スーパーマーケットのM&A事例、合併や買収の動向を解説

2024年4月2日

スーパーマーケットのM&A事例、合併や買収の動向を解説

このページのまとめ

  • スーパーはコロナ禍でも好調
  • 長期的には少子化などの影響で市場縮小が見込まれる
  • 大手を中心にスーパーのM&A事例は多い
  • スーパーのM&Aのメリットは「販路拡大」「シェア拡大」「経営安定」など
  • スーパーのM&Aのデメリットは「ブランド毀損」「人材流出」など

「スーパーマーケット(以下、スーパー)のM&Aを検討していて、自分に合った方法を知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
スーパー業界はコロナ禍でも堅調を維持する一方、中長期的には市場縮小が懸念されており、M&Aが盛んです。
本コラムではスーパーのM&A事例、合併や買収の動向を解説します。スーパーのM&Aを成功させるためのポイントも紹介しているので参考にしてください。

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スーパーの業界動向

スーパーのM&Aを成功させるには、業界の内情を把握しておくことが重要です。まずはスーパーの定義や市場規模、課題や今後展望など業界動向について解説します。

スーパーの定義

スーパーとは、食料品を中心に日用品などの家庭用品を主に地域の一般消費者にセルフサービス販売をする小売店です。

スーパーの経営形態は大きく2つに分けられます。

総合スーパー日用品から食料品・衣料品・玩具・文具などまでを取り扱う
食品スーパー生鮮食品や日用品に特化している

総合スーパーはGMSとも呼ばれます。GMSとは、「General Merchandise Store(ゼネラルマーチャンダイズストア)」の頭文字を取った用語で、イオンやダイエーなどが該当します。

経済産業省による業態の分類では「百貨店、総合スーパー」を以下のように定義しています。

  • 衣食住にわたる各種商品を小売する
  • 上記いずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所
  • 従業者が50人以上の事業所

また売場面積の大きさによっても、下記の通り呼び方が変わります。

大型総合スーパー3,000㎡以上(都の特別区及び政令指定都市は6000㎡以上)
中型総合スーパー3,000㎡未満(都の特別区及び政令指定都市は6000㎡未満)

スーパーの市場規模

スーパーの市場規模の画像

※上記のグラフ青:スーパー、赤:百貨店

経済産業省の商業動態統計調査によると、2022年のスーパーの販売額は15兆1,536億円です。スーパーの市場規模は、2011年からずっと12〜13兆円前後で推移しており、百貨店の販売額の約2倍弱あります。
しかし、2020年以降、コロナ禍で多くの業種が売り上げを落とすなか、スーパーマーケットは「巣籠り需要」の増加で業績を伸ばしました。

例えば内食(ないしょく)や中食(なかしょく)の需要増加です。内食は外食の反対語で、家で素材から調理して食べること、中食は惣菜やお弁当を買って家で食べる食事を指します。

株式会社ヴァリューズが行った調査(※1)によれば、新型コロナウイルス感染拡大後に増えた食事形態は、1位が「手作り料理」2位が「店舗のフードテイクアウトサービスの利用」3位以下には「冷凍食品の利用」「レトルト食品の利用」「インスタント食品の利用」が続きました。

内食や中食の需要が増加し、スーパーの販売額が伸びていることが見て取れます。

スーパーの総売上高前年比の画像

2023年スーパーマーケット白書(以下、「白書」)によると、スーパーの総売上高前年比は2020年に 5.0%プラスの大幅な伸び率を記録しています。

21 年の反動減はわずかで、1.3%のマイナス、22 年も 0.5%のマイナスにとどまり、スーパーマーケットの販売実績は堅調に推移しているといえるでしょう。

※1
調査期間:2020年8月31日~9月14日
調査方法:スマートフォンによるアンケート調査
調査対象:国内の20歳以上のモニター男女10,007人

参照元:
経済産業省「2022年 商業動態統計参考表」
経済産業省「商業動態統計調査」
経済産業省『別表 「業態分類表」』
一般社団法人全国スーパーマーケット協会「2023年版 スーパーマーケット白書」(p16)

