コールセンター業界のM&Aのメリットや流れとは?M&A事例6選も解説
2023年10月27日
このページのまとめ
- コールセンター業界のM&A市場は拡大傾向にある
- コールセンターの売り手には、後継者問題の解決や社員の雇用維持などのメリットがある
- コールセンターの買い手には、オペレーターの確保や新規参入などのメリットがある
- M&Aに際して売り手の顧客情報管理や企業文化を精査する必要がある
- コールセンターと親和性の高い業界によるM&A事例が多い
コールセンター業界では、IT技術の発展やサービス多様化に対応するため活発にM&Aが行われています。コールセンターのM&Aには買い手、売り手双方にメリットがあります。しかし、コールセンター事業は顧客情報と密接に関わるため、買収に際しては入念なデューデリジェンスが必要です。本稿では、コールセンター業界で実施されたM&Aの事例を交えながら、コールセンター業界のM&Aの動向などを解説します。
目次
コールセンター業界とは?市場と動向
コールセンター事業のM&Aの動向を理解するために、業界の概要、市場規模、動向などを理解しておく必要があります。
コールセンターの定義
e-Stat「日本標準産業分類」によれば、「コールセンター業」は、「電話等により顧客サポート、苦情対応などの顧客対応の窓口業務を専門的に行う事業所をいう。通信販売などの受注、消費者からの問い合わせ・苦情などを電話等で受け付ける事業所、電話をかけて購買を勧誘する事業所も含まれる。」とあります。
一般的には、電話で顧客とコンタクトを取り、顧客対応や情報提供を担う事業と理解されています。コールセンター事業を専業とする会社は、様々な会社の顧客対応を受託しています。
※参照元:e-Stat「日本標準産業分類」
コールセンター業界の市場規模
矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」によると、コールセンター業界は緩やかな拡大傾向にあります。2021年度の市場規模は前年度比8.0%増の1兆1,259億円でした。
コロナの影響で政府関連の相談窓口やワクチン対応のためコールセンターの需要が伸びたこと、民間企業がコールセンター部門を外注する流れが強まったことが背景にあります。
一方で2022年度以降は政府関連の案件の揺り戻しが発生し、市場は縮小する見込みです。
しかし、非接触型の顧客窓口を担うコールセンターの重要性は増しており、コールセンター部門への投資は堅調に推移すると予想されます。
コールセンター業界の拡大は、M&Aによって事業拡大、新規参入を目指す買い手にとって追い風の状況と言えるでしょう。
※参照元:矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」
コールセンター業界の動向
ニッセイ基礎研究所「地方都市において存在感を高めるコールセンターのオフィス需要~需要拡大が期待される一方で、課題も~」によると、札幌市や那覇市、福岡市など地方都市にコールセンターを開設する動きが広まっています。
背景にはオフィスの賃貸料や人件費など固定費を抑える狙いがありますが、コールセンター事業の運営コストが下がっていることは買い手にとってポジティブな要素と言えます。一方で同調査によれば、これら地方都市におけるオペレーターの人件費上昇に伴い、運営コストが上昇しています。
そのため、地方都市に拠点を移転した場合でもオペレーター人件費の上昇でコスト抑制効果が相殺される可能性も考える必要があるでしょう。また、コールセンター事業の委託者からの委託料値下げ要請が強く、経営環境に厳しい面もあります。
また、矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」によると、コールセンターの役割に変化が生じています。従来、非中核部門として外注される傾向にあったコールセンターですが、顧客体験・顧客価値の向上が重視される時代となり、顧客との重要な接触点としての役割を期待されています。
※参照元:
ニッセイ基礎研究所「地方都市において存在感を高めるコールセンターのオフィス需要~需要拡大が期待される一方で、課題も~」
矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」
コールセンター業界のM&A市場の動向
