ゴルフ場業界のM&A最新動向・事例・買収や売却のメリットを解説
2024年4月26日
このページのまとめ
- ゴルフ場業界はバブル期以降に倒産件数が増加した
- ゴルフ場業界の市場規模は緩やかに減少しているが、一定の需要はある
- ゴルフ場業界では会員の高齢化や後継者不足などの課題が目立つ
- ゴルフ場のM&Aにおける売却価格は上昇傾向にある
- M&Aの際は、継続利用者の多さや立地の良さをアピールすることが大切
事業の多角化やスケールメリットを狙って、ゴルフ場のM&Aを検討している企業もいることでしょう。ゴルフ場は一定の需要が見込める業界であるため、収益の柱を増やす手段のひとつとして適切といえます。
本コラムではゴルフ場のM&Aにあたって押さえるべき最新動向や売却時のポイント、必要な手続きの流れなどについて解説します。ゴルフ場のM&Aでは億単位の金額が動くため、失敗が起きないよう必要な情報を入念にチェックしておきましょう。
目次
ゴルフ場業界とは
ゴルフ場業界のM&Aを考えるうえでは、定義や特徴を把握しておくことが大切です。
ゴルフ場業界の定義
ゴルフ場業界とは、ゴルフのプレーを目的として、広大な敷地に専用コースを備えた施設のことです。ゴルフクラブやカントリークラブと呼ばれることもあります。
ゴルフ場には、ゴルフコース以外にレストランやシャワー室、ホテルなどが併設されているケースも多いです。打ちっ放しのようにコースを回らない形式の場合は「ゴルフ練習場」と呼んで区別されます。
東京都主税局によると、以下いずれかの要件に当てはまる施設が「ゴルフ場」としてゴルフ場利用税の対象となっています
- ホール数が18ホール以上であり、ホール平均距離が100m以上の施設
- ホール数が9ホール以上であり、ホール平均距離がおおむね150m以上の施設
また、日本国内にあるゴルフ関連施設の数はそれぞれ以下のとおりです。
- ゴルフ場:2,257(2017年時点)
- ゴルフ練習場:3,840(2023年10月時点)
参照元:
東京都主税局「ゴルフ場利用税」
一季出版株式会社「全国営業中ゴルフ場数は2132コースに」
公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟「ゴルフ事業に関する調査および研究」
ゴルフ場業界の特徴
ゴルフ場業界の主な特徴は以下の3つです。
- プレイヤーのレベルに応じて、さまざまなコースが用意されている
- 各ゴルフ場の経営の仕組みが異なる
- 利用者からは、税金が発生する場合がある
ゴルフ場には、プレイヤーのレベルに応じてさまざまなコースが用意されています。
具体的には「初心者向けの低難易度コース」と「競技者向けの高難易度コース」の2種類です。さらに細かく分類すると、以下の6タイプに分かれます。
経営の仕組みについては、大きく以下の2つにわかれます。
また、ゴルフ場の利用にあたっては「ゴルフ場利用税」という税金が発生します。
ゴルフ場利用税は利用日ごとに定額で発生するものですが、地方自治体ごとに税額の決定権があるため、全国一律の税金ではありません。例として、東京都主税局の場合、ゴルフ場のホール数・利用料金などにより定められた等級ごとの税額が以下のとおりとなります。
等級 | 1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 | 8級 |
税率 | 1,200円 | 1,100円 | 1,000円 | 900円 | 800円 | 600円 | 500円 | 400円 |
参照元:東京都主税局「ゴルフ場利用税」
ゴルフ場業界の歴史
ゴルフ場業界の歴史を辿ることで、今後のゴルフ場業界の動向を予想するヒントが得られますので、以下のポイントを押さえておきましょう。
- バブル時代にゴルフ場業界が成長
- バブル崩壊後、多くのゴルフ場が経営破綻
- 現在、業界規模は緩やかに縮小している
それぞれ詳しく解説します。
バブルとともにゴルフ場業界が成長
ゴルフ場業界は、バブルとあわせて発展してきた歴史を持ちます。
経済産業省によると、ゴルフ場業界の売り上げは1975年から1992年のピークにかけて、以下のように年々増加していました。
年数 | 売上 |
1975年 | 3,726億円 |
