美容室・美容院のM&A動向は?金額の相場や事例などもわかりやすく解説

2024年1月30日

美容室・美容院のM&A動向は?金額の相場や事例などもわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 美容室は個人経営が大半を占めておりM&A件数も増加している
  • 美容室の規模の大きさによってM&Aの傾向が異なる
  • 美容室のM&Aによって売り手は後継者問題解決や従業員雇用の維持ができる
  • 美容室のM&Aによって買い手は人材や集客力を確保できる
  • 美容室のM&Aを成功させるためには専門家の協力が大切

美容室は日本全国に数多くの店舗が存在しており、差別化が難しい分野です。店舗数の増加に対して市場規模は停滞状態であるため、経営状況を改善する手段としてM&Aが活用されるケースもあります。

今回は効果的に美容室・美容院のM&Aを進めたいと考えている方のために、業界事情やM&Aの動向、メリット・デメリットなどをご紹介します。M&Aを成功させるためのポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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美容室・美容院業界の現状

美容室のM&Aを検討している場合は、まず基本的な美容室・美容院業界の現状を知っておくことが大切です。美容室・美容院が置かれている状況や問題点について解説します。

美容室・美容院の店舗数・従業員数の推移

美容室・美容院は、大変競争率が高いビジネスの1つです。その難易度を引き上げている要因として挙げられるのが、店舗数の多さです。

厚生労働省の発表している「令和3年度衛生行政報告例の概況」によると、2017年度からの5年間、美容室の数は増加し続けています。2021年度は前年度よりも6,333施設増加し、合計施設数は264,223施設を記録しています。

私たちの生活に欠かせないものとなりつつあるコンビニエンスストアも、全国各所で多くの店舗を展開しているサービスの1つです。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会がまとめた「コンビニエンスストア統計データ」によると、2023年10月時点でのコンビニエンスストアの店舗数は、55,746店舗と発表されています。

つまり、美容室は、店舗数が多いとされているコンビニエンスストアの4倍以上の店舗数があることがわかります。

美容室の店舗数増加に加えて、2021年度末時点の美容師の数も56万1,475人と増加傾向にあるのがポイントです。大半の美容室は個人経営であることがわかっており、美容室の生き残りをかけた争いが激しさを増しています。

参照元:厚生労働省「令和3年度衛生行政報告例の概況」
参照元:厚生労働省「美容業の実態と経営改善の方策」
参照元:一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計データ」

美容室・美容院業界が抱える課題

美容室や美容院の数は増加していますが、市場規模はそこまで拡大していないのが1つ目の課題として挙げられます。株式会社矢野経済研究所が実施した調査資料「2023年版 理美容サロンマーケティング総鑑」によると、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ美容サロン市場は、2022年度に前年を422億円上回る回復をみせたものの、いまだ2018年の水準には至っていません。

回復傾向にはあるといえど、美容サロン市場が大きく成長しているとはいえないでしょう。このまま施設数が増加し続けると、1つの施設が受け入れることができる客数が減少傾向を辿ることが予想されます。

また、格安でサービスを提供するチェーン美容室が台頭してきたことで、価格を売りに集客をすることが難しくなっているのが実情です。低価格サロンと、付加価値を提供する高価格サロンの2極化が進んでいるともいわれています。中間の価格帯で営業をしている美容室は、差別化を図ることが難しくなり、リピーターの獲得難易度が上がってしまうでしょう。

さらには、美容師の離職率が高い点も業界の課題となっています。ホットペッパービューティーアカデミー実施の「美容サロンの就業実態調査」によると、美容師の離職率は近年50%近くを記録しており、2023年度は46.5%という結果です。

立ち仕事で身体的・精神的にも負担が大きい仕事であるのにもかかわらず、給与が安い傾向があるため、なかなか雇用状況が安定しないケースが多いようです。個人経営の美容室は、後継者不足の問題も抱えており、大切に経営してきた美容室の行く先を不安視する声が聞かれます。

