IT業界のM&A事例15選と業界の動向を分野別に解説

2024年5月10日

IT業界のM&A事例15選と業界の動向を分野別に解説

このページのまとめ

  • IT業界の市場規模は約100兆円で、国内の全産業の約10%を占める
  • 市場の成長にともないIT業界のM&Aも活発化している
  • IT業界では主に、海外進出など事業戦略や事業承継を目的にM&Aが行われている
  • M&Aを成功させるためには、PMIという統合プロセスが重要となる

市場規模が伸びているIT業界。「IT業界のM&Aについて詳しく知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
本記事では、IT業界の特性や課題からM&Aが起こる背景を探り、M&Aで実現できることについて解説します。また、売り手と買い手の双方にとっての「企業価値向上」をどのように実現するのかという視点で、IT業界におけるM&Aの手順や留意点にもふれていきます。

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IT業界のM&Aとは

まず、IT業界の構造を踏まえてM&Aが起こる背景やM&A実行のメリット、各分野の事例を紹介します。

IT業界の特性

総務省「令和5年版 情報通信白書」によると、世界のICT市場規模(支出額)は2022年で578兆9千億とされており、毎年成長しています。この成長は今後も続くことが見込まれています。

年度世界のICT市場規模(支出額)
2018410兆3千億
2019416兆
2020413兆4千億
2021483兆1千億
2022578兆9千億
2023614兆7千億

※2023年度は予測値

IT業界における5分野の事業内容と代表的な企業は以下のとおりです。

分野の名称事業内容代表的な企業
通信インフラインターネットや電話などの通信インフラに関するサービスを提供KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクなど
ソフトウェアビジネス向けシステムやソフト、スマートフォンアプリやゲームソフトなどの開発Microsoft、Oracle、サイボウズなど
ハードウェアコンピュータやスマートフォンなどの企画や設計、開発Apple、SONY、日立など
インターネット/WebECサイトやSNSなどのプラットフォームなどのサービスを提供Google、Amazon、楽天など
情報処理サービスATMや物流管理システムなど、生活や業務で使用するサービスを支える情報システムの構築や運用富士通、アクセンチュア、野村総研など

参照元:総務省「令和5年版 情報通信白書 第4章 ICT産業の動向」p.73

IT業界の課題とM&Aのニーズ

IT業界の主な課題と、IT業界の課題を解決するためにM&Aのニーズが高まっていることを解説します。

人材不足

情報処理推進機構「IT人材白書2020」によると、IT企業の93%がIT人材の数が「大幅」または「やや」不足していると回答しています。また、同じ調査において、IT人材の「質」に関しても、約9割の企業で不足しているとのことです。

上記のデータから、IT業界では深刻な人手不足が課題であるといえます。経済産業省「IT人材育成の状況等について」では、将来的には40〜80万人の規模で人材不足が生じると推測されています。

人材不足を受けて、IT業界ではエンジニアなどの人材採用や育成に力を入れる動きが広まっています。しかし、優秀なエンジニアを確保するには多大なコストや時間を要します。そのため、少ないコストで必要な人材を一括で確保できるM&Aのニーズが高まっています。

多重下請け構造

一定規模以上のソフトウェア開発では、多重下請け構造が一般的となっています。多重下請け構造とは、元請け、一次下請け、二次下請け・・・といった形で段階的に業務を委託する形態であり、メリットとして繁忙期のみ人手を確保したり、多様な開発ニーズに対応できたりする点が挙げられます。

しかし、公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」によると、買いたたきや下請け代金の減額、支払遅延などが散見されることが問題となっています。こうした問題の解決手段としても、M&Aや業務提携のニーズが高まっています。

そのほかの課題

上記以外の課題として、主に下記が挙げられます。

  • 新しい技術(ビッグデータやAIなど)への対応
  • 国内人口の減少に伴う海外進出への対応

これらの課題を受けて、自社が保有しない技術の獲得や、進出先企業のグループ化を目的としたM&Aが活発です。M&Aによって高い技術、能力を持った人材を取り入れることは、新しい技術の研究や開発にかかる費用や時間を節約することにつながります。

