ゲーム会社のM&A動向とは?メリット・事例・成功のコツを紹介

2024年5月10日

ゲーム会社のM&A動向とは?メリット・事例・成功のコツを紹介

このページのまとめ

  • ゲーム業界は近年飛躍的に成長した業界で、今後も市場成長が見込まれている
  • 厳しい競争のなか、多くのゲーム会社が生き残りをかけてM&Aを実施している
  • ゲーム会社のM&Aは今後も活発に実施されると考えられる
  • ゲーム会社の譲渡を成功させるには、シナジーや譲渡スキームの検討などが重要
  • ゲーム会社の買収を成功させるには、デューデリジェンスと適切なPMIの実施などが重要

ゲーム業界は、コロナ禍において飛躍的に成長した業界の一つです。この流れは今後も加速していくと予想されます。その一方で、競争は非常に厳しくなっており、多くの企業が生き残りをかけてM&Aを実施しています。

そこで本コラムでは、ゲーム会社のM&Aを検討している方に向けて、ゲーム業界のM&Aの動向、手法、メリット、成功させるためのコツなどについて、事例を挙げながら解説します。

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ゲーム業界の市場概況

まずはじめに、ゲーム業界における市場の動向や業界構造、近年のトレンドについて解説します。

ゲーム業界の市場動向

年度ゲーム業界の市場規模
20181兆6,704億円
20191兆7,330億円
20202兆197億円
20212兆35億円
20222兆316億円

ファミ通ゲーム白書2023」によると、国内のゲーム業界全体は2020年にコロナ禍で規模・ゲーム人口ともに急増しました。また、直近2021-2022年は2020年の勢いと比較するとやや停滞気味ですが、それでも2022年の市場規模は、前年比1.4%成長の2兆316億円となっています。

グローバル市場は、直近でインフレ影響や巣籠もり需要の減退によって前年比7.0%減であることに鑑みると、国内のゲーム市場は手堅い成長を続けていると言えるでしょう。

出典:
ファミ通.com「ファミ通ゲーム白書2019
ファミ通.com「ファミ通ゲーム白書2020
ファミ通.com「ファミ通ゲーム白書2021
ファミ通.com「ファミ通ゲーム白書2022
ファミ通.com「ファミ通ゲーム白書2023

ゲーム業界の分類

ゲーム業界は主に次の3つに分類することが可能です。

  1. 家庭用ハード:Nintendo Switch、PlayStationなどのゲーム機本体
  2. 家庭用ソフト:上記ハードのゲーム機で動作するコンテンツ
  3. オンラインプラットフォーム:スマートフォンアプリ、PC上ゲームなどのインターネット接続によるゲーム、上記家庭用ハードのeスポーツなども包含

ファミ通ゲーム白書2023」によると、これらのうち、スマートフォンなどの普及によってオンラインプラットフォームが全体の7割ほどを占める市場規模を有しています。一方で、ゲーム人口としては家庭用ゲーム機が2,856万人、PCおよびアプリゲームユーザーが5,365万人となっています。

ゲーム業界の市場トレンド

市場の拡大を牽引している要因はコロナ禍を中心に次の4点が挙げられるでしょう。

  1. コロナ禍によるゲーム人口の増加
  2. オンラインプラットフォーム市場の急成長
  3. 家庭用ハード機のヒット
  4. 新市場の登場

既に紹介してきたコロナ禍の影響やスマートフォン普及によるオンラインゲームの成長に加えて、近年では家庭用ハード機の好調も市場の成長ドライバーの一つとして挙げられます。Nintendo Switchの大型タイトルの好調をはじめ、PlayStation5やXbox Series X/Sの普及などがその一例です。

また、eスポーツなどの新市場が登場した点も重要なトレンドの一つとなります。

eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には電子機器を使って行う娯楽・競技・スポーツ全般を指します。コンピュータゲームやビデオゲームをベースにした競技をスポーツとして捉えるときの名称です。

年度eスポーツ業界の市場規模
201961.2億円
202083.5億円
202198.7億円
2022125.3億円
2023162.2億円
2024194.5億円
2025217.8億円

