介護の業界・施設のM&Aを成功させる方法とは?事例や売買の方法も紹介

2023年9月8日

介護の業界・施設のM&Aを成功させる方法とは?事例や売買の方法も紹介

このページのまとめ

  • 高齢者人口の割合の増加と生産年齢人口の減少にともない、介護M&Aが活発化している
  • 介護M&Aでよく用いられる手法は「事業譲渡」と「株式譲渡」
  • 介護M&Aを行うメリットはノウハウの獲得や事業拡大、新規参入など多数ある
  • 介護M&Aの案件を探す方法には、マッチングサイトや仲介会社の利用などがある
  • 介護M&Aの成功には、相談先を早く見つけたり相場を把握したりすることが大切

「介護M&Aとは?」「成約までの流れが分からない…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
介護M&Aとは、介護業界の会社・事業が対象となるM&Aのことです。M&Aに関する専門的な知識が求められるため、仲介会社などの相談先を見つけることが成約の近道です。

本コラムでは、介護M&Aを成功させるポイントや案件の探し方について解説。また、近年の介護業界のM&Aの動向や事例を紹介します。

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介護業界とは

介護業界とは、高齢者などの世話をする仕事の業界です。厚生労働省が発行している資料「介護業界で働いてみませんか〜ハローワークで聞いてみよう〜」によると、介護の仕事は以下の3つに分類できます。

  • 入所系・居住系
  • 通所系
  • 訪問系

入所系・居住系は、介護施設や事業所に入所・入居している要介護・要支援状態の高齢者に対して提供するサービスです。介護職員が施設で高齢者に対して24時間必要な支援を提供する点が特徴として挙げられます。

一方、通所系や訪問系の場合、高齢者が施設ではなく自宅で生活する点が特徴です。
通所系は日中施設を訪れた利用者に対して介護職員が支援するのに対し、訪問系は介護職員が利用者の居住を訪問して支援します。

また、入所系・居住系や通所系のように施設で介護するサービスを「施設介護」、訪問系を「訪問介護」と分類することもあります。施設介護の具体例は、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・有料老人ホームなどです。

特別養護老人ホーム(特養)は、主に要介護3〜5の利用者を対象にし、自立支援を提供する施設です。それに対し、介護老人保健施設(老健)は要介護1〜5の利用者を対象に、在宅復帰を目指す施設を指します。
なお、特養や老健は公的な施設で、民間企業が主に運営するのが有料老人ホームです。

参照元:厚生労働省「介護業界で働いてみませんか〜ハローワークで聞いてみよう〜」

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介護業界の現状・課題

日本では高齢化が進んでいます。

総務省統計局が公表している「統計トピックスNo.129 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-1. 高齢者の人口」によると、2021年9月時点の推計で、65歳以上の高齢者人口は3,640万人です。

総人口に占める割合は29.1%と、過去最高の数値を記録しています。

今後も高齢者人口の割合は増加し続けると予測されており、2040年の時点では35.3%を高齢者が占めるといわれています。

図1「高齢者人口及び割合の推移(1950年=2040年)」のイメージ

引用元:総務省統計局「統計トピックスNo.129 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-1. 高齢者の人口

増え続ける高齢者人口に伴い、介護サービスの需要はますます高まっていくでしょう。
高齢者人口が増加する一方、生産年齢人口は減っていくと見込まれています。

厚生労働省の「今後の社会保障改革について ー 2040年を見据えて ー」によると、国は少子高齢化社会のさらなる加速を見据えて、社会保障制度の見直しを進めていくようです。

介護報酬に関しても切り詰める流れになっている点、介護事業を営む業者の中には利用者が少ないという課題を抱えている点を考慮すると、介護事業を営む会社が収益性を高めるには生産性を向上させなければなりません。

また、急減する現役世代人口の問題に対応するべく、今後の介護業界では、高齢者・外国人などの新たな人材の活用や、ICT化の推進、AI・ロボットの導入などが求められるでしょう。

参照元:厚生労働省「今後の社会保障改革についてー 2040年を見据えて ー」

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介護業界におけるM&A動向

介護業界でのM&Aの動向には以下のようなものがみられます。

  1. 介護M&Aの活発化
  2. 異業種の会社による買収の増加
  3. 海外進出

それぞれの動向について詳しくみていきましょう。

1.介護M&Aの活発化

現在、介護業界では、M&Aが活発に行われています。

介護M&Aを実施する目的は、後継者問題の解決や人材確保、エリアシェアの拡大など、さまざまです。
高齢者人口の増加にともない介護サービスの需要が増えているので、介護事業所のニーズも高まっています。

