美容室のM&Aとは?業界の動向や事例、実施時のポイントを解説
このページのまとめ
- 美容室は個人経営が多く、M&A件数も増加している
- 美容室のM&Aは、後継者問題解決や従業員雇用の維持ができる
- 美容室のM&Aを成功させるためには、専門家の協力が大切
美容室業界のなかでもM&Aの多い分野が、美容室です。美容室は個人経営が多く、後継者問題に悩むケースが増えています。また、経営難に悩む美容室も多く、生き残りが課題です。この先、美容室をどうするか考えている経営者も多いでしょう。買い手側の場合でも、M&Aで事業拡大を目指す経営者もいます。本記事では、美容室業界でのM&A動向や、M&A実施のポイントを解説します。
美容室業界の動向
美容室業界のM&Aには、業界の動向が密接に関わっています。美容室業界でM&Aを行うにあたって、美容室業界の動向もしっておきましょう。
個人経営の美容室が多い
厚生労働省の調査によると、美容室の88.7%は個人経営で運営されています。従業員に関しても、1人しかいない美容室が32.4%でした。このように美容室は個人経営が多く、従業員も少ない状況です。
参照元:厚生労働省「美容業の実態と経営改善の方策 」
後継者不在に悩む美容室が増えている
個人経営が多い背景もあり、後継者不在に悩む美容室が増加しています。厚生労働省の調査によると、「後継者がいない」と答えた美容室は、78.2%でした。ここから、約8割の美容室で、後継者がいない状況を迎えていることが分かります。また、企業規模ごとの内訳を見てみると、個人経営では81%、有限会社では56,4%、株式会社では36.8%が後継者不在でした。このように、個人経営以外の美容室でも、後継者不在に悩むケースが増加しています。
参照元:厚生労働省「美容業の実態と経営改善の方策 」
経営上の問題を抱えるケースも多い
美容室では、経営上の問題を抱えるケースも多い特徴があります。厚生労働省の調査では、前年度よりも売上が5%以上減少したと答えた美容室が、個人経営では38.5%、株式会社と有限会社では33.3%だと明らかになりました。その一方で、売上が5%以上増加した美容室は、個人経営では2.8%、株式会社でも16.7%にとどまっています。このように、美容室では、経営上の問題を抱えるケースも増加していることが分かります。
参照元:厚生労働省「美容業の実態と経営改善の方策 」
美容室でM&Aする場合の傾向
近年では、美容室をM&Aするケースが増加しています。事業拡大を目指す企業や、異業種の参入が増加しているからです。また、美容室を持つ企業が、アイラッシュサロンのように、美容室業界に拡大して事業を進めるケースも増えています。後継者不在や経営難をきっかけに、今後も美容室でのM&Aは増加していくでしょう。
美容室をM&Aする方法
美容室をM&Aするためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、美容室のM&Aで利用される方法を3つ紹介します。
- 居抜き
- 事業譲渡
- 株式譲渡
居抜き
美容室のM&Aで多い方法が、居抜きです。居抜きとは、店舗を経営している状態そのまま、売却を行うことを指します。居抜きのメリットは、内装や設備をそのまま売却できる点です。原状回復に必要な工事も不要になります。また、買い手側も、購入後すぐに事業を始めることができます。注意点は、土地や建物を賃貸契約している場合です。この場合、賃貸主に居抜きの許可を得る必要があるため、覚えておきましょう。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社が持つ事業全体、または事業の一部を譲渡する方法です。譲渡する範囲を、個別に決める特徴があります。たとえば、美容室の場合、1店舗を譲渡して、別の店舗は売り手が所持したままにするケースもあります。このように、事業譲渡の場合、譲渡したい資産を個別に選択でき、交渉できる点がメリットです。
株式譲渡
株式会社の場合は、株式譲渡を行い、経営権を売却する方法もあります。株式譲渡の特徴は、店舗だけではなく、従業員やノウハウも獲得できる点です。株式の売買で手続きが済むため、個別の手続きや契約が少なくて済むメリットもあります。
売り手側で美容室をM&Aするメリット
売り手側で美容室をM&Aする場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には、次のようなメリットを期待できます。
- 後継者問題が解決する
- 売却資金が獲得できる
- 従業員の雇用を維持できる
後継者問題が解決する