参照元:株式会社矢野経済研究所「2023年版 理美容サロンマーケティング総鑑」
参照元:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロンの就業実態調査」

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美容室・美容院業界のM&A動向

美容室・美容院のM&Aとしては、事業承継を目的にした実施件数が増加しています。ただし、店舗の規模によって傾向が異なる点には注意しましょう。

中規模以上の美容室や美容院の場合は、異業種M&Aや投資ファンドによる買収事例が増加しています。具体例を挙げると、2018年に香港系投資ファンドの「CLSAキャピタルパートナーズ」が約100億円を投資して、Aguグループの270店舗を買収しました。

また、同年には投資ファンド「日本産業推進機構」によるレイフィールド55店舗の買収も実施されています。大手ファンドの買収が進むことで、中小規模の美容室はより経営が厳しくなる恐れがあるでしょう。

小規模の美容室では、もともと存在した店舗の家具などがそのまま残った状態で売りに出される居抜き売却が一般的です。

店舗や施設の権利を譲渡する居抜き売却とは違って、M&Aの場合は経営権や従業員を含む店舗の保有するすべての権利を譲渡する形で実施されます。

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【売り手側】美容室・美容院をM&Aするメリット

競争の激しい美容室・美容院のM&Aを実施する売り手側のメリットは、次の4つです。

  1. 後継者問題を解消できる
  2. 従業員の雇用を守れる
  3. 規模の大きいグループに加わることができる
  4. 居抜きよりも高額で売却できる

個人経営が多い美容室・美容院は、さまざまな問題に対応しながら厳しい競争を勝ち抜かなければなりません。なかには、お店や従業員を守る手段として、M&Aを選択する経営者もいます。

業界を踏まえたうえで知っておきたい、美容室・美容院のM&Aのメリットを詳しく解説します。

1.後継者問題を解消できる

売り手側の大きなメリットとしては、後継者がいない場合でも廃業をせずに済むことが挙げられます。美容室は個人経営店が多いため、オーナーが歳を重ねていくにつれて懸念事項となるのが、後継者問題です。

個人で美容室を運営するには、美容師の国家資格が必要とされます。専門性の高い職業であるだけに、親族が事業を引き継ぐのはハードルが高いといえるでしょう。

M&Aにより後継者を確保し、これまで積み上げてきたものを未来につなげることができるのは、美容室の経営に全力を注いできたオーナーにとっては魅力的な選択肢となり得ます。

2.従業員の雇用を守れる

一緒に美容室を運営してきた従業員の雇用を守れることも、M&Aの重要なメリットです。M&Aを活用した美容室・美容院の売却であれば、基本的には従業員の雇用関係をそのまま引き継いでもらうことができます。

美容室業界は、ただでさえ離職率が高い業界であるため、優秀な美容師を長く雇用するのは容易ではありません。そのような状況下で、お店に最後まで尽くしてくれた従業員のために、できるだけよい条件で雇用を確保したいと考えるオーナーも多いでしょう。従業員の雇用に関する条件については、買い手と十分な話し合いをしておくことが大切です。

合意した内容を忘れずに契約書に記しておくなど、慎重に対応するようにしましょう。

3.規模の大きいグループに加わることができる

経営上の問題を抱えている場合は、M&Aを通して大手美容系企業の傘下に入ることで、経営状態を改善できるチャンスを得られるでしょう。同じ業界の企業のみならず、他業種の大企業やファンドとM&Aを実施するケースでも、潤沢な資金を活用して事業拡大を目指せる可能性があります。

ライバルが多い美容室・美容院の経営を軌道に乗せるには、計画的に戦略を立てて運営することが欠かせません。差別化が難しくなっている現状を打破するためには、大手の傘下に入る形で新たに事業を再スタートするのも1つの方法です。

