デイサービスのM&A事例12選|動向や手続、メリットも解説

2023年9月19日

デイサービスのM&A事例12選|動向や手続、メリットも解説

このページのまとめ

  • デイサービス業界に対する需要は年々増加している
  • デイサービスの需要が高まっている背景には、要介護者や介護給付費の増加がある
  • デイサービスM&Aの主な目的は人材不足解消や経営の効率化
  • デイサービスのM&Aでは、売り手・買い手・従業員・利用者それぞれに特有のメリットがある

少子高齢化に伴い、デイサービス業界の市場規模は拡大傾向にあります。本記事では、デイサービスのM&Aを検討中の方に向けて、市場規模や動向、M&Aを行う際に押さえておくべきポイントなどを解説します。実際の事例も多く掲載しているため、地域に根ざした事業を希望する方や、売上拡大の理由からデイサービス事業の譲渡を考えている方はぜひ参考にしてください。

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デイサービスとは

デイサービスとは、高齢者や障害者が安全かつ楽しく過ごすための日中活動サービスのことを指します。通所介護とも呼ばれています。

デイサービスには、専門的なスタッフによる介護、身体機能の維持・向上を目指すリハビリテーション、趣味やレクリエーションの提供、栄養バランスを考慮した食事の提供など、個々のニーズに対応したサービスが含まれており、家庭での介護が困難な場合などに利用されています。

デイサービスの種類  

デイサービスには一般型、認知症対応型通所介護、療養通所介護の3種類があり、さらに事業内容や規模によって細かく分類されます。

デイサービスの種類特徴
一般型高齢者が社会生活を営む上で必要なサポートを提供する
認知症対応型通所介護認知症の症状に対応した専門的なケアを行うためのサービス
療養通所介護医療的なケアが必要な利用者へのサービス

デイサービスの市場規模 

高齢化社会が進む日本において、デイサービスは重要な役割を果たします。厚生労働省「介護給付費等実態統計」によると、デイサービスの市場規模は2020年度に約1兆2,851億円となりました。利用者の増加とサービスの多様化が進む一方で、制度上の制約や事業者間の競争激化などの影響により、近年では市場規模が横ばい傾向にあります。

介護ニーズの増大や、コミュニティベースのケアの重要性の高まりなどにより、デイサービス業界は引き続き大きな期待を寄せられています。市場動向を理解することは、デイサービス業界への新規参入や事業拡大を考える事業者にとって重要です。

※参照元:厚生労働省「介護給付費等実態統計」p8 費用額累計

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デイサービスを取り巻く環境

デイサービス業界では、取り巻く環境が売上や利益に大きな影響を及ぼします。環境の変化による売上や利益の増大の機会を捉えるために、M&Aは成長戦略の一つとして注目を浴びています。

要介護高齢者の増加 

高齢化社会の進展により、要介護者の数は増加の一途をたどっています。厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」によると、2021年における要介護者は約686万人でした。2025年にはすべての団塊世代が75歳以上になることから、要介護者数のさらなる増加が予想されています。

デイサービスなどの介護サービスに対する需要が増大する一方で、サービス提供体制のさらなる整備や、人材不足といった課題を抱えているのが現状です。

※参照元:厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」結果の概要 p1

介護給付費の急激な増加 

厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」によると、介護保険制度が2000年に開始された際の介護給付費は3.6兆円でしたが、2016年には9.6兆円まで急激に増加しました。2025年には、21兆円にまで膨張すると予測されています。

介護給付金が増加している背景には、要介護者数の増加による介護サービスへの需要の高まりがあります。給付費の増加は社会全体の負担増につながる一方で、介護業界にとっては市場の拡大を意味します。

※参照元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」p25 介護保険にかかる給付費・事業費と保険料の推移

デイサービス提供施設の増加 

厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」の調査結果によると、デイサービスの事業所数は2012年の34,107か所から、2020年には43,751か所へと、急激に増加しました。

事業者数増加の理由の1つとして、デイサービスはほかの介護施設に比べて初期投資の金額が少なく、新規参入が容易であることが考えられます。しかし、事業所数の増加は競争の激化をもたらします。事業継続や成長につなげるためには、質の高いサービス提供や差別化戦略が必要です。

