物流業界のM&Aとは?動向や事例、メリットについてわかりやすく解説

2024年2月16日

物流業界のM&Aとは?動向や事例、メリットについてわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 物流業界では、人材不足や業績悪化などの課題が深刻化している
  • 物流市場拡大への対応策として、M&Aを選択する機運が高まっている
  • トラックやドライバーなどの経営資源獲得がM&A実施の大きな目的となっている
  • 物流業界のM&Aは、垂直統合や水平統合といったパターンで行われることが多い

物流会社の経営者の方のなかには、M&Aを検討している方も多いのではないでしょうか。
再編の機運が高まる物流業界において有効な成長戦略を立てるためには、物流業界の最新動向を理解しておくことが大切です。

本記事では、物流会社のM&A事例を踏まえ、業界の直面している状況について詳しく説明します。物流会社がM&Aを実施するメリットやその方法についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

物流業とは

物流とは「物的流通」の略称で、実態を伴ったモノの流れを指します。生産者やメーカーによって作られた商品が消費者の手元にわたるまでの一連の活動を、包括的に表現する際に用いられる言葉です。

そしてそのようなモノの一連の流れに携わる業務全般に関する業界が、「物流業」または「物流業界」と呼ばれます。

物流業における具体的な仕事内容は以下の6つに分類されます。

輸送・配送陸路・海路・空路におけるトラックなどの輸送機関を使用した物品の移動
保管物品の品質を維持した状態での保存・管理
梱包・包装物品の品質を保護を目的としたダンボールなどによる梱包や、物品の価値向上を目的とした包装紙や容器による包装
荷役輸送機関への物品の積み込みや荷下ろし、倉庫への入出庫
流通加工輸送機関への物品の積み込みや荷下ろし、倉庫への入出庫
情報管理上記5つの業務の効率性・正確性向上を目的としたシステムや、デジタル機器による必要情報の収集・処理・伝達・保管・検索・廃棄を行う体系的施策

物流業は、他の企業活動に不可欠な存在であり、日本経済において重要な役割を担っています。

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物流業界の動向

物流業界は今、さまざまな課題を抱えながら、避けることができない業界再編の波にさらされています。

ここからは、物流業界の動向を読み解いていくために、物流業界における市場規模の変化と業界が抱える問題について解説します。

日本における物流市場規模の推移

日本における物流業界の市場規模は、2021年度時点で23兆1,860億円と推計されており、今後も大幅な拡大はないものの、微増・高どまりの状態が継続すると考えられます。

また、物流業界の世界市場の規模は、2022年時点で5兆2,000億米ドル(約775兆円/1米ドル=149円にて換算)に達し、2028年までに6兆8,000億米ドル(約1,013兆円)にまで拡大すると予測されています。日本もこの流れを受けて、市場の成長が続いていくでしょう。

物流の国内市場の成長を牽引している要因としては、「輸送量の増加」と「EC市場の拡大」の2つが挙げられます。

それぞれの状況について、見ていきましょう。

参考元:
株式会社矢野経済研究所「物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)
IMARC「市場調査レポート: 物流市場:世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年の予測

貨物輸送量の増加

国土交通省の「貨物輸送の現況について(参考データ)」によると、過去10年にわたり横ばい状態が続いていた国内貨物輸送量は、2020年に大幅に減少に転じた後、2021年は再び増加しています。

これは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で世界的に経済活動が停止したことを受けて、2020年の貨物輸送量が減少したという背景があるためです。

その後、徐々に経済活動が再開されるとともに国内輸送量も以前の水準に戻りつつあるという動きを見せています。

参考元:
国土交通省 総合政策局 物流政策課「貨物輸送の現況について(参考データ)」p.2

EC市場の拡大

経済産業省が実施した調査では、日本における電子商取引(以下、EC)の市場規模は拡大傾向が続いており、消費者向けECの市場規模は2022年時点で22兆7,000億円、前年比9.91%増という成長率で過去最高を更新しています。

対して法人向けECの市場規模も拡大を遂げており、2022年時点の市場規模は420兆2,000億円と、前年の334兆9,000億円から12.8%増という高い成長率を見せています。

