介護事業を買いたいときに必見のメリット・デメリットとM&A事例7選

2024年8月16日

介護事業を買いたいときに必見のメリット・デメリットとM&A事例7選

このページのまとめ

  • 介護事業のM&A件数は増加傾向にある
  • 相性の良い事業や適正価格を見極められないと介護事業買収に失敗する恐れがある
  • 介護事業を買収するメリットはスムーズに事業拡大や新規参入ができること
  • 介護事業を買収する際には目的を整理し広く情報収集をすることが重要である
  • 確実に介護事業のM&Aを進めるためには仲介業者の利用も検討する

介護事業を買いたいけれど、どのような企業を選べば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。実際に自社にあった事業でないと、思ったようなシナジーが得られない恐れがあります。

介護事業の買収を成功させるためには、業界の基本的な情報やメリット・デメリットなどを知っておくことが大切です。本記事では、介護事業業界の動向や介護事業を買いたいときに知っておきたいポイント、M&A事例などを解説します。

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介護事業とは 

介護事業とは、介護が必要な人々に対し、日常生活のサポートや住居環境を提供するサービスを行う事業のことです。高齢化社会が進んでいることもあり、介護事業者の利用者は増加しています。

サービス内容は、老人ホームのように入居して介護サービスを受けられるようにするものや、職員が利用者のもとへと赴いて介護を行うものなど、さまざまです。

介護事業業界の動向

高齢化社会が進んで介護サービスの利用者が増加している現代では、介護事業の市場が拡大傾向にあります。高齢化に伴い利用者が増加し、利用者定員に達して順番待ちになっている事業所も多いです。

今後も拡大し続けることが予想されており、参入を希望している企業も増加しています。

その一方で、利用者を確保できずに廃業に追い込まれている事業所も多数存在しています。大手企業による新規参入も増えており、経営を継続するためには、優秀な人材の確保やサービスの向上に力を入れることが必要です。

介護事業の業界が抱える課題

介護事業の業界は、2025年問題に直面しています。2025年問題とは、2025年には日本における75歳以上の人口が800万人を超え、超高齢化社会となる事態のことです。超高齢化社会では労働人口が減少して働き手が少なくなる一方で、介護を必要とする人口は増加します。そのため、介護業界全体が人材不足で悩まされるでしょう。

2025年問題に向けて、介護業界は早急に対策を始めることが求められます。

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介護事業のM&Aは増加傾向にある

超高齢化社会の到来に向けて需要が増えると見込まれている介護業界では、M&Aが活発化しています。

ここでは、介護事業のM&Aが増加している理由を、買い手と売り手両方の立場から解説します。

介護事業を買いたい企業が増加する理由

介護事業を買いたい企業が増加する理由は、介護事業が今後も成長しやすい市場だからです。日本は今後も高齢化社会が進むことが予測されます。介護が必要な人口は増え続け、介護事業の需要も高まっていくでしょう。新規参入あるいは事業拡大をする価値がある市場です。

介護事業に新たに参入したり、さらに事業を拡大したりしたい場合、M&Aが有効です。介護事業に関するノウハウや従業員、介護施設などを手早く獲得できます。

ゼロから介護事業を始めるよりも低いコストでスタートできるため、介護事業を買いたい企業が増加しています。

介護事業を売りたい企業が増加する理由

介護事業を売りたい企業が増加する理由の1つは、介護事業の市場が激化しているからです。大手の参入により、競争に負けてしまう中小企業が増加しています。サービスや待遇の向上に注力できなかった場合、利用者および人材が流出してしまうこともあるでしょう。その結果、介護事業を継続することが難しい状態にまで陥ってしまうことがあります。

また、後継者問題も介護事業を売りたい企業が増加している理由です。経営者の高齢化に直面し、後継者不在で親族内の事業継承が実施できないこともあります。その場合、介護事業を継続するためにM&Aが事業承継の手段として選ばれます。後継者問題に悩む経営者は依然として多いため、介護事業を売りたい企業が増加するでしょう。

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介護事業のM&Aが失敗してしまう原因

少子高齢化が進む昨今において、介護業界に対する注目は高まっており、今後も高い需要が続くと予想されます。しかし、事前に十分な準備をせずに事業買収を進めてしまうと、期待した結果を得られない可能性があるでしょう。

