ラーメン屋のM&Aとは?概要やメリット、進め方のポイントなどを解説
2023年8月30日
このページのまとめ
- ラーメン屋業界は競争激化や後継者不足の問題があり、M&Aは存続の手段として有効
- 採用可能なM&Aのスキームには事業譲渡や株式譲渡、現物出資などがある
- ラーメン屋のM&Aにおいては、M&A支援業者を適切に利用するべき
ラーメン屋は全国に多くの店舗があり、店舗規模や形態(個人店、チェーンなど)もさまざまです。しかし、厳しい競争の下で経営難に陥っていたり経営者が高齢となり経営者不足の問題を抱えていたりする事業者も少なくありません。M&Aを有効活用することで、廃業や倒産を回避できる可能性があります。本記事では、ラーメン屋を取り巻く環境を踏まえ、M&Aのメリットやスキーム、実際の事例、支援業者の利用方法について解説します。
目次
ラーメン屋業界を取り巻く状況
まずは、ラーメン屋業界の現状について、市場規模と倒産件数という切り口で見ていきましょう。
ラーメン屋の市場規模
全国どこにでも存在するラーメン屋は、いったいどれほどの数があるのでしょうか。総務省統計局が発表している「令和3年経済センサス」を参考に解説します。ラーメン屋は平成28年時点で全国に18,041店、その市場規模はおよそ6,019億円となっています。
ラーメン屋は、日本を代表する外食産業と言ってよいでしょう。ラーメン屋の開業は飲食店のため食品衛生法に基づいた営業許可は必要ですが、特別な資格や免許は不要で参入障壁がほとんどありません。また、ラーメン屋は比較的狭い店舗面積でも営業可能です。一般的には高級感も求められないため改装費用が限定的で、外食産業のなかでは開業コストを抑えられることも、店舗数が爆発的に増加した理由だと考えられます。
参照元:総務省統計局「令和3年経済センサス(P15)」
ラーメン屋の倒産件数動向
店舗数の増加は、ラーメン業界の活性化と同時に競争激化につながるおそれがあり、廃業や倒産とも無縁ではありません。実際に、倒産件数も年々増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、2020年1月~12月の間に発生したラーメン屋の倒産は46件に達し、前年を10件上回って過去最多を更新しました。
参照元:PR TIMES掲載 株式会社帝国データバンク「ラーメン店の倒産、初の年間40件超えで過去最多 コロナ禍で客足戻らず厳しさ浮き彫りに」
ラーメン屋のM&Aが必要となる理由
ラーメン屋業界を取り巻く状況を踏まえて、主にラーメン屋の売り手視点でM&Aが必要となる理由を解説していきます。
競争の激化
手軽に開業できるがゆえに、新規参入も多いことがラーメン業界の特徴です。また、インターネット上の評判によって、客足が大きく増減することも少なくありません。つまり人気店であっても、その人気がいつまでも続くわけではなく、厳しい競争に晒されている状況にあります。
駅前でよく見られるような、圧倒的な低価格でラーメンを提供するチェーン店も隆盛しています。特に、中小・零細規模のラーメン屋はライバルが多く、存続の危機に陥るケースも出てくるでしょう。
原材料費などのコスト上昇による経営難
外食産業のなかでも、使用するほとんどの食材が値上がりしているのがラーメン屋業界です。ラーメンに欠かせない麺は、原料である輸入小麦が円安による値上がりや国際情勢の影響を受け、仕入れ値が大幅に上昇しています。
豚肉や野菜も数年前から価格上昇が続いている状況です。また、場所によっては賃料の上昇に直面するケースもあり、コスト増加による経営難を抱えるラーメン屋も少なくありません。
さらに、間接的ですが人件費や光熱費、物流コストも上昇傾向にあり、ラーメン1杯あたりのコストは上昇し続けています。その結果、大手チェーン店でもメニューの値上げに踏み切るなどの対応に追い込まれています。
後継者の不足
飲食店に限らず中小企業の事業承継、すなわち後継者問題は年々深刻化しています。特に地方は、都会と比べて少子高齢化の影響が顕著に表れており、若年層が都会へ流出したことで後継者が不足しています。
個人事業のラーメン屋においても経営者の高齢化が見られ、たとえ繁盛していても後継者が見つからなければ廃業せざるを得ません。そのため、跡継ぎ問題への対応は急務となっています。
嗜好の変化と集客力への影響
博報堂生活総合研究所の「生活定点1992-2022」によると、「好きな料理ベスト3は何ですか?」という質問に「ラーメン」と答えた人の割合は、最も高かった2016年は22.9%だったのに対し2022年は21.6%と下落しています。
