居酒屋のM&Aや売却を行うメリットは?業界の動向や取引相場などを解説
2024年3月1日
このページのまとめ
- 居酒屋のM&Aは同業者間での取引が多い傾向にある
- 居酒屋のM&Aにおける取引相場は100万円~250万円程度が目安
- 銀行やM&A仲介会社など居酒屋のM&Aに関する相談先は複数ある
居酒屋業界は、若年層のアルコール離れや健康志向の高まりなどが理由で売上は減少傾向にあります。特に、新型コロナが流行した2020年以降は、感染対策として外出や密な空間を避ける人が急増し、居酒屋離れが進行しているのが現状です。
こうした経営が不安定な状況で、居酒屋のM&Aを検討する経営者が増えています。本コラムでは、居酒屋業界の動向やM&Aを行うメリット、取引相場の目安について解説します。
目次
居酒屋業界をめぐる動向や現状
居酒屋のM&Aを検討するにあたって、業界を取り巻く動向や現状を正しく把握することが重要です。居酒屋業界をめぐる動向や現状において、次のような傾向が見られます。
- コロナ禍以前と比べて客足が少ない
- 同業間のM&Aが多い傾向にある
動向や現状について詳しく解説します。
コロナ禍以前と比べて客足が少ない
若年層のアルコール離れや健康志向・節約志向の高まりなどの理由で、習慣的に居酒屋を訪れる人は、かつてに比べて減少傾向にあります。特に、新型コロナが流行した2020年以降は、緊急事態宣言による外出自粛や休業要請で客足はさらに遠のいているのが現状です。
時が過ぎコロナが常態化した状況でも、客足はなかなか戻らず居酒屋離れが進んでいます。また、居酒屋の売上を大きく左右する大規模宴会も減り、収益に多大な影響を受ける居酒屋も少なくありません。居酒屋に完全に客足が戻るには、もう少し時間がかかると考えられています。
同業間のM&Aが多い傾向にある
居酒屋業界のM&Aは、同業者間での取引が多い傾向にあります。飲食店を経営する企業が複数の事業を展開するために居酒屋を買収したり、地域内での差別化を強化するために同じエリア内にあるほかの居酒屋を買収したりする事例が多く見られます。
また、近年は若年層のアルコール離れや健康志向の高まりなどの理由により、お酒の需要が伸び悩んでいる状況です。こうした状況を打開するには、利用者のニーズや価格意識を正しく把握し、M&Aで競合他社との差別化を図るなど柔軟な経営戦略が求められています。
居酒屋業界でM&Aが行われる理由
居酒屋業界でM&Aが実施される理由には、次のようなことが挙げられます。
- M&Aで財務状況を立て直すため
- 事業規模を拡大して競争力を上げるため
それぞれの理由について詳しく解説します。
M&Aで財務状況を立て直すため
居酒屋業界でM&Aが実施される理由として、財務状況を立て直すことが挙げられます。特に中小企業は、豊富な資金力のある大手企業に比べると、経営が不安定になる傾向が高いです。M&Aで資金力のある企業の傘下に入れば、安定した財務基盤のもとで居酒屋を経営できます。
また、中小企業や個人経営の場合、財務状況の立て直しに加えて後継者問題に直面する経営者も多いです。後継者がいない場合は、黒字経営でも廃業に追い込まれる経営者もいます。先々のことを踏まえ、居酒屋を売却して第三者に経営を任せたいと考える人も少なくありません。
事業規模を拡大して競争力を上げるため
居酒屋業界でM&Aが実施されるのは、事業規模を拡大して競争力を上げる目的があります。同業者同士でM&Aを実施すると、ノウハウやサービス体制、事業エリアなどを活用することが可能です。財務基盤の強化や事業規模の拡大などを実現でき、同業他社との競争力を強化できます。
中小企業庁が発表した2021年版小規模企業白書「第3節 開廃業の状況」によると、飲食店は他の業種に比べて廃業率が高い業界です。居酒屋業界で生き残るには、競争力強化を図ることが求められています。居酒屋を運営する会社が競争力の強化を図るために、M&Aを実施する事例が多く見られます。
参照元:中小企業庁2021年版小規模企業白書「第3節 開廃業の状況」
居酒屋がM&Aを実施するメリット
居酒屋のM&Aを実施することにより、次のようなメリットを得られます。
- 売り手側は買い手の資金力・ブランド力を活用できる
- 買い手側は事業の拡大や競争力の強化ができる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
売り手側は買い手の資金力・ブランド力を活用できる
居酒屋のM&Aを実施することで、買い手の資金力やブランド力を活用できるメリットがあります。たとえば、資金力のある企業の傘下に入れば、経営の安定化に加えて、中長期的な事業成長を図ることが可能です。採算が取れない事業を継続するのが困難な場合は、M&Aが有力な選択肢になります。