参照元:
情報処理推進機構「IT人材白書2020
経済産業省「IT人材育成の状況等について
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書

IT業界の買い手のメリット

M&Aにおいて、企業を買収する側である買い手の主なメリットは以下の4つです。買収戦略の肝は外部経営資源の獲得です。他社を買収することにより、人材・サービス・顧客・ブランドなどを獲得できるほか、「時間を買う」という側面もあります。

  • 自社の新規事業開発や新サービスの立ち上げ時間・手間を節約
  • 自社の事業・サービスを短期間で一気に拡大
  • 多くの優秀なITエンジニアを同時に獲得
  • 自社の事業・サービスの拡大で、非常に大きな競争力を獲得

情報処理推進機構「DX白書2023」によると、2020年の国勢調査において国内のITエンジニア数は約125万人と推計されています。

2015年の国勢調査の結果と比較すると、全就労業者数が減少しているのに対し、ITエンジニアの数は増加しています。

一方で、事業会社のIT人材の質についてアンケートを行った結果、エンジニアの質が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業が7割以上となっています。

今後は、システムのクラウド化に伴い、従来のシステムに対する開発や保守・運用の需要が減少する一方で、クラウドやIoT、AIなどの活用が進むと予想されています。

エンジニアの採用や育成には多くのコストや時間がかかります。優秀なITエンジニアを確保できる点もM&Aの大きなメリットといえるでしょう。

参照元:情報処理推進機構「DX白書2023
「DX白書2023 第4部 デジタル時代の人材」p.192

IT業界の売り手のメリット

企業を売却する側である売り手のメリットは以下の5つです。

  • 経営者が借入金を回収でき、経営者保証や担保の解除が可能
  • 売却益で、創業者利益を獲得できる
  • 買い手側は経営資源を活用し、自社の成長にドライブが可能
  • 自社の従業員の雇用を維持・充実できる
  • 自社の事業承継を実現できる

IT業界は1980年代~1990年代に設立された企業が多く、当時30代~40代だった創業者が60代~70代を迎え、事業承継が待ったなしの状況です。成長戦略のために会社を売却することは、非常に合理的な手段といえます。また、大手の傘下に入り、リソースの活用や相互補完によって成長できることも譲渡する大きなメリットです。

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IT業界のM&A動向と展望

次に、IT業界における近年のM&A動向を解説します。

M&A件数の推移

経済産業省「コーポレートガバナンス改革を踏まえた価値創造に資する合併と買収に関する実態調査」によると、2010年度〜2019年度におけるIT業界の上場企業によるM&A件数は以下の推移となっています。

年度件数(推測値)
201075
201172
2012110
2013105
2014118
2015157
2016185
2017202
2018229
2019215

※件数は、「その年度のM&A件数×情報通信業(Information Technology)の割合」で算出した推測値です。

全体を通じて増加傾向であり、特に2015年度以降は急激に増加しています。

参照元:経済産業省「コーポレートガバナンス改革を踏まえた価値創造に資する合併と買収に関する実態調査

IT業界のM&Aが増えている背景

IT業界のM&Aは、主に以下3つの理由から増加傾向です。

成長戦略

1つ目の背景は、エンジニア不足の補完、新技術の獲得、海外市場の進出などを目的とした買収・提携ニーズの増加です。

最近のトレンドとして、成長戦略の手段としてM&Aを選択するケースが増えています。相手会社の経営資源を活用することが主な目的です。経営資源は、エンジニアの人的リソースや各種データ、取引先など多岐にわたります。しかし、M&Aは売り手市場であり、複数ある競合のなかから買収企業として選ばれる必要があるため、難易度が高い成長戦略のオプションといえるでしょう。

世界的に有名なM&Aとして、Googleが世界最大の動画共有サービスであるYouTubeを買収した事例が挙げられます。YouTubeは2005年に設立されましたが、翌年の2006年にGoogleへ売却されました。YouTubeが自力で成長を成し遂げた可能性もありますが、現在世界規模で人気のサービスとなっていることを鑑みると、M&Aによるシナジー効果は大きく、成長戦略をとって成功した事例といえます。

