M&Aにおける投資銀行の役割は?各部門や仲介会社との違いについても解説

2024年8月22日

M&Aにおける投資銀行の役割は?各部門や仲介会社との違いについても解説

このページのまとめ

  • 投資銀行は、企業の資金調達を支援することが主な業務である
  • 投資銀行は、M&AのほかにもIPOや株式・債券の発行を支援する部門がある
  • 投資銀行のM&A支援は、戦略策定からクロージングまでのプロセスに関わる
  • 投資銀行のM&A支援は、大規模案件やクロスボーダー案件にも対応できるのがメリット

M&Aを検討している経営者の方のなかには、投資銀行の利用を検討している人も多いのではないでしょうか。投資銀行のサポートを受けることで、大規模なM&Aでもスムーズに手続きを進められるようになり、有意義なM&Aを実施できるでしょう。

このコラムでは、M&Aにおける投資銀行の役割から活用のメリットまで幅広く解説します。そのほか、投資銀行と商業銀行の違いも紹介するのでぜひお役立てください。

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投資銀行とは

ここでは、投資銀行の定義に加え、商業銀行やM&A仲介会社、証券会社との違いについて解説します。投資銀行の業務を理解するうえで類似する事業体との比較は欠かせません。比較のサマリは次のようになります。

種類主な業務主要顧客
投資銀行資金調達、M&Aアドバイザリー企業、機関投資家
商業銀行預金業務企業、個人
M&A仲介会社M&Aアドバイザリー、PMIサポート企業
証券会社資金調達、M&Aアドバイザリー企業、個人投資家、機関投資家

それぞれの特徴や違いについて、以降で詳しく紹介します。

投資銀行の定義

投資銀行は、金融機関の一種で、企業の資金調達やM&Aを支援する役割を担っています。資金調達としては、企業の初公開(IPO)や新株発行、社債の発行などに対応します。

資金調達を行う過程で、投資銀行は投資家と企業の間の橋渡しとなり、複雑な金融取引を円滑に進行させる役割を果たします。M&Aを行う際は、企業のM&Aのアドバイザーとしても活動し、取引の設計から価格交渉、財務・法務チェックなど一連のサポートを行います。

商業銀行との違い

商業銀行と投資銀行の大きな違いは、預金業務を行うかどうかという点にあります。

商業銀行は個人や企業から預金を集め、その預金をもとに融資や投資を行います。一方、投資銀行は預金業務を取り扱わず、企業の資金調達を支援します。

M&A仲介会社との違い

投資銀行とM&A仲介会社の大きな違いは、それぞれが提供するサービス内容にあります。

投資銀行はM&Aのサポートを行うほかに、さまざまな手段で企業の資金調達を支援します。一方、M&A仲介会社は、M&Aに特化してサポートするもので、資金調達方法についてはサービス対象外となることが多いです。

また、投資銀行はM&Aのクロージングまでがサービス対象となっていることが多いです。対してM&A仲介会社はPMIまでサポートしてくれることが多いので、その点が大きな違いといえます。

証券会社との違い

ここまで紹介してきた投資銀行の特徴に鑑みると、投資銀行の業務は証券会社と非常に近しいといえるでしょう。

そのなかで証券会社との主な違いは、対象とする顧客にあります。証券会社は一般投資家のような個人も対象としているのに対して、投資銀行は基本的には企業や機関投資家のみを対象としていま

したがって、M&Aにおける両者の役割における違いはないものの、対象とする顧客が異なることから、扱うM&Aの規模や市場も変わってくると理解しておきましょう。

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投資銀行の主要部門

投資銀行は複数の部門に分けられ、それぞれが異なる役割と専門性を持つことで、投資銀行全体としての機能を果たしています。

  1. M&Aアドバイザリー部門
  2. IPO部門
  3. ECM部門
  4. DCM部門

以下、主要な部門について詳しく説明します。

1.M&Aアドバイザリー部門

企業の合併や買収(M&A)を戦略的に進めるためには、深い知識と経験が求められます。そのための支援を行うのが投資銀行のM&Aアドバイザリー部門(Mergers and Acquisitions Advisory Department)です。

