合資会社のM&Aはどう行う?事業譲渡の方法や注意点を解説!

2024年3月1日

合資会社のM&Aはどう行う?事業譲渡の方法や注意点を解説!

このページのまとめ

  • 合資会社とは、最低、無限責任社員1名と有限責任社員1名の計2名で構成される会社形態
  • 合資会社と株式会社とでは、出資者の責任範囲の範囲が大きく異なる
  • 合資会社は株式会社と違い、株式がないので、株式を使った事業承継は不可能
  • 合資会社が事業承継をする場合、M&Aのなかでも事業譲渡がおすすめ
  • 事業承継をする際は、金銭的な負担を減らすため、事業承継促進税制を活用すると良い

合資会社で事業承継のためにM&Aを検討している経営者の方も多いのではないでしょうか。合資会社は、株式会社と比べて少ない資金で設立できるなど多くのメリットがあるものの、株式譲渡などはできないため注意が必要です。

このコラムでは、合資会社のM&Aについて詳しく解説します。そのほか、合資会社の定義、株式会社との違い、合資会社のメリット・デメリット、承継する際の注意点も紹介するのでぜひお役立てください。

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合資会社とは

合資会社とは、日本の商法における会社形態の一つで、少なくとも1人以上の無限責任社員と1人以上の有限責任社員からなる企業組織です。

無限責任社員とは、会社の負債に対して自己の全財産で責任を負うものです。一方、有限責任社員は、その出資金額に限り責任を負います。無限責任社員は経営に参加できますが、有限責任社員は基本的に経営に参加することはできません。

しかし、現代の日本では、企業の規模拡大や資金調達の容易さ、法人税の適用などを考慮すると、株式会社を設立するケースが多く、合資会社を選ぶ企業は少なくなっています。

なお、合資会社は日本独自の制度であり、英米法系の会社法には存在しない会社形態です。

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合資会社と株式会社との違い

合資会社と株式会社の違いは、主に下記の要素に現れます。

  • 責任
  • 経営参加
  • 資金調達
  • 譲渡制限
  • 組織の存続

それぞれ解説します。

責任

まず、両者の最大の違いは「社員の責任」です。前述したように、合資会社の社員は、「無限責任社員」と「有限責任社員」の2種類が存在し、無限責任社員は会社の債務に対して自身の全財産で責任を負うことになります。一方、有限責任社員は出資額までがその責任の範囲となります。

対して株式会社の出資者(株主)は全員が出資額に限り責任を負う形となります。

経営参加

経営参加の観点では、合資会社は無限責任社員が経営に参加し、有限責任社員は基本的には参加できません。

それに対して、株式会社は株主全員が理論上は経営に参加することができます。しかし、実際には役員が経営を担当し、多くの株主は経営から距離を置くのが一般的です。

資金調達

合資会社は、基本的に社員間の出資によって資金を調達しますが、公募による資金調達はできません。

なぜなら、合資会社は株式会社とは異なり、株式が存在しないからです。合資会社の出資者(社員)は「出資金」を提供することで会社に参加しますが、その出資金が「株式」という形で分割されたり、取引されたりすることはありません。

また、合資会社では、出資者の出資金に応じて利益分配が行われますが、これは株式会社の配当に相当します。ただし、出資者間の合意によって利益分配の割合を決めることができるため、必ずしも出資金の比率に応じた利益分配とは限りません。

一方、株式会社は公開市場で株式を発行し、多くの投資家から資金を調達することが可能です。

譲渡制限

前述した、利益を受け取る権利(持分)における譲渡の自由度も異なります。

合資会社の場合、無限責任社員の持分譲渡は原則として他の無限責任社員の承認が必要で、社員間での合意が必要です。

それに対し、株式会社では、原則として株式の譲渡は自由です。また、定款で制限を設けることも可能です。

組織の存続

合資会社は無限責任社員の死亡や退社などにより解散する可能性があります。

対して、株式会社は社員(株主)の個人的な事情が企業の存続に影響を及ぼさないという違いもあります。

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合資会社のメリット・デメリット

合資会社には、それぞれ以下のようなメリットとデメリットが存在します。

合資会社のメリット

合資会社のメリットには、下記のようなものがあります。

設立手続きが簡易的

合資会社の最大のメリットは、その設立手続きが簡単であり、最低資本金も必要ない点です。これは少ない投資で事業を始めることが可能であるという意味で、初めて起業をする人々にとっては特に大きな利点となるでしょう。

経営の自由度が高い

経営者と出資者が一致していることで、経営の自由度が高まるという特性があります。これにより、ビジネスの経営方針の決定や意思決定の速度が向上し、事業運営における自由度が広がります。

