株式譲渡の所得(譲渡益)にかかる税金を解説!総合課税に該当するかも説明

2024年2月16日

株式譲渡の所得(譲渡益)にかかる税金を解説!総合課税に該当するかも説明

このページのまとめ

  • M&Aで株式を譲渡した際に発生した利益は、譲渡所得として課税
  • 個人の株式の譲渡所得は申告分離課税の対象
  • 他の所得と合計するか、しないかが総合課税と分離課税の違い
  • 個人が株式の譲渡所得にかかる税率は合計20.315%

M&Aに伴い株式を買い手に売却する際、「株式の譲渡所得は総合課税の対象?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。株式の譲渡所得は、総合課税ではなく申告分離課税の対象です。

本記事では、株式の譲渡所得に関する税金の扱いについて解説します。また、総合課税ではなく分離課税に該当することで、具体的にどのような違いが生じるかについても解説しているので、参考にしてください。

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M&Aの株式譲渡益にかかる税金

M&Aで株式譲渡した際、譲渡益に対して税金がかかります。株式譲渡の譲渡益にかかる税金の計算式は、以下のとおりです。

譲渡価格(総収入金額)-必要経費(取得費+委託手数料(株式譲渡にかかった費用))×税率

個人が売却するか、法人が売却するかによって、株式譲渡益にかかる税金が異なります。それぞれにかかる税金について、確認していきましょう。

個人の場合

2023年4月1日現在、国税庁のホームページによると株式の譲渡所得に対してかかる税金は、原則として所得税15%、住民税5%です。また、2037年までは復興所得税として基準所得税額に2.1%乗じた額がかかるため、合計20.315%が課せられます。税率は、上場株式の場合も一般株式の場合も同じです。

なお、時価以上の価格で譲渡した場合は、差額に対して贈与税が課されます。また、個人が法人に時価以上の価格で譲渡した場合、差額に対して一時所得もしくは給与所得として所得税が課される点に注意が必要です。

参照元:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

法人の場合

法人が株式譲渡する場合、譲渡損益と他の損益を合算して法人税などが課されます。財務省の「法人課税に関する基本的な資料」によると、2018年度における国・地方の法人実効税率は29.74%です。

なお、法人から個人、法人から法人に時価以下で株式譲渡した場合は、寄付金という扱いになり差額分を損金に算入できます。ただし、買い手が売り手の役員の場合は役員賞与とみなされ、損金不算入になる点に注意が必要です。

参照元:財務省「法人課税に関する基本的な資料」

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株式譲渡所得は総合課税でなく分離課税

個人の株式譲渡所得にかかるのは、総合課税ではなく分離課税です。それぞれの概要について解説します。

総合課税とは

総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算する課税方法のことです。総合課税の対象となる所得として、以下8つの所得が挙げられます。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

それぞれの特徴や具体例を表にまとめました。

所得の種類総合課税となる所得の具体例
利子所得海外の預貯金の利子など源泉徴収ができない所得
配当所得株主などが法人から受け取る剰余金の配当、株式投資信託の分配金などの所得
不動産所得土地や建物などの不動産の貸付け(不動産投資)による所得(家賃収入など)
事業所得商業・工業・農業などの事業で個人が得た所得
給与所得勤務先から受け取る給料・賃金・賞与などの所得
譲渡所得金地金・骨董品・宝石・船舶・車両・ゴルフ会員権などの資産を譲渡した際に生じた所得
一時所得生命保険の解約返戻金や満期返戻金、懸賞の賞金などによる所得
(営利を目的とした継続的行為から発生したものではなく、労務や、資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時的な所得)
雑所得公的年金など、他の所得に分類されない所得

また、上記の所得でも、総合課税に該当しないことがあります。例外のケースをまとめました。

所得の種類総合課税とならない所得の具体例
利子所得預貯金の利子や、債券・社債などへの投資によって得た利息による所得
(利子所得は一部例外を除き、源泉分離課税)
配当所得上場株式の配当金による所得
(総合課税か申告分離課税を選択可能)
事業所得株式投資や先物取引で得た所得(申告分離課税)
譲渡所得土地・建物・株式を譲渡して得た所得(申告分離課税)
一時所得保険期間が5年以内の一時払養老保険や一時払い損害保険などによる所得
(源泉分離課税)
雑所得株式投資や先物取引で得た所得(申告分離課税)、
講演料や執筆料(源泉分離課税)

なお、一時所得は特定の保険や懸賞金付預貯金などの懸賞金を除き基本的に総合課税ですが、計算時に注意が必要です。総合課税は本来、各種の所得金額を合計して所得税額を計算します。しかし、一時所得では所得金額の「2分の1」相当の金額を他の所得の金額と合計し、所得税額を計算しなければなりません。

