システム開発会社のM&A動向とは?主な売買手法・会社売却の事例を解説

2024年6月12日

システム開発会社のM&A動向とは?主な売買手法・会社売却の事例を解説

このページのまとめ

  • システム開発会社のM&Aは業界の規模拡大やエンジニア不足から活発に行われている
  • 買い手の狙いによって買収すべきシステム開発会社の事業領域は異なる
  • 主なM&A手法には、株式譲渡・事業譲渡がある
  • M&Aによるシナジー効果を得るには、統合プロセスであるPMIが重要

M&Aによってシステム開発会社を買収することで、新たな技術やノウハウを獲得でき、企業価値の向上が期待できます。システム開発会社は業務や得意分野が多岐にわたるため、狙いに合わせて買収先や手法を決める必要があります。

本記事では、IT業界におけるM&Aのトレンドや狙い、手法などを解説します。30のM&A事例もあわせて紹介するため、M&Aを行った場合の将来的な見通しを立ててみてください。

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システム開発会社とは

まず、SIer(エスアイヤー)とも呼ばれ、全体像を掴みにくいシステム開発会社について、事業の概要を解説します。

システム開発事業の概要

システム開発会社とは、その名の通り、システムの開発を手掛ける会社です。ハードウェアからソフトウェアまで、さまざまなシステムの設計・開発・販売を手掛けています。例えば、家電製品や通信設備などの電子機器を制御するシステムの構築や、企業内で用いられる業務システムの開発などが挙げられます。

システム開発は、要件定義からはじまり、設計、開発・構築、テスト、運用・保守の流れで行われます。いわゆる上流工程と呼ばれるのが要件定義と設計で、それ以降が下流工程に分けられます。

システム開発会社のプレイヤー

システム開発業界の特徴は、プレイヤーの多さと種類の複雑さです。

最も馴染みの深い名称として、SIerが挙げられるでしょう。SIerとは、企画・要件定義から運用・保守までの工程を一括して請け負う企業です。

SIerが請け負う業務は多種多様で、システム開発に関する業務はすべて担うといっても過言ではありません。具体的には、基幹システムの開発やiOS/Android向けのアプリ開発、ECサイトや企業HPの構築、サーバーやデータプラットフォームの構築、SaaSのようなパッケージ型のソフトウェア販売、これらのシステムの保守運用などが挙げられます。

このように、システム開発業界の業務は多岐にわたるため、プレイヤーも多く存在しており、各社が得意とする領域に応じて差別化を図っています。例えば、インフラ構築に強みを持つ、ソフトウェア開発に強みを持つ、コンサルティングに強みを持つといったように、各社それぞれのポジショニングをとっています。

また、経済産業省「IT産業における下請の現状・課題について」にもあるように、大手SIerの下に、一次SIer、二次SIerなどと呼ばれる中小規模の開発会社も多数存在します。基本的には、大手SIerが要件定義や設計の上流工程を担ったうえで、以降の開発やテストの下流工程を一次/二次SIerが分業します。こうした構造は、システム開発業界の大きな特徴です。

SIerと類似する業態に、SES(System Engineering Service)がありますが、SESはSIerのように開発業務を請け負うのではなく、企業が企図する開発にエンジニアを提供するサービスです。両事業ではM&Aにおける論点が若干異なるため、本稿ではシステム開発会社(SIer)に絞って解説していきます。

参照元:経済産業省「IT産業における下請の現状・課題について」P.2

システム開発業界の市場トレンド

近年では、ITの重要性がますます高まっています。本章では、現在の国内におけるシステム開発業界を取り巻く市場環境について紹介します。

システム開発業界の市場規模

国内において、総務省「令和4年度 情報通信白書」の発表によるとICT(Information and Communication Technology)の市場は、2023年で約14兆円の規模になると積算されており、2017年の約12兆円から年々増加傾向です。COVID-19の影響を受け、そのトレンドは一層加速しています。

また、日経コンパス「システム受注・ソフト開発(一般)」データによると、ICTの一部であるソフトウェア産業におけるシステム開発関連だけでも、およそ5兆8,800億円(2021年)の市場規模となっています。これは見方を変えれば、「情報」や「データ」が重要視されるなかでも、市場規模としてはサーバーやPCなどのハードウェアが中心であることが分かります。

いずれにしても、システム開発業界を取り巻く市場は巨大であり、現代における主要産業の1つであることは間違いないでしょう。

参照元:
総務省「令和4年度 情報通信白書」P.45
日経コンパス「システム受注・ソフト開発(一般)

慢性的なエンジニアの不足

このように、システム開発業界は非常に魅力的な成長産業である一方で、IT業界を支えるエンジニアが慢性的に不足していることは業界全体における深刻な課題です。経済産業省「IT人材需給に関する調査(P.17)」のレポートによると、2030年には約79万人のエンジニアの不足が見込まれています。

また、全体的に労働人口が減少している日本においては、2030年以降もエンジニア不足が続いていくでしょう。

さらに、近年注目を集めているOpen AIやWeb3、NFT、メタバースなどの技術発展は急速化しています。世界的に有名な、Gartner社「What is New in the 2022 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies」のレポートによると、早ければ2~5年、遅くとも10年以内には、これらの新技術が実用化され、ビジネスとして定着すると言われています。

