非上場株式の売却方法は?売却のメリットや手続き、かかる税金を解説

2024年3月29日

非上場株式の売却方法は?売却のメリットや手続き、かかる税金を解説

このページのまとめ

  • 非上場株式を売却するメリットは、相続税を抑え、後継者不足の問題を解決すること
  • 非上場株式は上場株式と比較して売却することが難しいケースもある
  • 定款に株式の譲渡制限がある場合は、株式の売却に承認請求の手続きが必要
  • 非上場株式の売却で得られる譲渡所得にかかる税金は、個人と法人とで異なる

後継者不足の問題に悩み、事業承継の方法として非上場株式の売却を検討している方もいるでしょう。非上場株式の売却は高額の資金獲得が期待できるほか、事業承継に利用できるというメリットがあります。本記事では非上場株式を売却するメリットやデメリット、売却する流れについて解説します。譲渡所得にかかる税金についても説明しますので、チェックしてください。

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非上場株式とは?

非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式のことです。日本の株式会社の多くは中小企業で、非上場企業です。非上場企業は「公開会社」と「非公開会社」に分けられ、それぞれ株式譲渡における手続きは異なります。

非上場株式の多くは第三者が経営に関わることを避けるといった理由で株式の譲渡が制限されていることが多く、株式を譲渡する際、会社からの許可が必要な株式を「譲渡制限株式」といいます。

公開会社では、譲渡制限株式が一部であるか、あるいはまったくありません。これに対し、非公開会社の株式はすべて譲渡制限株式です。株式譲渡に承認が必要かどうかは、定款で定められています。

近年は後継者不足に悩む中小企業が増えており、非上場株式を譲渡する事業承継が増えています。

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非上場株式と上場株式との違い

非上場株式と上場株式は、市場での取引が行われているかどうかという点が異なります。上場とは証券取引所に株式を公開することで、上場できるのは証券取引所の審査基準をクリアし、資格を得た企業だけです。上場した企業の株式は、誰でも自由に売買できます。

一方、非上場株式は証券取引所で取引されていないため、市場価格が存在せず、簡単に取引ができません。

非上場株式は定款で譲渡制限についての規定が設けられていることも多く、株式譲渡に株主総会や取締役会の承認が必要とされることもあります。

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非上場株式を売却するメリット

非上場株式を売却することで、多額の資金獲得や税負担の軽減など、いくつかのメリットがあります。

1.資金の獲得を見込める

非上場株式の売却により、多額の資金を獲得できる可能性があります。経営状態が良く今後の成長が期待できる企業であれば高く評価され、創業時よりも高い金額で取引されることもあるでしょう。

経営者は株式譲渡代金を獲得でき、創業時と譲渡時の差額によっては多額の利益を得ることが可能です。売却により得られた資金は、新規事業の立ち上げや老後資金などにあてることができます。

2.相続よりも税負担を軽減できる場合がある

非上場株式​​の売却は、相続するよりも税の負担を軽減できる可能性があります。

相続で非上場株式を取得する場合、最大で55%の相続税を支払うことになりますが、株式譲渡では、個人で約20%、法人で約30%の税負担となり、相続税よりも低い税率が適用されるためです。

相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。法定相続人が1人なら基礎控除額は最低金額の3600万円で、2人なら「3000万円+(600万円×2人)=4200万円」となります。

基礎控除額を超えた金額が課税対象となり、税率は次のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超から3,000万円以下15%50万円
3,000万円超から5,000万円以下20%200万円
5,000万円超から1億円以下30%700万円
1億円超から2億円以下40%1,700万円
2億円超から3億円以下45%2,700万円
3億円超から6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

引用元:国税庁「相続税の税率」

例えば、株式を1人で相続し、評価額が6億円だった場合、課税対象となるのは「6億円−3,600万円=5億6,400万円」です。

税率は上の表で50%、控除額は4,200万円になり、相続税は「5億6,400万円×50%−4,200万円=2億8,200万円」となります。

一方、所得税の場合は個人で約20%で、「6億円×20%=1億2,000万円」となり、税額を抑えられます。

非上場株式の金額が低ければ相続税の方が低くなることもありますが、評価額が高額な場合は売却の方が税金を抑えられる点がメリットです。

3.後継者問題を解決できる

非上場株式の売却により、後継者不足の問題を解決できる点がメリットです。近年は後継者不在に悩む中小企業が多く、後継者が見つからずに廃業を考える経営者もみられます。

事業承継の相手先を探している場合、後継者候補となる相手に株式の過半数以上を売却することで経営権を移譲し、会社を存続させることが可能です。

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非上場株式を売却する際のデメリット

非上場株式にはデメリットもある点に注意が必要です。市場に流通しておらず売買の機会が限られているため、上場株式と比較して売却が難しいケースもあります。

売却価格は最終的に当事者間の合意で決められますが、市場価値が安定しないため、買い手との交渉も難しいという側面があります。適正な価格で売却するには、M&A仲介会社のような専門家に相談することも必要になるでしょう。