介護業界のM&Aが失敗してしまう主な原因としては、次の2つが挙げられます。

  • 自社の戦略に合った事業を見つけられない
  • 適正な買収価格を見極めていない

それぞれのポイントを詳しく解説します。

自社の戦略に合った事業を見つけられない

事業買収においては、明確な経営戦略が欠かせません。介護事業であればなんでもいいと、行き当たりばったりでM&Aを進めてしまう場合は、詳細な検討ができず自社の進みたい方向性と異なる事業を選んでしまう可能性があるでしょう。

たとえば、介護食であってもおいしく、喜んでもらえるようなこだわりの商品の提供を目指している企業が、有料老人ホームの買収を計画しているとします。売却価格がマッチし収益性が望めるという理由で、介護サービスが自動化され効率性を売りとしている老人ホームを買収した場合、双方の方向性が異なりシナジー効果が期待できません。

事業買収は売り手とのタイミングも重要であるため、焦る気持ちが生じやすいですが、長い目で見た場合の利益を優先したい場合には、事前の準備段階をより重視することが必要です。まずは社内での戦略を再確認し、どのような事業が適しているのかをじっくりと検討するようにしましょう。

適正な買収価格を見極めていない

適正価格を見極められていないケースでも、介護事業の買収に失敗してしまう可能性が高まります。一見価値が高そうに見える事業であっても、自社とのシナジーがうまく生じなければ期待した効果を得られない恐れがあるでしょう。

介護事業の価値は、施設や設備だけではなく、職員のスキルに左右されます。数値としてわかる職員の人数や経歴だけではなく、実際の利用者からの評判や勤務態度などが、M&A後の利益に大きな影響を与えるのです。

M&Aによる人材の流出リスクまで考慮し、適正な買収価格を見極める必要があります。

また、価格が安いということのみを優先し、買収する事業を決めてしまうのも危険です。安い価格で売りに出されている事業の裏には、何かしらの理由があるケースが多いでしょう。

買収後の自社とのシナジー効果をしっかりと検討したうえで、適正価格で事業を買収できるように準備を進めることが重要です。

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介護事業を買う5つのメリット 

ここでは、介護事業を買うメリットを5つ紹介します。

  1. 既存の設備をそのまま利用できる
  2. 既存の従業員を雇用できる
  3. 利用者がすでに存在している
  4. シェアの拡大・新規参入がしやすい
  5. 総量規制がある介護施設の運営ができる

以下で詳しく解説します。

1.既存の設備をそのまま利用できる

介護事業を買うメリットの1つは、既存の設備をそのまま利用できることです。通常、何もない状態から事業を始める場合は、設備の購入費用や準備期間が必要です。一方で、介護事業をM&Aによって買収することができれば、稼働している設備を獲得できます。準備が整った状態なのですぐに事業を始められます。

2.既存の従業員を雇用できる

買収先の従業員をそのまま雇用できる点も、介護事業を買うメリットです。すでに実績と経験を持つ従業員を雇用できるため、事業をすぐに軌道に乗せることができます。また、ノウハウを持った従業員を指導役に配置することで、ほかの従業員に知識・技術を獲得させることも可能です。

そのほか、新しく雇用を行う場合にかかる時間・費用を削減できる効果もあります。

3.利用者がすでに存在している

介護事業を買うメリットは、利用者を引き継ぐことができる点です。

ほとんどのケースで、M&Aでは利用者も引き継ぎます。M&A後も継続して利用者が介護サービスを利用してくれるため、一定数の顧客を確保することが可能です。顧客基盤が築かれており、新規顧客を焦って探す必要がありません。廃業の危機に脅かされることなく、介護事業を成長させていくことができます。

4.シェアの拡大・新規参入がしやすい

介護事業を買うメリットの1つは、シェアの拡大が図れることです。

自社ではまだ開拓していないエリアや、まだ行っていない介護事業を持つ会社をM&Aをして買収すれば、開拓するコストを抑えたままシェアを拡大できます。

また、新規参入がしやすいことも介護事業を買うメリットです。新規参入したいと考えている領域ですでにシェアを広げている会社を買収することによって、設備やノウハウなどはもちろん、技術を持った従業員や顧客からの認知度など、多くのものを獲得できます。スムーズに新規の介護事業が始められるでしょう。

