土木業界のM&A動向と事例|売却・買収のメリットや成功のポイントも解説

2023年10月30日

土木業界のM&A動向と事例|売却・買収のメリットや成功のポイントも解説

このページのまとめ

  • 土木業界では、人材確保や後継者不在の解決などを目的としたM&Aが活発
  • 土木業の会社・事業の売却には、従業員の雇用維持などのメリットがある
  • 土木業の会社・事業の買収には、事業規模拡大やノウハウ獲得などのメリットがある
  • 土木業界の売却を成功させるには、受注記録や実績の整理などが重要
  • 土木業界の買収を成功させるには、有資格者や優秀な作業者の有無確認などが重要

土木業界では、人材確保などを目的とした同業者の買収が活発です。土木業のM&Aにより、買い手は「事業規模の拡大」、売り手は「後継者不在問題の解決」などのメリットを期待できます。売り手側は受注記録や工事の実績を整理すること、買い手側はデューデリジェンスによるリスクの精査などが土木業のM&Aを成功させるポイントです。土木業界の課題やM&A動向、事例、売却・買収のメリット、成功させるポイントなどを解説します。

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土木業界のM&A動向

近年の土木業界で行われているM&Aには、主に以下2つの目的で実施されている傾向が見受けられます。 

人材確保や事業規模拡大を目的とした同業者の買収

土木業界では、人材不足が深刻な課題であるため、人材確保を目的とした同業者の買収が目立っています。特に、優秀な職人を多く抱えている土木業の会社のニーズが高い傾向にあります。

また、競争の激しい土木業界において、事業規模の拡大によって競争優位性を高める目的で買収を行うケースも少なくありません。

後継者不在や経営不振などの課題解決を目的とした売却

売り手側の視点で見ると、主に後継者不在や経営不振などの課題を解決する目的で、M&Aを活用する動きが広まっています。単純に会社を存続させるだけでなく、買い手企業との経営資源共有によって、業績の改善や成長性向上を図る姿勢も顕著です。

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土木業界の概要

次に、土木事業の定義と特徴を解説します。

土木業界の定義

国土交通省「建設業許可制度」によると、建設業法では、建設業の業種として29種類を定めています。そのうち、土木工事業(土木一式工事)は「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)」と定義しています。

「一式」という用語が含まれていることから分かる通り、法律上は建設作業だけでなく、企画や指導を含めて包括的に工事を担当する業種とされています。

※参照元: 国土交通省「建設業許可制度」P19

ただし、一般的にはダムや道路、トンネルなどの土木工作物の完成・修理などを行う工事を「土木工事」として考えます。したがって、土木一式工事だけでなく、大工工事業や舗装工事業、しゅんせつ工事業なども含めて土木業界と考えることが一般的です。

土木業界の特徴

土木業界には、主に3つの特徴があります。

許可制度

国土交通省「建設業の許可とは」によると、他の建設業と同様に、土木工事業を行う場合には29種類ある業種ごとに許可を受ける必要があります(軽微な建設工事のみの場合は例外)。そのため、他業種の許可を持っている場合でも、土木工事業の許可が別途必要となります。

※参照元: 国土交通省「建設業の許可とは

下請構造の存在

土木工事に限らず建設業界では、ゼネコンと呼ばれる総合建設会社が元請として発注者との契約を締結し、実際の工事を各下請業者に発注する構造となっているケースが多いです。また、下請業者が工事の一部分をさらに別の業者に発注する多重下請構造となることも少なくありません。

公共工事の割合が高い

建設業は、「土木工事」と「建築工事」に大別されます。国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」によると、公共発注の割合に関して、建築工事は約25%である一方で、土木工事は約75%と圧倒的に高くなっています。道路や下水道などのインフラ整備が主な工事内容であるため、国や地方自治体からの公共投資割合によって業績が変動するリスクが比較的高いと言えます。

※参照元: 国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」P3

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土木業界の現状と課題

昨今の土木業界には、以下3つの課題があります。

  1. 人材不足
  2. 後継者不在の深刻化
  3. 公共インフラへの投資縮小の懸念

以下では、各課題の詳細と解決の方向性を解説します。

1.人材不足

国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」によると、1997年には685万人だった建設業就業者は、2021年には482万人にまで減少しています。また、建設業就業者のうち29歳以下は1割しかいない一方で、55歳以上が3割以上を占めています。高齢化と人材の減少が続いていることから、人材不足が深刻化するリスクが高まっています。