また、非上場株式が譲渡制限株式である場合、取締役会(株主総会)の承認手続きが必要であり、承認を得られなければ株式譲渡はできません。事業承継を目的に全株式を売却する場合は、すべての株主の同意を得て株式を集約する必要があります。

非上場株式を売却する際は会社のすべてが承継対象となり、特定の資産や権限を残すことはできないという点にも留意が必要です。

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非上場株式を売却する流れ

非上場株式の売却は、買い手を探し、交渉することから始めます。ここでは、売却する流れ・手続きについてみていきましょう。

1.買い手を探す

非上場株式の売却にあたっては、まず買い手候補を探します。探し方は、主に次のような方法があげられます。

  • M&A仲介会社に依頼する
  • 金融機関に相談する
  • 税理士・公認会計士など専門家に相談する

市場のない非上場株式の買い手を自社だけで探すのは難しく、M&A仲介会社など専門業者に依頼をして進めるのが一般的です。

どのような相手先に売却するのかを考え、専門業者に依頼する場合は買い手に求める条件を伝えます。候補のリストを作成してもらい、条件に合う候補が見つかったら交渉へと進みます。

2.買い手と交渉をする

買い手候補との交渉では、売却価格を中心に、売却の条件や従業員・取引先の処遇などを話し合います。買い手は購入にあたってデューデリジェンスを実施することもあり、財務・税務など広い範囲にわたって調査が行われることもあるでしょう。

交渉で合意した内容やデューデリジェンスで見つかった事項は契約書に記載され、最終的な合意へと進みます。

3.株式譲渡の承認請求を行う

会社の定款に株式の譲渡制限がある場合は、承認請求が必要です。譲渡の承認には株主総会または取締役会での決議が必要になり、承認されれば契約書の締結に進みます。

承認請求をする際は、会社に「株式譲渡承認請求書」を提出します。承認請求書には、次の記載が必要です。

記入の必要条件

内容

譲渡する株式の種類と株式の数

普通株式・優先株式・劣後株式など

譲渡される相手の情報

氏名・住所を記入する

譲渡する株主の氏名・住所と印鑑

認印もしくは実印を押す

会社は承認請求をした株主に対し、請求の日から2週間以内に結果の通知をしなければなりません。期限内に通知をしなかったときは、譲渡承認を決定したものとみなされます。

株式譲渡が承認されなかった場合、会社は別の買取人を指定するか、自社が買取人となる義務が発生します。

4.株式譲渡契約を締結する

譲渡の承認を得られたら、買い手と株式譲渡契約を締結します。契約で作成する株式譲渡契約書には、主に次のような項目を記載します。

  • 譲渡人・譲受人の情報
  • 譲渡する株式の種類・株数・金額
  • 従業員・現役員・取引先の取り扱い
  • 契約が完結する際の詳細な条件(クロージング条項)

契約書の内容に双方が合意したのち、株式譲渡契約を正式に締結するという流れです。 

5.代金を決済する

株式譲渡契約書の締結後、クロージング条項に沿って株式等の引き渡しと対価の支払いを行います。
高額な代金の支払いは、銀行口座への振り込みにするのが一般的です。代金が振り込まれるとともに、株式が譲渡されて取引が成立します。

株券を発行していない会社は相手との意思表示により譲渡が成立し、第三者に対抗するためには株主名簿の書き換えが必要です。

6.株主名簿の書き換えを行う

代金が振り込まれて取引が成立したら、株主名簿の書換を行います。書換をすることにより、対外的にも会社の株主であることが明確になります。 

株券不発行会社の場合、株主であることの証明となるのは株主名簿の記載です。会社に対して株主名簿記載事項を記載した書面を請求することができ、書面により株主であることを証明します。

