化学業界のM&Aとは?業界動向や課題、M&Aのメリット、事例を解説

2023年10月4日

化学業界のM&Aとは?業界動向や課題、M&Aのメリット、事例を解説

このページのまとめ

  • 化学業界とは、化学物質や化学反応を扱う産業である
  • 化学業界におけるM&Aは日本に限らず、海外企業を子会社化するためにも活用されている
  • 化学業界は、世界中の企業との競争の渦中にあり、資本力のある企業によるM&Aが多い
  • 化学業界のM&Aは、収益性の改善・新技術の導入・グローバル化への対応などが目的
  • 化学業界のM&Aは技術や特許の確認が必要なため、事前のデューデリジェンスが重要

化学業界でM&Aを検討している経営者の方も多いのではないでしょうか。化学業界では、世界中の企業との激しい競争環境にあるためM&Aが急増しており、業績向上や新技術・製品の開発が促進されています。

本コラムでは、化学産業の基本からM&Aの流れ、そしてM&Aが化学産業にどのようなメリットをもたらすかを含めて詳しく説明します。さらに、最近の化学産業のM&A事例も提示するので、ぜひ参考にしてください。

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化学業界とは

化学業界とは、化学物質や化学反応を扱う産業の総称で、その範囲は広大です。化学は、素材開発、エネルギー生産・医薬品製造・食品加工・農業・環境保護など、人間の生活と社会のあらゆる側面に関与しています。

以下に、化学業界の主な産業をいくつか紹介します。

基礎化学産業石油化学・無機化学・有機化学など、化学反応を使って原材料を変換し、新しい化学物質を作る産業
特殊化学産業コーティング・接着剤・シーリング材・染料・顔料・添加剤など、化学製品の実用化や、市場に向けた特殊な化学製品を作る産業
製薬産業化学の原理を利用して医薬品を製造する産業
アグロケミカル産業農業用化学製品、特に農薬や肥料の製造を行う産業
ポリマー・プラスチック産業合成樹脂やプラスチックの製造を行う産業
生物工学・バイオテクノロジー産業生物学と化学の原理を組み合わせ、製品を開発する産業

これらの産業は互いに密接に関連しており、しばしば横断的な連携や協力を行います。また、化学業界は研究開発に重点を置く部門が多く、技術の進歩により新たな製品やプロセスが次々と生まれています。

業界動向サーチによると、化学業界の市場規模は2021年に35.1兆円にのぼります。市場規模は2018年から2020年まで減少傾向にありましたが、2021年には増加しています。
市場の成長率は2.8%と、他の業界と比較して高くありません。これは、化学業界は急激に売上高や市場シェアを伸ばすことができる業界ではないためです。
売上を伸ばすためには、外部環境への対応や、新技術の導入、収益構造などの見直しを通じて、自社の競争力を高めていく必要があります。

引用元:業界動向サーチ「化学業界の動向やランキング、課題などを分析

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化学業界がM&Aを実施する目的

化学業界は、企業規模の拡大や技術の進歩、グローバル化という大きな変化に直面しています。こうした中で、M&Aが頻繁に行われ、業界の組織構造や競争環境を変化させています。ここでは、化学業界特有のM&A動向と、その背景について解説します。

資本力のある大企業のグローバル化

資本力のある大企業がグローバルに事業を展開することは、化学業界における一つの大きな動きとなっています。大企業が国境を越えて事業を展開することで、製品の販売市場を広げるだけでなく、新たな技術や人材、リソースにアクセスすることが可能となります。

化学業界は、世界中の企業との競争が行われている業界であり、競争力を高めるための手段の一つとして、M&Aによる業界再編が進められています。

また、海外M&Aを行うことで海外の多様な文化やニーズを把握することができるようになり、より幅広い顧客に対応した製品開発が可能となります。地域による市場の差異にも対応しやすくなるため、業績の安定化につながる可能性も考えられます。

大企業による特殊技術や特許の取得

特許や特殊技術の取得は、企業にとって競争優位性を獲得する重要な手段となります。新たな技術や特許を持つことで、その技術を活用した新製品の開発が可能となり、市場に独自の製品を提供することができるためです。特許や特殊技術を獲得するために、大企業は目的の特殊技術や特許を保有する企業の買収を行い、独自の技術を強化しようとします。

