警備業界や警備会社のM&A動向と6つの成功事例を解説
2024年3月1日
このページのまとめ
- 警備業界では人材や設備の獲得と異業種や海外への進出、事業承継のためのM&Aが増加
- 警備業界のM&Aで売り手のメリットは後継者問題解決や売却益の獲得、債務の解消など
- 警備業界のM&Aで買い手のメリットは事業拡大の実現と人材や警備設備の獲得
- 警備業界のM&Aで売り手の成功ポイントは取引先確保と在籍警備員のスキルの高さ
- 警備業界のM&Aで買い手の成功ポイントは徹底したデューデリジェンスの実施など
「警備業界のM&Aの現状はどうなっているのだろうか?」とお考えの方も多いのではないでしょうか。警備業界では、人材確保や設備獲得、異業種参入や海外進出、事業承継などを目的とするM&Aが増加中です。
本コラムでは、警備業界でのM&Aにおける売り手・買い手それぞれのメリットや成功させるポイントなどをまとめました。また、警備会社のM&Aの成功事例も紹介しています。
目次
警備業界・警備会社とは?定義と事業内容
警備業界・警備会社のM&Aについて考える前に、まずは、警備業とは何であるか、警備業界の事業内容とはどんなものかを確認しておきましょう。警備会社は、警備業法という法律で規制されている業界です。そこで、ここでは警備業法の規定をとおして、警備業界・警備会社の定義、業務の区分を説明します。
警備業の定義
警備業とは、他人からの依頼に対応して、盗難および人や車の事故の発生を警戒・防止したり、身辺警護をしたりすることです。警備業法第2条を要約すると、警備業の定義はこのようになります。そして、警備業は警備業法第4条の規定により、都道府県公安委員会から認定を受けた会社しか業務を行えません。
警備業法第3条では、警備業の認定を受けられない条件も示されています。主な条件は以下のとおりです。
- 破産手続開始決定後、復権していない
- 禁固刑、罰金刑の執行後、5年未満
- 過去5年以内に法令違反している
- 反社会的勢力と関係がある
- 覚醒剤、あへん、麻薬、大麻、アルコールなどの中毒者
- 心身障害が認められる
また、警備業法第16条では、警備業者とその従業員(警備員)は、法令で定められた服装(制服)を着用することが義務付けられています。
警備業界の事業内容
警備業法第2条により、警備業界の業務は以下の4つに大別されています。
- 1号業務:施設警備
- 2号業務:雑踏・交通誘導警備
- 3号業務:運搬警備
- 4号業務:身辺警備
1号業務の施設警備とは、公共施設、医療施設、商業施設、オフィスビル、空港、工場、事務所、住宅などでの防犯・防災警備や、ショッピングセンター、美術館、工場、事務所、住宅などにカメラやセンサーなどの機械を設置して行う防犯・防災警備などです。施設警備には以下の種類があります。
- 施設警備
- 巡回警備
- 保安警備
- 空港保安警備
- 機械警備
2号業務の雑踏・交通誘導警備とは、スタジアムでのスポーツ観戦、コンサート、マラソン大会、花火大会などで行う雑踏警備と、駐車場、建築工事現場、道路工事現場などで行う交通誘導警備です。
3号業務の運搬警備には、美術品の輸送、コンビニATM・銀行・小売店間の現金輸送などの貴重品運搬警備と核燃料物質等危険物運搬警備があります。
4号業務の身辺警備は、いわゆるボディーガードです。それ以外にも、高齢者や子ども、女性などの見まもりサービスも行っています。
警備業界・警備会社の歴史と現状
ここでは、警備業界・警備会社の大まかな歴史と近年における市場規模の移り変わりを説明します。
警備会社の歴史
日本で最も社歴が古い警備会社はセコムです。1962(昭和37)年に日本警備保障を設立し、後に商号を改めました。設立のきっかけは、創業者が、前年、ヨーロッパには警備会社があることを知ったからだそうです。当時の日本は高度成長期であり、建物や道路の建設ラッシュ、1964(昭和39)年の東京オリンピック開催などの時代背景がありました。
1965(昭和40)年にはガードマンを主人公にしたテレビドラマが大ヒットし、警備会社の社会的認知も進むなか、綜合警備保障が設立され、翌1966(昭和41)年には、セントラル警備保障と東洋テック(当時は東洋警備保障)も設立されています。そして、1972(昭和47)年には警備業法が制定されました。
その後、日本経済の成長に合わせるように、さまざまな分野へ警備業は広がりを見せています。カメラやセンサー、ドローンを使った機械警備や、災害時の救急活動などがその一例です。
警備業界の市場規模
警察庁の「令和4年における警備業の概況」によると、近年の警備業界の市場規模は以下のように推移しています。
- 2018(平成30)年:3兆5,341億円
- 2019(令和元)年:3兆5,534億円
- 2020(令和2)年:3兆4,734億円