国内貨物量の増加に大きく貢献している消費者向けECにおいては、食料品や飲料、生活家電やデジタル機器、書籍や生活雑貨、化粧品などの物販系ECの市場規模が最も大きく、消費者向けECの約6割を占めています。

ECによってさまざまな商品やサービスの利用が可能となっていることから、EC市場の拡大は今後も国内外の物流市場の拡大に大きく貢献していくでしょう。

参考元:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

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物流業界を取り巻く問題

市場拡大が進む物流業界ですが、その内側にはさまざまな問題が山積しています。

ここからは、日本国内における物流業界が抱える問題について解説します。

人材不足

国内物流の要となる自動車運送においても、人材不足は深刻な問題となっています。

運送業に従事するトラックドライバーの数は、1995年に98万人に達したところで頭打ちとなって以来急速に減少が進み、2015年には76.7万人に達しています。

そこからさらに3割が2030年までに減少し、51.9万人になることが推計されており、ピーク時から35年でトラックドライバーがほぼ半数にまで減少するとされています。

少子化が進む中、トラックドライバー職はいわゆる「3K(危険・汚い・きつい)職」というイメージが強いため、次世代の担い手の獲得が困難を極めています。

2022年に経済産業省・国土交通省・農林水産省が公表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、トラックドライバーの平均年齢が年々上昇している結果が出ており、新しい担い手の獲得ができていない業界の現状を表しています。

参考元:
経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」p.9
公益社団法人日本ロジスティクス協会「ロジスティクスコンセプト2030 デジタルコネクトで目指す次の産業と社会

進まないDX

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタルテクノロジーを活用して、業務プロセスやビジネスモデルを変革することで競争力を高めていく取り組みを指します。
デジタル技術の導入は省人化や生産性向上につながるため、物流業界が抱える人材不足問題解決の一助となると期待されています。

しかし、物流業界でのDXは遅々として進んでいないのが現状です。従業員数が少ない小規模事業者ほどDXにほとんど着手していないことが国土交通省の調査で明らかになっています。

DXが進まない理由としては、システムや専用機器の導入にかかるイニシャルコストと、それらの維持管理に必要なランニングコストの高さが導入を足踏みさせているという答えが大半を占めています。

ほかにも、DX推進を担当する組織や人材の不在、社内に情報やノウハウが不足しているなどの理由によってDXへの取り組みを妨げている要因として挙げられます。

参考元:国土交通省「物流業務の デジタル化の手引きP8 – P9」

燃料費の高騰

近年の燃料価格の高騰は、物流業界にダイレクトにダメージを与えています。

株式会社帝国データバンクの『「物価高倒産」動向調査(2022年)』によると、原油・燃料費を含む物価高を理由とした企業の倒産件数が、2022年は320件に上り、前年比の2.3倍となっていることが報じられています。

倒産企業の業種別割合では、運輸業が64件と全体の約20%を占めトップとなっています。
多重下請け構造の物流業界では、下層の下請け事業者になるほど、ガソリン価格の変動を荷主や発注元に交渉することができません。自社負担で乗り切らざるを得ない現状が、倒産数増加の要因と考えられます。

株式会社帝国データバンクの『「物価高倒産」動向調査(2023年5月)』によると、2023年5月までの時点で、物価高倒産の件数はすでに312件に達しており、運送業の倒産件数も44件とハイペースで増えています。2023年は前年に比べてさらに多くの運送事業者が倒産を迎える可能性が高いでしょう。

参考元:
株式会社帝国データバンク『「物価高倒産」動向調査(2022年)』(2023年1月13日)
株式会社帝国データバンク『「物価高倒産」動向調査(2023年5月)』(2023年6月8日)

2024年問題

物流業界における労働環境改善を目的とした労務管理基準の変更は、物流業界の再編を促す大きな一歩となります。

「2024年問題」と呼ばれるこの管理基準変更とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に年間960時間という上限が適用となることを指します。