※2023年以降は予測値

一般社団法人日本eスポーツ連合の発表によると、2022年の国内eスポーツ市場は125億円となり、前年比127%の成長を達成しました。またこの急成長は今後も続き、年平均20%以上での成長が見込まれています。

参照元:一般社団法人日本eスポーツ連合「2022年の国内eスポーツ市場規模が100億円を突破
「日本eスポーツ白書2023」の内容を先行公開

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ゲーム会社のM&A動向 

この章では、ゲーム会社のM&Aについて3つのトレンドを取り上げます。

1.海外展開を目的としたM&A

まず、海外展開のためにM&Aを活用するケースが考えられます。現地企業とのM&Aにより、短期間で海外拠点を構築できるためです。国内で成功したゲームを海外で展開するためのM&Aは、海外市場の拡大とともに今後加速していくと予想されます。

2.事業の存続と成長を目的としたM&A

ゲームの品質向上や新規ユーザーの獲得を目的としたM&Aも活発化しています。スマートフォン向けゲームは、熱心なゲームファン以外のユーザー層もターゲットにできます。これまで以上に、ターゲット層やサービス内容の拡大が求められるでしょう。

事業規模やサービス領域を拡大して専門性の高い人材を獲得し、多様化するニーズに応えるためには、M&Aが有効な手段です。

3.新市場への適応を目的としたM&A

スマートフォン向けゲームの需要が高まるなか、大手家庭用ゲーム会社もM&Aを活用して新たな市場に参入する動きが見られます。例えば、家庭用ゲームの人気キャラクターをスマートフォンゲームへ登場させるために、スマートフォン向けゲーム会社とのM&Aを実施するケースなどが想定されます。

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ゲーム会社のM&Aを行う背景や動機

次に、ゲーム会社のM&Aを行うに至る背景や動機について、売却側・買収側双方の視点から解説します。

ゲーム会社を売却する理由

ゲーム会社を売却する理由としては、主に次の3点が挙げられるでしょう。

  1. 競争が激化するなかで自社単体での成長に限界を感じたため
  2. 別のビジネスを始めたい・キャッシュを得たいといった理由でイグジットを行うため
  3. 特定の事業にリソースをより集中させたいため(事業譲渡の場合)

ゲーム会社を買収する理由

一方のゲーム会社を買収する理由としては、主に次の3点が挙げられます。

  1. 強力なコンテンツやハードの製造など、自社にはないケイパビリティを獲得するため
  2. 若者向け企業が中高年向けのゲーム企業を買収したり海外の現地企業を買収したりするなど、異なる顧客接点を獲得するため
  3. アニメ・映画産業などの他業種からゲーム業界に参入するため
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ゲーム会社のM&Aのスキーム 

ゲーム会社のM&Aでよく活用されるスキームは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」です。

株式譲渡

株式譲渡とは、譲渡側の株主が保有する発行済株式を譲受側に譲渡するスキームであり、譲渡側が譲受側の子会社になるイメージです。譲渡側は株主が変わるだけで会社組織はそのまま承継され、会社の資産・負債・従業員・社外の第三者との契約・許認可などは原則的に存続します。また、手続きが他の方法と比較して簡単なこともメリットです。

ただし、未払い残業代などの簿外債務や紛争に関する損害賠償債務など、現時点では未発生でも将来的に発生し得る偶発債務を引き受けなければならない点はデメリットといえます。
M&A実施前、譲渡会社に対して入念に調査を行うことが大切です。

事業譲渡

事業譲渡とは、譲渡人が所有する事業の全部または一部(土地・建物・機械設備などの資産・負債、ノウハウや知的財産権などを含む)を譲受人に譲渡することです。資産・負債、契約、許認可などの個別の譲渡については、債権債務・雇用関係などの契約関係を債権者や従業員の同意を得て一つずつ切り替えていく必要があります。譲渡資産に不動産が含まれる場合は、登記手続きも必要です。また、許認可が譲受人に移転しないケースも多く、その場合は譲受人が新たに許認可を取得しなければなりません。

事業譲渡の方法を選択した場合、手続きが株式譲渡よりも複雑になりやすい点はデメリットです。しかし、個々の事業や資産の譲渡が可能で、譲受人は事業の一部を手元に残せます。譲受人にとっても、特定の事業や資産のみを譲受できるため、簿外債務や偶発債務を承継せずに済むメリットがあります。