分離課税とは

分離課税とは、総合課税の対象となる他の所得と合算せずに、分離して税額を計算する方式を指します。

所得税は、各種の所得金額を合計して総所得金額を求めて、税額を計算して確定申告により納税する総合課税が原則です。しかし、総合課税で計算すると累進課税により税金が高くなり過ぎることがあるため、例外的に一部の所得に対して分離課税が適用されています。

分離課税は、申告分離課税と源泉分離課税の2種類です。それぞれの特徴を解説します。

申告分離課税

申告分離課税とは、他の所得と合計せず、別に税額を計算し、確定申告によって対象の税額を納付する方式のことです。山林所得や土地・建物を譲渡した際の譲渡所得、株式の譲渡所得などが申告分離課税に該当します。

つまり、M&Aなどの事情で個人が株式を売却して利益を得た場合は、自身で確定申告して税金を納めなければなりません。

源泉分離課税

源泉分離課税とは、他の所得とは別に所得を支払う側が支払時に一定の税率で所得税を源泉徴収することにより、所得税の納税が完結する方式のことです。源泉徴収とは、支払側が支払う金額から税金分を天引きして預り、代わりに納付する仕組みのことを指します。

確定申告をしなくても納税が完結する点が、源泉分離課税と申告分離課税の違いです。

総合課税と分離課税の違い

総合課税と分離課税の違いは、税金を計算するにあたって他の所得と合算するか(総合課税)、合算しないか(分離課税)です。

たとえば、給与所得が700万円、不動産所得が200万円ある場合は、総所得900万円として税金の計算を進めます。一方、給与所得が700万円、株式譲渡所得が200万円の場合は、700万円と200万円を別々に計算する点がポイントです。

以下に、総合課税と分離課税の分類をまとめました。

総合課税分離課税
他の所得と合計して計算する他の所得と合計せず、各所得個別に税額を計算
申告分離課税
他の所得と分離して計算し、確定申告をする方法
源泉分離課税
所得を支払う者が所得の支払い時に税額を源泉徴収して、納税を完結させる方法

課税方式によって税額も変動するため、注意しましょう。

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株式譲渡でかかる税金の計算方法

個人で株式譲渡をしたケースでどれくらい税金がかかるのか?実際に計算してみましょう。
譲渡価格3,000万円、取得費1,500万円、委託手数料100万円とした場合の税額は次のように計算します。

3,000万円-(1,500万円+100万円)=1,400万円
個人が株式譲渡したときの所得税率は20.315%のため、1,400万円×20.315%=約282万円

このケースでは、株式譲渡によって納める税金は282万円ということになります。

株式譲渡で確定申告が必要なケース

株式譲渡で確定申告が必要なケースは、主に以下のとおりです。

  • 上場株式等で譲渡損が出た
  • 配当控除を受ける
  • 複数の特定口座があり、利益と損失がある

ケース別に解説します。

上場株式等で譲渡損が出た

上場株式等で譲渡損失が出た場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間にわたって上場株式の譲渡益、及び配当金と相殺ができます。2020年に上場株式等で100万円の譲渡損失が出て、2021年に50万円、2022年に50万円の配当金や譲渡益が出た場合、いずれも2020年の譲渡損失と相殺できるため、2021年と2022年の譲渡益には所得税がかかりません。

配当控除を受ける

上場株式の配当金は配当控除により税額控除が受けられます。配当控除は、総合課税を選択している場合に、配当金のうち一定割合が所属税・住民税から控除されます。

複数の特定口座があり、利益と損失がある

特定口座(源泉徴収あり)を複数口座保有していて、譲渡益と譲渡損が出ているような場合、確定申告により損益を相殺できます。例えばA口座で30万円の譲渡益がでたために源泉徴収されていて、B 口座で20万円の譲渡損が出ている場合、確定申告でA口座とB口座の損益通算をすることで、A口座で源泉徴収されて支払いすぎていた税金の還付を受けることができます。

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株式譲渡所得の確定申告

所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた金額とそれに対する所得税の額を計算して確定させる手続きのことです。原則として、対象年の翌年2月16日から3月15日までに申告しなければなりません。

確定申告時には、収入金額・所得金額・税金の計算などを記した確定申告書第一表と第二表を提出します。また、今回のような株式譲渡所得の申告には、申告書第三表(分離課税用)の提出も必要です。

確定申告の方法には、e-Tax(オンライン申請)や、国税庁の確定申告作成コーナーから確定申告書類をダウンロードして郵送する、税務署に訪問して申告書を提出するなどがあります。自分にあった方法を選びましょう。

