スタートアップM&Aとは?市場動向やIPOとの違い、国内外の事例を紹介

2024年2月27日

スタートアップM&Aとは?市場動向やIPOとの違い、国内外の事例を紹介

このページのまとめ

  • スタートアップにとってM&Aは、有効なイグジット手段として定着してきている
  • スタートアップを買収する企業は、M&Aにより既存事業の強化・拡大を期待している
  • スタートアップ側のM&Aのメリットは、IPOと比べて短期間で完了することなど
  • スタートアップ側のM&Aのデメリットは、経営権を失う可能性があることなど
  • スタートアップのM&Aを成功させるためには、企業価値が高い時期に売却することが重要

自社のイグジット戦略としてM&Aの実施を検討しているスタートアップの経営者の方もいるのではないでしょうか。
スタートアップにおいてM&Aは、IPOと並びイグジット戦略の1つとして実施されることが多くあります。

本記事では、スタートアップのM&Aの動向や国内外の事例について詳しく解説します。スタートアップM&Aのメリット・デメリットやIPOとの違いなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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スタートアップのM&Aとは

スタートアップのM&Aとは、スタートアップ企業が他社との経営統合によるさらなる成長や創業者利益の獲得を図るための経営戦略の1つです。

スタートアップのM&Aにおける最大の特徴となるのが、スタートアップ側のイグジット(EXIT)戦略としてM&Aが実施されるという点です。

一般的にスタートアップは、創業時に投資家やベンチャーキャピタルから募った活動資金を回収するために、自社の事業がある程度軌道に乗った段階で売却することにより、投資資本の回収を目指します。

スタートアップとは

「スタートアップ」とは、明確な定義はないものの、革新的な技術やビジネスモデルによって短期間での急成長を目指す企業のことを指します。

スタートアップに対して新規事業創出や既存事業における新領域開拓の起爆剤となる効果を期待し、近年は日本国内においても、大手企業によるスタートアップの買収合戦が激しくなっています。

スタートアップとベンチャーの違い

新興企業を意味する「ベンチャー」と異なる点は、事業自体の革新性にあります。
ベンチャー企業が既存のビジネスモデルをベースとしているのに対し、スタートアップは前例のないビジネスモデルや革新的な先端技術を用いた事業を展開している点が、両者の最大の違いです。

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EXIT戦略におけるM&AとIPOとの違い

IPO(株式公開)は、M&Aと同じくスタートアップのイグジット戦略に用いられることの多い手法です。

IPOとは新規上場を意味します。
IPOによって証券取引所にて新規発行された自社株式を一般の投資家に購入してもらうことで、スタートアップの創業者は多額の資金を調達することが可能となります。

投資資本回収のための資金調達という点においては、M&AとIPOは共通していますが、両者の最大の違いは、当該事業に対し、スタートアップの手元から経営権が移転するかどうかという点にあります。 

 M&Aのスキームでは、スタートアップの株式を買い手となる会社が取得することによって、スタートアップの経営権を買収会社に譲渡することになります。

 一方で、IPOの実施では経営者が保有する株式は売却しないため、経営権の移転は発生せず、スタートアップ側が自社の経営権を持ち続けます。

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スタートアップのM&Aの動向

日本国内におけるスタートアップの企業数は年々増加傾向にあり、それに伴い、積極的にM&Aを選択する機運が高まっています。

ここからは、スタートアップを取り巻くM&A市場の動向や、スタートアップのM&Aが活発化している背景について解説します。

市場規模

株式会社大和総研が公表している「事業会社によるスタートアップ投資動向2022」によると、国内スタートアップを対象に2022年に実施されたM&A件数は963件となっており、過去10年間にわたり増加傾向が続いています。

また、2020年以降は高額で大規模なM&A案件が目立つようになっています。
以下のような取引額が10億円を超えるような大型M&Aも見られ、スタートアップのM&A市場の拡大と成熟が加速していることがわかります。

  • 株式会社Paidyを米PayPalが3,000億円で買収
  • HiTTO株式会社を株式会社マネーフォワードが20億円で買収
  • 株式会社サイトビジットをfreee株式会社が28億円で買収
  • 株式会社IRIAMを株式会社ディー・エヌ・エーが120億円で買収

大企業やグローバル企業によるスタートアップの買収事例は増加傾向にあります。
その反面、スタートアップの企業数自体が諸外国に比べて少ないという点が、今後の市場拡大に大きく影を落としています。