5.総量規制がある介護施設の運営ができる

介護事業を買うメリットに、総量規制がある介護施設に参入しやすくなることが挙げられます。

総量規制とは、指定の介護施設を新しく開設する場合には、都道府県知事・市町村長の許可が必要になるルールのことです。介護保険法によって定められています。総量規制により、必要以上に施設ができたと判断された場合には、都道府県知事・市町村長側が事業所の指定を拒否することが可能です。

総量規制の対象は、介護老人福祉施設や介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームなどです。これらの介護施設については、総量規制によって参入障壁が上がっています。

しかし、都道府県知事・市町村長からの指定をもともと受けている介護施設を買収すれば、総量規制の影響を受けることなく事業をスタートさせることが可能です。

参照元:
e-Gov法令検索「介護保険法
e-Gov法令検索「老人福祉法
愛知県「関係条文等(介護保険施設等の整備計画について)

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介護事業を買う2つのデメリット  

介護事業を購入する場合、既存の事業を購入するからこそのデメリットもあります。

  1. シナジーに失敗する可能性がある
  2. 従業員が離職する恐れがある

発生しうるデメリットはこの2つです。

1.想定していたシナジーが得られない可能性がある

介護事業の購入後、期待していたシナジーが獲得できないことがあります。購入した結果、損害が多くなるリスクも知っておきましょう。

たとえば、M&Aによって事業者が変わることにより信頼を失い、利用者が減ってしまうケースもあります。また、社風や社内システムの統合がうまくいかず、シナジーを発揮できないケースも出てくるでしょう。

想定どおりのシナジーを得られるよう、統合後のプロセスについてもあらかじめ計画を立てておくことが大切です。

2.従業員が離職する恐れがある

M&A後、もともと売り手側に雇われていた従業員が離職する恐れがあります。

従業員が離職する原因の例は、「給与・労働条件が悪くなった」「買収に関して十分な説明がなかった」「買い手側の従業員を優遇した」などです。

既存の従業員に対する対応や説明は、必ず行うようにしましょう。また、不平等な扱いをすることは避けてください。

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介護事業を売る3つのメリット 

ここでは、介護事業を売る側が得られる3つのメリットを紹介します。

  1. 経営が安定しやすい
  2. 顧客を守ることができる
  3. 後継者問題が解消される

それぞれの詳しい解説は以下のとおりです。

1.経営が安定しやすい

介護事業の売却をすることには、経営が安定しやすいメリットがあります。

介護事業を買いたいと考える企業は、資金に余裕があり、さらなる発展を目指している場合が多いです。介護事業への意欲と資金力を持った企業に売却することができれば、介護事業を改善・向上させてくれることが期待できます。

2.顧客を守ることができる

介護事業を売却することで、顧客である取引先や利用者を守ることにつながります。

もし、売却できずに介護事業が廃業になってしまった場合、取引先との契約がなくなったり、利用者にサービスを提供できなくなったりします。一方で、介護事業の売却に成功すれば、顧客や利用者を引き継ぐことが可能です。

3.後継者問題が解消される

介護事業を売却して経営権が移れば、後継者問題に悩むことがなくなります。売却先の企業が、後継者として運営してくれます。

現代は、経営層の高齢化が進み、後継者問題が増加しています。経営者は引退したくても、後継者がいないことで引退できなくなっている状況です。最悪の場合、後継者が見つからず廃業となってしまうケースもあるでしょう。介護事業を買収してくれる企業が見つかれば、後継者問題を解決できます。

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介護事業を売る3つのデメリット  

介護事業の売却には、デメリットも発生します。具体的には、次の3つに対して注意が必要です。

  1. 希望価格で売却できないことがある
  2. 従業員の待遇が悪くなる可能性がある
  3. 顧客が離れる恐れがある

デメリットを予測し、あらかじめ対策を立てておきましょう。

1.希望価格で売却できないことがある

介護事業の売却では、希望価格で売却できない可能性があります。納得していないにもかかわらず流されて売却に踏み切ってしまうことのないよう、売却しても良いと思える最低価格をあらかじめ決めておくことがおすすめです。