M&Aによって得られる新たな技術や特許は、新たな事業領域への進出や、既存の事業の強化にも活用可能です。これらの技術取得は、企業の競争力を維持し、さらなる成長を遂げるための強力な武器となります。

地政学的リスクの回避

地政学的リスクとは、政治情勢の不安定さや紛争、規制の変更など、特定の地域に関連するリスクのことを指します。化学業界においては、原材料の確保や製品の販売など、事業活動の多くが地域の情勢に大きく影響を受けるため、これらのリスクは無視できません。

特定の地域に事業を集中させていると、その地域で生じるリスクが直接的に事業への影響を及ぼします。そのため、M&Aを通じて事業を多角化し異なる地域に展開することで、一部地域におけるリスクが全体の業績に大きな影響を与えることを防ぐことができます。

IoTやクラウド、ビッグデータへの対応

IoTやクラウド、ビッグデータといったテクノロジーは、製品開発から供給チェーン管理、顧客関係管理に至るまで、化学業界のあらゆる領域で活用されています。これらの技術を取り入れることで、製造プロセスの効率化、製品の品質向上、新たなビジネスモデルの開発などが可能となります。

しかし、これらのテクノロジーは専門的な知識と経験を必要とするため、自社でこれらのスキルを持つ人材を育成するのは時間とコストがかかります。そのため、M&Aを通じて、これらのテクノロジーを持つ企業を買収することで、自社のデジタル化を加速し、業界での競争力を強化することができます。

また、M&Aを通じて得たデータ分析スキルやITリソースは、自社の製品開発やマーケティング戦略にも活用され、企業の成長に大きく貢献します。

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化学業界におけるM&Aのメリット

ここからは、化学業界のM&Aがどのようなメリットをもたらすのか、解説していきます。

後継者不在を解消できる

化学業界は技術革新が絶えず、専門知識と経験が極めて重要な業界です。

特に、技術革新の波が高まる現代においては、後継者が十分な技術力と経営力を持っているとは限らず、その結果として企業の継続が困難になるケースが増えています。

この後継者不在の問題を解消するための一つの解決策として、M&Aの実施が見られます。

後継者不在の企業は、M&Aで企業を売却し、ほかの企業の一部となることで存続が可能となるだけでなく、買収企業側も売却企業が持つ特許やノウハウを取得することができます。

例えば、特殊な化学反応を利用した製造方法を持つ企業が、その技術を別の企業の製品群に取り込まれることで、より効率的な製造を実現し、新たな市場を開拓するなどのシナジー効果を生むことが期待されます。

労働力不足を解消できる

化学業界は高度な専門性が求められるため、業務に必要な労働力を確保するのは一筋縄ではいきません。特に、最近ではSTEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)領域の人材が不足しており、これは化学業界にとって大きな問題となっています。この労働力不足は、製品の開発速度や品質、そして結果的には企業全体の競争力に影響を与えます。

M&Aはこうした労働力不足の解消に役立ち、他社を買収することによりその企業が持つ労働力を取り込むことが可能になります。また、M&Aはただ労働力を確保するだけでなく、新たな技術や知識を持つ人材を取得し、組織全体の能力を高めることも可能です。

M&Aは人材確保と技術獲得の二つの面で、化学業界における労働力不足の問題を解消します。

大企業グループへ参画できる

大企業によるM&Aは、中小企業が大企業グループの一員となる道を開きます。これは、市場の大規模化や国際化が進む化学業界において、大きなメリットとなります。

たとえば、大企業の持つ研究開発力や生産設備を利用することで、中小企業はより効率的かつ大規模に新製品を開発・製造することが可能になります。また、大企業グループの顧客ネットワークや流通網を通じて、新たな市場に迅速に進出することもできます。さらに、大企業グループの購買力を活用することで、原材料や設備のコストを削減し、製品の競争力を高めることも可能になります。

従業員の雇用を守れる

M&Aは、従業員の雇用を守る重要な手段でもあります。経営難に陥った企業がほかの企業に買収されることで、従業員の雇用が守られるケースが多く見られます。

さらに、大企業に買収されることで企業の組織や事業が再編され、従業員にとっては新たなキャリアパスが開かれる可能性もあります。特に、新たな技術や製品開発、新市場への進出など、大企業で発生しうる新たなビジネスチャンスは、従業員のスキル向上やキャリアアップの機会にもなるでしょう。