すなわち、今後ICTの重要性がより高まることは間違いありません。優秀なエンジニアの確保は、業界を問わずどの企業にとっても急務と言えるでしょう。

参照元:
経済産業省「IT人材需給に関する調査」P.17
Gartner「What is New in the 2022 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies

IT業界におけるM&A

こうしたトレンドに伴い、エンジニアの確保や、ノウハウ・スキルの獲得などを目的として、IT企業に関連するM&Aも活発に行われています。船井総研「IT業界における2022年のM&A動向の振り返り」のデータによると、2022年には、IT関連のM&Aが約850件あり、全M&A件数の約20%を占めています。

そのうち、システム開発会社のようなIT企業/事業が直接関係するM&Aは、約150件で18%です。

残りの約80%が、他業種の企業によるIT関連のM&Aであり、業界の垣根を問わず取引が実施されていると推測できるでしょう。

一方で、M&Aの成否については、まったく別の論点であり、M&Aは売買取引を行うこと自体が目的ではありません。買い手・売り手ともにM&Aによって達成したい目標があり、それを達成できたか否かで、成否は判断されます。

そして、日本企業によるM&Aの成功率は、日本経済新聞の記事「成功率はわずか2割、M&Aは失敗の歴史」によるとわずか1~2割程度です。特に、IT業界で頻繁に起こっている異業種間でのM&Aにおいては、業習慣や文化、風土などが大きく異なるため、成功率がより低くなる傾向があります。

M&Aを成功させるためには、買収完了後の統合プロセス、すなわちPMI(Post Merger Integration)をどれだけ上手く行えるかが鍵を握っています。PMIについては、一般論とシステム開発業界特有のポイントとあわせて、のちほど詳しく解説します。

参照元:
船井総研「IT業界における2022年のM&A動向の振り返り
日本経済新聞「成功率はわずか2割、M&Aは失敗の歴史

システム開発会社のM&Aにおける狙い

続いて、システム開発会社のM&Aにおける主な目的を、買い手・売り手の両方の目線から見ていきます。

買い手目線の狙い

システム開発会社を買収する側の狙いは、システム開発に関するスキルの獲得であり、それらを支えるエンジニアやノウハウの獲得がメインとなるでしょう。

ただし、具体的な狙いは、どのようなSIerを買収するかによって異なります。

中長期でのシステム開発の内製化および独自システムの開発を目指すのであれば、企画や要件定義から担う元請けの大手SIerを買収するべきです。一方で、短期的にエンジニアの不足を補うのであれば、開発や運用・保守を手掛けるSIerが適しているでしょう。

また、自社の事業戦略や既存事業および、それらと関連する開発したいシステムの内容によっても、買収すべきSIerは異なります。先述の通り、ハードウェアやソフトウェア、情報システム、コンサルティングなど、各社で得意とする領域が異なるため、どの事業領域に注力したいかによって判断しましょう。

つまり、買い手にとってシステム開発におけるスキルの獲得は共通の狙いであるものの、既存ビジネスのどの領域の補完または強化を目指すのかによって細分化されると言えます。

多くの企業がシステム開発に関するスキルの獲得を目指す背景には、ITが競争戦略上の重要なテーマとなっていることがあります。

他業種によるIT関連のM&Aが活況を呈していることからも分かるでしょう。

労働人口、特にエンジニアの不足が叫ばれる昨今の労働市場において、優秀なエンジニアの確保は、競合との差別化にもつながります。

売り手目線の狙い

売り手側の目線では、システム開発会社の売却による特有の狙いはほとんどありません。他業種と同様、売却による既存事業の選択と集中、もしくは売却益の獲得が主な目的となるでしょう。

ただし、システム開発会社の中小および零細企業の場合は、特有の狙いがある可能性があります。先述の通り、システム開発業界は多重下請け構造となっており、多くの中小・零細企業は下請けに属しています。

経済産業省「IT産業における下請の現状・課題について(P.5)」によると下請けのポジションにあることで、望んだ利益率を得られないケースも少なくありません。したがって、多重下請け構造からの脱却は、下請け企業にとって売却する狙いの1つになり得るでしょう。

また、これらの下請け企業は、慢性的な労働者不足に直面していることも事実です。システム開発会社の競争力は、エンジニアの質に大きく依存します。そのため、事業後継者の不足、エンジニア雇用の難しさといった、事業継続性の懸念を理由とした売却も考えられます。

※参照元:経済産業省「IT産業における下請の現状・課題について」P.5

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システム開発会社における代表的なM&A手法

ここからは、システム開発会社におけるM&Aの代表的な売買手法を解説します。

株式譲渡と事業譲渡

M&Aの手法には、主に株式譲渡と事業譲渡があり、これはシステム開発会社も同様です。

株式譲渡は企業自体を譲渡する、すなわち企業の株式の過半数(50%)以上を売却し、会社の経営権を別の企業に譲渡することを指します。

一方で、事業譲渡とは、企業全体ではなく一部の特定事業のみを譲渡することを指し、会社の経営権は既存の株主に残す手法です。

株式譲渡と事業譲渡では、買い手・売り手ともに取るべきアクションや、売買の狙いが大きく異なるため、両手法における違いを理解しておくことが重要です。

買い手における手法ごとの違い

買い手側にとって、株式譲渡は企業自体を買収するため、すべての経営資源を取得できる点が最大の特徴です。運営のスムーズさ、期待したシナジーの得やすさ、手続きの簡便さなどのメリットを得られますが、その分負債などのリスクも同時に移管されます。

