農業における事業承継を成功させるポイント・承継者の在り方について解説

2023年1月4日

農業における事業承継を成功させるポイント・承継者の在り方について解説

このページのまとめ

  • 農業は後継者不足という大きな問題を抱えている
  • 農地法が改正されて法人が農業に参入できるようになっている
  • 農業の事業承継の対象は「事業(経営権)」「資産」「経営資源」の3つ
  • 農業の事業承継の種類は「親族内承継」「親族外承継」「第三者承継(M&A)」の3つ
  • 農業の事業承継を成功させるには、行政支援や専門家のアドバイスを活用することが大切

身内で後継者が見つからないため農業を承継できず、第三者に譲渡したいと考えている方や、農家から事業を継承して農業を始めたいと考えている方に向けて、事業承継を成功させるためのポイントをお伝えします。
事業承継の種類やメリット、M&Aに関する情報などを分かりやすく解説します。
お互いの希望を叶えて農業を再生し、発展させましょう。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

農業における事業承継の状況

従来の農業従事者の主体は自営業者です。少子高齢化が進んだ現代では、後継者不足が課題となっています。
このような問題を解決して農業を守るため、企業が農業に参入できるよう農地法の改正が行われ、新規参入者を支援する取り組みがなされています。

1.後継者不足

農林水産省の「農業労働力に関する統計」によれば、主に農業に従事している個人事業主(基幹的農業従事者)の数は、2022年では約123万人で、7年前の2015年からは約53万人減少しています。
この間に、農業従事者に対する65歳以上の占める割合は 64.8%から70.1%に増加しており、農業従事者の減少と高齢化が同時に進行している状況です。
理由としては、後継者や新規参入者の不足が挙げられます。
新規就農者数は2014年から2015年の間には増加しましたが、その後はやや減少傾向です。

2.農地法改正による法人の参入

平成21年に農地法の抜本改正が行われました。農地を保護するための規制が足かせとなり、新規参入が難しかったことを是正するためです。
農林水産省の「改正農地法について」によると、その際、次のような目的でいくつかの規制が緩和されています。

  • 個人が農業に参入しやすくなるようにする
  • 株式会社でも農地を借りられるようにする
  • 出資という形で農業に参入しやすくする
  • 農地を適切に利用できるようにする

その結果、改正後の3年余りの間に参入した法人は約1200社にのぼりました。
農地法はその後も適宜、改正が行われています。

参照元:
農林水産省「農業労働力に関する統計
農林水産省「改正農地法について」(PDF)

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

事業承継で引き継がれる3つの対象

事業承継の対象は大きく分けて、事業(経営権)・資産・経営資源の3つがあります。
これらが滞りなく継承されるよう交渉を進めましょう。
この章では、事業承継に向けて、買い手と売り手がお互いに確認する必要のある3つの項目について解説します。

1.事業(経営権)

代表者の地位を後継者に引き継ぐことによって、農業経営の担い手が交代します。
多くの農家は代々、身内を後継者にして承継してきましたが、現在は外部の参入者や企業に経営権を譲ることが可能になり承継の在り方も変化しています。

農業経営者は地域や同業者との結びつきが強いため、そういった人的なつながりを承継後も維持することが課題点です。

2.資産

資産の承継とは、株式や不動産、農業機械・家畜・栽培する樹木、運転資金や借入金などの有形の資産を承継することです。

物的な資産を法人が持っている場合は、株式を譲渡することによって後継者に引き継ぐことが可能です。
自宅の設備を農業と共用している場合には、個人資産と事業用資産とに分ける必要があります。そのために予め法人化して承継手続きをスムーズに行う方法があります。

農地が所有物の場合、承継される法人は農地所有適格法人でなければなりません。リースの場合は要件が緩和されますが、元の代表者個人が所有して会社に貸していた場合、その移転等の手続きも必要です。

3.経営資源

経営資源の継承とは、経営の数字に現れる前述の物的資産以外の、無形の資産を継承することです。
具体的には、農業のノウハウ・理念・ブランド・信用のほか、取引先や地域での存在意義などの関係性までも継承する対象となり得ます。

人間が主体となる資源のため、承継する双方のコミュニケーションや、新しい担い手が地域で認めてもらえるための活動が重要です。事業や資産の承継より目に見えにくく、かつ重要な意味を持つため、細心の注意と熱意が必要となります。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

事業承継の3つの種類と各メリット

事業を承継する相手の種別ごとに、大きく3種類の承継方法があります。
従来、農業を承継する相手は親族が基本でしたが、後継者不足が深刻な昨今では、親族以外や第三者への承継が注目されています。

