ペットショップ業界のM&A動向や事例を紹介!買収・売却の目的も解説
2024年3月19日
このページのまとめ
- ペットショップ業界は、ペットやペット関連商品の販売、関連サービスの提供を行う業界
- ペットショップ業界はコロナ禍で需要が高まり、2021年も高水準をキープしている
- ペットショップ業界の課題は、労働力不足やコンプライアンスの遵守など
- ペットショップ業界M&Aは業績向上やビジネスモデルの多角化などを目的に活用される
ペットショップ業界でM&Aを検討している経営者の方も多いのではないでしょうか。
ペットショップ業界では、事業拡大やシェア獲得などを目的としたM&Aが増えています。
このコラムでは、ペットショップ業界の現状や業界が抱える課題、M&Aの動向などについて幅広く解説します。そのほか、ペットショップ業界で買収・売却を行う目的やM&A事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ペットショップ業界の現状・動向
まずは、ペットショップ業界の事業内容や、現状・業界動向について解説します。
ペットショップ業界とは
ペットショップ業界とは、愛玩を目的に飼育される動物であるペットの販売および飼育に関連する商品を販売する業界のことです。また、グルーミングサービスやペットホテル、訓練、デイケアなど、ペットの健康と幸福を維持するためのサービスも提供します。
ペットショップ業界は、動物福祉の問題や繁殖問題、供給網問題、飼い主教育などに対する啓発活動についての取り組みを加速させています。たとえば、業界の一部では特定の動物保護団体や救助団体と提携し、飼い主を見つけるための場所を提供したり、ペット飼育の教育と啓発活動を行ったりしています。
近年のペットショップ業界は、ペットとその飼い主たちに関連する広範で多様なサービスを提供する業界といえます。
ペットショップ業界の現況
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの業界が大打撃を受けるなか、ペットショップ業界は売上額をアップさせました。
引用元:経済産業省「ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-」
経済産業省が公表している「ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-」によると、2019年から2020年にかけて、販売額が大幅に上昇しています。前年比8.2%の増加です。新型コロナウイルス感染症の影響によって在宅時間が増えたことで、「自宅でペットと触れ合いたい」と考える消費者のニーズが反映された結果だといえます。
2021年のペット・ペット用品販売額は2,800億円を超えており、引き続き高水準を保っています。
参照元:経済産業省「ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-|その他の研究・分析レポート」
ペットショップ業界が抱える課題
ペットショップ業界が現在直面している課題は、下記の3つに大別されます。
- 労働力問題
- 動物福祉への対応
- コンプライアンスへの対応
それぞれ解説します。
1.労働力問題
労働力問題は、人手不足と人件費の上昇の2つの観点から考えられます。
ペットショップ業界の従業員には、ペットのケアやカスタマーサービスを提供するための専門知識と技術が求められます。ペットの健康管理や消費者へのアドバイスなど、専門性の高い職務を行うためです。しかし、こうしたスキルを持つ従業員を見つけて確保するのは一筋縄ではいかないことがしばしばあります。
また、最低賃金の上昇や人手不足による賃金上昇圧力などの要因で人件費が上昇し、事業運営を難しくしています。このような労働力問題はペットショップ業界の成長を阻害する要素となっており、その解決が急務となっています。
2.動物福祉への対応
社会全体として動物福祉に対する意識が高まっており、ペットショップ業界もその影響を大いに受けています。消費者は単にペットを購入するだけでなく、そのペットがどのような環境で育てられているか、どのようなケアがなされているかといった背景にも注目するようになっています。
そのため、ペットショップが提供する動物の飼育環境が、消費者の購買意欲に大きく影響を与えるようになりました。動物の健康と福祉を確保するための適切なケアと飼育環境の提供は、ペットショップ業界にとって重要な課題となっています。
3.コンプライアンスへの対応
法令遵守と業界独自のガイドラインへの対応も、ペットショップ業界が直面している重要な課題です。新たな法律の導入や既存法の改正により、業界は常に最新の法規制を把握し、それに準拠するよう迫られています。
また、消費者の動物福祉に対する意識の高まりや社会的な要求に応じて業界独自のガイドラインも更新されるため、ガイドラインに適応するための経営資源も必要となります。
たとえば、コンプライアンス遵守するためには、スタッフの教育と訓練への投資が欠かせません。スタッフ全員が業界の規範や法令を理解し、日々の業務でそれを実践できるようにするために研修を行うことが重要です。また、専門的なコンプライアンスオフィサーを雇用し、他の従業員への教育やガイダンスを行うことも有効と考えられます。
これらのコンプライアンスに関する問題は、業界の成長と信頼性を左右する重要な課題となっています。
ペットショップ業界におけるM&Aの目的
ペットショップ業界におけるM&Aは、企業の成長や競争力強化の一つの手段として、特にその重要性が増してきています。
M&Aの目的は、主に、下記の3つに分けられます。
- 業績向上
- 市場拡大
- ビジネスモデルの多様化
それぞれ解説します。
1. 業績向上
M&Aを行うことで、経営の効率化を図り、売上・利益の増大を狙うことが可能となります。
特にペットショップ業界では、人手不足や人件費の上昇といった問題があり、個々の企業だけで解決することが難しい場合もあります。そうした問題の解決策として、M&Aを実施します。
