小売業のM&A・売却事例・メリット・相場を解説

2023年8月31日

小売業のM&A・売却事例・メリット・相場を解説

このページのまとめ

  • 小売業界では、労働装備率の低さや人材不足などが課題となっている
  • 小売業の売却では、後継者不足の解消や安定的な経営の実現などがメリットとなる
  • 小売業の売却では、優秀な販売員などの強みを確立することが重要
  • 小売業の買収では、競争優位性のある強みを有する売主企業の選定が重要

小売業界では、後継者不足の解決やドミナント戦略の強化などを目的としたM&Aが活発に行われています。小売業の売却・買収を成功させるためには、販売員のスキルアップなどによる強みの確立や、取引の継続性を精査することが重要なポイントです。小売業界の現状やM&Aの動向、メリットなどを解説します。また、業種別で買収・売却事例を紹介しますので、小売業のM&Aを検討中の方はぜひ参考にしてください。

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小売業界とは

はじめに、小売業の定義や主な業態について説明します。

小売業の定義

総務省の「日本標準産業分類大分類I 卸売業,小売業」では、小売業を以下のように定義しています。

  • 個人用もしくは家庭用消費のために商品を販売する事業所
  • 産業用使用者に少量もしくは少額の商品を販売する事業者

また、間違えやすいものとして、以下の業種も小売業に含まれる点に注意しましょう。

  • 製造した商品をその場所において、個人または家庭用消費者に販売する事業所(パン屋や菓子屋など)
  • 一定の事業所を持たない事業者(露天商や行商など)
  • 販売のみならず、販売している商品の修理も行う事業所

※参照元:総務省「日本標準産業分類大分類I 卸売業,小売業

小売業の主な業態

前述した日本標準産業分類では、小売業界の主な業態として下記を挙げています。本記事では、以下の業種を「小売業」と定義して、M&Aのメリットや事例などを解説します。

業態(中分類)概要
各種商品小売業衣食住にわたる各種商品を一括して、一事業所で小売する事業所(百貨店やデパートなど)
織物・衣服・身の回り品小売業呉服や服地、衣服、靴、帽子、洋品雑貨、小間物などの商品を小売する事業所
飲食料品小売業飲食料品を小売する事業所
機械器具小売業自動車や自転車、電気機械器具など、およびこれらの中古品、部分品、付属品を小売する事業所
その他小売業家具や衣料品、化粧品、燃料、文房具などの他に分類されない商品を小売する事業所
無店舗小売業店舗を持たず、カタログやインターネット等で商品を販売する事業所、自動販売機によって物品を販売する事業所など
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小売業界の動向・現状

次に、小売業界の市場規模と現状・課題を解説します。

小売業界の市場規模

経済産業省によると、小売業の市場規模(小売業販売額)は下記のとおり推移しています(カッコ内は前年比)。

  • 2020年:146兆4,570億円(-3.2%)
  • 2021年:150兆4,620億円(+1.9%)
  • 2022年:154兆4,020億円(+2.6%)

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴って市場規模が縮小したものの、2021年以降は一転して市場が拡大傾向です。

業種別に見ると、直近の2022年は百貨店やドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーの販売額が増加している一方で、ホームセンターと家電大型専門店では販売額が減少しました。

※参照元:
経済産業省「2020年小売業販売を振り返る
経済産業省「2021年小売業販売を振り返る
経済産業省「2022年小売業販売を振り返る
e-Stat「2020年度 法人企業統計調査 5.業種別財務営業比率表

小売業界の現状と課題

小売業界の課題は、大きく2つあります。1つ目は、労働装備率(1人あたり設備投資額)が低いことです。法人企業統計調査によると、小売業の労働装備率は728万円であり、全産業の1,155万円を大きく下回っています。電子タグを用いた商品管理やセルフレジなどへの投資が進んでいないことが、労働装備率が低い水準となっている要因だと考えられます。