ラーメンの人気が大幅に下落しているわけではないと言えそうですが、この結果を年代別にみると、40代は2016年の25.9%から2022年の21.6%へと他の世代よりも大きな下落となりました。さらに「男性40代」で絞ると、2016年の39.0%から2022年の30.0%へと最大の下落となっています。
40代男性というとラーメンを好む印象を持たれがちですが、好みの変化が実際に生じています。
ラーメン店経営者は、従来の主力の客層にも変化があり、今後の集客力への影響もありうるということを知っておくべきでしょう。
参照元:博報堂生活総合研究所「生活定点1992-2022」03 食
ラーメン屋のM&Aのメリット
ここでは、ラーメン屋のM&Aにはどのようなメリットがあるのかを主に売り手視点で解説します。
事業を存続できる
自店よりも業績好調な同業者にM&Aで事業を承継できれば、不安定だった経営が改善する可能性があります。人気のメニューや好立地といった強みがありながらも、激しい競争に晒されて単独では生き残れない場合、M&Aで買収してもらうことは、事業や従業員の雇用を維持するために有効な手段です。
これは、業績が好調だとしても経営者が高齢となり後継者問題を抱えているラーメン店についても言えることです。若い経営者が率いるラーメン屋に事業譲渡したり、経営統合したりできれば、M&Aの大きなメリットです。
規模の拡大によるコストメリット
大手チェーン店が競争力を維持している理由の一つですが、規模を拡大してラーメン1杯あたりのコストを下げることができれば、価格戦略上は非常に有利となります。例えば、食材の大量仕入れによって単価を下げられるほか、光熱費なども削減できるでしょう。
ラーメン屋が負担するコストは増加の一途をたどっており、コスト問題への対処がラーメン屋の将来を左右します。
M&Aを実施して事業の規模を拡大し、ラーメン1杯あたりのコストを抑えられれば、メニューを値上げする必要もなくなり、集客力のキープと売上の増加につながる可能性があります。
組織の新陳代謝を図り、新たな集客につながる
M&Aは異なる組織同士が一緒になることです。組織のカルチャーも雰囲気に変化をもたらす可能性が大いにあります。トラブルや衝突を招くリスクがある一方で、組織の多様化を実現できるため、M&Aの実施前には思いつかなかったアイディアやノウハウが共有される可能性もあるでしょう。
M&Aをきっかけに組織の若返りが実現して新陳代謝が起これば、多様化するニーズを捉えることができ、新たな集客につながります。
関連記事:店舗M&Aのやり方は?メリットや具体事例についても解説
採用可能なM&Aのスキーム
個人または法人のラーメン屋M&Aの典型的なスキームとして、圧倒的に多いのは事業譲渡だといえますが、それ以外にも方法はあります。採用可能なスキームについて、法律上の留意点に触れながら解説します。
事業譲渡
事業譲渡とはその名のとおり、ラーメン屋事業を譲り渡すことです。法律上の定義では、「事業の全部または一部を第三者に譲渡することであり、対価として通常は金銭を受領する方法」とされています。事業譲渡は会社に限らず、個人事業としてラーメン屋を営んでいる場合でも利用可能です。
事業譲渡の場合、あくまで一つの事業を分離して譲渡するのみとなり、譲渡の対象となる事業(ここではラーメン屋事業)は契約で選択されて移転します。こうした部分で、会社の事業が包括的に移転する株式譲渡や合併、会社分割とは異なります。
M&Aの買い手にとって、事業譲渡の大きなメリットは、ラーメン屋事業だけを選択して譲受できることです。不採算事業や債務を多く抱える企業からも、債務のない優良な事業のみが切り出されれば、M&A後の不要なコスト負担や債務負担を避けられます。
また、譲り受ける事業の対価としては金銭を支払うのみで、買い手企業の株式を交付するわけではないため、外部から新たな経営者が参画することはありません。M&A前後での経営の安定化を図りたい経営者にとっては大きな利点でしょう。
M&Aの売り手にとっても、事業を移転した対価が金銭に限られるため、利用しやすいメリットがあります。
株式会社が事業譲渡を行う場合には、会社法上、株主総会決議が必要であると定められています(467条)。ただし、相手方が特別支配会社に該当する場合(譲渡側の株式会社が、譲渡先の会社の議決権の9割超を有している場合、つまり親子会社間の事業譲渡の場合はこれに該当)など、決議が不要な場合もあります。
