エステサロンのM&A・店舗売却の動向や相場・譲渡事例・メリットを解説

2024年7月30日

エステサロンのM&A・店舗売却の動向や相場・譲渡事例・メリットを解説

このページのまとめ

  • エステサロン業界では、人材不足や顧客の健康被害などが課題となっている
  • エステサロンを売却するメリットは、廃業費用の削減や大手への傘下入りなど
  • エステサロン業界では、居抜き店舗の売買や他業種からの新規参入が活発
  • 売却価格の相場は、「時価純資産+営業利益 ×2〜5」が目安
  • エステサロンのM&Aでは、優秀な人材や立地などの強みを訴求することが重要

エステサロン業界では、他業種による新規参入や居抜き店舗の売買が活発です。M&Aにより、大手グループへの傘下入りや、優秀なエステティシャンの確保などのメリットを享受できます。エステサロンのM&Aを成功させるためには、人材や立地などの強みの訴求が重要です。エステサロン業界の現状やM&A動向、売却・買収のメリット、相場、成功させるコツなどを解説します。また、エステサロンによるM&A事例も紹介します。

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エステサロン業界の現状

はじめに、エステサロンの市場規模と課題を解説します。

市場規模

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、2019~2023年にかけてエステサロンの市場規模は以下のとおり推移しています(単位:億円)。

年次全体女性男性
20194,0863,221865
20203,9753,062913
20213,7392,816923
20223,9713,011960
20233,3842,3451,038

上記のとおり、女性向けのエステサロンが市場の大半を占めています。しかし近年では、男性向け市場やセルフエステに対する需要も広がりつつあります。

参考元:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「数字で見る美容業界

業界の課題

エステサロン業界では、以下のような課題があります。

  • 人材不足が深刻化(特に地方では施術スタッフの人材不足)
  • エステティシャンを希望する学生の数が減少傾向
  • 中小企業や個人経営では大手企業のように広告費がかけられない
  • エステのニーズが高まり、店舗数が増えるにつれて価格競争が激化

エステ業界では人材不足が深刻化しており、地方では施術スタッフの確保が大きな課題です。エステティシャンを目指す学生の数も減少しているため、人材不足の問題は今後さらに深刻化すると予想されます。

一方で、新規顧客を獲得し、既存顧客を維持するためには広告やプロモーション活動が欠かせません。しかし、中小企業や個人経営の場合、大手企業と同じように広告に大きな費用を投じることは難しい現状があります。また、エステの需要が高まり店舗数が増えるにつれて、価格競争が激化し、安定した収益を得ることが困難となります。エステ業界においては、これらの課題を解決するための戦略が求められています。

これらの課題を解決するために、エステサロンには今後以下の取り組みが求められるでしょう。

  • コンプライアンス体制整備の強化(医師法の遵守を徹底するなど)
  • 顧客が安心して利用できるサービス体制の整備(エステティックサロン認証の獲得など)
  • エステティシャンが働きやすい環境の整備、スキルアップの支援
  • WebやSNSなどによる集客の強化
  • 顧客ニーズに基づいたサービスの提供(セルフエステやメンズエステなどの業態への参入など)

参照元:
厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例の概況
株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容業界で働くということ

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エステサロンの概要

エステサロンの定義とビジネスモデルの特徴を解説します。

エステサロンの定義

総務省の「日本標準産業分類大分類N-生活関連サービス業,娯楽業」では、エステティック業(エステサロン)を「手技または化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整えるなどの指導または施術を行う事業所」と定義しています。また、以下のサービスを提供する事業所がエステティック業の例として挙げられています。

  • 美顔術
  • 美容脱毛
  • ボディケア
  • ハンドケア
  • フットケア
  • アロマオイルトリートメント
  • ヘッドセラピー
  • タラソテラピー

本記事では、上記のサービスを提供する事業や店舗を「エステサロン」と捉えて解説していきます。

参照元:総務省「日本標準産業分類大分類N-生活関連サービス業,娯楽業

エステサロンのビジネスモデルにおける特徴

エステサロンのビジネスモデルには、主に4つの特徴があります。

事業を行う上で資格を必要としない

1つ目は、事業を行う上で資格を必要としない点です。たとえば、美容に関するビジネスに理美容業や医療脱毛がありますが、前者は美容師・理容師免許、後者は医師免許が必要です。一方で、エステサロンのサービスを行う際には、特別な資格は必要ありません。一時的な除毛・減毛に該当する美容脱毛であれば、医師免許がなくても行えます。そのため、美容系サービスの中では参入障壁が低いと言えます。