1976年 | 4,044億円 |
1980年 | 5,220億円 |
1985年 | 8,303億円 |
1988年 | 1兆959億円 |
1991年 | 1兆5,386億円 |
1992年 | 1兆7,261億円 |
バブル期はゴルフをするという行為自体がステータスとして捉えられていた時期であり、富裕層や法人を中心に大きな人気を獲得していました。
参照元:経済産業省「ゴルフ場の概況」p.11
バブル終了後に続々とゴルフ場の経営破綻が起こる
ゴルフ場はバブル期の真っ只中において、大きな市場規模を獲得していました。しかし、バブル終了後はブームに翳りが見えはじめます。1992年以降、ゴルフ業界の市場規模は以下のように年々減少していきました。
年数 | 売上 |
1994年 | 1兆7,076億円 |
1997年 | 1兆5,311億円 |
2001年 | 1兆1,554億円 |
さらに、バブル終了後の市場規模縮小に伴い、ゴルフ場の倒産件数も増加しました。最近のゴルフ場事情に掲載されている「ゴルフ場経営会社の倒産件数推移」によると、1992年からの全国のゴルフ場倒産件数は以下のようになっています。
年数 | 倒産件数 |
1992年 | 14件 |
1993年 | 20件 |
1994年 | 10件 |
1995年 | 13件 |
1996年 | 9件 |
1997年 | 12件 |
1998年 | 17件 |
1999年 | 25件 |
2000年 | 33件 |
2001年 | 51件 |
2002年 | 108件 |
出典:国立国会図書館ウェブサイト(https://www.dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8225030&contentNo=1)を加工して作成
バブル終了後から徐々に倒産件数が増えはじめ、2000年代に突入してからは急激に増加していることがわかります。中には、会社更正法や民事再生法を適用しつつ営業を継続している企業も存在します。
しかし、大幅な料金値下げを行うことで近隣ゴルフ場の経営を圧迫されるなど、業界全体としては縮小に拍車をかけている状態です。
経済産業省のデータによれば、2018年の4月時点での倒産件数は、2017年全体の件数を上回っています。2005年以降、倒産件数は減少傾向にあったものの、2010年〜2018年の間に数値は緩やかに上下しており、市場が盛況であるとはいえません。
ゴルフ用品には高額な投資が必要なため、バブル期の好景気が終わりを迎えた影響は無視できないでしょう。
現在の業界規模は緩やかに回復傾向
ゴルフ場の経営破綻で解説した倒産件数の傾向から明らかなように、ゴルフ場の市場規模はバブル期以降、縮小し続けていました。さらには、2018年からコロナ禍の影響もあり、9,000億円前後の市場規模まで縮小しました。
しかし、コロナ禍以降のゴルフ場の市場規模は回復傾向を見せており、2022年には1兆円規模まで回復しています。
年数 | 市場規模 |
2018年 | 8,883億円 |
2019年 | 9,175億円 |
2020年 | 7,989億円 |
2021年 | 9,442億円 |
2022年 | 1兆201億円 |
2023年 | 1兆577億円 |
参照元:経済産業省「経済産業省特定サービス産業動態統計調査」
回復の背景には、コロナ禍による自粛の反動で、ゴルフの利用者が増加したことが原因で、それに伴って市場規模が回復したと考えられます。
しかし、バブル期のゴルフ人口がピークに達した1992年にあった市場規模、1兆7,261億円と比較すると、まだまだ回復しきれていない現状があります。
市場規模の回復には、ゴルフ利用者数の増加が1つの指標となりますが、どのような利用者数の推移となっているのか以下の表にまとめました。
年数 | 利用者数 |
2018年 | 892万人 |
2019年 | 929万人 |
2020年 | 891万人 |
2021年 | 1025万人 |
2022年 | 1053万人 |
2023年 | 1050万人 |
参照元:経済産業省「経済産業省特定サービス産業動態統計調査」
コロナ禍で自粛ムードがピークに達していた2018年には、利用者数が892万人に落ち込み、2020年までは900万人前後の低迷を続けていました。
