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買収防衛策とは?具体的な手法や準備、注意点を解説!

このページのまとめ

  • 買収防衛策とは敵対企業からの買収を防ぐ対策
  • 買収防衛策には「ポイズンピル」「パックマンディフェンス」などがある
  • 買収防衛策は買収前に行う策と買収を受けてから行う策がある
  • 買収防衛策は自社や株主に不利益を生じさせる場合もあるため注意
  • 買収防衛策実施時はM&A仲介会社のような専門家に相談する

「買収防衛策にはどのような手法があるのだろう?」と気になる経営者もいることでしょう。敵対企業から自社を守るため、備えておくことは重要です。買収を受けてから発動できる防衛策もあります。
本コラムでは、買収防衛策の種類や準備を解説します。実施する際の注意点やリスクに関しても解説するため、参考にしてください。

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M&Aでの買収防衛策とは 

買収防衛策とは、他企業から買収を仕掛けられた際に、買収されないように講じる対策のことです。M&Aで発生する敵対的買収を防ぐために行われます。

買収防衛策には、買収前に実施する策と、買収を仕掛けられた際に実行する策があります。

買収前に実施する策は、

  • ポイズンピル
  • ゴールデンパラシュート
  • ティンパラシュート
  • マネジメント・バイアウト

などです。

また、買収を仕掛けられた場合は、

  • 焦土作戦(クラウンジュエル)
  • ホワイトナイト
  • パックマンディフェンス
  • 資産ロックアップ

などを使用して自社を防衛します。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、買収を仕掛ける企業が、買収対象の企業の支配権を獲得するために行う買収のことです。買収される企業の同意を得ずに、買収を行う特徴があります。

敵対的買収では、株式の3分の1、または過半数獲得を目的にします。
3分の1の株式を獲得できれば、株主総会の特別決議を拒否できるからです。
また、過半数の株式を取得できれば、対象の会社を子会社にできます。
買収対象の企業は、他社の支配権獲得から自社を守るために、防衛策を講じる必要があります。

友好的買収とは

友好的買収とは、対象企業の同意を得て、買収を行うことです。日本で行われるM&Aの多くは、友好的に実施されています。

友好的買収の場合は、同意が得られているため、成功する確率が高まります。また、買収後のシナジー効果も期待できるメリットがあります。

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買収防衛策の導入状況 

買収防衛策を導入する企業は、減少しています。
マールオンラインによると、2022年4月時点で、買収防衛策を導入している企業は274社でした。ピーク時は2008年の569社であり、2020年は280社、2021年は273社と減少が続いています。

減少の理由には、買収防衛策の導入は、経営者の保身だと批判されている背景があります。株主総会で反対されるケースも多く、導入を見直す企業が増加しました。

また、法律が変わったことも、導入状況に影響を与えています。
2006年には金融商品取引法が改正され、公開買付制度が変わりました。

さらに、リーマンショックの影響もあり、金融業界が縮小傾向にあります。そもそも敵対的買収を行う企業が少なく、防衛策を導入しなくても良いと考える企業も増加しました。

ただし、敵対的買収がまったく行われなくなったわけではありません。対策を講じておかなければ、急な買収に対応できなくなることには注意が必要です。

参照元:マールオンライン「買収防衛策導入状況 ~有事導入型の防衛策最多、対象会社との協議を経ずに大量株式取得事例が増加

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買収前に実施する買収防衛策 

買収防衛策は、買収前に実施するものと、買収を受けてから実施するものがあります。
ここでは、買収前に実施する防衛策を紹介します。

  1. ポイズンピル
  2. ゴールデンパラシュート
  3. ティンパラシュート
  4. マネジメント・バイアウト
  5. プットオプション
  6. チェンジオブコントロール
  7. 黄金株
  8. スーパー・マジョリティ条項(絶対的多数条項)
  9. 全部取得条項付株式
  10. 事前警告型防衛策
  11. スタッガードボード

それぞれ解説するため、参考にしてください。

1.ポイズンピル

ポイズンピルとは、新株予約券を発行し、買収を防ぐ防衛策です。買収を仕掛けた企業の持株が一定の基準を超えた場合、発動するように準備しておきます。

買収を仕掛けた企業の持株が基準を超えた場合、あらかじめ用意していた新株が株主に交付されます。すると、株主全体の株式所有割合が変わり、買収を仕掛けた企業の所有割合が減少する仕組みです。

また、株式の発行により、買収を仕掛けた企業は買収を継続しにくくなります。比率を戻すために株式を追加で購入すれば、費用がさらに掛かってしまうからです。結果、買収意欲を下げることにつながり、買収を防ぐことができます。

2.ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、買収価格を高騰させ、買収を仕掛けた企業の買収意欲をなくす防衛策です。

ゴールデンパラシュートでは、敵対的買収で経営権が移動した場合、経営者に支払う退職金が高くなるように設定しておきます。買収に成功しても、費用が多く掛かってしまうため、買収の抑止につながります。

