株式譲渡・事業譲渡時の仕訳を解説!M&Aの会計処理まとめ

2023年5月2日

株式譲渡・事業譲渡時の仕訳を解説!M&Aの会計処理まとめ

このページのまとめ

  • 株式を譲受した企業の仕訳は、支配権の有無によって異なる
  • 上場企業の株式を譲受したときは、決算期も仕訳が必要
  • 事業譲渡の際にはのれんについて決算期ごとの仕訳が必要
  • のれんは会計処理と税務処理では取扱期間が異なる

「株式譲渡や事業譲渡をしたときに、どのように会計処理をすれば良いのだろうか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、株式譲渡や事業譲渡をしたときの仕訳について説明します。また、会計処理だけでなく税務処理についても具体的に紹介します。

正確かつスムーズな会計処理を実施するためにも、ぜひお役立てください。

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【M&Aの会計処理】株式譲渡時の仕訳

株式譲渡を実施したときは、譲受企業(買収側)と譲渡企業(売却側)の間で金銭的なやり取りが生じます。正しく仕訳をして帳簿に記載しておくことが必要です。

株式譲渡を実行したときの仕訳について、買収側・売却側に分けて説明します。

譲受企業(買収側)の仕訳例

譲受企業(買収側)の仕訳は、支配権の有無によって変わります。以下の3つのパターンに分けて説明します。

  • 子会社株式として仕訳をする場合(株式譲渡により支配権を取得したとき)
  • 関連会社株式として仕訳をする場合(支配権はないけれども影響力が大きいとき)
  • その他株式として仕訳をする場合(支配権も影響力もないとき)

子会社株式として仕訳をする場合

株式譲渡により議決権の過半数を得たときは、支配権を取得したことになります。この場合は「子会社株式」の勘定科目で仕訳をします。

なお、議決権の過半数を得ていない場合でも、他の大株主と協定を締結して実質的に過半数の議決権を行使できるときも、支配権を取得したと判断することが一般的です。その場合も、借方の勘定科目は「子会社株式」あるいは「関係会社株式」として仕訳をします。

A社との間で株式譲渡が発生し、300万円でA社の株式の過半数を取得し、現金で支払ったとしましょう。以下のように仕訳ができます。

借方貸方摘要
子会社株式3,000,000円現金3,000,000円A社の株式譲受

関連会社株式として仕訳をする場合

議決権の20%以上50%以下を取得した場合は、支配権は取得しませんが、譲渡企業に対して影響力を与える立場になります。この場合は「関連会社株式」の勘定科目を使い、仕訳をします。

A社との間で株式譲渡が発生し、300万円でA社の株式の30%を取得し、現金で支払ったとしましょう。以下のように仕訳ができます。

借方貸方摘要
関連会社株式3,000,000円現金3,000,000円A社の株式譲受

その他株式として仕訳をする場合

議決権の20%未満を取得した場合は、支配権も影響力も取得できません。このようなときには借方に「投資有価証券」の勘定科目を使い、仕訳をすることになります。

A社との間で株式譲渡が発生し、300万円でA社の株式の10%を取得し、現金で支払ったとしましょう。以下のように仕訳ができます。

借方貸方摘要
投資有価証券3,000,000円現金3,000,000円A社の株式譲受

譲渡企業(売却側)の仕訳例

株式を売却した側の企業(譲渡企業)は現金を受け取ることになります。ただし、取得の際にかかった原価を控除し、売却によって受け取った対価との差額を売買損益に仕訳をします。

また、株式を個人や他企業が保有していた場合は、各株主も会計処理が必要です。株式の割合によって「子会社株式」か「関連会社株式」、「投資有価証券」のいずれかの勘定科目から取得原価を控除し、売却によって得た対価との差額を計上します。

たとえばB社の株式を5%(帳簿価格190万円)保有している株主が、C社に200万円で売却し、現金を受け取った場合は、以下のように仕訳をします。

借方貸方摘要
現金2,000,000円投資有価証券1,900,000円B社の株式売却
投資有価証券売却益100,000円
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【M&Aの会計処理】株式譲渡後の決算期の仕訳

保有している株式が上場株式で、なおかつ「投資有価証券」に該当するときは、株式譲渡後の決算期に株式の評価替えのための仕訳が必要になります。評価替えの仕訳は、上場株式を保有している限り、決算期ごとに行わなくてはいけません。

たとえば現金300万円(議決権の10%)で取得したD社の株式が、決算期には330万円に価値が上昇していたとします。新株は発行されていないため議決権の割合は変わらず、法人税率を40%とすると、次のように仕訳ができます。

借方貸方摘要
投資有価証券300,000円その他有価証券評価差額金180,000円D社株式の評価替え
繰延税金負債120,000円
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【M&Aの税務処理】株式譲渡の場合

株式譲渡をしたときは、会計処理だけでなく税務処理も必要です。株式譲渡によって発生した金銭授受により、法人税や消費税などの税金が課せられます。

なお、税額を計算するときのベースになるのは取引額ですが、取引額のベースとなるのは株式の時価です。とりわけ非上場企業は市場で株価が決まるわけではないため、作為が働き、公平性のない時価を設定することにもなりかねません。

たとえば租税回避の目的で意図的に時価を低く設定したり、譲渡益を増やすために相場からかけ離れた高額な時価を設定したりする可能性もあります。いずれも不正かつ公平性に欠ける行為です。税務調査が入ることにもなりかねないため、M&A仲介会社などの第三者の協力を得て、適切に時価を設定するようにしましょう。