4.居抜きよりも高額で売却できる

居抜きで単純に店舗を売却してしまうケースと比べて、M&Aを実施する場合は売却価格が高めであることがメリットです。美容室・美容院のM&Aでは、居抜きのように店舗の設備のみが対象となるのではなく、さまざまな要素が売却価格を算出する際の検討材料に含まれます。

特に優秀な美容師が在籍している場合や、収益性が高く将来性が認められた場合は、高額の売却価格が期待できるでしょう。美容室として培ってきたノウハウや価値を評価してもらえる点は、売り手側にとって大きなメリットとなります。

【売り手側】美容室・美容院をM&Aするデメリット

メリットが大きい美容室・美容院のM&Aですが、M&Aの直前で人材が流出してしまう可能性があるのがデメリットです。M&Aは従業員の雇用を継続させられるとはいっても、当人にとっては環境や条件が大きく変わってしまうのが一般的です。M&Aの準備中に従業員が離職してしまうと、売却価格の算出に影響を与える可能性があるだけではなく、ノウハウや技術の流出につながる恐れがあります。

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【買い手側】美容室・美容院をM&Aするメリット

美容室・美容院のM&Aにおける、買い手側のメリットは次の4つです。

  1. 即戦力になる美容師を確保できる
  2. 買収元の集客力を引き継げる
  3. 既存の設備を活用できる
  4. 新規参入のハードルを下げられる

専門性が高い美容室をスムーズに軌道に乗せるには、既存の店舗のノウハウやスキルを活用するのも手です。美容室・美容院M&Aの買い手側のメリットを詳しく解説します。

1.即戦力になる美容師を確保できる

美容室の人気を左右する要素の1つとして、スキルやノウハウを持った美容師の存在は欠かせません。M&Aであれば、既存店舗で働いている美容師の雇用に関しても条件に含めることができるため、即戦力を確保できるのがメリットです。

美容師としての技術だけではなく、サービス面や人としての魅力も店舗の人気に影響を与えます。経験が豊富で顧客から信頼されている美容師が継続して働いてくれるのであれば、美容室を運営するうえで大きな助けとなるでしょう。

美容師は待遇面への不満などから離職率が高く、入れ替わりが激しい業界として知られています。優秀な美容師にはM&A後にも引き続き働いてもらえるように、条件をすり合わせる話し合いをするなどの努力が必要です。

2.買収元の集客力を引き継げる

安定して経営を続けてきた美容室・美容院を買収する場合は、集客力をそのまま引き継げるのもメリットです。特に美容室として知名度が高い場合や、人気美容師が継続して在籍する場合は、これまで通ってくれていた既存顧客を確保できます。

美容室は特にトレンドの移り変わりが激しく、流行に左右されやすいという特徴があります。M&Aによって買収する美容室で新規顧客を獲得するには、既存のノウハウにプラスして新たな施策を展開していかなければなりません。

安定した経営のために、お店や在籍美容師のファンを引き継げるのは大きなメリットとなるでしょう。

3.既存の設備を活用できる

美容室・美容院のM&Aでは、設備に関しても引き継ぐことが可能です。美容室ではシャンプー台やパーマ機器など、特殊な設備が必要とされます。

一から設備を準備するとなると、高額な資金がかかってしまうでしょう。M&Aで美容室を買収することで、すぐに事業をスタートできる状態で店舗を確保できるのがメリットです。

4.新規参入のハードルを下げられる

専門性が高く競争率が高い美容室・美容院分野は、ある程度のノウハウや技術がなければ安定した経営を実現するのは難しいでしょう。実績のある美容室をM&Aで買収することで、既存の施設や技術を活用できるのがメリットです。

美容室の施設や人員手配を一からしなければならない場合は、半年から1年以上の時間がかかってしまう場合があります。市場の状況やトレンドを把握している人材や、大きな手直しの必要がない施設を確保することで、スムーズに経営を軌道に載せられる可能性があります。

