医療法人のM&A動向を解説!病院買収のスキームやメリット、事例も紹介

2023年10月10日

医療法人のM&A動向を解説!病院買収のスキームやメリット、事例も紹介

このページのまとめ

  • 医療法人M&Aは、専門性の高さや高額な相続税などがハードルになっている
  • 医療法人M&Aに対する国や民間のサポートは充実しつつあり、件数は増加中
  • 医療法人M&Aのスキームは主に6つで、出資持分譲渡や基金譲渡などが挙げられる
  • 医療法人M&Aのメリットは「後継者問題を解決できる」「地域に貢献し続けられる」など
  • 医療法人M&Aにおいては、主に時価純資産法を用いて価格相場を算定する

「医療法人・病院のM&Aをしたいけど、実際どうなの?」とお困りの方もいるのではないでしょうか?医療法人M&Aは一般企業よりもハードルが高く、後継者不在に悩む経営者も多数存在します。
本コラムでは、医療法人M&Aの実態やスキーム、相場の算定方法などを紹介。また、医療法人の類型や、類型の違いによる注意点についても解説しています。
医療法人M&Aの流れも紹介しているので、参考にして第一歩を踏み出しましょう。

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医療法人のM&Aの動向

日本において後継者問題は大きな課題となっていますが、医療法人においても例外ではありません。

医療法人の後継者不在率は比較的高い

帝国データバンクが2021年に公表した調査結果によると、「病院・医療」の業種の後継者不在率は70%弱でした。全国平均の61.5%と比べると高い後継者不在率です。
医療関係の経営者には、原則として国家資格である医師免許が求められます。
「病院・医療」の業種で事業承継を行うことは、ほかの業界で行うケースよりも比較的難しいといえるでしょう。

医療法人のM&Aは増加する見込み

後継者不足は引き続き解決すべき問題ではあるものの、「病院・医療」の業種も含め、後継者不在率は減少傾向にあります。

同調査における全国の後継者不在率61.5%は、過去10年で最も低い数字です。「病院・医療」の業種においても、2020年の後継者不在率と比較すると3%以上減っています。
少子高齢化の進行によって事業承継のニーズが高まっていくことに合わせて、国・民間のサポートサービスや補助金の整備が進められています。

支援策の充実により、今後もますますM&Aが活発に行われるでしょう。

参照元:
帝国データバンク『全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)』
帝国データバンク『全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)』

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医療法人の種類

「医療法人」の定義とは、医師あるいは歯科医師が常時勤務する医療施設の開設を目的に設立される法人のことです。医療法に基づき、病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院などの医療施設を開設しています。

医療法人では、役員として「理事」を3名以上と「監事」を1名以上置くことが必要です。役員になれるのは自然人のみです。法人は役員になれません。また、自然人であっても、医療法人と取引がある営利法人に所属する役員は原則就任できない決まりになっています。

医療法人は「財団医療法人」と「社団医療法人」の2つに分けられます。医療法人の中でも設立・運営に多額の財産が必要となる財団医療法人の割合は比較的少なく、医療法人の大半が社団医療法人です。

なお「社団医療法人」は、出資持分の有無により2つに分類されます。

財団医療法人

「財団医療法人」とは、個人あるいは法人からの寄付をもとにして設立された医療法人です。持分出資や基金拠出はありません。

財団医療法人では、理事の人数を超える「評議員」が設置されます。評議員とは、財団医療法人の運営方針や重要事項の決定を行う人です。

また、評議員は理事・理事会を監督する役割も担当しています。そのため、評議員は理事・監事・職員との兼任はできません。

社団医療法人

「社団医療法人」とは、人が金銭・資産を出資したり拠出したりすることによって集められた原資をもとに設立された医療法人です。

設立時に出資した人や基金を拠出した人は「社員」と呼ばれ、社員総会を構成します。自然人だけでなく、非営利の法人も社員になることが可能です。また、出資・拠出を行った人が基本的に社員になりますが、出資していなくても、社員総会決議を通せば社員として入社できます。

社団医療法人の社員は社員総会において1人につき1票の議決権を行使します。社員総会は株式会社の株主総会に相当する最高意思決定機関で、役員の選任・解任や社員の入社・除名の承認、定款の変更などを行います。

社団医療法人は、出資持分があるものとないものの2種類が存在します。

出資持分あり医療法人

出資持分とは、社団医療法人に出資を行った人が所有する財産権のことです。
「出資持分あり医療法人」とは、社団医療法人のうち、持分の出資によって設立された法人を指します。

2007年に第五次医療法改正があり、出資持分のある医療法人は新設できなくなりました。既に設立されている出資持分あり医療法人に関しては存続が認められており、「経過措置型医療法人」とも呼ばれています。

出資持分あり医療法人の場合、出資持分の払い戻しをしなければならない可能性があります。社員に払い戻しの請求権が発生するのは、出資をしている社員が辞めるときや、医療法人が解散するときです。
出資持分の払い戻しは、出資金額の割合に応じて行われます。払い戻しを受け取る対象は、出資した本人あるいは出資者の相続人です。

また、出資持分あり医療法人においては、社員が財産権を所有しています。医療法人の経営がうまくいっていて財産が増加している場合、払い戻し金額も増加します。

出資持分なし医療法人

「出資持分なし医療法人」とは、社団医療法人のなかでも出資持分がない医療法人のことを指します。
2007年の第五次医療法改正により出資持分の制度が廃止されたため、出資持分なし医療法人が新設されました。出資持分なし医療法人の設立費・運営費は、基金の拠出で賄われています。