- 2021(令和3)年:3兆4,537億円
- 2022(令和4)年:3兆5,250億円
コロナ禍にあったことを鑑みれば、この5年間はほぼ横ばいだったといえるでしょう。また、市場規模が巨大であることも特徴です。同資料によると、警備会社の数は以下のように推移しています。
- 2018年:9,714社
- 2019年:9,908社
- 2020年:10,113社
- 2021年:10,359社
- 2022年:10,524社
コロナ禍に関係なく毎年、警備会社が増えている状況です。巨大な市場を狙って、毎年、新規参入する警備会社があると推察されます。
参照元:警察庁「令和4年における警備業の概況」
警備業界・警備会社が抱える課題
警備業界・警備会社の最大の課題は、慢性的な人手不足です。一般社団法人全国警備業協会の「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」によると、約93%の警備会社が警備員不足に陥っています。それを裏付けるように、厚生労働省が2020年に発表した業種別の有効求人倍率は、警備員(保安業)が6.26 倍で、全職業の平均1.08倍よりもはるかに高い数値でした。
警備業界が人手不足に陥っている理由は、勤務時間の長さと、それに比べて賃金が高くないことから、特に若年層から敬遠されているためとされています。警備業界としては人手不足解消のため、長時間勤務の是正、昇給制度の充実などの対策が急務です。
参照元:全国警備業協会「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」
警備業界・警備会社のM&Aの動向
ここでは、警備業界・警備会社のM&A動向を分析します。
- 人材確保・設備投資を目的とするM&Aが増加
- 異業種への進出、海外進出を目的としたM&Aが増加
- シナジー獲得を目的とした異業種間のM&Aが増加
- 事業承継を目的とするM&Aが増加
上記の4点が警備業界・警備会社で目立つM&Aの動向です。それぞれの内容を説明します。
人材確保・設備投資を目的とするM&Aが増加
警備業界・警備会社のM&Aでは、人材確保と設備獲得を目的とする同業者間のM&Aが増えています。まず、人材難が最大の課題である警備業界・警備会社にとって、警備業務の経験を有していて教育の手間がかからない人材を獲得できるM&Aは、人材確保に打ってつけの手段です。
また、設備獲得とは、機械警備のための設備獲得を意味します。防犯センサーや防犯カメラ、ドローンなどを使って行う機械警備では、単に設備投資して機械や設備をそろえればいいわけではありません。ソフトウェアを含めてシステムを構築し運用するノウハウと、それを扱える人材が重要です。M&Aであれば、買い手は機械警備のシステム・人材・設備を丸ごと取得できます。
異業種への進出、海外進出を目的としたM&Aが増加
警備業界・警備会社のM&Aでは、異業種への進出や海外進出を目的としたM&Aも増えています。警備事業は景気の影響をあまり受けない事業として市場は安定していますが、逆に言えば市場規模は横ばいです。
警備事業だけでは大きく業績を伸ばせないと判断した警備会社の場合、積極的に異業種へ進出し事業の多角化を行っています。また、国内市場ではなく海外市場へ進出することで警備事業の収益拡大を目指す企業も、理由は同様です。なお、警備事業の安定性に目をつけた異業種企業が、警備事業参入のためにM&Aを実施するケースもあります。
シナジー獲得を目的とした異業種間のM&Aが増加
警備業界・警備会社の行う異業種とのM&Aでは、シナジー効果創出を目的とするM&Aも増えています。シナジー効果とは、売上高や利益などが単なる合算を超えた結果をもたらすことです。したがって、M&Aの相手は、異業種といっても警備事業と何らかの関連性がある事業を行っている企業になります。
具体的には、老人の見守りサービスを行う警備会社では、顧客層が同じということで介護事業に進出したり、機械警備のシステムをより高度化させたい警備会社は、システムやソフトウェア開発会社を買収したりなどが一例です。
事業承継を目的とするM&Aが増加
近年の日本では、警備業界・警備会社に限らず、事業承継を目的に行われるM&Aが増えています。現在、国内の中小企業の多くが後継者不在です。後継者不在のまま経営者が引退を迎えた場合、会社は廃業するしかありません。会社が廃業するとなると、従業員は解雇、顧客はサービスが受けられなくなり、取引先は仕事を失います。
廃業は地域経済に大きなダメージをもたらすものなのです。そのような状況にならないため、国もM&Aによる事業承継を盛んに推奨しています。M&Aで警備会社を売却することで、買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現し、廃業を免れるのです。