譲受企業(買収側)の税務処理

株式譲受の際に負ののれんが発生するときは、収益としてみなし、他の所得とあわせて法人税の課税対象となることがあります。逆に、のれんが発生したときは、償却費用を収益としてみなし、他の所得とあわせて法人税を支払います。

なお、有価証券の譲渡は非課税取引のため、株式譲受の際に消費税を支払う必要はありません。

譲渡企業(売却側)の税務処理

株式を譲渡したのが法人の場合は、譲渡価額と譲渡対象の資産および負債との差額が譲渡益となります。他の事業所得とあわせて法人税を支払うことが必要です。また、譲渡資産に課税対象のものが含まれているときは、消費税の納付も必要になります。

一方、株式譲渡をしたのが個人の場合は、譲渡価額と取得価額の差額に対して所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%(2037年まで)を納付します。また、譲渡した価額が時価よりも20%以上安価なときは、時価と譲渡価額の差額は贈与と判断され、贈与税の課税対象になる場合があるため注意しましょう。

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【M&Aの会計処理】事業譲渡時の仕訳

事業譲渡では、株式譲渡とは異なり、事業に関する複数の資産を譲り受けることになります。仕訳も資産ごとに必要となるため、複雑になることがあります。

事業譲渡は、事業に関する資産のなかから売却したいものだけを選択できる点が特徴です。たとえば商標だけ、土地だけといった今後の事業に不要なものだけを売却することも可能です。

譲受企業(買収側)の仕訳例

譲受企業は、買収した資産ごとに仕訳をする必要があります。たとえば不動産や特許権、機械装置なども、それぞれ分けて仕訳をします。また、簿価ではなく時価で資産を買収するため、仕訳も時価でしてください。

なお、消費税に関しては借方に「仮払消費税」として仕訳をします。ただし、土地は非課税となるため注意が必要です。E社から事業譲渡を受け、現金で支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方摘要
棚卸資産100,000円現金5,200,000円E社の事業譲受
土地3,000,000円
建物1,000,000円
機械装置800,000円
商標権100,000円
仮払消費税200,000円

譲渡企業(売却側)の仕訳例

負ののれんが発生する場合、時価総額からのれん代を差し引いた金額が売却価格となります。また、時価総額と簿価総額の差額は「事業譲渡益」として貸方に記載します。

消費税は「仮受消費税」の勘定科目で貸方に記載してください。事業譲渡益が20万円発生した場合のF社への事業譲渡の仕訳は、以下のとおりです。

借方貸方摘要
現金5,420,000円棚卸資産100,000円F社に売却
土地3,000,000円
建物1,000,000円
機械装置800,000円
商標権100,000円
事業譲渡益200,000円
仮受消費税220,000円
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【M&Aの会計処理】事業譲渡後の決算期の仕訳

事業譲渡で買収したときは、決算期ごとにのれん償却の仕訳が必要です。のれんは20年以内の効果がおよぶため、決定した期間に従って決算期ごとに仕訳が必要になります。

たとえば、G社を買収し、その決算期におけるのれんの償却費が20万円であったときは、以下のように仕訳をしてください。

借方貸方摘要
のれん償却費200,000円のれん200,000円G社ののれん
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【M&Aの税務処理】事業譲渡の場合

事業譲渡も株式譲渡と同じく、譲渡などによって得た利益などに対して税金が発生します。事業譲渡の際に生じる税務処理のポイントを紹介します。

法人税

譲渡した側は売却価額を事業年度の益金に算入します。簿価については損金に算入し、売却価額が簿価を上回っているときは、差額は法人税の課税対象所得です。反対に、簿価が売却価額を上回るときは、課税所得はマイナスとなるため、法人税の課税対象所得の総額が減額されます。

のれん

会計処理においては、のれんは20年以内の任意の期間で償却します。しかし、税務処理においては60ヵ月間で月割で償却することになります。

なお、税務上では「のれん」ではなく「資産調整勘定」、「負ののれん」ではなく「差額負債調整勘定」となる点に注意しましょう。

負債調整勘定

負債調整勘定には、負ののれんの「差額負債調整勘定」以外にも、譲り受けた従業員に対する退職金に相当する「退職給与負債調整勘定」、将来的に影響を与える支払いに相当する「短期重要負債調整勘定」があります。これらも税務的に必要な数字のため、各金額(見込み額)を計上します。

減価償却資産

減価償却資産を譲受した場合は、残りの使用可能年数を見積もって耐用年数を算出し、減価償却資産として償却していくことが必要です。耐用年数は法定耐用年数を超えているかによって、以下の計算式で求めます。

  • 法定耐用年数を超えている:法定耐用年数×20%
  • 法定耐用年数を超えていない:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

なお、小数点は切り捨てます。また、算出した結果が2年に満たないときは、耐用年数は2年とします。

消費税

株式売買は消費税非課税取引のため、株式譲渡では消費税は発生しませんでした。しかし、事業譲渡では、譲渡する資産によっては消費税が課税されます。ただし、株式などの有価証券や金銭債権、土地は非課税のため、除外して消費税額を計算しましょう。

関連記事:株式譲渡とは?手続きの流れや注意点・メリット・デメリットなどを解説

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まとめ

株式譲渡をするときは、正確に帳簿に記載することが必要です。株式を取得する側(買収側)は議決権の割合によって正しい勘定科目を選び、仕訳するようにしましょう。

非上場企業の場合は、株式を妥当な価格に設定することから始めなくてはいけません。正しい価値を計算するには、M&A仲介会社などの専門家のサポートが必要になります。

一方、事業譲渡のときは譲渡する資産が多岐におよぶこともあるため、仕訳も複雑になりがちです。また、消費税などの税金も複雑になるため、注意が必要です。

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