出資持分なし医療法人では、基金の拠出者は払い戻しを請求する権利を持っていません。ただし、法人は拠出した人に対して返還義務を負っています。
拠出者への返還が発生した場合、拠出した金額が返還する上限額です。なお、経営不振などにより出資持分なし医療法人の純資産額が基金の総額を超えていない場合は、返還は行われません。

特定医療法人

「特定医療法人」とは、租税特別措置法に基づいて規定されている医療法人の種類の1つです。特定医療法人として認められるのは、財団医療法人あるいは出資持分がない社団医療法人のどちらかです。

また、公的に運営されていることに対して国税庁長官の承認を受けている必要があります。さらに、医療法人が行う事業が医療の普及・向上や社会福祉への貢献、その他の公益の増進に寄与していることも条件です。

特定医療法人の法人税には軽減税率が適用されます。

社会医療法人

「社会医療法人」とは、第五次医療法改正で生まれた医療法人の種類の1つです。社会医療法人は高い公益性を認められた医療法人です。通常の医療のほか、救急医療や災害時の医療、へき地での医療、周産期医療などを担っています。また、社会医療法人は第1種社会福祉事業や一部の収益業に取り組むことも認められています。

社会医療法人は、公費が投入されたり法人税が軽減されたりするなど、国からの優遇措置を受けることが可能です。

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医療法人の事業承継の3つの方法

医療法人が事業承継を行う方法は、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の主に3つです。

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • M&A

それぞれの方法について解説します。

1.親族内承継

子どもなどの親族に医療法人を承継します。医療法人の経営者は原則として医師である必要があるため、近親者が医師免許を持っていて、尚且つ医療法人を引き継ぐ意思がある場合に採択できる選択肢です。

後継者候補が親族であれば、社内外の関係者からの理解は比較的得やすいでしょう。

2.親族外承継

親族外で、経営者を最も近くで支えてきた人に医療法人を承継する方法もあります。

経営者の方針に賛成してともに医療法人を運営してきたため、意思をしっかり引き継いでくれる可能性が高いです。
また、すでに勤務しているほかの職員と良い関係性を築けていれば、トラブルが起こることなく円滑に引き継ぎを完了させられるでしょう。

3.M&A

M&Aとは、外部の第三者に医療法人を承継する方法です。
後継者問題が顕在する昨今、M&Aによって承継を行う事例が増えています。医療法人では、合併・事業譲渡・出資持分譲渡の手法によってM&Aを実施します。

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医療法人M&Aの価格相場を知る2つの方法

医療法人M&Aの価格相場を知る方法は、主に下記の2つです。

  • 時価純資産法
  • 年買法

なお、一般企業の売却価格の相場を算出する方法の1つに「類似会社比較法」がありますが、医療法人の価値算定においては基本的に使用されません。医療法人は上場できず、比較する対象がないためです。

また、大規模な営利企業における算定方法として用いられる「DCF法」も、非営利性を持つ医療法人のM&Aではあまり使われません。

医療法人の価値算定でよく用いられる「時価純資産法」「年買法」の2つの方法について解説します。

1.時価純資産法

「時価純資産法」とは、医療法人M&Aで売却したときの相場を純資産の時価を参照して算定する方法です。
保有する資産と負債の時価を算出し、資産の時価から負債の時価を差し引いて売却相場を出します。

時価純資産法は、時価が変動しやすい土地や赤字の事業が売却対象に含まれるときに用いられることが多い計算方法です。
医療法人M&Aの価格相場を出す際によく活用されます。

2.年買法

「年買法(年倍法)」とは、時価純資産に1~5年分の営業利益を足して価値を算定する方法です。
医療法人M&Aを実施した場合のおおよその価格相場を早く計算できることが、年買法のメリットです。
一方で、年買法は適正価格から大きく乖離した価格を算出する可能性もあるので注意しましょう。

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医療法人で事業承継が進まない理由

医療法人における後継者不在率は比較的高くなっています。
ここでは、医療法人で事業承継が進まない理由を、親族内承継のケースと親族外承継のケースに分けて説明します。

医療法人の親族内承継が進まない3つの理由

医療法人で親族内承継を行うケースにおいて、事業承継が進まない理由は主に以下の3つです。

  1. 後継者候補が経営者に向いていない
  2. 候補者に経営者を継ぐ意思がない
  3. 相続税が負担になる

それぞれの理由について、詳しく解説します。

1.後継者候補が経営者に向いていない

医療法人の親族内承継が進まない理由に、後継者候補に経営者の素質がないことが挙げられます。

医療法人の経営者は、医師免許や看護師資格を保有する人たちを束ねる存在です。
管理能力だけでなく、ついていきたくなるようなリーダーシップも必要です。
また、高度な資格を保有する人たちの上に立つことになるので、より高度な資格や実績が要求されることもあるでしょう。

求められるレベルが高いこともあり、経営者としての素質が認められる後継者がなかなか見つけられないのが現状です。

2.候補者に経営者を継ぐ意思がない

医療法人の親族内承継が進まない理由の1つは、後継者に経営者を継ぎたいという意思がないことです。

医療法人の経営者のそばで育ってきたからといって、必ずしも「後を継ぎたい!」と思っているとは限りません。
子どもが医師として働いていたとしても、「独立して開業したい」「上に立たずに勤務医のまま働きたい」と考え、あとを継がない選択をすることもあります。
また、「自分の研究に注力したい」という気持ちから、多忙な経営者を望まない後継者候補もいるでしょう。