M&Aアドバイザリー部門では、企業価値の評価、M&A・売却の交渉・リストラクチャリング(組織再編)など、M&Aに関わるさまざまな局面でサービスを提供しています。国内における取引はもちろん、国境を超えたクロスボーダーM&Aや大型M&Aなど、難易度の高いM&Aにも対応可能です。

2.IPO部門

IPO部門(Initial Public Offering Department)は、企業が株式上場する際のサポートを行う部門です。

IPO部門の一つの重要な業務が企業の評価です。株式市場に上場していない会社の株式の価値は、まだ価値が付いていない状態であるため、そこに値付けをするのが、IPO部門の最も重要な業務です。企業の財務状況や将来性を評価し、公開価格を適切に設定するための根拠を提供します。

そのほか、クライアント(上場準備をする企業)に対して公開価格や時期の設定や、金融庁や証券取引所に提出する資料の作成・提出など、IPOに関するさまざまなサポートを行います。

3.ECM部門

投資銀行のECM部門(Equity Capital Markets Department)は、株式市場を活用した資金調達をサポートする部門です。新規事業を始めたり、経営環境の改善を図ったりするためには資金が必要となり、株式の追加発行が一つの選択肢となります。株式の追加発行を行うにあたって、ECM部門は株式の価格設定から投資家への売り出し戦略までをサポートします。

また、企業は自社の株式を市場から買い戻す株式買い戻しの戦略をとることがあります。株式買い戻しは企業の株主構成を最適化するためや、株価を向上させるために行われます。この業務もECM部門がサポートします。

そのほかにも、株式市場を通じた資本戦略の立案から実行まで全体的なサポートを行います。

4.DCM部門

DCM部門(Debt Capital Markets Department)は、企業が資金を調達するための1つの選択肢として、債券を用いた資金調達をサポートする部門です。企業や政府が運用資金や投資資金を調達するために発行する、企業債や政府債の管理を担当します。

この部門のエキスパートは、クライアントが最も効率的かつ効果的に資金を集められるよう、具体的な債権発行計画を策定する役割を担います。

また、発行する債券の種類や規模、期間に対してアドバイスするだけでなく、価格設定や債券の発行条件に関する戦略的な提言も行います。戦略をサポートするにあたって、各種の市場データや経済指標を深く分析し、債券の発行が市場環境に適したタイミングで行われるようにも留意します。

また、DCM部門では、企業が発行する債券を投資家に販売する際のマーケティングや配分戦略の設計も担います。債券の引き受けから売り出しまでを手掛け、投資家が適切な価格で債券を購入できるようにすることで、資金調達がスムーズに進むようにサポートします。

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投資銀行のM&Aでの役割

投資銀行は、企業の合併・買収(M&A)プロセス全体にわたってサポートします。初期の戦略策定から適切なパートナーの選定、デューデリジェンス、価格交渉、契約作成、取引の実行と完了まで、広範で複雑なプロセスをカバーします。

  1. 戦略的アドバイスと適切な買い手・売り手企業の選定
  2. デューデリジェンス
  3. 価格交渉と契約作成
  4. 取引の実行と完了

以下では、それぞれの段階で投資銀行がどのように企業をサポートするかについて詳しく解説します。

1.戦略的アドバイスと適切な買い手・売り手企業の選定

投資銀行は、企業がM&Aを通じて成長し競争力を強化するために、初期段階から深く関与します。初期段階では、投資銀行は企業のビジネス戦略を深く理解しながら、企業が達成したい目標と業界の現状を調査し、最適なM&A戦略を提案します。戦略を策定する際には、企業の長期的なビジネス目標、業界環境、競争状況、そして市場動向が考慮されます。

さらに、投資銀行は企業が成長戦略としてM&Aを選択する際に、適切な買い手・売り手企業の選定にも大いに関与します。潜在的なターゲット企業のリストアップするために、それらの企業の業績や財務状況、企業文化などを深く分析し、最終的な選定に至るまでのプロセスを全般的に支援します。

投資銀行がこのフェーズで提供する戦略的アドバイスは、企業が適切な買い手・売り手を見つけ、M&Aを成功させるための重要な基盤となります。

2.デューデリジェンス

買い手企業が投資銀行を活用する場合、投資銀行は売り手企業のデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスのフェーズでは、投資銀行は売り手企業の詳細な調査を行い、企業の経済的、財務的、法的状況を評価します。