日本政府が国内スタートアップ育成のための支援強化を表明していることから、今後はスタートアップの創業件数の増加が加速され、より多くのM&Aが実施されていくことが期待されています。

参照元:株式会社大和総研「事業会社によるスタートアップ投資動向2022

スタートアップとのM&Aが活発化する背景

スタートアップのM&Aは、日本より一足早くアメリカで有効な成長戦略の1つとして浸透していきました。
特にアメリカの主要企業であるGAFAMと呼ばれる企業による、スタートアップとの積極的なM&Aは、世界中の投資家や企業から注目を集めています。
「GAFAM」とは、Google、Apple、Facebook(現・Meta)、Amazon、Microsoftの5社の頭文字をとったものです。
GAFAMは次々とスタートアップを買収することでさらなる成長を遂げました。

その流れを受け、日本でもソフトバンクや楽天、DeNAといったIT企業が、シリコンバレー型成長戦略を積極的に取り入れ、M&Aを積極的に実施して大きく成長を遂げています。

参照元:経済産業省「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書(バリュエーションに対する考え方及びIRのあり方について)」(2021年3月)

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スタートアップとM&Aする企業が得られる3つのメリット

スタートアップとのM&Aが活発化するのは、買収側にも大きなメリットがあるからです。
スタートアップ企業とM&Aをすることによって買収側にもたらされるメリットは、主に以下の3つです。

  • 新規事業へ参入できる
  • 既存事業を強化できる
  • 既存事業を拡大できる

以下で詳しく解説します。

新規事業へ参入できる

革新的なビジネスモデルや技術を誇るスタートアップとのM&Aは、新規事業への参入を希望する大手企業にとって非常に効果的な選択肢です。

新規参入を目指す事業領域において、スタートアップとのM&Aにより先端技術に関する知見や最新の経営ノウハウを持った人材などの経営資源を獲得できます。
そのため、低リスク・低コストで新規事業への参入し、飛躍的な成長を実現することが可能となります。

既存事業を強化できる

既存の事業と同業の競合会社にあたるスタートアップを買収することにより、当該事業の市場におけるプレゼンスと競争力強化を図ることができます。

また同じ領域でビジネスを展開するスタートアップとのM&Aを実施した場合、スタートアップが持つ経営資源を速やかに活用して経営の効率化を図ることも可能です。

既存事業を拡大できる

すでに展開している事業の領域拡大を図りたい場合においても、スタートアップとのM&Aは有効にはたらきます。

事業領域を効率的に拡大するためには、垂直型もしくは水平型と呼ばれるM&Aを実施することが一般的です。

垂直型M&Aと水平型M&Aの特徴は以下のとおりです。

垂直型M&A展開している事業のバリューチェーン上の上流または下流に位置する会社が対象
水平型M&A同じ領域におけるビジネスでありながらもカテゴリーが異なる事業を展開する会社が対象

垂直型M&Aでは、上流または下流の工程に位置するスタートアップを取り込むことで行われます。これにより、自社内にバリューチェーンに一貫して対応できる体制を構築することができ、サービス品質の向上や付加価値の創造に効果が期待できます。

一方で水平型M&Aでは、同じ領域にいながらもカテゴリーが異なるライバルと一体化し企業グループを作ることができます。これにより、互いの経営資源を活用しながら効率的に事業拡大を図ることが可能となるのです。

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スタートアップがM&Aで得られる3つのメリット

ここからは、スタートアップ企業がM&Aで得られる3つのメリットについてみていきましょう。

  • 短期間で完了する
  • 事業成長を加速化できる
  • 赤字状態でもイグジットできる

以下で詳しく解説します。

短期間で完了する

M&AはIPOと比較しても短期間でイグジットが完了する可能性が高い手法です。

IPOは多岐にわたる上場基準をクリアしたうえで手続きに入るため、場合によっては、準備から実施までに数年を要するケースも珍しくはありません。

対してM&Aは、スキームや当事会社にもよりますが、早ければ1ヶ月程度で完了する場合もあります。

企業買収の際によく用いられる株式譲渡であれば、必要な手続きは株式の移転だけなので、M&Aを行うための煩雑な手続きにかかる労力や時間を大幅に省くことが可能です。

加えて、イグジット戦略における資金調達が目的の場合も、M&Aスキームによっては対価として現金を受け取れるため、出資者への分配や債権返済に迅速に充てられる点も大きなメリットといえるでしょう。