3.相続税が負担になる

医療法人の親族内承継が進まない理由には、お金の問題があります。
相続税が多額になることが、親族内承継への決断を鈍らせています。

いざ事業承継を行うことになったときに困らないように、節税対策や納税に備えた資金集めを計画的に行うことが必要です。

医療法人の親族外承継が進まない3つの理由

医療法人で親族外承継を行うケースにおいて、事業承継が進まない理由は主に以下の3つです。

  • 経営権を簡単に移せない
  • 出資持分の相続税が高額になる
  • 担保提供が難しい

医療法人は株式会社とは違う特徴があり、それが事業承継のハードルを上げています。
それぞれ解説していきます。

1.経営権を簡単に移せない

医療法人において親族外承継が進まない理由は、経営者の意思のみでは経営権を移すことができないからです。

株式会社であれば、保有する株式の過半数以上を譲渡すれば経営権が移行します。しかし、医療法人の場合は、取得する出資持分が多くても経営権の移行には関係ありません。

医療法人においては、社員1人につき1つずつ議決権を所有しています。新たな経営者を選任するためには、社員総会に出席した社員の過半数の賛成を得ることが必要です。

2.出資持分の相続税が高額になる

医療法人の親族外承継が進まない原因となるものは、出資持分に課税される相続税です。
出資持分がある医療法人で事業承継を行うとき、出資者が相続する場合は持分権に相続税がかかります。

非営利性を持つ医療法人では、経営が好調で利益額が多額になっても、出資者に配当されることはありません。利益が上がれば上がるほど内部留保が積み上がっていくため、出資持分の相続税が高くなります。

高額な相続税を支払うことができないために事業承継をあきらめる事例もよくあるようです。

3.担保提供が難しい

担保提供を利用できないことが、医療法人における親族外承継のハードルを上げています。

担保提供とは、金融機関から融資を受ける代わりに財産を提供することです。もし返済できなくなった場合は、提供した財産は金融機関に差し押さえられます。

医療法人においては、万が一返済できず土地や施設が差し押さえられると、人命に関わる重大な問題に発展してしまうでしょう。そのため、医療法人では担保提供が制限されています。
簡単には融資を受けられないため、資金力が足りない場合は事業承継が難しくなります。

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医療法人M&Aと一般的なM&Aの5つの違い

医療法人におけるM&Aと一般企業におけるM&Aには主に5つの違いがあります。

  1. 医療法人の種類が多くて複雑
  2. 医療法の知識が求められる
  3. 株式がない
  4. 監督省庁の許認可が必要
  5. 想定価格とのギャップが大きい

5つの違いを理解し、医療法人M&Aに備えましょう。

1.医療法人の種類が多くて複雑

持分出資や基金拠出の有無などによって、医療法人の類型はさまざまに分かれています。
会社法のもとに設立される一般的な会社が4種類であることと比べると、医療法人の種類は多岐にわたるといえます。

医療法人の種類によって、選択できるM&Aの手法や必要な手続きが変動するので、一般企業のM&Aと比べると複雑です。

2.医療法の知識が求められる

医療法人におけるM&Aで必要なものは、M&Aに関する知識だけではありません。
医療法に関する知識も求められます。

より専門性の高い知識が必要です。

3.株式がない

医療法人は医療法によって非営利性が規定されています。
公益性の高い法人であり、株式を発行していません。

株式がないため、比較的簡易に経営権を移行できるM&Aの手法である株式譲渡はできません。
一般企業がM&Aを行う場合と比べると、M&Aの手法が限定されます。

4.監督省庁の認可が必要

医療法人がM&Aを行う際は、一般企業のM&Aにはない手続きが発生します。

たとえば、定款変更をするときには都道府県知事の認可を得ることが必要です。
また、保健所に開設届を提出することもあります。

5.想定価格とのギャップが大きい

医療法人のM&Aでは、想定していた価格と実際の相場にギャップが生じやすい傾向があります。

医療法人のM&Aは一般企業のM&Aと比べると事例が少ないうえ、医療法人の種類や規模も多様なので、過去の価格を参考にしにくいです。
譲渡する側も譲受する側も価格相場を把握していないことが多いため、提示された金額に対してギャップを感じることが多々あるようです。

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医療法人M&Aの6つのスキーム

医療法人同士がM&Aを行うときのスキームは、主に以下の6つです。

  1. 出資持分譲渡
  2. 基金譲渡
  3. 評議員の入れ替え
  4. 合併
  5. 分割
  6. 事業譲渡

医療法人は株式を発行していないため、一般的な会社とはスキームが異なります。
また、出資持分の有無によっても変わります。

それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

1.出資持分譲渡

「出資持分譲渡」は、出資持分がある社団医療法人におけるM&Aのスキームです。

出資持分譲渡契約を交わして出資持分を譲渡したうえ、社員の入退社を行います。そして、入れ替え後の社員が社員総会に出席して過半数が賛成することで、新たな経営者を決定します。出資持分譲渡では契約がすべて引き継がれるため、取引先との関係を継続することが可能です。