※参照元:厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」施設・事業所の状況 p1

人材不足 

介護業界では賃金水準が低く、肉体労働や夜間勤務など労働環境が過酷であるため、売り手市場となると人材確保が難しくなるという問題が存在しています。これにより、雇用コストが増加するなど経営に影響を与え、サービスの質にも影響を及ぼすおそれがあります。

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デイサービスM&Aの動向

ここまでデイサービス業界の現状や課題について解説しましたが、これらを背景に現在デイサービス業界ではM&A(企業の合併・買収)が活発化しています。事業規模の拡大や業務の効率化、人材確保の問題の解決、地域カバー力の強化がM&Aの主な目的です。

ここでは、デイサービス業界におけるM&Aの動向を解説します。

小規模デイサービスのM&Aの動向

介護事業の売却相談で多いのが、小規模デイサービスです。小規模デイサービスは、1日の利用定員が18名と定められていますが、実際には10名程度の定員のところが多いです。そうした小規模デイサービスは、人件費や運営費の高さ、利用者数の確保などの問題に直面し、事業運営が上手くいかないケースが多く見られます。そのため、ほかの企業や事業者への身売りを検討する企業が増えています。

小規模デイサービス事業者にとってM&Aは、事業の継続やスケールメリットを活かした運営改善の手段として有効です。

通常のデイサービスのM&Aの動向 

通常のデイサービス事業においても、M&Aは有効な手段となり得ます。特に、良好な立地条件や十分な売上規模を持つデイサービスは、M&Aにおいて良い評価を得られるでしょう。さらに、有料老人ホームとセットで事業を売却することにより、介護サービス全体の価値が高まり、より良い条件でのM&Aが実現する可能性があります。

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デイサービス業界におけるM&Aの目的  

M&Aは、デイサービス事業において企業が直面する多様な課題に対する有効な手段となっています。ここでは、デイサービスM&Aの具体的な目的を解説します。

経営の効率化 

デイサービス業界におけるM&Aの目的の一つとして、経営の効率化が挙げられます。大規模な経営統合を行うことで、異なる事業所間の業務連携や医療機関との協働、ITの活用などを通じて業務の効率化が可能です。

たとえば、一括管理システムの導入により、業務プロセスの自動化や情報の共有化が進めば、人件費の削減やサービス品質の向上を図れます。

従業員の待遇改善

従業員の福利厚生の充実化や賃金向上を目指してM&Aを実施する企業もみられます。具体的には、大規模事業者は独自の研修制度を持つことが多いため、小規模事業者から大規模事業者への移行によりスキルアップの機会を増やせます。
また、大規模化に伴う経済的な余裕から、賃金の見直しや福利厚生の充実化が可能です。従業員にとってより働きやすい環境を整備できれば、企業の人材確保・定着率の向上につながります。

事業の継続

デイサービス業界におけるM&Aで重要な観点が「選択と集中」です。

デイサービス事業の経営が不振であると感じた際に、事業を撤退するだけではなく、第三者への売却を検討することで資金回収を達成できます。

また、事業を継続する上で必要な人材やリソースをほかの事業へと集中させれば、企業の収益性向上や経営の安定化が見込めます。

人材不足の解消

デイサービス・通所介護施設では、一定数の生活相談員・介護職員・看護師などを常勤させる必要があります。しかし、人材確保は業界全体の大きな課題です。

この課題を解決するための一つの方法として、同業種間の企業買収、つまりM&Aが活発になっています。企業買収により、スキルやノウハウを持つ人材を一度にまとめて確保することが可能となり、人材不足の問題を大幅に改善できます。

ただ人材を確保するだけではなく、業界内での競争力強化やサービス品質の向上にも寄与するため、今後もM&Aはデイサービス業界で重要な戦略となり続けるでしょう。

業界への新規参入 

デイサービス業界は今後の成長が見込まれているため、新規参入を狙う異業種企業も多く存在します。

デイサービス業界への参入には専門知識やノウハウ、人材などが必要ですが、M&Aで介護事業を展開している企業を買収することによって、短期間で介護業界への参入と事業展開が可能となります。介護業界への新規参入にはM&Aが一つの有力な手段と言えるでしょう。

