M&Aにおける銀行の役割は?アドバイザリー業務の流れや報酬も紹介

2024年4月12日

M&Aにおける銀行の役割は?アドバイザリー業務の流れや報酬も紹介

このページのまとめ

  • M&Aの相談先として、銀行の独自性は、M&A仲介会社などと異なり、融資を行う点にある
  • トータルなサポートを受けられる反面、地方銀行はサービス内容にバラつきがある場合も
  • 費用面では、とくにメガバンクはM&A仲介会社などよりも高額となる傾向が強い
  • 買い手側なら、アドバイザリー業務を銀行に依頼するとメリットを享受しやすい
  • 売り手側の場合は、「利益相反取引」で自社に不利な条件を提示される可能性がある

M&Aの相談先には仲介会社や公認会計士などがありますが、選択肢の1つとなるのが銀行です。しかし銀行に相談する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?また注意点はないのでしょうか?もちろん費用も知っておく必要があるでしょう。

この記事では、M&Aにおける銀行の役割や必要となる報酬、銀行に相談するときの注意点などについてまとめます。M&Aをご検討中の企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。

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M&Aにおける銀行の役割

M&Aにおける銀行の役割は、次の2つに大きく分けられます。

  • 融資・資金調達
  • アドバイザリー業務

両方を行うこともあれば、片方だけを担当することもあります。それぞれ仲介会社と異なるような銀行ならではの部分があります。1つずつ具体的に見ていきましょう。

融資・資金調達

まず、譲受企業、すなわち買い手がM&Aの資金を調達するフェーズがあります。

多くの場合、資金提供をする役割を担うのが銀行です。

M&Aにおいて銀行から融資を受ける場合、特にすでに口座を持っていたり過去に融資を受けたりと取引のある銀行だと融資を受けやすくなります。銀行も判断材料を持っているからです。そのほか、その銀行と取引のある会社に紹介してもらえると融資の可能性が高くなります。特に地方の場合など、地元の有力企業に紹介してもらえるとさらに確率が高まります。

融資は銀行ならではの役割で、仲介会社とは大きく異なる点だといえます。そもそも仲介会社は融資ができません。仲介会社を利用しながら融資を受けたい場合は、個別で銀行に相談・交渉する必要があります。

そのほか譲受側にしても譲渡側にしても、すでに銀行から融資を受けているときにM&Aの当事者となるケースもあるでしょう。その場合に、銀行は債権者としてM&Aに関わることになります。

銀行に融資を求める場合は、間接的なメリットがあります。銀行は融資した資金をM&Aの成約後に確実に回収できるかどうか多角的にチェックします。そのため、融資を受けられなかった場合はそのM&Aにリスクがあるという可能性もあります。融資を受けられるかどうかがM&Aの将来性を計る手段になるというわけです。

なお、証券会社に近い「投資銀行」では融資を行っていないので注意が必要です。

アドバイザリー業務

さらにもう1つの役割として「アドバイザリー業務」が挙げられます。アドバイザリー業務とは、クライアントとなる譲受側・買い手もしくは譲渡側・売り手の利益を最大化するために、財務・税務・法務などの実務のアドバイスやとりまとめを行うことです。

仲介業者による「仲介」は譲渡・譲受両方の橋渡しを行うことですが、アドバイザリー業務は契約しているどちらかのサポートを行うことを指します。基本的に銀行は仲介ではなくアドバイザリー業務を行います。

また銀行は幅広いネットワークを持っていることが多いため、銀行にアドバイザリー業務を依頼するとM&Aの交渉相手が見つかることも珍しくありません。その点も仲介会社の場合と異なるといえるでしょう。

なお、メガバンクと地方銀行とでは、得意な業務や特徴に多少違いがあります。

メガバンクの場合、M&Aのアドバイザリー専門の部署を持っていてM&A全般の知識があることが多くあります。M&Aの相談相手として弁護士や税理士もありますが、弁護士や税理士の多くはM&Aの専門分野のみの対応です。それに対して、メガバンクを利用することで、トータルなサポートを受けることができます。またメガバンクは大規模なM&Aを得意とするのも特徴です。そのため場合によっては中小企業のM&Aに対応していなかったり、料金が高くて依頼は難しかったりすることもあります。