もし、買収が行われても、経営者の手元には多額の退職金が残る点がポイントです。

3.ティンパラシュート

ティンパラシュートとは、敵対的買収時に支払う従業員の退職金を高額にしたり、就職の斡旋を保証したりする契約を従業員と締結し、買収コストを上げる防衛策です。

ゴールデンパラシュートと似た意図で使用されます。

ティンパラシュートの場合、取締役会の決議だけで実行できるメリットがあります。役員の退職金とは異なり、株主総会の承認は不要です。

4.マネジメント・バイアウト

マネジメント・バイアウトとは、経営者が自社の株式を買取り、非上場化してしまう防衛策です。買収を仕掛けられた側は、株式の過半数を取得して自社の支配権を守ります。

また、非上場化してしまえば、敵対的な企業が密かに株式を購入できない点もメリットです。

5.プットオプション

プットオプションとは、特定の商品を市場価格とは関係なく、あらかじめ決めておいた価格や数量で売却する方法です。

買収防衛策では、株主が一定の価格で株式を売却できるようにプットオプションで決めておきます。また、債権者には、債権回収を行う権利を与えます。

買収で支配権が変化した場合、プットオプションの発動が可能です。買収企業は株式の一斉買取や債権を一括で弁済しなければならず、膨大な支払いが必要になります。この支払いを買収に対する抑止力として活用するのが、プットオプションです。

6.チェンジオブコントロール

チェンジオブコントロールとは、経営者の変更が起きた場合に発動できる、取引先との取引条件を示した条項です。契約を結んだ当事者は、もう一方の経営者の変更を機に、契約内容を変更したり、契約の破棄ができるようになります。

たとえば、A社とB社で、「経営者が変わった場合、取引解除を可能にする」とチェンジオブコントロールで定めたとします。

そこに、C社がA社に対して敵対的買収を行い、経営者が変わったとしましょう。この場合、チェンジオブコントロールの条件を満たすので、B社はA社との取引を打ち切ることができます。C社からすると、想定していたB社との取引を失ってしまうため、損害が発生するかもしれません。

チェンジオブコントロールで条件を定めておくことで、買収への抑止力になります。

7.黄金株

黄金株とは、株主総会で重要議案を否決できるようになる株式のことです。拒否権付株式とも呼ばれます。

黄金株が発行されている企業では、種類株主総会の開催が必要です。黄金株を持っている株主が株主総会の決議を否決すれば、株主総会の決議が認められません。もし、買収を受けた場合でも、黄金株を持つ株主の権限で拒否ができます。

注意点は、黄金株の効果が強すぎる点です。濫用してしまえば、経営に悪影響を及ぼします。また、黄金株が敵対企業にわたってしまえば、実質的な経営権が奪われてしまうでしょう。リスクにも気を付けて、運用が必要です。

8.スーパー・マジョリティ条項(絶対的多数条項)

スーパー・マジョリティ条項とは、株主総会の決議要件を厳しくし、買収された場合でも意思決定を難しくする手法です。

通常であれば、買収や合併など重要な決議を行う場合、株主の3分の2以上の賛成が必要になります。スーパー・マジョリティ条項の場合は、この要件を「株主の90%以上が賛成しなければならない」などと変更しておきます。

この場合、要件を厳しく変更したため、敵対的買収に成功した企業は90%以上の株式を取得しなければ現役員を解任できません。90%以上の株式を取得するためには資金がさらに必要になることから、買収意欲をなくすことができます。

ただし、自社の意思でM&Aを行いたい場合でもスーパー・マジョリティ条項が発動し、売却が行いにくくなる点には注意しましょう。

9.全部取得条項付株式

全部取得条項付株式とは、株主総会の決議を行うことで、自社がすべてを取得できる株式のことです。種類株式発行会社のみで発行でき、株主総会の特別決議が必要です。

自社の株主をすべて取得できるため、敵対的買収からの防衛に使用できます。

10.事前警告型防衛策

事前警告型防衛策とは、大規模な買収に必要なルールを事前に公表し、ルールを守らない買収には対抗措置をとることを示しておく手法です。

事前警告防衛策をとることで、買収者はルールに沿った手続きで進める必要があります。買収を受ける側は、ルールに沿って提示された情報を確認したり、提案を検討する時間が生まれたりします。

11.スタッガードボード

スタッガードボードとは、取締役の改選時期をバラバラにし、全員が一度に交代する状況を防ぐ防衛策です。敵対的買収で取締役が解任されるまでの時間を作ることができます。

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買収を仕掛けられた際に行う買収防衛策 

買収を仕掛けられた場合には、次のような買収防衛策が実施できます。

  1. 焦土作戦(クラウンジュエル)
  2. ホワイトナイト
  3. パックマンディフェンス
  4. 資産ロックアップ
  5. 増配
  6. ジューイッシュ・デンティスト
  7. 第三者割当増資

それぞれ解説します。

焦土作戦(クラウンジュエル)