希望通りの価格で売却するためには、自社の価値を高める必要があります。また、専門家への相談も有効です。将来性がある会社だと思ってもらえるよう、自社を磨き上げていきましょう。

2.従業員の待遇が悪くなる可能性がある

介護事業売却の結果、従業員の待遇が悪くなる可能性があります。

多くの場合、M&A後に従業員の待遇が良くなることがほとんどですが、稀に待遇が下がってしまうことがあります。M&Aの締結までに、従業員の給与や労働条件についてしっかり確認しておきましょう。

また、売却後に介護事業がうまくいかず、その結果やむを得ず待遇が悪化してしまうパターンもあります。自社の介護事業を任せられる相手なのか、慎重に見極めてください。

3.顧客が離れる恐れがある

介護事業を売却して事業者が変わることで、顧客が離れる恐れがあります。

もしM&Aに関する説明が不足している状態で急に経営母体が変更されたら、顧客は不信感を抱いてしまいます。信頼を失わないためにも、取引先や利用者に対して、事前にM&Aについて説明をして、納得してもらえるようにしてください。

関連記事:事業買収とは?買い取る手法や目的、メリット・デメリットを解説

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介護事業をM&Aで買いたいときの相場 

規模やエリアによって変動はありますが、介護事業M&Aの相場は首都圏の場合で3000万円から1億円程度といわれています。

基本的な相場は、土地などの資産に営業利益を加えた金額です。次のような計算で算出できます。

時価純資産額+営業利益3年から5年分=介護事業のM&A相場

たとえば、時価純資産額が1000万円、1年間の営業利益が500万円で5年分を考慮する場合、次のような計算で相場を算出可能です。

1000万円+500万円×5年分=3500万円

もしより正確な相場を知りたい場合は、M&Aの専門家に尋ねることがおすすめです。

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介護事業M&Aにかかる費用の内訳

介護事業のM&Aを行う場合、仲介会社を利用する場合が多く、仲介会社の費用がかかります。

費用の種類は以下のとおりです。どの費用がかかるかは仲介会社によって異なります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 月額報酬
  • 中間金
  • 成功報酬
  • バリュエーション費用
  • デューデリジェンス費用

それぞれ説明します。

相談料

相談料とは、M&Aの仲介を依頼する前の相談時にかかる費用です。

相談料は無料にしているM&A仲介会社が多い傾向にあります。

着手金

着手金とは、M&Aの仲介の契約を結んだときに支払う費用です。着手金の金額は、M&Aの内容から判断して決定されます。

着手金を無料とするM&A仲介会社が増えてきています。

月額報酬

月額報酬とは、M&A仲介会社に毎月支払う顧問料です。「リテイナーフィー」とも呼ばれます。契約中は毎月支払いが発生するため、成約までに時間がかかりそうな場合は注意が必要です。

月額報酬を設定しているM&A仲介会社は多くありません。

中間金

中間金とは、M&Aの成約までのプロセスで支払う費用です。中間金を支払うタイミングは仲介会社に委ねられていますが、一般的には基本合意契約を締結したときが支払いのタイミングです。中間金の金額は固定されているパターンや、成功報酬の10~20%に設定されているパターンなどがあります。

中間金を無料にしているM&A仲介会社も存在します。

成功報酬

成功報酬とは、M&Aが成約したときに発生する費用です。成功報酬は「レーマン方式」という方式を用いて算出されることが多いです。

取引金額が少額だった場合、レーマン方式は適用されません。M&A仲介会社がそれぞれ設定している最低報酬金額を支払うことになります。

バリュエーション費用

バリュエーション費用とは、企業価値評価の依頼にかかる費用です。

バリュエーション費用を個別に設定せず、成功報酬に含めている場合もあります。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンス費用とは、売り手側の会社に関する調査を依頼するときにかかる費用です。買い手側の会社に支払いが発生します。デューデリジェンス費用の金額は、調査内容によって変動します。

デューデリジェンス費用は、調査を実施しなければ発生しません。しかし、価値を正しく算定したり隠されたリスクを把握したりするためにも、実施することがおすすめです。

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介護事業を買いたい際の6つのポイント

ここでは、介護事業を買いたい際のポイントを6つ紹介します。

  1. 買う目的を整理する
  2. 案件情報を幅広く入手する
  3. 行政手続きを確認しておく
  4. 運営状況を確認する
  5. 売り手とのコミュニケーションを重視する
  6. 従業員や利用者に説明を行う