2.異業種の会社による買収の増加

介護サービスは需要が高まっているため、介護M&Aに参入する異業種の会社も増えています。

AIやロボットなどを開発する企業がM&Aによって介護事業所を買収するケースもあります。
介護業界では人材不足や生産性の向上が課題となっているため、こうした動きは介護業界に光明をもたらすかもしれません。

3.海外進出

今後日本と同じような人口推移を辿ると思われる国を見い出し、介護M&Aによって海外の介護市場に進出する企業も存在します。
また、海外の会社が日本の介護ノウハウを獲得することを目的に介護M&Aを持ちかけるパターンもあります。

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介護業界でM&Aを行う目的・背景の例

介護業界ではさまざまなシ、M&Aが実施されています。ケースごとに、介護業界でM&Aを実施する目的や背景を確認していきましょう。

介護事業を行う会社同士で買収する場合

介護事業を行う会社同士で買収する場合の主な目的は、以下のとおりです。

  • 既存の介護事業の拡大のため
  • サービスの品質を向上させるため
  • 介護の複合的なサービス体系を築くため
  • 人材不足を解消するため
  • 最新設備が整った施設を獲得するため
  • 事業拠点を増やすため
  • サービスの提供可能エリアを拡大するため
  • 大企業の傘下に入って介護事業を成長させるため

介護事業を行う会社同士のM&Aとして、介護事業者が同業者から特定施設入居者生活介護の事業譲受をした事例などがあります。

異業種の会社が介護事業を買収する場合

介護M&Aは、介護事業の企業同士で実施されるとは限りません。異業種の会社が介護事業をM&Aにより買収するパターンもあります。

異業種の会社が介護事業を買収する主な目的は、以下のとおりです。

  • 介護事業に新規参入するため
  • 介護事業のノウハウを獲得するため
  • 最新設備が整った施設を獲得するため

たとえば、もともと看護事業・医療事業を行っている会社が、介護事業を買収する事例があります。
看護・医療・介護をそろえることで、人々が安心して生きていくための包括サービスを提供できる体制を作り上げられるでしょう。

また、不動産会社が高齢者住宅を展開していくために、介護事業をM&Aで獲得した事例もあります。

介護事業を行う会社が異業種を買収する場合

介護事業を運営している会社が、異業種を買収するM&Aもあります。介護事業を行う会社が異業種を買収する主な目的は、以下のとおりです。

  • サービスの品質を向上させるため
  • 介護の複合的なサービス体系を築くため
  • 最新設備が整った施設を獲得するため

たとえば、介護施設を運営する会社が、システム開発・AIの実装を事業として行っている会社を買収した事例があります。

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介護業界内のM&A事例3選

介護業界内のM&A事例として、以下の3つを紹介します。

  • ニチイ学館による事業譲受
  • グッドタイムリビングによる買収
  • ケア21による事業譲受

それぞれ確認していきましょう。

ニチイ学館による事業譲受

株式会社ニチイ学館(以下、ニチイ学館)が、有限会社松本(以下、松本)の一部介護事業を譲り受けた事例を紹介します。

ニチイ学館は、1973年に設立(1968年創業)された医療関連事業や介護事業、保育事業などを手掛ける会社です。東京に本社を置き、全国で6支社・13支部・95支店・12営業所を展開しています(2023年4月3日現在)。

松本は、2004年に設立された広島県に本社を構える会社です。介護付き有料老人ホーム(特定入居者生活介護事業所)の運営を主な事業内容としていました。

ニチイ学館は松本と締結した事業譲渡契約に基づき、2023年に松本が運営する「介護付有料老人ホーム ラウンドコスモス大宮」の運営を譲り受けています。ニチイ学館が広島県内で地域密着型の事業展開を進める松本の事業譲受を決断した主な目的は、更なる地域ニーズに対応しうるサービス提供態勢を強化するためです。

同年5月1日より、施設の名称を「ニチイケアセンター広島西 特定施設入居者生活介護」に変更し、サービスを提供しています。

参照元:
株式会社ニチイ学館「事業の一部譲受に関するお知らせ」
株式会社ニチイ学館「事業譲受に関するお知らせ」

グッドタイムリビングによる買収

グッドタイムリビング株式会社(以下、グッドタイムリビング)が、介護サービス事業会社の株式会社舞浜倶楽部(以下、舞浜倶楽部)を買収した事例を紹介します。

グッドタイムリビング(本社:東京都中央区)は、2005年に設立された会社です。株式会社大和証券グループ本社の100%出資で、有料老人ホームや高齢者向け住宅を運営しています。