焦土作戦(クラウンジュエル)とは、買収企業が狙っている資産や事業を自社から切り離してしまうことです。買収目的をなくすことで、買収をやめさせる効果があります。

注意点は、自社の経営資源を切り離すため、企業価値が下がってしまう点です。そのため、友好的な企業に一旦売却し、そのあとで買い戻すケースもあります。

ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、友好的な企業を探し、買収または合併を行ってもらうことです。友好的な企業の傘下に加わることで、敵対企業からの買収を避けることができます。

ホワイトナイトの場合、友好的な企業にとっては急な買収です。そのため、新株を取得できる権利を渡すなど、友好的な企業に有利な条件で交渉が行われます。

注意点は、友好的な企業の資金力次第では、ホワイトナイトが失敗してしまう点です。敵対企業の資金力が多く、そのまま買収されてしまう恐れもあります。

パックマンディフェンス

パックマンディフェンスとは、買収を仕掛けられた企業が、逆に買収を仕掛けた企業を買収する方法です。日本の法律の場合、買収を仕掛けた企業の株式のうち、4分の1を取得すればパックマンディフェンスが成功します。

注意点は、実施に多額の資金が必要になることです。そのため、実施できる資金を持たないケースがほとんどになります。また、相手が非上場会社の場合、株式の買収ができない点もデメリットです。

資産ロックアップ

資産ロックアップとは、買収後に一定期間資産を売却できないと定める手法です。買収を仕掛けた企業が資産の売却を目的にしている場合、目的が達成できないため効果的です。

増配

増配とは、株主に対しての配当を増やすことです。増配で配当を増やし、株主からの支持を受けることで、敵対企業のTOBに応じない株主を増やすことを目的にします。株式を売らない株主が増加すれば、買収を防ぐことができるからです。

また、株価を上昇させ、買収コストを増加させる効果もあります。

ジューイッシュ・デンティスト

ジューイッシュ・デンティストとは、敵対企業のイメージダウンを行うことで、TOBを防ぐ手法です。イメージダウンにより社会的信用が下がり、買収に応じる株主を減らすことができます。

また、敵対企業は社会的信用を回復するために、資金を投じる必要があります。買収に使用できる資金を少なくする効果もあります。

第三者割当増資

第三者割当増資は、新株を友好的な企業に引き受けてもらう方法です。新株発行により、敵対企業の持株比率を下げることができます。

また、新株を獲得した企業との関係性が強まり、自社を守ってもらえる可能性も生まれます。

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買収防衛策を取り入れるための準備 

買収防衛策を取り入れる場合には、次の2つを準備しておきましょう。

  1. 株主の合意を得る
  2. 買収防衛策実施後を想定する

それぞれに関して解説します。

1.株主の合意を得る

買収防衛策実施前に、株主の合意を得ておきましょう。定款の変更が必要になる場合も多く、株主の合意がなければ実行できない方法があるからです。

合意なしに行える策も、勝手に進めては反発を受ける可能性もあります。トラブルになるリスクを避けるためにも、買収防衛策を進める場合には、合意を得てから行うようにしましょう。

2.買収防衛策実施後を想定する

買収防衛策実施後に、自社がどのような状況になっているか想定しておきましょう。株主に不利益を生じさせる策も多く、株主が減ってしまうリスクがあります。

株主が減ってしまうと、買収は阻止できても経営が厳しくなるかもしれません。

また、クラウンジュエルのように、自社の経営資源を切り離すことで、防衛はできても企業価値が下がってしまうケースもあります。実施のリスクも考えたうえで、どの防衛策を使用するか決定しましょう。

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買収防衛策導入時の2つの注意点 

買収防衛策導入時は、次の2つに注意しましょう。

  1. 買収防衛策が必要か検討する
  2. 会社や株主の利益を優先する

それぞれ解説します。

買収防衛策が必要か検討する

買収防衛策が本当に必要か、確認するようにしましょう。株主や自社に不利益が出る場合も多く、実施にはリスクがあるからです。

買収防衛策で発生するリスクと、買収されることで発生するリスクを考え、どちらの影響が大きいか考慮するようにしましょう。

会社や株主の利益を優先する

買収防衛策実施に迷った場合は、会社や株主の利益を優先するようにしましょう。利益に影響が出ることで、経営が難しくなったり、株主が離れてしまったりするからです。

たとえば、企業価値が下がってしまうと、資金調達の実施が難しくなります。
また、新株予約権の発行で株主の利益を損ない、信用を失う恐れもあります。

仮に買収を阻止できても、経営に影響があると問題です。自社や株主の利益を守りながら、買収に対して備えることが大切です。

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まとめ

敵対的買収に備えるためには、買収防衛策が重要です。
自社を守るために、選択肢に入れておくと良いでしょう。

買収防衛策には、買収前から準備しておくものと、買収を受けてから実施するものがあります。メリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴を確認してください。

また、対策を講じる際は、実施後のリスクも意識しながら運用しましょう。対策を講じた結果、自社や株主に不利益を与えてしまう恐れもあります。どの手法が適しているかは、M&A仲介会社のような専門家に相談して決めるようにしましょう。

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