ガソリンスタンド業界におけるM&Aの動向とは?最新の事例も紹介

2024年7月29日

ガソリンスタンド業界におけるM&Aの動向とは?最新の事例も紹介

このページのまとめ

  • ガソリンスタンドの数はマクロ環境変化や利益圧迫、後継者不足などにより年々減少
  • 一方で同業間での連携強化や事業の多角化に伴って、M&Aを通じた業界再編が進んでいる
  • ガソリンスタンド業界でM&Aを行うにあたっては、規制の遵守や立地を確認すると良い
  • ガソリンスタンド事業を売却する側は、従業員数や顧客数、財務状況、リスクがポイント
  • 加えて売却時には、汚染土壌の除去や地盤の安定性、購入者の選定に留意が必要

ガソリンスタンド業界でM&Aを行おうと考えている経営者の方にとって、業界の動向やM&Aの傾向は気になる点だと思います。ガソリンスタンド業界は、需要の低迷によって、業界の再編が進んでいる業界です。

本記事で、ガソリンスタンド業界の概要や動向、M&Aの特徴などを紹介します。また、買収側・売却側に分けて成功のポイントも解説。そのほか、M&Aや業務提携の事例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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ガソリンスタンド業界とは

ガソリンスタンド業界とは、ガソリンスタンドを運営する企業によって構成される業界です。多くのガソリンスタンドでは、主要なビジネスとしてガソリンやディーゼル燃料の販売を行いつつ、付加業務として自動車の修理や洗車サービスなども提供しています。

石油の大手卸売業者はENEOSホールディングスや出光興産、コスモエネルギーホールディングスなどです。これらの事業所が営むガソリンスタンドにはENEOSサービスステーションやapollostation、コスモステーションなどが挙げられます。その一方で、オートバックスやホームセンター、農協、個人経営によるガソリンスタンドなども広く存在しています。 

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ガソリンスタンド業界の動向と課題

ガソリンスタンド業界の昨今の状況や業界全体が抱える課題について解説します。

ガソリンスタンド数の推移

資源エネルギー庁の報告によれば、2022年度末時点での全国のガソリンスタンド数は27,963ヶ所です。給油所数が60,421ヶ所だった1994年度のピークから25年で半減しており、ガソリンスタンドの需要は低下の一途を辿っています。

年度ガソリンスタンド件数
2018年30,070
2019年29,637
2020年29,005
2021年28,475
2022年27,963

参照元:
令和4年度 経済産業省 資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)」(2021年度までのデータ)
経済産業省 資源エネルギー庁「令和4年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」(2022年度のデータ)
平成29年度 経済産業省 資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)

ガソリンスタンド業界の主なトレンド

上記のようなガソリンスタンド数の減少は、主に次のような理由によって引き起こされていると言えるでしょう。

  • 人口減少・エコカーの普及やエネルギー効率の向上・パンデミックなどのマクロ環境変化
  • 原油価格の急騰と人件費の高騰による利益圧迫
  • 地方スタンドでの高齢化による後継者不足

一部の地域でガソリンスタンドが完全に消えてしまうという事態も引き起こされており、それが今後の深刻な問題として注目されています。

また、昔ながらのガソリンスタンドでは、原油価格の急騰による地域内の競争と労働コストの上昇が利益を圧迫し、廃業を余儀なくされる事例も増えています。そのため、この数年では、コストを削減する手段として、セルフサービス方式のガソリンスタンドが増加傾向にあります。加えて、特に地方での高齢化による後継者の不足も見逃せません。

一方で、このような減少トレンドを受けて、大手企業を中心としたビジネス構造の変化が起き始めています。特徴的な動向としては次の3点が挙げられるでしょう。

  • プライベートスタンドの増加
  • 同業企業間での連携強化
  • 大手企業による事業の多角化

それぞれについて詳しく解説していきます。

プライベートスタンドの増加

大手企業のガソリンスタンドの数は減少する一方で、プライベートブランドが運営するガソリンスタンドの数は増えています。プライベートブランドでは余剰の石油を安価に購入し、顧客に低価格の石油を提供することでコストの削減を行っている企業が多いです。