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デイサービスにおけるM&Aのメリット

デイサービスにおけるM&Aは、売り手、買い手、従業員、利用者それぞれに特有のメリットがあります。これらのメリットについて、具体的に解説します。

売り手のメリット

デイサービス事業者がM&Aを行う理由の一つが、後継者問題の解決です。多くの中小企業では後継者の不在が課題となっており、デイサービス業界も例外ではありません。事業主が高齢化する一方で、次世代を担う人材が不足しているのが現状です。

このような状況下で、売り手となる事業主はM&Aを通じて後継者問題を解決できます。自身が築き上げたデイサービス事業を適切な方法で継承できれば、顧客に対するサービスの質も維持できるでしょう。また、売却によって得た資金は、リタイア後の生活費や新たな事業を立ち上げるための資金に充てられます。

買い手のメリット

新規参入を希望する企業や個人にとって、M&Aは事業展開のスピードを大幅に上げられる手段です。既存のデイサービス事業を買収することで、事業の立ち上げから運営までに要する時間やリスクを削減できます。

通常、新規事業を立ち上げるには、事業の設計から適切なスタッフの確保、施設の準備までに多大なコストと時間を要します。最初の数年間は赤字を覚悟しなければならない場合もあるでしょう。

M&Aを行うことで、コストや時間を抑えて事業を運営でき、スケールメリットも享受できます。大規模な運営体制を持つことで、さらなるコスト削減やサービスの充実が可能となり、競争力の強化にもつながります。

従業員のメリット 

M&Aによって自身の勤務先が大手企業の一部になることで、従業員はキャリアアップのチャンスを得られる可能性があります。大手企業はしっかりとした人事制度や教育制度を有している場合が多く、昇進の機会も多いためです。

さらに、小規模事業所では、大手企業によるM&Aにより給与や福利厚生が改善され、雇用環境が良くなる可能性もあります。

利用者のメリット 

デイサービスのM&Aは、利用者にとっても安定した介護サービスの提供が続くメリットがあります。M&Aの結果、施設やサービスの提供元が変わったとしても、利用者は一定品質の介護サービスを受けることが可能です。

また、サービスの品質向上や新たなサービスの提供などにより、より優れたデイサービスを受けられる可能性もあります。                                     

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デイサービスのM&Aにおける買収先選びのポイント 

競争が激化しているデイサービス業界において、望ましい買収先を選ぶためには、入念に事前調査を行い、正確な判断を下すことが重要です。ここでは、買い手企業が買収先を選ぶ際のポイントについて解説します。

新規参入企業の場合はノウハウの獲得が可能か

デイサービス業界に新規参入する場合は、M&Aによってノウハウを獲得できるかが重要なポイントです。

デイサービス業界では専門的な知識や技術が求められるため、経験豊富な事業者からのノウハウ獲得は、スムーズな運営やサービス品質の確保につながります。新規参入でも早期に安定した運営が可能となり、ユーザーからの信頼も築きやすくなるでしょう。

自社のノウハウを活用できる関係にあるか

自社がデイサービス事業を既に行っているのであれば、相手企業が自社のノウハウを活用できる関係にあるかを確認することも重要です。
自社のノウハウを相手企業で活かせれば、新たな経営リソースを追加しつつ、自社の強みを伸ばせます。

立地や利用者などが引き継がれるか

デイサービスのM&Aを考えている場合、立地と利用者を引き継げるかどうかを確認することが重要です。

立地は、既存の利用者が利便性を感じ、施設を使い続けるために欠かせない要素です。また、既存の利用者が引き続き施設を利用できることは、継続的な収益源となり、事業の安定化に寄与します。

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デイサービス業界のM&Aにおける注意点

続いて、デイサービス業界でM&Aを実施する際の注意点を解説します。

デューデリジェンスを徹底する

デューデリジェンスとは、M&Aのプロセスにおいて、買収対象の企業の価値を評価し、隠れたリスクを見つけるための調査のことを指します。特に、簿外債務の存在や法的問題の有無を確認することが重要となります。

