大学の附属病院になっています。

NTT東日本東北病院は、もともと日本電信電話公社で働く社員のための職域病院として設立されましたが、やがて一般利用が可能になり、地域への医療提供を行ってきました。東日本大震災の際には、救急医療を行ったことで知られています。

参照元:東日本電信電話株式会社「NTT東日本東北病院の事業譲渡について」

日本郵政

日本郵政は、社会福祉法人済生会に病院を譲渡しました。病院事業に赤字が発生していたため、解消を目的としています。譲渡後は、地域のニーズに合わせて、リハビリテーション病院へと転換が行われました。社会福祉法人済生会は買収をきっかけに、地域完結型医療体制を構築すると表明しています。

日立製作所

株式会社日立製作所は、2014年4月に医療法人社団大坪会へ、小平記念東京日立病院の赤字解消を目指し、譲渡を行いました。新たな名称は「東都文京病院」で、地域に密着した医療を提供しています。

小平記念東京日立病院は、1960年に日立製作所創立50周年記念事業として設立された病院です。また、医療社団法人大坪会は、東京都を中心に複数の病院施設を運営しています。

参照元:株式会社日立製作所「小平記念東京日立病院の継承について」

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まとめ 

医療業界では、近年、厳しい経営状況や後継者問題などを背景に、M&Aが活発に行われています。病院や医療法人による別の病院買収は、新しい拠点の獲得や地域医療の継続、後継者の確保などが可能になるといったメリットがあるでしょう。

病院や医療法人を買収する際は、株式会社のM&Aとの違いを十分に理解したうえで、手続きを進めていかなければなりません。特に株式会社が病院や医療法人の経営に関与する場合、営利性を追求した経営を行なうと、自治体などから指摘や指導を受ける可能性があります。そのため、株式会社が病院経営に関与することを検討する場合は、豊富な知見を持つ、M&A仲介会社などに相談することがおすすめです。

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