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ゲーム会社のM&Aのメリット

ここでは、ゲーム会社のM&Aをすることで得られるメリットを、売却・買収の両面で解説します。

ゲーム会社売却のメリット

ゲーム会社をM&Aによって売却するメリットは、主に以下の6つです。

  1. 創業者利益の獲得
  2. より短期間での投資回収
  3. 経営基盤の安定
  4. 後継者不足問題の解決
  5. 従業員の雇用確保
  6. 個人保証の解消

それぞれ解説します。

1.創業者利益の獲得

ゲーム会社が売却された場合、株主である創業者は株式の売却により利益を得ます。また、会社の一部のゲーム事業のみを売却した場合でも、事業売却により利益を獲得できます。このようにして得た利益は、新会社・新事業の立ち上げ、事業投資、退職金などへの活用が可能です。

2.より短期間での投資回収

ゲーム機やゲームソフトの開発には、人件費をはじめとした多額の初期投資が必要です。また、ゲーム機やゲームソフトの販売、ゲームの運営による継続的な収入で投資額を回収するまでには、通常長い時間を要します。

一方、ゲーム会社・事業を売却すれば、上記のように多額のキャッシュが生まれると想定されます。そのため、通常通り事業を継続する場合よりも、短期間で投資額を回収できる可能性があるでしょう。

3.経営基盤の安定

経営基盤の安定化を図りやすいこともゲーム会社売却のメリットです。他の業界と同様に、ゲーム業界でも資金面・人材面などで課題を抱える中小企業は多く存在します。大企業にゲーム会社を売却することで、大企業のブランド力や資金力を味方につけられるため、経営基盤を強化できます。

4.後継者不足問題の解決

ゲーム会社のなかには、業績が好調でも後継者が見つからない会社も見受けられます。そのような状態で廃業するのは得策とは言えません。後継者問題の解決に、M&Aは有効な手段となるでしょう。

より大きな会社に自社を売却できれば、安定した経営が可能となり、事業がさらに活性化すると想定されます。

5.従業員の雇用確保

前述のように、中小規模のゲーム会社では、経営難や人材難に陥っているケースも少なくありません。会社が赤字になれば、廃業することも一つの選択肢です。しかし、会社が潰れてしまえば、そこで働く従業員は職を失ってしまいます。

一方、会社が大手ゲーム会社に売却された場合、取引内容によっては従業員が働き続けられるため、リストラを回避できます。

6.個人保証の解消

中小企業が金融機関から融資を受けると、経営者個人が会社の連帯保証人になるのが通常です(保証債務を負う)。そのため、会社が倒産して融資を返済できなくなった場合、経営者個人が会社に代わって融資を返済する(=保証債務を履行する)義務が発生します。

確かに「経営者保証」は経営の規律を促し、資金調達を円滑にする一面もありますが、経営者にとっては大きな負担となるでしょう。M&Aによって会社を売却すれば、経営者の個人保証を解消できます。

ゲーム会社を買収するメリット

ゲーム会社をM&Aによって買収するメリットは、主に下記の4つです。

  1. 優秀な人材の確保
  2. 人気ゲームタイトルの獲得
  3. コスト削減
  4. 新規参入可能

以下でそれぞれ詳しく説明します。

1.優秀な人材の確保

人気ゲームを作るためには、優秀なスタッフが必要です。しかし、新卒を一から育てるにはお金も時間もかかる上、即戦力となる十分な数の人材を中途採用で確保することは簡単ではありません。ゲーム会社の買収によって、長年ゲーム開発に携わってきた優秀な人材を獲得できる可能性があります。実績と技術力のある人材を一度に獲得できれば、人手不足の問題を解消できるでしょう。

2.人気ゲームタイトルの獲得

人気ゲームを獲得できることも、ゲーム会社買収のメリットです。人気ゲームには根強いファンがいるため、安定した収入を確保でき、売上や利益の増加につながります。それに伴い、業績も安定させることができます。