しかし、コロナ禍の影響が薄れ始めた2021年からは利用者数が1000万人を突破し、利用者数に関しても回復傾向にあります。
しかしながら、コロナ禍の影響が小さくなっても、市場規模が大きく増加するほど利用者が伸びることもなく、今後は1人当たりの売り上げ高を高めるような動きを業界全体で行わないと市場規模の成長は横ばいとなる可能性もあります。
ゴルフ場が抱えている課題
ゴルフ場の市場規模が、今後急激に減少するという事態は発生しにくいと考えられています。
しかし、緩やかながらも市場規模が減少していることは事実です。
ゴルフ業界では、市場規模の縮小も含め、以下のような課題が浮き彫りとなっています。
- 現会員の高年齢化
- 廃業・倒産するゴルフ場の増加
- 後継者不足
それぞれの課題について詳しく解説します。
現会員の高年齢化
ゴルフ場業界では、現会員の高年齢化が課題となっています。
経済産業省の調査によれば、ゴルフ利用者の各年代における1回当たりのゴルフプレー料金とゴルフプレー購入頻度の割合は次のように変化しています。
参照元:経済産業省「令和 4 年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業」
参照元:経済産業省「令和 4 年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業」
上記2つのグラフを見ると、50代以降のゴルフプレー購入頻度が多く、さらには支出金額に関しても多くの割合を占めることが分かります。
就労している年代では、ゴルフプレーの購入頻度には限界があり、退職後に購入頻度が増す傾向は今後も変わらないことが予想されます。
また、高齢になるとプレーできるスポーツに制限がかかることや退職することで仕事関係での支出がなくなるため、ゴルフプレーにかける支出額も高まるのではないかと考えられます。
利用者の高齢化という課題に対して、若年層に対するアプローチが必要ですが、以前のように接待でゴルフをプレーするような文化が薄れつつあり、ゴルフに触れる機会がそもそも減ってしまっているのが現状です。
20代〜30代に対して、ゴルフに触れる機会を業界全体で作り出していく必要があります。
廃業・倒産するゴルフ場の増加
廃業・倒産するゴルフ場の増加も大きな課題です。バブル崩壊以降、経営難によるゴルフ場の倒産件数は増加傾向にあります。
参照元:株式会社データバンク「ゴルフ場経営企業の倒産動向調査2018」
1990年代初頭のゴルフ場の倒産件数は、1年あたり10件台で推移していました。バブル期は富裕層や法人にとってゴルフがステータスとなっていたため、全国のプレー人数も多く、経営が順調なゴルフ場が多かったでしょう。
しかし、バブルが崩壊し2000年代に突入してから、倒産件数が50件を超える年が発生するなど、倒産件数の増加が加速しています。
2012年以降は、12~22件の間で推移しており、2000年代に比べると倒産の増加速度はゆるやかになりました。
2018年に再び20件と増えている箇所については、コロナの影響もあり、自粛ムードの中で利用者数が減ったことが原因だと考えられます。
後継者不足
さまざまな業界で後継者不足が課題となっていますが、ゴルフ業界も後継者不足に悩まされています
中小企業庁が発表したデータによると、中小企業における経営者の平均年齢は2020年時点で「60〜70代」という結果になりました。年齢的にも「後継者に道を譲り引退したい」と考える人は多いですが、70代の経営者のうち約40%が「後継者不在」と回答しています。
ゴルフ業界でも後継者不足の状況は同じです。
日本ゴルフ場経営者協会も公式レポートの中で以下のように発言しています。
“しかしながら、超高齢社会における労働力人口の減少を受け、ゴルフ場業界も人材不足、特に若年者の採用が非常に難しいといった問題に直面しています。”
上記のような人材不足の中で、ゴルフ場の経営まで任せられる人物を見つけるのは簡単ではありません。後継者が見つからなければ、今後ゴルフ場の倒産件数は増加していくことでしょう。
参照元:
中小企業庁『財務サポート 「事業承継」』
一般社団法人 日本ゴルフ場経営者協会「ゴルフ場業高齢者活躍に向けたガイドライン」