小規模事業者が多い

小規模な事業者が多い点もエステサロンの特徴です。基本的には、エステティシャンの手技による施術がメインとなるため、自宅や小さな賃貸の店舗などで開業できます。前述した参入障壁の低さも相まって、個人や零細・中小企業によって事業が運営されているケースが多く見られます。

マーケティングコストが高い

エステサロン業界では、新規顧客の獲得や既存顧客のリテンションを高めるために、広告やプロモーション活動が必要です。プロモーション活動には一定のマーケティングコストがかかります。特に、競争が激しい市場において、広告の出稿やSNSでのプロモーションなど集客を目的としたマーケティング活動に多額の費用が発生する場合があります。

技術やサービスの多様性が求められる

エステサロンの顧客は、多様なニーズを持っています。そのため、サロンはさまざまな技術を持つエステティシャンを確保し、顧客満足度の高いサービスを提供することが求められます。さらに、最新の美容技術やトレンドを取り入れることで、顧客に新しい価値を提供することも重要です。このようなアプローチによって顧客満足度を高め、リピート率の向上が図れます。

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エステサロンのM&A動向

上記で説明したビジネスモデルを受けて、エステサロンのM&Aも盛んになっています。ここからは、エステサロン業界のM&A動向を解説します。

エステサロン業界のM&Aの特徴

大手サロンは広範な顧客基盤と豊富な資金力を持つことが多く、新規事業の開発やM&Aによる事業拡大を行うことが可能です。大手サロンが持つ経済的な余裕と経営資源が、中小規模サロンを買収して新たなビジネスチャンスを探求し、事業を拡大するための強力な武器となっています。

一方、中小規模のサロンは、地域密着型のサービスや特化した技術を持つことが多くあります。しかし、課題は資金力や人材の確保です。中小規模のサロンが持つ地域性や特色を活かしつつ、経営資源の確保という課題に対応する必要があります。

個人経営のサロンは、オーナー自身が施術を行うことが多く、高い技術力や顧客との密な関係性が強みです。ただし、事業の拡大や後継者問題が課題となる場合があります。個人経営のサロンが持つ独自性とパーソナルなサービスが評価される一方で、経営の持続性や規模拡大という課題に直面していることを示しています。

エステサロンM&Aの傾向

エステサロンのM&Aには、以下3つの傾向が見られます。

他業種からの新規参入が活発

市場は縮小傾向にあるものの、エステサロンは美容や健康に関心のある多くの消費者から支持されています。そのため、隣接する他業種からの新規参入を目的としたM&Aが活発に行われています。たとえば、美容院や医療法人、ネイルサロンなどがエステサロンを買収するケース(もしくはエステサロンがこうした業種を買収するケース)が見られます。

顧客ニーズに即したサービスの提供や、クロスセルや相互送客による売上増加が見込めるため、エステサロンと隣接する業種のM&Aは今後も増えていくでしょう。

大手企業による零細〜中小規模のエステサロン買収も多い

近年では、大手美容グループが零細・中小規模のエステサロンを買収するケースも増加しています。主に市場シェアの拡大を目的に、事業投資の一環として小規模なエステサロンの買収を行っています。一方で、売り手側のエステサロンにとっては、法令遵守体制や事業の競争力強化などがM&Aの主な目的です。

居抜き店舗の譲渡も人気

居抜き店舗とは、設備や備品などが残った状態の店舗です。エステサロンを居抜き店舗として買収することで、買い手側は事業拡大や新規参入にかかる初期費用(設備の購入費用など)を抑えられます。売り手側は、設備や備品などを廃棄せずに経営からリタイアできます。

売り手・買い手の双方にとって多くのメリットがあることから、居抜き店舗の売買を目的としたスモールM&Aも人気です。

エステサロン業界のM&A市場のトレンド

エステサロン業界では、大手企業が中小企業を買収することで、サービスの拡大や新規顧客の獲得を目指す動きが見られます。これは、大手企業が中小企業の持つ地域密着型のサービスや特化した技術を取り入れることで、自社のサービスラインナップを強化し、市場競争力を高める狙いがあります。

