同族会社の株式譲渡のメリット・デメリット|発生する税金は?

2023年4月26日

同族会社の株式譲渡のメリット・デメリット|発生する税金は?

このページのまとめ 

  • 同族会社の株式譲渡では主に相続、贈与、売買が用いられる
  • 同族会社の株式譲渡では、状況に応じて法人税や所得税、贈与税等の税金がかかる
  • 同族会社の個人から個人、同族会社間の個人から法人等、譲渡形態でかかる税金が異なる
  • 同族会社は中小零細企業が多く、譲渡制限株式であることが一般的

株式譲渡を考えているけれど、高額な税金がかかる可能性があるのではないかと不安になっていませんか? 同族会社の株式譲渡では、相続や生前贈与、売買いずれの方法を選ぶかで税金が変わってきます。また個人から法人への譲渡、法人から個人への譲渡といった譲渡形態によっても税金が異なります。この記事では同族会社の株式譲渡に関する税金に関する知識やメリット・デメリットについて解説しています。

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同族会社とは

同族会社とは会社の3人以下の株主、あるいは、これらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を占めている会社のことを指します。

特殊な関係にある個人とは、次のような場合です。

  1. 株主等の配偶者
  2. 株主等と事実上の婚姻関係にある方
  3. 株主等の六親等以内の血族
  4. 株主等の三親等以内の姻族
  5. 株主等の使用人
  6. 1~5以外で株主等から受ける金銭やその他資産によって生計を立てている方
  7. 2~6に該当する方と生計を同じくする親族

また、特殊な関係にある法人とは、次のような場合です。

  1. 株主等1人で50%を超える株式や議決権を持っている他の会社
  2. 株主等1人と1の会社で50%を超える株式や議決権を持つ他の会社
  3. 株主等1人と1、2の会社で50%を超える株式や議決権を持つ他の会社

同族会社のメリット

同族会社のメリットは次の3つです。

  • 経営理念が共有しやすい
  • スピーディな意思決定ができる
  • 事業承継が円滑にできる

それぞれ詳しく解説します。

経営理念が共有しやすい

同族会社は経営者一族で経営をしているケースが多い傾向があります。そのため他人よりも親族や家族の方が意見や考え方を理解しやすく、結果的に経営理念を共有しやすくなる環境が生まれます。

経営理念が共有されていると、浸透していれば従業員が自主的に経営理念に準じた活動をするように、会社の目標や予算達成に結びつく可能性も高まるでしょう。

スピーディな意思決定ができる

同族会社は親族だけで株主総会の支配権を握っているため、スピーディな意思決定が可能です。一方、非同族会社では、株主総会の特別決議で拒否権を行使されたり、株主の意見に左右されながら事業を行っていくことが必要になるため、経営者の自由度が低下する可能性があります。

事業承継が円滑にできる

同族会社であれば、自身の親族を後継者として経営権を握らせることが比較的容易です。そのためスムーズに事業承継ができるうえ、自分の影響力も残せる可能性があります。

同族会社のデメリット

また同族会社のデメリットは次の3つです。

  • 親族同士でトラブルに発展することがある
  • 親族以外の社員が不平等を感じることがある
  • 経営者による会社の私物化が起こりやすい

それぞれ詳しく解説します。

親族同士でトラブルに発展することがある

同族会社は親族や家族よりも意見や考え方を理解しやすい半面、赤の他人には言えない率直な意見も交わせることから、逆にトラブルに発展する可能性があります。役員が親族のような場合は、会社の経営そのものや社風にも影響を与えるため、とりわけ注意を払う必要があるでしょう。

親族以外の社員が不平等を感じることがある

報酬や待遇などについて、親族とそれ以外の従業員間で差が生まれると、非同族会社よりも従業員が不平等感を感じやすくなる可能性があります。従業員が不平等感を持ち続けていると、ある日突然の退職や、従業員のモチベーション低下につながりやすいため注意が必要です。

経営者による会社の私物化が起こりやすい

同族会社は1人に権限が集中し、不当な人事権を行使したり、会社の経費と自分の財布の区分があいまいになったりする可能性があります。こうした会社の私物化も従業員のモチベーションに悪影響を与えるため、気が付かないうちに私物化が起こっていないか普段から意識しおく必要があります。