舞浜倶楽部は、2003年に設立された千葉県を拠点とする会社です。有料老人ホーム・小規模多機能型施設・認知症対応型デイサービス・介護相談センターを運営していました。

舞浜倶楽部が運営する施設にシステムや設備投資を進めるため、同社の株主である株式会社エムシーホールディングスからグッドタイムリビングに対して、運営体制強化の打診があったことがM&Aの経緯です。2021年2月25日にグッドタイムリビングと舞浜クラブの間で株式譲渡契約を締結しました。

グッドタイムリビングが、舞浜倶楽部の株式のうち99.75%を取得するとのことです。

参照元:グッドタイムリビング株式会社「株式会社舞浜倶楽部の株式取得に関するお知らせ」

ケア21による事業譲受

株式会社ケア21(以下、ケア21)が、ソフトケア宮城株式会社(以下、ソフトケア宮城)の訪問介護事業を譲り受けた事例を紹介します。

ケア21は、訪問介護・居宅介護支援・グループホーム・介護付有料老人ホームなどの運営を主な事業内容とする会社です。首都圏・近畿圏・名古屋・仙台・広島・福岡で事業を展開しています。

事業譲受対象の事務所が所在するのは、宮城県仙台市の中でケア21が最も多くの事業所を展開する太白区です。太白区にある近隣事務所との連携が取りやすくなることで多くの利用者ニーズに応えられる点、営業・人材確保面でシナジー効果を期待できる点などを考慮し、ケア21は事業譲受を決断しました。

参照元:株式会社ケア21「ソフトケア宮城株式会社からの事業譲受に関するお知らせ」

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異業種から介護業界へのM&A事例3選

異業種から介護業界へのM&A事例として、以下の3つを紹介します。

  • ぐんま地域共創パートナーズの運営ファンドによる出資
  • 学研HDによる買収
  • 出光興産による買収

それぞれ具体的な内容を確認していきましょう。

ぐんま地域共創パートナーズの運営ファンドによる出資

2021年にぐんま地域共創パートナーズ株式会社(以下、GRASP)や群馬銀行などが、エフビー介護サービス株式会社(以下、エフビー介護サービス)に出資した事例を紹介します。

エフビー介護サービスは、1987年に設立された福祉用具レンタル事業や介護事業を手掛ける会社です。長野県を中心に、群馬・埼玉・栃木・新潟の各県で事業を展開し、高齢化が進む地域社会を広く支えています。

具体的な出資方法は、2つのファンドを通じた第三者割当増資です。

2つのファンドのうち、「ぐんま医工連携活性化投資事業有限責任組合(ぐんま医工連携活性化ファンド)」はGRASPと、REVICキャピタル株式会社(以下REVICキャピタル)が業務運営者になっています。REVICキャピタルは、株式会社地域経済活性化支援機構のファンド運営子会社です。

もうひとつのファンド、「ぐんぎんビジネスサポート2号投資事業有限責任組合(ぐんぎんビジネスサポート2号ファンド)」は、GRASPが運営しています。

「産・学・官・金」共同の出資を受けたことで、エフビー介護サービスは財務・経営基盤を強化し、更なる成長を図る方針とのことです。

参照元:
株式会社地域経済活性化支援機構「【ぐんま医工連携活性化ファンド】エフビー介護サービス株式会社への出資について 」
群馬銀行「ぐんま地域共創パートナーズが運営するファンドによる出資について」

学研HDによる買収

株式会社学研ホールディングス(以下、学研HD)が、株式会社日本政策投資銀行(以下、DBJ)との共同投資でメディカル・ケア・サービス株式会社(以下、MCS)の株式を取得した事例を紹介します。

学研HDは、創業時から続く教育事業だけでなく、2000年代より介護事業も手掛ける会社です。介護事業では、多世代が支えあいながら地域の中で安心して暮らし続けられる社会づくりのため、「サービス付き高齢者向け住宅事業」(以下、サ高住事業)を展開しています。

MCSは、介護施設の企画・開発・運営管理を主な事業とする会社です。MCSの全株式を三光ソフランホールディングス株式会社が保有していました。

2018年に、学研HDは居室数日本一のグループホーム事業者であるMCSの株式取得を決めます。株式取得の主な理由は、サ高住事業と認知症ケアの関連性を高めてシナジー効果を発揮することで、より高品質のサービス提供をするためです。

なお、株式は同年9月に学研HDが61.8%、DBJが38.2%を取得しました。本件株式取得に伴い、MCSは学研HDの子会社になります。

参照元:株式会社学研ホールディングス「共同投資によるメディカル・ケア・サービス株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