※参照元:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」P5

2.後継者不在の深刻化

帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」によると、建設業における後継者不在率は63.4%です。全国・全業種平均の57.2%と比較して高い上に、主な8業種の中で最も高い水準となっています。経営者の高齢化と相まって、後継者不在の問題は深刻化していると言えます。

※参照元:帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」P4

3.公共インフラへの投資縮小の懸念

国土交通省「建設産業の現状と課題」によると、建設における政府投資額は、35兆円であった平成8年(1996年)度以降は減少傾向となっており、平成28年(2016年)度には22兆円まで減少しています。

少子高齢化に伴う人口減少により、今後は公共インフラの利用者数や社会保障費が減少し、公共インフラに対する投資は縮小すると考えられます。
それに伴い、公共工事の割合が高い土木業界の業績は中長期的に悪化するおそれがあるでしょう。

※参照元:国土交通省「建設産業の現状と課題」P2

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土木業界における売却のメリット

土木業の会社または事業を売却すると、以下4つのメリットを期待できます。

  1. 後継者不在の問題を解消できる
  2. 従業員の雇用を維持できる
  3. 売却益を獲得できる
  4. 会社の成長を実現できる

それぞれのメリットを見ていきましょう。

1.後継者不在の問題を解消できる

前述の通り、土木業界では後継者不在が深刻な課題となっています。株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」によると、建設業の後継者不在率(2022年)は63.4%であり、最も悪化していた2017年(71.2%)と比べると改善傾向です。ただし、全業種平均(57.2%)と比べて高いため、依然として深刻な問題であると言えます。

後継者不在の問題が解決しないと、最終的には廃業せざるを得ない状況に追い込まれます。廃業は回避できても、従業員のモチベーション低下や離職を招く可能性があるでしょう。

後継者不在の問題を解消する1つの手段として、土木業を営む会社の売却は効果的です。会社ごと売却し、新たな経営陣に経営権を引き継がせることで、後継者不在でも事業承継を実現できます。これにより、長年培ってきた技術やノウハウ、会社のブランドを存続させることが可能です。

※参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

2.従業員の雇用を維持できる

後継者不在や経営不振のために廃業すると、従業員の雇用は維持できなくなります。

一方で土木業を営む会社の売却では、ノウハウなどだけでなく、基本的に従業員の雇用も引き継がれます。そのため、従業員の生活に支障をきたす事態を防げます。また、買い手企業次第では、キャリアアップや新たなスキルの習得、待遇の向上なども見込めるでしょう。

3.売却益を獲得できる

土木業界における会社の売却は、株主(≒経営陣)にとってもメリットの大きい選択肢となり得ます。

会社の売却では、株式を保有している株主が売却益を得られます。ある程度大きな額の現金を得ることで、経済的に豊かな生活を送ったり、起業などの新たなチャレンジを行なったりすることが可能です。

また、事業譲渡によって一部の事業や部門のみを売却した場合には、会社側が利益を得ます。その利益を投資することで、既存の土木事業を強化したり、新規事業の立ち上げを加速させたりできるでしょう。

加えて、廃業や倒産に伴う費用をかけずにリタイアできる点も魅力です。

4.買収側とのシナジー効果で成長を実現できる

土木業界におけるM&Aは、業界内での競争力を高め、会社の成長を実現する重要な手段にもなり得ます。

たとえば大手建設会社の傘下入りを果たすことで、技術やノウハウ、販路などを共有してもらい、事業の収益性や成長性を高められる可能性があります。また、不採算事業のみを売却することで、主力事業や成長性の高い新規事業へのリソース集中が可能となり、業績の向上を見込めます。

※参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

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土木業界における買収のメリット

土木業の会社または事業を買収すると、以下4つのメリットを期待できます。

  1. 営業エリアを拡大できる
  2. 人材や技術、ノウハウなどの経営資源を獲得できる
  3. リスク分散やシナジー創出を見込める
  4. スピーディーに目標を達成できる

それぞれのメリットを見ていきましょう。

1.営業エリアを拡大できる

別の地域に基盤がある土木業の会社を買収すれば、新しい地域への進出を果たせます。

上記のように事業を展開するエリアが拡大すれば、市場内におけるポジションの強化にもつながります。業界内における存在感やブランド力が高まることで、持続的な競争優位性の確立も期待できるでしょう。

2.人材や技術、ノウハウなどの経営資源を獲得できる

人材などの経営資源を確保することで、さまざまなメリットを期待できます。

たとえば、獲得が困難な経営資源(優秀な職人やプロジェクト管理のノウハウなど)を得ることで、「中長期的な競争力の向上」や「成果物のクオリティ向上」、「業務の効率化」などを見込めます。