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化学業界のM&Aを成功させるポイント

ここからは、化学業界におけるM&Aを成功させるための主要なポイントを説明します。

自社と相性の良い企業を選定する

化学業界でのM&Aを成功させるには、自社と相性の良い企業を見つけることが大切です。

例えば、両社が持つ技術や製品ラインが互いに補完できるようなものである場合、市場での競争力を高めるシナジー効果が期待できます。技術以外にも、ビジョンや戦略が自社の事業と通ずるものがある場合、方針のすり合わせや意思決定がスムーズになり、M&Aを進めやすくなるでしょう。

また、文化や価値観が合致していることも重要です。企業文化は、従業員の意識・行動・意思決定の基盤となるものです。文化や価値観が合致していれば、従業員同士のコミュニケーションに齟齬が生じることもなく、円滑な人間関係を構築できます。人間関係が円滑であることは、従業員の離職率の低下にも効果があるため重要です。企業文化が大きく異なると、M&A後、人間関係に摩擦が生じたり、コミュニケーションの障壁が生じる可能性があるので注意が必要です。

相性の良い買収者を選ぶことで、M&A後の統合や業務の進行がスムーズに行われる可能性が高まるだけでなく、従業員のモチベーションの維持や顧客との関係の継続も容易になります。

技術や特許の価値を明確にする

化学業界は、技術革新(イノベーション)と特許が重要な経営資源です。化学業界では、一つの革新的な技術や特許が企業の競争力を大きく左右することが少なくありません。そのため、売却側としては、自社の技術や特許の価値を明確にすることがM&A成功の鍵となります。

まず、売却時には技術の独自性を強調することが重要です。他の競合企業とどのように差別化されているのか、その技術がもたらす具体的な利点や効果を明確に示さなければなりません。例えば、特定の化学製品の製造コストを大幅に削減する技術や、環境に優しい新しい製造方法など、具体的なメリットをアピールポイントとして強調することが効果的です。

さらに、自社の技術や特許が市場にどれだけの影響を持つのか、また、それによってどれだけの市場シェアや収益増加が期待できるのかを具体的なデータや事例をもとに示せると良いでしょう。

M&Aの専門家に相談する

化学業界のM&Aは、ほかの業界と比較して特殊性が高いため、化学業界に精通しているM&Aの専門家に相談することが望ましいです。M&Aの実施にあたって発生する、特許・規制・安全性などの問題に対し、対処するためのアドバイスを専門家からもらうことができます。

また、M&Aの専門家は、買収先との交渉や価格設定においても有用なアドバイスを提供します。化学業界の企業に対して適切な価格を設定するためには、業界の理解とM&Aの専門性が不可欠です。

専門家の助けを借りることで、化学業界の固有の課題に対して最良の解決策が導き出され、M&Aを成功させることができるでしょう。

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化学業界における近年のM&A事例11選

ここからは、化学業界のM&A事例を紹介します。

リンテック子会社によるカナダ企業からの事業・関連資産の買収

2023年5月、リンテックの子会社MACtac Americas,LLCの子会社が、886381 Ontario Inc.社および1598130 Ontario Limitedの事業を買収しました

886381 Ontario社は、ラベル用粘着シート・粘着フィルムなどの加工・販売を主にカナダ国内向けに展開しており、ロールラベル製品の裁断加工とデリバリーを強みとしている企業です。
一方、1598130 Ontario Limited社は、886381社に対して土地・建物を賃貸している企業となっています。

北米において、2016年12月にラベル用粘着紙・粘着フィルムやグラフィックフィルムの製造・販売会社であるMACtac Americas,LLCの買収に成功したリンテック社は、今回の買収を通じて、さらに、北米市場全体のシェア拡大と収益性の向上を目指しています。

参照元:リンテック株式会社「当社子会社によるカナダ法人からの事業並びに関連資産の買収に関するお知らせ

天馬社による北米の自動車部品会社の買収

2023年5月、天馬株式会社は、車部品製造のNankai Mexico, S.A. de C.V.(以下「NM社」)とその親会社であるNankai Enviro-Tech Corporation(以下「NET社」、両社をまとめて「N社グループ」)の全株式を購入し、自社の子会社としました。