2つ目の課題は、慢性的な人材不足です。厚生労働省の「雇用動向調査 産業(中分類)、企業規模、職業(大分類)別欠員率」によると、2021年における小売業の欠員率は2.7%であり、全産業の1.8%を大きく上回っています。欠員率は常用労働者に対する未充足人数の割合を表しているため、小売業界では人材不足が深刻化していると言えるでしょう。

※参照元:厚生労働省「雇用動向調査 産業(中分類)、企業規模、職業(大分類)別欠員率

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小売業の会社を売却するメリット

小売業の会社を売却するメリットは、以下の4つです。

  • 後継者不足の問題を解決し、事業承継を行える
  • 獲得した売却益を主力事業や新規事業、リタイア後の生活に充てられる
  • 大手グループの傘下に入り、安定的な経営や事業の成長加速を見込める
  • 不採算の部門や事業、店舗を手放し、経営の改善を図れる

それぞれについて解説します。

後継者不足の問題を解決し、事業承継を行える

会社や全事業を譲渡することで、会社の経営権や事業の運営権を第三者に譲渡できます。この仕組みにより、後継者が不在の企業でも事業承継を実現することが可能です。事業承継を実現できれば、黒字企業や成長企業が事業を畳む事態を回避できます。また、小売のノウハウやブランド、従業員の雇用などを存続させられるでしょう。

帝国データバンクの調査によると、小売業の60.1%が後継者不在の状況にあります。全企業がすぐに事業を畳む事態になるとは考えにくいものの、後継者不在を理由に廃業を検討している企業は多いはずです。こうした問題を抱える小売業の会社にとって、M&Aによる事業承継は選択肢の1つとなるでしょう。

※参照元:株式会社帝国データバンク『全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)』(2022年11月16日)

獲得した売却益を主力事業や新規事業、リタイア後の生活に充てられる

小売業の売却では、株式譲渡では株主(≒経営者)個人、事業譲渡では法人がそれぞれ売却益を受け取れます。

一般的な相場として、中小規模の小売業者の場合、数年分の利益に相当する現金を一括で獲得できます。ある程度大きな金額の現金を得られるため、そのまま会社に残る場合は主力事業や新規事業に資金を投入し、事業を成長させることが可能です。また、リタイアする場合には、売却益を元手にリタイア後の生活を経済的に豊かなものとできるでしょう。

大手グループの傘下に入り、安定的な経営や事業の成長加速を見込める

上場しているコンビニエンスストアや百貨店などとのM&Aを実行すると、大手グループの傘下に入れます。大手グループの傘下入りを果たすと、その企業が有するブランド力や知名度、仕入先、資金などを活用できるため、M&Aを実行する前よりも収益が安定しやすくなります。また、採用や販売を強化することで、事業の成長速度が高まる効果も期待できます。

不採算の部門や事業、店舗を手放し、経営の改善を図れる

事業譲渡のM&Aスキームを用いることで、会社の経営権は残しつつ、事業や部門単位で売買できます。採算がとれていない部門や事業、店舗だけを手放し、会社全体の業績を改善することが可能です。

また、不採算の部分を手放すことで、そこに費やしていた経営資源に空きができます。空きができたリソースを成長性や収益性の高い事業に投下すれば、事業のさらなる拡大・成長を図れるでしょう。

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小売業の会社買収のメリット

小売業の会社を買収するメリットを5つ解説します。

取引先や販売ノウハウ、優秀な販売員などの経営資源を獲得できる

小売業の買収では、相手企業が有する取引先や販売ノウハウ、優秀な販売員など、収益に直結する経営資源を獲得できます。こうした経営資源を一括で確保することで、売上の増大や生産性の改善が見込めます。
特に、獲得することが困難なリソース(海外の取引先、独自の販売ノウハウなど)を持っている小売店を買収できれば、持続的な競争優位性を築きやすくなるでしょう。