また、買い手のブランド力を活かせるのも売り手側のメリットです。認知度の高い居酒屋を運営する企業に買収してもらえれば、より多くの集客を見込める可能性があります。M&Aにより買い手の仕入先から安く食品を買える場合もあるため、売上や利益率の向上につながるケースも多いです。
買い手側は事業の拡大や競争力の強化ができる
買い手側のメリットは、事業拡大や競争力の強化が期待できることが挙げられます。居酒屋業界は、競合が多く生存競争が激しいです。特に、近年はアルコール離れや健康志向の高まりなどの理由により、客足が遠のいています。M&Aで既存事業、または新規事業を拡大できれば利益を追求できます。
また、競争力の強化ができるのも買い手側のメリットです。居酒屋のM&Aにより、新たなエリアに進出できたり売り手のメニューやコンセプトを取り入れたりできます。競争力を強化できれば、競合他社との差別化を図れ、顧客から選んでもらえる居酒屋になれる可能性があります。
売り手の居酒屋が異なる客層を持っている場合、常連客を取り込めれば利益向上も期待できるでしょう。
居酒屋業界におけるM&Aの取引相場
居酒屋1店舗を取引対象とするM&Aの取引相場は、100万円〜250万円程度が目安です。数十店舗の居酒屋を運営する大手企業同士のM&Aでは、より高額な取引価格になるケースもあります。
居酒屋の取引価格を決定する主な要素は、売上高・ブランド力・店舗数・設備などが挙げられます。詳細な取引価格を把握したい場合は、自社の状況と類似する事例を参考にしましょう。
ただし、これらの取引相場はあくまで目安です。実際にM&Aを進めると、想定した金額で売却できなかったり想定外の費用が発生したりする場合があります。
居酒屋のM&Aを成功に導くポイント
居酒屋のM&Aを成功させるには、次のようなポイントが挙げられます。
- 自社の強み・魅力を整理する
- 譲歩できる部分・できない部分を明確にする
- 従業員に説明する時期を計画する
- 引き継ぎ期間を計算して計画する
- M&Aの専門家と相談しながら進める
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
1.自社の強み・魅力を整理する
買い手は、居酒屋の価値を決算だけで判断するわけではありません。優良な顧客の多さや店舗数、他社にない独自サービスなども重要視しています。売り手がM&Aを検討する場合、決算以外の判断材料となる自社の強みや魅力を整理しておくことが重要です。
自社の強みや魅力は、競合他社と比べて評価しましょう。自社の強みが競合他社に劣っている場合、買い手側は肯定的に判断してくれない場合があります。
また従来は、買収した居酒屋を自社の色に染める手法が一般的でした。しかし現在は、売り手側の特色を活かした店舗展開が人気傾向にあり、M&Aでも独自性が求められています。居酒屋のM&Aを成功させるには、自店舗の強みや魅力を明確にしておくことが重要です。
2.譲歩できる部分・できない部分を明確にする
居酒屋のM&Aを成功させたいなら、譲歩できない部分を明確にすることが重要です。M&A全般にいえることですが、基本的に買い手の交渉力が強く、条件などに関する取り決めを優位に進められる傾向にあります。売り手は円滑に交渉を進めるために、買い手に対して譲歩しすぎる事例も多く見られます。売り手が買い手の条件に対して、納得して譲歩している分には問題ありません。
しかし、単に交渉を進めるために譲歩すると、売り手の社員から不満が発生する可能性があります。実際に売り手の経営層の中で意見の不一致が発生し、その後の交渉が進まず、交渉途中に買い手が離脱するといった失敗事例もありました。M&Aの交渉を進める前に、「どこまで妥協できるか」「譲れない条件は何か」などを社内で明確にしておくことが重要です。
3.従業員に説明する時期を計画する
居酒屋のM&Aでは、従業員獲得も買い手の買収理由となる場合があります。しかし、会社に愛着が強い従業員など、M&Aで売却されることを知ると退職を考えるケースもあるでしょう。勤務期間が長くスキルやノウハウのある従業員が退職してしまうと、契約が思うように進まない可能性があります。
こうした事態を避けるためにも、M&Aに関する従業員への説明は慎重に進めることが重要です。ただし、買収が決まる直前まで従業員に知らせないと、会社に対する不信感につながる場合があります。従業員との信頼関係が崩れないように、タイミングを見極めて情報を公開しましょう。
従業員にM&Aに関する情報を伝えるときは、売却の理由や今後の待遇、店舗方針の変化などについて説明します。