株式譲渡の際の税金で注意が必要なケース

株式譲渡の際の税金で、注意が必要なケースは、以下のとおりです。

  • 譲渡損失が出るケース
  • 非上場株式の株主が会社に株式を譲渡するケース
  • 親族から株式譲渡を受けるケース

ケース別に解説します。

譲渡損失が出るケース

株式譲渡で譲渡損失が出た場合、翌年以降3年間、譲渡損失の繰越控除ができます。しかし譲渡損失の繰越控除は上場企業に限られ、非上場企業では使えません。ただし、ベンチャー企業を支援する優遇措置であるエンジェル税制の対象となっている企業の場合、非上場企業でも繰越控除が使えることがあるため、事前に確認をしましょう。

非上場株式の株主が会社に株式譲渡するケース

非上場株式を発行会社に売却する際、「みなし配当」とみなされる可能性があります。「みなし配当」とは、会社から配当金を受け取っていなくても、税制上実質的な利益分配があったとして課税される制度です。

みなし配当については、法人税法第24条第1項に規定されています。1株当たりの資本金を上回る株価で譲渡した際、上回った金額分がみなし配当の対象です。

そのほか、個人が時価の2分の1未満の著しく低い価額で株式を譲渡した際に、実際は利益を出していなくても、時価による譲渡があったものとして所得税が課税される点にも注意しましょう。

参照元:e-Gov法令検索「法人税法第二十四条」

親族から株式譲渡を受けるケース

M&Aを想定していて、あらかじめ親族から株式を買い集めるような場合、会社設立時の株価と時価で大きな乖離が生じている可能性があります。このように時価が大きく上がっているにもかかわらず、会社設立時の株価で買い取りをすると差額が贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。
ただし時価で買い取るよりも、贈与税を払って会社設立時の株価で買い取ったほうがよいケースもあるため、事前に比較することが大切です。

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株式譲渡で行える税金対策・節税方法

株式譲渡で行える税金対策・節税方法は、以下のとおりです。

  • 退職所得控除を使う
  • 譲渡損と損益通算する

それぞれ解説します。

退職所得控除を使う

自社株式を売却する際、対価の一部を退職金として受け取ると節税できる場合があります。
通常、株式譲渡をして対価を受け取った場合、対価(所得)に対して20.315%の税金がかかります。しかし退職金として受け取った場合、退職所得控除という所得控除を利用して所得を下げられるうえ、一定額までは20.315%未満の税率が適用されるため、節税になるという仕組みです。

譲渡損と損益通算する

複数の口座で上場株式取引を行っていて、譲渡損が出ている口座があれば確定申告によって節税できる場合があります。

これは上場株式取引で譲渡益が出ている場合は、源泉徴収で納税が完了しますが、確定申告で譲渡損と損益通算をすることで源泉徴収された税額の還付を受けられるためです。

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相続・贈与による株式譲渡で適用できる制度

非上場株式を事業承継する際にかかる相続税や贈与税を軽減するために、主に次の2つの特例があります。

  • 事業承継税制
  • 取得費加算の特例

各特例について解説します。

事業承継税制

事業承継税制とは、非上場企業で一定の要件を満たす経営者から、親族である後継者に事業承継のために自社株の譲渡が行われた場合、後継者は相続税あるいは贈与税の納税を猶予される特例です。

ただし特例を受けるためには、都道府県知事からの認可が必要になる他、制度適用後も定められた要件を維持し続ける必要があります。

取得費加算の特例

相続や遺贈によって取得した株式や土地、建物などの資産を、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡した場合、譲渡所得の取得費に一定の相続税額を加算できる特例です。

譲渡所得の計算式は以下のとおりであることから、取得費が増えれば譲渡所得が減少するため結果的に所得税が軽減されます。

譲渡価格(総収入金額)-必要経費(取得費+委託手数料(株式譲渡にかかった費用))× 税率

関連記事:株式譲渡とは?手続きの流れや注意点・メリット・デメリットなどを解説

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まとめ

M&Aなどの事情で株式譲渡する際、譲渡益に対して税金がかかります。総合課税の対象となる給与所得や事業所得などと異なり、株式の譲渡益には分離課税で税金がかかる点に注意が必要です。

税金を計算するにあたって、他の所得と合算しない点が分離課税の特徴として挙げられます。また、株式を譲渡する際の申告分離課税に該当するため、株式の譲渡所得について確定申告しなければなりません。

さらに、譲渡損失が出るケース、親族から株式譲渡を受けるケースなど、株式譲渡ではいくつか注意しなければならないことがあります。それに加えて、そもそもM&Aの際に株式譲渡以外の手段を検討した方がよいこともあるでしょう。

M&Aや税金に関する悩みを解消するには、専門家に相談することが大切です。M&Aの実績を備えた専門家への相談を検討しましょう。

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