3.リスク分散やシナジー創出を見込める

土木業の買収ではリスク分散を期待できます。

たとえば異業種の企業が土木業の会社を買収することで、新しく土木工事の分野に参入できます。
その結果、本業の収益悪化を土木工事の収益でカバーすることが可能となり、会社全体での業績悪化のリスクを軽減できます。

また、売り手企業とのシナジー効果が創出される場合もあります。たとえば、案件受注に強みがある土木業の会社が優秀な技術者を多く擁する同業者を買収すると、売上面でのシナジー効果を期待できるでしょう。

他には、材料の大量受注や仕入交渉力の強化によって、コスト面のシナジー効果が生み出される可能性もあります。

4.スピーディーに目標を達成できる

上記でお伝えした「営業エリアの拡大」や「経営資源の獲得」などは、M&Aを行わず自社のみで達成することも可能です。しかし、自力で一から行うとなると、膨大な時間を要する可能性があります。

一方でM&Aを行えば、すでに目標達成に必要な条件を満たしている会社や事業を買収できます。その結果、大幅に目標達成までの時間をカットすることが可能です。

たとえば「土木領域への新規進出」が目標の場合、既存の土木業の会社を買収することで、人材採用・育成や信頼獲得のための営業・マーケティングなどにかかる時間の大半が不要となり、事業が軌道に乗るまでの時間を大幅に削減できるでしょう。

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土木業同士または関連業種とのM&A事例

土木業同士または土木業と関連業種とのM&A事例を3件取り上げ、M&Aの目的やスキーム、取得価額を解説します。
同業者によるM&A事例を知ることで、土木業界のM&Aに関する理解を深めることができるでしょう。

清水建設による日本道路の買収

買い手の清水建設は建設・不動産開発事業を行う大手ゼネコン(総合建設会社)です。一方で売り手の日本道路は、道路建設・舗装、一般土木事業などを展開しています。

買い手側は、売り手企業の連結子会社化により、協働での「案件取り組み強化」や「相互の顧客網・技術・拠点網等を活用した事業競争力の強化」などを図る目的でM&Aを行いました。2022年3月に行われたM&Aでは、TOBのスキームによって清水建設が日本道路株式を追加取得し、議決権所有割合を24.84%から50.1%まで拡大しました。取得価額は222億200万円です。

※参照元:
日本道路「清水建設株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ
日本道路「清水建設株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果 並びに親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ

テノックスによる大三島物産の買収

買い手のテノックスは土木および建築構造物の基礎工事を、売り手の大三島物産は静岡東部地区を基盤として一般土木工事や地盤改良などの事業を展開しています。

買い手側はグループ全体の成長を図る目的で買収しました。一方で売り手側は、買い手企業が有する技術や工法の活用によって、静岡県および周辺地域のインフラ整備や製造業などにおける産業基盤の整備などを図る目的でM&Aを行いました。

2022年4月に行われたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってテノックスが大三島物産を子会社化しました(株式取得割合は非公表)。取得価額は明らかにされていません。

※参照元:テノックス「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

大盛工業による港シビルの買収

買い手の大盛工業は下水道を中心とした土木工事や小規模マンションの建設を、売り手の港シビルは港湾および河川の土木工事事業を展開しています。

買い手側は建設事業における収益力向上と事業基盤の拡大を図る目的でM&Aを行いました。2021年6月に行われたM&Aでは、株式譲渡のスキームによって大盛工業が港シビル株式の全部を取得し、同社を子会社化しました。取得価額は1億4,100万円です。

※参照元:大盛工業「港シビル株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

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土木業界と異業界のM&A事例

次に、土木業界に属する企業と異なる業界に属する企業によるM&Aの事例を解説します。
3例取り上げ、M&Aの目的や手法などをお伝えします。

前澤化成工業による常陽水道工業の買収

買い手の前澤化成工業は上水道・下水道関連製品の生産、販売事業を、売り手の常陽水道工業は茨城県を基盤として土木・電気工事や管工事などの事業を展開しています。

買い手側は、売り手企業との技術・ノウハウの融合による事業基盤強化および収益力向上、「水のマエザワ」ブランドの強化などを図る目的でM&Aを行いました。2022年10月に行われたM&Aでは、株式譲渡のスキームによって前澤化成工業が常陽水道工業株式の91.93%を取得し、同社を子会社化しました。取得価額は非公表です。