天馬社は、プラスチック成形加工のメーカーとして、自社製品事業と受託製品事業で高品質の製品を提供している会社です。
自動車事業の中長期的な成長を追求し、その一環として自動車産業の重要な市場である北米に進出するためのステップとして、北米で車両事業を展開しているN社グループの株式を取得することに至ったと説明しています。

もともと、N社グループは北米の車両業界でビジネスを展開しており、自動車部品のグローバルメーカーに自動車の安全部品を提供している企業です。

この取得によって、天馬は、N社グループの自動車の安全部品に関する専門知識・製造技術・顧客基盤を組み入れることができ、プラスチック成形加工メーカーとしての競争力をさらに強化することが可能となりました。

参照元:天馬株式会社「北米における株式取得(子会社化)に関するお知らせ

富士フイルム社による米国半導体用プロセスケミカル事業会社の買収

2023年5月、富士フイルム株式会社は、米国の半導体材料メーカーであるEntegris, Inc.の半導体用プロセスケミカル事業を取得しました。
この事業は、半導体を製造する際に重要となる化学薬品を扱うものです。この子会社化を通じて、富士フイルムは、製品の提供力を強化し、電子材料事業の成長を促進するとともに、強固なグローバル製造体制の構築を目指すとしています。

また、Entegris社の子会社であるCMC Materials KMG Corporation(以下、KMG社)は、高純度化を実現する半導体用プロセスケミカルを開発・提供してきた実績を持つ会社で、全世界に7つの製造拠点を持つ企業です。
Entegris社はこれらの拠点で、硫酸・イソプロピルアルコール(IPA)・水酸化アンモニウムなどの高純度な半導体用プロセスケミカルを生産し、米国・欧州・東南アジアの大手半導体メーカーに製品を供給しています。

この買収により、富士フイルムはKMG社の精製技術と富士フイルム自身の高度なR&D力、品質保証力を組み合わせて、最先端の半導体材料を開発・提供し、半導体の性能向上に貢献するとしています。

参照元:富士フィルム「米国の半導体材料メーカーEntegris社の半導体用プロセスケミカル事業を買収

関西ペイント社のオーストリア子会社による仏鉄道塗料事業の買収

2023年5月、関西ペイント株式会社の欧州にある子会社、Kansai Helios Coatings GmbH(以下、Helios社)が、Becker Industrie SAS(以下、Beckers社)から鉄道塗料事業を買収することに成功しました。
この買収によって、Helios社はフランスで新たに「KANSAI HELIOS France SAS」という子会社を設立し、Beckers社から獲得した鉄道塗料事業を展開していくとしています。

また、Beckersグループは、コイルコーティング塗装の最大供給者であり、1865年の設立以来、世界の主要な工業用塗料供給者として認識されている企業です。同社は世界17か国、23の地域で生産を行い、60か国で販売活動を展開しています。

Beckers社が持つ鉄道用塗料事業の地位と優れた技術力を引き継ぐことで、Helios社はフランスをはじめとする新たな市場へ進出することが可能となります。加えて、関西ペイント社は、世界における鉄道用塗料の競争力の強化を実現することができました。

参照元:関西ペイント株式会社「連結子会社Helios社、鉄道塗料事業資産の買収完了 ~鉄道の分野での市場地位を高める

エア・ウォーター社によるベルギーの極低温冷凍システム製造会社の子会社化

2023年3月、エア・ウォーター株式会社は、ベルギーの極低温冷凍システム製造会社である
Dohmeyer Holding BVBA(以下、Dohmeyer社)を子会社化することに成功しました。

エア・ウォーター社は、産業ガスの供給事業を国際的に拡大するために、極低温でのハンドリング技術を活用し、水素関連機器をはじめとする低温機器の製作を行ってる企業です。エア・ウォーター社の拠点は東南アジア・北米・欧州の3地域に位置しており、産業ガスエンジニアリング事業の国際的な成長を推進しています。