また、グローバル化の進展に伴い、海外のエステサロン企業が日本の企業を買収するケースが増えています。その結果、新たな技術やサービスが日本市場に導入されることがあります。これは、海外市場の最新トレンドや技術を取り入れることで、日本のエステサロン業界がさらなる進化を遂げる可能性を示しています。

加えて、AIやIoTなどの最新技術を活用したサービス提供を目指し、エステサロン企業がテクノロジー企業と連携する動きが見られます。これにより、顧客体験の向上や効率的な運営が可能となります。これは、デジタル化の波がエステサロン業界にも押し寄せ、新たなビジネスモデルの創出が期待されていることを示しています。

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エステサロン・店舗のM&A・譲渡を行うメリット【売却側】

エステサロンのM&Aを行うメリットについて、売り手側の視点で解説します。

1.廃業に伴う費用をかけずにリタイアできる

エステサロンを売却することで、廃業に伴う諸費用をかけずにリタイアできます。

廃業する際には、店内の原状回復や設備・機器の処分などに多額の費用を要することが一般的です。しかし、店舗や事業、会社ごと譲渡すれば、上記の費用をかけずに経営から退くことができ、廃業も回避できます。これにより、まとまった金額の現金をリタイア後の生活に充てられるでしょう。

2.大手グループの傘下となることで、業績改善や事業の成長を期待できる

M&Aにより大手グループの傘下に入ると、その企業が有するノウハウやブランド力、豊富な資金などを活用してエステサロンの事業を運営することが可能です。安定的に収益を得られるほか、採用力の強化にもつながるため、業績改善や事業の成長が期待できます。

3.事業承継を実現し、従業員の雇用を維持できる

エステサロンの店舗や会社ごと売却する場合、買い手側に店舗の運営や会社の経営権を引き継いでもらえます。これにより、後継者不在や業績不振などを理由に廃業する事態を回避できます。

事業承継を実現することで、エステティシャンをはじめとした従業員の雇用を維持できるでしょう。雇用条件がかえって良くなるケースもあり、従業員にとっても満足のいくM&Aとなる可能性があります。

4.経営者の個人保証を外せる

エステサロンを売却すると、経営者は個人保証から解放されることが一般的です。経営者が資金調達に際して個人的に保証を負うと、将来会社が倒産した場合に、自らの財産によって債務を返済しなければならないおそれがあります。M&Aによって個人保証から解放されれば、財産が失われるリスクを取り除けます。

5.事業や会社の売却益を獲得できる

事業や会社(株式)の売却益を得られることもメリットです。経営者にとって、売却益はリタイア後の生活や新規・既存事業の資金として活用できます。たとえば、売却益として数千万円の利益を獲得できれば、リタイア後の生活を悠々自適に送れるでしょう。また、まとまった金額の事業投資によって、新規事業やコア事業の成長を加速させることもできます。

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エステサロン・店舗のM&Aを行うメリット【買収側】

エステサロンのM&Aを行うメリットについて、買い手側の視点で解説します。

1.優れたエステティシャンを確保できる

優れた技能を有するエステティシャンの獲得により、自社サービスの品質や顧客満足度、収益性の向上を図れます。また、人手不足のエステサロンにとっては、人材不足の解消にもつながるでしょう。加えて、エステティシャン同士の技術交流を通じて、事業の成長や顧客ニーズに即したサービスの実現も見込めます。

2.顧客や店舗、ノウハウなどの経営資源を獲得できる

エステティシャンだけではなく、顧客や店舗、ノウハウといった経営資源の獲得も可能です。たとえば、根強いファン(固定客)を取り込むことで、収益の安定化が期待できます。また、好立地にある店舗や独自の施術スキル、集客ルートなど、獲得・模倣が難しい経営資源を確保できれば、持続的な競争優位性を築けるでしょう。

3.事業規模の拡大を図れる

エステサロン同士のM&Aにより、エステサロン事業の規模拡大を実現できます。売上や利益の増加につながるほか、原料の共同仕入れや店舗の統廃合などを通じたコスト削減も期待できるでしょう。