一方、事業譲渡では、リスクを抑えられますが、株式譲渡よりも手続きが煩雑であるほか、期待した人材などの経営資源が移管されないおそれがあります。

したがって、システム開発会社の買収において、ノウハウの獲得を主眼とする場合は、経営リスクを抑えられる事業譲渡が適しているでしょう。ノウハウだけではなく、エンジニアの獲得も狙うのであれば、株式譲渡のほうが有効と言えます。

M&Aによる狙いを明確にし、両者のメリット・デメリットを踏まえた慎重な判断が必要です。

売り手における手法ごとの違い

売り手側にとっても、株式譲渡と事業譲渡で得られる効果は変わってきます。売り手側は、売却後に売却事業のことを気にする必要はないものの、残された他事業への影響を考慮しなければなりません。売却対象となるシステム開発事業以外の事業を運営している場合、その事業をどう捉えるかによって手法を判断するべきです。

例えば、売却対象がハードウェア系のシステム開発事業であり、その他にソフトウェア系のシステム開発事業を営んでいるとします。ハードウェア事業の売却によって得られた資金や、効率化された経営資源をソフトウェア事業に投入することで、さらなる成長が見込めるかもしれません。このように、事業の選択と集中が適する場合は、事業譲渡を選ぶと良いでしょう。

一方で、ハードウェア事業とソフトウェア事業が密接に関連しており、互いを切り離すことで相互に大きなマイナスの影響を与える場合、両事業は相乗効果(シナジー)がある状態です。そのため、事業を切り離すことは得策ではなく、企業全体を売却する株式譲渡が適しています。

一般論での両手法における違いは、別記事にて詳細に解説していますので、興味のある方はご一読ください。

関連記事:IT業界のM&A事例15選と業界の動向を分野別に解説

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システム開発会社のM&Aにおける売買相場

ここでは、システム開発会社のM&Aにおける売買価格について、基本となる考え方やポイントを紹介します。

一般的な売買価格の算出方法

M&Aにはデューデリジェンス(DD)と呼ばれるプロセスがあります。対象企業・対象事業の評価を実施することを目的とし、主に売買価格の算出とリスクの抽出を行います。

DDは、ビジネスDD、IT DD、人事DD、財務DD、税務DDなどの観点から多角的に実施されますが、価格算出はいずれの観点においても、次の3つのアプローチを中心に行われます。

  1. インカムアプローチ
  2. コストアプローチ
  3. マーケットアプローチ

各手法の詳細は以下のとおりです。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、収益や利益の項目から、対象企業・事業の将来における収益性を評価します。現在の企業価値よりも高い評価を得やすい一方で、将来という不確実性の高い要素を扱う以上、評価に一定の恣意性が生じ、客観性が欠けてしまう点がデメリットです。

コストアプローチ

コストアプローチは、インカムアプローチとは異なり、純資産を評価することで現在の価値の算出に重きを置きます。客観性を担保できる一方、スタートアップなど成長フェーズにある企業・事業にとっては、将来性が見込まれないため価格が想定よりも低くなってしまうデメリットがあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、過去の類似する事例を取り上げ、その数値を適用して算出する手法です。算出を非常に容易かつスピーディーに行える点が最大の特徴です。しかし、この世にまったく同じ状況にある企業・事業は存在せず、置かれた時代や環境などによって事業のあり方は左右されるため、「類似する事例」の定義は簡単ではありません。

そのため、インカムアプローチよりは客観性を担保できるものの、一定の恣意性が入ってしまう点がデメリットです。複数の事例を用いることで、ある程度は恣意性の排除が可能なため、他2つのアプローチと同様に、有効な価格算出の手段として用いられています。

M&Aにおける価格算出についても、別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

株式譲渡と事業譲渡の算出方法の違い

代表的な手法である株式譲渡と事業譲渡では、価格算出における基本的な考え方が異なります。

両手法とも、インカムアプローチとコストアプローチを主軸とする点は共通ですが、以下の計算式となり、企業全体を譲渡する株式譲渡は役員報酬が加わります。

  • 株式譲渡 = 純資産 + 営業利益 + 役員報酬 2~5年分
  • 事業譲渡 = 譲渡資産 + 事業利益 2~5年分

これらはあくまで一般的な概算値の参照元であり、必ずしもこの通りに算出されるとは限りません。マーケットアプローチによる事例の参照や、多角的なDDによる価格の上振れ・下振れなど、さまざまな要素によって価格は決まるため、これらの式は参照元値として認識しておきましょう。

一方で、買い手であれば、対象企業・事業の公開情報から買収価格の目安を算出できますし、売り手は自社の売却価格の目安を立てられるメリットがあるため、基本的な価格算出方法を知っておいて損はありません。

システム開発会社のM&A売買価格に影響する要素

価格算出においては、各企業の事業特性に応じた要素、つまり「希少性」が価格に影響する場合があります。ここでは、システム開発会社における希少性について解説します。

システム開発会社の希少性を左右する要素として、ハードウェア系やソフトウェア系などの得意領域が挙げられます。得意領域のなかで、明確な競争優位性を見出していれば、高く評価され、価格も上振れする可能性が高いでしょう。