また、会社法に関連して注意すべき規定があります。事業譲渡をした会社は、同一の市町村または隣接する市町村の区域内で、同一の事業を20年間行うことができないという規定で、競業避止義務と呼ばれます(21条)。
ただし、実際の事業譲渡契約では、事業を行う区域を同一または隣接する市町村に限定せず広範囲に規定したり、譲渡事業内容がその後も継続する事業と同一とならないように細かく規定したりしてクリアすることが多いようです。
会計上も税務上も通常、事業譲渡では譲渡損益が発生します。譲渡益が発生すると課税される点にも注意が必要です。
株式譲渡
ラーメン屋事業を営む会社の株式を、他の会社または個人に譲渡する手法です。当然ながら、採用できるのは株式会社に限られます。会社単位で経営権が移転するため、ラーメン屋事業を含む複数事業を営んでいた場合は、全事業の経営権が丸ごと移転します。
譲渡側(売り手)であるオーナー経営者にとっては、事業も会社も譲渡することになり、事業譲渡の対価として金銭を受領するのが通常です。株式譲渡の際に譲渡益が生じれば、個人でも法人でも譲渡益に課税されます。
買い手にとっては、株式譲渡の対価として支払う金銭さえ用意できれば、シンプルで便利な手法です。事業などを選択的に移転する事業譲渡とは性格が異なりますが、資産を選別する手間が省略できるメリットがあります。ただし、会社を構成する事業や資産および負債が丸ごと傘下に入ることになり、簿外債務なども一緒に移転する点には注意しましょう。
合併および会社分割
中小以下の規模の事業者が中心のラーメン業界では、それほど多く見られませんが、合併や会社分割もM&Aの手段です。合併は、一方の会社が消滅してもう一方が存続することで(吸収合併を前提)、消滅会社のすべての事業や資産が包括的に存続会社に移転します。
会社法上、存続会社側では株主総会決議により決定することが原則ですが、消滅する会社の純資産規模が存続会社と比較して小さい場合などに決議を省略できる規定があります。
会社分割は、ラーメン屋事業を分離して別の会社に移転することです。合併と似ており、分離事業を構成する事業や資産および負債が包括的に別会社に移転します。これは、事業などを選択的に移転する事業譲渡とは異なる点です。
現物出資
あまり一般的ではありませんが、現物出資という手段もあります。ラーメン屋事業を譲渡し、対価として譲渡先の株式の交付を受けることです。つまり、ラーメン屋事業を手放したものの、事後的には当該事業を引き継いだ会社の株主として経営に参画することになります。
現物出資は、出資対象であるラーメン屋の価額をいくらで評価するかという問題が生じます。そのため、原則的には出資事業の価額に関して裁判所選任の検査役の調査が必要となりますが、弁護士などからの証明を受ければ不要となる免除規定もあります。
ラーメン屋M&AにおけるM&A支援業者の利用
では、実際にラーメン屋のM&Aを実施するには、どのように進めればよいのでしょうか。売買におけるマッチングやさまざまな手続きのサポートを受けるためにも、専門業者を利用することが推奨されます。
ラーメン屋がM&Aを実施したいと思っても、その状況は千差万別です。「できるだけ売却を急ぎたい」「価格はいくら以上でないと売れない」など、売り手のニーズはさまざまですが、希望にあてはまる相手を自分でゼロから探し出すことは簡単ではありません。
買収希望側も同様で、買収したいラーメン屋のイメージがあっても、実際に探し出すことに苦労しています。そこで活用したいのがM&A支援業者です。M&A支援業者は、M&Aの相手先の選定から、事業価値の評価サポート、手続き上の各種アドバイスまで行ってくれる、いわば伴走者のような存在です。
M&Aは複雑な契約となることも多いため、M&A支援業者のサポートが不可欠と言えるでしょう。特に個人事業主の場合、自力で価格決定を行うことは困難です。法律や税務などの専門知識も限定的であることが多いため、無理に自力で進めようとすると失敗につながりかねません。
M&A支援業者によっては、ラーメン屋のような飲食店のM&Aに関する豊富な経験や専門知識を有しています。百戦錬磨のコンサルタントを抱え、法律や税務に関する手続きまで一気通貫で対応してくれるM&A支援業者のサポートをうまく利用しましょう。
M&A支援業者は、大きく分けて仲介業者(マッチング業者)とフィナンシャルアドバイザーという2つのタイプがあります。M&Aを実施するラーメン屋の置かれた状況に合わせて、適切な業者を選択しましょう。