事業の適正価格を判断して不測のリスクを回避し、利益を最大化するためには、このデューデリジェンスを徹底して行うことが必要です。

買収後のことも考えて適正価格で買う

デイサービスのM&Aを進める際は、表面的な条件だけではなく、将来の経営計画も考えて適切な価格で買うことが不可欠です。
デューデリジェンスによって適正価格を判断したら、M&A時にその価格で買えるよう交渉を進めていくことが重要になります。

買収先の従業員へ配慮し、流出を防ぐ

従業員は、サービスの品質とビジネスの安定性に直結する重要な要素です。給与や待遇を悪化させず、仕事場の環境や業務システムをむやみに改変しないことで、従業員の不安や混乱を防ぎ、会社にとどまらせる効果があります。

M&Aを成功させるためには、M&Aのプロセスおよびその後の経営において、従業員の流出を防ぐための戦略を持つことが大切です。 

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デイサービスのM&A事例12選

デイサービス業界のM&A事例を紹介します。実際に譲渡された案件や、それによって得られた利益などをまとめましたので、これらの事例を通じて、デイサービスM&Aの具体的な成果について把握してください。

ソラストと日本エルダリーケアサービスのM&A

2020年に介護や医療業界で事業を展開している株式会社ソラストは、首都圏を中心に介護やデイサービスを122か所の拠点で行っている「日本エルダリーケアサービス」と、大分市を中心に26か所でデイサービスや老人ホームなどを展開している株式会社恵の会及び有限会社恵みの会のすべての株式を取得し、完全子会社としました。

このM&Aにおけるソラストの狙いは、自社のサービスエリアの拡大とサービス体制の強化です。2030年を目途に介護サービス対象エリアを300エリアに拡大し、全種類の介護サービスを提供できる体制の構築を目指しています。

※参照元:
ソラスト「株式会社日本エルダリーケアサービスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
日本経済新聞「ソラスト、訪問介護会社を23億円で子会社化

MBKパートナーズとSOYOKAZEのM&A

MBKパートナーズ株式会社は、2023年4月に介護事業を全国展開するSOYOKAZE株式会社(旧ユニマット リタイアメント・コミュニティ)を株式譲渡により買収すると発表しました。

SOYOKAZEは「そよ風」のブランド名で高齢者介護事業を全国に展開しており、ショートステイの分野においては業界トップの拠点数を有しています。
MBKパートナーズの目的は、2021年に買収したデイサービス大手ツクイとSOYOKAZEとを連携させ、介護事業全体を強化することです。
今回の買収は、経営資源の効果的な活用と介護事業の強化を目指す戦略的なM&Aといえるでしょう。

※参照元:日経新聞「ユニマット系介護、アジア系ファンドが買収 数百億円
PR Times「MBK パートナーズ、株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティの全株式取得にかかる株式譲渡契約を締結

ポラリスと幸和ライフゼーションのデイサービス事業のM&A

自立支援に特化したデイサービスを全国で展開している株式会社ポラリスは、2021年1月に、福祉用具のレンタルやデイサービス事業を展開する株式会社幸和ライフゼーションの事業を譲受しました。これにより、ポラリスは自立支援特化型デイサービス事業のさらなる拡大を企図しています。

ポラリスと幸和ライフゼーションのM&Aによって、ポラリスのサービス提供力強化及び幸和ライフゼーションの事業集中が実現され、それぞれの企業戦略を進める上で重要な一歩となりました。

※参照元:幸和製作所「株式会社ポラリス、会社分割(吸収分割)による事業承継に関するお知らせ」

ポラリスとMACHIKOのデイサービス事業のM&A

デイサービス事業を手掛ける株式会社ポラリスは、2021年8月に株式会社MACHIKOとM&Aを行い、デイサービス事業を取得しました。MAHIKOはデイサービスのほか、貸画廊やイベント開催事業などを手掛ける企業です。

ポラリスは、歩行訓練やリハビリ特化型の自立支援デイサービスを全国で展開しています。一方で、MACHIKOは兵庫県で地域密着型介護を行う「フォレストデイサービスセンター安倉」を展開し、リハビリに特化した短時間デイサービスを提供しています。

ポラリスは兵庫県宝塚市を主な事業展開のエリアとして位置づけており、このエリアに存在する「フォレストデイサービスセンター安倉」を譲受しました。事業の拡大とともに、自立支援型の介護サービスのさらなる普及を目指しています。