また、自社が未進出の地域にあるエステサロンを買収することで、新しい地域への進出による事業基盤の強化やリスク分散も見込めます。

4.既存事業とのシナジー効果が見込める

エステサロン同士および異業種とのM&Aに共通するメリットとして、既存事業とのシナジー効果が見込める点が挙げられます。たとえば、エステサロン同士のM&Aでは、グループ全体のブランド力アップによる売上面のシナジーを得られるでしょう。

一方で、異業種(ヘアサロンや美容室など)とのM&Aを行えば、顧客に対して1つの店舗・ブランド内で複数の美容サービスを提供できるようになります。これにより、顧客の相互送客やクロスセルによる売上の拡大が見込めます。

5.エステサロン事業への新規参入にかかるコストや時間を削減できる

エステサロン事業へ新規参入する場合、設立から集客、ブランド構築までに多大な時間やリソース、コストを要します。

一方で、既存のエステサロンを買収すると、買収先が有するブランド力や顧客基盤、施術スキルなどを活用できます。また、既存の店舗の設備や人材を引き継ぐことで、新規で準備する必要がなくなり、開業に必要な資金を大幅に削減できます。

そのため、エステサロン事業に新規参入してから軌道に乗せるまでにかかるコストや時間を大幅に削減できるでしょう。

6.売上と利益を維持できる環境を含め売買できる

エステサロン業界では、既存エステサロンを買収することで、顧客基盤や営業ノウハウ、人材などを引き継ぐことができます。新規開業に比べて早期に安定した経営が見込めることが大きなメリットです。

これにより、買収後すぐに売上と利益を維持できます。既存サロンがすでに確立したビジネスモデルと顧客基盤があるため、そのまま事業を継続できるからです。

また、買収により事業規模が拡大し、経済的な安定性を得ることも可能です。事業規模が大きくなるほど単位あたりのコストが低下し、利益率が向上する規模の経済と呼ばれる現象に該当します。このことから、効率的かつ成功確率の高いビジネス展開が可能です。

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エステサロンの売却価格と相場

エステサロンの売却では、バリュエーションの結果に基づき、買い手企業との交渉によって最終的な価格を決定することが一般的です。実態に即したエステサロンの相場を知っておくことで、交渉が決裂するリスクや、安く買い叩かれるリスクを軽減できるでしょう。

エステサロンの相場や売却価格を簡易的に求める方法、バリュエーションのアプローチ(手法)を解説します。

個人〜中小規模のエステサロンだと200万円〜2,000万円程度

個人や中小規模のエステサロンを売却する場合、200万円~2,000万円程度が相場です。

売却価格は、エステサロンの規模や立地条件、買い手企業の緊急度合い、市場の状況などによって変動します。また、売り手側のエステサロンが有する施設・設備の状態や、固定客の割合、優秀なエステティシャンやブランド力といった無形資産なども売却価格を左右します。

したがって、上記の金額はあくまで参考程度に留めておいてください。

年倍法による簡易的な売却価格の求め方

エステサロンの売却価格を簡易的に求める方法の一つに「年倍法」があります。

年倍法では、「時価純資産+営業利益×2〜5年分」の計算式により売却価格の目安を求めます。たとえば、時価純資産が1,500万円、3年分の営業利益(合計)が4,500万円のエステサロンの場合、売却価格は1,500万円+4,500万円=6,000万円となります。

簡易的に算出できるため、零細〜中小規模のエステサロンによるM&Aでは、この手法によって算出した金額を交渉のベースとすることが多いです。ただし、ブランド力などの無形資産や将来性などを加味できないため、実態に合わない金額となる可能性があります。

年倍法もあくまで参考指標の1つとして活用することが望ましいでしょう。

バリュエーションにおける3つのアプローチ

バリュエーションとは、売り手の会社や、事業における価値をファイナンス理論に基づいて算定するプロセスです。バリュエーションのアプローチには、大きく以下3つの類型があります。また、類型ごとにDCF法や時価純資産法などの具体的な手法があります。

  • インカムアプローチ:エステサロンの将来的な収益性を基準とする方法
  • コストアプローチ:エステサロンが有する純資産を基準とする方法
  • マーケットアプローチ:市場や過去の取引、類似する企業を基準とする方法

