ネイルサロンのM&A・事業譲渡の動向・売却事例・相場・メリットを解説
2023年8月31日
このページのまとめ
- ネイルサロン業界では、人材不足や競争激化などが課題となっている
- ネイルサロン売却では、ブランド力向上や主力事業への集中などがメリットとなる
- ネイルサロン業界では、居抜き物件の売買や隣接業種とのM&Aが活発
- 売却価格の相場は「時価純資産+営業利益 ×2〜5」となる傾向がある
- ネイルサロンのM&Aでは、事前にネイリストのスキルアップなどを図ることが重要
ネイルサロン業界では、零細・中小規模の企業によるM&Aが大半を占めており、特に居抜き物件の売買が活発です。M&Aにより優秀なネイリストの確保やブランド力向上などのメリットが期待できます。M&Aを成功させるためには、引き継いだスタッフが働きやすい環境を整えることがポイントです。ネイルサロン業界の現状やM&Aの動向、売却・買収のメリット、相場、税金について解説します。また、M&A事例も3つ紹介します。
目次
ネイルサロン業界とは
はじめに、ネイルサロン業界の定義とビジネスモデルを解説します。
ネイルサロン業界の定義
厚生労働省の「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」では、ネイルサロンを「爪の手入れや爪の造形、爪の修理、補強、爪の装飾など爪に係る施術を行う施設」と定義しています。簡単にいうと、ネイルアートや爪の手入れなどを専門のスタッフ(ネイリスト)が行う店舗です。
ネイルアート自体は1990年代から存在していましたが、当時は市場の黎明期であり、ネイル自体が高価なものであったため、ブライダルやパーティーなど用途が限定されていました。しかし2000年以降は、比較的安価なジェルネイルが普及したことや芸能人を中心にネイルブームが起きたことにより、ネイルを楽しむ人が増加し、結果的にネイルサロンが広く普及するようになりました。
※参照元:厚生労働省「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」
ネイルサロンのビジネスモデル
ネイルアートにとどまらず、爪の美容やフットケア、ハンドマッサージなどをサービスの内容とするネイルサロンも少なくありません。小さなスペースかつ少人数で行えるビジネスであるため、個人が自宅を店舗としたり、美容室がネイルサロンのサービスを提供したりしているケースも見受けられます。
ネイルサロンの設備・設備に関するルール
前述した厚生労働省の指針により、ネイルサロンの施設および設備に関しては、詳細に運営の指針が定められています。たとえば、施設に関しては「隔壁等によって外部と完全に区分されていること」が条件とされています。
ネイルサロン業界の市場規模と業界の現状・課題
次に、ネイルサロン業界の市場規模や業界の現状・課題を解説します。
ネイルサロンの市場規模
日本ネイリスト協会の「ネイル白書2023」によると、2005年〜2020年におけるネイル産業の市場規模は以下のように推移しています。
- 2005年:111,400百万円
- 2010年:203,350百万円
- 2015年:222,250百万円
- 2020年:200,700百万円
2005年から2015年にかけてネイル市場は急成長を遂げ、その後も2019年までは前年比1%前後の増加を続けていました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年〜2021年は市場が一転して縮小しました。具体的には、2021年におけるネイル産業市場の規模は1,868億円と、前年比で93.1%の水準まで縮小しています。
業態別に見ると、2005年以降のネイルサービス市場は拡大を続けています。また、消費者向けネイル製品市場も、2015年以降より市場が拡大傾向です。一方で、ネイル教育市場は近年において縮小傾向にあります。
※参照元:日本ネイリスト協会「ネイル白書2023」
ネイルサロン業界の現状と課題
ネイルサロンの一般的な課題としては、下記が挙げられます。
- サービス内容の画一化などを理由とした競争激化
- 3Dプリンタなどの技術の発達によるネイリストの仕事がなくなる懸念
- 優秀なネイリストを中心とした人材不足
こうした課題を解決するために、今後ネイルサロンの経営では、次のような取り組みが求められるでしょう。
- 消費者ニーズに即したサービスの提供
- 他言語対応やDX化、無人経営などによる差別化、生産性改善
- SNSでの情報発信や福祉ネイルケア分野への進出などによる需要の確保
ネイルサロン売却のメリット
ネイルサロンの売却によって、以下5つのメリットがあります。
1.事業・会社の売却益を獲得できる