事業承継の解決策

2つ目の背景として、事業承継の解決手段として会社・事業売却のニーズが高まっていることが挙げられます。

先述のとおり、IT業界には1980年代~1990年代に設立された会社が多く、創業者が60代~70代を迎えています。特に中堅・中小企業において、事業承継は深刻な問題です。経営者の多くがITエンジニアであるため、後継者にも同様のITスキルを求める傾向があります。子どもがいる場合は、親の背中を見て育っているため経営者の資質はある可能性が高いものの、ITスキルがあるとは限りません。一方、社内に優秀なITエンジニアがいたとしても経営スキルがなく、事業を引き継ぐことが困難なケースも多くあります。

このように、親族内継承や従業員継承が難しい場合に選択肢の一つとなるのが、M&Aによる第三者への事業継承です。M&Aのメリットは、親族内継承や従業員継承の対極にあります。元オーナーの連帯保証はM&A実行時に解除され、株の引継ぎ資金の心配がなくなります。また、譲渡企業は今までの事業やネットワーク、顧客基盤があるため、引き受け側である譲受企業との相乗効果が期待できます。新たに創出された利益を将来に向けた投資や社員への還元に活用することで、さらなる成長につながるでしょう。

出口戦略

3つ目の背景は、スタートアップを中心とした出口戦略としてのニーズ拡大です。

日本経済新聞「新興エグジット、M&Aが増加 23年は5%増の123件」によると、2023年におけるスタートアップによるイグジットを目的としたM&A件数は123件であり、前年比で5%増、過去5年で最多とのことです。また、IPOによるイグジットの件数と比べると約2倍であることからも、イグジットを目的としたM&Aは活発であるといえます。

スタートアップが多いIT業界も、この傾向が見られると考えられます。

イグジット手段として比較した場合、IPOと比べてM&Aには以下のメリットがあります。

  • 経営陣としての立場をリタイアできる
  • イグジット達成までの期間が短くなりやすい
  • イグジットの可能性が高い

上場審査の厳しい基準をクリアする必要がない上に、財務状況が悪くても成長性や強みが認められればイグジットできる点が魅力といえます。こうした理由から、一昔前と比較して出口戦略としてM&Aを選択するスタートアップが増えているといえるでしょう。

参照元:日本経済新聞「新興エグジット、M&Aが増加 23年は5%増の123件

IT業界のM&Aに関する展望

前述した課題が深刻であるため、今後もIT業界では以下のニーズを満たすためのM&Aが活発に行われると考えられます。

  • 薄利な多重下請け構造からの脱却
  • 大企業の傘下で経営を安定させたい
  • エンジニア不足を解消したい
  • 新技術を獲得したい

これらに加え、DXを推進するための手段としてM&Aが行われるケースもあります。DXという枠組みでは、老朽化したシステムのリプレイスやAIの導入、テレワークなどのIT環境の整備が必要です。自社に十分な資源がない場合は、M&Aによってそれらを補完できます。
富士通をはじめとした大手企業は、時代の流れをとらえたDXが事業のトレンドです。多様で複合的なサービスを提供するために、企業同士の融合や異業種へのM&Aはますます増加するでしょう。

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IT業界のM&A戦略【分野別】

実際にどのような戦略(≒目的)でM&Aが実施されるかは、分野によって異なる傾向があります。分野別にM&Aの戦略を紹介します。

分野

主なM&A戦略

通信インフラ

  • 収益源の確保
  • 事業エリアの拡大
  • シナジー創出

ソフトウェア

  • 技術の獲得
  • 業容拡大
  • 大手企業の傘下入り
  • 多重下請け構造からの脱却
  • 受託開発事業からの撤退

ハードウェア

  • ソフトウェア開発と連携したサービスの提供
  • 開発業務の内製化
  • オフショア開発拠点の確保

インターネット/Web

  • 新しいマーケティング手法の獲得
  • 別領域とのシナジー創出

情報処理サービス

  • 異業種によるIT投資の強化
  • 課題(人手不足など)の解決

通信インフラ

モバイル端末の普及率が飽和状態のため、新たな収益源の確保や事業エリア拡大を目的としたM&Aが実施されています。例えば、MVNO事業者が、サービス利用者を獲得するためにライバル他社を買収するケースが挙げられます。