美容室のM&Aにより、後継者問題が解決するメリットがあります。後継者がいない美容室も、安心できるでしょう。厚生労働省の調査からも分かるように、後継者問題に悩む美容室が多い状況です。M&Aを実施すれば、多くの買い手から、後継者を探すことができます。M&A仲介会社に案件探しを依頼するなどして、第三者へのM&Aも検討してみましょう。
売却資金が獲得できる
売却資金が獲得できる点も、美容室をM&Aするメリットです。経営者を引退したあとの、生活資金を準備できるでしょう。経営者引退で課題になるものが、引退後の生活資金です。年金減少もあり、老後の生活に悩む経営者も増加しています。美容室をM&Aできれば、まとまった資金が獲得でき、老後の生活も安心できます。専門家のアドバイスをもらいながら、より高い値段で売却できるように交渉しましょう。
従業員の雇用を維持できる
従業員の雇用を維持できる点も、M&Aのメリットです。従業員の雇用も合わせて、後継者に引き継いでもらえます。M&Aで交渉する場合、従業員の雇用を交渉内容に入れる企業が多くあります。また、買収側も、人員確保を目的にM&Aを行うケースも多い状況です。もし、廃業してしまうと、従業員を解雇するしかありません。このように、従業員の雇用を維持できる点も、美容室のM&Aを行うメリットです。
買い手側で美容室をM&Aするメリット
買い手側でM&Aを行う場合も、メリットを知っておくと優位に交渉を進めることができます。ここでは、買い手側で美容室をM&Aするメリットを紹介するため、参考にしてください。
- 事業拡大につながる
- 新規参入のハードルが下がる
- 競合他社が減少する
- 経験者を獲得できる
事業拡大につながる
美容室のM&Aは、事業拡大につながります。新規で店舗を出店するよりも、素早く拡大できるでしょう。M&Aで買収ができれば、設備や従業員をそのまま獲得できるケースもあります。新規で出店してしまうと、店舗準備に時間が掛かることでしょう。このように、M&Aを行うことで、事業拡大につながり、事業を早く動き出せる点がメリットです。
新規参入のハードルが下がる
新規参入を考えている企業の場合、M&Aだと新規参入のハードルが下がります。すでに事業が行われて、売上が出ている企業を買収できるからです。たとえば、新規参入を行う場合、参入しても利益が出ないリスクもあります。一方で、M&Aの場合、利益の出ている企業を獲得できます。このように、新規参入の企業でも、M&Aだと参入しやすい点がメリットです。売上が予測できる状態で買収できることは、買い手企業が動きやすくなるでしょう。
競合他社が減少する
競合他社を減らせる点も、M&Aのメリットです。競合他社とM&Aを行えば、ライバルを減らし、自社を拡大できます。事業で課題になるものが、ライバルの存在です。美容室の場合、同じエリアの顧客を取り合うことになるでしょう。M&Aで競合他社を獲得できれば、ライバルを減らし、自社の売上に変えられます。このように、競合他社を減らせる点も、M&Aのメリットです。
経験者を獲得できる
M&Aを行えば、経験者を獲得できるメリットもあります。また、美容室ならではの人気スタイリストを獲得できるケースもあるでしょう。事業を行うためには、経験者の力は欠かせません。M&Aであれば、新しく採用せずに、売り手の従業員を雇用できます。また、従業員に顧客がついているケースも多く、顧客の獲得、継続も期待できます。
美容室をM&Aする場合の相場
美容室をM&Aする場合、気になるのが相場です。美容室の相場は、1店舗あたり、数百万から1000万になると覚えておきましょう。ただし、美容室の規模や経営状態、市場次第でも価格は変わってきます。M&A仲介会社のような、M&A専門家のアドバイスを参考に、相場を判断するようにしましょう。
売り手側で美容室をM&Aする場合のポイント
M&Aを成功させるためには、ポイントを意識して進めることが大切です。売り手側で美容室のM&Aを行う場合には、次のようなポイントを意識しましょう。
- 価値の高いタイミングでM&Aを行う
- 自社の強みをアピールする
- 店舗や収支データを用意する
- 相場を把握する
- 専門家に相談する
価値の高いタイミングでM&Aを行う
売り手側の場合、価値の高いタイミングでM&Aを行いましょう。タイミングを間違うと、低い価格で売却してしまいます。たとえば、美容室業界のM&Aが活発な時期であれば、買い手も多く、交渉もしやすくなるでしょう。専門家のアドバイスを聞きながら、M&Aを行うタイミングを見計らうことも大切です。
相場を把握する
買い手を見つけるために、美容室のM&A相場を把握しましょう。また、相場を把握しないことで、損をするケースもあります。たとえば、相場よりも高い値段で売却を考えても、なかなか買い手は見つかりません。一方で、相場より安くしてしまうと、損をしてしまいます。適切な価格でM&Aを行うためには、相場を把握しておく必要があります。M&A仲介会社のように、多くの情報を持っている専門家に相談してみましょう。