ネイルサロンを第三者に譲渡すると、店舗や会社、事業の売却益を獲得できます。詳しくは後述しますが、数百万円かそれ以上の金額で売却できるケースが多いため、リタイア後の趣味や生活に充てたり、新規事業や既存事業への投資を実施したりすることができるでしょう。
2.大手企業の傘下入りにより、ブランド力の向上や経営の安定化を図れる
美容関係の大手企業とM&Aを実施することで、そのグループの傘下に入れます。高い知名度や潤沢な資金力などを活用しながら事業を行うことで、ブランド力の向上や経営の安定化が見込めます。また、親企業の下でテレビCMなどの大規模な販促活動が可能となるため、事業の成長加速も期待できるでしょう。
3.後継者不在の企業でも事業承継を行い、従業員の雇用を継続できる
子育てや出産、親の介護などを理由に、ネイルサロンの経営権を誰かに引き継ぎたいと考える経営者は少なくありません。しかし、親族や従業員の間で後継者が見つからず、事業承継を行えないケースがあります。
M&Aを行えば、外部の経営者や企業にネイルサロンの経営を任せられます。そのため、従業員の雇用を維持しつつ、自身は経営からリタイアできるでしょう。場合によっては、スタッフとして残り、自身のライフスタイルに応じて働き続けることも可能です。
4.経営者保証や負債から解放される
一般的にM&Aを行うと、経営者保証や負債から解放されます。
ネイルサロンの開業・運営にはまとまった額の現金が必要であるため、経営者個人が保証を負った上で、銀行などの金融機関から借入するケースは少なくありません。経営者個人が保証を負っていると、ネイルサロンが倒産した際に、自らの財産で負債を返済する義務が生じます。
負債返済のプレッシャーから解放される点で、ネイルサロンの売却は経営者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
5.新規事業や主力事業に経営資源を集中できる
ネイルサロンを売却すると、これまで費やしていた経営者自身の時間や従業員、資金、設備などのリソースに空きができます。こうしたリソースを新規事業や主力事業に投下できるようになる点もメリットです。
「ほかにやりたい事業があるけれど、ネイルサロンの経営が忙しくて手が回らない」という悩みを抱えている経営者にとって、M&Aは有用な選択肢となるでしょう。
ネイルサロン買収のメリット
ネイルサロンの買収では、以下4つのメリットがあります。
1.ネイリストを確保できる
ネイルサロンを買収する大きなメリットは、ネイリストを確保できる点です。
優れたネイルアート技術を有するネイリストを確保することで、技術交流によるサロン全体の技術力アップや、顧客満足度および収益の向上につながるでしょう。また、複数人のネイリストを抱えているネイルサロンを買収することで、採用・育成にかけるコストや時間をかけずに人材不足の課題を解決できます。
2.集客ノウハウや固定客、設備などの経営資源をまとめて取得できる
ネイリストだけではなく、集客ノウハウや固定客、設備などの経営資源をまとめて取得できる点もメリットです。
ネイルサロン運営に必要な経営資源をまとめて取得することで、一からネイルサロンを開業する場合と比べて、事業が軌道に乗るまでの時間や手間を大幅に削減できます。また、既存ネイルサロン事業の売上アップも見込めます。
加えて、集客や設備への追加投資にかかるコストを最小限に抑えられる可能性もあるでしょう。追加投資のコストを抑えることで、資金繰りの悪化を防ぐ効果も見込めます。
3.事業規模の拡大により、売上増加やコスト削減の効果を見込める
ネイルサロンを買収することで、事業規模拡大に伴う売上アップ・コスト削減の効果が期待できます。たとえば、店舗数が増えることで、マーケティング活動の費用対効果がアップし、ブランド力や集客力の向上につながるでしょう。
また、ネイルの材料を一括仕入したり、集客・顧客管理システムなどを統合したりすることで、変動費の削減効果も見込めます。
4.隣接する事業の買収により、多角化やシナジー効果の創出を見込める
事業内容が隣接する業種を買収することで、多角化やシナジー効果創出の効果が見込めます。
たとえば、エステサロンを経営する企業がネイルサロンを買収する場合、スキンケアとネイルアートのクロスセルを促せます。クロスセルが可能となれば、エステサロンとネイルサロンを別々に運営するよりも、多くの利益を創出できる可能性があるでしょう。
また、ネイルサロンを買収することで、本業であるエステサロンとは別で収益源の確保が可能です。さらに、片方の業績悪化をもう片方のビジネスによる収益でカバーできる可能性があるため、経営リスクの分散にもつながります。
ネイルサロンによるM&Aの動向