※参照元:前澤化成工業「常陽水道工業株式会社の株式取得(子会社化)についてのお知らせ

イノベックスによるエイゼンコーポレーションの買収

ウェーブロックホールディングスの子会社である買い手のイノベックスは、プラスチックシートや合成繊維製網製品などの販売を、売り手のエイゼンコーポレーションは土木工事や水道施設工事などの事業を展開しています。

買い手側は地中熱関連設備工事事業への参入や、それに伴う人材(1級施工管理技士や2級建築士など)の確保、設計業務への対応力担保を図る目的でM&Aを行いました。2022年4月に行われたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってイノベックスがエイゼンコーポレーション株式の全部を取得し、同社を子会社化しました。取得価額は非公表です。

※参照元:ウェーブロックホールディングス「子会社によるエイゼンコーポレーションの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

新生事業承継による榮開発の買収

買い手の新生事業承継はSBI新生銀行の投資専門子会社です。売り手の榮開発は東北3県を主な営業基盤として、河川や道路などの土木工事事業を展開しています。

買い手側は売り手企業の経営改革および事業承継の支援、売り手側は持続可能な経営体制の構築および事業承継を図る目的でM&Aを行いました。2023年1月に公表されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによって新生事業承継が榮開発株式の全部を取得しました。取得価額は非公表です。

※参照元:新生事業承継「事業承継支援を目的とした株式会社榮開発の全株式取得に関するお知らせ

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土木業の売却を成功させるポイント

売却の成功は、「満足できる条件で売却し、目的(事業承継など)を達成すること」であると言えます。この前提に立った場合、土木業の売却を成功させるには、以下4つのポイントを押さえることが効果的です。

受注記録や工事の実績を整理しておく

土木業を売却する際、過去の受注実績や工事実績を整理しておくことは重要です。正確なデータを提供することで、買い手側は売り手企業の財務やビジネスの強み・弱みなどを正しく評価できるからです。

これにより、企業価値評価や買い手企業との交渉がスムーズに進行することになります。また、自社の強みを最大限アピールし、満足できる条件での売却につなげやすくなるでしょう。

早めにM&Aの準備に着手する

売却を考える際には、早い段階からM&Aの準備に着手することが重要です。

たとえば高値での売却には企業価値を高めることが重要ですが、施策の実行には時間がかかります。また、希望条件を満たす買い手企業を探すことや、従業員から買い手企業への移行に同意してもらうことにも相応の時間がかかります。

必要に迫られてから準備を始めると、十分な時間を確保できずに、M&Aの契約内容が後悔するものとなったり、買い手が見つかる前に経営の続行が困難となったりするおそれがあります。また、従業員が転籍に同意してくれず、M&Aが白紙となったり、M&A後の事業運営が困難となったりする事態も想定されます。

以上の事態を防ぐためにも、余裕を持ってM&Aの準備に着手しましょう。

高値で売却できるタイミングを見極める

土木業を高値で売却するためには、最適なタイミングでM&Aを実行することが求められます。具体的には、土木事業の業績が絶好調または急激に成長しているタイミングや、土木の市場自体が好況であるタイミングです。

こうしたタイミングでは買い手側の需要が高まるため、満足できる条件でM&Aを行いやすくなります。反対に、タイミングを逃すと買い手が見つからない・不利な条件を突きつけられるなどのリスクがあるため注意が必要です。

労務や財務の問題を可能な限り解消しておく

売却プロセス中に労務や財務の問題が見つかると、買い手側による自社の評価は下がるおそれがあります。買収金額の減額や、場合によっては買収自体を見送られる事態にもなり得ます。

したがって、あらかじめ労務問題(未払賃金など)や財務上の問題(負債比率の高さなど)は可能な限り解消しておくことをおすすめします。

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土木業の買収を成功させるポイント

買収の成功は、「買収後に期待していた効果(事業規模の拡大など)を実現すること」と言えます。この前提に立った場合、土木業の買収を成功させるには、以下4つのポイントを押さえることが効果的です。

シナジー効果を最大化できるM&A先を選定する

土木業の買収を成功させるためには、シナジー効果を最大化できる買収先の選定がカギとなります。シナジー効果が生み出されることで、自社のリソースのみでは達成できない成果(売上増加やコスト削減など)を得られます。

売り手企業が有する技術などの経営資源や組織、ビジネスモデルなどを分析し、自社事業との統合で期待されるシナジー効果を推測することが重要です。その際には、バリューチェーン分析などのフレームワークを活用したり、M&Aアドバイザーや経営コンサルタントなどの専門家に分析を依頼したりすることが効果的です。