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スーパーが抱える課題と展望

コロナ禍で多くの業界が市場縮小を余儀なくされる中、市場を拡大した数少ない業界が、スーパー業界です。ではそんなスーパー業界に、問題はないのでしょうか。

スーパーが抱える課題と今後の展望について解説していきます。

スーパーが抱える課題

「白書」によると、スーパー業界は、堅調な売上を維持する一方で、中長期的には次のような問題もあります。

  • 店舗運営コスト高騰
  • 人手不足
  • 市場縮小
  • 他業種との競争激化とネット対応の課題
  • キャッシュレスへの対応

それぞれ解説していきます。

店舗運営コスト高騰

販売高は増加しているのにスーパーの経営を厳しくしている原因は、店舗運営コストが高騰していることです。

  • エネルギー価格高騰による水道光熱費の上昇
  • 最低賃金の引き上げと社会保険の適用拡大など人件費の上昇
  • メーカーの食品価格の値上げ

メーカーによる商品価格の値上げが毎日のように報じられますが、水光熱費の高騰や人手不足解消のための賃上げなどの店舗運営コスト上昇分は、値上げが続く商品価格に上乗せすることができず、売上は増えても利益は出ない状況が続いています。

人手不足

スーパーは人手不足傾向にあります。
背景に考えられるのは例えば以下のようなことです。

  • 給与が低い
  • 暦通りの休みがとりにくい

多くのスーパーは賃金が低いです。厚生労働省が発表している令和4年賃金構造基本統計調査によると「卸売業,小売」の平均年収は314.7万円と、平均値の約312万円と同じくらいですが、スタッフの多くはパート・アルバイトです。時給の高い都内や大手スーパー以外は最低賃金に近い時給をベースとする地元スーパーも多く、スーパーの規模や個人の能力・年齢・働き方などによって多少の増減はありますが、他業種と比較して給与水準が高いとは言えない状況です。

一方で、業務量は多く内容も多岐に渡ります。業務内容と給与の釣り合いがとれないと感じ、離職する人が多いのです。

またスーパーの多くは年中無休で夜遅くまで営業している店舗も多く、パート・アルバイトがシフトを組んで長時間営業を支えています。
会社員が休みであることの多い土日祝や年末年始はスーパーにとっては書き入れ時で、休みにくい実情があります。そのため休日が不定期になる傾向にあり、家族の予定に合わせた連休も取りにくく、敬遠されがちなのです。

参照元:
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」

市場縮小

少子高齢化や人口減少に伴う市場縮小も、スーパーが抱える課題の1つです。
特に地方ではスーパーの閉店が相次いでいます。

例えば、スーパーを京都・大阪に4店舗を運営していたツジトミは、2022年10月に全店閉店しています。
さらに、宮城県などでスーパー「フレッシュ&ファミリア北海屋」を経営する北海屋は、2023年1月に自己破産をしています。
JA鳥取中央は、JA鳥取いなばと経営しているスーパー13店を2023年度中に閉鎖する方針です。

参照元:
日本経済新聞「私の電子マネー戻ってくる? 発行元スーパー、突然閉店」
河北新報『スーパー「北海屋」、自己破産申請へ 宮城県南に2店舗』

他業種との競争激化とネット対応の課題

今後の市場については、2つの問題があります。

他業種との競争激化

スーパーマーケット業界では商品価格が他店との差別化要因となるため、過剰な価格競争が生じやすい特徴があります。

近年はコンビニエンスストアやドラッグストアでも食品や日用品を扱うことが一般的になりました。ドラッグストアは大型店舗で低価格戦略、コンビニは長時間営業の利便性を訴求など特徴は異なりますが、これまでスーパーで購入していた食品の中でも生鮮食品以外は、ドラッグストアとコンビニで購入する人が増えています。

特にコンビニは、最近増えている中食対応の食品が増えており、一人暮らしや高齢者向けの調理済み食品の品揃えを増やしています。他業種との同一化が進み、より一層競争が激化していると言えるでしょう。

ネット対応の課題

コロナ禍での在宅時間増やEC市場の拡大からネットスーパーへ参入するスーパーも増加しています。
しかし、ネットスーパーはまだ十分支持されていないのが実情です。

株式会社アクロスソリューションズと一般社団法人 日本唐揚協会が共同運営している食の窓口が行ったネットスーパーの利用に関するアンケート調査によると、「ネットスーパーを利用したことがない」という割合が55.8%となっており、いまだネットスーパーの利用者は少数派であることがわかります。