すでに2023年4月より、月60時間を超えた時間外労働に対しては、割増賃金率が25%から50%となり、より多くの割増賃金を支払うことになっています。

この割増賃金率の増加と残業時間の上限設定により、運送会社はドライバーの労働時間短縮を余儀なくされ、長距離輸送に従事してきたトラックドライバーの長時間労働を、是正する必要が出てきています。

労働時間短縮により減収入となった長距離ドライバーが離職する可能性が高まる一方で、運送会社側では長距離の運送サービスを維持するためのドライバーの増員や人件費の上昇、中継拠点の開設などによりコストが増大することが危惧されています。

参考元:公益社団法人全日本トラック協会「トラック運送業界の2024年問題について」 p.5

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物流業界におけるM&Aの売り手側のメリット・デメリット

ここでは物流業界におけるM&Aのメリットとデメリットについて、まずは売り手側の立場から解説します。

売り手側の4つのメリット

物流業界M&Aの売り手側が享受できると考えられるメリットは、主に下記の4つです。

  1. 会社の資産を承継できる
  2. 従業員の雇用を維持できる
  3. 売却益を得られる
  4. 個人保証が解除される

それぞれ解説します。

1.会社の資産を承継できる

M&Aによって自社を売却することにより、これまで築き上げてきた有形・無形の資産を承継することが可能です。

引き継ぐ資産としては、運送に関わる専門性の高い技術やノウハウはもちろん、ブランド力や集客力、取引先のネットワークなどが挙げられます。

これらの貴重な会社の資産を高く評価してくれる相手とのM&Aが実現すれば、相場よりも高値での売却が実現することにも期待できます。

2.従業員の雇用を維持できる

M&Aによって他社に会社を売却することで、現在雇用している従業員を買収先へ承継することが可能です。

利用するM&Aのスキームや契約内容によりますが、従業員の雇用が維持できるという点は、売り手側の会社経営者にとっては非常にメリットが大きいといえるでしょう。

倒産・廃業を選択した場合、従業員の失業は免れません。特に従業員との関係が深い中小企業や小規模事業者にとっては、従業員の生活を守るためにM&Aを選択するという経営者も多いでしょう。

3.売却益を得られる

会社や事業を売却することで、企業価値に見合った対価を現金として得ることができます。

ただし、M&Aでは、利用するスキームによって会社を売却した際に対価として受け取る物が異なります。

たとえば、株式譲渡や事業譲渡では対価として現金が支払われることが一般的ですが、会社分割では対価は株式で株主に対して交付されます。

このように利用するM&Aスキームによっては、売却会社の経営者が売却益を現金で得られることもあるため、その場合新規事業への参入や老後の生活資金への活用が可能です。

4.個人保証が解除される

経営者個人が連帯保証人となって金融機関などから融資を受けている場合、M&Aによって会社を売却することで個人保証が解除されるケースがあります。

M&Aによって債務も一緒に売却する場合、一部の例外を除いては買収会社がそのまま返済義務を肩代わりすることが多いため、売却会社の経営者は金銭的・心身的な重圧を軽減することができます。

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売り手側のデメリット

物流業界でM&Aによって自社の売却を行う場合、売り手側にとってデメリットとなる要因として下記の3つが挙げられます。

  1. M&A後の事業を制限される
  2. 会社の経営権を失う可能性がある
  3. 希望に満たない条件で売却される

それぞれ解説します。

1.M&A後の事業を制限される

M&Aの実施にあたり事業譲渡のスキームを利用する場合、売り手側の会社には会社法第21条にて競業避止義務が定められているため注意が必要です。
買収会社と隣接する地域で物流業を営むことを20年間禁止されます。この期間は、特約を設けることによって最長30年間まで延長されることがあります。
また、事業譲渡以外のスキームでも、M&A契約締結時に競業避止義務についての取り決めを定めている場合は義務が発生します。

参考元:e-Gov法令検索「会社法第21条、第356条

2.会社の経営権を失う可能性がある

M&Aのスキームによっては、売り手側の会社の経営権を失ってしまう可能性があります。

物流業界におけるM&Aで多く用いられる事業譲渡では、売却した会社の法人格を残すことが可能ですが、株式譲渡で会社そのものを売却してしまうと、経営権を失ってしまいます。