また、ネットワーク機器のサポート事業を運営する企業が、ワンストップでのサービス提供を実現する目的で通信インフラ事業を買収するケースも見られます。

ソフトウェア

IT業界で最もM&Aが活発に行われているのが、ソフトウェアの分野です。ICTやIoT化に加え、個人情報漏洩やサーバー攻撃といったセキュリティ対策への関心が高まっており、企業のソフトウェア投資意欲は旺盛です。新たな技術を獲得し、業容を拡大することを目的としたM&Aが増加しています。

また、大手グループの傘下入りによる成長性の向上やエンジニアの待遇向上、受託開発事業の売却による多重下請け構造からの脱却や自社サービス開発への転換などを図る目的で、ソフトウェア会社を戦略的に売却するケースも多いです。

ハードウェア

IoT需要の高まりもあり、アプリケーションなどのソフトウェア開発と連携したサービス提供をねらい、大手企業を中心とした買収が進んでいます。また、開発業務の内製化やオフショア開発拠点の確保などを目的とした買収や提携も活発です。

インターネット/Web

スマートフォンの普及により、マス広告からインターネット広告に需要がシフトしています。インターネット広告、ECをはじめ、新たなマーケティング手法獲得のため、M&Aを活用する企業が増えています。

また、未進出領域の事業を取り込むことで、売上や技術開発などの面でシナジー効果の創出を図る動きも活発です。例えば、インバウンド型のマーケティング事業(Webサイト運営など)を行う会社と、アウトバウンド型のマーケティング事業(PRや広告など)を運営する会社がM&Aを行い、認知形成から顧客獲得までのサービスをワンストップで提供し、売上拡大を図る戦略が挙げられます。

情報処理サービス

製造業によるIoT化を目的とした買収、サービス業による自動決済システムの導入を目的とした買収など、情報処理サービスと異業種によるM&Aが活発です。また、エンジニア不足や多重下請け構造の課題を解決できることから、成長戦略の手段としてM&Aを選択するケースも増加しています。

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IT業界におけるM&Aの手順・注意点

仲介会社を通してM&Aを行う際の注意点を、プロセスごとに解説していきます。

1.買い手企業の選定

まずは、M&Aの相手探しです。仲介会社が「ロングリスト」と呼ばれる、譲受けの候補先リストを作成します。1案件に対して、およそ0社の候補先企業が出てくるため、実際にどの企業に提案していくのかをオーナーと仲介会社で決めていきましょう。候補先には、オーナーの知り合いや同業他社、取引先が含まれていることもあります。提案先が決まれば、企業が特定できない範囲での情報開示資料である「ノンネーム」を用いて提案を行い、興味関心の度合いを測ります。興味をもった企業が現れたら秘密保持契約書を交わし、企業概要をはじめとした詳しい情報を開示していきます。

2.トップ面談

両社の社長と仲介会社で、トップ面談を行います。ここでは、条件交渉というよりは、お互いの人柄にふれ、創業の経緯や会社の組織風土を知ることに重心が置かれます。オーナーの直感も含め、自身が育ててきた会社を託せそうな相手であるかを見極める場です。通常は1~2時間の面談で、工場見学や職場見学を実施する場合もあります。より最適な相手を見つけるために、トップ面談を複数社行うことも多くあります。

3.基本合意書の締結

譲渡企業と譲受企業の両社で合意がなされた場合は、条件交渉を経て、基本合意の締結に進みます。ここからは1社と交渉をしていきます。基本合意書の記載内容は、株価や取締役の処遇をはじめとした付帯条件、スケジュール、秘密保持、独占交渉権などです。基本合意の締結後にデューデリジェンスが行われますが、基本的にはこの時点で公表している情報や取り決め事項につき、理由なく変更はできません。基本合意書には法的拘束力があるため、しっかりとした両社の話し合いと合意のもと、作成する必要があります。

4.デューデリジェンス(DD)