特定地域におけるドミナント戦略を強化できる

ドミナント戦略とは、特定の地域内に店舗を集中的に展開することで、経営効率の向上や地域内におけるシェア拡大を図る戦略であり、コンビニエンスストアによく見られます。M&Aでは、特定の地域に拠点を置く店舗や企業をまとめて買収することが可能です。

注力したい地域で知名度や人気がある小売業者を買収することで、その地域におけるドミナント戦略を強化し、物流の効率化や競合他社の排除などを図れます。

クロスセルや相互送客による売上面のシナジーを期待できる

売上面のシナジーが期待できる点もメリットです。たとえば、自社が取り扱っていない商品を扱う小売店を買収すると、自社商品とのクロスセルによって売上アップにつながる可能性があります。また、自社とは異なる販路を有する小売業者の買収では、相互送客による売上アップの効果が見込めるでしょう。

他業種・他業態の買収で、多角化によるリスク軽減や事業の効率化を図れる

他業種・他業態の買収では、多角化によるリスク軽減を図れます。たとえば、飲食店が小売業の会社を買収することで、本業である飲食店の業績が低下した場合に、小売店の収益でカバーできる可能性があります。

また、川上の産業である卸や製造の業者を買収すると、顧客ニーズを汲み取った商品開発や物流の効率化などの効果が期待できるでしょう。

小売業への新規参入にかかる時間やリスクを軽減できる

小売事業で十分な収益を得るためには、販売員などの人材や取引先、顧客などを確保する必要があります。こうした経営資源は短期間で獲得できるものではなく、小売事業を立ち上げてから軌道に乗るまでには相応の時間を要することがほとんどです。

また、ノウハウや顧客などが揃っていない状態で事業を始めるため、事業が失敗するリスクも高くなります。
一方で、M&Aによって小売業者を買収すると、前述した経営資源を一括で獲得できます。そのため、事業が軌道に乗るまでの時間や、失敗するリスクを軽減することが可能です。

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小売業界におけるM&A事例

小売業界におけるM&A事例を業態別に2つずつ紹介します。

各種商品小売業のM&A事例

百貨店や総合スーパーなどが該当する「各種商品小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

ドンキホーテホールディングスによるユニーの買収

買主のドンキホーテホールディングスはディスカウントストア事業、売主のユニーは衣食住にわたる総合小売業のチェーンストア事業を展開しています。

買主と売主の両社は、従来よりも深いパートナーシップを構築し、さらなる店舗オペレーションの改善や商流の効率化などを実現する目的でM&Aを行いました。

2019年1月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってドンキホーテホールディングスがユニーの全株式(元々保有していた40%の株式を含む)を取得しました。取得価額は282億円(残り60%の株式取得分)です。

※参照元:
ドンキホーテホールディングス「ユニー株式会社の株式取得
日本経済新聞「ドンキ、ユニーの買収完了

エイチ・ツー・オーリテイリングによるイズミヤの買収

買主のエイチ・ツー・オーリテイリングは阪急・阪神百貨店両本店を中心とした多様な小売事業、売主のイズミヤは衣料品や食料品などを取り扱うチェーンストアを展開しています。

両社は、店舗網や物流の再構成、サービスの利便性向上などを図る目的でM&Aを行いました。2014年6月に実施されたM&Aでは、株式交換のスキームによってエイチ・ツー・オーリテイリングがイズミヤを完全子会社化しました。株式交換では、売主企業の普通株式1株に対して、買主企業の普通株式0.63株が割当交付されました。

※参照元:エイチ・ツー・オー リテイリング「イズミヤとの株式交換による経営統合のお知らせ

織物・衣服・身の回り品小売業のM&A事例     

アパレル小売業や洋服の仕立てを行う店舗が該当する「織物・衣服・身の回り品小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