ポイントを押さえて実行に移し、介護事業の買収を成功させましょう。

1.買う目的を整理する

介護事業を買いたいときは、買う目的を整理しましょう。

M&Aを行うときは、戦略を立てることが大切です。M&Aの戦略を立てるためには、目的を定めておく必要があります。

介護事業を買いたい目的によって、選択すべきM&Aの手法や買うべき介護事業の種類が異なります。「エリア進出したい」「介護付き有料老人ホームの事業を始めたい」など、介護事業を買うことによって叶えたい目的を明確にして、適切な方法を選びましょう。

2.案件情報を幅広く入手する

購入するための案件情報は、幅広く入手しましょう。案件情報が多いほど、自社の目的に合った案件に出会える確率が高まります。

もし案件が少ないと目的に合う企業が見つからず、M&Aの実施が先送りになったり購入に失敗したりすることもあります。無理に購入した結果、シナジーが発揮されないこともあるでしょう。

M&Aの案件情報を探すときは、最初はあまり絞らず、興味を持った会社をリストアップしていきましょう。その後、買いたい目的と照らし合わせて相手会社の候補を絞っていくことがおすすめです。

また、案件を紹介してくれるM&Aの仲介会社もあります。候補先を広げたい場合は活用してください。

3.行政手続きを確認しておく

介護事業を買いたい場合は、行政手続きの確認をしっかり行いましょう。介護事業を営むためには、許認可が必要です。買収予定の企業がどのような許認可を持っているか確認してください。

また、許認可がある場合は自社への引継ぎが必要になります。手続きには時間がかかるケースもあるため、やるべき行政手続きを事前に確認してください。

4.運営状況を確認する

買いたい介護事業の運営状況を確認しておきましょう。あらかじめ把握しておくことで、問題を早期発見したり、買収後のリスクを抑えたりすることができます。介護事業の売り上げや稼働率、利用者層、設備状況などについて調査してください。

5.売り手とのコミュニケーションを重視する

介護事業を買いたい際には、売り手とのコミュニケーションを重視しましょう。コミュニケーションを密に取ることで、交渉が円滑に進みやすくなります。譲渡側の会社は、自社に愛着を持っていたり、売却する介護事業の関係者に責任を負っていたりします。そのため、売却に対して慎重な姿勢です。コミュニケーションを取るなかでM&Aに対して真摯に向き合っている態度が伝われば、売り手側も売却に前向きになってくれます。一方で、買い手の対応が悪ければ売り手からの信頼を失い、破談になる可能性もあるでしょう。

介護事業を買うためには、売り手とのコミュニケーションが重要です。誠実な対応を心掛けましょう。

6.従業員や利用者に説明を行う

従業員や利用者に対して、丁寧に説明をしてください。説明を行って従業員・利用者に納得してもらうことで、買収後の動きがスムーズになります。

M&Aに関する知識がなく、漠然とした不安を感じる人もいます。

もし説明をする機会を設けないまま介護事業を買った場合、M&Aに不満を感じた従業員が退職してしまう恐れがあります。M&Aでは優秀な人材の確保を目的の1つにしていることも多く、従業員が辞めてしまうことは大きな損失です。

また、介護事業が提供するサービスは利用者の生活に直結しています。説明不足によって信頼を失ってしまった場合、買収に対する反対運動や他社サービスへの流出が起こってしまうかもしれません。引き続き安心して利用してもらえるように、しっかり説明をしましょう。

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介護事業を買いたい際の流れ

介護事業を買いたい場合の、基本的な流れを知っておきましょう。

介護事業の買収は、次のような流れで行われることが一般的です。

  1. 買い手と売り手がマッチングする
  2. 事業価値を算出する
  3. 契約を締結する

順にみていきましょう。

1.買い手と売り手がマッチングする

介護事業の購入では、買い手と売り手のマッチングから始まります。M&Aを検討していることが外部に漏れないよう、マッチングは匿名で実施されます。

まず売り手側の会社はノンネームシートを作成します。ノンネームシートとは、匿名の状態でM&A情報がまとめられた資料です。買い手側の会社は、ノンネームシートを見て買収先を選定します。