4.引き継ぎ期間を計算して計画する
居酒屋のM&Aを行う場合、交渉が成立したら少しでも早く通常業務に専念したいと考える経営者も少なくありません。しかし、契約が成立した後は、取引先への挨拶や実務の説明など引き継ぎ期間を設けるのが通常です。なるべく早く済ませたい経営者も多いですが、引き継ぎをしっかり行わないと、その後の業務がスムーズに進まない場合があります。
引き継ぎ期間の目安は3ヵ月〜1年程度といわれますが、実際に引き継ぎを始めると想定した以上に時間がかかる場合が多いです。しかし、あまりに引き継ぎが長引くと、社内融和が遅れてしまう可能性があります。必要な期間を計算して引き継ぎ計画を立てるなど、準備を怠らないことが大切です。
5.M&Aの専門家と相談しながら進める
居酒屋業界では、同業間でのM&Aが盛んに行われています。しかし、成功する事例がある一方、M&Aに失敗した事例があるのも事実です。失敗要因はさまざまなことが考えられますが、買い手の要因としてはデュー・デリジェンス不足や無茶な価格設定などが挙げられます。
売り手の失敗要因には、情報漏洩や不誠実な対応、条件を譲歩しすぎるなどがあります。M&Aで失敗しないためには、居酒屋業態や外食業界に精通したM&Aの専門家に相談することが重要です。豊富な知識と経験を有するプロからアドバイスを受けられるため、M&Aの成功率を高められます。
居酒屋のM&Aを行う場合の注意点
居酒屋のM&Aは多くのメリットがある一方、買収にはリスクが伴うのも事実です。M&Aを進めるにあたって、次のようなポイントに注意しましょう。
- 衛生管理や労務面の法令違反がないか確認する
- 株式譲渡でのM&Aは債務まで引き継がれる
それぞれの注意点について詳しく解説します。
衛生管理や労務面の法令違反がないか確認する
居酒屋のM&Aを行う場合、衛生管理や労務面の法令違反がないか確認しましょう。衛生管理に関していえば、2021年6月から原則としてすべての食品関連事業者を対象に「HACCP(ハサップ)」に応じた衛生管理が義務化されました。
HACCPとは、危害防止につながる重要な工程を徹底管理して、安全性を確保しようとする衛生管理の手法のことです。買収する居酒屋がHACCPを実施していない場合、買い手はお客様の信頼を失うだけでなく、罰則を受ける可能性があります。
また、居酒屋が深夜0時以降にお酒を提供して営業する場合は、管轄の警察署に深夜酒類提供飲食店届出を提出することが必要です。
ほかにも、外国人労働者のビザ有効期限や労働環境などの把握も必要になります。M&A成立後に衛生管理や労務面で法令違反があると、訴訟に発展する可能性もあります。買い手は賠償対象の居酒屋にデューデリジェンスを実施するため、衛生管理や労務面の問題を隠すことはできません。
参照元:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」
株式譲渡でのM&Aは債務まで引き継がれる
M&Aの契約後に株式譲渡を行うと、買い手は資産だけでなく債務を引き継ぐことになります。株式譲渡とは、売り手の株主が保有株式を買い手に売却し、経営権を引き継ぐ手法のことです。
株式譲渡は、手続きが比較的簡単で短期間で完了します。また、従業員の雇用契約や事業で必要な許認可などが引き継がれる点においても売り手と買い手の双方にメリットのある手法です。
しかし、帳簿上に載らない簿外負債を引き継ぐリスクがあるため、契約後のトラブルを防ぐには事前の確認が必須です。M&A案件で、株式譲渡の手続きが完了してから多額の簿外債務が発覚したという失敗事例もあります。株式譲渡には、こうしたリスクがあることを理解しておくことが必要です。
居酒屋のM&Aを相談できる専門家
居酒屋のM&Aを進めるにあたって、疑問や悩みを抱える経営者もいるはずです。居酒屋のM&Aを相談できる専門家には、次のようなものが挙げられます。
- M&A仲介会社
- 事業引継ぎ支援センターなどの公的機関
- 銀行などの金融機関
- 弁護士や会計士などの専門家
それぞれの専門家について詳しく解説します。
1.M&A仲介会社
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、中立的な支援を行う会社のことです。具体的には、M&Aに関する相談や譲渡・譲受企業の候補先選定、デューデリジェンスなどを行います。M&A仲介会社を利用する際にかかる主な費用は、着手金・中間報酬・成功報酬です。ただし、M&A仲介会社によっては、着手金や中間報酬は無料の場合があります。