また、ネットスーパーを利用しない理由については、

  • 実際に目で見て食材を選びたいから:33.4%
  • 送料など値段が高いから:27.0%
  • ネットスーパーというものがあるのを知らなかった:16.3%
  • 馴染みのお店があるから:10.8%
  • 鮮度が不安だから:10.3%
  • その他:2.2%

となっており、まだまだ実店舗の需要は高いと考えられます。

特に生鮮食品などは現物を自分の目で見て、手で触って確認しないと、品質を確かめることができません。ネットスーパーの市場規模が伸び悩んでいるのにはこうした背景があるのでしょう。

しかし、コロナ禍でネットスーパーを利用し始めた人も多く、他の業種のEC市場の拡大に合わせてネットスーパーも伸びる可能性が高いと考えられます。

参照元:食の窓口「【2420人に調査】鮮度よりも送料が気になる!?〜ネットスーパーについてのアンケート〜

キャッシュレスへの対応

キャッシュレスへの対応の問題は、主に次の2点です。

・キャッシュレス手数料の負担
EC化が進む中、多くのスーパーでは、キャッシュレス決済に対応しています。

経済産業省の算出した結果によると、2022年11月時点で、クレジットカードと電子マネーを合わせたキャッシュレス決済の比率は3割強。政府のキャッシュレス推進の方針もあり、キャッシュレス決済はさらに伸びると予測されます。

しかしPayPay(ペイペイ)などのQRコード決済は手数料をとられるため、薄利多売のスーパーにとっては大きな負担になってしまうのです。

一方で、キャッシュレス導入により、決済時間の短縮や現金管理の事務作業の軽減のメリットも少なくないとしています。

・セルフレジ導入の課題

コロナウイルスの感染防止対策や人手不足問題の観点から「セルフレジ」の導入が加速しています。

セルフレジには多くのメリットがあります。スーパーにとっては、人件費の削減や生産性の向上を図ることが可能です。消費者にとっても、会計の待ち時間短縮や「密」を避ける利点があります。

しかし多くの利点がある一方、課題も少なくありません。
例えば、セルフレジの導入によって万引き被害が多発しています。故意ではない場合でも、客が未決済の商品をレジ袋に入れて持って帰ってしまうケースもあります。

店側を悩ませているのが、故意の万引きと悪意のない精算ミスを見分けづらい点です。今後は監視カメラの設置など、何らかの形での対策が求められます。

参照元:
経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会 とりまとめ」

スーパーの今後の展望

今後、スーパーマーケット業界は以下のような動きが予想されます。

  • 物価高の影響
  • 物流コスト上昇の影響
  • M&Aの増加

それぞれ解説していきます。

物価高の影響

今後の展望としてまず懸念されるのが、物価高の影響です。
ロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー価格の高騰や円安の影響で、物価が高騰しています。

物価の高騰は電気代や仕入れコストの上昇に直結します。
人件費抑制のために給与引き下げを行うとさらなる人出不足を招くでしょう。

物価が高騰すれば消費者の買い控えが生じ、スーパーマーケットの売り上げ低下につながります。

物流コスト上昇の影響

EC拡大などによる宅配需要増により、物流コストの上昇も予想されます。

厚生労働省が定めた基準によりトラックドライバーの時間外労働に上限規制が設けられました。

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により令和4年12月23日に改正され、令和6年4月1日から適用されます。

引用元:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」

2024(令和6)年4月1日から、自動車運転の業務は1年960時間以内に収めなければなりません。これにより運び手の減少、トラック輸送リソースの減少が予想されます。いわゆる「物流の2024年問題」です。

経済産業省はこうした問題を受け、スーパー業界などに向けて取り組むべきプランを4つ提示しています。

  • 物流・商流データプラットフォーム構築
  • 同業者間の水平連携(標準化・シェアリング)
  • 垂直統合(BtoBtoCのSCM)
  • 物流拠点の自動化や機械化)