ネイルサロンのM&Aを検討する際には、業界全体でどのようなM&Aが行われているかを理解する必要があります。M&Aの実態を理解することで、M&Aの戦略を策定しやすくなるほか、市場のニーズを踏まえた交渉を行いやすくなるためです。
ネイルサロンが行うM&Aには、以下2つの特徴が見られます。
零細・中小企業による居抜き物件の売買が活発
小規模で運営しているネイルサロンが多いことから、零細・中小企業による居抜き物件の売買が活発に行われています。居抜きとは、内装や設備などを残しつつ、店舗の権利のみを売却する手法です。
店舗のみを買収するため、事業(人材やノウハウなどを含む)ごと売買するケースと比べて、比較的少ないコストで済みます。その上、すでに内装や設備が揃った状態で事業を開始できるため、スモールスタートでネイルサロンを開業したいケースや、零細・中小企業がネイルサロンの店舗を増やす場合に有用な手段です。
また、売り手にとっても、設備の処分などを行う手間を省いて売却できるメリットがあります。
売り手と買い手の双方にとってメリットがあるため、今後も居抜き物件としてネイルサロンを売買する動きは続くと考えられます。
隣接業種とのM&Aも多い
前述のとおり、ネイルサロンは隣接する業種(美容室やエステサロンなど)とのシナジーが期待できます。具体的には、前述したクロスセルによる売上アップのほか、店舗の統廃合や仕入れの一括化によるコスト削減、人材交流による技術力アップなどの効果が見込めます。
シナジー効果が発揮されると、売り手・買い手の事業が別々に事業を行なっていたときの合計よりも大きな効果(売上アップなど)が生み出されます。そのため、こうした異業種とのM&Aにより、シナジーの創出を図る動きも少なくありません。
ネイルサロンによるM&A事例
ネイルサロンによるM&Aの事例を3つ紹介します。実際の事例を確認することで、ネイルサロンのM&Aを行う目的や、用いられる手法に対する理解が深まるでしょう。
なお、事業譲渡による店舗の売買は詳細が公開されていないことが大半であるため、今回は会社ごと売買(または出資)したケースを取り上げます。
鉄人化計画によるビアンカグループの買収
買い手の株式会社鉄人化計画は首都圏エリアでカラオケ・飲食事業や中京エリアで美容事業、売り手のビアンカグループはまつ毛エクステ・ネイルサロン8店舗の運営事業を展開しています。
鉄人化計画は、美容事業の拡大を図る目的でM&Aを行いました。2021年12月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによって鉄人化計画がビアンカグループ6社の全株式を取得しました。取得価額は非公表です。
※参照元:株式会社鉄人化計画「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
インテグラルによるコンヴァノへの出資
買い手のインテグラル株式会社は、プライベート・エクイティ投資会社です。一方で、売り手の株式会社コンヴァノは、東京都心を中心に低価格帯のネイルサロンチェーンを展開しています。
買い手のインテグラルはコンヴァノの事業運営を支援すること、売り手側は高品質なサービス提供を目指す目的でM&Aを行いました。
2014年10月に実施されたM&Aでは、資本参加のスキームによってインテグラルおよび同社が管理するファンドがコンヴァノに出資しました。株式の取得割合や取得価額は非公表です(2023年3月時点における持株比率は43.62%)。
※参照元:
インテグラル株式会社「株式会社コンヴァノへの資本参加について」
株式会社コンヴァノ「株式の状況」
ヤマノホールディングスによるみうらの買収
買い手の株式会社ヤマノホールディングスは美容事業や和装宝飾事業など、売り手の有限会社みうらはネイルサロン事業を展開しています。
ヤマノホールディングスは美容事業のサービス拡大と新たなビジネスモデルの構築を図る目的でM&Aを行いました。
2018年7月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってヤマノホールディングスがみうらの全株式を取得しました。取得価額は明らかにされていません。
※参照元:ヤマノホールディングス「有限会社みうらの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
ネイルサロンの売却価格・相場
ネイルサロンの売買価格の求め方や相場を理解することは、高値掴みや安値で買い叩かれること、交渉が平行線となることなどを回避する上で重要です。この章では、ネイルサロンの一般的な相場や売却価格の目安を知る方法、売買額を左右する要素を解説します。
一般的な相場は200万円〜2,000万円
ネイルサロンの店舗または事業単体を売買する場合、一般的な相場は200万円〜2,000万円程度です。
年倍法によって売却価格の目安を知る方法