地方銀行の場合は、アドバイザリー業務より仲介に近い役割を果たしていることも多くあります。地方では後継者不足からM&Aを選択する企業も多く、そういったニーズに対応するためです。利益優先のM&Aよりは、信用できる相手同士のマッチングが得意です。ただしサポートの品質は、銀行によってバラつきがあり注意が必要です。

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M&A実施前に資金調達を行う際に銀行が見る5つのポイント

M&Aのために銀行から資金調達しようとするとき、銀行がチェックするポイントについてまとめます。次の5つの点が挙げられます。

  • 損益とキャッシュフローの状況
  • 有形固定資産の価値
  • 買い手側の信用度
  • M&A後の事業の見通し
  • 買収価格

一言でいえば、融資のリスクが少ないか、M&A後の将来性が期待できるかについて確認されます。

では、1つずつ具体的に見ていきましょう。

1.損益とキャッシュフローの状況

銀行からの融資では損益の状況が重視されます。そのため審査においては譲渡企業・譲受企業とも、損益計算書を詳細に確認されるのが一般的です。

損益計算書とは、一定期間(一般的には1年分)の会社の利益を知ることができる決算書類です。損益計算書を見れば、どんな事業を行い、どれぐらい売上があり、どのぐらい利益が出たか、損益分岐点はどこかなどがわかります。損益計算書は、確定申告時に法人税の申告書に添付している書類の1つです。

特に入念に見られるのは、売り手側は収益性、買い手側は財務状況です。さらに買い手側は、損益計算書を確認されることによって財務の管理能力も査定されています。これはM&A後に適切な経営を行う能力があるかどうかを判断するためです。

また「キャッシュフロー」も確認されます。キャッシュフローとは、事業における現金の出入りの流れのことです。キャッシュフローによってその会社の支払い能力を知ることができ、経営状態の健全度がわかります。

キャッシュフローはキャッシュフロー計算書の形でまとめますが、非上場企業にはキャッシュフロー計算書の作成義務はありません。ただしキャッシュフロー計算書は財務三表の1つとされるほど重要なものです。非上場企業の作成義務はなくとも作るべきだといえるでしょう。

2.有形固定資産の価値

M&Aの融資においては、有形固定資産の価値も確認されます。有形固定資産の例としては、土地や建物などが挙げられます。

銀行が融資する際は、融資先に返済できる能力があるかどうかが重視されるポイントです。有形固定資産は換金性が高いため、融資の判断をする際に融資を受ける側にとって有利に働きます。もちろん価値のある資産を持っていたり、資産の数が多かったりするほど評価が高まり、融資を得られる可能性が高まります。

とくに有形固定資産を担保にすると融資の可能性がさらに高まります。無形の資産でも、担保を差し入れることは有効です。

3.買い手側の信用度

買い手側、すなわち譲受側の信用度も確認されます。銀行にとっては返済がなされるかどうかは重要な問題であり、融資による貸し付けのリスクを判断するためです。もちろん信用度が高いほど融資を得られる可能性が高くなります。

その銀行と取引したことがないと、銀行にとっては本当に債務返済されるかわかりません。そのため審査は厳しくなるのが一般的です。信用度を計るときに具体的に確認されるのは、会社の経営状況、過去・現在の借入・返済の状況、M&Aの実績に加えて、経営者の人柄や経営経験の長さなども含まれます。実は取引の実績があると融資を得られやすいのは、経営者の人柄や社内の雰囲気などもわかることも理由になっているのです。

このように、信用度はあらゆる面で総合的に判断されます。

4.M&A後の事業の見通し

M&A後の事業の見通しも融資において確認される事項の1つです。買収後の売上計上や収入見込みが融資の返済計画のもととなるため、買収後の収益性はどうか、その見通しは妥当なものかが見られます。

買収後の事業計画の確実性や将来性が融資の判断材料とされます。より具体的には、計画の合理性・シナジーの実現可能性・統合によるリスクなどが挙げられます。あいまいな計画は自社にとっても大きなマイナスとなりうるので、綿密な検証を行いましょう。

5.買収価格

買収価格は買収後の事業の成功にも影響するため、融資の際に確認されます。買収価格には無形資産も含まれますが、買収価格の中でも無形資産の価格は重点的に見られます。

買収価格から純資産を引いた金額は「のれん」と呼ばれます。のれんはブランド力・ノウハウなど無形の資産で、将来の収益性・期待を金額で評価したものです。のれんの額が適切でなく高すぎると、買収後の事業を圧迫する可能性があります。見込みに合わせて投資しながら事業を行っても、期待ほどの利益を生まないということになるからです。