事業成長を加速化できる

大手企業とのM&Aは、スタートアップの事業成長に対し大きな効果をもたらすことができる機会です。

スタートアップ側は、M&Aにより大手企業の持つ潤沢な資金やネットワークを活用できるようになり、スピーディな事業成長を図ることができるでしょう。

赤字状態でもイグジットできる

M&Aは、当事会社間で合意形成がなされれば成立するため、赤字状態にあるスタートアップであってもイグジットが可能です。

M&Aでは将来的に高い収益性が期待できる会社であれば、赤字状態にあってもスピーディなマッチング成立が期待できます。たとえば、ブランド力や顧客ネットワーク、特許などの資産を有していると、高値で会社を買い取ってもらえる可能性があります。

一方で、IPOを実施するためには、財務状況や業績が審査基準に入っているため、赤字状態にある会社はそもそも新規上場することができません。

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スタートアップのM&Aにおける3つのデメリット

スタートアップのM&Aには大きなメリットがある一方で、デメリットが生じる可能性もあります。ネガティブな可能性を理解したうえで実施に踏み切ることが、失敗を回避するためには必要です。

ここからは、スタートアップにおけるM&Aで考えられる下記の3つのデメリットについて解説します。

  • 経営権を失う可能性がある
  • IPOに比べて創業者利益が少なくなる
  • 人材が流出する可能性がある

それぞれ解説します。

経営権を失う可能性がある

M&Aにおいて用いるスキームによっては、スタートアップの創業者は経営権を失う可能性があります。

株式譲渡では株式の移転が行われるため、買収会社へ移転する株式の割合によっては経営権を買収会社へと譲渡することになります。また、事業単体を譲渡する事業譲渡では会社の経営権は移転しませんが、当該事業の経営はできなくなります。

スタートアップの創業者本人が、イグジット後も自分の手で経営を行っていくことを希望する場合、売却株式数や売却対象には気を付けましょう。
また、経営権の移転が生じずイグジットが可能なIPOを目指すことも視野に入れてください。

IPOに比べて創業者利益が少なくなる

M&A実施によってスタートアップの創業者が得られる利益は、IPO実施時よりも少なくなるケースが大半です。

IPOの場合、そもそも上場できるほど企業の価値が上がった状態で実施します。
そのうえ上場直後は株価が急騰するため、そのタイミングで保有する自社株を売却すれば、多額の売却益を獲得することができます。

しかしM&Aの場合、相手が承諾する価格まで売却価格を調整する必要があるため、企業価値によっては想定よりも安い買収価格での売却に着地する可能性もゼロではありません。

M&Aによって生まれる創業者利益は、買収会社の考え方や方針次第で変動するリスクをはらんでいる点をあらかじめ理解しておきましょう。

人材が流出する可能性がある

スタートアップから転籍した従業員たちが、買収会社での労働環境や仕事内容、会社風土などに対し不満やストレスを感じてしまうと、早期離職を選択するおそれがあります。

多くのスタートアップは、働き方の自由度が高かったり、授業員それぞれが自分の裁量で仕事を進めることができたりと、自由とやりがいを重視した職場環境であることが多いです。

しかし大手企業にグループインすることで融通が利かない環境になり、窮屈さを感じやすくなることもあるでしょう。
また、明確に仕事の担当範囲が定められた場合、やりがいが低下しやすくなるため、結果的に離職につながってしまいます。

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スタートアップのM&Aを成功させる5つのポイント

スタートアップにおけるM&Aでは、いくつかのポイントに注意しながら相手選定や交渉、諸手続きを進めていくことで、成功に導くことが可能です。

ここから、スタートアップにおけるM&Aで成功するために、押さえておくべき5つのポイントについて解説します。

  1. 売り時を見極める
  2. シナジー効果が期待できる買い手を選ぶ
  3. 企業価値を可視化する
  4. 丁寧に経営統合を進める
  5. M&A専門家のサポートを受ける

それぞれ解説します。

1.売り時を見極める

スタートアップの経営者は、自社にとって最適な売却タイミングでM&Aを実施することで、希望どおりの好条件での会社売却が実現しやすくなります。
企業価値が最も高い状態での売却が実現するように、計画的に準備を進めていきましょう。