ノンネームシートを確認したうえで「買いたい」と意思表示をした場合のみ、秘密保持契約を結び、M&Aが始まります。

2.事業価値を算出する

買いたい介護事業の事業価値を算定します。売り手の施設や資産にどれだけの価値があるか、調査しましょう。

介護事業の場合、事業価値は次の計算式で算出されることが一般的です。

時価純資産額+営業利益3年から5年分=介護事業のM&A相場

事業価値算定で出た金額どおりに価格が決まるわけではありませんが、交渉の際の目安になります。

3.契約を締結する

交渉に移り、双方が納得できれば契約に移ります。条件を提示し合い、合意を行いましょう。合意ができたら「基本合意契約書」を作成し、契約を締結します。また、契約を成立させる前には、「デューデリジェンス」を実施し、購入予定の事業に問題はないか、適正価格かどうかなどを改めて調査しておきましょう。

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介護事業を買う際にM&A仲介会社を使う3つのメリット

介護事業を買いたい際には、M&A仲介会社を利用するケースが一般的です。仲介会社を利用すれば、M&Aに関するさまざまなサポートを受けられます。

ここでは、M&A仲介会社を活用する3つのメリットを紹介します。

  1. 案件情報をもらえる
  2. M&Aに関するアドバイスを受けられる
  3. 交渉を任せられる

メリットは主に3つです。それぞれ解説します。

1.案件情報をもらえる

M&A仲介会社を利用するメリットは、豊富な案件情報を紹介してもらえることです。自社だけでM&Aを進めるよりも、目的に合った案件を見つけやすくなるでしょう。

M&A仲介会社は独自のネットワークによって介護事業を売却したい企業の案件を集めています。自社の人脈よりも、豊富な案件を紹介してもらえます。M&Aを成功させるためにも、M&A仲介会社を活用し、より多くの案件情報から選択できるようにしましょう。

2.M&Aに関するアドバイスを受けられる

M&A仲介会社に相談すると、M&Aに関するさまざまなアドバイスを受けることができます。M&Aに慣れていない企業でも、安心して行動できるでしょう。

M&Aを進める工程では、買いたい介護事業の価値算定や、契約書の作成など、専門知識が必要とされる場面が多々あります。トラブルなく進めるために、実績と経験を持つ専門家の協力を得ることがおすすめです。

3.交渉を任せることができる

M&Aで大変な交渉を任せられる点も、M&A仲介会社を利用するメリットです。

M&Aを行う際は、M&Aだけではなく、通常の業務も進めなければなりません。自社だけで交渉を行うことが負担になってしまうケースもあるでしょう。また、交渉に慣れておらず、交渉が成立しない可能性も考えられます。安心して交渉を進めるためにも、M&A仲介会社の協力は重要です。

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介護事業を買いたい場合にM&A仲介会社を選ぶ3つのポイント

ここでは、介護事業を買いたい場合に利用する、M&A仲介会社の選び方を解説します。

M&A仲介会社を選ぶポイントは主に下記の3つです。 

  1. 介護事業のM&Aを成功させた実績がある
  2. 企業価値を正しく判断できる
  3. 豊富な案件情報を所持している

M&A仲介会社選びに失敗しないように、ポイントを知っておきましょう。

1.介護事業のM&Aを成功させた実績がある

介護事業のM&Aを成功させるためには、介護事業のM&A実績を持っている仲介会社を選ぶことが大切です。実績を持っていることは、介護事業のM&Aに関してアドバイスをする能力を持っているという裏付けになります。過去の事例や経験から、的確なアドバイスをしてくれるでしょう。

介護事業のM&Aでは、許認可や施設形態の違いなど、介護業界ならではの注意点があります。実績が豊富な仲介会社は介護事業のM&Aについて熟知しており、発生しやすいトラブルやリスクを防いでくれるでしょう。

2.企業価値を正しく判断できる

買いたい介護事業の企業価値を的確に判断できる能力を持っているM&A仲介会社を選びましょう。

介護事業のM&Aにおける価値算定を行う場合、施設や医療・介護関連の設備、専門性を持つ従業員などが資産に含まれます。適性な企業価値を算出するためには、一般的なM&Aの知識のほか、介護業界の知識が必要です。介護業界に精通しており、介護事業の企業価値を的確に判断できるM&A仲介会社を選んでください。