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同族会社間の株式譲渡のメリット

同族会社で経営者が後継者に経営を引き継ぎたいときには、株式譲渡がよく用いられます。

株式譲渡は第三者だけではなく親族に対しても可能なため、同族会社が多い国内中小企業においては、子どもを後継者にする目的で株式譲渡をする事例が多く見られます。

株式譲渡を同族会社間で行う手法として、良く用いられるのが、生前贈与、相続、売買の3つです。それぞれどのような手法なのか、解説していきます。

生前贈与

保有している財産を、生きている間に無償で需要とすることを生前贈与と言います。贈与をする場合は、贈与税がかかりますが、年間110万円の基礎控除があり、年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。

相続

被相続人(経営者)の死亡に伴い、株式譲渡が行われます。一般的に法定相続人に定められた割合で資産が相続され、相続した財産に応じた相続税がかかりますが、基礎控除3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)までは相続税がかかりません。

売買

株式譲渡契約書を交わし、売主が株式を譲渡し、買主はそれに対する対価を支払います。

以下、同族会社間で株式譲渡をするメリットを、生前贈与、相続、売買3つのケースに分けて紹介します。

生前贈与のメリット

生前贈与により親族内で株式譲渡をする場合、暦年課税、あるいは相続税精算課税制度のいずれかを活用できるメリットがあります。

暦年課税で贈与する場合、年間110万円の基礎控除が利用可能です。株式の価値が高額な場合は、暦年贈与で定期的に贈与をすることで贈与税の負担を軽減できます。

一方、相続税精算課税制度は60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子どもに贈与した場合、累計2,500万円の特別控除が利用可能で、控除枠の範囲内であれば株式を譲渡されても贈与税がかかりません。ただし2,500万円を超えた場合は超えた分に対して一律20%税金を相続時に課税されます。

なお2024年1月から、相続税精算課税制度も年110万円の基礎控除枠が加わります。

相続税のメリット

被相続人が同族株主の場合、経営者の死亡などが起こると自動的に株式譲渡が行われます。相続で株式譲渡をする場合、3,000万円の基礎控除が利用できる点と、遺言により希望する方に株式を引き継げると言うメリットがあります。

相続税は3,000万円の基礎控除があり、株式譲渡された株式の価値と、その他の資産が3,000万円を下回る場合は相続税がかかりません。法定相続人がいる場合は、法定相続人×600万円が基礎控除に上乗せされません。つまり配偶者、子ども2人いる場合は基礎控除3,000万円+法定相続人3人×600万円で=4,800万円が基礎控除額になります。

また相続は遺言によって希望する相続人に資産を残すことができる点もメリットと言えるでしょう。

売買のメリット

同族株主から現金等で買い取って株式譲渡を受けるケースのことです。売却をした元同族株主は売却益を得られるメリットがあります。また買い取った側は、現金を負担しているため他の相続人から遺留分を主張されることがなく、シンプルかつ円滑に事業承継ができるメリットがあります。

遺留分とは被相続人(相続される方)の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障される遺産取得分のことです。例え遺言を残したとしても遺留分を侵害することはできません。

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同族会社間の株式譲渡のデメリット

次に同族会社間の株式譲渡のデメリットについても見ていきましょう。デメリットについても生前贈与、相続税、売買3つのケースでそれぞれ紹介します。

生前贈与のデメリット

相続税精算課税制度を利用しないと贈与税の暦年課税は基礎控除が少なく、税率も高い傾向があります。そのため計画的に基礎控除を使いながら贈与をしていかないと、高額な贈与税が課されることになります。株式の価格が高額な場合は、相続税精算課税制度を利用するか、より時間をかけて基礎控除を使いながら贈与していく必要があるでしょう。

また生前に株式譲渡が行われていると、特別受益とみなされ、法定相続人の遺留分を主張される点があるため注意が必要です。生前贈与をするときは、同族株主が法定相続人に、説明して十分理解を得ておくようにしましょう。