1.親族内承継

親族内承継とは、子や孫・配偶者・娘婿など、血縁関係のある者が後継者となる承継方法で、農業では従来から行われてきた一般的なものです。

親族内承継のメリットは、従業員や取引先に後継者が知られていたり想像できるために、承継について理解を得やすいことが挙げられます。
さらに、身内であるため、ノウハウが受け継がれやすいことや、株式を承継する際に贈与・相続税の猶予・免除などの優遇措置が受けられるというメリットもあります。

2.親族外承継

親族外承継とは、親族以外が後継者となる承継方法で、役員や従業員が後継者になるケースが従来からありました。
社内における親族外承継のメリットは、後継者候補の数が多いことや、実力を評価して承継できること、組織の文化が受け継がれやすいことなどが挙げられます。

ただし、後継者に株式を買い取る資金力が求められることや、個人保証の引継ぎに難色が示されるケースがあること、親族や他の従業員から理解が得られにくいことには注意が必要です。

3.第三者承継(M&A)

第三者承継とは、親族や社内の人ではなく、外部の人や法人に事業を承継する方法です。企業へ承継するする場合はM&Aに相当します。
農地法の改正で法人への承継が可能になって以降、注目されている承継方法です。

第三者承継のメリットは、親族や社内に後継者がいない場合でも承継できること、M&Aでは資金力のある企業に任せられることや、売却益が得られることなどが挙げられます。
ただ、資産の承継では前述のように、承継される側が農地所有適格法人である必要があるため、異なる業界の法人が参入するには厳しい状況にあります。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

農業M&Aに期待が集まる

農業における事業承継の問題を解決する方法として、現在、M&Aが有力候補です。
農業の発展のために施行された「農業競争力強化支援法」によって、スマート農業が推進されています。IT・ICT・ロボット技術の導入やソフトウェアを持つ企業の参入が促され、人材不足や生産性を上げにくい農業の省力化・効率化・生産性向上が可能な状況です。
このことは若い参入者や新たな雇用を生み出すきっかけになり、より広い業界の力を集めて農業を再生することに期待が集まっています。

参照元:
農林水産省「農業競争力強化支援法
農林水産省「スマート農業

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

農業における事業承継(M&A)を成功させるポイント

農業の事業承継については、行政は積極的に支援策を打ち出しています。
M&Aを成功させるには、国や自治体の支援を受けたり、M&Aの専門家に相談したりすることが大切です。

1.行政の支援を受ける

農業を承継するとき、行政からの支援があります。国からの支援だけでなく、自治体独自の支援や取り組みも行われているため、知っておくことで、農地の運営が楽になるでしょう。

事業承継税制によって、農業経営者が自社の株式を後継者に承継する場合、株式に関する贈与税・相続税の納税猶予および免除が受けられます。また、法人・個人事業者それぞれに向けた税制の特例措置があります。

農林水産省では、経営継承に関する詳しい内容が書かれたパンフレットや動画を公開中です。事業承継を考えたときには、まずこれらの資料に目を通すことがおすすめです。

また、農林水産省による「経営継承・発展等支援事業」があります。将来にわたり農業経営体の確保を目的として設けられている制度で、国と自治体との負担(折半)によって、上限100万円までの補助が受けられます。

また、主に新規就農者を対象とした就農や経営のサポートを行う「農業経営者サポート事業」があります。

参照元:
農林水産省「経営継承
農林水産省「経営継承・発展等支援事業(経営継承関係)
農林水産省「農業経営等に関する相談

2.専門家に相談する

農業M&Aは、税制や法務・会計の知識が必要であるため、M&Aの仲介会社やアドバイザーなどの専門家に相談することがよいでしょう。

アドバイスの方法として「アドバイザリー形式」と「仲介形式」があり、前者は売り手・買い手のどちらかに助言をする一方、後者は両者の間に入って中立的な立場で助言を行います。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

まとめ

単に資産を引き継ぐのではなく農業という事業を継承するため、農業への思いや将来ビジョンを明確にする必要があります。
経営計画は具体的にし、既存の事業の価値やよい面が活かせるようにプランニングします。
また、農業は地域の事業者や行政との連携で成り立っている産業であるため、農業の性質や地域への理解が欠かせず、長期的な視点を持って取り組むことが大切です。
国・自治体の支援や専門家のサポートを受けながら、農業の事業承継に臨みましょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、事業承継をはじめとするM&Aをサポートする仲介会社です。事業承継に関する専門的な知識と豊富な経験を兼ね備えたコンサルタントが在籍しています。
事業承継について不明点がある場合は、お気軽にレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社にお問い合わせください。