3.豊富な案件情報を所持している

介護事業を買いたいときは、介護関連のM&A案件情報を潤沢に持っている仲介会社を選ぶことがおすすめです。M&Aの相手候補が多ければ多いほど、マッチング率の高い相手と出会える可能性は高くなります。

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介護事業のM&A事例7選 

ここからは、介護事業におけるM&Aの事例を、次の2つの目的別にご紹介します。

  • 既存の事業を強化するためのM&A
  • 介護事業に新規参入するためのM&A

これまでに、どのような介護事業関連のM&Aが行われてきたかを知ることで、自社の事業買収をより深く検討できるはずです。既存事業を強化するためのM&A事例を4件と、介護事業に新規参入するためのM&A事例を3件解説します。

既存の事業を強化するためのM&A

すでに介護事業を行っている会社が、さらに強化するためにM&Aを実施することがあります。

高齢者向けに緊急通報のサービスなどを提供していた会社は、訪問医療を行っている会社を子会社化してサービス拡大を図りました。

また、病院向けにレンタル事業を営んでいる会社が、福祉用具のレンタル事業に注力している会社を子会社化し、事業の幅を広げたケースもあります。

今回は次の4つの事例を詳しく解説します。

  • 日本生命保険相互会社の介護事業等買収事例
  • ケア21の訪問介護事業買収事例
  • 学研ココファンの高齢者住宅事業等買収事例
  • QLSホールディングスの有料老人ホーム買収事例

日本生命保険相互会社の介護事業等買収事例

日本生命保険相互会社は1999年に業務提携を結んで以降、さまざまな形で協業を続けてきた株式会社ニチイホールディングスの買収を、2023年11月に実施しました。国民生活の安定と向上に寄与することを経営の基本理念に掲げている日本生命保険相互会社が同M&Aを実施した目的は、介護事業のさらなる活性化や生産性・持続性向上です。

人生100年時代といわれている昨今において、保険だけではカバーしきれない子育て支援やヘルスケア、シニア事業を積極的に推進しています。その一環として、介護事業で実績を積んでいた株式会社ニチイホールディングスの買収に至りました。

参照元:日本生命保険相互会社「株式会社ニチイホールディングスの株式取得に関する合意について

ケア21の訪問介護事業買収事例

株式会社ケア21は、2023年10月に有限会社トチギ介護サービスの訪問介護事業を譲受しました。同社は首都圏や近畿圏、名古屋・仙台・広島・福岡において訪問介護やグループホーム・介護付き有料老人ホームの運営を行っています。

トチギ介護サービスの訪問介護事業は東京都文京区をターゲットとしており、これまでカバーしきれなかったエリアに新規参入できるのがメリットです。東京都内の既存の事業所とうまく連携させることで、より多くの利用者ニーズに応える目的でM&Aが実施されました。

参照元:株式会社ケア21「有限会社トチギ介護サービスからの事業譲受に関するお知らせ

学研ココファンの高齢者住宅事業等買収事例

株式会社学研ココファンが、2023年9月に株式会社グランユニライフケアサービスの全株式を取得し、介護事業を買収した事例です。学研ココファンの親会社である学研ホールディングスは、教室・学習塾運営などを行う教育事業に加えて、高齢者住宅事業運営をはじめとする医療福祉事業を展開しています。

グループ内での介護事業を支えている学研ココファンは、多世代が支えあいながら地域の中で安心して暮らし続けられる社会づくりを目指して、サービス付き高齢者向け住宅事業を運営する企業です。M&A実施当時すでに、201拠点でサービスを提供していましたが、介護事業をより強化する目的で、京都・滋賀エリアの高齢者住宅事業等の継承に乗り出しました。

参照元:株式会社 学研ホールディングス・株式会社 学研ココファン「株式会社学研ホールディングス・株式会社ジェイ・エス・ビーとの業務提携及び株式会社学研ココファンによる株式会社グランユニライフケアサービスの株式取得に関するお知らせ

QLSホールディングスの有料老人ホーム買収事例

2023年8月に株式会社QLSホールディングスが、株式会社ふれあいタウン及び株式会社和みの全株式を取得し、子会社化しました。保育事業・介護福祉事業・人材派遣事業を主な柱として、すべての人に質の高い生活を届けることを目指して経営を展開している企業です。