また、特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前贈与などで特別に受け取った利益のことです。

相続税のデメリット

相続時に株式譲渡をする場合、複数の法定相続人がいて、遺産が株式しかない場合、平等な分割ができずにトラブルに発展する可能性があるため、生命保険などを活用して生前のうちに準備が必要です。

また企業価値が高まり株式評価額が高額になると、相続する遺産が基礎控除の範囲内に収まらずに相続税が発生することがあります。こちらについても早めの自社株対策を立てておくことが大切です。

売買のデメリット

株式を単純に買い取って譲渡してもらう方法のため、譲渡を受ける側は相応の資金の準備が必要です。また同族だからといって不当に安い価格で譲渡すると、買主側に贈与税が課されることがあります。譲渡を受ける側は、十分な買取資金を用意しておきましょう。

関連記事:株式譲渡とは?手続きの流れや注意点・メリット・デメリットなどを解説

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同族会社間の株式譲渡で発生する税金

同族会社間で株式譲渡をする場合、以下のような税金がかかることがあります。

  • 法人税
  • 所得税
  • 贈与税
  • 株式譲渡所得課税
  • 損金不算入
  • みなし贈与課税

各税金の概要について解説します。

法人税

法人が非上場株式を譲渡した場合の税金は以下の計算式で計算します。法人の場合、非上場株式を譲渡する会社が、同族会社にあたるか否かは株式譲渡が行われた後に判定されます。

非上場株式を譲渡したときの売却益=収入-(取得費+譲渡費用)
非上場株式を譲渡したときの譲渡所得×約30%=法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税等

贈与税

個人、法人を問わず、時価よりも高額で非上場株式を譲渡された場合、時価と譲渡価格の差額が贈与と判断され、贈与税が課税されます。

以下が贈与税の速算表(特例税率)です。

基礎控除(110万円)控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

株式譲渡所得課税

個人が非上場株式を譲渡すると、譲渡によって得た所得に対して所得税や住民税がかかります。非上場株式を譲渡した場合の所得税と住民税は、以下の計算式で計算をします。

非上場株式を譲渡したときの譲渡所得=収入-(取得費+譲渡費用)
非上場株式を譲渡したときの譲渡所得×20.315%=所得税と住民税の税額

損金不算入

売主が個人、買主が法人の間で株式譲渡をした場合、時価と譲渡価格の差は役員賞与とみなされます。役員賞与は損金不算入、つまり損金とみなされません。損金とは経費にあたるものをいいます。

みなし贈与課税

個人間で非上場株式の譲渡が、時価と比べて著しく低い金額で行われた場合「みなし贈与課税」の適用を受け、同じく贈与税がかかることがあります。

寄付金課税

売主が法人、買主も法人で非上場株式が時価よりも高額で譲渡された場合、時価と譲渡価格の差額は買主が売主に寄付をしたとみなされ、売主側に寄付金課税が適用されます。寄付金と扱われた場合、法人は損金として扱うことが可能です。

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同族会社間の個人から個人への株式譲渡にかかる税金

同族会社の個人から個人へ非上場株式を譲渡する場合、株式譲渡課税と贈与税のいずれかが課される可能性があります。適正価格で譲渡された場合は所得税がかかり、時価よりも高額で譲渡したり、時価よりも低額で譲渡したりした場合は、贈与税がかかる可能性があります。

時価に対して適用となる税金
適正価格で譲渡所得税
高額で譲渡贈与税
低額で譲渡みなし贈与課税の対象として贈与税
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同族会社間の個人から法人への株式譲渡にかかる税金

同族会社の個人から法人へ株式譲渡をした場合、適正価格であれば、所得税が課税されます。

また時価よりも高額で譲渡したときは、譲渡価格を総収入金額として譲渡所得を計算します。
一方、時価よりも低額で譲渡したときは、譲渡先が同族会社で、その取引で所得税の負担が不当に減少するような場合は、時価に相当する金額を総収入金額として譲渡所得が計算されることがあります。

時価に対して適用となる税金
適正価格で譲渡所得税
高額で譲渡個人:譲渡益と、時価との差額に対し所得税を計算する法人:損金算入できる(個人が役員の場合は損金算入できない)
低額で譲渡個人:譲渡益に対して所得税を計算する法人:受贈益に法人税が加算される
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同族会社間の法人から個人への株式譲渡にかかる税金