同業企業間での連携強化

大手ガソリンスタンドでは業績を上げるために、企業間の提携が目立ってきています。
例としては、JXホールディングス株式会社と東燃ゼネラル石油株式会社の合併が挙げられます。これにより新たな企業体であるJXTGホールディングス株式会社(現ENEOSホールディングス株式会社)が生まれました。また、出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社は株式交換により経営統合を行っています。これらの提携は、シナジー効果を生み出し、輸送効率を向上させることを目的としています。

大手企業による事業の多角化

加えて、エネルギー事業の多角化にも取り組んでいます。国内の石油需要の減少を受けて、JXTGホールディングス株式会社(現ENEOSホールディングス株式会社)は電気・ガス・新エネルギー事業に注力する方針を発表しました。出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社も、メガソーラーや地熱発電などの再生可能エネルギーへの参入を図り、海外展開を視野に入れています。

参照元:
JXホールディングス株式会社(現ENEOSホールディングス株式会社)「東燃ゼネラル石油株式会社との 経営統合に関するご案内
昭和シェル石油株式会社 出光興産株式会社「株式交換契約の締結及び経営統合に関するお知らせ

ガソリンスタンド業界のM&Aの動向

業界全体のトレンドを受けて、ガソリンスタンド事業のM&Aも活況を呈しています。

事業者数が減少するというダウントレンドの状況下において業界再編の動きが加速しており、大手への集約や事業モデルの変革を目指してM&Aが行われます。

上記のJXTGホールディングスの誕生や新事業への多角化、出光興産や昭和シェル石油の経営統合は、この典型的な事例であると言えるでしょう。

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ガソリンスタンド業界におけるM&Aの特徴

ここからは、ガソリンスタンド業界のM&Aの特徴について解説します。同業界のM&Aの動向としては次の4点が挙げられます。

  • 同業他社によるM&Aが多い
  • 新規参入が少ない
  • 大手企業によるM&Aが多い
  • 新エネルギーに注目が集まっている

それぞれについて詳しく解説していきます。

同業他社によるM&Aが多い

ガソリンスタンド業界におけるM&Aの大部分は、同一業種内でのものとなっています。

その理由は、規模の拡大を通じてコスト削減と効率化を追求するため、さらには業界全体の再編を通じて競争力を強化するためです。また、同業他社間でのM&Aは、事業領域の多様化を図ったり、新たな事業分野への進出を実現したりするための手段としても活用されています。

新規参入が少ない

一方、新規参入者によるM&Aはガソリンスタンド業界ではあまり見られません。

業界特有の専門知識と規模経済が必要とされること、さらには市場環境の変動性が高いことから、新規参入の障壁は相当な高さがあります。

大手企業によるM&Aが多い

大手企業によるM&Aはガソリンスタンド業界でも非常に頻繁に見られます。

大手企業は資本力やビジネス知識を活かして、中小企業を買収することによって業界の再編を推進しています。
これにより、業務プロセスの効率化や競争力の強化につながるだけでなく、新たな事業領域への進出も可能となっています。

新エネルギーに注目が集まっている

新エネルギー分野への関心が高まるに連れ、それらに関する業務提携も増えています。業務提携は広義でいえばM&Aにあたります。
電気自動車の広がりや再生可能エネルギーの利用増加といった社会環境の変化を受けて、新エネルギー分野へのシフトがガソリンスタンド業界でも進行しているのです。

新エネルギーに対応するために業務提携を行い、電気自動車の充電設備の設置や、再生可能エネルギー事業への参入といった新しいビジネスモデルの開発が進んでいます。

ただし、新エネルギー関連の事業については、M&Aが活発に行われているわけではなく、あくまでも業務提携レベルに留まっています。その理由は、新エネルギー事業の採算がとれるか、まだ明らかとなっていないためです。ガソリンスタンド業界では、まず、新エネルギー関連の技術やノウハウを有する企業と提携し、実証実験などを行って、採算が取れるビジネスモデルの確立を目指しています。