3.コスト削減

ゲーム会社同士のM&Aは、事業規模の拡大によるコスト削減が期待できます。

例えば、同じ地域にある売り手企業と買い手企業の営業所を一箇所にまとめることで、オフィス賃料などの削減が可能です。また、重複する機能の統合や調達の集中化などの施策によっても、コスト削減が期待できます。

4.新規参入可能

他業界の企業がゲーム会社を買収することで、ゲーム業界に新規参入できます。

ゲーム事業を行うためには、多くの技術や人材が必要となります。また、事業の立ち上げには、顧客獲得やPRなどのマーケティング活動も不可欠です。そのため、ノウハウや技術がない状態でゲームビジネスを成功させることは容易ではありません。
一方、ゲーム会社を買収した場合には、ある程度の技術やスタッフなどのリソースがすでにある状態でゲーム事業を展開できます。ゼロからゲーム業界へ参入するよりも、少ないリスクと短い期間で事業を開始・成長させられるでしょう。

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ゲーム会社の売却・M&A事例 

ここでは、ゲーム会社のM&Aの事例を紹介します。

サイバーエージェントによるBABEL LABELのM&A

  • 譲渡会社:映画やドラマ等の制作を手掛けるコンテンツスタジオBABEL LABEL
  • 買収会社:メディア事業・ゲーム事業を展開するサイバーエージェント
  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:日本発、世界に通用する高品質な映像コンテンツを創る
  • 結果:サイバーエージェントがBABEL LABELを子会社化

参照元:株式会社サイバーエージェント「コンテンツスタジオ BABEL LABELのサイバーエージェントグループ参画について

コムシードによるアイピープログレスのM&A

  • 譲渡会社:娯楽コンテンツ領域でのソフトウェア開発を行っているアイピープログレス
  • 買収会社:インターネットを通じてユーザーにコンテンツを提供し、情報を発信するモバイル事業を展開するコムシード
  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3,000万円
  • 目的:経営基盤の強化・合理化や開発スタッフの増員による利益率の向上、事業拡大による受託開発など顧客との契約業務の成長・発展
  • 結果:コムシードがアイピープログレスを完全子会社化

参照元:コムシード株式会社「株式会社アイビープログレスの株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ

テンダによる熱中日和のM&A

  • 譲渡会社:ゲーム、スマフォコンテンツ開発会社である熱中日和
  • 買収会社:クラウドサービス、スマートフォン(Android・iPhone)向けソーシャルゲーム・ソーシャルアプリの開発、ウェブシステム・モバイルサイトの開発を行っているテンダ
  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:BtoC分野でのゲームコンテンツを中心としたコンシューマー事業のビジネスモデル強化
  • 結果:テンダが熱中日和を完全子会社化

参照元:テンダ「テンダ、株式会社アールフォース・エンターテインメントの株式取得で子会社化 ~ コンシューマー事業の戦略的な推進体制を強化 ~

エクストリームによるエス・エー・エスのM&A

  • 譲渡会社:スマートフォン、コンシューマー、アーケードゲームの企画・開発・運営を行っているエス・エー・エス
  • 買収会社:保有IPを用いた各種ゲーム・ライセンスサービスエクストリーム
  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:ゲーム開発受託案件の増加への対応
  • 結果:エクストリームがエス・エー・エスを子会社化

参照元:M&A Online「エクストリーム<6033>、ゲーム開発のエス・エー・エスを子会社化

サイバーステップによるネッチのM&A

  • 譲渡会社:オンラインクレーンゲーム配信のネッチ
  • 買収会社:オンラインクレーンゲームを主力事業の一つとしているサイバーステップ
  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:収益機会の拡大
  • 結果:サイバーステップがネッチを子会社化

参照元:M&A Online「サイバーステップ<3810>、オンラインクレーンゲーム配信のネッチを子会社化

任天堂によるSRDのM&A

  • 譲渡会社:ゲームソフトウェア・Webシステム開発のSRD
  • 買収会社:家庭用レジャー機器の製造・販売を行っている任天堂
  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:ゲームソフト開発のための安定した開発基盤を獲得し、開発効率を向上させる
  • 結果:任天堂がSRDを完全子会社化