仲介業者
仲介業者は、あくまで中立的にマッチングを図り、最適と思われる相手先の選定をサポートしてくれます。また、売り手側と買い手側の間に入り、M&Aの実現に向けて交渉を担当するなど、双方の調整を行うことが特徴です。フィナンシャルアドバイザー(次項)に比べるとコストが低額で済み、比較的短期間のM&Aのサポートに適しています。
フィナンシャルアドバイザー(FA)
フィナンシャルアドバイザー(FA)はいずれか一方(片側)につき、相手に対して条件が有利に運ぶようアドバイスを行います。交渉の前面に立ってくれる存在で、長期のM&A案件で利用されることが多くコストもかかるため、大企業のM&Aで多く利用されます。中小規模のラーメン屋のM&Aであれば、通常は仲介業者を利用することになるでしょう。
ラーメン屋M&AにおけるM&A支援業者利用時のポイント
ここからは、ラーメン屋によるM&A支援業者を利用するうえでのポイント、特に報酬に関する注意点を解説していきます。
目的と費用対効果を考えて仲介業者を選ぶ
まずは、M&Aの目的を明確にしてから、M&A支援業者を選定しましょう。後継者がいないため事業承継がしたいのか、コスト高に苦しんでおりM&Aに救済を求めるのかなど、ラーメン屋によって目的はさまざまです。M&Aで実現したいことを明確にして、仲介業者に伝達できるようにしておく必要があります。
ほとんどのラーメン屋は、非上場かつ中小以下の規模であるため、早期かつ費用をかけずに売却したい場合は、フィナンシャルアドバイザーまでは必要ありません。
そこで、仲介業者を選択することになりますが、サービス内容や報酬体系、成約事例などを業者のWebサイト上でしっかりと確認することが重要です。気になったM&A支援業者には問い合わせをして、費用対効果を考えた上で最適な業者を選ぶと良いでしょう。
また、ラーメン屋のような飲食店のM&Aを考える場合、地域や価格帯、売却や買収の希望時期、居抜き利用OKなど、多様な条件で相手をWeb上でリサーチできるサービスも複数あるため、利用を検討してみてください。
フィー(報酬)の総額と支払形式に注意する
M&A自体にかかるコストを無視することはできません。M&Aコストが重すぎて、望んでいた効果を得られなければ、M&Aは失敗と言えるでしょう。M&A支援業者に支払う報酬が、M&Aに関連するコストの大部分を占めることもあるため、総額でいくら使えるのかを考えておく必要があります。
契約後、M&A支援業者に支払う報酬には、リテイナーフィー(月額報酬)、成功報酬(インセンティブ)、中間報酬などがあります。予想外の支出とならないように、内容や体系を事前に理解してから依頼しましょう。
リテイナーフィー
リテイナーフィーは、M&Aの成約に至るまで毎月業者に支払う報酬です。業者との契約期間にわたって、毎月のように実施されるリサーチや相手先訪問といったサービスに対して支払われるもので、通常は固定額が設定されています。
このリテイナーフィーをゼロにしている業者もありますが、着手金をリテイナーフィーに含める場合もあるため、注意が必要です。
成功報酬
成功報酬はインセンティブとも呼ばれ、M&Aが成約した際に支払う費用です。M&Aの成約金額に、その金額レンジごとに設定された料率を乗じて報酬を計算する「レーマン方式」が代表的な計算方式ですが、設定は業者によって異なります。
M&A支援業者が受け取る報酬の大部分はこの成功報酬で、業者によっては受け取る報酬は実質的に成功報酬のみにしている場合もあります。このような事情から、M&A支援業者はM&Aの成約に向けて全力で取り組んでくれます。
中間報酬
中間報酬は、事前に定めた一定のマイルストーンが達成された時点で報酬を支払うもので、基本合意書の締結時に報酬を支払うといった取り決めが典型です。
そのほか、必要に応じてデューデリジェンス費用がかかるほか、案件ごとの着手金や、それ以前の相談料をとる業者もあります。ずるずると長期にわたって報酬を支払わなければならないケースもあれば、M&A成約までは一切報酬を受け取らないという業者もあるため、自分の希望に合わせてうまく利用しましょう。
ラーメン屋のM&A事例
ここからは、比較的大規模な案件に限られますが、ラーメン屋M&Aの近年における事例を紹介します。
鉄人化計画による直久の子会社化
「カラオケの鉄人」などを運営する株式会社鉄人化計画(東証スタンダード上場)が、株式会社フククルフーズから株式会社直久の全株式を取得して子会社化し、同時にその直久においてフククルフーズのラーメン事業を譲受しました。これは、株式譲渡と事業譲渡を同時に実施したM&A事例です。