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ガソリンスタンド業界のM&Aを行うメリット

では次に、ガソリンスタンド業界でM&Aを実施することのメリットについて、買い手と売り手それぞれの観点で解説します。

買い手のメリット

ガソリンスタンド事業を買収するメリットとしては、主に次の2点が挙げられるでしょう。

  1. 同業他社の買収によるシェアの拡大およびノウハウの獲得
  2. 事業の多角化や新技術の獲得によるビジネスの拡がり

基本的には他の業界と同様に、同業種の企業であればシェアの拡大などによる既存ビジネスの強化が主なメリットとなります。

特にガソリンスタンド事業では、店舗の立地や顧客との接点によって収益が大きく左右されるため、買収によるシェアの拡大が狙いやすいです。

逆に他業種による買収であれば、事業を多角化できる点などもメリットとして挙げられます。

売り手のメリット

ガソリンスタンド事業を売却する場合は、次の3点のメリットが考えられます。

  1. 後継者および従業員不足の解消
  2. (大手へ売却できた場合)今後の事業成長や安定化が見込める
  3. キャッシュの獲得

業界の動向で紹介したように、特に地方において、事業の継続性を脅かす後継者および従業員不足は重要な課題です。これらの課題の解消や事業の安定化が売り手企業のメリットと言えるでしょう。

特に大手企業へ売却できた場合は、ノウハウやネットワークを活かして、既存のガソリンスタンドが安定的に成長できることが期待できます。

また、売却(Exit)によって一定規模のキャッシュを獲得できる点も大きなインセンティブとなります。別の事業を始めたい場合など、経営者は売却によって手元資金を確保できるため、メリットを享受できます。

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ガソリンスタンド業界におけるM&A手法

ガソリンスタンド事業をM&Aするための手法は主に次の2つに分類されます。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡

それぞれの手法についてその特徴や違いを簡単に紹介します。

株式譲渡

株式譲渡とは会社全体をM&Aする手法となります。企業が発行する株式を売買の対象とすることで、会社の経営権を他社に譲渡する形を取ります。

株式譲渡では従業員や契約なども全て移管するため、簡易な手続きで完了する点が特徴である一方で、簿外債務なども引き継いでしまうリスクがデメリットとして挙げられます。

事業譲渡

もう1つの手法として、会社全体ではなく、特定の事業のみを切り出して売却する事業譲渡が挙げられます。

株式譲渡とは異なり、特定の事業を選択できる点がメリットである一方、個別での契約の引き継ぎなど手続きが煩雑になる点がデメリットとなるでしょう。

株式譲渡と事業譲渡の違いやそれぞれのより詳細な解説は、別記事にて触れているため、あわせてこちらもご参照ください。

関連記事:株式譲渡と事業譲渡の違いとは?M&A手法としてのメリット・デメリット

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ガソリンスタンド事業の売却価格の計算方法

続いて、ガソリンスタンド事業をM&Aする際に用いられる、売却価格の算定方法について解説します。

算定方法にはさまざまな種類が存在しますが、簡易的な計算式である「時価純資産+営業利益1-5年分」をまずは目安として理解しておきましょう。自社の価値を速やかに把握するために、この計算式は大きな効果を発揮します。

ただし、通常のM&Aでは、他の計算方式も合わせた複合的な評価がなされ、かつ財務価値では表せないプレミアムも上乗せされて価格が決定されます。一概に上記の式から算出された値だけで判断するべきではない点に留意してください。

一般的に、規模がある程度小さく10億円規模の売却を目指す場合は上記の方式が採用されるケースが多いです。

一方で、さらに規模が大きく、100億円ほどでの売却を目指す場合は、EV/ EBITDAマルチプルという指標を用いて、類似する企業の数値を参照する別の計算方式が挙げられます。