アプローチごとにメリットやデメリットは異なるため、併用するか、状況に応じて使い分けることが重要です。

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エステサロンの高値による売却を成功させるコツ

この章では、エステサロンを高い価格で売却するためのコツをお伝えします。

1.事業が成長しているタイミングで売却する

エステサロンの売却時、買い手は過去の業績や将来的な収益性を重視します。そのため、事業が成長しているタイミングで売却することがおすすめです。事業の成長性が高く、今後の成長も見込まれるエステサロンであれば、買い手側から高く評価される可能性があるでしょう。

2.優秀なエステティシャンや立地などの強みを訴求する

エステサロンの強みを明確にアピールすることも、高値での売却を成功させるカギです。たとえば、優れたエステティシャンや集客率が高い立地などの強みは、他者との差別化要素かつ収益に直結する強みであるため、買い手からのニーズがあります。客観的なデータを用いて訴求することで、高値での売却につながるでしょう。

3.顧客ニーズへの対応や人材育成などにより、企業価値や将来性を高めておく

顧客ニーズを満たすサービスの提供やエステティシャンの育成などにより、企業価値や将来性を高めることも効果的です。

顧客ニーズを満たすサービスを提供できると、固定客の増加や顧客のLTV向上などにより、長期的に安定した収益獲得や成長が見込めます。また、人材育成によって技術力やサービスの品質を高めることも、同様に顧客満足度のアップなどにつながります。

こうした取り組みによって企業価値や事業の将来性を高めれば、立地などの条件に優位性がないエステサロンでも、満足のいく条件で売却できる可能性が高まるでしょう。

4.排水管の劣化などの弱みは可能な限り解消しておく

エステサロンを売却する際には、可能な限り弱みや問題点を解消しておく必要があります。

たとえば、エステサロンではシャワーや手洗い場などの設備を設置することから、排水管が必須となるケースが多いです。排水管が劣化していると、買い手側に設備更新などの追加費用が発生するため、評価が下がってしまうおそれがあります。あらかじめ点検を行い、問題があれば修理や掃除などを済ませておきましょう。

5.エステサロンのM&Aに関する実績豊富な仲介会社やアドバイザーに相談する

エステサロンのM&Aに関する実績が豊富な仲介会社には、多くの場合、エステサロンの市場動向やビジネスモデルに精通したM&Aアドバイザーが在籍しています。そのため、こうした仲介会社やアドバイザーに相談することで、適切なM&A戦略の立案や売買価格の査定、マッチングの支援を受けられるでしょう。

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エステサロンの買収を成功させるポイント・注意点

次に、買い手側の視点でエステサロンの買収を成功させるポイントを解説します。

1.排水管の修繕など、買収後に発生するコストを見積もる

エステサロンの買収では、将来的に必要なメンテナンスや修繕などにかかるコストを見積もりましょう。排水管や設備の老朽化などが進んでいる場合、買収後に設備更新が必要となり、想定外の負担を強いられるおそれがあるためです。

買収後に発生するコストを踏まえて、買収額を算定することが重要です。コストが過大である場合には、買収の見送りも検討しましょう。

2.収益に直結し、かつ容易に獲得しにくい強みを有するエステサロンを買収する

収益に直結する強みを持っているエステサロンを買収すると、買収後に安定した収益を得られる可能性が高まります。また、他社が容易に獲得できない強みを有している場合には、安定した収益を得られる期間が長くなり、売上アップの度合いも大きくなります。

具体的には、高い顧客ロイヤルティやブランド力、質の高い施術スキル、快適な個室を有する店舗などの強みがあるかどうかをチェックすることがおすすめです。

3.自社事業とのシナジー効果を重視する

M&Aを成功させるためには、自社事業とのシナジー効果も重視すべき要素の1つです。たとえば、クロスセルや相互送客による売上面のシナジー、店舗や仕入れの統廃合によるコスト面のシナジーが考えられます。

製品・市場マトリックスやバリューチェーン分析などのフレームワーク活用やビジネスDDによってシナジー効果を評価し、売上やコスト面での相乗効果が最大化される買収先を選びましょう。