M&Aによって獲得した相手企業のリソースやノウハウを利用することで、これらの課題を克服し、経営の効率化や業績向上を達成することが可能となります。
また、M&Aによる経営規模の拡大は、より良い商品・サービスの提供や適切な価格設定などの実現にもつながります。M&Aを実施することで、消費者の満足度を向上させるとともに、企業の売上・利益の増大に寄与できる可能性が高まります。
2. 市場拡大
M&Aは、新たな地域や市場セグメントへのアクセスを可能にします。M&Aの実施によって企業の市場拡大を実現させることができます。
ペットショップ業界では、地域や市場セグメントにより異なるニーズが存在しています。M&Aを通じて自社が持っていない事業を取得することで、多様な顧客ニーズに対応できるようになります。
応えられるニーズの幅が広がれば、ペット業界におけるシェア拡大がかなえられるでしょう。
3. ビジネスモデルの多様化
M&Aを行うことで、新たなサービスや製品を展開する機会が生まれ、ビジネスモデルの多様化が実現します。
ペットショップ業界は、動物福祉への社会的な意識の高まりや法令遵守という課題を背景に、ビジネスモデルの革新が求められています。ほかの企業との合併や買収を通じて新たな技術やノウハウを取り入れることで、ビジネスモデルの多様化を実現することができます。
ペットショップ業界におけるM&A事例3選
ここでは、ペットショップ業界におけるM&A事例を紹介します。
イオンペット社によるニチイ学館社のグルーミング事業の譲受
2022年7月、イオンペット株式会社は、株式会社ニチイ学館が手がけるグルーミング事業を譲り受けました。譲受したのは、ニチイ学館社が運営するグルーミングサロン「A-LOVE」の全20店舗のうち、19店舗です。
ニチイ学館社のグルーミングサロン「A-LOVE」は、犬種ごとの特徴に合わせたグルーミングを可能にする高い専門性・技術を強みとし、ペットとペットオーナーに満足度の高いサービスを提供するペットサロンです。
イオンペット社においてもグルーミング事業に注力しており、獣医学に基づいた手法を用いることによってペットのからだに優しいサービスを提供しています。
両社はグルーミングをとおしてペットとそのオーナーの幸せに寄与するという理念が共通していることから、本M&Aを決定しました。
イオンペット社は、「A-LOVE」が持つグルーミングの知識や技術、地域密着型サービスのノウハウを引き継ぐことで、より高品質なグルーミングサービスをより多くのペット・ペットオーナーに届けられると述べています。
参照元:イオンペット株式会社「株式会社ニチイ学館のグルーミング事業『A-LOVE』の 事業譲受に関するお知らせ」
アミーゴ社によるグロップ社のペットショップ事業の事業譲受
2020年11月、アレンザホールディングス株式会社の連結子会社であり、本社を東京都に置く株式会社アミーゴが、岡山県を拠点とする株式会社グロップから、岡山市で運営しているペットショップ「chouchou」の店舗を取得しました。
アミーゴ社は「ペットと人間との素晴らしい繋がりと、その共生の喜びを提供する」というスローガンを掲げる企業です。日本トップクラスのペットショップを目指しています。
グロップ社が運営する「chouchou」は「ペットを売らないペットショップ」を謳い、犬の里親探しに注力するペットショップです。殺処分を待つ犬を引き取って、新しい家族を迎え入れることを望む人々に対して無償で犬を譲渡しています。
アミーゴ社は動物の愛護の取り組みを強化することを大きな目的として、今回の譲受を決断しました。「chouchou」が培ってきた里親探しに関する経験・ノウハウを取り入れ、これを今後のビジネス拡大に役立てるとしています。
参照元:アレンザホールディングス「当社連結子会社における事業譲受に関するお知らせ」
リックコーポレーション社によるジョーカーの子会社化
2015年9月、株式会社リックコーポレーションは、株式会社ジョーカーを子会社化しました。
リックコーポレーション社は、主に岡山県でホームセンターやペット専門店を運営している企業です。一方、ジョーカー社は、関東地区で16のペット専門店を持ち、特にトリミングサービスの専門性と収益性が高い企業でした。
リックコーポレーション社は、今回の子会社化を通じて、ジョーカー社のトリミングの技術とノウハウを取り入れることで、技術力とサービスレベルを向上させ、顧客獲得力を強化することを見込んでいます。この動きはペット事業の関東地区への進出も目指したものとなっています。
また、子会社となるジョーカー社にとっても、リックコーポレーション社が持つ犬猫フードおよび犬猫用品の仕入れ・販売ノウハウを活用できるようになることは大きなメリットになると予測しています。
なお、今回子会社を行ったリックコーポレーション社は、2016年4月にアレンザホールディングス傘下となり、ジョーカー社はその孫会社になりました。
参照元:アレンザホールディングス「株式会社ジョーカーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ
ペットショップ業界の事業内容は、ペットの販売、および関連商品の販売やペット関連サービスを提供することです。ペットショップ業界の市場は、増加傾向にあるペットの需要に伴い、大きな成長を遂げています。
ペットショップ業界では、新たなビジネスモデルの追求や規模拡大のために、多くの企業がM&Aを活用しています。M&Aによって自社にない事業に参画できたり、新規エリア開拓やシェア率の拡大がかなったりするでしょう。
M&Aを成功させるには、複雑なプロセスを的確に進めて行く必要があり、専門知識を必要とします。そのため、M&Aを実施する際はM&Aの専門家に相談することがおすすめです。
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