ポラリスとMACHIKOのM&Aは、自社の事業拡大と自立支援型介護の普及推進の一環として評価できます。これにより、さらに多様なニーズに対応したサービスの提供が可能となり、自立支援型介護の理念の普及に寄与することが期待されます。

※参照元:ポラリス 「自立支援介護を展開しているポラリス、事業譲渡に関するお知らせ


アルトとサンライフケアのデイサービス事業所のM&A

2022年1月、メイホーホールディングスの子会社である株式会社アルトは、株式会社サンライフケアとのM&Aによって、サンライフケアが持っているデイサービス事業を取得しました。アルトはデイサービスと居宅支援を主軸として、岐阜市に4か所、常滑市に1か所で施設を運営しています。サンライフケアは、愛知県常滑市にデイサービス事業「リハビリデイ えみふる」を展開している企業です。

このM&Aを通じて、メイホーホールディングスは居宅サービス事業を譲受しました。アルトは常滑市の事業所を拡大し、地域密着型施設の運営強化、運営効率化、地域内サービス品質の高水準化を目指しています。

アルトとサンライフケアのM&Aは、サービス強化、効率化、品質均一化を通じた差別化戦略の一部といえます。地域に根差した事業を展開し、品質向上を図ることで、介護業界における競争力を強化する狙いがあります。

※参照元:メイホールディングス「当社連結子会社における事業譲受に関するお知らせ

ツクイと日本ヒューマンサポートのM&A

デイサービス事業の大手企業である株式会社ツクイは、2022年4月1日付で株式会社日本ヒューマンサポートから6つのデイサービス事業を事業譲受すると発表しました。

ツクイは全国で多数の事業所を持つデイサービスの大手で、さらなる事業規模の拡大を目指しています。日本ヒューマンサポートは、施設系事業に特化する方針のため、デイサービス事業を譲渡することとなりました。

ツクイは今回譲り受けた事業によって、デイサービスのネットワークを一層広げるとしています。一方の日本ヒューマンサポートは、自社の得意とする施設系事業への集中を図ることで、事業の効率化と競争力の強化を図る狙いです。

両社がそれぞれの強みを活かし、事業規模の拡大や特化を図る戦略的なM&Aの事例といえます。

※参照元:ツクイ 「ツクイ、株式会社日本ヒューマンサポートよりデイサービス事業所6ヵ所を譲り受け

出光興産とQLCプロデュースのM&A

2021年4月、石油及び化学製品メーカーの「出光興産」が、直営だけではなく積極的なフランチャイズによって拠点を増やしている「QLCプロデュース」の株式すべてを取得し、完全子会社化しました。
このM&Aの背景には、石油需要の国内減少傾向という環境の変化があります。これを受け、出光興産は自社の販売店舗網を活用した新規事業展開を検討していました。その一環として、自立支援デイサービスを行っているQLCプロデュースを子会社化したのです。

出光興産は、産業環境の変化に対応し、自社の資源を活用して新たな事業領域に進出することを可能としました。企業がビジネスモデルの多角化を進めるためのM&Aの一例といえるでしょう。

※参照元:出光「QLCプロデュース株式会社の株式譲渡契約を締結

まんまる(現ヨウコーキャッスル三鷹)と揚工舎のM&A

2021年6月、有料老人ホームやデイサービス、訪問介護サービスなどの介護事業や、介護人材の紹介、介護資格教育を行っている上場企業「揚工舎」は「まんまる」の完全子会社化を決定しました。まんまるは、東京都三鷹市でデイサービスと介護付き有料老人ホームを運営している会社です

揚工舎は東京近郊で事業拡大手段を探しており、まんまるが運営する介護付き有料老人ホーム「みんなの家6丁目」や、デイサービス「みんなの家6丁目」の立地に目を付け、株式譲渡によるM&Aに至りました。

揚工舎がまんまるの子会社化に踏み切ったのは、自社の事業拡大を図るという戦略に基づいています。東京近郊での事業拠点の拡大を目指す揚工舎にとって、まんまるが運営する施設の立地とサービスは最適であり、これにより地域の介護ニーズに対応することを計画しています。