このようなM&Aの売却価格の計算方法も別記事にて解説しておりますので、興味のある方はご一読ください。

関連記事:
M&Aの売却価格の目安は?算定法や買収額をアップさせる方法を解説
10億円以上で会社売却する方法は?年商10億の企業価値も紹介

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ガソリンスタンド買収のポイント

ここからはガソリンスタンド業界のM&Aにおいて、買収時の観点から、確認すべき点を解説します。

  • 自社の戦略に合致するか
  • 規制を遵守しているか
  • 立地や設備は十分か

この3点のポイントについてそれぞれ詳しく解説します。

自社の戦略に合致するか

M&Aは単に事業の拡大を目指すだけでなく、戦略的な目標と一致していることが重要です。M&Aによって製品やサービスの範囲を拡大し、新たな顧客層にアクセスできる可能性がありますが、これが長期的なビジョンと一致しなければ、結果としては不調和を生み出すリスクがあります。

買収対象となるガソリンスタンドが、既存の事業ポートフォリオや将来の成長戦略とどのように適合するかを見定める必要があります。顧客基盤やサービス内容、企業文化などを綿密に調べると良いでしょう。

規制を遵守しているか

ガソリンスタンド業界には、環境保護や消費者保護、建築コード、消防法など、さまざまな分野に規制があります。

たとえば、ガソリンスタンド業界には、「4分ルール」という給油制限があります。これは消防法に基づく規定で、ガソリンやプレミアムガソリンは100リッター、軽油は200リッターまでが一度の給油量。給油速度は、毎分30〜35リッター、給油時間は4分間までと定められています。これらの制限を超えると、給油は自動的に停止します。

また、ガソリンや軽油は、高度に危険な物質であり、これらを扱うためには、「危険物取扱者甲種」または「危険物取扱者乙種4類」の資格が求められます。そのため、M&Aの前に、これらの規制を全て遵守しているかどうかを確認する適切な法律的調査が必要です。

立地や設備は十分か

ガソリンスタンド業界におけるM&Aでは、土地と設備の価値が重要視されます。ガソリンスタンドの立地は、顧客のアクセシビリティや商圏の大きさ、ブランドイメージなどに影響を及ぼすためです。
土地の立地条件を評価する際には、商圏の人口や経済状況、競合他社の存在など、多角的な視点からの分析が必要となります。

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ガソリンスタンド売却のポイント

ここからは、ガソリンスタンド業界のM&Aにおいて、売却価格を高くするためのポイントを解説します。

  • 立地条件は良いか
  • 従業員の数は豊富か
  • 顧客数は安定的かつ多く獲得できているか
  • 財務状況は健全で安定しているか
  • 事業継続におけるリスクがないか

上記5つのポイントについて詳説します。

1.立地条件は良いか

ガソリンスタンドの成功にとって立地は非常に重要な要素です。ユーザーは利便性を重視するため、交通量の多い道路に面した位置にあるガソリンスタンドは、収益性が高くなります。さらに、近隣に競争相手が少なければ、そのガソリンスタンドはより多くの利益を確保しやすいでしょう。

また、地域性も考慮に入れることが重要です。特に地方では、人々が主に自動車やバイクを利用することから、一定の需要が見込まれます。

売却先の企業が自社のエリアに進出したいと考えている場合や、立地条件の良いガソリンスタンドを保有している場合は、売却価格を高くすることができるでしょう。

2.従業員の数は豊富か

ガソリンスタンドを運営するにあたって、経験豊かで専門知識を持つ従業員がいるかどうかが非常に重要です。経験豊富な従業員がいるということは、買い手にとって新たに人材を探す手間や、新人研修のコストなどを節約できるというメリットがあります。

特に近年は、セルフ給油タイプのガソリンスタンドが増加していますが、それでも従業員の存在は不可欠です。給油方法が分からないお客様への説明や、機械トラブル時の対応など、従業員の対応力はサービス品質に直結します。

従業員の習熟度やサービス品質をアピールすることも、売却価格を高めることにつながるでしょう。

3.顧客数は安定的かつ多く獲得できているか

顧客数がきちんと確保できていることは、買い手にとって事業を評価するための重要な要素となります。なぜなら、顧客数はその企業の人気や競争優位性を反映していると考えられるためです。

顧客数の確保は、立地条件だけでなく、たとえばサービスの質や豊富さ、設備の綺麗さなどが複合的に絡みあった結果であるため、対象となるガソリンスタンド企業/事業の評価を客観的に判断する指標として用いられやすいです。