一方、上流工程か下流工程かの事業範囲については、業界構造上、上流は大手企業、下流は中小・零細企業という棲み分けがされています。企業の売上・利益の規模によって判別が可能なことから、前章で紹介した計算式に含まれているため、重要な要素にはなりにくいでしょう。

そのほか、希少性の要素として考えられるのが技術的な競争力です。エンジニアのスキル、特許の保有数、取引実績(特に海外事業との実績)などが挙げられます。さらに、エンジニアのスキルは、開発言語や汎用性の高さなどに分解でき、これらの要素も価格に大きな影響を与えます。

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システム開発会社M&AのPMI

システム開発会社におけるM&Aの成否を大きく左右すると言われる、買収後の統合プロセス「PMI」について解説します。

PMIとは

PMIとは、「Post Merger Integration」の略で、M&Aの買収後の統合プロセスを指します。M&Aの目的は、買収した後、どのように買収企業/事業の強みを自社と融合させるかであり、実現のためにはPMIが鍵を握ります。

具体的には、企業の買収によって、単純に1+1=2を目指すのではなく、1+1=3,4…と、両社によるシナジーを生むための取り組みが必要です。

一方で、PMIは、買収によるマイナスな効果(ディスシナジー)の回避も目的としています。

ディスシナジーとは、新たに加わった企業と事業領域が重複し、互いの利益を奪い合ってしまった結果、売上が下がってしまう状態です。

段階的なプラン策定が大切

PMIでは基本的に、買収手続きが法的に完了した日を「Day1」、約3ヶ月から100日後を「Day100」と呼びます。Day100は、PMIの成否を大きく左右する期間であり、重要なマイルストーンとして位置付けられています。

したがって、PMIにおいては、「Day1プラン」「Day100プラン」「Day100以降の中長期プラン」の3つを意識し、計画を策定することが重要です。

M&Aの成功率を下げる要因の1つが、これらのプラン不足です。陥りがちなポイントとして、M&A自体を目的化してしまうことが挙げられます。

複雑でタイトなM&Aの取引によって、当初狙いとしていたM&Aによるシナジーの最大化が忘れられ、取引が完了した時点で一定の達成感を得てしまう現象です。こうした失敗を回避するためにも、M&A戦略を策定する段階から、統合後の3つのプランを明確化しておくことが欠かせません。

PMIについてもこちらで詳細に解説していますので、あわせてご参照いただけると、より理解が深まるでしょう。

システム開発会社のPMIにおけるポイント

システム開発会社のM&Aにおける買い手の主な狙いは、システム開発に関するスキル、すなわちノウハウやエンジニアの獲得であると紹介しました。PMIにおいても、これらのスキルをどのように自社のアセットとして組み込めるかが最大のポイントです。

システム開発会社は、各社の得意領域が細分化されている点が特徴です。そのため、システム開発スキルのなかでも、自社にどの領域が必要なのかを正確に見極めることが欠かせません。

具体的には、ハードウェアやソフトウェアのどちらの領域を強化したいか、上流工程と下流工程どちらの業務範囲が不足しているかを、自社の成長戦略に鑑みて明確化したうえで、買収後のプランを作成します。

また、システム開発会社のビジネスを支えるエンジニアのリテンションも重要なプロセスです。PMIにおいて、Day1からDay100の期間には人材の流出が起こりやすく、M&Aの成否に大きな影響を与えます。人材流出を回避するためには、以下のようなアクションが必要です。

  • 優秀なエンジニアの特定
  • 従業員間のコミュニケーションおよび情報流通における力学やキーマンの特定
  • 当該人材らとの丁寧なコミュニケーション
  • 評価や報酬体系などの流出の原因となりそうな要因の整備、改善

これらの施策を、事前のDDの段階で把握して実施することは、情報の開示が限られる関係上、不可能に近いでしょう。買収完了後のDay1以降、速やかに実施する必要があります。

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システム開発会社のM&Aの事例30選

以下では、過去にシステム開発会社がM&Aを行った事例を紹介します。

1.HOUSEIとインテック武漢の事例

HOUSEI株式会社は2021年1月、インテック武漢(英特克信技術(武漢)有限公司)の全株式を取得することで、完全子会社化しました。HOUSEIは、オフショアビジネスを行い社会のDXを推進することを目指す企業です。インテック武漢は、主にソフトウェア製品の設計・開発を行うTISインテックグループの会社でした。

HOUSEIの子会社となったあと、システム開発を行う子会社である、現在の璞華国際科技(武漢)有限公司(2024年5月時点)に吸収合併されました。顧客から受託したシステムの設計・開発の拠点となっています。子会社化によってバックグラウンドや経験、ノウハウを活かし、品質・納期・コストの面で優位性を確保しています。

参照元:HOUSEI株式会社「インテック武漢の子会社化に関するお知らせ」

2.デザインワン・ジャパンとNitro Tech Asia Incの事例

株式会社デザインワン・ジャパンは、2019年5月にベトナムのダナン市にあるシステム開発会社である、Nitro Tech Asia Incの株式を97.5%取得し、子会社化しました。