参照元:M&A Online「任天堂<7974>、ゲームソフト開発のSRDを子会社化

UUUMによるSamurai工房のM&A

  • 譲渡会社:プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」を運営するSamurai工房
  • 買収会社:クリエイターサポート事業などを行うUUUM
  • 実行時期:2021年12月
  • スキーム:資本業務提携
  • 目的:クリエイターおよび選手の価値向上や両社の大会の発展に貢献つなげる

参照元:UUUM(ウーム)株式会社『プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」を運営する株式会社Samurai工房との資本業務提携に関するお知らせ

マノア・リノによるサンバードのM&A

  • 譲渡会社:ゲームグラフィックなどを制作するサンバード
  • 買収会社:システム開発を手掛けるマノア・リノ
  • 実行時期:2021年08月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:5,000万円
  • 目的:ゲーム会社との取引拡大やゲームを自社開発できる体制の構築
  • 結果:マノア・リノがサンバードを完全子会社化

参照元:日本経済新聞「マノア・リノ、ゲーム画像制作会社を買収

SHIFTによるDICOのM&A

  • 譲渡会社:ローカライズ事業およびゲームの開発事業を展開するDICO
  • 買収会社:ソフトウェアの品質保証・テストを手掛けるSHIFT
  • 実行時期:2021年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 目的:開発プロジェクト全体を通してのシームレスなオペレーションフローの実現
  • 結果:SHIFTがDICOを子会社化

参照元:株式会社SHIFT「DICO株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

オルトプラスによるアクセルマークのM&A

  • 譲渡会社:インターネット広告事業などを展開するアクセルマーク
  • 買収会社:ソーシャルゲームの企画・開発・運営、ITサービスの開発・運用サポートのオルトプラス
  • 実行時期:2020年9月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:2,000万円
  • 目的:ソーシャルゲーム事業の基盤強化
  • 結果:アクセルマークのゲーム事業をオルトプラスが譲り受けた

参照元:M&A Online「オルトプラス<3672>、アクセルマーク<3624>からゲーム事業を取得

Activision BlizzardによるKing Digital EntertainmentのM&A

  • 譲渡会社:スウェーデン発の「Candy Crash」などを有するKing Digital Entertainment
  • 買収会社:米国の「Call of Duty」や「World of Warcraft」「Diablo」などを有するActivision Blizzard
  • 実行時期:2015年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:59億ドル(およそ7,158億円)
  • 目的:コアなファン層が多いActivision Blizzardが、Kingの強みとするライト層との接点を獲得するため
  • 結果:完全子会社化し、以降モバイル事業が順調に拡大

参照元:
gamebiz「【速報】アクティビジョン・ブリザード、『キャンディークラッシュ』のKingを59億ドルで買収
みずほ銀行産業調査部「コンテンツ産業の展望2022

中国Tencentによる180社以上への出資・M&A

  • Tencentは主に海外のコンテンツホルダーへの出資・M&Aを積極的に実施
  • 2016年「Clash Of Clans」などを手掛けるフィンランドのSuperCellを約86億ドルで買収
  • 2021年「LittleBigPlanet」などを手掛けるイギリスのSumoを12.7億ドルで買収
  • 2021年日本のKADOKAWAとの資本業務提携による「ELDEN RING」などの展開

参照元:
REUTERS「China’s Tencent buys ‘Clash of Clans’ maker Supercell for $8.6 billion
REUTERS「Tencent snaps up British video game developer Sumo in $1.3 bln deal
日本経済新聞「テンセント、ゲーム180社出資で世界へ ソニー超え首位

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ゲーム会社のM&Aを成功させるコツは?