4.財務状況は健全で安定しているか

上記の3つの要素は主に、売却価格の「プレミアム」に寄与するための要素と言えます。しかしながら売却価格の算定方法でもご紹介した通り、純資産や営業利益などの財務情報も売却価格を左右する要素として重要であることには変わりありません。

すなわち、財務状況が安定的であり、負債が大きくないなどの健全な状態であることは、高値での売却につながる1つの要素と言えるでしょう。

5.事業継続におけるリスクがないか

対象の企業/事業が、買収後も事業を安定的に継続できるかどうかも買い手にとっては非常に重要です。そのための危険因子を可能な限りなくしておくということは売り手にとってはポイントとなります。

たとえば、競争環境が厳しい、地域の過疎化が加速している、特定の従業員のスキルに依存しているなどの要素は、ガソリンスタンド事業の今後の運営を脅かすため、リスクと見られかねません。

このようなリスクは事前に洗い出して、適切な対策を講じておくことが肝要です。

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ガソリンスタンドの跡地を売却する際の注意点

そもそもガソリンスタンドの売却には、ガソリンスタンドをそのままの形で売却するだけでなく、その跡地のみを売却するケースも存在します。本章ではその場合の注意点を解説します。

  • 汚染土壌の除去と清掃が必要になる
  • 購入者が限定される
  • 地盤の安定性が損なわれているリスクがある

それぞれの要素について詳しく見ていきます。

汚染土壌の除去と清掃が必要になる

ガソリンスタンドが一度営業を開始すると、燃料の漏洩や床下のパイプからの油脂の流出などにより、土壌が汚染される可能性があります。これは特に長期間にわたり運営されてきたガソリンスタンドでは避けられない問題で、土壌の健康状態を回復させるためには、専門的な除去と清掃作業が必要となります。清掃作業には、土壌サンプルの採取や汚染度の分析、汚染土壌の除去が含まれます。

このプロセスは時間と費用を要しますが、適切に行われないと土壌が安全な状態に戻らず、将来的に更なる問題を引き起こす可能性があります。土壌の清掃と除去は、ガソリンスタンドの跡地を売却する際の重要なステップとなります。

購入者が限定される

土地利用制限や土壌汚染の問題から、ガソリンスタンドの跡地に対する需要は限定的となることがあります。また、ガソリン臭などが残っている場合も、購入を忌避される要因となるでしょう。特に、飲食店など衛生面が重要になる事業者にとっては、購入の選択肢にも上がらないことが予想されます。

跡地利用として工場などを建設する場合には、ガソリンスタンドの跡地を購入を検討する可能性があるため、売却先の選定する際は、ある程度業種を絞って探す必要があります。

地盤の安定性が損なわれているリスクがある

ガソリンスタンド特有の建物および土地構造として、ガソリンを貯蔵しておくためのタンクを地下に敷設しているケースが挙げられます。

その場合、他業界の企業からは、地盤の安定性が損なわれてしまっている点がリスクと見なされることもあります。

特に震災や土砂災害が多い地域であれば、これらは重大な要素となる可能性が高いため、留意しておきましょう。

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ガソリンスタンド業界におけるM&A事例

ここからは、実際にガソリンスタンド業界で行われたM&A事例を3つ紹介します。

ウェルビングループによる綿仁の買収

2022年9月、ウェルビングループ株式会社は、綿仁株式会社を買収しました。ウェルビングループ社は、子会社である株式会社グローバンネット、株式会社高須自動車とともにオート事業(車両販売・整備・ガソリンスタンド経営)を展開している企業グループです。

自動車事業のさらなる成長に向けて、現在の北関東エリア(埼玉県・茨城県)での店舗展開から南関東エリアへの事業エリア拡大を目指し、静岡県東部エリアに11店舗を展開している「綿仁株式会社」を買収しました。