警備業界におけるM&A:売り手側のメリット
ここでは、警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手側のメリットを分析します。
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の雇用が守られる
- グループ傘下として利益増が期待できる
- M&Aによりまとまった資金が得られる
- 会社の債務を解消できる
主なメリットは上記の5点です。それぞれの理由を説明します。
後継者問題を解決できる
警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手のメリットの1つは、後継者問題の解決です。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」によると、日本の中小企業の後継者不在率は57.2 %です。この調査は全国約27万社に対し行われたもので、後継者不在率は減少傾向にあるとはいうものの、いまだに高い水準にあるといえます。
後継者不在のまま経営者が引退時期を迎えれば、会社は廃業するしかありません。しかし、M&Aで警備会社を売却すれば、事実上、買い手が後継者(新たな経営者)となるため、後継者問題は解決します。
参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」
従業員の雇用が守られる
警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手のメリットとして、従業員の雇用も守れます。後継者不在のまま経営者が引退すれば、会社は廃業です。会社が廃業となれば、従業員は解雇されて職を失います。従業員の家族にも迷惑がかかるでしょう。従業員によっては、解雇後、同じ条件の職はなかなか見つからないかもしれません。
しかし、警備会社をM&Aで売却すれば、基本的に会社はそのまま存続します。人手不足のご時勢であり、従業員の雇用はそのまま継続されるでしょう。
グループ傘下として利益増が期待できる
警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手のメリットには、大手企業の傘下となって業績の安定・向上を図れることもあります。中小企業が単独で事業を行う場合、特に資金面で余裕がありません。一方、M&Aで大手企業に警備会社を売却すれば、親会社の資本力を背景に、まず財務面が安定します。
さらに親会社のブランド力やグループ会社との協業など、さまざまな経営資源を活用できるようになるため、警備会社の業績向上が期待できるでしょう。
M&Aによりまとまった資金が得られる
警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手がオーナー経営者の場合、売却益を得られるメリットがあります。中小企業の場合、オーナー経営者やその家族が警備会社の株式のほとんどを持っている場合も多いでしょう。M&Aスキーム(手法)に株式譲渡を選べば、自身が所有する株式を売却することで売却益が得られます。
警備会社の経営状態次第ですが、それなりにまとまった金額が手に入るでしょう。新たに事業を起こす資金でも、引退後の生活資金でも、自由に使える資金を獲得できます。
会社の債務を解消できる
警備業界・警備会社のM&Aにおける売り手が株式譲渡で会社を売却した場合、会社の債務からも解放されます。それは、株式譲渡を行った場合、会社の債務は買い手に引き継がれるからです。
また、警備会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者が個人保証や個人資産の担保差し入れを行っていた場合でも、債務がM&Aの買い手に引き継がれることで、個人保証や担保は基本的に解消されます。ただし、金融機関との話し合いは必要になるので、その点は注意しましょう。
警備業界におけるM&A:買い手側のメリット
警備業界・警備会社のM&Aにおける買い手側のメリットも確認しておきましょう。主なメリットは以下の2つです。
- 効果的かつ効率的に事業拡大できる
- 人材、警備設備を獲得できる
それぞれの内容を説明します。
効果的かつ効率的に事業拡大できる
警備業界・警備会社のM&Aにおける買い手のメリットの1つは、効果的かつ効率的に事業拡大できることです。警備会社が同業者をM&Aで買収する場合、シナジー効果を得やすく売上増が望めます。
また、新たな営業エリアの獲得や市場シェアも上がり、事業は拡大するでしょう。警備会社が異業種をM&Aで買収した場合は、事業の多角化が実現し会社全体の事業はやはり拡大します。