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【買い手側】美容室・美容院をM&Aするデメリット

買い手側としては、次のデメリットを把握しておく必要があります。

  • 既存事業とうまく融合しない可能性がある
  • 美容室の運営がうまくいくとは限らない

特に異業種間M&Aで美容室を買収する場合は、お互いに風土や文化が合わず組織として空中分解してしまう可能性があります。買収する美容院の評判や元オーナーの仕事の進め方など、現在の経営状況からだけでは推し量れない部分も確認しておくことが重要です。

また、安定して経営を続けてきた美容室を買収したからといって、今後も同じような利益が得られるとは限りません。トレンドの影響が大きくライバルが多い美容室の経営は、M&A後にも差別化を図る新鮮なアイディアを追求し続ける必要があるでしょう。

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美容室・美容院のM&A金額相場

美容室・美容院のM&A成約価格の相場は、数百万円~1千万円台がボリュームゾーンです。買収金額の算出には、

  • 時価純資産+営業利益×年数

という計算式が用いられることが多いでしょう。

具体的な相場目安としては、1店舗あたり1,000万円程度です。ただし、実際には店舗の経営状態や施設の状況・立地・在籍美容師の数など、さまざまな要素の影響を受ける関係でM&A金額には幅が出ます。

美容室を複数店舗経営している企業の買収となると、億単位となるケースもあるでしょう。店舗の収益性の高さが認められれば、高額で取引を進められることになります。

M&Aと比較されやすい居抜き売却の場合は、店舗の施設のみが対象となり数百万円が相場です。店舗の状態やどこまでを契約に含めるかにもよりますが、M&Aのほうが比較的高値がつきやすいといえるでしょう。

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美容室・美容院のM&Aで用いられる方法

美容室・美容院のM&Aで用いられる主な手法は、次の2つです。

  • 事業譲渡
  • 株式譲渡

選択するM&Aの手法によって、引継ぎ後の美容室の運営方法や取引の進め方が異なります。具体的に計画を立てる際に知っておきたい、2つのM&A手法をご紹介します。

事業譲渡

事業譲渡とは、一部またはすべての事業を譲渡するM&A手法です。美容室・美容院のM&Aにおいては、特に小規模の美容室運営企業や個人経営店舗で多く用いられます。

事業譲渡は取引を進める際に、どこまでを取引の対象とするかを決められるのが特徴です。特定の事業だけを譲渡し、M&Aで得た資金を活用して既存事業の強化や新規店舗の立ち上げなどに注力することもできます。

株式譲渡

株式譲渡とは、その名のとおり株式の譲渡を通じて、支配権や経営権までも買い手に譲り渡す方法です。株式譲渡の実施によって、譲渡企業は譲受企業の子会社となります。

子会社化された企業は、親会社と足並みをそろえて企業経営を進めていくことになるのが特徴です。美容室・美容院の売却を目的とした株式譲渡では、在籍スタッフやブランドの知名度、集客力、ノウハウなどさまざまな要素をもとに譲渡価格が算出されます。

関連記事:店舗M&Aのやり方は?メリットや具体事例についても解説

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【売り手側】美容室・美容院がM&Aをおこなうポイント

売り手側として美容室・美容院のM&Aを実施する際に気をつけたいポイントは、以下のとおりです。

  • 他店との違いを明確にする
  • M&Aの金額相場を確認しておく

苦労をして築き上げた美容室をできるだけよい条件で売却するためには、事前に十分な知識をつけておく必要があります。売り手側が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

他店との違いを明確にする

美容室・美容院は店舗数が多いため、うまく自店舗の魅力をアピールできないと、評価価格が思ったよりも低いという結果になりかねません。M&Aを具体的に進める前に、ライバル店と差別化できるポイントについてじっくりと検討しておきましょう。