参照元:経済産業省「令和3年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(スーパーマーケット等における流通・物流の諸問題に関する調査)調査報告書」(p.41)

M&Aの増加

そしてM&Aの増加も予想されます。

2001年以降スーパーの破綻が相次ぎました。2014年以降倒産するスーパーは減っていますが、代わりにM&Aが増えています。
2015年9月のイズミによるユアーズとの資本提携を皮切りに、2016年マルミヤストアによるオーケー買収、あなぶき興産によるジョイフルサン・グループへの支援など、M&Aによる合併や事業再建が活発に行われています。

今後もM&Aは増えていくでしょう。

参照元:
株式会社ユアーズ「株式会社イズミとの資本業務提携に関するお知らせ 」
日本経済新聞「マルミヤストア、大分の地場スーパー事業を買収」
穴吹興産株式会社「当社子会社(あなぶき興産九州株式会社)における株式会社ジョイフルサン等の事業再生支援に関するスポンサー契約締結のお知らせ」

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スーパーのM&A動向

市場の縮小と競争激化を背景に、スーパー業界は大きな転換期に突入しています。
生き残りを図るため、スーパー業界でもM&Aの動きが活発になっています。

大手企業のM&Aによる業界再編成が活発

コロナ禍も市場再編の要因の1つです。
特に大手による中小企業の子会社化の動きが顕著にみられます。
選択と集中による経営効率化やコスト削減を目的に、関連業界の他社の合併や資本提携、業務提携も進んでいます。

以下では大手企業のM&Aによる業界再編事例を見ていきましょう。

イオングループの場合

まずはイオングループのケースです。
スーパーマーケット国内最大手のイオンは2013年9月24日にダイエーの株式を44%ほど取得して連結子会社化しました。買収額は約130億円です。

ダイエーはショッピングモールや総合スーパー(GMS)を展開する1957年設立の老舗スーパーです。
ダイエーは3度の金融支援、産業再生機構による支援を経て、再建に入った後、2007年にイオンによる出資を受けました。しかしダイエーは連結当期純損益(通期)で09年2月期から14年まで6期連続で最終赤字を計上するなど、苦しい状態が続きます。

そこでイオンはダイエーの事業効率化を図るために、完全子会社化を決定したのです。
イオンはダイエーへの経営関与を向上させ、次のようなシナジー効果を狙ったとされています。

  • 共同仕入や共同販促によるコスト削減
  • インフラの効率化
  • 経営資源・ノウハウの共有化

またイオンはダイエーのユーザーを取り込むために買収に踏み切ったとの見方もあります。

イオンは色々な事業を展開していますが、主な稼ぎ頭は次のような「総合金融事業」です。

  • 「イオンカード」によるクレジットカード事業
  • 「イオン銀行」による銀行業、
  • 「WAON」による電子マネー事業など

こうした金融事業で利益を確保するためには利用者の獲得が欠かせません。
そこでイオンはダイエーの抱える顧客を引き継ぐことで、利用者の獲得を狙ったわけです。

なおイオンは、2015年2月1日付で株式交換によりダイエーを完全子会社化しています。

参照元:ダイエー「組織変更と人事異動のお知らせ」

セブン&アイ・ホールディングスの場合

次は、セブン&アイ・ホールディングスのケースです。
流通大手のセブン&アイ・ホールディングスは、イトーヨーカ堂やセブンイレブンをはじめ、外食のデニーズの買収など、大規模なM&Aの繰り返しによって規模を拡大しています。

2005年12月には西武百貨店とそごうが合併して設立されたミレニアムリテイリンググループを約2,000億円で子会社化しました。
さらには2016年には阪急百貨店や食品スーパーイズミヤなどを展開するH2Oリテイリングと資本提携(2022年に提携解消)、2021年には米国のSpeedwayを約2兆3,000億円で買収しています。

セブン&アイ・ホールディングスは、2023年3月9日に「食」の強みを軸とした成長戦略を推し進める一環として、首都圏のスーパーストア事業の統合再編を実施する「中期経営計画のアップデート」を発表している。