M&Aにおいて高値での売却を成功させるために重要なポイントとなるのが、企業価値です。

スタートアップの価値評価においては、業績以外の有形・無形の資産価値も評価対象となりますが、スタートアップだからこそ重視される要素は、会社としての「若さ」です。
買収会社にとっては伸び代が残っている方が将来的なうまみをより多く期待できるため、高値がつきやすくなります。
また、類似企業が市場に参入していないという点も、買収会社にとっては高評価となるポイントです。

2.シナジー効果が期待できる買い手を選ぶ

M&Aによって生まれるシナジー効果は、M&Aの当事会社同士の相性に大きく左右されます。

両社が持つ経営資源はもちろん、強みとなる部分、経営課題、M&Aによって達成したい目的などがマッチする相手とM&Aを実施することで、さらなる相乗効果が期待できます。

そのため、売却価格や企業規模、知名度といった表層的な要素だけでなく、中長期的な視点からM&Aによって期待できる効果を検証したうえで相手を選定することが大切です。

3.企業価値を可視化する

スタートアップのM&Aにおける企業価値は、通常のM&Aよりも将来性が評価される傾向にあります。

そのためには、自社のビジョンや理念、経営方針や今抱えている課題、経営資源など目に見えない無形の資産も全て、リストなどの形で明確に残しておくと良いでしょう。それにより、より複合的な視点から企業価値を評価してもらうことができます。

4.丁寧に経営統合を進める

M&Aは、契約の締結までではなく、経営統合(PMI)までがうまくいってはじめて成功と言えます。2つの企業が1つになるにあたり、異なる経営手法や業務プロセス、企業風土などをすり合わせる必要があります。

PMIが滞りうまく統合できなかった場合、既存社員の離反や生産性の低下、業務上のミスなどが発生する可能性が高まり、M&Aによるシナジー効果が得られず、逆に生産性の悪化を招くこともあります。

PMIを成功させるためには、M&Aの成約前からPMIの実施プランを策定することが重要です。プランの内容は、経営方針などの大枠だけでなく、細かい業務プロセスまでどのようにしていくか綿密に練る必要があるでしょう。

5..M&A専門家のサポートを受ける

スタートアップのM&Aに際しては、M&Aの専門家サポートを受けると、円滑にM&Aを実施することができます。

特に若手人材が大半のスタートアップでは、M&Aに際して必要な準備や手続きに関する知見がある従業員が不在である可能性が高いでしょう。企業会計や財務、経理、法務、M&A業務など多岐にわたる専門知識をもって、煩雑な手続きをサポートしてくれる人が必要です。

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スタートアップのM&Aの事例

スタートアップのM&Aは、国内外で活発に行われています。

ここからは、国内と海外それぞれにおけるスタートアップのM&A事例を紹介します。

国内におけるスタートアップM&Aの事例

日本国内のスタートアップのM&A事例は、以下のとおりです。

楽天グループ社によるSKY ESTATE社の買収

銀行やECなどさまざまな事業を多角展開する楽天グループ株式会社は2022年4月に、ドローン関連事業を展開するSKY ESTATE株式会社の全株式を取得し、同社を完全子会社化しています。

ドローンや自動配送ロボットを活用した物流事業を展開し、操縦者育成機関「楽天ドローンアカデミー」も運営している楽天グループ社は、SKY ESTATE社の持つ育成ノウハウやドローンビジネスに関する知見を取り込み、ドローン業界のさらなる発展に貢献することを当M&Aの目的としています。

参照元:楽天グループ株式会社「楽天、SKY ESTATEを完全子会社化

エステー社によるコードミー社の買収

芳香剤や防虫剤の開発・販売を行うエステー株式会社は2023年10月に、アロマ空間デザイン事業を展開する株式会社コードミーを子会社化したことを発表しました。

エアケア領域においてトップランナーとして業界を牽引しているエステー社は、ヘルスケア領域における新事業やアロマ空間デザイン事業に注力しています。それらの事業にコードミー社のノウハウとスタートアップならではのスピード感を取り入れることで、新たなエアケア事業の創出を目指すことを当M&Aの目的としています。

参照元:株式会社コードミー「CODE Meee | エステー株式会社とM&Aで合意、子会社化へ
参照元:エステー株式会社「アロマ空間デザイン事業を手掛ける「株式会社コードミー」の株式を取得し子会社化