中小企業庁「2018年版中小企業白書 第2部 第6章 M&Aを中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上」によると、全国のM&A件数は増加傾向にあり、2017年には過去最高を記録しました。業界別の件数は公開されていませんが、コールセンター業界のM&A市場は以下に述べる様々な理由で拡大が予想されています。
※参照元:中小企業庁「2018年版中小企業白書 第2部 第6章 M&Aを中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上」2 M&Aの現状
技術の進化とデジタル変革
コールセンター業界では、AIやデジタル技術の導入が進んでいます。東京ガス「AI導入で年間1万1000時間の応対時間削減◆コールセンター効率化の取り組み」によれば、AI導入で年間1万1000時間が削減されるなど大きな成果を得ています。
例えば、簡単な質問への対応に音声認識や自然言語処理を活用した自動応答システムを導入することで、オペレーターの稼働なしで顧客対応が可能です。また、顧客の質問にリアルタイムで応答するチャットボットや顧客との通信をテキストデータとして記録および分析する自動音声認識など、様々な技術が使われています。
コールセンターの担い手がオペレーターからAIに代替される中でデジタル化へ対応できないコールセンターが淘汰される可能性もありますが、従来のオペレーターを主としたコールセンター業務から、AIや様々なデジタル技術によるサービスの多様化を図ることで消費者や委託者の多様なニーズに対応できるでしょう。
これらを踏まえると、今後コールセンター業界では最新のデジタル技術を持つベンチャー企業のM&Aが活発化する可能性があります。
※参照元:東京ガス「AI導入で年間1万1000時間の応対時間削減◆コールセンター効率化の取り組み」
市場の成熟
矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」によると、コールセンター業界は緩やかな成長を続けています。同時に、大手から中小規模の企業まで多くの会社が同様のサービスを提供しており、競争の激しい業界と言えます。業界、官民問わず自社の顧客対応をコールセンター会社に外注する企業はたくさんありますが、それ以上にコールセンター会社が乱立し、常に競争に満ちた状態です。
コールセンター業界のように競争が激しい業界では、競合他社を買収することで市場から競合相手を排除し、支配的な地位を築く戦略が採用されることもあります。実際、大手のコールセンター会社が中小のコールセンター会社をM&Aによって獲得し、市場シェアを拡大しようという動きが見られます。
※参照元:矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」
海外企業の買収
海外のコールセンター会社を買収する動きもあります。背景にあるのは人件費などのコスト削減や新市場の開拓です。日本国内でコールセンター会社を買収するのではなく、日本よりオペレーターの人件費が安い東南アジアなど海外のコールセンター会社を買収することで、オペレーターの人件費を抑えることができます。
また、海外のコールセンター会社を買収することで、現地で事業活動を行う企業のコールセンター部門を受託し、海外へ事業を拡大することができます。海外に拠点があれば、時差を利用して24時間体制でカスタマーサポートを提供し、顧客に迅速な対応を提供することが可能です。
最近では2020年にSCALAが、ミャンマーのヘルスケア業界に参入する目的で現地のコールセンター「MyanCare」を買収し、海外進出を果たしました。
※参照元:SCALA「ミャンマーに拠点を持つHealthTech企業・MyanCareに対する遠隔医療サービス普及に向けた出資のお知らせ」
コールセンターサービスの多様化
消費者の嗜好の多様化や技術の進化に合わせて、コールセンターのサービスも多様化しています。
従来の電話だけでなく、チャット、メール、SNS、ビデオ通話など、多様なコミュニケーションチャネルが生まれ、顧客の選択肢が増えました。
顧客の問い合わせに答える単なるサポート業務に留まらず、テクニカルサポート、製品のトラブルシューティングなど提供できるサービスが増えています。サービスの多様化への対応策として、関連技術を持つコールセンターの買収が実施されています。
コールセンター業界のM&Aのメリット
コールセンター業界のM&Aのメリットを売り手と買い手双方の視点から解説します。
売り手側のメリット