出光興産による買収

出光興産株式会社(以下、出光興産)が、介護事業を包括的に連携・サポートする仕組みづくりに取り組むQLCプロデュース株式会社(以下、QLCプロデュース)の株式を取得して子会社化した事例を紹介します。

出光興産は、燃料油、石油・ガス開発、再生可能エネルギーなどの事業をグローバルに展開する会社です。一方、QLCプロデュースは、自立支援型デイサービスを直営・FC合わせて全国で163事業所(2021年1月27日時点)、展開する会社でした。

出光興産は、国内石油需要の減少が続く環境下において、新規事業の開発に取り組む中で、介護サービスの展開を進めるためQLCプロデュースの買収を決めました。2021年4月の株式取得以降、QLCプロデュースおよびそのグループ会社が、出光興産が100%出資する子会社となっています。

参照元:出光興産株式会社「QLCプロデュース株式会社の株式譲渡契約を締結」

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介護業界から異業種へのM&A事例3選

介護業界から異業種へのM&A事例として、以下が挙げられます。

  • シーナの買収
  • ベネッセHDによる買収
  • SOMPOホールディングスの資本業務提携

それぞれ概要を確認していきましょう。

シーナの買収

介護・医療・福祉に業種特化する株式会社シーナ(以下、シーナ)が、2020年6月に株式会社森原システムエンジニアリング(以下、森原システムエンジニアリング)の全株式を取得した事例です。

森原システムエンジニアリングは、システム開発を中心にネットワーク構築、ウェブサイト構築などを手がけています。近年、介護関連のソフト開発にも取り組んでいるため、買収によってシナジー効果の発揮を期待できるでしょう。

参照元:株式会社シーナ「株式譲受のお知らせ 6/30」

ベネッセHDによる買収

株式会社ベネッセホールディングス(以下、ベネッセHD)が、2021年6月に株式会社プロトコーポレーション(以下、プロトコーポレーション)の株式を取得した事例です。

プロトメディカルケアは、介護サービス事業者ガイドブックや介護・福祉・医療の求人・転職サイトなどを手がけています。教育・介護をコア事業とするベネッセHDは、介護領域の事業拡大のスピードを高めるために、プロトメディカルケアを子会社化しました。

参照元:株式会社ベネッセホールディングス「株式会社プロトメディカルケアの株式取得に関する株式譲渡契約締結のお知らせ」

SOMPOホールディングスの資本業務提携

介護施設も運営するSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPOホールディングス)が、2021年4月に株式会社ABEJA(以下、ABEJA)の株式21.9%を取得し、資本業務提携を締結した事例です。

ABEJAには、AI・データ解析・モデル構築などの分野における、ノウハウなどを深く理解したエンジニア・データサイエンティストが在籍しています。SOMPOホールディングスは、「安心・安全・健康のリアルデータプラットフォーム」の早期実現に、DXソリューションの支援実績が豊富なABEJAとの連携が欠かせないと判断し、資本業務提携に至りました。

参照元:SOMPOホールディングス株式会社「ABEJA と資本業務提携契約を締結~「安心・安全・健康のリアルデータプラットフォーム」の早期実現に向けた出資~ 」

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介護関連事業者によるM&A事例2選

在宅介護や施設介護を提供する介護業界だけでなく、介護関連業界でもM&Aが実施されています。介護関連業界の具体例は、介護・福祉用品のレンタルサービスや卸売などです。

今回は、介護関連事業者によるM&A事例として、以下の2つを紹介します。

  • 介護用具卸売事業者と販売業者のM&A
  • サイバーエージェントの介護関連事業者への出資

それぞれ具体的な内容を確認していきましょう。

介護用具卸売事業者と販売業者のM&A

2021年2月に、医療機器販売業を主な事業とする株式会社栗原医療器械店(以下、栗原医療器械店)が、株式会社セラピ(以下、セラピ)の事業を承継した事例です。

セラピは、新潟県で福祉用具・医療器具卸売、福祉用具レンタルなどを営んでいました。それに対して、栗原医療器械店は北関東および首都圏エリアを中心に営業展開する会社です。

販売価格の下落や競争激化による利益率が低下する環境下で、栗原医療器械店はM&Aによる事業規模拡大を経営目標として掲げていました。栗原医療器械店では、セラピの事業承継がヘルスケア事業のエリア拡大やシナジー効果発揮につながるものと見込んでいます。