買収監査と呼ばれるもので、最終契約締結前に、譲受企業が「これまで共有された情報に大きな間違いがないか」を確認する場です。コストを気にして、自社の経理部門や顧問税理士、公認会計士など、M&Aに慣れていない人に任せると、さまざまな意味でリスクがあります。相手方への質問のポイントがずれていたり、あら捜しのような質問で相手の心象を悪くしてしまったりするおそれがあります。
M&AのDDを専門にしているプロフェッショナルであれば、業種ごとに押さえるべきポイントを把握しており、ヒアリングもまとを得ているため、必要な情報を漏れなく確認できるでしょう。

5.最終契約書の締結(クロージング)

DDでしっかりと内容を確認し、最終の条件交渉を経て、最終契約書の締結に入ります。最終契約書の締結と決済(株式譲渡)は、同日に実行するのが一般的です。その後、社員や取引先に情報を開示し、丁寧に説明をしていきます。特に、経営幹部社員や重要な取引先に対しては、経緯も含めて丁寧に説明することが大切です。

このようにM&Aでは、買い手先企業の選定から、最後のクロージングまで、押さえるべきポイントが多くあります。M&Aには多くの人が関わるため、1つでもおろそかにすると、認識のずれが生まれて大きなトラブルに発展することもあります。上記の手順を順守することが、M&Aの成功につながるでしょう。

IT業界では、比較的業歴が浅く、中小規模の企業が多く存在します。そのため、システムが未完成であったり、企業価値を判断する資料が不揃いだったりするケースも少なくありません。また、非上場の会社が多く、株券の紛失や未発行などの問題が生じることもあります。IT業界の企業特性を踏まえて、事前に状況を確認することが何よりも重要です。

M&Aの仲介会社選定においては、IT全般に関する高い知識をもった専門家がいる、IT業界に特化したM&Aエージェントを選ぶことをおすすめします。IT専門ではないM&Aエージェントに依頼する場合は、ITに関して客観的に企業評価できる外部アドバイザーの採用も検討しましょう。

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IT業界のM&A事例15選

最後に、各分野別にIT業界のM&A事例を15件紹介します。

通信インフラの事例

通信インフラ分野の事例を3つ紹介します。

株式会社アジャストワンが株式会社コネクトエージェンシーを買収(2023年)

当事者アジャストワン:法人向け固定回線サービス事業など
コネクトエージェンシー: IP電話サービスなど
手法株式譲渡
M&Aの目的売り手(親会社):事業の選択と集中
売り手(譲渡対象):競争力強化

2023年6月、株式会社スカラは子会社であるコネクトエージェンシー株式の51%をアジャストワンに譲渡しました。スカラは、十分な売上獲得に至っていなかった子会社の売却により、事業の選択と集中を図る目的でM&Aを行いました。また、譲渡対象の子会社としても、IP電話サービスの競争力強化が見込めるとのことです。

譲渡価格は非公表です。

参照元:株式会社スカラ「連結子会社の異動(子会社株式の譲渡)に伴う減損損失の計上並びに個別決算における特別損失の計上に関するお知らせ

KDDI株式会社が株式会社ソラコムを買収(2017年)

当事者KDDI:固定・移動通信事業
ソラコム:通信プラットフォームの提供
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:グローバルなIoTプラットフォームの構築

2017年8月、KDDIはソラコム株式を取得し、同社を子会社化しました。KDDIは、自社が有するIoTビジネス基盤とソラコムが有する通信プラットフォームの連携により、グローバルで通用するIoTプラットフォームの構築を図る目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は約200億円と報道されています。

参照元:
KDDI株式会社「株式会社ソラコムの子会社化について
日経クロステック「KDDI、「ソラコム買収に200億円」の執念と5年前の屈辱

株式会社ケイ・テクノスが西九州電建工業株式会社を買収(2022年)

当事者ケイ・テクノス: 電気通信工事など
西九州電建工業: 情報通信、電気設備工事
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:通信インフラ事業の拡大

エクシオグループの子会社であるケイ・テクノスは、2022年に西九州電建工業を買収しました。西九州電建工業は、施工技術の高さに加えて、保守・運用事業にも力を入れて、ワンストップでサービスを提供している企業です。今回の買収によって、創業から30年以上の豊富な実績と高い施工技術を取り入れ、エクシオグループが掲げる「Engineering for Fusion ~社会を繋ぐエンジニアリングをすべての未来へ~」というビジョンのもと、通信インフラ事業の拡大・拡充を図っています。