※参照元:揚工舎「有限会社まんまるの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

シダーによるあおぞらの里 建部デイサービスセンターのM&A

介護付き有料老人ホームやデイサービス・訪問介護といった事業を展開している「シダー」は、2021年5月に自社が運営するデイサービス事業所「あおぞらの里 建部デイサービスセンター」を第三者に譲渡しました。譲受したのは、滋賀県内でデイサービス事業を新たに計画している企業とされています(詳細は非公開)。

譲渡の背景には、シダーの中長期的な事業展開や管理コストの削減といった意図があります。こうした思惑により事業の譲渡先を探していたところ、売却先をみつけ、事業譲渡によるM&Aに踏み切りました。

シダーが行ったデイサービス事業の譲渡は、自社の事業戦略と収益性改善、そして新たに事業を展開しようとする第三者へのチャンス提供という視点から重要な意義を持ちます。

※参照元:シダー「営業権の譲渡に関するお知らせ

パナソニックエイジフリーとユニマットリタイアメントコミュニティのM&A

「ユニマットリタイアメントコミュニティ(現株式会社SOYOKAZE)」は、2021年4月に、介護事業や介護ショップ事業、設備の開発・販売などを行っている「パナソニックエイジフリー」のデイサービスおよびショートステイの施設6か所を譲受しました。

ユニマットリタイアメントコミュニティは、包括的な介護サービス事業を提供しており、全国約320か所の拠点を持ちます。飲食事業やホテル事業、有料職業紹介事業なども手掛けている企業です。

ユニマットリタイアメントコミュニティは、「そよ風の地域包括ケア」というコンセプトのワンストップ支援サービスの拡充を進めており、高齢者が自分らしい生活を地域で続けられることを目指しています。パナソニックエイジフリーが運営していたデイサービス、ショートステイを行う介護サービス施設6か所を得ることで、サービス提供のさらなる充実を図っています。

この事業譲受は、高齢者が地域で安心して生活できる環境を提供するための重要な一歩となりました。

※参照元:SOYOKAZE「パナソニック エイジフリー株式会社から 6 施設を事業譲受4 月 1 日より「そよ風」ブランドで新たに運営開始

元気な介護と幸房のM&A

訪問介護、通所介護をはじめとした総合的な介護事業などを行っている「元気な介護」が、2021年4月に広島市でデイサービスや訪問介護を行う「幸房」の株式すべてを取得し、子会社化した事例です。このM&Aにより、元気な介護は介護サービスの拡充や、地域包括ケアへの対応力向上を狙っています。

元気な介護が、幸房および幸房が保有していたデイサービス事業を行う株式会社大幸も子会社化することで、広島県での介護サービス提供と地域包括ケアを強化し、介護事業全体の拡大と高齢者へのさらなるサポートを実現しています。

※参照元:元気な介護「有限会社 幸房の子会社化に関するお知らせ

グッドタイムリビングと舞浜倶楽部のM&A

2021年4月、多職種人材やITを活用した老人ホームや、シニア向け賃貸住宅事業及び生活関連支援サービスを展開する「グッドタイムリビング」は、デイサービスや介護付き老人ホームを運営する「舞浜倶楽部」の株式99.7%を取得して子会社化しました。

両社は、以前より浦安市の介護福祉サービスで地域連携を深めていました。舞浜倶楽部は介護付き有料老人ホームやデイサービス施設を運営しており、その経営体質の強化を見込んでM&Aを実施しました。

一方、グッドタイムリビングは、自社のIT利用と多職種の人材採用ノウハウを舞浜倶楽部にも導入することを計画しています。これにより、介護サービス事業を強化し、ICT導入と多職種人材採用を活用した効率的な運営と安定した経営の実現が期待できます。

今回のM&Aは、高齢化社会における高品質な介護サービスの提供と業界全体のサービス向上に寄与するでしょう。

※参照元:グッドタイムリビング「株式会社舞浜倶楽部の株式取得に関するお知らせ

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まとめ

デイサービスを取り巻く状況やM&Aの動向について解説しました。介護業界が拡大し、競争が激化するなか、デイサービスを行う事業者間のM&Aが増加しています。デイサービス業界でM&Aを実施するには、専門的な知識やノウハウが必要となるため、M&A仲介会社などからサポートを受けることをおすすめします。

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