このフェーズでは、投資銀行は専門知識と経験を活用し、売り手企業価値を正確に評価します。また、リスクに関しても同様に評価し、リスクに対して適切に対応するためのアドバイスを企業に提供します。デューデリジェンスには、財務報告書の詳細な分析、市場状況の理解、経営陣とのインタビュー、そして場合によってはサイトビジット(現地調査)などが含まれます。

デューデリジェンスの結果は、価格交渉や契約条件の設定に大きな影響を与えます。また、デューデリジェンスにより、未来のビジネス展開に対する洞察を得ることができます。

3.価格交渉と契約作成

投資銀行は、価格交渉と契約作成のフェーズでも、企業の重要なパートナーとしての役割を果たします。このフェーズでは、投資銀行は企業を代表して価格交渉を行い、公平で均衡の取れた取引を確保することを目指します。取引価格の交渉、取引条件の設定、そして企業が取引により発生する可能性のあるリスクを最小限に抑えるための戦略の提供も行います。

また、投資銀行は法律家やほかの専門家と協力して、M&A契約書(買収契約書や株式購入契約書など)を作成します。投資銀行が契約書を作成することにより、企業は契約によって損を被るリスクを減らすことができ、自身の利益を保護することができます。

4.取引の実行と完了

取引の実行と完了フェーズでは、投資銀行は規制当局からの承認の取得、取引資金の移動、株式の移転など、取引の完了に必要な一連の手続きをコーディネートします。

投資銀行は、その豊富な経験と専門知識を活用して、各プロセスを効率的に進め、企業が安心してクロージングを進められるようにします。さらに、投資銀行は取引の完了後も、取引の詳細を確認し、必要な書類を提供することで、企業が取引の完了を確実に行います。

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投資銀行のM&Aへの関与の動向

近年のM&A市場において、投資銀行の存在感は強まっています。具体的にどのようなプレイヤーがどの程度関与しているか、実際のデータを見ながら解説します。

投資銀行の主なプレイヤー

日本のM&A市場における投資銀行のプレイヤー群は主に次の2つが挙げられます。

  1. 日系大手証券会社
  2. 外資系大手投資銀行

それぞれについてはその名の通りで、日系の証券会社が投資銀行と同じ役割に変化したプレイヤー群と、日本に参入してきた外資のグローバル大手のプレイヤー群に分類されます。

具体的なプレイヤーとして日系大手証券会社は、野村證券やSMBC日興証券、大和証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などが高いシェアを有しています。

一方の外資系大手投資銀行には、ゴールドマン・サックス証券やUBS証券、JPモルガン証券、BofA証券などのグローバル屈指のプレイヤーが存在します。

M&A関与における直近の動向

直近2023年の日本企業が関連するM&Aは、17兆9000億円とされています。

このうち、アドバイザー業務としては、野村證券が1位で約8兆円、2位の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が約6兆円となっています。

この結果から、日系・外資系の投資銀行が存在感を強く示していることが読み取れます。

参考:
日本経済新聞「日本企業関与のM&A額、昨年5割増17.9兆円
日本経済新聞「野村がM&A助言首位 ニチイ・日生、東芝非公開化も

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投資銀行を活用すべきM&A案件の種類

特に投資銀行を活用すべきなのが、大型のM&A案件やクロスボーダーM&Aの案件です。

それぞれについて詳しく解説します。

大型M&A

投資銀行は、大型M&Aを行う企業にとって多くのメリットをもたらします。特にその規模と複雑さから生じる課題を投資銀行が的確に解決することで、M&Aのプロセスは格段に円滑に進行します。

まず大型M&Aの性質上、法的・財務的なリスクが増大するのが一般的です。投資銀行はそうしたリスク管理に対応し、専門性と多岐にわたる経験を活かしてリスクの回避や緩和策を提供します。

また、大型M&Aでは、多数の株主や多岐にわたる事業との調整が求められます。M&Aの際には、株主や債権者をはじめとするステークホルダーとの間の利害の対立も少なくありません。このようなステークホルダー間の調整作業は、それ自体が複雑であり時間と労力がかかります。投資銀行のM&Aアドバイザリー部門は、その専門性を活かし、ステークホルダーとの調整、財務分析、リスク評価、法律問題の解決など、M&Aにおける多様な課題を効率的に解決します。