物流事業を手放した後に新たな事業に着手する場合は、自社の経営権を残しておいた方がさまざまな手続きの手間が省けるため、M&A後の計画を考慮したうえで適切なM&Aスキームを選ぶことが大切です。

3.希望に満たない条件で売却される

M&Aは基本的に売り手と買い手の双方が諸条件に合意したうえで実施されるため、売り手側の希望条件を100%満たす形でのM&A成立が難しい場合があります。

特に赤字状態が続いている物流会社は、想定よりも安い価格での買収をオファーされる可能性が高くなります。
あらかじめ交渉における優先事項や譲歩可能な条件などを決めたうえで交渉にのぞみましょう。そうすることで、極端に不利な条件で買い叩かれる事態は回避できます。

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物流業界におけるM&Aの買い手側のメリット・デメリット

物流会社のM&Aにおいては、買収する会社側にもさまざまなメリットとデメリットが生じる可能性があります。

ここからは、買い手側となる会社の立場から、M&Aのメリット・デメリットについて解説します。

買い手側のメリット

物流業界M&Aの買い手側となる会社が享受できるメリットとしては、下記の3つが挙げられます。

  1. リソースを効率的に獲得できる
  2. 低リスクで事業規模拡大を図れる
  3. コストを削減できる

それぞれ解説します。

1.リソースを効率的に獲得できる

物流業は、輸送トラックやドライバー、保管倉庫や物流拠点などの有形の経営資源が事業の要となっています。M&Aにより、買収した会社が保有するそれらの有形資産をそのまま引き継ぐことが可能です。

たとえば、ある特定のエリアで事業展開をしていた物流会社を買収することで、その地域における取引先や顧客のネットワークを活用することができます。
このように、買収会社は迅速かつスムーズに当該地域へのサービス参入を進めることができます。

2.低リスクで事業規模拡大を図れる

買い手側となる会社は、自社においてウィークポイントとなっている部分や欠けている部分を補完する会社を買収することで、低リスクで事業規模拡大を進めることができます。

M&Aにより外部リソースを獲得することで、自社で人材育成や開発、新規顧客や販路の獲得を行う手間も時間も削減することができ、短期間でより高い効果を得ることが可能です。

3.コストを削減できる

M&Aによって売却された会社が既に持っている経営資源を、買収先の会社が有効活用することで、大幅なコストカットを実現することが可能です。

物流業ではトラックや拠点や倉庫など、事業の開始時や拡大時には多額の設備投資が必要となります。

しかし、M&Aによってそれらの設備をまとめて取り込み即戦力として活用することで、イニシャルコストを抑えることができます。さらには余分な管理費が不要となることで、ランニングコストも抑えることが可能です。

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買い手側のデメリット

物流会社のM&Aの買い手側に生じる可能性があるデメリットとしては、以下の3つが考えられます。

  1. 簿外債務を引き継ぐ可能性がある
  2. 従業員が流出する可能性がある
  3. 期待したシナジー効果が得られない可能性がある

それぞれ解説します。

1.簿外債務を引き継ぐ可能性がある

M&Aによって物流会社を買収した場合、買収後に簿外債務が発覚する恐れがあります。

簿外債務とは、財務諸表に計上されていない未払金や債務保証などを指します。M&Aのスキームによってはそれらに気づかないまま、売却される会社の資産や権利義務と一緒に包括的に譲り受けてしまう可能性が高くなります。