4.エステティシャンが快適に働ける環境や条件を整備する

顧客満足度やサービス品質を大きく左右するエステティシャンの存在は、エステサロンにとって収益を生み出す上で欠かせない存在です。そのため買い手側には、エステティシャンが快適に働ける環境や雇用条件の整備が求められます。

エステティシャンのモチベーションが低下したり、離職されたりすると、サービス品質や顧客満足度の低下により、事業を継続できるだけの収益を得られなくなるおそれがあります。こうした事態を防ぐために、適切な報酬体系や職場環境を整備しましょう。

また、買収前後で売り手側から引き継ぐ従業員との間でコミュニケーションを徹底し、不安や不満を取り除くことも大切です。

5.人材育成やリテンション戦略を構築する

エステサロン経営において、人材確保は重要な課題です。新規出店時のコストの中で、エステティシャンの求人広告費や教育費は大きな割合を占めます。これらのコストを抑えるには、効果的な人材育成やリテンション戦略の構築が必要です。社内教育プログラムの開発やキャリアパスの明確化、従業員のモチベーション向上を図るためのインセンティブ制度の導入などが考えられます。従業員のスキルアップと定着率の向上を実現することが長期的なビジネスの成功につながります。

6.初期投資の圧縮を検討する

エステサロンを開業するには、店舗の設備や内装を整える必要があります。初期投資を抑えるためには、自宅を利用した開業や居抜き物件の活用が有効です。自宅を利用する場合、リフォーム費用やプライバシーの確保などの課題があるものの、家賃や通勤費用を節約できるメリットがあります。居抜き物件を利用する場合は、既存の設備をそのまま利用できるため設備投資を大幅に削減できます。ただし、物件の選定や契約条件などに注意が必要です。

7.固定費の削減を検討する

エステサロンの利益率を上げるためには、固定費の削減が重要です。固定費削減には、無駄な出費を見直すことが欠かせません。無駄な出費には、使用頻度の低い機器のレンタルや必要以上に在庫を抱え込むことが該当します。電気代や水道代などの光熱費の見直しも有効です。節電や節水に努めることは、長期的に見れば大きな節約につながります。これらの取り組みを通じて、エステサロンの運営コストを下げ、利益率を上げることが可能です。

8.サロンの認知度アップのため情報発信を行う

SNSを活用して、キャンペーン情報やサロンの雰囲気、施術風景などエステサロンの情報を発信し続けることは、認知度アップや新規顧客の獲得につながります。エステサロンの集客には、ビフォーアフター写真とクライアントの感想を積極的に共有することも有効です。視覚的な証拠と顧客の声は信頼性を高め、新規顧客獲得につながります。情報発信には、最新情報だけではなく、サロンの見つけやすさを向上させる効果もあります。また、地元のイベントへの参加や地域社会への貢献活動などを通じて、地元の人々とのつながりを深め、口コミによる新規顧客獲得につなげることも可能です。

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エステサロンのM&A事例

エステサロンの売却・買収の事例を紹介します。

G.Pホールディングによる不二ビューティの買収

買い手のG.Pホールディングは美容脱毛サロンなどを運営する子会社の管理、売り手の不二ビューティはエステティック事業を展開しています。

RVH「連結子会社の異動(子会社株式の譲渡)に関するお知らせ」によると、売り手の不二ビューティは、より限定した事業分野に対する経営資源の集中投下などを図る目的でM&Aを行いました。2020年4月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってG.Pホールディングが不二ビューティの全株式を取得しました。取得価額は約57億3,092万円です。

参照元:株式会社RVH「連結子会社の異動(子会社株式の譲渡)に関するお知らせ

シーズ・ホールディングスによるシーズ・ラボの買収

買い手のシーズ・ホールディングスは化粧品事業、売り手のシーズ・ラボはエステサロン事業を展開しています。

シーズ・ホールディングス「シーズ・ラボの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」によると、
シーズ・ホールディングスはエステ事業への参入やエステ店舗による化粧品ブランドの展開などを図る目的でM&Aを行いました。2016年2月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってシーズ・ホールディングスがシーズ・ラボ株式の70%を取得しました。取得価額は40億円です。

参照元:株式会社シーズ・ホールディングス「シーズ・ラボの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

TBCグループによるSWPホールディングスの買収

買い手のTBCグループはエステティック事業や化粧品事業など、売り手のSWPホールディングスは子会社を通じてエステティック事業やヘアサロン事業などを展開しています。