人材、警備設備を獲得できる
警備業界・警備会社のM&Aにおける買い手のメリットには、人材、警備設備の獲得も挙げられます。人材不足の解決手段としてM&Aで警備会社を買収すれば、警備業務の経験を持つ人材を一度にまとめて獲得可能です。しかも、新人と違って教育をする手間と時間とコストも発生しません。
また、機械警備事業を行う場合、機械や設備に加えてシステムなどのソフトウェア、運用するノウハウと人材も必要です。警備会社のM&Aでは、それらを一挙に獲得できます。
警備会社の売却価格相場を知る方法
ここでは、警備業界・警備会社のM&Aにおいて、売却額の相場を簡易的に計算する方法を紹介します。まずは、株式譲渡の場合の計算式です。
時価純資産額+(営業利益×2~5)
時価純資産額は純資産をそれぞれ時価に換算し合計したものです。営業利益は直近の年度のものを用います。営業利益に掛け合わせる数値が変動値となっているのは、業種の特性や対象企業の希少性の有無などによって評価が変わるためです(特殊な業種や希少価値の高い会社は「5」など大きな数値を掛け合わせる)。
事業譲渡の場合は以下のように計算します。
(譲渡対象資産の時価-譲渡対象負債の時価)+(譲渡対象事業の営業利益×2~5)
いずれの計算式も、簡易的に売却額の目安を知るために用いられるものです。正確な売却額を算出するには、公認会計士などに依頼し、企業価値評価(バリュエーション)のための専門的な計算手法で算定するプロセスを経る必要があります。
警備会社同士のM&A事例3選
ここでは、警備業界のM&A事例として、警備会社同士で行われた以下のM&A3件を紹介します。
- 日制警備:アムス警備を完全子会社化
- 綜合警備保障:海外の警備事業者を孫会社化
- セントラル警備保障:東亜警備保障を子会社化
それぞれ、どのような経緯、目的でM&Aが実施されたのか見てみましょう。
1.日制警備:アムス警備を完全子会社化
2023(令和5)年7月、センコーグループホールディングス(東京都)の完全子会社である日制警備(東京都)は、アムス警備(東京都)およびその子会社であるヒューマンセキュリティ(東京都)の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。
センコーグループホールディングスは、グループとして物流事業、商事事業、ライフサポート事業、ビジネスサポート事業を展開しています。その中のビジネスサポート事業の事業領域を拡充させるために2023年2月、警備事業を行う日制警備を完全子会社化しました。
アムス警備とヒューマンセキュリティも警備事業を行っています。センコーグループホールディングスとしては、グループ内の警備事業の人材獲得、シナジー効果創出を狙ってのM&Aです。
参照元:センコーグループホールディングス「東京地区の警備会社を新たにグループ化し警備事業を強化 ~センコーGHD傘下の日制警備がアムス警備を子会社化~」
2.綜合警備保障:海外の警備事業者を孫会社化
2023年6月、綜合警備保障(東京都)は、インドネシアの子会社PT. ALSOK BASS Indonesia Security Servicesを通じて、インドネシアのPT. Shield-On Service Tbk(以下SOS)の株式51.23%を取得し孫会社化する契約を締結しました。株式譲渡は同年8月までに実施される予定です。取得価額は公表されていません。
綜合警備保障は、ALSOKブランドで国内外において総合的に警備事業を展開しています。SOSは、インドネシアにて警備事業、駐車場管理事業、人材派遣事業、清掃事業などを行っている会社です。綜合警備保障としては、インドネシアおよびASEAN地域における警備事業の拡大を目的としています。
参照元:綜合警備保障「PT. Shield-On Service Tbk 株式の取得契約締結に関するお知らせ」
3.セントラル警備保障:東亜警備保障を子会社化
2023年4月、セントラル警備保障(東京都)は、東亜警備保障(栃木県)の株式74.7%を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。セントラル警備保障は、常駐警備、輸送警備、機械警備および監視機器などの販売と工事を行っています。
東亜警備保障は、栃木県内を中心に常駐警備、機械警備、運輸警備などを行っている企業です。セントラル警備保障としては、グループとしての収益最大化と、警備事業の地域補完を目的としてM&Aを実施しました。
参照元:セントラル警備保障「東亜警備保障株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
警備会社と異業種間のM&A事例3選
ここでは、警備業界のM&A事例として、警備会社と異業種間で行われた以下のM&A3件を紹介します。
