塗料業界のM&Aについて|動向・事例・ポイントなどを解説!

2023年9月14日

塗料業界のM&Aについて|動向・事例・ポイントなどを解説!

このページのまとめ

  • 塗料・塗料卸売業界は国内市場が成熟しており、業界全体の業績が停滞している状況
  • 「海外市場をターゲットとしたM&Aが今後増加していく」という動向が予測される
  • 塗料業界でM&Aを検討している場合は、M&Aの動向を定期的にチェックすることが重要

近年、塗料・塗料卸売業界は国内市場が成熟しており、業界全体の業績が停滞している状況です。このような厳しい状況下で事業を継続するために、M&A(企業の合併・買収)が有効な手段として挙げられます。しかし、塗料・塗料卸売業界のM&Aについて詳しくは理解していないという方もいらっしゃることでしょう。この記事では主にM&A動向とメリットなどについて詳しく説明します。

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塗料業界のM&A動向

この章では塗料・塗料卸売業界のM&A動向について詳しく解説します。

特に塗料・塗料卸売業界で企業の売却・買収を検討している場合は、M&Aの動向を定期的にチェックすることが重要です。なぜなら、対象業界の買収・売却の動きによって、取るべきM&A戦略が変わるからです。

市場規模が減少しており、新規参入もしにくい

日本では塗料・塗料卸売業界は、業界全体の成長が鈍化し、市場も徐々に縮小している状況です。そのため、「新規参入数が少ない」という特徴があります。業界の市場が縮小していることから、国内企業がM&Aを実施して市場に参入しても、大きな利益を見込むことは比較的難しいと言えるでしょう。

また、塗料・塗料卸売業界は、もともとM&Aによる参入障壁が高い業界として知られています。それは、塗料の原料が石油化学に依存しているためです。原油価格の変動によって生産量が影響を受けるリスクがあり、利益率が低下する可能性があることも新規参入が困難になっている一因です。

海外市場を目指したM&Aが増えてくることが予測される

国内の塗料・塗料卸売業界は既に成熟し、成長の見込みが限定的ですが、新興国をはじめとする海外市場では将来の成長が期待されています。そのため、「海外市場をターゲットとしたM&Aが今後増加していく」という動向が予測されます。

将来性の高い市場へ参入すれば、企業の売上増加も見込めるため、新興国への参入を目指す動きが加速しています。

生産コストを抑えるための海外M&Aも増える可能性

国内市場の低迷と海外市場の成長に加えて、生産コストを削減するための海外M&Aも増える可能性があります。

海外市場へ参入するには、拠点を設立したり、現地の言語を話せる人材を採用したりと、日本と現地とのネットワーク及び現地内でのネットワークを構築する必要があります。また、海外で新たに会社を立ち上げるためにも、多額の費用がかかります。

こうしたコストを削減するために、海外の企業をM&Aによって買収する戦略が有効です。
海外の塗料・塗料卸売会社を買収することで、人材や取引先を確保し、ネットワークを構築する手間やコストを削減できます。これにより、ゼロから新規参入するよりも低コストで販路を拡大することができます。

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塗料業界の現状・市場規模

塗料は、表面加工材料の一種であり、素材の彩色や保護などの目的で使用されます。防腐や防水、耐火といった保護や、色彩や光沢、平滑化、さらに遮熱、撥水、有害化学物質の吸着など特殊な機能を持つ塗料があります。

また、塗料の提供先についても多岐にわたり、建築、自動車、鉄道、船舶、航空機、宇宙関連向けなど、さまざまな目的に応じて塗料が製造されています。

経済産業省「経済産業省生産動態統計」によれば、2021年の塗料の販売金額は前年比5.1%増の6,534億円であり、販売数量は同2.7%増の160.7万トンでした。塗料の販売金額と販売数量は、2020年にはともに大幅に減少しましたが、2021年には増加に転じています。2021年の販売金額は、コロナ前の2019年と比較して約95%の水準まで回復しています。