参照元:株式会社栗原医療器械店「株式会社セラピからの事業承継に関するお知らせ」

サイバーエージェントの介護関連事業者への出資

株式会社サイバーエージェントの連結子会社である株式会社サイバーエージェント・キャピタルが、2021年にメダ株式会社(以下、メダ)に出資した事例もあります。

メダは、2020年に事業開発を開始し、翌年3月に法人設立されたばかりのスタートアップです。労働環境の悪化と人材不足で状況が逼迫している介護の現場で、事務負担を減らすためのデジタルプラットフォームを提供しています。

メダはプロダクト開発を加速させる目的で、サイバーエージェント・キャピタルや介護業界からの出資を受けました。

参照元:株式会社サイバーエージェント・キャピタル「介護書類クラウド管理、メダ株式会社に出資」

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介護M&Aの2つの手法

介護M&Aでよくある手法は、「事業譲渡」と「株式譲渡」です。
それぞれどのようなM&Aなのか、解説します。

事業譲渡

「事業譲渡」とは、会社が営んでいる事業の一部またはすべてを第三者に売却するM&Aの手法です。
事業譲渡では事業のみを譲渡するので、会社の経営権自体は移行しません。
事業譲渡のメリットは、譲渡する資産を選択できることや、経営リソースをコントロールできることなどです。

株式譲渡

「株式譲渡」とは、会社が所有している株式を売却するM&Aの手法です。
所有する株式の過半数以上を譲渡することによって、会社の経営権が譲受側に移ります。
株式譲渡の大きなメリットの1つは、譲渡までの手続きがほかのM&Aの手法と比べて簡易であることです。

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介護M&Aをしたときの売却相場を知る方法

介護M&Aを行ったときの売却相場は、実施するか否かの判断材料になります。
今すぐに介護M&Aを実施する予定がなくても、売却相場をチェックしておくことがおすすめです。

介護M&Aを行ったときの売却相場を算出する方法は、主に以下の4つです。

  1. DCF法
  2. 類似会社比較法
  3. 年買法
  4. 時価純資産法

それぞれの計算方法について解説します。

1.DCF法

「DCF法(Discounted Cash Flow 法)」とは、介護M&Aによる売却相場を割引現在価値を使って算出する方法です。大企業のM&Aの価値算定によく用いられます。
将来的に得られるキャッシュ・フローを見積もって、ディスカウントレートを用いて割引現在価値を算出します。

関連記事:DCF法とは?計算方法やメリット・デメリットをわかりやすく解説

2.類似会社比較法

「類似会社比較法」とは、売却予定の会社と内容が似ている上場企業の株価を参考に、介護M&Aでの売却相場を算定する方法です。「マルチプル法」と呼ばれることもあります。

計算式は、「自社の経常利益×(参考上場企業の株式時価総額÷経常利益)」です。この「参考上場企業の株式時価総額÷経常利益」が参考の倍率となります。

倍率を求めるやり方には、主に企業の評価指標であるEBITDAが用いられます。
そのほか、財務諸表にある売上高や営業利益、当期純利益などを利用することもあるようです。

3.年買法

「年買法」とは、時価純資産に数年分の営業利益を足すことによって価値算定する方法です。「年倍法」とも表記します。

年買法は比較的簡易な方法です。正確性はあまり高くありませんが、介護M&Aにおける大まかな価格相場をすぐに算出できます。

計算式は「時価純資産+営業利益×任意の年数」です。任意の年数には「売却予定の事業の営業利益が見込まれる年数」を挿入してください。通常、1~5年の間の年数が使用されることがほとんどです。

4.時価純資産法

「時価純資産法」とは、介護M&Aにおける売却相場を純資産の時価をもとに求める方法です。
時価に左右されやすい土地が売却対象に多く含まれる場合によく活用されます。
また、赤字になっている事業の価値算定をするときにも時価純資産法が利用されます。

まず事業が保有している資産と負債の時価を出してください。そして、資産の時価から負債の時価を引きましょう。そうして算定された純資産の時価が、介護M&Aにおける売却相場です。

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介護業界でM&Aをする買い手側の6つのメリット

介護業界でM&Aをする買い手側のメリットは、主に以下の6つです。

  1. 人材を確保できる
  2. ノウハウを獲得できる
  3. シェアを拡大できる
  4. 新規参入しやすくなる
  5. 許認可を獲得できる
  6. 簿外債務を引き継ぐリスクがない

順に見ていきましょう。

1.人材を確保できる

介護M&Aでは従業員も承継するため、人材を確保することができます。しかも、承継する従業員は経験を積んできていることがほとんどです。

通常であれば介護業務に慣れるまでに時間を要しますが、介護M&Aで従業員を承継した場合、育成にかかる時間を短縮できます。

2.ノウハウを獲得できる

介護M&Aのメリットの1つは、売却先の企業が培ってきたノウハウを獲得できることです。
独自性が高いノウハウは本来であれば一朝一夕には獲得できないものであり、非常に価値が高いといえるでしょう。