デザインワン・ジャパンは店舗の口コミサイト大手である「エキテン」を運営しており、システムのリニューアルや新サービスの提供を行うための開発体制の強化を課題としていました。国内のエンジニア不足や人件費の高騰を受けて、コストを抑えたオペレーションの実現を見据えて、海外オフショアも視野に検討するなか、子会社化を決定します。

Nitro Tech Asia Incは日本企業に向けた開発の豊富な経験があり、子会社化することで、従来通り社内での開発から販売までを、コストを抑えながら実現できる体制が整ったといえます。

参照元:株式会社デザインワン・ジャパン「沿革

3.クレスコとネクサスの事例

株式会社クレスコは、2018年1月に株式会社ネクサスの自己株式を除く発行株式のすべてを取得し、子会社化しました。クレスコは、ソフトウェアの開発を主力とする複合IT企業で、13社の子会社と2社の持分法適用会社から成るクレスコグループの親会社です。ネクサスは、システム開発サービスやソリューション・サービス、サーバインフラ構築サービスといった総合的なサービスを提供していました。

子会社化によって、高まるシステム開発の需要に対応し、企業価値の向上を目指しました。IT企業同士のM&Aによって、販売チャネルの拡大やテクノロジーの強化など、さまざまな相乗効果が期待できる一例です。

参照元:株式会社クレスコ「株式会社ネクサスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

4.クラウドワークスと電縁の事例

株式会社クラウドワークスは2017年11月、国内のブロックチェーン技術におけるリーディングカンパニーである株式会社電縁を子会社化しました。電縁の元々の親会社であった株式会社ガイアックスから、67%の電縁の株式譲渡を受けることで、クラウドワークスの子会社としました。

クラウドワークスの掲げる「クラウド経済圏」の構想では、プラットフォーム外における個人同士の自由な取引を想定しています。そのために重要な技術がスマートコントラクトを実現するブロックチェーンであるため、電縁の子会社化につながりました。クラウドワークスの目指す、個人がより多くの報酬を受け取れる仕組みづくりの大きな一歩といえるでしょう。

参照元:株式会社クラウドワークス「株式会社電縁の子会社化に関するお知らせ~ブロックチェーン領域で連携し「クラウド経済圏」の形成を加速~

5.インソースとビー・エイ・エスの事例

株式会社インソースは2022年6月、株式会社ビー・エイ・エスのすべての株式を取得し子会社化しました。インソースはオンライン研修やオンラインセミナーの事務代行サービス、人事サポートシステムの提供など幅広い事業を行っていました。その中でヘルプデスク業務やテクニカルサポート業務の強化を図りたいと考えます。

株式会社ビー・エイ・エスは、システム運用やサーバー監視などのヘルプデスク業務、ハード面・ソフト面の環境構築やサポートなどを長年幅広く行ってきた企業です。豊富な経験と深い知見の活用を見込んで、子会社化に踏み切りました。

参照元:株式会社インソース「2株式会社ビー・エイ・エスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

6.コアコンセプト・テクノロジーとPros Consの事例

株式会社コアコンセプト・テクノロジーは、2024年2月に株式会社Pros Consの発行済み全株式である650株を取得し、完全子会社化しました。Pros Consは製造業の大手企業へ外観検査を自動化するソリューションを提供してきました。

コアコンセプト・テクノロジーのスマートファクトリーソリューションである「Orizuru MES」に、Pros Consの持つ外観検査のAIソリューションを組み込むことで、製品力の向上を目指しています。加えて、クロスセルや採用、人材育成のノウハウ共有などによって、両社がともに発展できることを見込んでいます。

参照元:株式会社コアコンセプト・テクノロジー「株式会社Pros Consの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

7.パワーソリューションズとエグゼクションの事例

株式会社パワーソリューションズは2021年4月、株式会社エグゼクションの全株式を連結親会社の株式会社日本創発グループから取得し、完全子会社化しました。パワーソリューションズは、アウトソーシングサービスやソフトウェアロボット技術を駆使した、RPA関連サービスを行うSIerです。株式会社エグゼクションも、ソフトウェアやインストラクチャー、パッケージシステムによるソリューションを提供するシステム開発会社です。

子会社化によって、パワーソリューションズの人事制度のノウハウを共有したり、コンサルやシステム開発の人材を相互に補完し合ったりと、人材に関する相乗効果を狙ったM&Aが実現しました。

参照元:株式会社パワーソリューションズ「株式会社エグゼクションの株式取得(子会社化)および特定子会社の異動に関するお知らせ

8.ミナトホールディングスとアイティ・クラフトの事例

ミナトホールディングス株式会社の子会社である日本ジョイントソリューションズ株式会社は、2023年1月に株式会社アイティ・クラフトと合併しました。日本ジョイントソリューションズはデジタルマーケティングプランニングやWebサイトのプロデュースを、アイティ・クラフトは金融業をはじめとする業務システムに関する業務を行っていました。

両社ともにシステム開発を行いますが、得意分野は異なります。この合併によって、人材面の体制の強化やさらなる付加価値の増大を目指します。

参照元:湊ホールディングス株式会社「完全子会社間の合併に関するお知らせ

9.クレスコとエニシアスの事例

株式会社クレスコは2020年4月、株式会社エニシアスの全株式を取得し、完全子会社化しました。クレスコはシステム開発を総合的に支援する複合IT企業です。エニシアスはアプリケーション開発のほか、クラウドやサーバー・ネットワークの分野に強みを持っています。