開示義務が少ない

開示義務が少ないため、ビジネスの秘密を守りやすいという特徴もあります。これにより、自社の戦略や知的財産などの情報を社外に漏洩するリスクが軽減されるでしょう。

合資会社のデメリット

合資会社のデメリットは、下記のようなものがあります。

無限責任を負う必要がある

合資会社の最大のデメリットは、社員が無限責任を負うという点です。これは、合資会社の社員が個人の財産をもって会社の債務を保証するという意味で、会社が倒産した場合には自己の全財産を失う可能性があるという重大なリスクを意味します。

資本の流動性が低い

出資者(社員)の資格を他の社員の承認なしに譲渡することができず、資本の流動性が低いという問題もあります。これは、社員の入れ替わりが難しくなるという意味で、経営の柔軟性が制限される可能性があります。

資本金の調達が難しい

合資会社は資本金の調達が難しく、大規模な事業展開や信用力の確保が困難というデメリットもあります。これは、無限責任を負う形態のために投資家からの資金調達が難しくなり、金融機関からの融資も受けにくいという問題から生じます。その結果、大規模な事業展開や信用力の確保が困難となる可能性があるのです。

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合資会社における事業承継の方法

合資会社における事業承継の方法としては、以下の3つの方法を考えることができます。

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • M&A

以下では、それぞれの方法について、手続き・メリット・デメリットを解説していきます。

親族内承継

親族内承継は、事業を子どもや親族に承継する方法であり、古くから親から子へ家業を承継するという形態としてよく採用されています。合資会社で親族内承継を行う場合、特に以下のような手続き、メリット、デメリットが考えられます。

親族内承継の手続き

事業を承継する際には、相続・贈与・持分払戻請求権を出資し、社員の地位を獲得するなどの手続きが必要となります。社員が死亡した場合、持分払戻請求権が相続され、これを再度出資して社員の地位を獲得する必要があります。

親族内承継のメリット

親族内承継のメリットは、後継者が事業について既に理解しているケースが多いことです。これにより、後継者教育を早期から行いやすく、事業の継続性を保つことが容易になります。

親族内承継のデメリット

親族内承継のデメリットは、合資会社の社員の責任の重さです。特に無限責任社員は、事業が悪化した場合に多額の負債を背負うリスクがあります。これが原因で、親族が事業承継を拒否し、親族内に後継者が見つからないケースもあります。また、持分払戻請求権の相続に伴う所得税の発生もデメリットとなり得ます。

親族外承継

親族外承継は、役員や従業員など、親族以外の後継者に事業を承継する方法を指します。具体的な手続き、メリット、デメリットは以下のとおりです。

親族外承継の手続き

親族外承継では、親族以外の者に事業を承継するために、社員としての地位を獲得することが必要となります。これは持分を譲渡することにより行われ、そのための対価の準備が求められます。多額の資金が必要となる場合もあり、従業員がその資金を用意できない場合には、金融機関から融資を受けて行うことも考えられます。

親族外承継のメリット

親族外承継のメリットとしては、事業を深く理解した従業員に事業を承継することで、他の社員や取引先からの理解や信頼が得られやすいことが挙げられます。

親族外承継のデメリット

親族外の者に事業を承継するということは、社員間の信頼関係を慎重に扱う必要があります。合資会社は出資者が社員となっているため、その社員間の信頼関係が事業運営の前提となります。親族でない者を新たに社員とするとき、既存の社員間の信頼関係が崩れないよう配慮する必要があります。

M&A

M&Aは、近年の働き方の多様化とともに、事業承継の手段として頻繁に採用されています。具体的な手続き、メリット、デメリットは以下のとおりです。

M&Aの手続き

合資会社におけるM&Aの手続きは、複雑さを伴います。株式会社であれば、株式譲渡によるM&Aが可能ですが、合資会社では持分は株式とは異なり、その取り扱いが困難です。

このため、事業譲渡や会社分割といった他のスキームを用いてM&Aを行うことが多いです。また、合資会社から株式会社への組織変更を行い、株式譲渡によるM&Aを行う手段もあります。ただし、この場合は社員全員の同意が必要となります。

M&Aのメリット

M&Aのメリットとしては、親族や従業員内に適切な後継者が見つからない場合、第三者への事業売却を通じて事業継続の道を開くことができる点が挙げられます。また、M&Aにより新たな視点や経営資源を取り込むことが可能になり、事業のさらなる発展を期待できることもあります。