参照元:エクシオグループ株式会社「グループ会社のケイ・テクノスによる 西九州電建工業の子会社化に関するお知らせ

ソフトウェアの事例

ソフトウェア分野の事例を3つ紹介します。

アクモス株式会社が株式会社プライムシステムデザインを買収(2024年)

当事者アクモス:ソフトウェア開発、SIなど
プライムシステムデザイン:SES事業
手法株式譲渡
M&Aの目的売り手:業容拡大
買い手:SES事業の拡大

2024年1月、アクモスはプライムシステムデザインから株式の80%を取得し、同社の連結子会社化を実施しました。売り手側は経営基盤が安定している上場企業のグループに入ることによる業容拡大、買い手側は首都圏におけるソフトウェア開発・SI領域におけるSES事業の拡大を図る目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は非公表です。

参照元:
株式会社プライムシステムデザイン「アクモス株式会社との経営統合(連結子会社化)に関するお知らせ
アクモス株式会社「株式会社プライムシステムデザインの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

株式会社SEGA Europe LimitedがRovio Entertainment Oyjを買収(2023年)

当事者SEGA Europe:ゲーム会社セガの英国完全子会社
Rovio:フィンランドに本社を置くモバイルゲーム会社
手法公開買付け
M&Aの目的買い手:グローバル市場における成長の加速

2023年8月、公開買付けによってSEGA EuropeはRovio社株式の約97.7%を取得し、同社を買収しました。セガは、売り手企業が有するモバイルゲームの開発能力や運営力、グローバルIPを取り込むことで、グローバル市場での成長を加速させる目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は、約1,013億円(100%取得した場合の金額をもとに算出)です。

参照元:
株式会社セガ「Rovio Entertainment Oyj の買収について」
セガサミーホールディングス株式会社「Rovio Entertainment Oyj の買収に関する追加的な公開買付け(Subsequent Offer)期間 結果(確定値)についてのお知らせ

日野自動車株式会社がLocationMind株式会社を買収(2022年)

当事者日野自動車: 自動車メーカー
LocationMind: IoT関連事業
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:物流ソリューションの開発

日野自動車は、IoTによる人流の分析・予測・コンサルティングを提供するLocationMindに資本参加しました。日野自動車が持つ商用車や物流業界に関する知見と、LocationMindのIoT技術を掛け合わせて、リアルタイムの位置情報を活用した運行管理などの物流ソリューションを開発することを目的としています。

参照元:日野自動車株式会社「日野自動車とLocationMind 資本業務提携

関連記事:
SES企業のM&A動向を解説!手法や買収後の統合のポイントも紹介します買収 統合
ゲーム会社のM&A動向とは?メリット・事例・成功のコツを紹介

ハードウェアの事例

ハードウェア分野の事例を3つ紹介します。

株式会社クリーク・アンド・リバー社が株式会社Shiftallを買収(2024年)

当事者クリーク・アンド・リバー社:映像やWebなどの領域におけるエージェンシー事業
Shiftall:メタバースやIoT機器の企画・開発など
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:自社事業とのシナジー創出 

2024年2月、クリーク・アンド・リバー社はShiftallの全株式を取得し、同社を子会社化しました。クリーク・アンド・リバー社は、自社が有するメタバースやVRに関するビジネス向けコンテンツ開発やシステム開発事業などとのシナジー創出を図る目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は非公表です。

参照元:株式会社クリーク・アンド・リバー社「株式会社Shiftall の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

PCIホールディングス株式会社が株式会社ソードを買収(2021年)

当事者PCIホールディングス:ソフトウェア受託開発、IoTソリューション事業など
ソード:組込みPCや周辺機器の設計・製造など
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:サービスの拡充 

2021年1月、PCIホールディングスはソードの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。PCIホールディングスは、ハードウェアとソフトウェアの融合によるワンストップソリューションを実現させる目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は42億100万円です。

参照元:PCIホールディングス株式会社「株式会社ソードの株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

ミナトホールディングス株式会社が株式会社エクスプローラを買収(2021年)