ユナイテッドアローズとDesignsの合併

買主のユナイテッドアローズは紳士服・婦人服等の企画・仕入などの事業、売主のDesignsは買主企業の子会社として衣料品および身の回り品の小売事業を展開していました。

買主側は、営業力の強化と経営の効率化を図る目的でM&Aを行いました。2020年2月に実施されたM&Aでは、吸収合併のスキームによってDesignsが解散しました。金銭の支払いや株式発行などは行われていません。

※参照元:ユナイテッドアローズ「連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

アダストリアによるプレティア・テクノロジーズへの出資

買主のアダストリアは30を超えるブランドを有するカジュアルファッションの店舗チェーンであり、売主のプレティア・テクノロジーズはAR開発事業を展開する企業です。

両社は、AR技術の導入によってネット通販の満足度を高める目的でM&Aを行いました。2021年3月に公表されたM&Aでは、資本業務提携のスキームによってアダストリアがプレティア・テクノロジーズに1億円出資しました。

※参照元:
日本経済新聞「アダストリア、プレティアに出資
プレティア「アダストリアと資本提携を締結

飲食料品小売業のM&A事例     

精肉店や鮮魚店、コンビニエンスストアなどが該当する「飲食料品小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

セブン&アイ・ホールディングスによるスピードウェイの買収

買主のセブン&アイ・ホールディングスは、国内を中心にコンビニエンスストアを展開しています。売主のスピードウェイは、アメリカにおいてガソリンスタンドが併設されたコンビニエンスストアのブランドです。

セブン&アイ・ホールディングスはアメリカにおけるコンビニエンスストア事業の拡大を図る目的でM&Aを行いました。
2020年8月に契約が締結された本件M&Aでは、株式やその他持分の譲渡によってセブン&アイ・ホールディングスが海外子会社を通じて、スピードウェイの事業を買収しました。取得価額は約2.2兆円です。

※参照元:セブン&アイ・ホールディングス「Marathon Petroleum Corporationからの コンビニエンスストア事業等に関する株式その他持分取得

ローソンによる成城石井の買収

買主のローソンはコンビニエンスストア事業、売主の成城石井は高付加価値を追求した小売店舗を展開しています。

両社は大都市圏市場における二極化への対応や、競争力の強化を図る目的でM&Aを行いました。2014年9月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってローソンが成城石井の全株式を取得しました。取得価額は363億円です。

※参照元:ローソン「成城石井の株式取得に関するお知らせ

機械器具小売業のM&A事例     

自動車や自転車、家電等の販売を行う事業所が該当する「機械器具小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

ヤマダホールディングスによる大塚家具の買収

買主のヤマダホールディングスは家電専門の小売業、売主の大塚家具は家具や家電などの小売事業を展開しています。

両社は「販売網の相互利用などを通じた販売力強化」や「財務基盤の安定化」などにより、大塚家具の企業価値向上を図る目的でM&Aを行いました。

2021年9月に実施されたM&Aでは、株式交換のスキームによってヤマダホールディングスが大塚家具を完全子会社化しました。株式交換では、売主企業の普通株式1株に対して、買主企業の普通株式0.58株が割当交付されています。

※参照元:ヤマダホールディングス「ヤマダホールディングスによる株式会社大塚家具の完全子会社化

ビックカメラとコジマの資本業務提携

買主のビックカメラは主に大都市圏において家電小売事業、売主のコジマは東日本を中心に家電小売事業を展開しています。

両社は商品仕入や物流システムなどの連携を図る目的でM&Aを行いました。2012年6月に実施されたM&Aでは、第三者割当増資のスキームによって、ビックカメラがコジマ株式の一部(50.06%)を取得しました。取得価額は141億1,800万円です。