自社の強みをアピールする
売り手側でM&Aをする場合は、自社の強みをアピールしましょう。強みをアピールできるほど、買い手の注目を集めやすくなります。たとえば、「他社よりも安い価格で利益が出ている」「最新の設備を導入している」などのアピールが有効です。ほかにも、立地面の良さで、アピールにつながることもあります。自社の強みを明確にして、アピールに活かしましょう。
店舗データや収支データを用意する
売り手側の場合は、店舗データや収支データを用意するようにしましょう。データが準備されていることで、交渉を進めやすくなるからです。たとえば、収支データが用意されており、将来の収支予測まで立てられる美容室であれば、買い手も安心できます。一方で、魅力があっても、収支が不透明な美容室は、リスクを感じて避けられてしまうでしょう。このように、売り手側で美容室のM&Aを行う場合は、店舗データや収支データを用意しましょう。信頼できるデータがあれば、交渉も有利に進められます。
専門家に相談する
M&Aを成功させるためには、専門家のアドバイスが欠かせません。まずは、専門家に相談するところから始めましょう。たとえば、案件を探す場合には、自社の人脈ではなかなか見つかりません。M&Aの案件を所持する、M&A仲介会社の協力が求められます。また、法律は弁護士、税金は税理士など、M&Aの成功にはさまざまな専門家が必要です。M&Aを理解しないまま進めると、法的なリスクやトラブルも発生するため、専門家に相談しましょう。
買い手側で美容室をM&Aする場合のポイント
M&Aを行う際は、買い手側でも意識するポイントがあります。買い手で美容室をM&Aしたい場合は、次のようなポイントを意識しましょう。
- 簿外債務に注意する
- 人材の再契約に注力する
- シナジー発生を意識する
- 専門家に協力を仰ぐ
簿外債務に注意する
買い手側で美容室をM&Aする場合、簿外債務に注意しましょう。簿外債務とは、帳簿上では把握できない、債務やリスクのことです。売り手側がリスクを隠し、販売するケースもあります。簿外債務を防ぐためには、デューデリジェンスを実施しましょう。デューデリジェンスを徹底しておくと、最終契約までにリスクを発見できます。デューデリジェンスの実施は、見落としを防ぐためにも、M&A仲介会社などの専門家に依頼しましょう。
人材の再契約に注力する
美容室のM&Aを行う場合、人材の再契約に注力しましょう。売り手側の従業員が、契約を拒否するケースもあるからです。たとえば、「M&Aの説明が不十分だった」「買い手企業が信用できない」などの理由で、契約したくてもできないケースがあります。買い手企業にとって、従業員との契約ができないことは、痛手になるでしょう。再契約をするためには、売り手の従業員に対して説明を行い、信用を得ることが大切です。人材を再契約できるように、力を入れましょう。
シナジー発生を意識する
美容室のM&Aでは、シナジー発生を意識しましょう。シナジーが発生すれば、既存事業にも良い影響を与えます。たとえば、新しい人材獲得により、既存従業員の能力やスキルが上がるケースもあります。また、ノウハウを共有した結果、事業全体が成長するケースもあるでしょう。M&Aを行う際には、シナジー発生の意識が大切です。シナジーがある企業を、買収先に選びましょう。
専門家に協力を仰ぐ
買い手側の場合も、専門家に協力を仰ぎましょう。専門家のアドバイスを受けることで、M&Aが成功しやすくなります。たとえば、交渉のアドバイスを受けることで、より安く買収できるケースもあります。また、手続きや契約に関して相談を行うことで、法律面のトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。M&Aの手続きは複雑な場合が多く、自社だけですすめることは大変です。M&A仲介会社や弁護士のように、専門家のアドバイスを受けましょう。
美容室でのM&Aには仲介会社が不可欠な理由
美容室でのM&Aには、M&A仲介会社が欠かせません。ここでは、M&A仲介会社が不可欠な理由を3つ紹介します。
- M&Aに必要な情報が集まる
- M&Aの案件を紹介してもらえる
- M&A全体のアドバイスがもらえる
M&Aに必要な情報が集まる
M&A仲介会社を活用すると、M&Aに必要な情報が集まります。M&Aをどこから始めて良いか分からない経営者も、安心できるでしょう。M&Aの買い手も売り手も、M&A未経験の場合がほとんどです。自社で進めたくても、情報が少なく、困ってしまいます。M&A仲介会社であれば、実績も多く、新しい情報も集まります。M&Aに必要な情報を得るためにも、M&A仲介会社を利用しましょう。
M&Aの案件を紹介してもらえる