当事者ミナトホールディングス: IT製品の製造・販売など
エクスプローラ:画像・音声処理システム開発
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:IoT分野の強化

ミナトホールディングスは、ハードウェア設計のエクスプローラを買収しました。ミナトホールディングスは、メモリーモジュールの製造・販売事業、デジタル会議システム関連機器の販売・保守事業、PC 周辺機器などを販売しています。成長戦略としてデジタル分野で技術力のある企業を買収し、企業価値の向上を目指していました。

一方、エクスプローラは、画像・音声処理システム開発における高い技術力をコア事業としており、幅広い分野で豊富な開発実績がある企業です。AI・5Gなどの最新技術を活用し、開発を進めています。

ミナトホールディングスはエクスプローラをグループに入れることで、物体認識や障害物判定で需要が高まっているIoT分野を強化し、さらなる事業の発展を図っています。

参照元: ミナトホールディングス株式会社「株式会社エクスプローラの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

インターネット/Webの事例

インターネット/Web分野の事例を3つ紹介します。

ジェイドグループ株式会社がマガシーク株式会社を買収(2024年)

当事者ジェイドグループ:靴とファッションのECサイトなどを運営
マガシーク: ファッションEC
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:ファッションEC市場におけるポジションの強化

2024年3月、ジェイドグループはマガシーク株式の78%を取得し、同社を子会社化しました。ジェイドグループは、売り手企業との間で「物流・ITインフラの共通化による品揃えの拡充」や「グループ全体のユーザー層基盤拡大」などのシナジーを創出し、ファッション EC 市場における「圧倒的な2位」を目指すというビジョンを実現する目的でM&Aを実施しました。

譲渡価格は33億2,600万円です。

参照元:ジェイドグループ株式会社「マガシーク株式会社の株式取得(子会社化)ならびに株式会社NTTドコモとの業務提携契約の締結、伊藤忠商事株式会社との業務提携の継続に関するお知らせ

株式会社メルペイが株式会社origamiを買収(2020年)

当事者メルペイ:スマホ決済サービスの提供
Origami: 買い手と同様
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:スマホ決済事業の拡大

2020年、メルカリの100%子会社である「株式会社メルペイ」が、Origamiの株式を取得しました。Origamiはメルペイの子会社、メルカリの孫会社となりました。Origamiは2016年に、スマホ決済サービス「Origami Pay」の提供を開始した企業です。メルペイも同じく、スマホ決済サービスを提供しています。

プレスリリースにて、メルペイは買収目的を以下のように発表しました。
「スマートフォン決済事業者間における競争も激化するなか、Origami・メルペイ両社の強みを融合することにより、単なるスケールメリットの実現に留まらない独自の価値を提供し、ひいては日本のキャッシュレス社会実現に寄与できるものと考え、両社で協議の結果、Origamiがメルカリグループに参画することについて合意に至りました」

全国的に使用されている、両社のスマホ決済サービスを融合させることで、大きな価値を見出し、日本のキャッシュレス社会に大きく貢献している好事例といえるでしょう。

参照元:株式会社メルペイ「当社子会社による株式会社Origamiの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

プリマハム株式会社がTMG株式会社を買収(2021年)

当事者プリマハム:食肉や加工食品の製造・販売
TMG:食肉通販サイトの運営
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:食肉EC市場への本格進出

プリマハムは、食肉通販サイト「ミートガイ」を運営するTMGを2021年に買収しました。TMGは自社のECサイトだけではなく、主要なECプラットフォームでも販売チャネルを持っており、ECノウハウが豊富な企業です。プリマハムは、TMGの買収を通して食肉EC市場へ本格進出し、既存事業の領域および収益基盤のさらなる強化を図っています。食肉EC市場において高い知名度を持つTMGを買収することでシナジー効果を高め、D2C事業を拡大させる目的があります。

参照元:プリマハム株式会社「ティーエムジー株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

関連記事:EC・ネット通販のM&Aや市場動向を解説!相場や買収メリットも紹介

情報処理サービスの事例

情報処理サービス分野の事例を3つ紹介します。

富士通株式会社がtoBeマーケティング株式会社を買収(2023年)