コールセンターを売却する側から見たM&Aのメリットを解説します。
好条件での売却が可能
コールセンター業界では、小規模から大手まで多くの企業が同様のサービスを委託しており、比較的競争の激しい業界と言えます。競争が激化する中で規模のメリットを活かして市場シェアを拡大する動きが活発化する可能性があります。
大手による小規模、中小のコールセンター会社の獲得競争が起きれば、売却側に有利な条件でM&Aを成立させることができるかもしれません。創業者利益を獲得し、従業員の雇用を維持するなど好条件が期待できます。
デジタル化の遅れによる不採算事業からの撤退
自動応答システム、チャットボットなどコールセンター業界ではデジタル革命が起きています。新たな技術の開発で消費者の多様なニーズに応えようという動きが広まる一方でデジタル化に対応できない小規模、中小のコールセンター会社もあるでしょう。
これらの会社は技術的な遅れが要因で将来採算性を維持できない可能性があります。
コールセンター会社を売却することで、デジタル化の遅れから利益が出なくなる前にエグジットすることが可能です。
人件費高騰の回避と従業員の雇用維持の両立
顧客対応を担うオペレーターの人材確保は難しい状況や、人件費の高騰によりコストが収益を圧迫する状況が続いています。M&A後はオペレーターの確保や高騰する人件費への対応から解放されることになります。
コールセンターが廃業すると、オペレーターなどの従業員は職を失います。しかし、顧客対応を担うオペレーターには高い需要が存在するので、M&A後は従業員の雇用が維持される可能性が高いです。
このようにM&Aによってコールセンター会社を売却することで、人材確保や人件費高騰への対応に追われずに済み、また従業員の雇用を守ることができます。
買い手側のメリット
コールセンターを買収する側から見たM&Aのメリットを解説します。
オペレーターの確保
コールセンターの運営を支えているのは顧客接点を担うオペレーターです。質の高いオペレーターの存在は顧客満足度に直結します。しかし、オペレーターの離職率は高く、コールセンターではオペレーター不足が深刻です。
顧客は高品質かつ迅速なカスタマーサポートを期待しているので、オペレーター不足でなかなか繋がらないと顧客満足度に影響します。コールセンターの需要が増す中でオペレーター不足が続き、オペレーターの確保は重要な課題となっています。
M&Aでコールセンターを買収すると、そこで働くオペレーターを確保できます。オペレーター不足を解決する手段としてM&Aは有効です。
設備やノウハウの獲得
コールセンターが高品質なカスタマーサービスを提供するためには、適切な設備とノウハウが欠かせません。例えば、高速かつ信頼性のある通信ネットワークや音声通話を処理する電話システム、暗号化などのセキュリティ環境などです。最近では、AIやチャットボットなどの自動化技術のノウハウも求められています。
コールセンターを買収することで、他社の技術や設備、ノウハウを吸収することができます。結果として、競争力強化や新しい手法の開発に繋がり、事業を拡大できる可能性が高まります。
コスト削減と効率化
コールセンター部門を外注するのではなく、内製化することでコスト削減効果が期待できます。外注を中止することで、外部ベンダーに支払う契約料や手数料を削減できるでしょう。初期費用はかかりますが、長期的にはコントロール可能なコスト構造を持つことで、コスト削減が容易になります。
また、社内にコールセンターを所有することで、顧客体験をより直接的にコントロールすることができ、業務が効率化されます。顧客サービスをカスタマイズし、トレンドに合わせて迅速に変更や調整を行うことが可能です。
コールセンター業界への新規参入
異業種の企業がコールセンター業界へ新規参入する時にM&Aは有効な手段です。コールセンターの需要が高まる中で、事業の多角化や新しい収益の柱を求めてコールセンター業界へ参入するケースも少なくありません。
しかし、1からコールセンターを設立して運営しても、競争の激しいコールセンター業界ですぐに利益を出すことは困難です。また、コールセンター運営に必要な技術やノウハウの習得に時間がかかり、利益を出すまでにはさらに時間を要するでしょう。
しかし、既に運営しているコールセンターを買収すれば、オペレーターや設備、技術などの経営資源をすべて揃えることができます。利益を生み出すまでの時間を短縮し、スムーズな新規参入を実現可能です。
コールセンター業界のM&Aの成功率を上げる方法