クロスボーダーM&A

クロスボーダーM&A、つまり海外企業とのM&Aにおいて、M&A成功に向けて投資銀行を活用することは非常に有益です。

国境を越えて事業を行う場合、M&Aの対象企業における国の法規制や文化、そしてビジネス環境などへの適応が求められます。また、事業の規模や複雑さによっても、非常に高度な専門知識を必要とします。

投資銀行は、それぞれの国のビジネス環境や法制度に適応したアドバイスを提供することができます。たとえば、EU圏で事業を展開する企業は、データ保護規定(GDPR:General Data Protection Regulation)のような特定の法律について理解しておく必要がありますが、投資銀行はその法律についてのアドバイスや、それに適合するための戦略を提供します。

このように、投資銀行はそれぞれの国の文化や商習慣などの専門知識を活用し、新たな市場での法的リスクや文化的リスクを避け、クロスボーダーM&Aを円滑に進めることが可能になります。

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投資銀行のM&A事例

本コラムの最後に、投資銀行が実際に関与したM&Aの事例を紹介します。

野村證券:東芝非公開化

株式会社東芝(以下、東芝)が2023年12月に上場廃止による株式の非公開化を実行しました。2015年の不正会計問題を皮切りに、アメリカの原発子会社の経営破綻や業績不振などを受け、経営の立て直しを目的として非公開化を実施したとされています。

本件はかつて世界を牽引した東芝の上場廃止として国内外から大きく注目を集めていましたが、アドバイザリーとして業界トップシェアの野村證券が関与したことが分かっています。

参照元:
日本経済新聞「東芝株式非公開化まとめ読み、ファンド傘下で立て直し
株式会社東芝「株式の併合並びに単元株式数の定めの廃止及び定款の一部変更に関するお知らせ

JPモルガン証券:第一生命によるベネフィット・ワンのTOB

第一生命ホールディングス株式会社(以下、第一生命)が福利厚生サービスのベネフィット・ワンに対して、2024年2月からTOB(株式公開買い付け)を実施することが発表されました。

第一生命の主軸である保険事業における今後の成長への危機感から、新たな事業への拡大と新規顧客の獲得に向けて、異業種であるベネフィット・ワンの買収に踏み切ったと推察されます。約950万人の会員を持つベネフィット・ワンと組むことで、新商品やサービスの開発を進める狙いがあります。

また、ベネフィット・ワンが持つ福利厚生のプラットフォームや決済システムと、第一生命が提供する保険商品との連携など、医療・健康領域を組み合わせることによるシナジーが期待されています。

買収金額は2,920億円とされる大型案件であることから、本件では第一生命の財務アドバイザーにJPモルガン証券が就任しています。

参照元:
第一生命ホールディングス株式会社「株式会社ベネフィット・ワン株式(証券コード:2412)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
日本経済新聞「第一生命、ベネワンTOB成立へ 「ROE9%超」の中核に

三菱UFJモルガン・スタンレー証券:ベインによるアウトソーシングのMBO

2024年1月、投資ファンドのベインキャピタルが人材派遣業などの株式会社アウトソーシング(以下、アウトソーシング)のMBO(マネジメント・バイアウト)をTOBにて実行しました。

アウトソーシングは積極的なM&Aを中心に、業界3位のシェアを有する派遣企業に成長しましたが、その急速な成長スピードと関連会社の多さが課題となっていました。非公開化によって効率的な経営管理を行い、統合を進めることが狙いと予想されます。

本件は、アメリカの投資ファンドが関わる2,000億円を上回る大型案件であることから、ベインキャピタルのアドバイザーとして三菱UFJモルガン・スタンレー証券が関与しています。

参照元:
株式会社アウトソーシング「株式会社BCJ-78による株式会社アウトソーシング(証券コード:2427)の 株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
日本経済新聞「アウトソーシングがMBO 米ベインと、1株1755円でTOB