美容室・美容院の差別化ポイントとしては、次のような例が挙げられます。

  • 収益性
  • 顧客数の多さ
  • 在籍する美容師の技術やノウハウ
  • 立地
  • 設備や内装インテリア
  • リピーターの多い施術メニュー

いかにほかにはないサービスを提供し、顧客から愛されている美容室であるかをアピールすることが大切です。

M&Aの金額相場を確認しておく

美容室・美容院のM&A相場を把握しておくことで、自社の価値を算出する際に具体的なイメージを持って検討が可能です。美容室は規模や経営状態によって価値が大きく異なるため、自店舗と似たような事例をリサーチしておくのもよいでしょう。

特に相場である1,000万円以上の売却価格を実現させるためには、相手を納得させられるだけの根拠を提示する必要があります。納得して美容室・美容院のM&Aを進めるためには、入念な事前準備が欠かせません。

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【買い手側】美容室・美容院がM&Aをおこなうポイント

買い手側としては、美容室・美容院のM&Aを実施する際に、以下の点を把握しておく必要があります。

  • シナジー効果を確認しておく
  • 簿外債務や偶発債務のリスクを調査する
  • 従業員や既存顧客が流出しないように注意する

競争率が高い美容室・美容院をうまく経営していくためには、M&A実施の時点から注意しておくべきポイントがあります。スムーズにM&Aをおこなううえで、買い手に欠かせない重要なポイントを解説します。

シナジー効果を確認しておく

M&A実施時点の美容室・美容院の価値だけではなく、統合後のシナジー効果を見据えてM&Aを進めることが重要です。シナジー効果とは、買収する事業が統合することによって得られる相乗効果を意味します。

いくら優秀な美容師が在籍している美容室を買収したとしても、自社と相性が悪く価値が相殺されてしまうようでは意味がありません。M&Aにおいて買収する美容室・美容院を選定する際には、店舗そのものの価値にプラスして、得られるシナジー効果を忘れずに確認しておくようにしましょう。

M&A後に思ったように経営が安定せず目標を達成できなければ、コストや労力の無駄遣いとなってしまう可能性があります。シナジー効果の実現可能性や必要となるコストについても、慎重に検討しておくと安心です。

簿外債務や偶発債務のリスクを調査する

美容室・美容院のM&Aにおいて、買い手は買収する事業の債務を背負いこんでしまうリスクがある点を押さえておきましょう。基本的には、債務は帳簿に整理され、M&Aの際に買い手が確認できるようになっています。

しかし、なかには帳簿だけでは把握できない以下のような債務が発生する可能性があります。

  • 簿外債務:帳簿に記載されていない債務
  • 偶発債務:負債を発生させうるリスクや問題点が将来的に顕在化した際の債務

簿外債務としては、未計上の退職給付引当金などが該当します。想定していなかった債務を抱えることのないように、事前にしっかり調査しておきましょう。

また、残業代の未払いや不当解雇など、後々偶発債務となりうるリスクも確認しておかなければいけません。問題を抱えている美容室を買収してしまうことで、損害賠償の支払いや風評被害といった不利益を被るケースがあります。

従業員や既存顧客が流出しないように注意する

従業員や既存顧客の流出を防ぐ策を講じることも、M&Aを進めるうえで重要なポイントです。美容室や美容院で過ごす時間を、単に髪の毛を切るだけではなく、コミュニケーションやヒーリングの場だと捉えている顧客も多いでしょう。

特に人気の美容師は上質なサービスと高い技術で、多くの顧客の心を掴んでいます。M&Aを実施して人気美容師が離れてしまうようでは、想定していたような収益が望めなくなってしまう可能性があります。

美容室のM&Aによって、現場で働く美容師はさまざまな影響を受けるのが事実です。優秀な人材を維持するためには、しっかりと事前に話し合いをしたうえで、統合後も長く働いてもらえる施策を用意しておく必要があります。