3.シェアを拡大できる

介護M&Aによって未開拓の地域に根付く会社を買収すれば、新しいエリアに自社のシェアを広げることができます。
すでに地域の住民に親しまれている状態から介護事業をスタートできることもメリットです。

4.新規参入しやすくなる

異業種の事業を営んできた会社が新たに介護業界に参入する場合、設備やノウハウ、従業員など、介護事業を始めるために必要な要素を一気に揃えられる点もメリットだといえるでしょう。
また、介護業界ですでに実績を重ねてきた会社を買収すれば、顧客からの信頼度も同時に獲得できるでしょう。

5.許認可を獲得できる

買収する会社で取得している許認可を獲得できる点もメリットの一つです。

株式譲渡の手法によって介護M&Aを実施した場合は、法人の介護指定に影響がありません。
そのため、許認可を新たに申請することなく介護事業を営むことができます。

事業譲渡の手法で介護M&Aを行った場合は、許認可は自動では引き継がれません。売却側の企業が廃止届を出し、買収側の企業が新規申請を出す必要があります。
ただ、過去に売却側の企業が提出した資料を参考にできるため、一から許認可の手続きをするよりも少ない労力で許認可を獲得することが可能です。

6.簿外債務を引き継ぐリスクがない

M&Aの手法に事業譲渡を選んだ場合のメリットとして、簿外債務を引き継ぐリスクがないことが挙げられます。

簿外債務とは、貸借対照表上に載せていない、隠れた債務のことです。簿外債務を引き継いでしまった場合、買収後の経営を悪化させてしまうおそれがあります。

事業譲渡は一部の事業を買い取る手法であるため、会社が抱える簿外債務を引き継ぐことはありません。

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介護業界でM&Aをする売り手側の6つのメリット

介護業界でM&Aをする売り手側のメリットは、主に以下の6つです。

  1. 売却益が得られる
  2. 後継者問題を解決できる
  3. 従業員の雇用を守ることができる
  4. 人員が充足する
  5. 従業員の労働環境が良くなる
  6. 経営リソースを集中させられる

それぞれ詳しく解説します。

1.売却益が得られる

M&Aを行うメリットの1つは、売却益を得られることです。
会社や事業所を売却せず廃業することを選んだ場合、廃業手続きに必要なコストがかかります。
その点、M&Aで会社や事業を譲渡すれば、売却益を獲得することができます。売却益を新しい事業の元手にしたり、得られた資金を生活費に充てたりすることができるでしょう。

2.後継者問題を解決できる

M&Aを実施することによって、後継者問題の解決にもつながります。

近年、日本では経営者の高齢化が進み、親族内・社内に会社を引き継ぐ人が見つからず、廃業に追い込まれる企業が増加しています。
M&Aを実施して第三者に企業や事業を引き継ぐことができれば、後継者が見つからなくても会社を継続させることが可能です。

3.従業員の雇用を守ることができる

廃業する場合、今まで働いていた従業員の雇用を継続させることができなくなります。
M&Aでは従業員も承継されるため、会社や事業の譲渡後も従業員はそのまま働き続けることができます。

4.人員が充足する

M&Aを実施するメリットの1つは、人員が充足することです。

同業の会社に対してM&Aを実施して売却を行った場合、買い手側の従業員も現場に配置されることになります。
もともと人員が不足していて手一杯だった現場も、買い手側の従業員が配置されれば人員が充足し、働く人たちの負担が軽減されるでしょう。

5.従業員の労働環境が良くなる

買収する側の企業は経営資源が豊かであることがほとんどです。
そのため、M&Aによって従業員の待遇や職場環境が改善され、以前より良くなることが多いでしょう。

また、M&Aによって役職のポストが増えて、キャリアアップのチャンスが生まれることもあります。

6.経営リソースを集中させられる

M&Aを事業譲渡の手法を用いて実施した場合のメリットは、経営リソースを集中させられることです。
自社の経営にとって不要になった介護事業を売却すれば、ほかの事業に注力できます。売却益を事業に投資することも可能です。

経営リソースをコントロールすることで、経営改善が期待できるでしょう。

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介護業界でM&Aする際に気をつけること

介護業界でM&Aを実施する際に、売り手も買い手も気をつけなければならないことがあります。
気をつけるべき点が、以下のとおりです。

  • 補助金を受け取っていないか確認する(売り手)
  • 行政へ届け出る(買い手)
  • 従業員の資格を確認する(買い手)
  • 介護報酬改定のタイミングを把握する(買い手)