近年高まっているクラウド関連事業の需要に、エニシアスの子会社化によって対応し、グループ全体のさらなる付加価値増大を目指します。

参照元:株式会社クレスコ「株式会社エニシアスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

10.ヴィンクスとホロンの事例

株式会社ヴィンクスは2022年8月、株式会社ホロンの株式を追加取得して子会社化しました。ヴィンクスは、POSやCRM、MD、ECなど流通・サービス業に特化したサービスを、国内を含むアジア圏に提供していました。

ホロンは主力製品に「AP-Vision CRIOS」を持ち、アパレル業界をはじめとした専門店業界の商品・在庫管理や売上・利益管理などに広く使われています。流通業やサービス業と専門店業界には密接な関係があり、この子会社化によってビジネスの拡大や消費者のオムニチャネル化対応を目指します。

参照元:株式会社ヴィンクス「「株式会社ホロン」の株式追加取得(子会社化)に関するお知らせ」 

11.Roadとシグニティの事例

株式会社Roadは2022年4月、株式会社シグニティの全株式を取得し、完全子会社化しました。RoadはITソリューション事業のほか、HRや人生設計のコンサルティング、商材やノウハウ共有など幅広い事業を手掛けています。

シグニティはプッシュ通知配信サービス「COINs」やスマートフォンのロック画面広告などを手掛けるシステム開発会社です。子会社化によって、両社が互いに技術や知見、経営資源を利用しながら、COINsのさらなる販売・展開を行っていくとしています。

参照元:株式会社シグニティ「株式会社Roadによる弊社株式取得について

12.アステックコンサルティングとインサイトの事例

株式会社アステックコンサルティングは2021年2月、株式会社インサイトの全株式を取得し、完全子会社化しました。アステックコンサルティングは製造業の生産管理に関するコンサルティングを行っていました。

インサイトは制御系やオープン系のシステム開発に加えてエンジニアの派遣も行っており、経験豊富な人材や多くの開発実績・大手との取引実績がある企業です。子会社化によって、アステックコンサルティングの行うコンサルティングを、ソフトウェアの面から強力にサポートしていくことが期待されます。スマート工場の構築やICTツールの導入など、近年取り組んでいる支援事業においてもシナジー効果が見込まれています。

参照元:株式会社アステックコンサルティング「株式会社インサイトの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

13.ピクセルカンパニーズとアフロの事例

ピクセルカンパニーズ株式会社は2016年12月、簡易株式交換によって株式会社アフロを完全子会社化しました。ピクセルカンパニーズは、顧客のニーズに合わせたコンサルテーションやシステム開発の支援を行っています。

アフロは金融業界を中心に、受託システムの開発や常駐型の技術支援サービスを行っていました。子会社化によって、2016年当時に子会社であった中央電子工業株式会社をハード面、アフロがソフト面を取り扱える体制が整い、IoT事業をさらに強化していくことが期待されました。

なお、2024年現在はM&Aによって、中央電子工業の株式は売却され、事業の多角化から選択と集中へと方針転換されています。

参照元:ピクセルカンパニーズ株式会社「簡易株式交換による株式会社アフロの完全子会社化に関するお知らせ

14.きちりとBECの事例

株式会社きちりは2016年11月、株式会社BECの株式取得により資本業務提携契約を締結しました。きちりは高付加価値のサービスを提供・提案するレストランの展開のほか、外食事業者に向けたプラットフォームも提供しています。プラットフォームの急成長に伴い、人事などの間接部門の合理化が課題でした。BECは、クラウドやAIなどの最先端技術による人事関連業務を展開しており、資本業務提携によってきちりのプラットフォームの強化が期待され、契約につながりました。具体的な提携内容は、両社が共同開発した人事関連業務システムの導入や、他社への販売などがあります。

参照元:株式会社きちり「株式会社BECとのHRテック(HR TECH)分野における資本業務提携契約締結に関するお知らせ

15.クイックとクロノスの事例

株式会社クイックは2019年10月、株式会社クロノスの株式を取得し子会社化しました。クイックは人材サービス事業やリクルーティング事業を通して、人事・労務に関する課題解決をサポートしてきた企業です。クロノスはシステム開発やエンジニアの教育などを行っており、AIなどの最先端技術も積極的に採用を検討していました。子会社化によって、人事や労務をサポートするシステム開発やIT・AIエンジニア教育の拡大によって、両社の企業価値を高めることが期待されます。加えて、人材不足解消やIT化推進などの課題解決を通して社会貢献をするというビジョンも抱いています。

参照元:株式会社クイック「株式会社クロノスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

16.コムチュアとソフトウエアクリエイションの事例

コムチュア株式会社は2022年4月、ソフトウエアクリエイション株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。コムチュアは、クラウドやビッグデータ・AIなどの技術を活用し、顧客の課題解決やDXの推進を行っています。

ソフトウエアクリエイションは、システムやアプリケーションの開発などを行っていました。人材や技術、ノウハウなどを共有し、規模の拡大とさらなる高付加価値化が期待され、子会社化に至りました。

なお、両社は2024年4月付けの吸収合併契約を締結し、既存の事業はコムチュアが引き継いでいます。

参照元:ソフトウエアクリエイション株式会社「お知らせ(2022年度)