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美容室・美容院がM&Aをおこなった成功事例3つ

美容室・美容院のM&Aを成功させるためには、具体的な事例を知っておくことも有効です。今回は、以下の3つの事例をご紹介します。

  • ヤマノホールディングスとL.B.Gの事例
  • サンライズ・キャピタルとAguグループの事例
  • 剣豪集団・潤首有限公司とエム・エイチ・グループの事例

自社と状況が似ている事例は参考になるでしょう。専門性の高い美容室・美容院のM&Aを確実に進めるのに欠かせない、成功事例を詳しくご紹介します。

ヤマノホールディングスとL.B.Gの事例

美容事業・和装宝飾事業・DSM事業を展開しているヤマノホールディングスは、2019年に美容室を運営するL.B.Gを連結子会社化しました。「ソフトと価値の提供」を共通目標に掲げているヤマノホールディングスは、差別化戦略として商品以外のサービス機能拡充に力を入れています。

一方のL.B.G.は、首都圏を中心に20代~30代女性をターゲットとした中価格帯の美容室を複数店舗経営している企業です。M&Aによって、L.B.G.の事業拡大をサポートするとともに、ヤマノホールディングス側では中高年層向けの低中価格帯美容サービスとの連携を強化する目的があります。

参照元:理美容ニュース「「La Bonheur」のLBG社を買収 ヤマノホールディングス」
株式会社ヤマノホールディングス「株式会社L.B.Gの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」

サンライズ・キャピタルとAguグループの事例

中小企業への投資を専門とするサンライズ・キャピタルが、2018年に国内最大手の美容室チェーンAguグループを運営する「ロイネス」および「B-first」を買収した事例です。取引総額が100億円を超える大きな取引として注目が集まった同M&Aは、サンライズ・キャピタルが特別目的会社を通じて、2社の株式を取得する方法でおこなわれました。

Aguグループを創設した市瀬一浩氏も、一部の株式を引き続き保有することで、代表取締役として経営に携わっています。Aguグループは、全国1,000店舗を目指して事業を展開するなかで、サンライズ・キャピタルとの資本提携に踏み切りました。

M&Aによって、Aguグループの店舗開発の加速と組織基盤の強化が見込まれています。

参照元:Agu「【プレスリリース】サンライズ・キャピタルとの資本提携について」
MARRonline「【Aguグループ】国内最大手の美容室チェーンがCLSAキャピタルパートナーズと組んで業界変革に挑む」 

剣豪集団・潤首有限公司とエム・エイチ・グループの事例

モッズ・ヘアを運営するエム・エイチ・グループが、2015年に中国系の剣豪1号投資事業有限責任組合による株式公開買付けに同意した事例です。剣豪1号投資事業有限責任組合は、日本企業の中国進出を支援している剣豪集団株式会社と中国でショッピングモールを展開する潤首有限公司が設立した法人です。

同法人は、エム・エイチ・グループ株式取得のために設立されました。市場の拡大が足踏み状態である日本に対して、中国では美容市場が急速に成長を遂げています。

エム・エイチ・グループは、アジア市場進出に向けた力強いパートナーとして、剣豪集団・潤首有限公司との株式公開買い付けに同意しました。

参照元:理美容ニュース「モッズ・ヘアの株式 中国資本が51%を取得へ」
株式会社エム・エ イ チ・グルー プ「支配株主等に関する事項について」

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まとめ

店舗数が多く差別化が難しいとされる美容室・美容院は、M&Aが多く用いられる分野でもあります。個人経営や小規模美容室では、主に後継者問題の解決策として事業承継が選ばれているのに対して、大手企業では異業種M&Aや投資ファンドによる買収が盛んです。

M&A後に美容室を安定的に運営するためには、美容室の施設や現在の収益のみならず、在籍している美容師の質や経営方針などにも注目しておく必要があります。競争率が高い美容室は、ほかの店と違った魅力をどれだけアピールできるかが重要です。

自社との相性も確認しながら、適切なタイミングで美容室・美容院のM&Aを進めるようにしましょう。効果的に美容室・美容院のM&Aを実施するためには、ノウハウやスキルを持った専門家を頼るのも手です。

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