一方、Dohmeyer社が製造する極低温フリーザーや保管システムは、液化窒素や液化炭酸といった極低温の冷媒を使用するため、電気方式に比べて冷却能力が高いという特徴があります。これにより、凍結される物の品質低下を防ぐことが可能です。食品業界を中心に多くの販売実績を持ち、欧州・北米・日本・東南アジアで使用されています。

さらに、Dohmeyer社は、mRNAワクチンをはじめとする新型コロナウイルス感染症への対応に向けたワクチンや新薬の冷凍需要に対応し、医薬・バイオビジネスを拡大しています。
その一環として、医薬品用極低温フリーザーや大型冷凍保管庫の開発・販売を推進し、2023年4月にはポーランドで新工場の運用を開始するなど、売上規模の拡大を目指した取り組みを実行しています。

Dohmeyer社を子会社化したことで、エア・ウォーター社は、極低温冷凍システムと液化窒素や液化炭酸の供給を統合した事業展開が可能となりました。

将来的には、医療・バイオ関連ビジネスの需要増を視野に入れ、冷凍システムのラインアップを拡充を予定。これらのシステムを産業ガスの応用装置として北米・東南アジア・日本にも提供することで、コールドチェーン事業を構築していくとしています。

参照元:エア・ウォーター株式会社「極低温冷凍システムを製造するDohmeyer Holdings BVBAの子会社化について~ワクチン・新薬・食品加工などのコールドチェーンをターゲットに事業拡大

天馬社によるインドネシア金型製造会社の買収

2023年3月、天馬社は、インドネシアに拠点を置く金型製造企業であるPT. Hyuk Jin Indonesia(以下、「HJI社」)の全株式を購入し、子会社化しました。

HJI社は、インドネシアをはじめとする地域で高い評価を受けている金型メーカーで、自動車や電子機器などの産業に対して高品質な金型を供給してきました。

この取引により、天馬社はHJI社が保有する金型製造に関する技術、製造ノウハウ、および人材育成能力を取り込むことができ、天馬のプラスチック成形加工事業の競争力を強化することが期待できます。

参照元:天馬株式会社「インドネシアにおける株式取得(子会社化)に関するお知らせ

日本農薬社の英子会社によるInteragro社の子会社化

2023年4月、日本農薬株式会社の子会社であるNichino Europe Co., Ltd(以下、NEU社)は、Interagro(UK)Limited(以下、Interagro社)を子会社化しました。

Interagro社は、生物農薬や作物保護資材を製造・販売している企業です。

この取得によって、日本農薬社は化学合成農薬だけでなく、ほかの領域でもリーディング企業となることを目指し、事業の多様化を追求していくとしています。

特に、化学合成農薬の規制が厳格化している欧州においては、生物農薬や作物保全素材の分野への展開が急務であり、Interagro社の製品群やその開発・マーケティング・販売のノウハウを取り入れることにより、日本農薬グループの欧州での事業を強化することが可能となります。

参照元:日本農薬株式会社「日本農薬の連結子会社Nichino Europe 英Interagro社の株式を取得 2023年4月4日

キヤノンメディカルシステムズ社によるミナリスメディカル社の買収

2023年3月、キヤノンメディカルシステムズ株式会社は、株式会社レゾナックの子会社、ミナリスメディカル株式会社とMinaris Medical America, Inc.(MMA)を子会社化しました。

1981年に設立されたミナリスメディカル社は、製薬企業の診断薬部門として出発し、国内生化学検査・免疫検査市場におけるリーディングカンパニーとして認知されている企業です。
豊富な顧客基盤と高いブランド力・製品認知度を活用し、体外診断薬や自動分析装置を提供しています。主力製品は、酵素や抗体の技術を用いた体外診断用医薬品で、国内市場における高いシェアを誇り、多くの主要病院や衛生検査所で使用されています。また、米国ではアレルギー検査領域を中心に事業展開しています。

キヤノンメディカルシステムズ社は、医療分野における貢献を志向しており、画像診断を中心としたヘルスケアIT事業と体外診断事業を全世界で推進しています。最近では、病院や衛生検査所で行われる検体検査における精度向上、測定時間の短縮、ワークフローの改善といった効率化へのニーズが多様化してきており、高度な付加価値が求められています。