同族会社の法人から個人への株式譲渡の場合、適正価格であれば譲渡価格と取得価格の差について益金として法人税が課税されます。益金とは個人で言う利益にあたるものです。

時価よりも著しく高額で譲渡したときは、法人に対して、取得価格と時価の差額が益金となり法人税が課され、時価と譲渡益の差額にも受贈益として法人税が課されます。

一方、時価よりも著しく低額で譲渡した場合は、法人と個人の関係で扱いが異なるため注意しましょう。個人が法人の従業員、あるいは役員の場合は、時価と譲渡所得の差分だけ割安で購入できたと解釈され、給与として扱われます。この場合、個人側は給与所得として所得税が課税され、法人側は差額を損金算入することが可能です。

また、個人が法人の従業員あるいは役員ではない場合、差額は一時所得として所得税が課税され、法人側は寄付という扱いになり、一部損金算入が可能です。

時価に対して適用となる税金
適正価格で譲渡法人税
高額で譲渡益金に法人税、さらに受増益に法人税もかかる
低額で譲渡個人が法人の従業員、または役員個人:給与として所得税法人:損金算入(個人が役員の場合は損金算入できない)
個人が法人の従業員、または役員ではない個人:一時所得として所得税法事に:寄付金として一部損金算入
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同族会社間の法人から法人への株式譲渡にかかる税金

同族会社間の法人から法人への株式譲渡の場合、適正価格であれば譲渡価格と取得価格の差に法人税がかかります。

時価より高額で譲渡した場合は、売り手の法人は譲渡益に対して法人税がかかります。一方、買い手は時価と譲渡価格の差額について寄付を受けたものとして受贈益が法人税の課税対象です。

また時価よりも低額で譲渡した場合、売り手の法人は時価で譲渡を行ったものとして譲渡益が発生し法人税がかかります。買い手の法人は時価と譲渡価格の差額について、売り手から寄付を受けたとみなされ、受増益に法人税が課されます。

時価に対して適用となる税金
適正価格で譲渡法人税
高額で譲渡売り手:譲渡益に法人税がかかる買い手:寄付をしたものとして損金算入が可能
低額で譲渡売り手:譲渡益に法人税買い手:寄付を受けたものとして受贈益に対して法人税
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株式譲渡の手続き方法

株式譲渡にはさまざまな手続きや書類が必要です。ここでは具体的な必要書類や手続き方法の概要について解説していきます。

株式譲渡に必要な書類

株式譲渡をするためには、買い手と売り手の間で締結する株式譲渡契約書を作成する必要があります。契約書の中で、主に譲渡価格や譲渡株式数、従業員の待遇などの条件を取り決め、問題がなければ契約締結となります。

株式譲渡承認の請求

株式譲渡契約書を締結したら、株式譲渡承認請求を行います。株式譲渡承認請求とは、会社に譲渡を承認する決定を請求することを言います。

中小零細企業は会社の乗っ取りや意図しない人物に株式がわたることがないよう、株式に譲渡制限を設ける譲渡制限株式であることが一般的です。こうした譲渡制限株式は、会社の承認なしに株式を譲渡できないため、株式譲渡承認請求が必要になるのです。

取締役会、あるいは株主総会で株式譲渡の決議が可決されたら、売買代金の決済を行います。そして売り手に株主名簿の書き換えを請求し、書き換えが終われば手続きは完了です。

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まとめ

同族会社間の株式譲渡は主に生前贈与、相続、売買の3つの方法が用いられますが、どの方法にもメリットとデメリットがあります、例えば贈与の場合、相続税精算課税制度を活用するか、暦年課税を使うかは株式の価値や、いつごろ相続したいかによっても変わってくるでしょう。また同族会社間の個人から個人への譲渡なのか、同族会社間の個人から法人への贈与等によっても適用される税金が変わってきます。同族会社の株式譲渡に関する税金の仕組みやメリット・デメリットを理解して自分に合った方法を選ぶことが大切です。

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