想定ほどの利益が得られない可能性があると、融資資金の回収に対するリスクが高まります。そのため、銀行が融資する可能性は低くなります。銀行としてはのれんの額が低いほどリスクが少なく安心です。そのため、少なくとものれんが適切な金額・高すぎない金額であることが求められます。

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M&Aにおける銀行のアドバイザリー業務の流れ

M&Aにおける銀行のアドバイザリー業務は、次の流れで行われます。譲渡側・譲受側のいずれにも共通する部分について解説します。

  1. M&Aの戦略の策定
  2. 候補先の選定と交渉
  3. 基本合意の締結
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 最終合意契約の締結
  6. クロージング

この流れは銀行の場合に特有のものというわけでなく、仲介会社などとも共通しています。

まずM&Aの目的や条件、株式譲渡や事業譲渡など具体的なスキームなどを検討します。

さらに譲渡側も譲受側も、希望の条件をもとに候補先を選定して交渉に入ります。トップ同士の会談などで方向性を確認し合い、条件をすり合わせていきます。

「基本合意」は、M&Aの基本的な条件に合意したという確認になるものです。記載される合意の条件内容としては、譲渡の対象範囲や譲渡価格などが挙げられます。基本合意に法的な拘束力はありませんが、締結するのが一般的です。

「デューデリジェンス」とは、売り手企業を詳細に調査することをいいます。デューデリジェンスの詳細は後述します。

「クロージング」とは、M&A取引そのものです。株式の譲渡や事業譲渡など、スキームを実行することをいいます。

銀行のアドバイザリー業務では、これら一連の流れをサポートするということになります。

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M&Aにおける銀行のアドバイザリー報酬

M&Aにおける銀行のアドバイザリー報酬は、次の3つに大きく分けることができます。

  • 着手金
  • 中間報酬
  • 成功報酬

銀行のこれらのアドバイザリー報酬は、一般に仲介会社よりも高額となる傾向があります。とくにメガバンクの料金は高く設定されており、費用面で条件に合わないことも多いでしょう。銀行にアドバイザリー業務を依頼したい場合は、メガバンクよりも地方銀行の方が比較的低価格に設定されているため金額的には活用しやすいといえます。

それぞれの報酬の内容について、以下、具体的に見ていきます。

1.着手金

「着手金」は、M&Aを進めるための準備に必要となる料金です。具体的な準備に入る前の相談は無料のケースがほとんどですが、本格的な作業を始めるタイミングで着手金が発生します。なお着手金は成約しなかった場合も返金されることは少ないものです。それだけに、着手金が不要だったり返金に応じたりする場合は良心的だといえるでしょう。それは銀行に限りません。

着手金の金額はケースバイケースのため銀行によりますが、銀行より安いとされる仲介会社でも一般的に数十万~200万円となります。銀行ではそれ以上になると考えておきましょう。具体的な金額は銀行に確認するのが間違いありません。

2.中間報酬

「中間報酬」は基本合意書を締結したときに支払う報酬です。中間報酬は成功報酬の一部という位置づけで、M&Aが最終的に成約したときの成功報酬は総額からこの中間報酬を引いた額を支払います。中間報酬は仲介会社の場合で成功報酬額の10~20%ですが、銀行の場合は仮に仲介会社と同じ割合でも仲介会社より高くなる可能性があります。そもそもの成功報酬額が高く設定されているためです。

中間報酬の支払いと同じく、基本合意に達したタイミングで「デューデリジェンス」を行うのが一般的です。デューデリジェンスは、売り手となる企業について買い手が事前に調査することを指します。

デューデリジェンスは、譲渡企業の実態を事前に把握して、M&Aのリスクや将来性・価格の妥当性などを判断する材料とするために行われます。また買収後の経営統合に向けた準備材料にも活用されます。

調査の範囲はケースバイケースで、主に財務・法務・事業などが対象となります。専門的な内容になるため、対象に合わせて弁護士や税理士・公認会計士などに依頼するのが一般的です。