それぞれ詳しく解説します。

補助金を受け取っていないか確認する(売り手)

介護事業を営む売り手は、過去に補助金を受け取っていないかあらかじめ確認することが大切です。施設を建設する際や設備を増設する際などに、補助金を受け取っているかどうかを確認しましょう。

M&Aで事業譲渡を選択した場合、過去に受け取った補助金の一部あるいは全部の返還を求められる可能性があります。

なお、補助金の取り扱いについては管轄する行政によって異なるので、問い合わせて確認してください。

行政へ届け出る(買い手)

介護保険法に基づく介護保険施設を運営する場合、介護保険事業者としての指定申請が必要です。

株式譲渡によるM&Aであれば、そのまま引き継ぎが可能ですが、事業譲渡の場合は新たに申請が必要な点に注意しなければなりません。申請には数ヶ月の期間を要するため、事業譲渡で引き継ぐ場合は早めに準備するようにしましょう。

従業員の資格を確認する(買い手)

M&Aにあたって、従業員の資格を確認するようにしましょう。なぜなら、資格をもった従業員がいなければサービスを提供できないことがあるためです。

たとえば、通所介護サービスを提供するには、社会福祉士などの資格を持つ生活指導員や、看護師・准看護師などの看護職員などがいなければなりません。
M&Aの実施後にも有資格者が退職せずに雇用が継続されるか確認しましょう。もし施設内で資格を持った従業員が退職すると、事業の継続が困難になるので気を付けましょう。

介護報酬改定のタイミングを把握する(買い手)

介護報酬改定のタイミングを、買い手はあらかじめ把握しておかなければなりません。介護サービスを提供する事業者に支払われる介護報酬は、基本的に公的介護保険が見直される3年に1度の周期で改定されます。

業績を左右することもあるため、介護報酬が改定されるタイミングを見計らってM&Aを進めることも検討しましょう。

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介護M&Aの案件の探し方

介護M&Aの案件を探す方法には、以下のようなものがあります。

  1. 知人にあたる
  2. 金融機関に相談する
  3. マッチングサイトで検索する
  4. 介護M&Aに強い仲介会社を利用する

それぞれの特徴を捉え、自社の介護M&Aに合った方法で探しましょう。

1.知人にあたる

知り合いの経営者に「介護M&Aをしたい」と考えている人がいないか、あたってみましょう。
もともと知っている会社であれば、経営方針が合うかどうかを一から調べずとも分かります。

経営者の人柄も知っているので、全く知らない相手に介護M&Aを持ちかけるよりも安心感がある状態で進められるでしょう。

2.金融機関に相談する

M&Aの相談窓口を開設している金融機関も存在します。介護M&Aについて、取引している金融機関に相談してみましょう。

金融機関は多数の地元企業と取引を行っています。
そのため、地域に根付いた会社との介護M&Aを望んでいる場合に特におすすめの相談先です。

3.マッチングサイトで検索する

M&Aのマッチングサイトで介護M&Aの案件を探すことが可能です。サイト上の検索条件において、業種を介護関連に指定して検索してください。

マッチングサイトでは、業種以外にも、地域や規模、売上高などで絞り込むことができます。M&Aの詳細な希望条件が定まっていれば、望んでいる案件を見つけやすいでしょう。

4.介護M&Aに強い仲介会社を利用する

介護M&Aの案件を探すときは、仲介会社の利用を検討しましょう。
M&Aの仲介会社は、豊富なデータベースやコネクションを保有しているため、候補先を紹介してくれます。
特に、介護領域のM&Aの領域に強い仲介会社であれば、より多くの候補先から案件を選ぶことが可能になるでしょう。

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介護M&Aで売却を成功させる4つのポイント

ここでは、介護M&Aで売却を成功させるポイントを4つ紹介します。

  1. 相談先を早めに見つける
  2. 売却対象の現状分析をする
  3. 適正な売却価格を把握する
  4. 将来性をアピールする

ポイントを押さえて、介護M&Aを成功に導きましょう。

1.相談先を早めに見つける

M&Aの相談先を早い段階で見つけましょう。

M&Aを実施するまでには、多数の準備が必要です。準備には多大な時間がかかります。
売却を希望する時期にM&Aを実行に移せるように、相談は早めに始めてください。

相談先探しを早めに始めれば、自社に合った相談先を精査する余裕もできます。焦らず探して、複数社を比較したうえで相談先を決定しましょう。

2.売却対象の現状分析をする

売却する予定の会社・事業について、徹底した現状分析を行いましょう。
認識と実際の現状に差異があると、買収側企業とのトラブルの種になる恐れがあります。正しく把握し、正しく伝えることが大切です。