買い手の視点で、M&Aの成功率を上げる方法や買収前に検討したいポイントを確認しましょう。
顧客情報の管理
コールセンターは様々な顧客情報を扱います。問い合わせ内容によっては、センシティブな情報が含まれることがあり、厳しい情報管理が求められます。しかし、膨大な顧客情報を扱う以上は常に顧客情報流出の危険性と隣り合わせです。コールセンター運営にとって、顧客情報を適切に管理することはセキュリティ上の重要な課題です。
買収を予定するコールセンターに情報流出の過去がある場合や情報管理が杜撰で将来に顧客情報が流出する危険性がある場合、損害賠償などによる損失を被るリスクが存在します。デューデリジェンスの段階でコールセンターの情報管理体制を精査する必要があります。
従業員への配慮
コールセンターの運営はオペレーターに支えられており、オペレーターの数や質は業績に直結する重要な問題です。自動チャットなどデジタル技術が発展しているとはいえ、オペレーターに頼る部分も大きいです。
コールセンターは労働集約型のビジネスで、業界全体で人手不足が深刻であることを考慮すると、オペレーターなどの従業員の円滑な承継がM&A成功の重要な鍵です。したがって、M&A前後の人材流出を防ぐ配慮が欠かせません。
一般的に、自分が所属する会社のM&A情報が明らかになると、従業員は不安を覚え、他社に転職する可能性があります。M&A実施前に「労働条件を変えないこと」や「雇用を継続すること」などを十分に周知し、理解を得ることが重要です。
企業文化や価値観を合致させる
M&A実施後は1つの会社として運営されるので、買い手と売り手の企業文化や価値観が合致していることは重要です。企業文化が調和しない場合、従業員は新しい組織に適応するのが難しくなり、不安やストレスを抱える可能性が高まります。
最悪の場合、従業員が退職してしまうかもしれません。また、買い手と売り手の従業員が同じチームとして効果的に協力することが難しくなり、業務プロセスが非効率になってしまいます。
コールセンターの買収を決定する前に経営理念のすり合わせを行い、企業文化や価値観の面でM&A実施後の統合が可能かを検討しましょう。
コールセンター企業のM&A事例6選
コールセンター会社がM&Aによって買収された事例を紹介します。実際の事例を参考に自社のM&A戦略を検討してみましょう。
事例1:インバウンドテックによるシー・ワイ・サポートのM&A
東京都新宿区で24時間365日対応の多言語コールセンターを運営する「インバウンドテック」は、2021年に岩手県花巻市のコールセンター会社「シー・ワイ・サポート」を買収しました。このM&Aによって、インバウンドテックは東京都に1か所、鹿児島に1か所、岩手県に2か所の合計4拠点体制になりました。
両社は拠点とする地域が異なりますが、同じコールセンター業界に属する会社同士のM&Aです。プレスリリースによれば、インバウンドテックはオペレーション人材の確保と拠点増強を狙いとしています。
コールセンターの需要が高まる中でオペレーターが不足しており、貴重な経営資源であるオペレーターの確保をM&Aによって解決した形です。また、岩手県に拠点を獲得することで、人件費を抑えつつ顧客対応のキャパシティを拡大することに成功しています。
※参照元:インバウンドテック「株式会社シー・ワイ・サポートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
事例2:日本PCサービスによるミナソルのM&A
大阪府吹田市でコールセンター受託事業やIT機器の修理サービスを運営する「日本PCサービス」は、2021年に東京都台東区のコールセンター会社「ミナソル」を買収しました。
日本PCサービスは、個人、法人顧客向けにIT機器の設定・トラブル解決などのサービスを年間34万件以上提供しており、ミラソルは同社の下でアフターセールスを担います。
プル型営業を得意とする日本PCサービスとプッシュ型営業が評価されるミラソルが統合することで、新規顧客層の開拓に取り組みたい考えです。コロナ禍で在宅勤務や教育のIT化など法人向けのサービスが拡充しており、コールセンター部門を内製化、強化することで、事業拡大を目指します。
※参照元:日本PCサービス「ミナソルをグループ化 アウトバウンドに強みを持つミナソルの提案力で『家まるごと・オフィスまるごと』サポートを強化」
事例3:ジェイフロンティアによるAIGATEキャリアのM&A