鉄人化計画は、人気のラーメン屋と既存のカラオケ事業とのメニューや商流などの共有を図るほか、サービスの充実および運営効率向上を見込み、飲食店運営事業をさらに強化するとしています。鉄人化計画はカラオケ事業とアニメやゲームのコラボレーションを得意としています。外食事業を組み入れることで、カラオケ事業とのシナジー創出を狙っているようです。実際に、アニメとコラボレーションしたラーメンをカラオケ店で提供してきた実績があります。
他方、フククルフーズは、飲食店やフードビジネス全般を営む非上場の会社で、主力の「直久」ブランドは創業百年の歴史を持ち、首都圏を中心に「麺処直久」と「ラーメン直久」合わせて20店舗展開しています。また「直久」ブランドのラーメン屋以外にも複数の飲食店をチェーン展開していました。フククルフーズはこのラーメン事業をすべて譲渡し、同事業から撤退することになりました。
フククルフーズが人気ラーメン屋事業から完全撤退した背景は明らかではありませんが、ラーメン屋事業を同業種の他社に売却するのではなく、カラオケ店のような隣接する事業とタッグを組ませてシナジー創出を狙うことも、ラーメン屋M&Aの一つのパターンと言えます。
参照元:株式会社鉄人化計画「2020年4月1日付で鉄人化計画が直久を子会社化、フククルフーズからラーメン事業を譲受」2020年4月2日
イートアンドHDによる横濱一品香の子会社化
もう1つの事例として、株式会社イートアンドホールディングスによる横濱一品香の子会社化について解説していきます。
「大阪王将」や「太陽のトマト麺」などで知られる株式会社イートアンドホールディングスが、横浜を地盤とする株式会社一品香とその食品加工子会社の株式を取得し子会社化しました(これら2社によるブランドを「横濱一品香」としています)。
株式会社一品香は、昭和30年に横浜で小規模な店舗から出発した、タンメンと餃子が好評のラーメン屋です。現在では横浜市内などに数店舗を構えていますが、横浜駅の真上の商業ビルにも出店しており、人気店であることがうかがえます。
イートアンドホールディングスは、この株式譲渡契約について「一品香の伝統と老舗の味は、今後のイートアンドグループの成長に寄与するとともに、両社の強みによって多くのシナジーを発揮することが可能であると判断した」として評価しています。
買収された株式会社一品香は売上高約8億円、総資産約4億円であるのに対し、イートアンドホールディングスは東証プライム上場で外食事業や食品事業などを幅広く展開し、売上高300億円超、総資産200億円超の大企業です。
この事例は、譲受側のイートアンドホールディングスが、圧倒的に規模で勝っているケースと言えるでしょう。プレスリリースによれば、イートアンドホールディングスにおける買収が連結業績に与える影響は軽微とのことで、むしろ横濱一品香側にとって重要なインパクトを持つ売却であったと予想されます。
横濱一品香がどのような相手への譲渡を望んでいたのか明らかではありませんが、規模と実績をともに有する大企業への譲渡は通常、事業の存続と安定という意味でも有利になると考えられます。
参照元:株式会社イートアンドホールディングス「株式会社一品香および有限会社一品香フーズの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」2020年12月15日
まとめ
本稿では、ラーメン屋のM&Aについて、概要や要件、メリットと事例などを解説しました。
ラーメン屋業界を取り巻く状況から、ラーメン屋にとってM&Aは切り離せないものになりつつあります。自らの状況を踏まえ、M&Aのスキームを理解した上で適切にM&A支援業者を利用することにより、効率的にM&Aを進められます。M&A成功のためには、伴走者として信頼できるM&A支援業者を見つけることが重要です。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。ラーメン屋をはじめ、幅広い領域において多様なM&Aスキームに対応でき、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供することで安心かつ円滑なM&Aを実現します。ぜひ、レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。