また、職員の雇用契約もそのまま継続できます。一方で、提訴や不正請求などのリスクも引き継ぐ恐れもあります。デューデリジェンスを怠らないようにしましょう。

出資持分譲渡を行うとき、行政や医師会などへの届出は原則不要です。
社団医療法人の売り手と買い手のやりとりのみで譲渡を進められるため、比較的短い期間でM&Aを完了させることができます。スムーズに進行した場合、1~2ヶ月ほどでM&Aが完了することもあるでしょう。

2.基金譲渡

「基金譲渡」とは、出資持分なし医療法人がM&Aを実施するときに用いられるスキームです。

出資持分がなく、基金の拠出により運営されている医療法人の場合、基金を譲渡することでM&Aを行います。経営者を決定する過程は出資持分譲渡を行う場合と同様、社員を入れ替えることで進行します。

3.評議員の入れ替え

財団医療法人においては、評議員を入れ替えることによってM&Aを実行します。財団医療法人では出資持分の譲渡も基金の譲渡もありません。

譲渡側の医療法人の評議員が辞めて、譲受側が入れ替わりで評議員になります。そして議決権を有する評議員により過半数以上の賛成を獲得し、経営者を変更します。

4.合併

「合併」は、出資持分の有無にかかわらず選ぶことができるM&Aのスキームです。合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。医療法人のM&Aにおいては、吸収合併を行うことがほとんどです。

「吸収合併」では、一方の医療法人を消滅させて、もう片方の医療法人を存続させます。そして存続するほうの医療法人に消滅させる医療法人が持つ権利義務のすべてを承継させます。

「新設合併」とは、すべての医療法人を消滅させて、消滅させた権利義務を新たに設立した医療法人に承継させる方法です。

医療法人がM&Aの手段として合併を選んだ場合、医療審議会の承認と債権者保護の手続きが必要です。

都道府県の医療審議会は年に2~4回ほど行われています。
もし開催日を逃すと次の医療審議会まで話が進まなくなってしまうので注意しましょう。医療審議会の開催日を確認したうえ、必要提出書類の準備を進めてください。

債権者保護の手続きは、債権者の利益を守るために必要なプロセスです。財産目録や貸借対照表を作成したり、債権者に対して公告・催告を行ったりします。

合併ではこれらの過程があるため、出資持分譲渡や基金譲渡よりも比較的時間がかかります。

5.分割

「分割」は、出資持分なし医療法人あるいは財団医療法人のM&Aにおいて活用されるスキームです。
分割の方法には「吸収分割」と「新設分割」の2種類があります。

「吸収分割」とは、事業の権利義務の一部またはすべてを、既存の医療法人に引き継ぐ方法です。「新設分割」の場合は、所有する一部またはすべての事業に関する権利義務を新規に設立した医療法人に承継させます。

合併のときと同様、分割を行う場合も医療審議会の承認と債権者保護の手続きをします。

6.事業譲渡

分院がある医療法人において利用されるM&Aのスキームが、「事業譲渡」です。譲渡側の医療法人自体は消滅せず存続します。

事業譲渡では、医療法人が営む特定の事業のみを譲渡します。譲受側にとっては、薄外債務を引き受けるリスクがないことがメリットです。

事業譲渡においては個別に権利移転の手続きをすることが必要です。また、医療機関が譲渡の対象である場合は閉鎖・開設がともなうため、保健所や厚生局などの行政での手続きも求められます。
手続きは比較的煩雑なものになるので、時間に余裕をもって取り組みましょう。

そのほか、事業譲渡では職員の退職・再雇用の手続きが必要になります。一度退職した際に職員がそのまま流出してしまう恐れもあるので注意しましょう。

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合併によって法人類型が変更される

M&Aのスキームに合併を選択した場合、合併の前後で医療法人の類型が変わることがあります。
合併前後の医療法人の類型は、以下の表のとおりです。

合併前合併後
出資持分あり社団 出資持分あり社団 (吸収合併の場合)出資持分あり社団 
(新設合併の場合)出資持分なし社団
出資持分あり社団出資持分なし社団出資持分なし社団
出資持分あり社団財団出資持分なし社団または財団
出資持分なし社団出資持分なし社団出資持分なし社団
出資持分なし社団財団出資持分なし社団または財団
財団財団財団

医療法人の類型が変わると、財産権の扱いや税務に関することが変わるケースもあるので、事前に確認しておきましょう。

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医療法人M&Aを行う3つのメリット(売り手)

売り手から見た、医療法人がM&Aを行うメリットは、主に以下の3つです。

  1. 地域医療を提供し続けることができる
  2. 後継者問題を解決できる
  3. 職員の雇用を守ることができる

地域医療を途絶えさせずに済むことや、後継者問題を解決して医療法人を存続できることは大きなメリットです。

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

1.地域医療を提供し続けることができる

病院が倒産して閉院した場合、地域医療を支える拠点が1つなくなってしまうことになります。
病床数が減ってしまうと、地域医療が逼迫する事態になることもあります。
入院や通院をしていた患者も、転院しなければならないことに少なからず不安を感じるかもしれません。

医療法人がM&Aを実施して病院が存続すれば、地域医療を提供し続けることができます。
地域医療に大いに貢献することができるでしょう。
病院を利用していた地域住民に対しても安心感を与えることができます。