今回の子会社化を通じて、ミナリスメディカル社の体外診断ソリューションとキヤノンメディカルシウテムズ社の自動分析装置技術、そして画像診断やヘルスケアITとの相乗効果により、高度なニーズに対応した付加価値の提供が可能になると見込んでいます。

参照元:キャノンメディカルシステムズ株式会社「ミナリスメディカル社に関する株式譲渡契約の締結について

三菱ケミカルグループ社による地球快適化インスティチュート社の吸収合併

2023年4月、三菱ケミカルグループ株式会社は、自社の完全子会社である株式会社地球快適化インスティテュートを吸収合併しました。

地球快適化インスティテュート社は、2009年4月1日に三菱ケミカルグループ社の直接出資子会社として設立された企業です。事業内容として、地球と人間の未来に目を向け、社会の未来的な変化や問題、要求されるニーズなどの調査と検討、それらに対応する新たなビジネスコンセプトの提案を行っています。

三菱ケミカルグループは、地球快適化インスティテュートを自社に吸収し、イノベーション部門を中心としたコーポレート機能に一本化することを決定しました。これにより、より効率的に新規事業の展開を行うとしています。

参照元:三菱ケミカルグループ「完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

日本ペイントホールディングス社によるイタリアの密封剤メーカーの買収

2023年2月、日本ペイントホールディングス株式会社は、子会社であるDuluxGroup Limitedが設立したイギリスの子会社DGL International (UK) Ltdを通じ、イタリアのN.P.T. s.r.l.(以下、NPT社)を子会社化することに成功しました。

NPT社は、シーリング剤や接着剤等の生産・販売を行っており、イタリア国内だけでなく60カ国以上に輸出を行っている企業です。また、優れた技術と強力なブランド、十分に投資された欧州の製造拠点、そして広範囲にわたる流通ネットワークを持っています。

欧州市場での基盤強化を進めつつ、日本ペイントグループの広範なアジアの販売ネットワークと、DuluxGroupがオーストラリアとニュージーランドで展開する塗料周辺ブランドSelleysのノウハウを活用することで、競争力の強化につなげるとしています。

参照元:日本ペイントホールディングス株式会社「当社子会社による欧州塗料周辺製品メーカー N.P.T. s.r.l.社の株式取得に関するお知らせ

住友化学社による米国天然物由来農業資材メーカーの買収

2023年1月、住友化学株式会社は、自然素材由来の農業資材バイオスティミュラントを専門に扱うアメリカのFB Sciences(以下、FBS社)を買収することに成功しました。

バイオスティミュラントは、作物や土壌の自然な力を引き出す効果を持つ自然由来の農業資材。バイオラショナズ市場の中でも最大の規模(約35億ドル)を誇り、年率2桁の成長を続けているなど、今後も成長が見込まれる農業資材です。

FBSは、天然の有機物を独自の手法で調達・処理し、バイオスティミュラントや農薬の開発・製造・販売を行ってきた企業です。多数の試験データに基づき、過去10年以上にわたり商業的な成功を収め、近年は特に米国での事業拡大を遂げています。

住友化学は、今回のFBSの買収をバイオスティミュラント分野への本格的な参入の一環と位置付けています。また、住友化学の広範なグローバルネットワークとリソース、そしてFBSの製品群と技術ノウハウを融合させることで、バイオラショナル事業のさらなる拡大と化学農薬との新たなシナジーの創出を目指すとしています。

参照元:住友化学株式会社「米国・天然物由来農業資材メーカーの買収について~バイオラショナル事業のさらなる拡大へ~ | 事業・製品 | 住友化学株式会社

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まとめ

化学業界とは、化学物質や化学反応を扱う産業です。日本に限らず、化学産業に属する世界中の企業同士で競争が激しい業界であり、企業規模拡大、技術進歩、グローバル化といった変化に対応するために、M&Aが活用されています。

大企業は、特に、海外事業展開や特許・技術の獲得、地域リスクの回避などを通じて競争力を強化し、成長を遂げるなど、グローバルな事業展開が化学業界においては顕著です。M&Aは、化学業界において、企業の技術力や製品の品質向上、新たな市場へのアクセスを実現するための重要な手段となっており、今後もこの傾向は続くと予想されます。化学業界はほかの業界と比較して深い専門知識が必要になるため、化学業界に精通しているM&Aの専門家に相談することが望ましいです。

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