物流会社の中には経営管理がずさんな会社も多いため、ドライバーの時間外労働手当や保険料などの未払いや口約束による借金が常態化しているケースも珍しくはありません。

M&Aを実施する前にデューデリジェンスを入念に行うことが大切です。

2.従業員が流出する可能性がある

従業員が、買収会社の社内文化や転籍後の雇用条件、仕事内容などに対して不満を抱くと、早々に離職してしまう可能性が高くなります。

人材不足が深刻な物流業界において、経験豊富なドライバーや作業員の獲得はM&Aを実施する目的の1つとなっています。

買い手側の会社は、せっかく獲得した人材が流出してしまわないように、面談の実施や待遇の見直しを行い、計画的かつ丁寧に経営統合を進めるよう注意しましょう。

3.期待したシナジー効果が得られない可能性がある

さまざまなシナジー効果を期待してM&Aを実施したとしても、結果的に希望したような効果が生まれない場合があります。

たとえば、販路の拡大を期待してM&Aを行ったものの、統合作業が滞り、コストが過大にかかる結果となってしまう場合もあります。
このような事態を避けるためには、売り手企業の事業内容や企業文化などを徹底的に調べ上げ、自社の事業に対してどのようにシナジー効果を生むか、細かいところまで具体的にイメージができるようにすることが大切です。また、買収後の統合プランも綿密に計画する必要もあるでしょう。

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物流業界のM&Aの相場

物流業界におけるM&Aで売却価格を算定する際、以下のような方法で算定された額が1つの目安額となります。

売却会社の直近の純資産額 + 数年分の営業利益

売却される会社の規模によって変動はしますが、営業利益は一般的には2〜5年分程度で算定されることが多いでしょう。

加えて、最終的な売却価格の決定には、売却される会社の資産がどのように評価されるかが大きく影響してくるということも押さえておく必要があります。

特許や優秀な技術者、長年培ってきたノウハウなどの無形資産も評価対象となるため、そこで高く評価された会社の売却価格は相場よりも格段に高額となります。

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物流業界におけるM&Aのパターン

物流業界におけるM&Aは「垂直統合(垂直型M&A)」と「水平統合(水平型M&A)」のいずれかの形で実施されるケースが多いです。
垂直統合と水平統合の違いは下記の表のとおりです。

垂直統合(垂直型M&A)水平統合(水平型M&A)
M&Aの相手企業上流・下流企業工程が同じ企業
目的一貫した物流体制の構築市場シェアの拡大
メリット各工程の中間コストを抑えられるスケールメリットを活かせる
デメリット管理にコストがかかる可能性があるプロセス統合がうまくいかない可能性がある

それぞれの統合方法について解説します。

垂直統合(垂直型M&A)

垂直統合とは、製品やサービスを供給するバリューチェーンに沿って、上流・下流のいずれかの工程に位置する会社や事業を取り込むことを意味します。

物流業界は、原料調達や商品の製造・生産を担う上流工程と、流通・販売などを担う下流工程に分けることができます。
自社よりも上流または下流にある会社とM&Aで統合することによって、自社における一貫した物流工程を構築することが可能になり、中間コストを削減することができます。

注意点として、これまで触れてこなかったサプライチェーンの管理をすることになるため、適切に管理できないとコストが膨らむ可能性があります。

水平統合(水平型M&A)

水平統合は、同じバリューチェーン上の同じ工程に位置する他社との統合を指し、同じ工程にいる企業同士が一体化することを意味します。

水平統合では競合他社とグループ化することで市場シェアの拡大を図ることができます。

ただし、同じ工程を担う企業同士でもそのやり方は企業によって異なるため、うまくプロセスを統合できないと、プロセス不全や社員同士の摩擦が生まれ、生産性が低まりコストが増大する可能性があります。

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国内における物流M&Aの事例5選

さまざまな問題を抱える物流業界では業界再編の動きが活発化しており、物流業界のM&A事例に注目が集まっています。

近年はドライバーの高齢化による事業承継問題や人材不足や燃料価格の高騰などによる事業環境の悪化などを受け、M&Aが行われるケースが目立つようになっています。

ここからは、物流業界におけるM&Aの国内事例を5つ紹介します。

ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業の子会社化

総合物流サービス事業を展開する株式会社ヒガシトゥエンティワンは、2022年2月に山神運輸株式会社の全株式を取得して完全子会社化しました。

鋼材や機械等の重量物輸送や海上コンテナ輸送を得意とする山神運輸を子会社化することで、新たな輸送資源を獲得し、グループ全体での輸送力の強化を見込んでいます。

また、互いの経営資源を活用した新領域での事業展開も視野に入れた、水平統合によるM&A事例となっています。

参考元:株式会社ヒガシトゥエンティワン「山神運輸工業株式会社の株式取得完了に関するお知らせ

東部ネットワークによる東北三光の子会社化

仙台から広島までの地域における3PL(※)事業により全国に物流ネットワークを構築している東武ネットワーク株式会社は、仙台・秋田エリアを中心にセメント輸送を手がける株式会社東北三光の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。