ゲーム業界でM&Aを成功させるために、コツを押さえておきましょう。
成功のコツを、譲渡会社側・買収会社側に分けて解説します。

譲渡会社側が成功するためのコツ

譲渡会社側がゲーム業界でのM&Aを成功させるコツ4つを、以下で紹介します。

  1. シナジーをもたらす可能性のある会社に売却する
  2. 人気ゲームタイトルを生み出す
  3. 複数のプラットフォームに対応した体制を作る
  4. 状況に応じて最適なスキームを選ぶ

それぞれ詳しく解説します。

1.シナジーをもたらす可能性のある会社に売却する

M&Aにおける「シナジー」とは、複数の企業を1つに統合することで、各企業が別々に活動していたときよりも大きな成果を生み出すことです。

具体的な効果としては、売上の増加・販売チャネルの拡大・生産拠点の集約などが挙げられます。買収する企業にとって、シナジーの創出はM&Aの大きなメリットです。そのため、シナジー効果が期待できる企業ほど、買収金額は高くなる傾向があります。ゲーム会社を少しでも高く売りたいのであれば、シナジー効果が期待できる買収企業を選ぶ必要があるでしょう。

2.人気ゲームタイトルを生み出す

前述したように、人気ゲームを制作している会社は、熱狂的なな顧客(ファン)から安定した収益を確保できる可能性があります。そのため、買い手候補が見つかりやすく、満足のいく条件で会社を売却できるケースが多いです。ゲーム会社の売却を検討している場合は、長期的に人気ゲームの制作を心がけるとよいでしょう。

3.複数のプラットフォームに対応した体制を作る

1種類のゲーム機にしか対応していないソフトと、複数のゲーム機に対応しているソフトでは、後者のほうがより幅広い顧客層にリーチできます。つまり、売上が伸びやすいといえます。したがって、複数のプラットフォームに対応しているシステムは、買収企業に高く評価される可能性があります。ゲームソフトを企画・制作する会社は、マルチプラットフォーム対応のソフトを制作できる体制を構築しましょう。

4.状況に応じて最適なスキームを選ぶ

ゲーム会社を売却する際には、状況に応じて最適なM&Aスキームを用いることが重要です。

例えば、「会社ごと売却して経営から離れたい」「後継者がいないため事業承継を行いたい」「現在のゲーム事業から撤退してまったく新しい事業を始めたい」といったケースでは、会社の経営権を譲渡する「株式譲渡」のスキームが適切です。

一方、「赤字事業を売却したい」「負債が多すぎて会社全体を買ってくれる企業が見つからない」といったケースでは、会社の経営権を移さずに事業の一部だけを売却できる「事業譲渡」のスキームが適しています。

会社の状況を把握し、仲介業者などの専門家に相談した上で、最適な方法を選択しましょう。

買収会社側が成功するためのコツ

ゲーム会社を買収する側が成功するためのコツは、主に下記の32つです。

  1. デューデリジェンスの徹底
  2. 適切なPMIの実施
  3. 市場の成長領域と自社に不足するケイパビリティを鑑みた対象先の選定

それぞれ詳しく解説します。

1.デューデリジェンスの徹底

デューデリジェンスとは、対象会社のさまざまなリスクを精査するために、主に譲受会社が専門家を交えて行う調査です。デューデリジェンスは「DD」と略されることが通常です。

デューデリジェンスを実施する法的義務はありませんが、M&A取引成立後のリスクを軽減するために必要なものです。デューデリジェンスの結果、対象企業が「期待していたほど魅力的ではない」「簿外債務を抱えていた」などのことが判明した場合、契約を結ばないことも一つの選択肢でしょう。

デューデリジェンスの調査対象は、M&Aの規模や、M&Aを行う当事者の意向により異なりますが、一般的には資産・負債などの財務調査(財務DD)、株式や契約内容などの法務調査(法務DD)です。そのほか、ビジネスモデルなどに対するビジネス(事業)DD、税務DD(財務DDに一部含まれることもある)、人事・労務DD(法務DDに一部含まれることもある)、知的財産(知財)DD、環境DD、不動産DD、ITDDなどもあります。

ただし、これらすべてのデューデリジェンスを実施する必要はありません。多くの場合、企業や売り手の状況を考慮し、必要なデューデリジェンスのみを実施します。デューデリジェンスは、将来のリスクヘッジに役立つものです。必要な種類のデューデリジェンスは、時間をかけてしっかりと実施しましょう。

また、デューデリジェンスは適切な時期に実施する必要があります。早すぎると従業員に不安を与えるおそれがあり、遅すぎるとリスクヘッジやシナジーの効果が薄れてしまうためです。適切なタイミングは「基本契約締結後~最終条件交渉前」です。この時期に適切なデューデリジェンスを実施できるよう、事前に準備しておくことが非常に重要です。