実際にネイルサロンのM&Aを行う際には、年倍法によって売却価格の目安を知ることができます。年倍法の計算式は以下のとおりです。
売却額(目安) = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5
たとえば、時価純資産が500万円、年間営業利益が300万円のネイルサロンは、以下のとおり売却価格の目安を計算できます。
売却額(目安) = 500万円 + 300万円 × 2〜5 = 1,100万円〜2,000万円
なお、2〜5年分の営業利益は「営業権(≒のれん)」を表します。営業権とは、事業で長期的に収益を生み出すもととなる無形資産の価値であり、ブランド力やノウハウなどが含まれます。そのため、事業の将来性が高いケースや、保有する経営資源の価値を高く見積もる場合には、掛け合わせる年数を多くします(営業権を高く評価します)。
売却価格を左右する要素
前述した相場や年倍法の計算結果は、あくまで目安に過ぎません。実際の売却価格は、買い手と売り手それぞれの経営者が交渉した上で決定します。交渉の際には、バリュエーション(事業や会社の価値算定)やデューデリジェンスの結果を参考とします。
そのほか、売却価格に影響する要素は以下のとおりです。
- M&Aに対する買い手・売り手企業の緊急度合い
- 想定されるシナジー効果の大きさ
- ネイルの技術や集客ノウハウなどの無形資産の価値
- 立地の優位性や固定客の多さ
たとえば、シナジー効果が大きいと予想される場合には、売却価格は高くなる傾向があります。また、売り手側のネイルサロンが有する技術やノウハウなどが買い手側から高く評価されれば、同様に高値で売却できる可能性があるでしょう。
最適な売買価格はケースバイケースであるため、M&Aの専門家に相談することがおすすめです。
ネイルサロンの売却・事業譲渡を成功させるポイント
売り手側が、ネイルサロンの売却・事業譲渡を成功させるためのポイントを4つ紹介します。
1.ネイリストのスキルアップを図る・優秀な人材を多く雇用する
1つ目のポイントは、ネイリストのスキルアップと優秀な人材の雇用です。
一般的に、技術力や接客力の高いネイリストが在籍していると、熱心なファンである固定客を確保しやすくなります。固定客が多いネイルサロンほど、安定的に収益を得たり、将来的に事業を成長させられたりする可能性があるため、買い手企業から高く評価される傾向があります。
したがって、ネイルサロンを満足できる条件で売却したいのであれば、ネイリストのスキルアップや外部から優秀な人材を雇用するなどして、サロン全体で優秀なネイリストを多く確保すると良いでしょう。
2.立地や固定客の多さといった強みを買い手候補に訴求する
2つ目のポイントは、立地や固定客の多さなどの強みを買い手候補に訴求することです。店舗の立地が良い(駅近など)と、顧客にとっての利便性が高いため、集客する上で有利となります。また、固定客が多いと、前述のとおり安定的な収益などにつながります。
こうした強みがある場合には、買い手候補にわかりやすい方法で伝えることが重要です。強みを持っていても、買い手企業がそれを認識しなければ、高く評価されにくい点には注意しましょう。
3.SNSによる集客や顧客のニーズに基づいたサービスなどの強みを確立する
3つ目のポイントは、強みの確立です。前述のとおり、ネイルサロンの競争は激化しており、競合他社に優位性のある強みがなければ、厳しい経営状況に追い込まれるおそれがあります。また、事業の価値も高く評価されにくいでしょう。
そのため、SNSでの集客・プロモーションを強化したり、顧客のニーズにもとづいたサービスを提供してファンを確保したりして、競争優位性を高めることが重要です。
4.相場や実態に応じた売却価格にする
4つ目のポイントは、相場・実態に即した価格設定です。相場や実態よりも高すぎる価格設定では、長い期間にわたり売れ残ってしまい、買い手が見つからない事態になりかねません。一方で、低すぎる価格設定にすると、安く買い叩かれてしまい、後悔するおそれがあるため注意しましょう。
ネイルサロンの買収を成功させるポイント
買い手側がネイルサロンの買収を成功させるためには、以下4つのポイントを押さえることが効果的です。
競合店と差別化できる強みがあるネイルサロンを選ぶ
1つ目のポイントは、強みを有するネイルサロンの選定です。立地の良さや優秀なネイリストといった強みがあると、長期的な収益の安定化や事業の成長加速を実現しやすくなります。そのため、ビジネスDDによって外部環境や買収したいネイルサロンの経営資源を分析し、競合店と差別化できる強みを持っているかどうかをチェックすることが重要です。
自社事業とのシナジー効果創出や弱みの補強につながるネイルサロンを選ぶ