17.アイコムシステックとメディックスの事例

株式会社協和エクシオのグループ会社であるアイコムシステック株式会社は、2018年5月に株式会社メディックスの全発行株式を取得しました。アイコムシステックは主に通信インフラ事業を手掛けており、コミュニケーションソリューション分野やIoT分野の強化にも取り組んでいます。メディックスは創業以来放送系システムの開発に強みを持っており、豊富な経験実績があります。

株式取得によって、両社の強みを活かした開発体制を整え、通信・放送系のソリューション分野での市場拡大を目指します。

参照元:株式会社協和エクシオ「グループ会社のアイコムシステックが 株式会社メディックスの全発行済株式を取得 ~放送系システム開発体制を強化~

18.SYSホールディングスとオルグの事例

株式会社SYSホールディングスは2018年4月、株式会社オルグの全株式を取得して子会社化し、グループの傘下に入れました。SYSホールディングスは大企業向けのシステム開発を主力とした株式会社エスワイシステムが前身です。IT業界の目まぐるしい変革に対応するには、1社体制ではなく企業集団である必要があるとして、友好的なM&Aを重視して2013年にSYSホールディングスの設立に至りました。

オルグはシステム開発やコンサルタントを40年以上行ってきた会社です。子会社化によって顧客や技術を引き継ぎ、さらなるシナジーや企業価値の向上を目指します。

参照元:株式会社SYSホールディングス「沿革

19.ベーシック・キャピタル・マネジメントと中央システムの事例

ベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社は2021年11月、中央システム株式会社の全株式を親会社であるTIS株式会社から取得し、子会社化しました。ベーシック・キャピタル・マネジメントは、中小企業の支援を長年行ってきた企業です。その中で、日本経済を活性化するには中小企業の生産性向上が不可欠とし、IT技術の導入によって実現できると考えました。

こうした経緯から、SES事業を主力に、中小企業が導入できるシステムの展開も行う中央システムと合意に至り、子会社化につながります。ベーシック・キャピタル・マネジメントは、中央システムの成長に期待し、中期計画を支援していく姿勢を示しました。

参照元:ベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社「中央システム株式会社の株式譲受に関するお知らせ

20.CEホールディングスとSIPの事例

株式会社CEホールディングスは2016年11月、株式会社システム情報パートナー(SIP)の全株式を取得し子会社化しました。CEホールディングスは医療をはじめとするヘルスケア領域の全般をITによって支援することを目指し、業務提携やM&Aを積極的に行っていました。SIPは病院に提供する医療情報システムの提案や開発などを行っていた企業です。

子会社化により、SIPの提供するシステムを介して医療機関と強固な関係を築き、現場から得たニーズをシステムにフィードバックする体制を整えました。付加価値の向上に加えて、グループ内の製品やサービスを顧客に提案することで、より細やかな問題解決を目指します。加えて、新たな需要を掘り起こすことも期待されています。

参照元:株式会社CEホールディングス「株式会社システム情報パートナーの株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

21.クレスコとエヌシステムの事例

株式会社クレスコは2016年9月、株式会社エヌシステムの全株式を出資者である株式会社農協観光から取得し、完全子会社化しました。エヌシステムはJAグループの旅行事業を担う農協観光のもとで、旅行に関するコンサルティングやシステムの設計、運用などのソリューションサービスを提供していました。

クレスコは旅行業の需要拡大を見込み、システム開発が担う分野の拡大を目指して子会社化します。両社の連携によるシナジー効果が期待されます。

参照元:株式会社クレスコ「数年先を見据えて先端技術に取り組む
参照元:株式会社クレスコ「2017年3月期 第2四半期 証券アナリスト向け決算説明会」(p.5)

22.夢真ホールディングスとマインドシフトの事例

株式会社夢真ホールディングスは2016年9月、株式会社マインドシフトの株式を取得し、資本業務提携契約を締結しました。夢真ホールディングスは、時流や趨勢に合わせて必要とされる技術者を育成・派遣しています。マインドシフトはシステム開発やインフラ・ネットワーク系の業務委託、コールセンター業務などの経験やノウハウから、24時間365日対応可能なAIサポートデスクシステムを開発しました。

資本業務提携によって、夢誠ホールディングスはAIを用いた開発に必要なエンジニアの派遣を行い、マインドシフトはAIに精通した技術者を育成するためのノウハウを提供することになりました。両社にとって大きなメリットのある契約といえるでしょう。

参照元:株式会社マインドシフト「株式会社夢真ホールディングスとの資本業務提携契約締結に関するお知らせ

23.テラスカイとウイン・コンサルの事例

株式会社テラスカイと株式会社ウイン・コンサルは共同で株式会社キットアライブを立ち上げ、ウイン・コンサルは2016年10月、Salesforce関連のシステム開発事業をキットアライブへ譲渡しました。

この事業譲渡により、キットアライブの親会社であるテラスカイは、北海道地域でのSalesforceを中心としたクラウド関連事業を加速させていく狙いです。加えて、キットアライブをテラスカイのグループ会社におけるニアショア開発拠点として、体制を整えていくことも表明しました。

参照元:株式会社テラスカイ「新会社『キットアライブ』、事業譲受に関するお知らせ | お知らせ | ニュース

24.Eストアーとアーヴァイン・システムズの事例

株式会社Eストアーは2021年7月、簡易株式交付によって株式会社アーヴァイン・システムズを子会社化しました。アーヴァイン・システムズは従来よりEストアーからシステム開発の業務委託を受けており、取引関係にありました。