2.適切なPMIの実施

譲渡企業が長期的に安定した収益を上げ続けるためには、M&Aの譲渡側だけではなく、譲受側の取り組みも重要なのは言うまでもありません。譲渡された事業が円滑に継続し、さらなる成長に向けて発展すること、すなわちM&A自体の成功が不可欠です。

譲受人がM&Aの目的を実現し、M&Aの利益を最大化するためには、最終的なM&A契約の締結・決済が重要なポイントですが、それ自体はいわば「スタートライン」にすぎません。M&Aにおいては、実施後の統合プロセス(PMI:POSTMERGER INTEGRATION)が非常に重要です。

PMIはM&A成立後、一定期間内に行われる経営統合作業のことです。

譲渡企業への人材提供を目的とする場合は、M&A後のビジネスを円滑に進めるために、企業文化・ワークフロー・評価制度などを統合するPMIが必要となります。M&Aの検討段階でPMIを必ず計画し、準備しておきましょう。

関連記事:【最新情報】IT業界のM&Aとその要諦とは?

3.市場の成長領域と自社に不足するケイパビリティを鑑みた対象先の選定

対象先を選んだ後はDDやPMIがポイントとなりますが、その前の対象先を選定するフェーズも非常に重要です。特に、市場のトレンドを踏まえた上での成長領域の見極めと、自社がそこに対して不足するケイパビリティを補ってくれる買収先を選定しましょう。

例えば、モバイル系のゲームが強い企業がPCゲームや家庭用ハードゲームに強い企業を買収する場合や、ゲームを頻繁に行うコア層への接点が強い企業がよりライトな層を強みとする企業を買収する場合などが挙げられます。

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ゲーム業界のM&Aの展望

最後に、ゲーム業界のM&Aにおける今後の展望を紹介します。昨今の市場のトレンドを踏まえると、今後の展望としては次の3点が挙げられるでしょう。

  1. 他業界からの参入が増加
  2. 自社ケイパビリティを補うためのM&Aが増加
  3. クロスボーダーM&Aは今後も増加

それぞれ詳しく解説します。

1. 他業界からの参入が増加

クラウドゲームやeスポーツなどの新市場は今後も急速に成長していくことが見込まれます。その結果、従来のゲーム業界のプレイヤーだけでなく、他業界からの参入が予想されるでしょう。

例えばGoogleやAmazon、MicrosoftなどのIT業界がその代表例で、他にスポーツ業界からの参入も起こり得るかもしれません。

2. 自社ケイパビリティを補うためのM&Aが増加

ゲーム業界におけるM&Aの背景や成功のポイントとして、自社に不足するケイパビリティの獲得を挙げました。今後はその観点からM&Aが増加すると予想されます。

近年、Apex LegendsやFORTNITEに代表されるように、PC・モバイル・ハードを跨いだマルチプラットフォーム型のゲームコンテンツが人気を博しています。このトレンドは今後も続くことが見込まれるため、既存のプレイヤーによるケイパビリティ獲得を企図したM&Aは増える可能性が高いでしょう。

3. クロスボーダーM&Aが堅調に増加

近年、日本のゲームコンテンツが海外で人気を集めるなど、ゲーム業界のグローバル化が進んでいます。この背景の一つには、オンライン型のゲームがコロナ禍などを契機に急成長した点が挙げられるでしょう。

このようにゲーム業界のグローバル化が進むなかで、進出したい国や現地のゲーム企業を買収するケースは増えることが予想されます。

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まとめ

本コラムでは、ゲーム業界の市場動向・M&A動向について解説しました。
ゲーム市場は、近年ますます拡大しています。特に、誰でもスマホアプリや近年のeスポーツの発展もゲーム人気を高めています。
このような背景から海外のゲームユーザーをターゲットにした海外企業とのM&Aや、新しい技術・ノウハウの獲得を目的としたM&Aの事例も増えています。この流れは、今後も活発に実施されていくでしょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、豊富なノウハウを持ったコンサルタントが在籍しています。
デューデリジェンスにも対応しており、ゲーム会社のM&Aのご成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。
安心かつ円滑なM&Aを実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。