TBCグループ「SWPホールディングス株式会社の株式取得に関するお知らせ」、三越伊勢丹ホールディングス「子会社の株式譲渡に関するお知らせ」によると、SWPホールディングスは、譲渡会社を取り巻く環境変化や事業の方向性を勘案し、本件M&Aを行いました。2021年7月に実施されたM&Aでは、株式譲渡のスキームによってTBCグループがSWPホールディングスの全株式を取得しました。取得価額は明らかにされていません。

参照元:
TBCグループ株式会社「SWPホールディングス株式会社の株式取得に関するお知らせ
株式会社三越伊勢丹ホールディングス「子会社の株式譲渡に関するお知らせ

ファクトリージャパングループによる和み庵の買収

買い手のファクトリージャパングループは、整体×骨盤サロンの事業を展開しています。一方で売り手の和み庵は、当時株式会社凛が運営していた整体・エステサロンです。

ファクトリージャパングループ「凜から整体サロン事業を譲受」によるとファクトリージャパングループは、施術による相乗効果の創出や女性の働きやすい環境づくりを図る目的でM&Aを行いました。2018年2月に実施されたM&Aでは、事業譲渡のスキームによってファクトリージャパングループが和み庵の事業を取得しました。取得価額は明らかにされていません。

参照元:株式会社ファクトリージャパングループ「凜から整体サロン事業を譲受

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エステサロンのM&A案件を探す方法

エステサロンのM&A案件を探す主な方法として「M&A仲介会社」「M&Aマッチングサイト」「公的機関」があります。方法によってメリットやデメリットは異なるため、案件や状況に応じて使い分けることがポイントです。

M&A案件を探す3つの方法について、概要やメリット・デメリットを紹介します。

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aの専門知識を有するアドバイザーがマッチングや交渉、契約などのプロセスをサポートする会社です。M&Aのプロから包括的なサポートを得られる点がメリットです。また、エステサロンのM&Aを得意とする仲介会社であれば、市場の動向や相場をもとに、シナジー効果が見込める案件の紹介や、実態に即した売却価格の査定を行ってもらえるでしょう。

ただし、利用する仲介会社によっては、成功報酬以外の手数料(着手金やリテイナーフィーなど)が発生し、M&Aの成約までに多額の費用がかかることがあるため注意が必要です。

M&Aマッチングサイト

M&Aマッチングサイトとは、インターネットを介してM&Aの買い手または売り手を探せるサービスです。エステサロンのM&A案件を自らの目で探せる点や、直接相手と交渉できる点、仲介会社と比べて安い手数料で利用できる点がメリットです。

一方で、仲介会社と比べてM&Aに関するアドバイスやサポートは手薄であることが多いです。

公的機関

公的機関でもエステサロンのM&A案件を紹介してもらえることがあります。たとえば、事業承継・引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」を利用することで、後継者不在のM&A案件を紹介してもらえます。また、多くの機関では無料でM&Aや事業承継に関して相談できる点もメリットです。

ただし、M&Aのプロセス全体を包括的にサポートしてもらえるわけではありません。バリュエーションやデューデリジェンスなどの業務を依頼する場合には、M&A仲介会社や公認会計士などの専門家を起用する必要があるでしょう。

参照元:事業承継・引継ぎ支援センター「後継者人材バンク

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まとめ

本稿では、エステサロン業界におけるM&Aのメリットや売却・買収事例、相場、成功のポイントをお伝えしました。

エステサロン業界では、サービスの拡大や新規顧客の獲得のため、大手企業が中小企業を買収する動きが見られます。また、近年ではグローバル化の進展に伴い、海外のエステサロン企業が日本の企業を買収するケースも増えています。

エステサロンのM&Aには、優秀なエステティシャンの獲得や既存事業とのシナジー創出などのメリットがあります。排水管の劣化など、自社の弱みを解消しておくことが、エステサロン業界におけるM&Aを成功させるポイントとなるでしょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、エステサロン業界のM&Aに関する専門知識を有するコンサルタントが在籍しています。売却価格の査定やデューデリジェンスにも対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートが可能です。円滑かつ安心なM&Aを実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。