介護M&Aの場合は、施設の設備や利用者の属性も分析の対象です。また、施設の特徴や従業員が持つ技術についても分析しておきましょう。

3.適正な売却価格を把握する

M&Aを満足のいく結果にするために、適正な売却価格を把握してください。事前に適正価格を知っておくことにより、不当に安い金額で買い叩かれることを防止できます。

自力で適正価格を算出することは難しいので、介護M&Aを取り扱うマッチングサイトや仲介会社などに依頼することがおすすめです。
ほとんどの業者が無料で価値算定をしてくれるので、いくつかの業者に依頼して比較してみるのもよいでしょう。

4.将来性をアピールする

売却する会社・事業の将来性をアピールしましょう。売却対象の将来性を伝えることができれば、買い手が見つかりやすくなります。
買い手にうまく将来性をアピールできた場合、売却する際の価格が上がる可能性が高まるでしょう。

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介護M&Aの仲介会社を選ぶときの4つのポイント

介護M&Aの仲介会社を選ぶときのポイントは、以下の4つです。

  1. 取り扱う案件数が多いか
  2. 介護M&Aの実績があるか
  3. 対応が早いか
  4. かかる費用はどれくらいか

適切な仲介会社に依頼すれば、介護M&Aが円滑に進みます。
しっかり下調べをして、問い合わせしましょう。

1.取り扱う案件数が多いか

介護業界のM&Aの仲介会社を選ぶ際は、取り扱う案件数を調べましょう。取り扱う案件数が多ければ多いほど、選択肢が広がります。たくさんの案件があれば、希望条件に合った案件が見つかる可能性が高まります。

2.介護業界のM&Aの実績があるか

仲介会社を選ぶときのポイントは、介護業界でのM&Aの実績の有無です。

介護業界では、通常のM&Aと異なり、施設形態や利用者の属性、許認可などをチェックする必要があります。
また、介護・福祉業界の施設の種類は多岐にわたり、そのうえ法律や基準が頻繁に変更されます。知識が全くないM&Aの仲介会社では、サポートが不十分になる恐れがあるでしょう。

そのため、介護・福祉業界に精通しており、介護業界でのM&Aの実績がある仲介会社を選ぶことがおすすめです。

3.対応が早いか

介護業界のM&Aの市場は常に変わり、需要数も変動しています。仲介会社側の対応が遅いと好機を逃し、M&Aが失敗に終わってしまう可能性があります。
そのため、できる限り迅速に対応してくれる仲介会社を選びましょう。最初の問い合わせに対するリアクションから見極めてください。

4.かかる費用はどれくらいか

介護M&Aの仲介会社を選ぶときは、どれくらいの費用がかかるのかを必ずチェックしましょう。

譲渡会社側は成功報酬のみの支払いに設定しているM&A仲介会社が多いですが、成約の過程で料金が発生するM&A仲介会社も存在します。

想定外の出費が発生しないよう、依頼前に料金体系をしっかり調べてください。

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まとめ

介護業界のM&Aには、他業種の会社が介護事業を営む会社をM&Aするケース、介護事業を営む会社が他業種の会社をM&Aするケース、介護業界同士でM&Aするケースなどがあります。介護M&Aでよく用いられるスキームは事業譲渡あるいは株式譲渡です。

介護業界でのM&Aにおける買い手側のメリットには、人材の確保やノウハウの獲得、介護業界への新規参入ができることなどが挙げられます。売り手側のメリットは、売却益の獲得や後継者問題の解決、従業員の雇用を守れることなどです。

介護M&Aを実施することで多くのメリットが得られる一方、補助金の受給の有無や介護報酬改定のタイミングを確認しなければならないなど、注意すべき点も多数あります。細かな確認事項があるうえ、M&Aに関する専門知識も必要なので、介護業界のM&Aを進める際は早めに専門家に相談することがおすすめです。M&A仲介会社を選ぶ際は、あらかじめ料金体系を調べたり、介護M&Aの支援に長けているかを確認したりしましょう。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、介護M&AをはじめとするM&A全般をサポートする仲介会社です。
各領域に精通したコンサルタントも在籍しており、あらゆるプロセスにおいて的確なアドバイスを提供します。

料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型で、M&Aご成約まで無料で利用できます(譲受会社のみ中間金あり)。
ご相談も無料です。介護M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。