3.成功報酬

「成功報酬」は、最終的な契約を締結・成約したときに発生する報酬です。銀行・仲介会社を問わず、一般に「レーマン方式」という計算方法で金額が決まります。

レーマン方式はいわゆる「逓減(ていげん)式」の計算方法で、譲渡額によって報酬料の割合が変わっていく計算方法です。金額を段階分けして、譲渡額のうち低い部分は報酬料の率を高く、高い部分ほど報酬料率を低く設定します。具体的には、以下の基準が一般的です。

  • 5億円までの部分:5%
  • 5億円を超えて10億円までの部分:4%
  • 10億円を超えて50億円までの部分:3%
  • 50億円を超えて100億円までの部分:2%
  • 100億円を超える部分:1%

上記の形を基準とした場合に、譲渡額が7億円の例の成功報酬がいくらになるかを考えてみましょう。5億円までは報酬料率5%で5億円×0.05となり2,500万円、譲渡額7億円のうち5億円を超える2億円分は報酬料率4%なので2億円×0.04で800万円となります。報酬の総額は、両方の金額を合計した3,300万円となります。ここから中間報酬で支払い済みの金額を引いた額が最後に払う額となります。

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M&Aについて銀行に相談する際の注意点

M&Aについて銀行に相談する際の注意点をまとめます。具体的には次の点が挙げられます。

  • 利益相反取引になる可能性がある
  • 譲渡側の利益を優先される可能性がある

前者は主に売り手側・譲渡側が、後者は主に買い手側・譲受側が注意すべきポイントです。それぞれについて具体的に見ていきましょう。

利益相反取引になる可能性がある

まず、銀行に M&Aについて相談した場合「利益相反取引」になる可能性があります。利益相反取引とは、一方にとっては利益になるけれどももう一方にとっては不利益・損となる行為・取引のことです。M&Aにおいては、銀行は買い手(譲受側)に有利な取引にまとめようとする可能性が高くなります。

そもそも銀行の本業は融資です。M&Aを本業の融資につなげたいという考えがあります。M&Aの当事者で将来的に融資先となる可能性が高いのは、事業売却する売り手(譲渡側)でなく事業を購入して継続させる買い手(譲受側)です。そのため買い手に有利な条件でM&Aが成立すれば、銀行からすれば融資の可能性が高まることになります。また、融資した場合も回収できないリスクが低くなることにもなります。

もしも売り手としてM&Aを考えている場合、アドバイザーには仲介会社を活用することで対策できます。銀行を相談相手とするのは買い手のときにした方がよいでしょう。

またほかの対策としては、自社で適正価格の概算を出してみることが大切です。適正価格の概算は会社の純資産と数年分の営業利益の合計で計算できます。おおまかな金額を自社でも計算しておき、条件が適正か確認するようにしましょう。

譲渡側の利益を優先される可能性がある

銀行側は、先ほどの話とは逆に譲渡側(売り手側)の利益を優先させる場合もあります。譲渡側の利益を優先される場合は、いくつかのパターンに分けられます。

まず銀行が譲渡側のアドバイザーとなった場合です。譲渡側の利益となる買収金額が高いほど、銀行の成功報酬も高額となります。そのため、成功報酬の額を上げるために譲渡側の利益を高めようとするというパターンです。

とくに譲受側の融資を行いつつ譲渡側のアドバイザリーを行う場合は、譲渡側の利益を優先する可能性が高まります。譲渡側の買収金額を高額にして成功報酬を高めつつ、譲受側の支払いを増やして融資を必要とするようにさせる可能性もあるからです。

また仲介に近い地方銀行の場合などで譲渡側が融資先の場合に、融資資金を回収できないリスクを減らすために譲渡側に好意的な対応を行うパターンもありえます。

どのパターンについても、対策としてはやはり適正価格を自社の側でも計算しておくことが大切になります。ただし、基本的には譲受側に有利にする可能性の方が高いといえます。

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まとめ     

M&Aにおける銀行の役割は、融資を担当する場合があるということ、税理士などと違ってトータルなサポートを行うことが特徴的だといえるでしょう。ただし、銀行にアドバイザリー業務を依頼するかどうかは、売り手側か買い手側かを考慮して検討することが必要です。売り手側にせよ買い手側にせよ、自社にとって心強いパートナーを見つけることがM&Aの成功に不可欠です。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、高い専門性を武器にM&Aのサービスを提供する会社です。]専門知識を持ったコンサルタントが在籍しており、ご相談から成約まで一気通貫でサポートします。

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