工事実績や公共・民間割合、安定的な受注先などを精査する

買収を成功させる上では、買収対象となる土木業の会社の実績を精査することも欠かせません。具体的なポイントは、工事実績や受注している案件の公共・民間割合、受注先の安定性などです。

こうした項目を精査することで、収益性や安定性、競争優位性の高い土木業の会社を買収できる可能性が高まります。その結果、事業規模拡大などのメリットを得やすくなるでしょう。

デューデリジェンスによって財務や労務の問題を洗い出す

買収前のデューデリジェンスもM&Aの成功には不可欠なステップです。

デューデリジェンスとは、売り手の土木業の会社を財務や法務、ビジネスなどの分野に分けて詳細に調査することです。売り手企業が抱えるリスクや問題点を洗い出すことで、買収後のトラブルを未然に防げます。

また、洗い出した問題をもとに、買収後に実行すべき対策を検討することも求められます。これにより、買収後のスムーズな統合とM&Aによる成果の最大化を図ることができます。

有資格者や優秀な作業者がいるかどうかをチェックする

土木業界において、有資格者や優秀な作業者の存在は、工事の品質やスケジュールを大きく左右します。こうした人材が在籍することで、事業の成長性や収益性は高まる可能性があります。

買収によって大きな利益を得るためには、有資格者や優秀な作業者を抱えている土木業の会社を選定することが効果的と言えるでしょう。

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土木業界のM&A価格を算出する方法

M&Aの価格を算出するロジックを理解しておくことは、高値掴みや安く買い叩かれる事態を防ぐ上で重要です。この章では、売買価格を左右する要素や、簡易的に価格を見積もる方法、M&A価格の基準となる企業価値評価(バリュエーション)の手法を解説します。

売買価格を左右する要素

土木業の会社に関する売買価格は、後述する企業価値評価やデューデリジェンスの結果を踏まえた上で、売り手企業と買い手企業の交渉によって決定されます。そのため、確固たる相場は存在しません。

一般的に、企業の売買価格は、主に以下の要素によって左右されます。

  • 売り手企業の財務状況(良いほど高くなる)
  • M&Aのタイミング
  • 売り手企業が有する経営資源(買い手からのニーズがあるほど高くなる)
  • 想定されるシナジー効果の大きさ
  • 買い手企業におけるM&Aに対する緊急度

年倍法(年買法)によって簡易的に価格を見積もる方法

確固たる相場は存在しませんが、中小規模の土木業者に関しては、年倍法(年買法)によって売買価格の目安を算出することが可能です。

年倍法では、時価純資産価額に2〜5年分の営業利益を足し合わせることで、売買価格の目安を算出します。数年分の営業利益は、営業権(ブランド力をはじめとした無形資産の価値)を加味するために足し合わせます。

たとえば、時価純資産が6,000万円、3年分の営業利益合計が4,000万円の場合、売買価格は1億円と見積もることができます。

企業価値評価の手法

企業価値評価の手法は、以下3つのアプローチに大別されます。

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

1.インカムアプローチ

インカムアプローチは、売り手企業の将来的な収益性に着目するものです。具体的な手法に、売り手企業が将来生み出すキャッシュフローに基づく「DCF法」などがあります。評価対象特有の強みや将来性を加味できる一方で、事業計画に織り込まれた恣意性が価格に反映されてしまうリスクがあります。

2.マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、市場の情報に着目するものです。具体的な手法に、売り手企業と類似する事業を行う上場企業の株価指標に基づく「マルチプル法」などがあります。比較的客観性が高い価格を算出できる一方で、類似する企業がなければ活用できない点がデメリットです。

3.コストアプローチ

コストアプローチは、売り手企業の純資産に着目するものです。具体的な手法に、売り手企業の時価純資産に基づく「時価純資産法」などがあります。比較的容易に算出できる上に、客観性の高い評価を下せるところが利点です。ただし、将来性や個別の強みなどを反映できない点に注意が必要です。

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まとめ

本稿では、土木業界におけるM&Aの動向や事例、メリットなどを解説しました。

土木業界のM&Aでは、後継者不在や人材不足をはじめとした課題の解決などのメリットを見込めます。また、会社の成長や希少な経営資源の確保などをスピーディーに進められる点も魅力です。メリットを最大化するためには、早い時期からの準備やシナジー効果を見込める相手企業の選定などを意識することがおすすめです。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、土木業界のM&Aに関する専門知識を有するコンサルタントが在籍しています。バリュエーションやデューデリジェンスにも対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供しています。円滑かつ安心なM&Aを実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。