創業以来50年にわたって東北エリアのインフラ事業に携わっている東北三光社の持つ顧客やメーカー、輸送業者との強固なネットワークを取り入れることで、東北エリアでの営業拡大を図ることが目的とされています。

(※)3PL:「サードパーティー・ロジスティクス」の略称。荷主に対して物流改革を提案して、物流業務を包括的に受託するビジネスモデル、またはその事業者

参考元:東武ネットワーク株式会社「株式会社東北三光の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ニッコンホールディングスによる安川トランスポートの子会社化

総合物流事業を展開するニッコンホールディングス株式会社は、株式会社安川トランスポートの株式の86%を取得することで、2022年に同社を子会社化しました。
安川トランスポートは、産業用ロボットなどのメカトロニクス製品の製造・販売を行う安川電機の孫会社にあたる会社で、九州北部の運送事業を営んでいる企業です。

当M&Aにより、安川トランスポートは社名を「株式会社ニッコン北九」に変更し、安川グループで培ってきたノウハウやネットワークを北九州エリアを中心とした輸送サービス拡充に活用していくと発表しています。

また、安川グループ側としても、当M&Aによりグループ内の資本効率化を図ることを目指しており、両社の希望がマッチした形で実現した水平統合のM&A事例です。

出典;ニッコンホールディングス株式会社「株式会社安川電気の孫会社(株式会社安川トランスポート)の株式取得に関するお知らせ

センコーによる安全輸送の子会社化

物流業界トップクラスの規模で総合物流事業を展開するセンコー株式会社は2017年8月に、関東エリアで自動車運送業を行っている安全輸送株式会社の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。

当M&Aでは、安全輸送の保有する、神奈川県を中心とした5ヶ所の自社物流センターや、冷凍・冷蔵車を含む多様な車種の運送車両約400台をセンコーが取り入れることで、神奈川県を中心とした西関東エリアでの車両・人員の増強を図り、事業拡大を進めることが目的とされています。

この事例は、運送車両や物流拠点などの経営資源増強を目的とした、物流業界らしいM&Aの事例です。今後もこのタイプのM&Aは物流業界において頻出することが予想されます。

出典;センコー株式会社「安全輸送㈱を子会社化し、 グループ車両勢力を増強、事業拡大を図る

近物レックスによるエービーエクスプレスの子会社化

全国に100以上の物流拠点を構える総合物流会社の近物レックス株式会社は2018年11月に、共同配送事業を展開する株式会社エービーエクスプレスの株式を取得し、子会社化しました。

当M&Aにより近物レックスは、エービーエクスプレスの持つ都内エリアにおける配送ノウハウを取り込むと同時に、ドライバー確保と運送業務の効率化を図ることが目的とされています。

このようなドライバー不足を解消するためにM&Aを選択するケースは、今後も増加していくでしょう。

参考元:近物レックス株式会社「株式会社エービーエクスプレスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

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まとめ

人材不足や物価高などのさまざまな課題を抱える物流業界では、2024年の労務管理基準の変更を前に、業界再編が活発に行われています。

バリューチェーンの各工程ごと構築された下請け構造により、全国に点在する中小規模の物流会社は、今後さらに統合が進み、自社一貫体制でバリューチェーン全体を効率的に管理・運営する総合物流会社が増加していくことが予想されます。

物流会社のM&Aでは、古くからの慣習や体制により労務上、財務上のリスクが顕在化する可能性も高く、念入りなデューデリジェンスがM&A成功の鍵となります。

物流業界において適切にM&Aを実施するにあたっては、企業経営に関する幅広い知識を持った専門家のサポートがあった方がよりスムーズかつ、的確に準備を進めていくことができます。

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