現状では保育事業の比重が大きくなっていますが、介護福祉事業と人材派遣事業を保育事業以上に成長させることで、保育事業に依存しない経営体制構築を目指しています。介護事業で実績を残している2社を買収することで、サービス提供エリアを拡大し、ノウハウの共有やサービス品質の向上を期待したM&A事例です。

参照元:株式会社QLSホールディングス「株式取得(子会社の取得)に関するお知らせ

介護事業に新規参入するためのM&A

ほかの事業を行っている会社が新しく介護事業をスタートさせるためにM&Aを行う事例です。

住宅やオフィスなどの領域で不動産ビジネスを展開する会社が、介護付有料老人ホームを営む会社と資本提携契約を締結するケースも多くみられます。

このM&Aにより、介護施設を運営するノウハウを所持する企業とのシナジーが可能になります。超高齢化社会に向けて、高齢者向け住宅サービス参入を進められるようになりました。

具体的には、次の3つの事例をご紹介します。

  • テノ.ホールディングスのデイ事業買収事例
  • 東洋商事の高齢者住宅運営企業完全子会社化事例
  • パースジャパン福祉用具レンタル企業完全子会社化事例

自社の介護事業新規参入の参考にしてみてください。

テノ.ホールディングスのデイ事業買収事例

保育事業大手である株式会社テノ.ホールディングスが、2020年2月に株式会社トップランの介護事業を買収した事例です。株式会社テノ.ホールディングスでは、育児や家事、介護などでキャリアを諦めることなく働き続けるためのサポートを実施しています。

ターゲット層である女性のトータル的なサポートを充実させるために、株式会社トップランからデイサービス事業を買収し介護事業への新規参入を果たしました。介護事業の買収は、グループ全体の企業価値を高める効果も期待されています。

参照元:株式会社テノ.ホールディングス「(経過開示)当社連結子会社による事業譲受に関するお知らせ

東洋商事の高齢者住宅運営企業完全子会社化事例

2019年2月、東洋商事株式会社が介護サポートサービス株式会社の全株式を取得し、首都圏を中心とした施設系事業への進出を果たした事例です。同M&Aが実施された背景としては、介護サポートサービス株式会社の親会社である株式会社小僧寿しが、メイン事業に資源を集中させたいという狙いがありました。

東洋商事株式会社は業務用総合食品商社及び病院食や介護食の卸売を担っていましたが、サービス付高齢者向け住宅)の運営に新たに着手した形です。

参照元:株式会社小僧寿し「当社の連結子会社(孫会社)である介護サポートサービス株式会社の株式の譲渡及び特別利益の計上に関するお知らせ

パースジャパン福祉用具レンタル企業完全子会社化事例

2019年8月に株式会社パースジャパンが、福祉用具レンタル事業を展開する株式会社土浦メディカルを子会社化しました。同社は医療関連サービスを主力事業としていましたが、同M&Aによって介護事業に参入しています。

医療と介護という2つのカテゴリーの事業を並行して実施することで、大きな相乗効果が得られることが期待されました。

参照元:株式会社パースジャパン「「株式会社土浦メディカル」の子会社化に関するお知らせ

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まとめ

少子高齢化が進んでいる現代において、介護事業は将来性が高い分野として注目が集まっています。今後も、新たに介護業界に参入する企業は増えると考えられるため、M&Aの件数も増加するでしょう。

すでにビジネスが出来上がっている介護事業を買収することで、新規事業への参入ハードルが下げられるのが主なメリットです。ただし、介護事業であればどれでも成功するわけではありません。

自社との相性や将来的に得られるシナジーをしっかりと見極め、適正な買収価格で手続きを行う必要があります。M&Aには専門的な知識やノウハウが求められるため、仲介会社を利用するのも1つの手です。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社では、M&A全般をサポートしています。自社に合った事業を探したい場合や、M&Aを確実に進めたいと考えている場合に、トータル的なサポートを提供可能です。

各領域に精通したコンサルタントが在籍しており、必要な場面でアドバイスをおこないます。

料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。M&Aご成約まで無料で利用できます(譲受会社のみ中間金あり)。
介護M&Aをご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。