当事者富士通:データベース事業、Webソリューション事業
toBeマーケティング:マーケティング・オートメーションを中心とした製品導入や施策の実施支援
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手: マーケティング領域の強化

2023年12月、富士通はtoBeマーケティングの全株式を取得し、同社を子会社化しました。富士通は、一部MAツールにおいて導入企業数国内1位の実績を誇る売り手企業を傘下にすることで、マーケティング領域の強化を図る目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は非公表です。

参照元:富士通株式会社「Salesforce Marketing Cloud事業の強化のため、マーケティング領域で実績豊富なtoBeマーケティングの株式譲渡契約を締結

株式会社クロスキャットが株式会社アクティブを買収(2020年)

当事者クロスキャット:システムソリューション、システム受託開発など
アクティブ:情報処理サービス、システム受託開発など
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:事業成長の実現

2020年11月、クロスキャットはアクティブの全株式を取得し、同社を子会社化しました。クロスキャットは、経営資源の相互活用や既存ユーザー層への利便性向上などにより、自社グループ事業の成長を実現する目的でM&Aを行いました。

譲渡価格は4億8,000万円です。

参照元:株式会社クロスキャット「株式会社アクティブの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

株式会社ワイヤードパッケージがパシフィックリム・コンピューティング株式会社を買収(2022年)

当事者ワイヤードパッケージ:SES、受託開発など
パシフィックリム:DX推進サービス
手法株式譲渡
M&Aの目的買い手:人材不足問題の解消、事業拡大

ワイヤードパッケージは、ITインフラ整備の市場が今後拡大するとともに、多くのITインフラ整備従事者が不足することを予測していました。そこで、ワイヤードパッケージ社の強みである人材育成カリキュラムや営業力と、パシフィックリム社が持つ豊富な実績をシナジー化しました。

また、ITインフラ業界への人材提供の継続化により、IT業界が抱える人材不足問題を解消することもM&Aの目的です。パシフィックリム社はRPAやAI、クラウドを活用したDX推進サービスを展開しており、両社はさらなる事業の拡大を図っています。

参照元:PRTIMES「ワイヤードパッケージ、パシフィックリム・コンピューティング社を子会社化。ITインフラへの業務拡大。

関連記事:システム開発会社のM&A動向と主な売買手法、PMIのポイントとは?

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IT業界のM&Aを成功させるには

M&Aを行う上では、技術やサービスの獲得、ITエンジニアの獲得、顧客基盤の拡大といった成長戦略の「手段」として考え、いつのまにかM&A自体が「目的」にすり替わらないように注意が必要です。
M&Aには数多くの人が関わるほか、プロセスが多く時間がかかるため、M&Aの実行がゴールになってしまうケースもあります。M&Aの目的は、大きな意味合いではすべて「企業価値の向上」です。これは、M&Aのクロージング時に実現できるものではありません。M&A後に両社が一緒になって、相乗効果を活かすことで、企業価値の向上につながります。

また、M&Aを成功させるためには、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション )と呼ばれる、統合プロセスが最も重要です。PMIとは、当初の統合計画の効果を最大化するため、経営レベル・業務レベル・意識レベルにおいて、統合することを指します。

例えば、ITエンジニアを獲得する目的でM&Aを実行する場合、譲受企業はITエンジニアを受け入れるだけではなく、譲受企業の経営理念や行動規範を譲渡企業のITエンジニアに浸透させることも非常に大切です。また、エンジニアのキャリアパスを考えたり、開発環境をより充実させたりして、優秀なエンジニアを他社に流出させない対策も必要となるでしょう。このように、統合プロセスであるPMIは、M&Aの成否を握るといっても過言ではありません。

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まとめ

IT業界のM&Aは下請け構造からの脱却やエンジニア不足の解消、経営の安定化、新技術の獲得などを目的に行われており、今後も活発化すると考えられます。
IT業界のトレンドやM&Aの手順・注意点を知り、M&Aの実施に備えましょう。
M&Aを検討する場合は、IT業界に特化したM&Aエージェントの活用がおすすめです。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供する仲介会社です。特にIT業界に強みをもっており、グループで培ってきたデータベースやノウハウを活用した充実のサービスを提供いたします。

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