M&Aのデメリット

一方で、M&Aのデメリットとしては、手続きが複雑で時間とコストがかかること、また、組織文化の摩擦や事業戦略の方向性についての不一致から、結果的に企業価値を下げるリスクも存在します。特に合資会社では、その特性上、M&Aの手続きがより複雑になる傾向があります。

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合資会社のM&Aは事業譲渡がおすすめ

合資会社の事業承継においては、M&Aの一つの方法として事業譲渡がおすすめです。事業譲渡には、その手続きの容易さや、多様なメリットが存在しますが、デメリットも存在しますので、適切な判断が必要です。

事業譲渡が比較的容易である理由

事業譲渡は、会社全体ではなく一部または全ての事業を移転する手法であり、その手続きは比較的容易です。

具体的には、事業の売買契約を結び、資産、負債、従業員、契約等を移転することにより、事業譲渡を実現します。これに対して、持分を株式と同じように扱うことは難しく、株式譲渡などはできないため、事業譲渡の手続きの容易さがメリットとなります。

事業譲渡のメリット

事業譲渡は、事業継続の可能性を高めます。新たな事業主体による運営が可能となるため、事業の継続や拡大が期待できます。

また、事業譲渡による売却代金は、合資会社の負債解消に充てることが可能であり、その結果、財務状況の改善を図ることができます。

さらに、譲受人が新たな資本や技術を事業に導入することで、事業の成長を支えることも可能です。

事業譲渡のデメリット

事業譲渡にはデメリットも存在します。例えば、事業の評価は、譲渡人と譲受人の間で交渉を行う必要がありますが、その評価は困難を伴います。

また、事業譲渡に伴う従業員の雇用維持は、譲受人の事業戦略や財務状況に依存します。さらに、会社文化の変化は、従業員のモチベーションや生産性に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクについては、事業譲渡契約の段階で十分に検討し、対策を講じることが必要です。

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合資会社における事業承継の注意点

ここからは、合資会社が事業承継を行うにあたって、注意すべき点について解説します。

社員が死亡した場合、会社の形態が変わる可能性がある

合資会社における事業承継の一つの課題は、社員の死亡です。社員が死亡した場合、持分払戻請求権が相続人に移転しますが、合資会社の社員としての地位は自動的には相続されません。

また、事業承継ができなかった場合、会社の形態が変わる可能性があります。1名のみの有限責任社員や無限責任社員が死亡した場合、その合資会社は合同会社になってしまいます。社員が全員死亡した場合は、相続する社員がいなくなり、自動的に会社が解散します。

このため、事業継続のためには、相続人がその持分払戻請求権を出資し、新たに社員となる必要があります。また、相続人が社員となることを拒否した場合や、社員間での合意が得られない場合には、事業承継が難しくなる可能性があります。

対策としては、合資会社の定款に規定を設けることです。定款で持分の承継を規定することで、社員の死亡時などに発生する持分払戻請求権の相続や、新たに社員となる際の手続きをスムーズに行うことができます。

また、定款によっては、新たに社員となるための要件を厳格に設定し、事業継続のリスクを軽減することも可能です。

相続税や相続する負債が多額になる可能性がある

相続税は、社員が死亡した際に発生します。社員の持分の価値が高い場合、相続税の額も大きくなります。このため、事業継続のためには、適切な相続税対策が必要となります。

また、無限責任社員の負債に対する責任は、その財産全体に及びます。これに対して、有限責任社員の負債に対する責任は、その出資額に限られます。この点も事業承継の際には十分に考慮する必要があります。

対策としては、いくつかの税制優遇措置を活用することが考えられます。

たとえば、相続税法には、中小企業者等の事業承継促進税制が設けられており、一定の要件を満たす場合には、相続税を繰り延べることができます。

また、所得税法にも、事業承継時の譲渡所得に対する特例が設けられています。これらの税制優遇措置を活用することで、税金の負担を軽減し、事業承継を円滑に進めることができます。

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まとめ

合資会社は、無限責任社員1名と有限責任社員1名という社員が設立のために1名ずつ必要となる会社形態のことをいいます。合資会社は、株式会社とは異なり、原則として株式がないため、株式を活用して事業承継することができません。株式がないため、少ない出資額だけで会社を設立することができるというメリットがあるものの、株式を活用した大規模な資金調達が難しいというデメリットがあります。事業承継の際には、株式を活用しないでできる承継方法で、M&Aの一つである事業譲渡での承継がおすすめです。また、社員の死亡により事業承継をしなければならない可能性を考慮して、予め定款に定めを記載しておくことが重要です。事業承継を行うにあたっては、M&Aのプロにサポートを依頼すると良いでしょう。

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