- 綜合警備保障:異業種企業2社を完全子会社化
- アウトソーシング:警備事業会社2社を完全子会社化
- 綜合警備保障:三菱商事と資本業務提携
それぞれのM&Aの目的について確認してみましょう。
1.綜合警備保障:異業種企業2社を完全子会社化
2022年6月、綜合警備保障は、かんでんジョイライフ(大阪府)、かんでんライフサポート(大阪府)両社の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。綜合警備保障は、ALSOKブランドで国内外において警備事業を幅広く展開しています。
かんでんジョイライフ、かんでんライフサポートは、ともに関西電力のグループ会社でした。かんでんジョイライフは、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、訪問介護・介護サービスなどの事業を行っています。かんでんライフサポートは、有料老人ホーム、訪問介護・介護サービスなどの事業を行っている企業です。
綜合警備保障は、警備事業の周辺分野に事業領域を拡大するため、2012(平成24)年から介護事業に取り組んできました。今回のM&Aは介護事業強化が目的です。なお、かんでんジョイライフ、かんでんライフサポートは、それぞれ、ALSOKジョイライフ、ALSOKライフサポートに商号変更しています。
参照元:綜合警備保障「株式会社かんでんジョイライフおよびかんでんライフサポート株式会社の株式取得(子会社 化)に関するお知らせ」
2.アウトソーシング:警備事業会社2社を完全子会社化
2021年10月、アウトソーシング(東京都)は、アーク警備システム(東京都)とアークミライズ(東京都)それぞれの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。
アウトソーシングは多くの子会社を傘下に持ち、国内では技術系・製造系・サービス系アウトソーシング事業を、海外では技術系事業、製造系事業、サービス系事業を展開しています。
アーク警備システムとアークミライズは、ともに東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県で交通誘導警備と雑踏警備を行う警備会社です。アウトソーシングとしては、アウトソーシング事業とはサイクルが異なる事業や景気変動の影響を受けにくい事業への業容拡大を目的として、警備事業進出のためにM&Aを実施しました。
参照元:アウトソーシング「アークグループ2社の子会社化に関するお知らせ 」
3.綜合警備保障:三菱商事と資本業務提携
2020年12月、綜合警備保障は三菱商事(東京都)と資本業務提携契約を締結しました。資本業務提携の内容は、綜合警備保障が行う介護事業のサービス内容拡充のため、三菱商事の子会社である日本ケアサプライの株式32.1%を三菱商事より取得するものです。取得価額は公表されていません。
この株式譲渡により三菱商事の持つ日本ケアサプライの株式比率は74.78%から42.68%に減少しました。日本ケアサプライは、福祉用具のレンタル卸および販売卸事業、介護事業者向け食事サービス提供事業などを行っている企業です。綜合警備保障としては、三菱商事グループが持つ顧客基盤を自社の事業に活かす業務提携を目指しています。
参照元:綜合警備保障「三菱商事株式会社との資本業務提携に関するお知らせ」
警備業界のM&Aを成功させるためのポイント
最後に、警備業界・警備会社におけるM&Aの成功確率を上げるポイントを考えてみましょう。売り手側のポイント、買い手側のポイントに分けて解説します。
M&Aを成功させるための売り手側のポイント
警備業界・警備会社のM&Aで売り手側の成功確率を上げられるポイントは以下の2つがあります。
- 安定的な収入につながる取引先を確保する
- スキルの高い警備員を雇用する
それぞれの理由を説明します。
安定的な収入につながる取引先を確保する
警備業界・警備会社のM&Aで売り手側の成功確率を上げるポイントの1つは、安定的な収入につながる取引先を確保してあることです。定期的に発注を受けている取引先や、包括契約のような形式で受注を得ている取引先がある警備会社の場合、年間の売上や利益に一定のめどが立ちます。
警備会社の買い手からすれば、安定した収入がある売り手は非常に魅力的です。特に主要取引先として大きな企業が含まれていれば、よりアピール度は増すでしょう。警備業界・警備会社のM&Aでは、売り手の顧客リスト、取引先リストの重要度は高いのです。
スキルの高い警備員を雇用する
警備業界・警備会社のM&Aで売り手側の成功確率を上げるもう1つのポイントは、スキルの高い警備員を多く雇用していることです。警備業界・警備会社のM&Aでは、人材獲得を目的にM&Aを実施する買い手は多くいます。