2.後継者問題を解決できる

後継者が見つからず、解散せざるを得ない状況に陥っていた場合、医療法人M&Aは有効な手段です。

後継者にふさわしい人物がいなかったり、適性はあっても高額な相続税が原因で引き継げなかったりと、後継者問題の壁にぶつかることもあるでしょう。
しかしM&Aによって医療法人を譲渡することができれば、医療法人が消滅する事態を避けられます。

3.職員の雇用を守ることができる

医療法人がM&Aをするメリットの1つは、働く職員の雇用を守れることです。

医療法人が解散になってしまった場合、職員は雇用を失うことになります。
M&Aを行うことで医療法人を譲渡することができれば、職員の雇用を継続することが可能です。

手法によっては一度退職の形をとることもありますが、再雇用が行われるので、結果的には雇用が守られることになります。

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医療法人M&Aを行う4つのメリット(買い手)

医療法人M&Aは、買い手からしてもメリットがあります。
ここでは、買い手が得られるM&Aを行うメリットについて見ていきましょう。

  • サービスの提供範囲が広がる
  • 病床規模を拡大できる
  • コストシナジーが期待できる
  • 人材を確保できる

良い売り手と出会えれば、サービスの提供範囲の拡大や人材確保など、医療法人の成長が期待できます。

1.サービスの提供範囲が広がる

医療法人がM&Aを行うメリットの1つは、提供できるサービスの幅が広がることです。

経営している医療法人にはない診療科目や施設サービスを所有する医療法人とM&Aを実施した場合、提供できる医療・介護の範囲を広げられます。
M&Aを行うことにより、それぞれの医療法人が持つ強みを活かしたり、弱みをお互いに補完し合ったりすることが可能です。

2.病床規模を拡大できる

医療法人がM&Aを行う大きなメリットは、病床規模を拡大できることです。

医療法人における病床数は、各地方自治体の医療計画に基づき定められています。
自治体による制限があるので、病床は増やしたくても増やせません。
そこでM&Aを活用すれば、病床規模を拡大できます。

同一の医療県内にお互いの医療法人があれば、M&Aによる合併後、病院間で病床の移動ができるようになります。
病床数を増やしたいほうの病院に病床を移動させることが可能です。

3.コストシナジーが期待できる

医療法人がM&Aを行うことによって、コストシナジーを得られます。

すでに稼働している医療施設・介護施設を譲受できるため、ゼロから経営資源を整える時間・費用を大幅に削減することが可能です。
また、必要な物品もまとめて購入できるため、低価格で備品を揃えられることもあります。

4.人材を確保できる

医療法人がM&Aを行えば、人材を確保することができます。

医療法人に従事するのは、医師や看護師などの専門職です。
医師や看護師になるためには国家資格を取得しなければなりません。
専門性が高い職業であるため、一般企業よりも人材確保の難易度は比較的高めです。
そのため、M&Aは専門職の人材確保にかなり有効な手段となります。

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医療法人M&Aを行うデメリット(共通)

医療法人がM&Aを行うデメリットは、主に下記の2つです。

  • ルールを統一することが難しい
  • 人間関係を新たに構築する必要がある

売り手・買い手が共通で感じるデメリットです。M&Aでは異なる法人同士が関わり合うことになるため、このような壁にぶつかることもあるでしょう。
以下で詳しく解説します。

1.ルールを統一することが難しい

医療法人がM&Aを実施したときに生じるデメリットは、人間関係を新たに構築しなければならないことです。
異なる医療法人で働いてきたために方向性が違うこともあり、最初はストレスを感じることがあるかもしれません。

医療法人M&A後、お互いが持つ価値観を尊重し合うことが大切です。
職員たちが良好な人間関係を築けるように、法人内で研修や交流会を開催することもおすすめです。

2.人間関係を新たに構築する必要がある

医療法人がM&Aを行うデメリットの1つは、ルールを統一するのが大変であることです。
今まで全く違うルールで運営してきているので、どちらかの運用方針に統一しようとすると摩擦が生じてしまいます。
ルールに変更があると、職員が混乱する可能性もあるでしょう。

両者の現存のルールを確認し、滞りなく業務が遂行できるように整えていくことが必要です。
歩み寄って間をとるようなルールにしたり、より効率的な新たなルールを作成したりするなど、柔軟な対応が求められます。
双方の医療法人の現場の声に耳を傾けて、ルール再編を進めていきましょう。
医療法人内で暗黙の了解で運営されていたルールがある場合は、言語化してマニュアルを作成してください。

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医療法人M&Aの手順・流れ

ここでは、医療法人M&Aを行う手順・流れを、ステップごとに解説します。

  1. M&Aの支援機関に相談する
  2. M&A相手を選定する
  3. 秘密保持契約を結ぶ
  4. 医療法人の価値を算定する
  5. 売り手がノンネームシートを作成する
  6. 買い手がネームクリアを打診する
  7. 売り手が譲受先候補へ情報開示を行う
  8. トップ面談を行う
  9. 基本合意契約を締結する
  10. デューデリジェンスに対応する
  11. 最終契約書を締結する
  12. クロージングを行う

M&Aの専門家の力も借りながら、各ステップを慎重に進めていくことが大切です。

1.M&Aの支援機関に相談する

医療法人のM&Aを考え始めたら、M&Aの支援機関に相談してみましょう。

M&A仲介会社はM&Aに関する豊富な知識・経験を持っています。
「何から始めたらよいのか分からない…」という状態でも、相談から成約までトータルにサポートしてくれるでしょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は相談を無料で受け付けています。
料金体系はM&Aが成約に至ったときに料金が発生する「完全成功報酬型」です(買い手側のみ中間金あり)。
M&Aをご検討している医療法人の経営者の方、ぜひお気軽にお問い合わせください。