参照元:
株式会社セブン&アイ・ホールディングス「エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社との資本業務提携の基本合意に関するお知らせ」
ダイヤモンドオンライン「米7-イレブンのスピードウェイ買収、米当局が承認」
株式会社セブン&アイ・ホールディングス「中期経営計画のアップデートならびにグループ戦略再評価の結果に関するお知らせ」

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スーパーマーケットのM&A事例

スーパーのM&A事例を紹介します。

丸の内キャピタルと三浦屋

まずは、投資ファンドの丸の内キャピタルによるスーパー三浦屋の買収事例です。

2021年8月1日、三浦屋の親会社であるいなげやが、連結子会社である三浦屋の全株式を手放し、投資ファンドの丸の内キャピタルに譲渡されることが決定しました。

三浦屋は中央線・西武新宿線の沿線を中心にスーパーマーケット事業や外販事業を展開する会社です。2012年10月、いなげやの傘下に入っています。

丸の内キャピタルは投資ファンドです。2008年に三菱商事85.1%、三菱UFJ 銀行14.9%の出資によって設立されました。

三浦屋の親会社であるいなげやは、丸の内キャピタルとのシナジー効果で三浦屋の企業価値の向上・成長が図れると判断し、M&Aに踏み切ったとされています。

参照元:
丸の内キャピタル「丸の内キャピタルの特長」
三菱商事「丸の内キャピタル2号ファンド設立に関するお知らせ」

H2Oリテイリングと関西スーパーマーケット・イズミヤ・阪急オアシス

続いて紹介するのは、流通大手H2Oリテイリングが、関西スーパーマーケット・イズミヤなどと経営統合した事例です。
2021年12月15日、流通大手H2Oリテイリングは、近畿エリアを地盤とする関西スーパーマーケットとの経営統合を発表した。同時に、H2Oの子会社のイズミヤと阪急オアシスを関西スーパーマーケットと経営統合することを発表しました。

規模拡大による調達・物流の効率化、店舗運営に強い関西スーパーを取り込むことによる商品力強化を狙ったとのことです。

2022年2月1日には、買収した関西スーパーマーケットを「株式会社関西フードマーケット」に商号変更。そのうえで食品スーパーカンパニー事業をKS分割準備株式会社に吸収分割し、同社を「関西スーパーマーケット」(新・関西スーパーマーケット)に商号変更しました。

これにより、関西フードマーケットとイズミヤ・阪急オアシスを傘下に抱える中間持株会社の関西フードマーケットが誕生したのです。

店舗数240以上を誇る巨大なスーパーマーケット連合となった関西フードマーケットは、関西エリア随一のシェアを獲得するまでに成長しました。

23年4月1日にH2Oリテイリングは、連結子会社・関西フードマーケット傘下の阪急オアシス(大阪府)とイズミヤ(大阪府)を経営統合しています。

参照元:株式会社関西スーパーマーケットを株式交換完全親会社、 イズミヤ株式会社及び株式会社阪急オアシスを株式交換完全子会社とする 株式交換の効力発生に関するお知らせ

Amazonとライフコーポレーション

最後に、EC大手のAmazonがオンライン販売においてライフコーポレーションと協業をした事例を紹介します。

ライフコーポレーションは、近畿・関東でスーパー「ライフ」を展開している企業です。
2020年10月21日からAmazonが運営するAmazonプライム会員向けサービス「Prime Now(プライムナウ)」でライフの商品の取り扱いを開始しました。

Prime Now(プライムナウ)はネットスーパーのような役割を担うサービスです。Amazonの売れ筋商品から、惣菜や冷凍・冷蔵食品、飲料、お酒、日用品、コスメ・美容用品、ベビー用品など幅広い商品を注文できます。

協業により、対象エリアのAmazonプライム会員はAmazonのWebサイトやAmazonショッピングアプリからライフの実店舗で取り扱っている食品や日用品、「ライフプレミアム」「スマイルライフ」といったライフのプライベートブランド商品などを購入できるようになりました。

対象エリアは東京都の7区からスタートし、その後、千葉県、埼玉県5市、大阪府23市、京都府3市、兵庫県と順次拡大しています。2023年現在、エリア限定のサービスとして、ライフの実店舗で扱っている新鮮な野菜、精肉、惣菜など数千点の商品を最短2時間で届けるサービスを展開しています。