※参照元:経済産業省「生産動態統計2022年報

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塗料業界の課題と業界構造

この章では塗料業界が直面する課題について説明します。

国内市場の停滞

国内の塗料市場は既に成熟段階に達し、今後の市場拡大は見込みにくい状況にあります。過去数十年にわたる動向を考えると、国内における塗料販売額は1990年代以降、その後のリーマンショックなどによる景気の後退に伴い、市場規模は大幅に縮小しました。その後も販売額の大幅な上昇は見られません。(詳細は経済産業省「経済産業省生産動態統計」を参照)

一般的に、塗料の消費量は国内総生産(GDP)と密接な相関があるため、日本国内市場の停滞は今後も継続する見込みです。

国内市場の停滞の要因として、供給面での要因も挙げられます。塗料の仕入れ価格は、その原料である石油価格に影響を受けやすいという特徴があります。石油価格には急激な変動が起こるため、この価格変動への適応は大きな課題であるといえます。

環境対応塗料の普及

環境への配慮から、塗料について溶剤系から粉体系への移行が求められています。溶剤系塗料は、成分が飛散して環境に悪影響を及ぼす恐れがあるため、有害物質の排出を考慮し、使用が減少していくことが期待されます。しかし、粉体系の材料に関しては、評価のデータが限られています。日本の建設分野での実績が少ないことからも、適切な標準指針の作成と普及が必要です。

また、環境へ配慮する上では、水性塗料の使用も方法の一つです、性能や作業性によってすべての用途に水性を適用することは難しいと言え、まだまだ弱溶剤系塗料を使用するケースが見られます。
今後、環境対応塗料を普及させていくことが期待されます。

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塗料業界におけるM&Aのメリット

この章では、他業種とも共通する塗料業界におけるM&Aのメリットをまとめます。

売り手企業にとってのメリット

はじめに、売り手企業におけるメリットについて解説します。

従業員の雇用を確保できる

売却・譲渡により従業員の雇用を確保できます。経営不振で会社が継続できなくなる場合でも、大手企業に引き継いでもらえば従業員の雇用は守られます。

後継者問題を解決できる

特に中小企業では、後継者問題は深刻化しています。売却により後継者問題から解放されます。

売却・譲渡益を獲得できる

M&Aによる売却・譲渡で、高額な売却益・譲渡益を獲得できる可能性があります。
得られた利益をリタイア後の生活費に充てたり、新規事業を立ち上げる資金として活用したりすることが可能です。

大手グループ傘下で安定した経営ができる

大手企業に売却・譲渡すると、安定した経営が期待できます。競争が激しい塗料・塗料卸売業界では経営不振に陥りやすい企業も多いため、大手企業のグループに入ることで経営を安定させることができます。

個人保証・債務・担保などを解消できる

売却・譲渡により、特に中小企業オーナーは個人保証・債務・担保などの責任から解放されるメリットがあります。

買い手企業にとってのメリット

続いて、買い手企業におけるメリットについて解説します。

スキルを持った人材を確保できる

買収により、専門的な知識や技術を持った人材を獲得できます。特に新規参入する企業にとっては、人材確保にかかる時間とコストを大幅に削減できます。

低コストで必要な事業を獲得できる

塗料業界以外の業界から、新規事業として塗料業界に参入する場合、1から事業を立ち上げるよりも塗料業界の既存企業を買収したほうがコストを抑えられます。

海外での拠点・販路拡大がしやすい

海外市場への進出を目指す場合、すでに海外で事業展開している会社を買収することで、拠点や販路の拡大をスムーズに進めることができます。

顧客・取引先・ノウハウなどを獲得できる

買収により、顧客や取引先、ノウハウを獲得できます。新規事業を展開する際には、時間と労力を節約できます。

事業エリアを拡大できる

買収により、事業エリアを拡大できます。既存の企業を買収することで、自社の事業をスムーズに展開することができます。

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塗料業界におけるM&A成功のポイント

この章では塗料業界におけるM&A成功のポイントについて、ケース別に説明します。

海外進出のためのM&A:国内企業ではなく海外企業とのM&Aを実施する

海外進出を目指すためのM&A戦略を考える場合、塗料・塗料卸売業界では国内企業とのM&Aよりも海外企業とのM&Aに注力することが望ましいと言えます。その理由は、塗料・塗料卸売業界の国内市場が縮小傾向にあるからです。