2.M&A相手を選定する

M&Aに求める条件を伝えると、M&Aの仲介会社がニーズに合った相手を紹介してくれます。

買い手は売り手候補のノンネームシートの内容やヒアリングの結果を、売り手候補は買い手の資料を参考にしながら、M&Aの相手を選びましょう。

3.秘密保持契約を結ぶ

M&Aの支援機関にサポートの依頼をしたら、秘密保持契約(NDA)を結びましょう。
秘密保持契約とは、医療法人に関する機密情報を第三者に開示しない約束をさせる契約のことです。

秘密保持契約を締結することで、情報漏えいを抑止する意識が高まることが期待できます。
また、秘密保持契約のなかであらかじめ情報漏えいがあった場合の対応法を定めておけば、万が一トラブルが起こってしまったときにも迅速に対応できるようになります。

4.医療法人の価値を算定する

M&Aによって譲渡する予定の医療法人の価値算定をします。
価値算定の方法は、DCF法や時価純資産法、類似会社比較法などです。

M&A仲介会社に支援を依頼していた場合、適切な手法を選んで価値算定を行ってくれるでしょう。
複数の手法を用いて価値算定をする場合もあります。

5.売り手がノンネームシートを作成する

譲受先に公開するノンネームシートを作成しましょう。
ノンネームシートとは、匿名で医療法人の情報を載せた資料です。

M&Aを実施に移す前に「M&Aで譲渡しようとしていること」が表沙汰になると、医療法人の経営に悪影響を及ぼす恐れがあります。
そのため、記載内容は医療法人が特定されないような情報にとどめます。

ノンネームシートの項目は、医療法人の概要や事業内容、譲渡に至った理由、譲渡の希望価格などです。
匿名性を守るため、事業内容や数字はおおよその情報を載せてください。

6.買い手がネームクリアを打診する

ノンネームシートの内容を見てM&Aの意向が高まった候補があったら、ネームクリアを打診しましょう。

「ネームクリア」とは、譲渡先候補の医療法人に対してより詳細な情報開示を求めることです。
ネームクリアを行うと、名前をはじめとする医療法人の情報が判明します。

7.売り手が譲受先候補へ情報開示を行う

ノンネームシートを見てオファーをくれた譲受候補に対して、売り手が情報開示を行います。
M&Aの話を進めたいと思えるような魅力的な候補があれば、仲介会社に伝えてください。

8.トップ面談を行う

お互いの理解を深めるために、M&Aの譲渡側・譲受側の経営者同士でトップ面談を行います。
M&A後の経営戦略や取引条件などについて話し合いましょう。

トップ面談は、M&Aの相手に選んでもよい法人なのかどうかを見極める大切な場です。
不利な情報を隠して進めると後になってトラブルに発展するので、嘘のない情報を伝えてください。

9.基本合意契約を締結する

M&Aの実施に対して双方の意思が決まったら、基本合意契約を締結しましょう。
基本合意書(LOI・MOU)を用意してください。

基本合意契約を交わすことにより、今後のM&Aを円滑に進めやすくなります。
基本合意書の内容は、M&Aのスケジュールや取引価格、法的拘束力の範囲・有無に関することなどです。

10.デューデリジェンスに対応する

デューデリジェンス(DD、買収監査)とは、買収する予定の医療法人の価値や事業内容、リスクなどについて調査することです。
譲受側が、譲渡側の医療法人に対して実施します。

譲渡側の医療法人は、デューデリジェンスが行われたら真摯に対応することが必要です。
譲受側からの質問に回答しましょう。
資料の提出が求められることもあります。

11.最終契約書を締結する

デューデリジェンスが終わり、M&Aを安心して実施できる状態になったら、いよいよ最終契約書(DA)の締結です。
最終契約書の記載内容は、確定した取引価格や成約事項、クロージング条件などです。

M&Aの最終契約書には法的拘束力があります。
締結する前に、最終契約書の内容をしっかり確認してください。

12.クロージングを行う

最終契約を締結したら、クロージングを行いましょう。
クロージングとは、M&Aの最終契約書の締結後に実施する、経営権の移行に関する作業です。

クロージングの内容は、選んだM&Aのスキームによって異なります。
M&A仲介会社にも確認し、必要な手続きを漏れなく完了させてください。

職員や取引先、患者などへの周知もクロージングに含まれます。
説明が十分にされていないと不安感を抱かせてしまうことにもつながるので、入念に準備をしたうえで周知を行ってください。

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医療法人M&Aに必要な5つの行政の手続き

医療法人がM&Aを行う場合、行政の手続きが必要になります。スムーズにM&Aを進められるよう、事前に手続きの内容ついて理解しておきましょう。
医療法人のM&A特有の行政手続きは、主に以下の5つです。

  1. 定款変更
  2. 法人登記変更
  3. 役員変更
  4. 届出事項変更
  5. 開設許可事項の許可・変更

ここでは、それぞれの手続きの概要や、必要書類などについて解説します。

1.定款変更

法人名や所在地、決算時期などに変更がある場合は定款変更を行いましょう。

医療法人がM&Aを行って定款変更をする場合、認可手続きが必要です。
認可の手続きは各都道府県知事に対して行います。

2.法人登記変更

医療法人がM&Aを実施したことで、本店所在地の変更や理事長の交代などがあった場合は、法人登記変更をしてください。
法人登記変更は、法務局に対して手続きを行います。