案件を紹介してもらえる点も、M&A仲介会社が必要な理由です。自社だけで案件を探しても、簡単には見つかりません。たとえば、自社で案件を探し、1社見つかったとします。しかし、「案件が自社に合っているか」「良い取引先かどうか」を比較できないでしょう。無理矢理M&Aを行った結果、失敗する可能性もあります。一方で、M&A仲介会社であれば、豊富な案件を紹介してもらえます。複数から案件を選ぶことで、より自社に合った案件を見つけられるでしょう。
M&A全体のアドバイスがもらえる
M&A全体のアドバイスがもらえる点も、M&A仲介会社のポイントです。ほかの専門家の場合、得意分野が偏ってしまいます。たとえば、弁護士であれば法律の専門家です。しかし、案件の紹介はしてもらえないでしょう。ほかにも、税金は税理士がサポートしてくれます。しかし、デューデリジェンスのアドバイスは、税理士ではできません。このように、M&A仲介会社であれば、M&A全体のアドバイスがもらえます。案件探しから契約まで、一貫してサポートしてもらえることは、M&Aを成功させるために大切です。
美容室のM&A事例
美容室のM&Aを行うために、過去のM&A事例も知っておきましょう。ここでは、過去に行われた、4つのM&A事例を紹介します。
日本産業推進機構
2018年、日本産業推進機構は、レイフィールド株式会社との資本業務提携を行いました。日本産業推進機構は、経営支援をメインに行う企業です。一方で、レイフィールド株式会社は全国で55店舗を経営する、ビューティーサロンでした。日本産業推進機構は、このM&Aにより、レイフィールド株式会社の収益強化、コンプライアンス体制の強化などを目指すとしています。
参照元:日本産業推進機構「レイフィールド株式会社とNSSK IIとの資本業務提携について」
CLSA キャピタルパートナーズ
2018年、CLSA キャピタルパートナーズは、Aguグループの株式を過半数獲得したと発表しました。Aguグループは全国に271店舗を所持する、大規模の美容室チェーンです。CLSA キャピタルパートナーズは、3名の取締役をAguグループに派遣し、フランチャイズ支援や出店サポートを行うとしています。
参照元:CLSA キャピタルパートナーズ
「株式会社ロイネス、B-first 株式会社とサンライズ・キャピタルの資本提携について」
株式会社ヤマノホールディングス
2019年、株式会社ヤマノホールディングスは、株式会社L.B.Gを連結子会社化したと発表しました。株式会社ヤマノホールディングスは、美容室事業を展開している企業です。また、株式会社L.B.Gも美容室を首都圏を中心に展開しており、同業同士のM&Aになりました。株式会社ヤマノホールディングスは、このM&Aを機に、経営ノウハウの提供、人材教育支援の強化などを行うと表明しています。
参照元:株式会社ヤマノホールディングス「株式会社L.B.Gの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
株式会社アルテサロンホールディングス
2014年、株式会社アルテサロンホールディングスは、株式会社ダイヤモンドアイズの全株式を取得し、子会社化すると発表しました。株式会社アルテサロンホールディングス、株式会社ダイヤモンドアイズともに、アイラッシュサロンを運営しています。女性の社会進出が進むなか、美容室業界でのシェア拡大を目的にM&Aを行ったと表明しています。
参照元:株式会社アルテサロンホールディングス「株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」
まとめ
美容室業界では、M&Aが増加傾向にあります。経営者不足に悩む美容室が多く、M&Aを利用して後継者を見つけるからです。また、経営難に悩む美容室も増え、大手にM&Aで買収される機会も増えてきました。美容室でM&Aを成功させるためには、M&Aの情報や知識を増やし、交渉を行うことが大切です。そのために、M&A仲介会社のような専門家に相談してみましょう。M&Aは複雑で、情報収集も大変です。専門家の協力を受けながら、M&A成功に向けて取り組みましょう。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、美容室のM&Aにも対応したM&Aサービスを提供する仲介会社です。
美容室をはじめとした各領域で実績を積み重ねたコンサルタントが、相談から成約まで一貫してサポートを行います。
料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。M&A成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。相談に関しては、無料で実施しています。 美容室のM&Aを検討している際には、お気軽にお問い合わせください。