東京都渋谷区でヘルスケア・医薬品事業を展開する「ジェイフロンティア」は、2021年に東京都渋谷区で医療人材紹介事業とコールセンター事業を運営する「AIGATEキャリア」を買収しました。
ジェイフロンティアは迅速に医療サービスを受けられる社会の実現を目指し、オンライン診療から処方箋医薬品の宅配まで医療をワンストップで受けられるサービス「SOKUYAKU」を提供しています。
M&A実施前からジェイフロンティアはAIGATEキャリアにコールセンター機能を外注するなど緊密な関係にありました。今回のM&Aによりコールセンター部門を内製化することで、すべてのサービスのワンストップ化とそれによる収益基盤の強化を目指します。
※参照元:ジェイフロンティア「ジェイフロンティア、医療人材紹介並びにコールセンター事業等を展開するAIGATEキャリアの子会社化に関するお知らせ」
事例4:セコムによるTMJのM&A
東京都渋谷区に本社を構え、警備サービスや防犯グッズなどセキュリティ商品を提供する「セコム」は、東京都新宿区で総合BPOサービスを提供する「TMJ」を2017年に買収しました。TMJはCXデザイン、BPOデザイン、コールセンター、事務代行など様々なBPOサービスを運営しています。
セコムは、M&Aの目的について、「TMJのもつ幅広い経験および蓄積されたノウハウ等を活用することにより、効率化された付加価値の高いサービスを開発・提供しながら、拡大する市場のニーズに幅広く対応すること」としています。
セコムは主に法人を顧客としていますが、2030年ビジョンで掲げた「あんしんプラットフォーム」構想の実現に「きめ細やかな切れ目のない安心」の提供が必要だと考えています。今回の買収で、法人顧客向けのビジネスサポート機能を強化することで、セコムが掲げる「安心」の提供に一歩近づくと期待されます。
※参照元:セコム「株式会社TMJの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
事例5:スリーSによる日本社宅サービスのM&A
2021年、東京都新宿区でコールセンターや社宅管理、転勤者サポートサービスを提供する「日本社宅サービス」は、同じく東京都新宿区で防犯、防災システムの開発や保守管理を運営する「スリーS」にコールセンター事業を譲渡しました。
本M&Aが実施された時点で両社はサンネクスタグループの子会社となっていました。サンネクスタグループのプレスリリースで、M&Aの目的について、「収益力の強化及び一層の品質向上、並びにマネジメントの効率化」と言っています。スリーSのコールセンター部門の内製化・強化という目的のためですが、同時に他の子会社との合併も行っており、グループ体制の再構築の意味合いが強いです。
※参照元:サンネクスタグループ「完全子会社間の合併及び事業譲渡に関するお知らせ」
事例6:デロイト トーマツによるいわきテレワークセンターのM&A
2021年、「デロイト トーマツ」グループの「デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社」(東京都千代田区)が「いわきテレワークセンター」の買収を発表しました。デロイト トーマツは、ニューヨークに本部を構える世界最大の会計事務所であり、国際的な経営コンサルティング、監査、税務、アドバイザリーサービスなどを提供しています。
一方で売り手のいわきテレワークセンター(TWC)は福島県いわき市でコールセンターや人材育成、オンラインショップなど総合的なBPOサービスを運営しています。
M&Aの主な目的は、近年増加するフォレンジック(不正対応)やクライシスマネジメントサービス案件で重要性が高まるコールセンター機能を強化することです。それと同時に在宅勤務推進企業として知られるTWCのノウハウを活用して、自社の働き方改革や生産性の向上を目指します。
※参照元:デロイト トーマツ「デロイト トーマツ、いわきテレワークセンターの全株式を取得」
まとめ
本稿では、コールセンター業界のM&Aの動向やメリット、実際の事例などを解説しました。
顧客体験が重視される中でコールセンターの需要が高まり、コールセンター業界のM&Aが活発化しています。コールセンター会社が買収された事例で紹介した通り、世界的な会計事務所がコールセンターを買収するほど注目されている業界です。内製化によるコスト削減やオペレーターの確保を目的に、今後もコールセンターのM&Aは増加するでしょう。
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