カミナシ社によるStatHack社​​の買収

現場DXプラットフォーム『カミナシ』を提供する株式会社カミナシは2023年10月、最先端技術を活用したAIソリューションを提供している東京大学松尾研究室発のスタートアップである株式会社StatHackの全株式を取得し、同社を完全子会社化しています。

カミナシ社は、StatHack社の持つ最先端AI技術を現場DXに取り入れることで、さらなるサービス品質の向上とノンデスクワーカーの生産性向上を図ることを当M&Aの目的としてます。

参照元:株式会社カミナシ「カミナシ、東大松尾研発AIスタートアップStatHackの全株式を取得

CBcloud社によるMagicalMove社の買収

ラストワンマイルの宅配サービス事業を展開するCBcloud株式会社は2023年5月、EC宅配サービス「Scatch!」を手掛けるMagicalMove株式会社を子会社化しています。

CBcloud社は、多様化が進むEC事業者の配送ニーズに柔軟に対応するソリューションを提供するために、「Scatch!」のサービス強化によって、ラストワンマイル配送における事業基盤の強化を図ることを当M&Aの目的としています。

参照元:MagicalMove株式会社「親会社異動のお知らせ

オイシックス社による米パープルキャロット社の買収

食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地株式会社は2019年4月、アメリカでヴィーガンミールキットの宅配事業を展開するPurple Carrotの全株式を取得し、同社を完全子会社化しています。

このM&Aにより、Purple Carrot社が培ってきた現地での宅配ノウハウや米消費者の間でニーズの高いビーガン食の宅配サービスを獲得します。オイシックス社は、アメリカでの事業展開開始のために、オイシックス社の主力商品であるミールキットの多様化を進め、米市場におけるプレゼンスを確立することが可能になりました。

参照元:オイシックス・ラ・大地株式会社「米国のビーガン食のミールキット宅配『Purple Carrot』を子会社化

海外におけるスタートアップM&Aの事例

ここからは海外のスタートアップのM&A事例を3つ紹介します。

米Cisco Systems社による米Splunk社の買収

ネットワーク機器製造の世界的大手のCisco Systems社は2023年9月、統合ログ管理ソフトウェア開発を行うアメリカのスタートアップのSplunk社を2024年内に約280億ドルで買収予定であると発表しています。

Cisco Systems社は、Splunk社の持つ高度なセキュリティ技術によりシスコ製品のセキュリティ機能を補完することを当M&Aの目的としています。

参照元: Cisco Systems, Inc.「Cisco to Acquire Splunk, to Help Make Organizations More Secure and Resilient in an AI-Powered World

米IBM社による仏Agyla.cloud社の買収

世界的IT大手のアメリカのIBM社は2023年6月、フランスのコンサルティングスタートアップのAgyla.cloud社の買収を発表しています。

IBM社は、Agyla.cloud社の持つ顧客ネットワークを獲得することで、フランス市場におけるシェア拡大を図ることを当M&Aの目的としています。

IBM社は2020年4月にアルビンド・クリシュナがCEOに就任以来、ハイブリッドクラウドとAI領域のスタートアップ買収を立て続けに行っており、今後もその動きに注目が集まっています。

参照元:IBM「IBM to Acquire Agyla SAS to Expand Hybrid Cloud Consulting Capability in France

米AMD社による米ザイリンクス社の買収

アメリカの半導体製造会社のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)社は2022年2月、同業であるアメリカの半導体製造会社のXilinx(ザイリンクス)社を約500億米ドルの株式交換にて買収が完了したことを発表しています。

AMD社は、汎用性と省電力性に長けたXilinx社の半導体「FPGA」技術を取り込むことで、自社が展開するデーターセンター向け事業の強化を図ることを当M&Aの目的としています。

参照元:AMD「AMDによるXilinx (ザイリンクス) の買収

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まとめ

スタートアップにおいてM&Aの実施件数は年々増加しており、IPOと並ぶイグジットの手段として活用されています。特にIPOと比べ短期間で完了することや、赤字状態でもイグジットできる可能性があることなどがメリットです。ただし、経営権を失う可能性があることや、IPOに比べて創業者利益が少なくなってしまう可能性があることがデメリットとして挙げられます。

M&Aを実施する際には、売りどきを見極める、シナジー効果が期待できる相手を探す、といった対応をとると、自身が望むイグジットを叶えられるでしょう。
また、円滑なM&Aを実施するためには、幅広い専門知識が必要となってくるため、M&Aの専門家とともに準備を進めていくことをおすすめします。

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