関連記事:株式譲渡とは?手続きの流れや注意点・メリット・デメリットなどを解説

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非上場株式の価値を算出する方法

非上場株式の売却価格は、売り手と買い手の交渉により決まります。株価の正確な算出が必要であり、算定には3つの手法があります。

それぞれの算出方法をみていきましょう。

1.配当還元方式

配当還元方式は、将来受け取ることが期待できる株主の配当金額にもとづいて株式を評価する方法です。過去2年間の配当金額平均を、利率10%という仮定で還元します。

計算は、以下の手順で行います。

  1. 過去2年間の配当金額平均について1株あたりの資本金を50円として算出した「発行済株式数」で割り、「1株あたりの年配当金額」を求める
  2. 「1株あたりの年配当金額」を10%で割り、元本である株式の価額を求める

計算式は、次のとおりです。

(年間配当額÷10%)×(1株あたりの資本金額÷50円)

年間配当額は、「(直前期末以前2年間の配当金額÷2)÷1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数」の計算式で求めます。

次の条件で、計算例をみてみましょう。

「資本金額5,000万円、発行済み株式数5,000株、1株当たりの資本金1万円、前期配当金総額200万円、前々期配当金総額300万円」

年間配当額=(200万円+300万円)÷2÷(5,000万円÷50)

年間配当額は2.5円です。

これを配当還元方式の計算式に当てはめると、次のとおりです。

(2.5円÷10%)×(1万円÷50円)=5,000円

配当還元方式で計算した1株あたりの評価額は5,000円になります。

配当還元方式を適用するのは、主に同族株主以外の株主や、少数株主が株式を取得する場合です。

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2.純資産価額方式

純資産価額方式(純資産方式)とは、貸借対照表に掲載される資産と負債をもとに1株あたりの純資産額を算出する手法です。評価する企業の1株に対し、どれほどの純資産が割り当てられるかという観点で株価を評価します。

計算の手順は以下のとおりです。

  1. 相続税評価額による純資産価額を求める「各資産の相続税評価額の合計-各負債の合計」
  2. 帳簿価額による純資産価額を求める「各資産の帳簿価額の合計-各負債の合計(マイナスの場合は0円にする)」
  3. 評価差額を求める「1-2(マイナスの場合は0円にする)」
  4. 評価差額に対する法人税額等の相当額を求める「3×37%」
  5. 1株当たりの純資産価額を求める「(1-4)÷発行済株式数」

算出した「発行済み株式における1株当たりの純資産金額」が、非上場株式の評価額です。

会社は従業員数や業種、資産額などで規模が分けられ、小規模の会社に区分される場合には、純資産価額方式によって株価を評価します。

中規模に区分される場合には、次に紹介する類似業種比準方式と併用して評価するのが一般的です。

3.類似業種比準方式

非上場会社の株式を上場会社の類似する業種と比較して評価する方法です。国税庁が公開している「類似業種の株価」をもとに計算します。

類似業種の上場企業株価の平均値に、類似業種1株当たりの「配当金額」「利益金額」「簿価純資産価額」の3項目について比較した結果を掛け合わせて評価額を計算します。

計算式は、次のとおりです。

A×(b÷B+c÷C+d÷D)÷3×70%×(n÷50)

  • A:類似業種の株価 
  • b:評価会社の1株当たりの配当金額 
  • B:類似業種の1株当たりの配当金額 
  • c:評価会社の1株当たりの利益金額 
  • C:類似業種の1株当たりの年利益金額 
  • d:評価会社の1株当たりの純資産価額 
  • D:類似業種の1株当たりの純資産価額 
  • n:評価会社の1株当たりの資本金等の額

一般的に大会社における非上場株式の評価に用いられる方法で、市場取引を反映するため信頼性が高いとされている方法です。中会社の場合は70%を60%に、小会社は50%にして計算します。

参照元:国税庁「令和5年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達」

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非上場株式の売却でかかる税金

非上場株式の売却では、譲渡益に対して税金がかかります。ここでは、法人が売却する場合と個人が譲渡する場合に分けて解説します。

法人が売却する場合

法人が売却する場合、譲渡所得に法人税等(法人税、事業税、住民税)が課せられます。法人税は超過累進課税となっており、譲渡金額と取得したときの金額との差額に対して課税される点に注意が必要です。

法人の利益に対して課される法人税は一律23.4%ですが、株式の売却では、法人の規模や年間所得、株の売却益が生じた事業年度によって29〜42%の範囲で変動します。また、法人事業税は都道府県ごとに異なります。住民税の税率は、譲渡所得に対して5%です。