ゴールドマン・サックス証券:日立によるグローバルロジック買収

2021年に株式会社日立製作所(以下、日立)がアメリカのIT企業であるグローバルロジックを同年最大額の96億ドル(約1兆円)で買収しました。

本買収には、日立が有するIoTプラットフォーム「Lumada」の競争力強化が狙いであったと推察されます。「Lumada」は、データ収集、解析、AI、機械学習、シミュレーションなどの技術を活用し、さまざまな産業分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するIoTプラットフォームです。

世界的なIT企業であり、自動車・金融・通信・小売り・ヘルスケア・製造など、多様な業界の顧客を持つグローバルロジックを買収することで、グローバルな顧客の獲得や、最新技術を取り入れたサービスの提供を進めることが狙いです。

グローバルロジックの有するIoTの技術力とグローバルでの顧客基盤は、Lumadaの今後の発展にシナジーを発揮し得るでしょう。

本件の被買収側であるグローバルロジックのアドバイザーにゴールドマン・サックス証券が関与しており、このようなクロスボーダーの案件では外資系投資銀行が存在感を強く発揮します。

参照元:
株式会社日立製作所「日立によるグローバルロジック買収
日本経済新聞「21年M&A助言、ゴールドマン15年ぶり首位 米系が独占

複数関与:富士通子会社の新光電工のTOB

2023年12月、JIC(産業革新投資機構)の子会社であるJICキャピタルは、富士通株式会社(以下、富士通)の子会社である新光電気工業株式会社(新光電工)に対して、TOB(株式公開買い付け)の実施を発表しました。JICキャピタルは、大日本印刷株式会社、三井化学株式会社と合同で、新光電気の全株式の取得を実施します。

富士通は2010年代ごろから事業の選択と集中を図っており、主力であるIT事業以外は積極的な売却を進めています。新光電工の売却はこの戦略の一環であり、富士通がIT事業にリソースを集中するための重要な措置と推測できます。

各社の狙いは以下のとおりです。

参照元:富士通株式会社「連結子会社(新光電気工業株式会社)株式に関する契約の締結について

JIC(産業革新投資機構)

JICは日本の産業競争力の強化を目的に企業への投資を行う組織です。JICは、本TOBにより新光電工の成長を支援し、国内製造業の強化を目指します。半導体市場の競争が広がる中、中長期の視点で新光電工が企業価値を高められるような支援が期待されます。

参照元:株式会社産業革新投資機構 JICキャピタル株式会社 「新光電気工業株式会社に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ

大日本印刷株式会社

大日本印刷は、中期経営計画で、半導体関連への注力を掲げています。同社が持つ微細加工技術、精密塗工技術、材料開発技術と、新光電工がもつ半導体関連技術を組み合わせることで、シナジーを見込みます。

参照元:大日本印刷株式会社「新光電気工業株式会社の株式取得を目的とする特別目的会社への出資に関するお知らせ

三井化学株式会社

三井化学は、半導体・実装ソリューションの強化に力を入れています。同社の強みである材料技術と、新光電工の半導体パッケージ基盤技術を組み合わせることで、半導体分野における市場競争力の強化を図る狙いがあります。

参照元:三井化学株式会社「新光電気工業株式会社の株式取得を目的とする特別目的会社への出資に関するお知らせ

本件では各社のアドバイザリーとして、富士通に野村證券、新光電工にSMBC日興証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、JICにBofA証券、大日本印刷にUBS証券、三井化学にみずほ証券が関与する大規模な案件となっています。

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まとめ

投資銀行は、企業の資金調達やIPO、社債発行、M&Aといった複雑な金融取引をサポートする金融機関です。実際に、上場企業同士の大型M&Aや国境を超えた企業との海外M&Aを行う場合、多くの取引に投資銀行が関わっています。投資銀行には、複雑なM&Aでも対応可能な知識やノウハウが蓄積されているためです。

投資銀行は、M&Aにおいて適切なパートナー選定から、リスクと価値評価、公正な価格交渉と契約作成、クロージングまでを総合的に支援します。
ただし、投資銀行はPMIをサポートすることはあまりないため、PMIまでサポートしてもらいたい場合は、M&A仲介会社を活用するのがおすすめです。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。各領域に精通したコンサルタントが在籍しており、あらゆるプロセスにおいて的確なアドバイスを提供します。

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