3.役員変更

医療法人がM&Aを実施して役員が交代したときは、各都道府県知事へ届出を行う必要があります。
役員変更届を提出しましょう。
また、役員就任承諾書や履歴書、印鑑証明書などの提出が求められることもあります。

4.届出事項変更

医療法人M&Aの実施によって医療機関の名称や代表者、保険医などに変更があった場合、地方厚生局に届出事項変更の届出をすることが必要です。
管轄内の地方厚生局に届出を提出してください。

5.開設許可事項の許可・変更

医療法人がM&Aを行うことで開設許可事項に変更が生じたときには、医療機関が所在する市町村の保健所に申請する必要があります。

医療機関の開設目的や医療従事者の定員、建物の構造などが変更される場合は「開設許可事項一部変更許可申請」をしましょう。

医療法人の名称や管理者、診療科目などが変わるときは「開設許可事項一部変更届」を提出してください。

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医療法人M&Aを成功させる5つのポイント 

ここでは、医療法人M&Aを成功させるポイントを5つ紹介します。

  1. M&Aの準備を早めに始める
  2. M&Aを行う目的を明確にする
  3. 相手の医療法人について調査する
  4. 関係者に説明をする
  5. M&Aの仲介会社を利用する

ポイントを押さえてM&Aを進めていきましょう。

1.M&Aの準備を早めに始める

医療法人M&Aにはたくさんの時間がかかります。
M&Aを完了させたい時期に間に合うように、早めに準備に取りかかりましょう。

医療法人M&Aが選択肢に浮かんだら、準備をスタートしてください。
現在の病院の経営状況をまとめたり、価値算定を依頼したりするなど、今の段階でできることから少しずつでも進めていくことがおすすめです。

2.M&Aを行う目的を明確にする

医療法人M&Aを行うときは、まずM&Aを実施することで叶えたい目的を明確にしてください。
目的によって選ぶべきM&Aのスキームが異なります。
適切なスキームを選択してM&Aを成功させるために、目的をはっきりさせましょう。

3.相手の医療法人について調査する

M&Aを成功させるポイントの1つは、相手の医療法人についてしっかり調査をすることです。
提供された資料を入念に読み込んだり、実際に顔を合わせたりして、相手の医療法人への理解を深めましょう。

また、買い手側はM&Aのプロセスにおいてデューデリジェンスを行います。
デューデリジェンスによって買収予定の医療法人の価値やリスク、コンプライアンス違反の有無などを明らかにしてください。

4.関係者に説明をする

医療法人のM&Aを実施する際は、関係者にしっかり説明をすることが大切です。
取引先や患者に対し、M&Aを行う目的や今後の展望などの情報を伝えてください。

職員への説明は、最終契約書を締結したタイミングで実施します。
医療法人M&Aの内容や今後の方針などを共有しましょう。
また、職員の配置や業務内容、待遇などに関することも説明してください。

5.M&Aの仲介会社を利用する

医療法人のM&Aをサポートしてくれる仲介会社を利用することも、成功させるポイントの1つです。
M&Aの仲介会社は専門的な知識・経験を備えており、M&Aの検討段階から成約、クロージングまでサポートしてくれます。
また、M&Aの相手探しや交渉もしてくれるため、より良い条件で医療法人M&Aを実施できる可能性を高められます。

無料で相談に応じている仲介会社も多数あるので「何から手をつけたら良いのか分からない…」と悩んでいる段階でも相談してみましょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。
豊富なノウハウを持ったコンサルタントが、親身になって支援させていただきます。
料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。
M&Aのご成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。
ご相談も無料です。M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にご連絡ください。

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同業種による医療法人のM&A事例

医療法人のM&Aを検討している方は、実際の事例を参考にするのがおすすめです。まずは、医療法人同士で行われたM&A事例について、事例の概要や目的などを紹介します。

  • 医療法人の吸収合併
  • 医療法人の事業譲渡
  • 公益財団法人・医療法人による病院の経営権取得

M&Aをどのように進めるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

医療法人の吸収合併

1つ目は、2019年12月、医療法人沖縄徳洲会(以下、沖縄徳洲会)が、社会医療法人木下会(以下、木下会)を吸収合併した事例です。

このM&Aは、経営の合理化やコンプライアンス、ガバナンスの強化などを目的に行われました。

徳洲会グループは、経営の合理化を図るため、さらに徳洲会と沖縄徳洲会の統合を進めるとしています。

参照元:徳洲会グループ「社会医療法人木下会 沖徳に吸収合併」

医療法人の事業譲渡

2つ目は、2021年8月、医療法人博洋会(以下、博洋会)が、医療法人竜山会に石川県金沢市の藤井病院を事業譲渡した事例です。

このM&Aは、サービスを拡充し、地域医療や介護に貢献するために行われました。藤井病院がこれまで提供してきた医療機能はそのまま引き継ぎ、急性期医療やリハビリテーション、在宅医療、予防医療など、幅広い医療・介護サービスを提供する、としています。

なお、博洋会は、診療報酬の不正請求により、保険医療機関の指定取り消しとなっていました。保険診療ができなくなるため、病院の運営を引き継ぐ別の医療法人を探していた、という背景もあります。