※参照元:ビックカメラ「コジマとの資本業務提携

その他小売業のM&A事例     

ホームセンターやドラッグストアなどが該当する「その他小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

ニトリホールディングスによる島忠の買収

買主のニトリホールディングスは主に大型家具や家庭用品等の小売事業、売主の島忠はホームセンター事業を展開しています。

買主側はホームセンター事業への新規参入を図る目的でM&Aを行いました。2021年3月に実施されたM&Aでは、TOB(公開買付け)のスキームによって、ニトリホールディングスが島忠株式の一部(議決権の所有割合で77.04%)を取得しました。取得価額は約1,650億円です。

※参照元:
ニトリホールディングス「島忠の株券等に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
島忠「ニトリホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果

コーナン商事によるドイトの買収

買主のコーナン商事はDIY商品の小売を中心としたホームセンター事業、売主のドイトはホームセンターやガーデニング専門店の運営事業を展開していました。

コーナン商事は首都圏における事業基盤の強化やシナジー効果の創出を図る目的でM&Aを行いました。

2020年2月に実施されたM&Aでは、吸収分割のスキームによってコーナン商事がドイトからホームセンター事業とリフォーム事業を取得しています。取得価額は68億2,000万円(公表金額)です。

※参照元:コーナン商事「会社分割(簡易吸収分割)による事業の承継に関するお知らせ

無店舗小売業のM&A事例

EC事業や通販事業などが該当する「無店舗小売業」によるM&A事例を2つ紹介します。

ZホールディングスによるZOZOの買収

買主のZホールディングスは、Eコマースや検索エンジンなどの事業を多角的に展開しているIT企業です。売主のZOZOは、ファッションECサイトの運営などを行っています。

買主側はEコマース事業の成長、売主側はZホールディングスが有するユーザー層へのリーチや経営資源の活用を図る目的でM&Aを行いました。2019年11月に実施されたM&Aでは、TOB(公開買付け)のスキームによって、ZホールディングスがZOZO株式の一部(50.1%)を取得しました。取得価額は4,007億円です。

※参照元:
ヤフー「ZOZO株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ZOZO「Zホールディングス株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果

ロコンドによるFashionwalkerの買収

買主のロコンド(現ジェイドグループ)は靴とファッションの通販サイトを中心としたEC事業、売主のFashionwalkerはECサイトのモールおよび受託事業を展開しています。

買主側は自社サービスの強化および顧客層の拡大、売主側の親会社は「外部向けEC受託事業の事業拡大」や「収益性向上」への集中を図る目的でM&Aを行いました。2020年7月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってロコンドがFashionwalkerの全株式を取得しました。取得価額は3億円です。

※参照元:
ワールド「連結子会社の異動を伴う株式譲渡契約締結に関するお知らせ
ロコンド「Fashionwalker 株式の取得に関する基本合意書締結お知らせ

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小売業のM&Aを成功させるためのポイント【売却側】

売主企業の視点で、小売業のM&Aを成功させるためのポイントを5つ解説します。

1.業績が好調なタイミングで売却する

一般的には、売上や利益などの財務指標が良い・成長しているほうが、小売業の会社の売却価格は高く評価されます。また、買主候補も見つかりやすくなります。そのため、可能な限り業績が好調なタイミングで売却を実行することがおすすめです。

2.優秀な販売員や魅力的な商品ラインナップなどの強みを確立する

優秀な販売員や魅力的な商品ラインナップなどの強みを確立すると、高い価格で小売業の会社を売却できる可能性が高まります。なぜなら、このような経営資源は買主にとって確保しづらい上に、収益に直結する点で魅力的なものだからです。

ただし、優秀な人材や魅力的な商品などの経営資源は短期的に確立できるものではありません。高値で会社や店舗を売却したい場合は、余裕を持って販売員のスキルアップや販路拡大などの施策を行いましょう。

3.不要な在庫や未払残業代などのネガティブな要素は解決しておく

不要な在庫や未払残業代などがある場合は、解決した上でM&Aに臨むことがおすすめです。なぜなら、こうした要素は買主企業が引き継ぎたくないと考えるためです。ネガティブな要素があると、買収を見送られたり、不利な条件を提示されたりするリスクがあるため注意しましょう。