この統合によって、ウェルビングループ社の自動車販売・整備の専門知識と綿仁社の顧客基盤を結びつけ、相乗効果が発揮されるとしています。特に、自動車事業は、買収後も主要な事業として位置づけられており、今後も企業価値の向上を目指して努力することが発表されています。

参照元:ウェルビングループ株式会社「綿仁株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

大和自動車交通による宮園砿油の子会社化

2022年5月、大和自動車交通株式会社は、宮園砿油株式会社を完全子会社化しました。

宮園自動車株式会社の子会社であった宮園砿油社の事業内容は、ガソリンスタンドの運営や法人向けのFCカード事業、そして保有不動産の賃貸事業です。大和自動車交通社もガソリンスタンド事業と法人向けのFCカード事業を展開しており、この株式交換によって、宮園砿油社の持つ貴重な顧客を引き継げることから、大和自動車交通社のグループ全体の売上も増加する見込みです。また、不動産事業における大和自動車交通社の経験と知識を宮園砿油社に提供することで、相乗効果を生み出すことが期待されます。

参照元:大和自動車交通株式会社「簡易株式交換による宮園砿油株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

新出光による宅配ピザ事業のポケットフーズの子会社化

2021年12月、株式会社新出光は、食と暮らし事業におけるさらなる強化を達成するため、ポケットフーズ株式会社の全ての株式を取得し、2021年12月28日をもって完全子会社化しました。

新出光社が所属するイデックスグループは、石油依存からの転換を追求し、2019年度よりビジネス領域を4分野6事業へと拡大しており、非石油事業の成長戦略を推進している最中です。その一環として、今回、宅配ピザチェーン「ピザポケット」を九州を中心に展開しているポケットフーズ社をグループ内に組み入れました。

ポケットフーズ社はイデックスグループのリソースを利用した店舗展開強化が実現可能となる一方で、イデックスグループとしては、「中食カテゴリー✕デリバリー」による新たな挑戦を通じて、新しい「個人の家庭」への接点を最大限に活用し、新サービスの提供と食と暮らし事業の拡大につなげていく狙いです。

参照元:株式会社新出光「『ポケットフーズ株式会社』の株式取得

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ガソリンスタンド業界における提携事例

ガソリンスタンド業界では、新エネルギーに関する事業を獲得するために、他業界との提携も盛んに行われています。ここでは、近年行われた新エネルギー獲得の事例を4つ紹介します。

出光興産と種子島石油、ニッポンレンタカーによるEVレンタカーの充電実証

出光興産株式会社、種子島石油株式会社、ニッポンレンタカーサービス株式会社は、2023年5月10日に、電気自動車(EV)レンタカーの充電実証を開始しました。

このプログラムは、ニッポンレンタカーサービス社のEVレンタカーを貸し出し、充電は種子島石油社が島内で管理している2つの急速充電ステーションを活用するものです。充電作業はレンタカーの返却後に、ニッポンレンタカーサービス社のスタッフが行います。

支払いに関しては、出光興産社の関連企業である出光クレジット株式会社が提供する法人向け決済システム「出光Bizカードワン」を利用し、ニッポンレンタカー社と種子島石油社が定める価格にもとづいて決済が行われます。

出光興産社、種子島石油社、そしてニッポンレンタカーサービス社の3社は、このプロジェクトを通じて、法人向け決済システムを使った充電オペレーションの仕組みや、そのビジネスモデルの収益性について詳しく調査し、検証する狙いです。加えて、既存の充電設備を最大限に活用することで、種子島における電気自動車の需要と環境への意識を高め、地域のカーボンニュートラル達成に向けた貢献を目指すとしています。

参照元:出光興産株式会社「種子島におけるEVレンタカーの充電実証を開始します ~島内の既存充電器を活用しカーボンニュートラル実現に貢献

トナミ運輸、伊藤忠エネクスなどによるリニューアブルディーゼルの実証利用

トナミ運輸株式会社、伊藤忠エネクス株式会社、有限会社佐藤石油店などが、2022年8月23日にリニューアブルディーゼル(RD)を用いた物流実証プロジェクトを開始すると公表しました。このプロジェクトでは、佐藤石油店社が運営する飛島トラックステーションに、RDの給油施設が設けられることになります。