参照元:石川県「金沢古府記念病院の開設(藤井病院の承継)について」

公益財団法人・医療法人による病院の経営権取得

3つ目は、2019年8月、公益財団法人ときわ会・医療法人ときわ会が、医療法人翔洋会(以下、翔洋会)の医療・介護事業を引き継いだ事例です。

翔洋会は民事再生中であったため、翔洋会債権者集会の承認を経て、M&Aに至りました。

公益財団法人ときわ会が病院・クリニックを、医療法人ときわ会が介護施設・介護事業を引き継いでいます。

このM&Aでは、「ときわ会」施設と連携した医療提供体制の充実や、PET-CT健診を行っている常磐病院との連携による、健診機能の品質向上などを目指しています。また、職員が子育てしながら働きやすくなるよう、企業主導型保育所を開設することを、重点施策として掲げているのもポイントです。

参照元:ときわ会「翔洋会に関するお知らせ(8月2日現在)」

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異業種による医療法人のM&A事例

医療法人のM&Aでは、異業種が病院の経営権を取得したり、医療法人と資本業務提携をしたりする事例も見られます。

ここでは、異業種による医療法人のM&A事例を2つ紹介します。

  • 企業が運営する病院のM&A
  • IT企業と医療法人の資本・業務提携

医療法人には非営利性が求められるため、一般企業が営利目的で医療法人とM&Aを行うメリットは小さいでしょう。しかし、資本業務提携であれば、経営の独立性を保ったまま提携できます。

企業が運営する病院のM&A

西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)と株式会社東芝(以下、東芝)は、運営していた病院を医療法人に譲渡しています。

NTT西日本は、地域医療へのさらなる貢献を目的に、2020年12月、松山病院を社会医療法人真泉会に譲渡しました。

また、東芝は2017年10月、東芝病院を医療法人社団緑野会に譲渡しました。M&Aによって地域のニーズに合った医療サービスを提供し、地域医療に貢献できるとしています。

参照元:
NTT西日本「NTT西日本松山病院の事業譲渡について」
東芝「東芝病院事業の譲渡に関する事業譲渡契約書の締結について」

IT企業と医療法人の資本・業務提携

株式会社アルム(以下、アルム)と株式会社エヌアイデイ(以下、エヌアイデイ)、医療法人社団天太会(以下、天太会)は、医療・ヘルスケアAIソリューション開発に向けて、2019年5月に資本業務提携を行うことを決定しました。

アルムと天太会は、もともと資本業務提携を行い、先進的な医療ITサービスを提供する医療ICT・InsurTechモデルクリニック・健診センターを運営していました。

そこに、エヌアイデイが保有するサービス・ソリューション技術をかけ合わせることで、さらなるサービスの開発やオンライン保健指導サービスの提供、公的な研究開発プロジェクトへの参加を目指すとしています。

参照元:株式会社エヌアイデイ「株式会社アルム及び医療法人社団天太会との医療・ヘルスケアAIソリューション開発に向けた業務・資本提携に関するお知らせ」

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医療関連のM&A事例

最後に、医療法人以外の、医療関連のM&A事例を2つ紹介します。

  • オリックスの医療機器販売会社の子会社化
  • 大東建託が医療業務請負サービス事業者と資本業務提携

医療分野のM&Aは活発化しており、さまざまな業種がM&Aに取り組んでいるのが現状です。
中には、医療法人や医療関連企業を積極的に買収している企業も存在します。

ここでは、医療関連のM&A事例について解説します。

オリックスの医療機器販売会社の子会社化

オリックス株式会社(以下、オリックス)は、2017年7月、株式会社CMC(以下、CMC)および株式会社メディマージュ(以下、メディマージュ)と資本提携しました。

CMCとメディマージュは、予防医療サービスを提供する「宇都宮セントラルクリニック」にて、医療事務の業務支援サービスを提供しています。

そこにオリックスが加わることで、オリックスが持つ経営に関する知見を活かし、サービス提供や画像診断センターの多店舗展開の推進が期待される、とのことです。

参照元:オリックス「医療機関向け業務支援サービス会社と資本提携~予防医療分野の発展をサポート~」

大東建託が医療業務請負サービス事業者と資本業務提携

大東建託株式会社(以下、大東建託)は、2015年11月、医療関連受託事業や介護事業などを手がける株式会社ソラスト(以下、ソラスト)と資本業務提携を締結しました。

住まいや暮らしに関する事業を手がける大東建託と、医療介護事業を展開するソラストが連携することで、両者のシナジーを発揮し、高度なサービス提供や企業価値の向上を目指す、としています。

参照元:
大東建託「株式会社ソラストの株式取得(持分法適用関連会社化)及び資本業務提携契約締結に関するお知らせ」
ソラスト「ソラスト、大東建託グループとの協業による初のサ高住をオープン」

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まとめ

後継者不足に悩む医療法人は多く、M&Aの件数が増えているのが現状です。しかし、医療法人のM&Aは専門性が高く、一般的なM&Aとは必要な手続きやポイントなどが異なります。
医療法人のM&Aに成功するためには、豊富な実績やノウハウを持つ、信頼できる専門家に依頼しましょう。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、案件や買い手探しから成約まで、M&A全般をサポートする仲介会社です。M&Aを熟知したコンサルタントが多く在籍しており、はじめてM&Aに取り組む方も、安心して依頼できます。
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