2つ目のポイントは、シナジー創出・弱みの補強につながるネイルサロンの選定です。シナジーが創出されると、売上の大幅な増加やコスト削減などの効果が見込めます。また、自社の弱みを補強することで、競合店に顧客を奪われるなどの理由によって業績が悪化するリスクを軽減できます。
強みの有無に加えて、「買収することで、自社事業との間でどのような良い効果がもたらされるのか」という視点で買収するネイルサロンを選ぶことがおすすめです。
引き継いだスタッフが働きやすい環境を整える
3つ目のポイントは、働きやすい環境の整備です。たとえ優秀なネイリストなどのスタッフを引き継いでも、各々のモチベーションが低下したり、離職したりすれば、買収したネイルサロン事業で十分な収益を得られなくなるでしょう。
買収によって働く環境や規則、組織風土などが変わると、スタッフは不安や不満を感じやすくなります。そのため、引き継いだスタッフが働きやすい環境を整えることが大切です。具体的には、以下の施策が考えられます。
- 買収前にスタッフとの間で面談し、不安を解消しておく
- 買収後の交流を通じて、良好な関係を構築する
- 労働条件を維持またはより良いものとし、不満が生じにくいようにする
上記は一例であり、状況に応じて最適な施策を講じましょう。
デューデリジェンスにより、財務や法務上のリスクを精査する
4つ目のポイントは、リスク精査です。スタッフに対する未払残業代などのリスクを引き継ぐと、そのリスクが顕在化したときに多大な損失や信用低下を招く事態が想定されます。そのため、弁護士や公認会計士を中心としたM&Aアドバイザーに依頼し、財務や法務上のリスクを精査することが大切です。
また、発見されたリスクへの対応を検討することも求められます。具体的には、買収額の調整や買収後に行う対策の決定、場合によっては買収の見送りなども考えられるでしょう。
ネイルサロンにおけるM&A案件の探し方
ネイルサロンのM&A案件は、M&A仲介会社やマッチングサイト、金融機関などで探します。状況や希望する条件などによって、最適な探し方を活用することが重要です。各探し方の概要とメリット・デメリットを解説します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社とは、M&Aの仲介や交渉などのサポートを専門的に行う会社です。案件の紹介だけではなく、公認会計士や税理士などの士業、M&Aに関する幅広い知識を有するアドバイザーなどがアドバイスや実務の支援を行います。
デューデリジェンスやバリュエーションなどの専門知識が求められる業務に関して、専門家による手厚いサポートを得られる点がメリットです。また、M&Aのプロセスを専門家に任せることで、別の事業やプライベートにリソースや時間を費やしながらM&Aを進められます。
一方で、業者によっては成功報酬以外にも高い手数料(リテイナーフィーや着手金など)が発生する場合があります。また、買い手と売り手の間に立って支援を行うビジネスモデルであるため、利益相反の問題が生じやすくなる点にも注意が必要です。
マッチングサイト
マッチングサイトとは、M&Aの相手をインターネット上で直接探せるサービスです。仲介会社と比べて手数料が安いメリットがあります。なかには、売り手または買い手の手数料を完全無料としているサイトもあり、手取り額を大幅に増やせる可能性があります。また、自身の目で売り手または買い手を探し、直接相手と交渉できる点も魅力です。
ただし、サイトによっては専門家によるサポートが手薄であったり、不用意に情報が漏えいしたりするリスクがあります。
金融機関
銀行や証券会社などの金融機関でも、ネイルサロンなどのM&A案件を紹介してもらえる可能性があります。
ほとんどの金融機関では、あらゆる業種・規模の企業との間でネットワークを構築しているため、自社の希望条件に合う案件が見つかりやすい点がメリットです。また、M&Aに必要な資金調達の相談がしやすいことも利点として挙げられます。
ただし、一般的には大型案件を取り扱うケースが多いため、小規模なネイルサロン売買の案件は取り扱ってもらえないおそれがあります。また、仲介会社やマッチングサイトと比べて手数料が高い傾向がある点にも注意が必要です。
まとめ
本稿では、ネイルサロン業界における売却・買収のメリットや事例、相場、成功のポイントを解説しました。
ネイルサロンのM&Aでは、大手企業への傘下入りによるブランド力アップや、優秀なネイリスト確保などのメリットを享受できます。相場に応じた売却価格の設定や、働きやすい環境の整備などが、ネイルサロン業界における会社および事業の売却・買収を成功させるポイントとなるでしょう。
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