個人が売却する場合

非上場株式の多くは経営者が保有しており、個人が売却するケースもあります。非上場株式の売却で個人が売却益を得た場合、譲渡所得に対して、所得税(15%)と復興特別所得税(0.315%)、住民税(5%)が課税されます。

譲渡所得を求める計算式は次のとおりです。

  • 譲渡金額-(取得費+譲渡費用)

取得費とは非上場株式を譲り受けた際の費用のことで、株式を購入した時価や手数料、消費税、名義書換料などが該当します。非上場会社の経営者が株式を売却する場合、取得費は資本金の額となるのが一般的です。取得費が判明しない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することも認められています。

譲渡費用は株式売却のために支出した費用であり、消費税やM&A仲介会社・専門家への手数料なども含まれます。

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みなし譲渡所得課税・みなし贈与課税が発生する場合

非上場株式を時価よりも著しく低額(時価の2分の1未満)または無償で譲渡した場合、みなし譲渡所得税やみなし贈与税がかかる場合があることに注意が必要です。

課税の形式は売り手・買い手それぞれが個人・法人のどちらかにより異なるため、ケース別にみていきましょう。

売り手と買い手がどちらも個人の場合

個人間の売買では、譲渡金額で株式を譲渡したと考えて計算されます。時価の2分の1未満の価額で譲渡したとしても、譲渡による損失を考えません。

買い手側については、個別の事情を判断し、贈与税が課せられるケースもあります。

売り手が個人、買い手が法人の場合

譲渡金額が時価の2分の1未満の場合には低額譲渡となり、みなし譲渡所得課税として時価と取得金額との差額に所得税等が課されます。

買い手の法人に対しては、時価と譲渡金額との差額が受贈益となり、課税されます。

売り手が法人、買い手が個人の場合

売り手の法人が時価で譲渡したものとされ、時価と取得金額との差額が譲渡所得となり課税されます。買い手の個人には、時価と譲渡価格との差額に対して所得税が課されます。

なお、売り手と買い手に雇用関係がある場合は給与所得に該当し、雇用関係にない場合は一時所得として扱われる点に注意してください。

売り手と買い手がともに法人の場合

法人間の取引でも時価で譲渡したと考え、時価と取得金額の差額に対して課税されます。売却先は法人となるため、時価と譲渡価額の差額は寄付金となり、損金不算入の対象です。

また、買い手に対しては、時価と譲渡金額の差額が受贈益として課税されます。

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非上場株式の確定申告

非上場株式の売却で譲渡所得を得た場合、確定申告が必要です。具体的に次のようなケースでは、確定申告をしなければなりません。

  • 源泉徴収ありの特定口座以外で株式売却による利益を得た
  • 源泉徴収ありの特定口座における譲渡損失を他の譲渡益から差し引く
  • 譲渡損失を譲渡益から差し引く
  • 過去3年間の譲渡損失を本年の譲渡益から差し引く

確定申告の時期や手続きは、法人と個人で異なります。

法人の確定申告

法人の確定申告は確定した決算にもとづいて行うため、個人の確定申告のように決まった期日は設けられていません。決算日は企業によって異なり、申告期限や課税期間について特別な届出を行っていなければ、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に確定申告を行います。期限にあたる日が土日祝日の場合は、その翌日が期限です。

申告期限と税金の納付期限は同じ日で、例えば、会計年度が4月1日から3月31日までの場合、申告・納付期限ともに5月31日となります。

個人の確定申告

個人の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に売却した譲渡所得に対して、原則として翌年の2月16日から3月15日の間に所轄の税務署へ申告します。

非上場株式を売却した場合、次の書類を用意します。

  • 確定申告書の第一表・第二表
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

書類に必要事項を記入し、マイナンバーカードや本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)のコピーを添付して提出します。

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まとめ

非上場株式の売却は株式の評価によっては多額の資金を獲得できる可能性があり、事業承継の手段にできるなどのメリットがあります。ただし、市場に流通していないことで、売却の相手先を見つけるのが難しい側面もあります。
定款で譲渡制限が定められている場合は、売却について株式総会や取締役会での承認手続きが必要です。

非上場株式を売却したいが、「売却先が見つからない」「相手との交渉がうまくできない」といった悩みがある場合、M&A仲介会社に相談するのもおすすめです。

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非上場株式の売却についての相談も無料で行っていますので、お気軽にお問い合わせください。