協業によりAmazonはネットスーパー事業の拡大が実現、対するライフコーポレーションはAmazonの抱える顧客や販売チャネルを活用することで、より多くの顧客へのリーチが可能になりました。

参照元:
日本経済新聞「アマゾンとライフ、Amazon上のライフネットスーパーの配送エリアを千葉県と兵庫県においてさらに拡大」
Amazon「サービスについて」

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スーパーのM&Aのメリット・デメリット

スーパーのM&Aは今後盛んになっていくと思われます。ではスーパーのM&Aにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。買収側・売却側それぞれ紹介します。

買収側のメリット・デメリット

まずは買収側のメリット・デメリットを見ていきましょう。

買収側のメリット

買収側のメリット・デメリットとしては次のようなものが考えられます。

  • コスト削減&経営効率化
  • シェア拡大&ドミナントの強化
  • 未開拓エリアへの進出
  • プライベートブランドの販路拡大

M&Aを行うことで規模の拡大や仕入れ価格の引き下げなど、生産コストを削減することができます。製造設備や物流ネットワークの統合により、経営効率化を図ることも可能です。

近年スーパーマーケットは競争が激化しています。
M&Aにより同じ地域で店舗数を増やし市場シェアが拡大できるので、競合他社に対して優位に立てる可能性が高まります。特定地域での商圏特性に合わせた店舗展開・商品戦略が可能となり、物流の効率化を図るドミナント戦略を強化できます。

イチから未開拓エリアに進出もしくは進出したものの十分なシェアが取れていない場合、その地域で実績を持つスーパーを買収することで一気に市場シェアを獲得することができます。

プライベートブランドの開発および販路拡大には、商品開発や販路開拓に費用も時間もかかるため、一定の市場規模が必要です。

収益率の高いプライベートブランド商品の販路拡大により、利益の大幅増も見込めます。

買収側のデメリット

買収側のデメリットとしては次のようなものが考えられます。

  • 統合失敗リスク
  • 従業員の離職リスク
  • ブランド毀損

シナジー効果の獲得を目的にM&Aを実行するケースは多いです。
株式譲渡による買収では、資産だけでなく負債も引き継ぐことになるため、買収先の負債状況を詳細にチェックすることが重要となります。特に、スーパーマーケット業界では、店舗の老朽化や新規出店に伴う設備投資など、大きな負債を抱えている場合が少なくありません。
そうした負債を引き継ぐことになれば、財務状況への悪影響は必至でしょう。
スーパーは事業規模が大きいため、業務プロセスは各社ごとに異なり、システムの統合がうまくいかないリスクもあります。

文化や組織体制、福利厚生を異にする企業が一つに結合されるM&Aでは、合併後に従業員が離職したり、軋轢が生じたりすることが少なくありません。
統合が円滑に進まないと組織内に混乱が生じ、業績に影響が出てしまうこともあります。

スーパーの業態は地域性が強く、顧客のニーズや購買行動も多様です。
それぞれのスーパーが培ってきた地域住民からの信頼やサービスが統合により失われてしまうと、顧客が離れ、売上げが減少してしまうかもしれません。残念ながら、ブランドの魅力を失うことになると一気に顧客離れが進む場合もあるので注意が必要です。

売却側のメリット・デメリット

続いて売却側のメリット・デメリットを見ていきましょう。

売却側のメリット

売却側のメリットには次のようなものが考えられます。

  • 集客力向上で経営安定化
  • 従業員の雇用確保
  • 生産性向上
  • 売却益の獲得&後継者問題の解決

スーパー業界を取り巻く状況は厳しくなりつつあります。

競争が激化する中では差別化が重要になりますが、そのためには経営が安定していることが必要です。
しかし、中小企業、とりわけ地方のスーパーなどは、経営難や後継者がいないことから廃業するケースも少なくありません。大手の参加に入ることで、ブランド力や業務手法をとりいれることで経営の安定化を図ることができます。

また、会社を廃業した場合、従業員は職を失ってしまいますが、M&Aで会社を売却すれば、従業員の雇用確保を維持することが可能です。
統合によって生産技術やノウハウを共有し合うことで、効率化やコスト削減も見込めます。
うまくシナジー効果を得られれば、企業の競争力が高まるでしょう。