ゴルフ場業界におけるM&Aの最新動向
ゴルフ場業界では、緩やかながらも市場規模の縮小や後継者不足などが課題となっています。
上記の課題を解消する方法のひとつとして、M&Aに注目する企業が増えています。
ゴルフ場の売買価格が急上昇中
一時期は下がっていましたが直近の傾向として、ゴルフ場の売買価格は上昇傾向にあります。
売買価格上昇の要因のひとつとしては「ゴルフ事業の拡大を目指している事業者が増えた」という点が挙げられるでしょう。
また、海外からのゴルフ需要が増加していることも売買価格の上昇に影響しているでしょう。
例えば、韓国の不動産事業などを運営するサイカンホールディングスは、佐賀県の天山カントリークラブを買収しました。
佐賀は飛行機でアクセスしやすく、韓国のプレー料金よりもリーズナブルなので、買収の価値が高かったと考えられます。
ゴルフ業界は、市場が減少傾向にあるかもしれませんが、一定の需要が期待できる業界であるため、M&Aによる売買価格も上昇していると推測できます。
参照元:佐賀新聞『「韓国からの客で佐賀発展を」サイカンHD会長ら佐賀新聞社訪問 佐賀県内でゴルフ場運営』
単一ゴルフ場は苦しい経営が続く
ゴルフ場の売買価格が急上昇中で紹介した、サイカンホールディングスのように複数の事業を運営する企業は、多岐にわたる収益の柱があるため、経営を安定させやすいです。
一方で、単一のゴルフ場の経営は、主な収入は「ゴルフ場経営」のみに絞られます。そのため、市場規模の縮小やプレー人数の減少は、売り上げに大きく影響します。
また、土地や設備の維持費が膨大なため、経営の継続は容易ではありません。このような困難な状態を乗り越えるため、ゴルフ場を売却するケースが増えています。
さらに、単一のゴルフ場には、他業種の企業が「経営の多角化」を目的として買収することがあります。外国人投資家や個人による買収のケースも見られる点に留意しておきましょう。
大手企業による業界の寡占化
ゴルフ業界では大手企業による寡占状態も大きくなっています。
経済産業省の調査によれば、2019年時点のゴルフ場事業者の売り上げランキングは以下のとおりです。
順位 | 社名 | 売上 | 備考 |
1位 | PGMプロパティーズ | 約700億円 | PGMグループ |
2位 | パシフィックゴルフマネージメント | 約320億円 | PGMグループ |
3位 | ユニマットプレシャス | 約290億円 | |
4位 | ネクスト・ゴルフマネジメント | 約200億円 | アコーディアグループ |
5位 | アコーディアゴルフ | 約150億円 | アコーディアグループ |
6位 | 太平洋クラブ | 約120億円 | |
7位 | 富士観光開発 | 約90億円 | |
8位 | アコーディアAHO1 | 約80億円 | アコーディアグループ |
9位 | 新日本観光 | 約80億円 | |
10位 | 日本観光開発 | 約50億円 |
このデータを見ると、「PGMグループ」「アコーディアグループ」の寡占状態が目立ちます。
両グループは、ほかのゴルフ場とM&Aを繰り返した結果、業界内で大きな規模を持つようになりました。
上記のように、ゴルフ場のM&Aが活発で、業界再編が進行中です。コロナ禍の影響や海外からの需要なども背景に、M&Aの動きは今後も加速していくと予測されます。
ゴルフ場をM&A・株式譲渡・事業譲渡するメリット
ゴルフ場は市場全体としても業界再編の真っ只中です。そのような状況下でゴルフ場をM&A(あるいは株式譲渡や事業譲渡)することで、メリットを享受できます。ここでは、買収側・売却側それぞれのメリットについて解説します。
買収側のメリット
買収側のメリットは以下のとおりです。
- 拠点が増えるので事業基盤が安定する
- ゴルフ会員を増やすことができる
- スケールメリットを活かせる
それぞれ詳しく解説します。
拠点が増えるので事業基盤が安定する
ゴルフ場のM&Aによって拠点を増やせれば、事業基盤を安定させられます。
自社で経営するゴルフ場がひとつだけの場合、収益の柱が限られるため事業も不安定になりがちです。特にゴルフ場の場合は、土地や施設の維持費負担が大きいため、経営不振に陥った際のリカバリーが難しくなるでしょう。
M&Aによってゴルフ場の拠点が増えれば、収益の柱を複数作れるため事業基盤が安定します。