4.相場を理解した上でM&Aに臨む

相場を理解した上でM&Aに臨むことで、高値を買主候補に提示して交渉が決裂したり、逆に安値で買い叩かれたりする事態を防げます。一般的な中小企業の売却価格相場は「時価純資産+営業利益×2〜5年分」と言われています。小売業を売却する際には、この計算式で相場を把握してから買主との交渉に臨みましょう。

ただし、買主から見て魅力的な経営資源を有していたり、買主との間でシナジー効果が見込めたりする場合には、相場よりも高値で売却できる可能性があります。そのため、M&A専門家と相談した上で、妥当な金額を検討することをおすすめします。

5.自社事業とのシナジーを見込める・目的を達成できる買い手候補を選定する

自社事業とのシナジー(商品のクロスセルによる売上アップなど)を見込める買い手候補を選定することも成功のコツです。シナジー効果を見込める買主候補の選定により、M&Aの交渉が成立する可能性や、高く会社の価値を評価される可能性が高まるでしょう。

また、M&Aを実行する目的によって最適な買主候補を選定することも重要です。相手企業の分析や相手経営者とのトップ面談などを通じて、目的を達成できる相手企業かどうかをチェックしましょう。

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小売業のM&Aを成功させるためのポイント【買収側】

買主企業の視点で、小売業のM&Aを成功させるためのポイントを4つ解説します。

1.競争優位性のある強みを持つ売り手企業を選定する

1つ目のコツは、競争優位性のある強みを持っている売り手企業を選定することです。たとえば、独自の集客方法を持つ小売業の会社を買収すれば、競合との価格競争に巻き込まれにくく、安定的に収益を得られる可能性があります。

競争優位性のある強みかどうかを精査するには、「他社が容易に真似できないか」「希少かどうか」「売上に直結するか」といった観点での分析が効果的です。

2.PMIの計画を入念に練っておく

PMI(買収後の経営統合)に関する計画は、M&Aの交渉段階から入念に練っておくことが重要です。

小売業の買収が成功したかどうかは、事前に想定していた目標(売上の増加など)の達成が判断材料となるでしょう。目標を達成するためには、ITシステムや従業員、組織文化などをスムーズに引き継ぎ、事業運営に最適な形で統合を図る必要があります。

PMIのプロセスを疎かにすると、従業員のモチベーション低下やITシステムの不備などの事態を招き、目標達成が困難となるおそれがあるため注意しましょう。

3.簿外債務や訴訟リスクなどの引き継ぎ有無や対策を調査・検討する

未払残業代などの簿外債務、訴訟リスクなどの偶発債務を引き継ぐと、買収後に多額の負債や費用、信用低下などの問題が発生するおそれがあります。そのため、弁護士などの専門家にデューデリジェンスを実施してもらい、リスクの有無を調査することが求められます。また、リスクが発見された際には、買収前後で対策(買収額の減額、買収の見送りなど)を検討することも大切です。

4.小売業のM&Aを得意とする専門家に相談する

デューデリジェンスや企業価値算定など、M&Aの業務においては、財務や法務などに関する専門知識が必要です。そのため、M&Aの当事者である小売業者だけでM&Aを成功させることは簡単ではありません。

また、小売業のM&Aでは「取引先との特約」や「販売ノウハウ」など、業界特有の知見も求められます。そのため、小売業界のM&Aを得意とする(実績が豊富な)専門家に相談し、実務をサポートしてもらうことが重要です。

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まとめ

本稿では、小売業界における売却・買収のメリットや事例、相場、成功のポイントなどを解説しました。

小売業界のM&Aでは、事業承継の実現や、安定的な経営の実現などのメリットが期待できます。魅力的な商品ラインナップの確立や、業績が好調なタイミングでの売却などが、小売業界におけるM&Aを成功させるポイントとなるでしょう。

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