子会社化により、Eストアーグループ全体の開発力強化につながり、グループ会社同士が必要な技術領域を補完し合うことで、さらなる競争力強化が見込まれます。

参照元:株式会社Eストアー「簡易株式交付による株式会社アーヴァイン・システムズの 子会社化に関するお知らせ

25.GMOペイメントゲートウェイとビュフォートの事例

GMOペイメントゲートウェイ株式会社は2022年4月、子会社である株式会社ビュフォートを吸収合併しました。GMOペイメントゲートウェイは、オンライン決済やECにおける成長・課題解決の支援、資金面のサポートなどを幅広く行う企業です。ビュフォートは金融・決済領域のシステム開発に強みがあり、2021年4月にGMOペイメントゲートウェイの子会社となっていました。

合併による狙いは、経営資源の集約や業務効率の向上などです。

参照元:GMOペイメントゲートウェイ株式会社「完全子会社ビュフォートの吸収合併完了に関するお知らせ

26.Success HoldersとP&Pの事例

株式会社Success Holdersは2022年3月、子会社である株式会社P&Pを吸収合併しました。Success Holdersは伴走型のコンサルティング会社で、戦略の策定や業務の見直し、テクノロジーの活用などさまざまな面から企業の成長を支援しています。P&Pはシステム開発や技術者支援を行う福岡県の会社で、2021年4月にSuccess Holdersの子会社となっていました。

合併によって経営資源の集中と効率化を目指す点は、前項で紹介したGMOペイメントゲートウェイとビュフォートの例と共通しています。

参照元:株式会社Success Holders「(開示事項の経過)システム開発及び技術者派遣企業の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
参照元:株式会社Success Holders「完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

27.野村総合研究所とASG Group Limitedの事例

株式会社野村総合研究所(NRI)のグループ会社であるオーストラリアのASG Group Limitedは、Velrada Capitalの発行済みの全株式を取得し、完全子会社化しました。Velrada Capitalはオーストラリアにおけるトップクラスのマイクロソフトパートナーであり、マイクロソフトが提供するクラウドサービスの導入コンサルティングを行っていた会社です。NRIの掲げる、DXにかかわる能力をグローバルに強化するという成長戦略に合致することから、子会社化に至りました。

技術力や顧客基盤を活かして、より付加価値の高いDXサービスを展開するとしています。

参照元:株式会社野村総合研究所「グループのAGSが豪州のVelrada社を100%子会社に

28.triplaとアイテック阪急阪神の事例

tripla株式会社は第三者割当増資を行い、アイテック阪急阪神株式会社の運営するベンチャーキャピタルからの出資を受け入れました。triplaは、多言語対応のチャットボットサービスやホテル予約エンジンなど、旅行やレジャー産業に特化したITサービスを提供するベンチャー企業です。アイテック阪急阪神は、阪急阪神東宝グループのシステムインテグレーターとして、システム開発やソリューション開発を行っています。

第三者割当増資の成立によって、triplaの開発してきた旅行やレジャーに関するシステムのノウハウを活用し、インバウンド旅行者向けのソリューションを共同で開発していくことを目指します。

参照元:tripla株式会社「tripla株式会社の第三者割当増資をアイテック阪急阪神株式会社が引き受け」

29.エフネスとミックナインの事例

株式会社ミックナインは2019年12月、株式会社エフネスの株式を取得して資本業務提携契約を締結しました。ミックナインは安心・安全なネットセキュリティを実現するために、システムの戦略策定から企画・開発、運営、セキュリティに至るまでをワンストップで提供しています。エフネスは旅行業界におけるBtoB会社として、航空券やホテルの予約販売、メディア運営、コンサルティングやファイナンスなどを幅広く行う企業です。

ミックナインはエフネスに旅行業における決済分野の開発を行ってきた背景があり、よりいっそう協力するために資本提携することになりました。2020年9月には、ミックナインが追加出資しており、両社の結びつきはより深まっています。

参照元:株式会社ミックナイン「株式会社エフネスの株式取得のお知らせ

30.藤井とソフィア総合研究所の事例

株式会社ソフィアホールディングスの子会社であるソフィア総合研究所株式会社は、2020年8月に株式会社藤井の全株式を取得して完全子会社化しました。ソフィア総合研究所は、企業向けのシステム開発や運用、インフラの構築や運営の管理などを行ってきました。藤井はソフトウェアの開発やプロジェクトマネジメントの支援などを提供してきた企業です。

子会社化によって、ソフトウェアの開発力を拡充することや、開発体制を強化することが見込まれます。グループ全体の高いシナジー効果が期待でき、企業価値のさらなる向上を目指します。

参照元:株式会社ソフィアホールディングス「当社連結子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ

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まとめ

本記事では、システム開発会社のM&Aについて、市場のトレンドや主な手法、PMIの重要性などを解説しました。紹介した事例を参考に、自社がM&Aを行う目的や期待できる効果を考えてみてもよいでしょう。その効果を得るためにも、PMIについてより詳しく考えておく必要があります。ある程度具体的な見通しや計画を立てた上で、M&Aを実行できると理想的です。

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