トナミ運輸社は、相模支店と中京地区の事業所を結ぶ運行ルートで、従来の軽油の代わりにRDを燃料として使用し、その実用性を検証します。特に、大型車のRD使用は、日本国内の業界においては初の試みとなっています。

RDを供給するにあたっては、伊藤忠商事株式会社がフィンランドに本拠を置くNESTE社と提携し、日本へのRD輸入契約を締結しています。一方で、伊藤忠エネクス社は、RDの国内輸送や給油の一連のプロセスに関わるサプライチェーンを築いています。

NESTE社が提供するRDは、廃食油や動物油などを原料として製造されており、温室効果ガス排出量は、石油由来の軽油に比べて約90%減少するとされています。各企業が協力し、地球温暖化を抑制する可能性を模索する形です。

参照元:伊藤忠エネクス株式会社「新たな給油拠点を活用した「リニューアブルディーゼル」の幹線輸送での実証利用を開始

コスモ石油マーケティングとREXEVによる業務提携

コスモ石油マーケティング株式会社は、2021年11月30日に電気自動車(EV)のシェアリングサービスを展開する株式会社REXEVとのビジネスパートナーシップを発表しました。

この提携は、コスモ石油マーケティング社の車両管理とメンテナンスのフレームワークと、REXEV社のカーシェア車両管理とエネルギーマネジメントを行うサービス「eMMP」を組み合わせることで、企業や地方自治体へのカーボンニュートラル支援サービスを行うものです。

具体的には、コスモ石油マーケティング社のEVシェアリング事業にREXEV社の「eMMP」を導入することで、他社にEV車を提供する事業となります。

参照元:株式会社REXEV「コスモ石油マーケティング株式会社との業務提携について

e-Mobility Powerとコスモ石油マーケティングによる次世代モビリティ社会に向けた業務提携

2020年6月17日、株式会社e-Mobility Powerは、コスモ石油マーケティング社とともに、次世代モビリティ社会へ向けた提携協定を締結したと公表しました。

e-Mobility Power社は、次世代モビリティ社会を支援する目的で、東京電力ホールディングス社と中部電力株式会社の共同出資により、2019年10月に設立された企業です。新たに結ばれたこの協定により、今後、コスモ石油マーケティング社のサービスステーションにe-Mobility Power社の急速充電器を増設し、充電サービスを提供する予定です。

さらに、国内最大規模の充電ネットワークとコスモ石油マーケティング社が提供するカーライフサービスを組み合わせることで、ユーザーの利便性を高め、利用満足度の向上を目指す計画です。

参照元:株式会社e-Mobility Power「コスモ石油マーケティング株式会社との次世代モビリティ社会に向けた連携協定締結について

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まとめ

ガソリンスタンドは、ガソリンの販売や自動車の修理、洗車サービスなどを行う業界です。ガソリンスタンドは、マクロ環境の変化をはじめ、原料高騰による利益の圧迫や後継者不足などにより年々数が減っています。

ガソリンスタンド業界においては、新エネルギーへの対応や地方におけるガソリンスタンドの持続可能性の確保、経営者の高齢化などの課題があります。これらの課題への対応のために、M&Aや業務提携が頻繁に活用されます。また、中小企業においては、M&Aを通じて、同業者同士で企業規模を拡大し、売上を拡大しようとする動きも活発化しています。

ガソリンスタンド事業を買収する際は、戦略と合致するかの検証や立地などに注意が必要です。一方の売却する側としては、従業員数や顧客数、財務状況、リスクの低減などによって売却価格を高めることを意識しましょう。加えて、汚染土壌の除去や地盤の安定性など、ガソリンスタンド特有の観点も忘れてはなりません。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、さまざまな業界のM&Aに豊富な経験を持ったM&A仲介会社です。各領域に精通したコンサルタントが在籍しており、あらゆるプロセスにおいて的確なアドバイスを提供します。料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型で、M&Aご成約まで無料で利用できます(譲受会社のみ中間金あり)。ご相談も無料です。ガソリンスタンド業界でのM&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。