M&Aには資金と時間が必要ですので、その労力やコストをかけるならば、より成果の見込めるM&Aを実施すべきでしょう。

新興国地域でのM&A:成長が見込める市場を探索する

なかでも新興国の塗料・塗料卸売会社を買収することは有益です。先進国の欧米市場では既に大手企業が市場を独占しており、中小規模の企業を買収しても進出は困難です。しかし、新興国の塗料・塗料卸売業界では市場の拡大が見込まれるため、現地企業を買収し、早期に経営基盤を確立することで業績向上が可能です。

内需活性化のためのM&A:市場シェア拡大に繋がる経営統合を目指す

また、国内市場でも、一定の規模を持つ企業同士の合併や経営統合によって市場シェアを上げることができます。中小企業でも3社以上が合併や経営統合を行えば、大手企業に対抗する力を持つ可能性があります。特に異なるタイプの塗料を扱う企業が集まると、その効果はさらに高まります。これらの観点から見れば、塗料・塗料卸売業界における国内企業同士のM&Aも有望です。

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塗料業界のM&A事例

ここでは、塗料業界のM&A事例を紹介します。

日本ペイント・オートモーティブコーティングスによるM&A

このM&Aは、譲渡会社が自動車用塗料事業会社の株式を保有していた中国のTong Yang Holding Corporationで、買収会社は日本ペイントホールディングスのグループ会社である日本ペイント・オートモーティブコーティングスです。

実行時期は2022年5月であり、株式譲渡のスキームが用いられました。中国における自動車用塗料事業の一体運営を進めることで存在感を高め、さらなる市場シェアの拡大を目指すことが目的であり、取得価額は約67億円でした。結果としてTong Yang Holding Corporation の連結子会社であるNanjing NBC Co., Ltd.など5社が日本ペイント・オートモーティブコーティングスの完全子会社となりました。

※参照元:日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社「連結子会社の株式の追加取得による完全子会社化完了のお知らせ

積水樹脂による日本ライナーに対するM&A

このM&Aは譲渡会社が道路塗料の販売・交通安全関連工事の施工などを実施する日本ライナーで、買収会社は交通・標識関連事業などを実施する積水樹脂です。

実行時期は2015年3月で、株式譲渡のスキームを用いて実行されました。ペイント材を含む道路塗料全般の販売を強化し、シェアを拡大することが目的でした。さらに、将来的に成長が期待される「インフラ補修」などの新たな事業展開を見込んでおり、結果として日本ライナーが積水樹脂の連結子会社となりました。

※参照元:積水樹脂株式会社「日本ライナー株式会社の経営権の取得(子会社化)に関するお知らせ

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まとめ

塗料業界では、特にアジアなどの新興国市場において、市場規模が成長傾向です。日本国内では需要が頭打ちとなっていますが、技術力の獲得、経営効率の向上、シェア拡大などを目指してM&Aを実施している企業が見られます。もし単独で業績改善が難しいと判断される場合は、M&Aを検討することがおすすめです。

M&Aプロセスには専門的な知識と経験が不可欠です。相手企業の探索から企業価値評価、デューデリジェンス、条件交渉、契約書の作成とチェック、経営統合プロセス(PMI)など、複雑な手続きがあります。これらを円滑に進めるためには、M&Aの検討段階から専門家に相談することをおすすめします。

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