仮に赤字の拠点があっても、ほかのゴルフ場の収益でカバーできるため、経営上の安心材料も増えるでしょう。
また、韓国企業が佐賀県のゴルフ場を買収したように、他国への事業進出で売り上げを伸ばせる点もM&Aの大きなメリットです。
プレー料金がリーズナブルな国へ進出できれば、利用者数を伸ばして経営基盤をより安定させることが期待できます。
ゴルフ会員を増やすことができる
M&Aによって自社のゴルフ会員を増やせます。
経済産業省の調査によると、現存するゴルフ場の9割以上が「会員制」を採用しています。会員制の場合は「会員権」を購入する必要があり、ゴルフ場からすると貴重な収入源です。
しかし、会員権は最低でも3万円程度、高ければ100万円以上かかるため、気軽に購入できるものではありません。場所によっては1,000万円近くになるケースもあるため、新規会員の獲得はハードルが高いでしょう。
M&Aでは、買収先のゴルフ場が抱える会員をそのまま引き継いで、自社の会員数を増やせます。新規会員獲得のためにコストを割かなくて良い点や市場シェアの拡大は、M&Aのメリットです。これにより、自社の影響力も高められます。
スケールメリットを活かせる
ゴルフ場をM&Aすることで、スケールメリットを活かせる点も魅力です。
スケールメリットとは、規模の経済と呼ばれる概念です。自社の規模を大きくすることで、以下のようにさまざまなメリットを享受できます。
- 生産量を拡大できる
- 経営上のコストを削減できる
- 事業を効率化できる
- 市場への影響力を大きくできる
例えば今回のケースでいえば、すでに自社がゴルフ場を運営しているなら、経営のノウハウを持っていることになります。すでにノウハウがある状態で同じようなゴルフ場を買収できれば、ゼロからスキルを模索する必要がないため、効率良く運営できます。
ゴルフ場のM&Aでは土地や施設も引き継ぐため、自社で新たに参入するよりも手間とコストがかかりません。また、自社の規模が大きくなれば市場への影響力も増えるため、自然と顧客が集まりやすい状態を作れます。
売却・事業譲渡側企業のメリット
売却・事業譲渡側企業のメリットは以下のとおりです。
- 負債の解消ができる
- 既存会員権やゴルフ場の維持が可能となる
- 後継者問題が解決する
- 既存従業員の雇用を維持できる
それぞれ詳しく解説します。
負債の解消ができる
ゴルフ場の経営には、広大な土地や施設が必要となり、初期投資額も膨らみがちです。特にゴルフ場の場合、新規で建設する際には預託金という形で会員から資金を集めることが一般的です。
しかし、受け取った預託金は一定期間後に会員へ返還する義務があります。このような負債を抱えた状態で経営をはじめたにもかかわらず、成果が上がらないと経営者にとって大きな痛手となります。
M&Aを活用すると、買収側・売却側の同意があれば、資産だけでなく負債も引き継ぐことが可能です。自社の負債を買収側に引き継いでもらえれば、経営の大きな負担が軽減されるでしょう。
さらに、売却価格が高くなれば、負債を解消するだけでなく、自身の資産も増加します。
既存会員権やゴルフ場の維持が可能となる
M&Aを実施することで、既存の会員権やゴルフ場を維持できます。
万が一、自社のゴルフ場が倒産すれば、会員が持つ預託金やプレーの権利などは喪失します。
ゴルフ場もなくなるため、プレーそのものができません。ゴルフ場側としては、支払いをしてくれた会員に損失を被らせることは避けたいでしょう。
M&Aの場合、既存の会員権を引き継ぎながらゴルフ場自体も残せるため、会員にとってもメリットがあります。
後継者問題が解決する
M&Aの実施によって、後継者不足の問題を解決できます。
日本は高齢化が進行しているため、多くの中小企業の経営者が60代以上となっています。数年後に引退する経営者が増加すると予想される中で、後継者探しは重要となります。
しかし、若い世代の人数も減少しているので、経営者として適切な人物を探すのは難しいのが現状です。
M&Aを活用すれば、外部の人物から経営者候補を探せます。より多くの選択肢があれば、優秀な後継者を見つけやすくなるでしょう。後継者が決まれば、自社のゴルフ場もこれまでどおりの運営が続けられます。
既存従業員の雇用を維持できる