売り手側が雇用している警備員のスキルが高かったり、経験が豊富だったりすれば、買い手からの評価は高まるでしょう。売り手がそのような人材を持つには、社内教育を充実させることが肝要です。警備業界では、以下の制度があります。存分に活用しましょう。
- 法定教育制度
- 警備員指導教育責任者制度
- 機械警備業務管理者制度
- 検定制度
特に、新人の入社時に行う新任教育だけでなく、既存の警備員に行う現任教育をしっかり行うのがポイントです。
M&Aを成功させるための買い手側のポイント
警備業界・警備会社のM&Aで買い手側の成功確率を上げられるポイントは以下の4つがあります。
- 買収先が抱えるリスクを確認する
- シナジー効果について慎重に調べる
- 社員の待遇改善を図る
- 海外の警備会社も含めて検討する
それぞれの具体的な内容を見てみましょう。
買収先が抱えるリスクを確認する
警備業界・警備会社のM&Aで買い手側の成功確率を上げられるポイントの1つは、売り手が抱えるリスクをデューデリジェンスで洗い出すことになります。デューデリジェンスとは、売り手企業に対して行う精微な調査のことです。
財務・税務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに、士業などの専門家を起用して調査します。M&Aのプロセスの中では、基本合意書の締結後、最終交渉の前に行われるのがデューデリジェンスです。
ここで売り手が持つリスクを把握できずにM&A後、何か問題が発覚した場合、M&Aが失敗する可能性すらあります。逆に、売り手のリスクの有無や内容を把握できれば、そのままM&Aを進めて大丈夫かどうかの判断が可能となり、M&Aの成功確率は上がるでしょう。
シナジー効果について慎重に調べる
警備業界・警備会社のM&Aで買い手側の成功確率を上げるポイントの2つ目としては、売り手との間でシナジー効果が得られるかどうかをよく検討することです。シナジー効果とは、M&A後、売上高や利益額などが単純合算を超えた数値となる相乗効果のことをさします。
具体的には、M&Aの売り手と買い手が異なるノウハウを持っていることで、顧客や取引先に新たなサービス提供が実現することや、スケールメリットにより業務の効率化やコストダウンが実現するなどです。
シナジー効果の検討も、デューデリジェンスで売り手の実態を把握することで可能になります。徹底したデューデリジェンスが肝要です。
社員の待遇改善を図る
M&A後、売り手企業の社員の待遇を改善することも、警備業界・警備会社のM&Aで買い手側の成功確率を上げるポイントの1つです。警備業界・警備会社のM&Aでは、一般的に買い手の方が企業規模が大きいでしょう。その場合、社員の待遇面を比較すると、売り手企業の方が低いことも多くあります。
仮に、待遇面をそのまま放置すると、買い手側企業の社員と売り手側出身の社員に格差があるままとなり、売り手側出身の社員は不満を持つでしょう。それが退職へとつながるのは十分、考えられることです。貴重な人材を失わないためにも、M&A後の社員の待遇の見直しは欠かせません。
海外の警備会社も含めて検討する
警備業界・警備会社のM&Aで買い手側の成功確率を上げる方法として、海外の警備会社の買収もあります。国内の警備業界の市場規模は飽和状態にあり、売上高は横ばいが続いている状態です。M&A後、売上高を大きく伸ばすことを目指すなら、海外市場に目を向けるのは、警備業界以外の産業でも広く行われています。
ただし、海外の警備会社の場合、商習慣や法令の違いなどがあり、交渉は慎重に進めなければなりません。国内のM&Aでも同様ですが、海外企業とのM&Aでは特に専門家を介した交渉をおすすめします。
まとめ
警備業界は、3兆5千億円を超える市場規模です。しかし、推移としては横ばいが続いており飽和状態にあります。そのような状況下、警備業界・警備会社では、異業種への参入や海外市場への進出を目的とするM&Aが盛んです。また、後継者不在の中小の警備会社が、M&Aで事業承継するケースも増えてきました。
総じて警備業界・警備会社ではM&Aが活発化しており、いつ自社がその立場になってもおかしくありません。事業承継、経営安定、事業拡大、新規参入など、それぞれの会社の状況に応じ、その解決手段としてM&Aは有効なものです。警備業界・警備会社においても、経営戦略の幅を広げるため、M&Aの知識を深めておくといいでしょう。
M&Aの知識を深める方法として、M&A仲介会社が行っている無料相談の活用をおすすめします。まだM&Aを決断していなくても、疑問点の相談なども可能です。気軽に相談してみましょう。
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