負債がある場合でも相手企業相手企業に負債を引き継いでもらったうえで、さらに売却を得られる可能性もあります。後継者がいない問題も解決します。

これは中小企業にとって大きなメリットに数えられるでしょう。

売却側のデメリット

もちろん、メリットだけではありません。売却側のデメリットには次のようなものが考えられます。

  • 競業避止義務が生じるリスク
  • 希望通りの条件売却できるとは限らない

事業譲渡による売却では競業避止義務が生じます。
競業避止義務とは、「競合企業への転職」「競合する企業の設立」といったものです。
つまり、原則として20年間はスーパーマーケット事業を同一地区・隣接地区で行うことができないのです。
またM&Aは相手企業の存在があって初めて成立するものですが、買収してくれる企業が見つかるとは限りません。
売り手企業の価値が低い場合、相手企業が見つからない可能性もあります。仮に候補が見つかっても希望の条件でM&Aが締結できるとは限りません。

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スーパーのM&Aを成功させるためのポイント

最後に、スーパーのM&Aを成功させるためのポイントを紹介します。

決算処理を正確に行う

スーパーマーケット業界に限らずM&Aで成功するには、自社の財務状況を正確に把握することが欠かせません。
正確な決算処理は、自社財務状況を客観的に把握するために最も重要だからです。

決算においては、様々な税金対策があります。

  • 未払費用や前払費用の計上
  • 棚卸資産や固定資産の処分や評価
  • 経営セーフティ共済の活用
  • 減価償却の活用
  • 従業員への還元

しかし、落とし穴も存在します。
代表的なのが、経費に計上できると思っていたが、税務署に認められなかったというもの。
例えば過剰な交際費は経費として認められないケースが少なくありません。
この辺りの見極めは会計士や税理士でないと難しいことがあります。財務の専門家がいない中小企業などは特に注意が必要です。

もちろん売却先企業の税務調査も行う必要があります。決算書を分析し、経営状況を詳細にチェックすることが重要です。
徹底したデュー・デリジェンスを行いましょう。

売却条件の優先順位を考える

スーパー業界に限らず、M&Aで成功するには売却条件の優先順位を明確にすることが欠かせません。
M&Aでは優先すべき条件を見誤った結果、失敗したり狙い通りのシナジー効果を得られなかったりするケースが多いです。

以下のようなファクターをM&A実施前に洗い出し、優先順位を熟考しましょう。

  • M&Aの目的
  • M&Aの経緯
  • 事業の将来性
  • 自社および売却先のブランドイメージ・ビジネスモデル
  • 売却先の企業の財務状況
  • 業界のトレンドや市場動向
  • 競争状況や市場シェア

特に中小企業は、自社の資金力やブランド力、サービスを考慮しながら適切な価格を提示し、条件を交渉する必要があります。
経営陣の継続や従業員の継続雇用の可否も重要なポイントです。

従業員の雇用や福利厚生への配慮も欠かせません。ここをおろそかにすると、M&A実行後に従業員が離職するリスクが高まります。

条件の優先順位を明確にし、企業の持続可能性や成長に配慮しながら売却先を選定することが重要です。

専門家のサポートを受ける

専門家のサポートを受けることも大切です。

実のところ、自社だけでM&Aを実行することも不可能ではありません。
しかしM&Aでは、財務や法務、経営戦略など、さまざまな分野の専門知識が求められます。

特に、会計処理やデュー・デリジェンスにおいて見落としがあると、売却後の業績に影響を及ぼしかねません。

近年ではM&A専門の会社も存在します。リスクを最小限に抑えるためにも、専門家に相談するのが得策といえるでしょう。

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まとめ

スーパー業界はコロナ禍で市場拡大しましたが、中長期的には市場縮小や人材不足の懸念があり、業界を取り巻く状況は厳しくなりつつあります。

近年、大手を中心にM&Aが活発に行われています。ただしスーパーのM&Aを成功させるには、業界トレンドの把握や売却条件の精査など、入念な準備が不可欠です。
個人で遂行するのも不可能ではありませんが、専門家に相談し計画的に実施するのが賢明でしょう。

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