居酒屋のM&Aを前向きに検討しているのであれば、M&A仲介会社に相談するのがおすすめです。特に、M&Aを行うのが初めての場合、具体的に何から始めればいいかわからないことも多いでしょう。また、どのような譲渡・譲受企業が自社に合っているのか判断に困ることもあるはずです。M&A仲介会社に相談すれば、M&Aに関するさまざまな疑問や不安を解消できます。
実際にM&Aを進める場合は、自社にマッチする買い手企業を選定してくれるため、M&Aを成功に導きやすくなります。また、豊富な知識と経験を有したプロに一連の作業を任せられるため、契約までスムーズに進めることが可能です。無料相談を提供しているM&A仲介会社も多いため、M&Aに関する疑問や不安がある場合は気軽に利用してみましょう。
2.事業引継ぎ支援センターなどの公的機関
商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関でも、M&Aに関する相談を受け付けています。商工会議所とは、商工会議所法に基づいて市部に設立された特別認可法人のことです。中小企業の振興や地域経済の活性化などの実現を目的としています。経営者が商工会議所の会員になれば、M&Aに役立つ情報や支援を受けられます。
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的相談窓口です。中小企業の事業承継に関する相談を受けています。相談に対応するのは、中小企業診断士や金融機関OB、公認会計士、税理士など経験豊富な専門家たちです。また、事業承継・引継ぎ支援センターでは、相談対応だけでなく、案件に合わせた支援を提供してもらえるメリットもあります。
たとえば、M&A仲介業者や金融機関を紹介してもらえたり、創業支援機関が連携してマッチングから成約に至るまで支援してもらえたりします。全国47都道府県に設置されており、自宅から近い窓口で相談することが可能です。相談は無料であるため、費用を抑えたい方にもおすすめです。
3.銀行などの金融機関
M&Aの相談先として、銀行や証券会社などの金融機関があります。銀行は財務に関する専門的な知識を有しており、資金調達に関する相談も行いやすいです。また、経営状態を測る指標となる損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を用いて企業価値を分析し、適正な価値を算出してくれる場合もあります。企業価値を正しく把握しておけば、買い手と交渉を行う際に役立つことが多いです。
また、金融機関によっては、M&Aサポートの専門部署がある場合があります。過去に実施したM&Aの膨大な情報が蓄積されており、専門的かつ手厚い支援を受けられるのも魅力です。相談の段階では、手数料がかからないことも多いため費用負担もかかりません。気軽に相談したいのであれば、普段からお付き合いのある取引先銀行に相談するのがおすすめです。
4.弁護士や会計士などの専門家
M&Aの相談を弁護士や会計士などの専門家に行う方法もあります。M&Aを実際に進める場合、デューデリジェンスが行われるのが通常です。デューデリジェンスとは、買い手が企業の実態を把握するために行う事前調査のことを指します。デューデリジェンスを行う際、会計士は「税務に関する調査」、公認会計士は「財務に関する調査」を担当することが多いです。
税務や財務などの専門知識や経験を活かして、有益な情報やアドバイスをもらえる場合があります。また、M&Aは契約を進めるにあたって、秘密保持契約書や基本合意書、最終契約書などさまざまな書類作成が必要です。これらはすべて法的な書類であるため、不備なく進めなければいけません。弁護士は、法律家の目線で書類を確認してくれるため安心して契約を進められます。
まとめ
若年層のアルコール離れや健康志向の高まりなどの影響で、習慣的に居酒屋を訪れる人は、かつてに比べて減少傾向にあります。居酒屋の売上を大きく左右する大規模宴会も減り、収益に多大な影響を受けているのが現状です。こうした問題を解決するべく、現在は同業者間でのM&Aが進んでいます。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域に特化した専門コンサルタントが多く在籍しています。これまで培った知識や経験を活かして、M&Aの相談から成約まで一貫したサポートが可能です。完全成功報酬体系を採用しており、M&A成約まで成功報酬は発生しません。(中間金のみ買手企業よりいただいております。)
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社では、無料相談を受け付けています。居酒屋のM&Aを検討している方は、一度弊社にご相談ください。