M&Aによってゴルフ場を残せば、既存の従業員の雇用を維持できます。
もしゴルフ場が倒産すれば、自社の従業員やその家族にまで影響を与えます。多くの人が生活に困ることになるため、経営者としても従業員を路頭に迷わせることは避けたいでしょう。
M&Aによって安定した大手企業の傘下に入れれば、既存の従業員の雇用を変わらず維持できます。
ゴルフ場の売却価値を高めるポイント
ゴルフ場を売却する際は、以下の強みがあれば売却価格の上昇につながります。
- 安定して継続利用している会員が多い
- 都市部から交通の便がよく立地に優れている
それぞれ詳しく解説します。
安定して継続利用している会員が多い
ゴルフ業界は市場規模が緩やかに縮小しているうえ、利用客の高齢化から若い世代の取り込みが今後の課題となっています。しかし、このような縮小傾向のある業界で新規顧客を獲得するのは、簡単ではありません。買収を検討している側も、さまざまな施策を打ち新規顧客を獲得しようと考えるでしょう。
その中で、「継続利用する会員が多数登録している」という点は強みとなります。買収側にとっても魅力的で、売却の際には高い継続利用率を強くアピールすることが重要です。
都市部から交通の便がよく立地に優れている
立地がよいゴルフ場であれば「交通の便が優れている」という点もアピールポイントになります。
ゴルフ場は広大な土地が必要であるため、都市部から離れた場所に建設されることが多いです。
しかし、ゴルフのために毎回早起きをして遠い場所まで出向くのは、利用者からすると面倒かもしれません。車を運転するにも体力が必要です。
都市部からアクセスが良いゴルフ場であれば、会員としても通いやすいでしょう。買収側としても、アクセスの良いゴルフ場を獲得できれば自社のアピールポイントを増やせます。
ゴルフ場のM&A・買収・売却事例
実際のゴルフ場におけるM&A事例としては、以下の2つが代表的です。
- PGMによる足柄森林カントリークラブ買収事例
- アコーディアによる鹿児島ガーデンゴルフクラブ買収事例
それぞれ詳しく解説します。
PGMによる足柄森林カントリー倶楽部買収事例
PGM(パシフィックゴルフマネージメント株式会社)は、日本のゴルフ業界においてトップクラスのシェアを誇る会社です。株式会社平和の連結子会社であり、ゴルフ事業を専門に扱っています。全国に147のゴルフ場(2023年7月時点)を保有しており、社名を冠した「PGM Challenge」というツアーを実施するなど、規模の大きさが伺えます。
PGMは足柄森林都市株式会社との間で、新設分割によって「足柄ゴルフ株式会社」を設立。この足柄ゴルフ株式会社の全株式を譲り受ける形でM&Aを実施し、2022年12月から足柄森林カントリー倶楽部を運営しています。
足柄ゴルフ株式会社が所有する足柄森林カントリー倶楽部は、高速道路のインターチェンジ(IC)から車で4分という好立地にあります。また、プレイヤーのレベルに応じてさまざまなコースを楽しめます。
PMGグループにとって距離が近い該当のゴルフ場について、M&Aによって入手する価値があると判断したため、結果としてM&Aを実行することができたという好事例です。
参照元:
PGM「会社情報」
PGM『「足柄森林カントリー倶楽部」(静岡県駿東郡)がPGMグループ入りへ 本日株式譲渡契約を締結』
アコーディアによる鹿児島ガーデンゴルフクラブ買収事例
株式会社アコーディア・ゴルフは、PGMと並んでゴルフ業界のシェアトップクラスを誇る会社です。日本にある約2,400コースの中で、アコーディアが保有するものは「約5%」を占めます。保有するコースの多くが三大都市圏や地方都市に展開されており、人口が密集する場所を狙いトップクラスのシェアを持つことに成功しています。
アコーディアが買収したゴルフ場は、インフラテック株式会社が展開する「鹿児島ガーデンゴルフ倶楽部松元コース」です。こちらもPGMの事例と同じく、新設分割の形でM&Aを実施されました。2022年9月に「株式会社鹿児島ガーデンゴルフ俱楽部」という新会社へ事業が移動し、当該新会社の株式が譲渡された形です。
特定の地域に絞って運営されていた鹿児島のゴルフ場が、全国展開しているアコーディアのノウハウを活かして成長していくと思われる、ゴルフ場M&A事例の好例です。
参照元:
株式会社アコーディア・ゴルフ「事業内容」
インフラテック株式会社「ゴルフ事業の譲渡に関するお知らせ」
ゴルフ場売却・M&Aにおける手続きの流れ
具体的なゴルフ場売却に必要な手続きの流れは以下のとおりです。
- ゴルフ場の現地調査
- 価格査定と売却額の設定
- ゴルフ場買収者募集の方式決定とスケジュール作成
- 関連資料の用意と買収者募集開始
- ゴルフ場買収者の決定
- ゴルフ場譲り渡し条件の調整と契約
それぞれ詳しく解説します。
1.ゴルフ場の現地調査
まずは保有しているゴルフ場の現地調査を実施します。
現地調査では以下のように幅広い観点からチェックを行います。
- 立地
- 設備
- 施設の外観
- コース
- 経年劣化の有無
- 周辺の環境
現地調査の結果によって売却金額が変動する可能性もあるため、見落としがないよう入念に実施しましょう。通常、現地調査は約1週間ほどで実施することが多いです。
2.価格査定と売却額の設定
現地調査の結果をもとに、価格の査定を実施します。査定結果が出たら、自社で定めた売却希望額と照らし合わせましょう。
売却希望価格と照らし合わせる際には、ゴルフ場の売却相場を調べておくことが大切です。売却相場を把握していなければ、本来より低い価格の査定が出される場合、気づかないかもしれません。適切な報酬を受け取るために、売却価格の相場感を把握しておきましょう。
ゴルフ場の売却価格については、立地や土地の状況によって異なるので、一概にはいえません。
ただ、規模も大きい場合、数億円レベルの取引になることもあります。
3.ゴルフ場買収者募集の方式決定とスケジュール作成
売却価格に納得したら、実際にゴルフ場を買収してくれる相手を募集しましょう。
ゴルフ場の再編方法としては、大きく2パターンが挙げられます。
- 権利の移転や資本の移動を伴うM&A。大きく以下の2つに分かれる
合併スキーム:複数の企業をひとつに統合する方法
分割スキーム:売り手企業の一部を買い手に譲渡する方法 - 事業提携から対象となるゴルフ場の経営に参画する場合
資本提携:対象企業の経営権に影響をおよぼさない程度で株式を取得する方法
合弁会社設立:経営資源を出し合い新会社を設立する方法
売却方法と合わせてスケジュールも策定しましょう。
4.関連資料の用意と買収者募集開始
必要な資料も用意しつつ買収者を募集しましょう。企業のM&Aでは、以下のような資料が必要になります。
- ロングリスト・ショートリスト
- ノンネームシート(ティーザー)
- 企業概要書(IM)
- 意向表明書(LOI)
- 基本合意書(MOU)
- デューデリジェンス(DD)の関連書類
- 最終契約書(DA)
上記が契約までに必要な書類で、事前に揃っていなければ、買収希望者に対して説得力のある説明ができないものもあります。信頼性にもかかわる部分であるため、事前に必要な書類を一式揃えておくことをおすすめします。
5.ゴルフ場買収者の決定
いくつかの売却先の候補企業と話し合い、条件に納得できる企業が見つかったら、その企業をゴルフ場の買収者に決めましょう。話し合いの際は、自社の要望ばかりを押し付けるのではなく、相手の意見も尊重してお互いが納得できる落とし所を見つけることが大切です。特にゴルフ場のM&Aでは億単位の金額が動くため、入念なすり合わせが重要になります。
6.ゴルフ場譲り渡し条件の調整と契約
双方が条件に納得したら、譲渡の最終条件を調整し、最終契約書を締結しましょう。最終契約書には、取引対象、最終的な価格、誓約事項などの契約内容がまとめられています。トラブルを避けるため、取引条件を明確にすることが重要です。
まとめ
ゴルフ場の市場規模自体は緩やかに減少傾向にあります。しかし、一定の需要は見込める業界であるため、事業の多角化やスケールメリットを狙ってM&Aを行うことは、施策として有効です。M&Aが成功すれば後継者も見つけやすくなるため、広大な土地や施設を廃棄せず有効活用できるでしょう。
とはいえ、ゴルフ場のM&Aでは億単位の金額が動くため、なかなか実行に踏み出せない企業も多いはずです。できれば双方が納得できる金額で、スムーズにM&Aを完了させたいところでしょう。
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