スクイーズアウトとは|方法やスキーム、事例、注意点などを紹介

2024年1月11日

スクイーズアウトとは|方法やスキーム、事例、注意点などを紹介

このページのまとめ

  • スクイーズアウトとは、大株主が少数株主から強制的に株式を買い上げる手段
  • スクイーズアウトの目的は、M&Aを円滑に進行したり上場廃止をしたりするためなど
  • スクイーズアウトを実施するには、条件の確認と事前準備が必要
  • 主な方法は「株式等売渡請求」「株式併合」「全部取得条項付種類株式」「株式交換」
  • スクイーズアウトの過程やルールは複雑なので、専門家のサポートを受けるのがおすすめ

M&Aを行う際には株主の合意が必要とされます。そのため、少数株主から反発の声が上がれば、まとまりかけていたM&Aに関しても破談となってしまうことがあります。

そのようなとき、確実にM&Aの商談を成立させるために用いられる手法がスクイーズアウトです。
この記事では、スクイーズアウトについての概要と、その方法や手順、成功させるために押さえておきたい注意点について解説します。

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スクイーズアウトとは

スクイーズアウト(Squeeze Out)とは、M&A(合併と買収)を行う際に、少数株主や特定株主から、強制的に大株主が株式を買い取る手法のことです。

「Squeeze Out」は直訳すると「押し出す」「締め出す」という意味の言葉です。
M&Aを実施する際には、株主の同意を得たうえで株式を買収する必要があります。
しかし、少数株主からの同意が得られない場合や、株主と音信不通になってしまう場合があります。そういった場合にスクイーズアウトを活用することで、個々の株主への対応が解消され、スムーズな株式取得が可能になるでしょう。

少数株主が多すぎる場合にも、スクイーズアウトが役立つ可能性があります。スクイーズアウトは、会社法に基づいて行われる法的な手段です。会社法では別名「キャッシュアウト」とも呼ばれます。

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スクイーズアウトが注目される背景

スクイーズアウトが注目された背景には、2017年度の税制改正があります。税改正が行われる前までは、使用するスクイーズアウトの手法によって課税方法が異なりました。税制改正によりスクイーズアウトに関する税制が整理され、少数株主がいる場合の子会社の合併が機動的に行われるようになったのです。課税方法が統一されたことはスクイーズアウトが注目されるきっかけになり、株式交換による完全子会社化も推進されました。

スクイーズアウトに関するルールが整備され、より実用的な手法となった反面、従わなければならないルールも増加しています。

改正の目的は、スクイーズアウトに関する課税関連についてルールを明確にすることにありました。改正以降、スクイーズアウトを行う企業は、納税額がどれくらいかをしっかり確認しなければなりません。

スクイーズアウトの制度に関しては理解が難しく、手続きが困難な場合もあります。スクイーズアウトを実施するうえで困った場合は、専門家へ相談することをおすすめします。

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スクイーズアウトを行う5つの目的

スクイーズアウトは、M&A後の会社経営円滑化を期待して行われる手法です。
一定以上の数および割合の株式を所持することで、少数株主は議決権を得られます。経営に関する決定に関して、議決権を持つ少数株主に反対された場合、反対意見への対応が必要です。
少数株主の意見が変わらない場合には、会社の意思決定や、経営戦略に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
スクイーズアウトは上記のような、少数株主の反対が会社経営に悪影響を及ぼすことへの対策方法として使用されます。

この章では、スクイーズアウトを行う目的を紹介します。

  1. M&Aを実施するため
  2. 上場廃止をするため
  3. 株主総会にかかるコスト削減のため
  4. 株式の分散を防ぐため
  5. 株主代表訴訟のリスクを避けるため

スクイーズアウトの目的は主に5つです。それぞれ詳しく解説します。

1.M&Aを実施するため

事業継承や完全子会社化を目的にM&Aを実施する場合、買収側は100%の株式買収を望みます。
M&Aを実施する際、株主総会を開催し株主の賛同意見を得る必要があるため、少数株主にM&Aの実施を反対された場合、M&Aの成立が困難になる可能性もあるでしょう。M&Aを円滑に成立させるため、事前にスクイーズアウトを実施します。少数株主を排除するスクイーズアウトの実施を通じて、反対意見をもつ少数株主によるM&A成立の妨げを防ぐ効果が期待できます。

2.上場廃止をするため

一般的に、上場廃止前には株式を取得して100%の経営権を獲得します。スクイーズアウトは、上場廃止を望む場合にも活用が可能です。スクイーズアウトにより、少数株主を排除して上場廃止を実施します。
上場廃止のメリットは、株式が経営者側に集中し、意思決定のスピードが上がることです。少数株主がいる場合、株価を上げる目的の説明や株主の評価を意識した短期的な視点での経営が必要です。スクイーズアウトを実施し、少数株主を排除し株式を経営者側に集中することで、経営者側はより自由に中長期的な視点で経営判断を行える可能性があります。

3.株主総会にかかるコスト削減のため

株主総会は、会社法で定められる最高意思決定機関です。会社経営に関する決定事項は、株主総会の決議で決定されます。
株主総会の開催には、コストと手間がかかります。
株主総会開催前に、取締役会で招集事項について決定することが必要です。招集事項決定後は株主へ招集事項の伝達を書面で行うため、書面の作成費や発送費がかかります。。また、当日は会場設営や議事進行、株主からの質問などに対応する必要があります。会場のレンタル代もかかるでしょう。
株式を経営者側に集中させて、株主全員の同意がある状態にすれば、株式総会の招集手続きは省略可能です。株主総会開催にともなうコスト・手間を削減できます。

4.株式の分散を防ぐため

株主が亡くなった場合、株主の遺産相続人に株式が相続されます。相続人が複数人いる場合、株式も分散されてしまう可能性があります。株式が分散されることで、面識のない人や連絡が取れなくなる株主が増加し、会社経営での意思決定に支障をきたす場合もあるでしょう。
スクイーズアウトを実施し、株式を経営者側に集中させておくことで、株式分散の予防が可能です。また、従業員や取引先、会社発起人などが株式を保有しているケースもあります。少数であっても、会社経営の妨げになる可能性もあるため、スクイーズアウトする場合があります。

5.株主代表訴訟のリスクを避けるため

株主代表訴訟とは、会社に代わり株主が代表となり、会社役員を訴訟することです。株主代表訴訟は、会社役員が会社に対し不利益な事象を起こしたにも関わらず、会社がその責任を問わない場合などに、経営責任の追及目的で起こされることがあります。
株主代表訴訟は、株主の保護のために必要なシステムです。しかし、会社経営側の立場で考えた際、会社役員の立場や会社経営に関する意思決定・存続が危ぶまれるリスクも考えられます。また、メディアへの対応が必要になるケースもあります。
スクイーズアウトによって少数株主の排除を行うことで、株主代表訴訟のリスクを削減できます。

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スクイーズアウトの4つの方法

スクイーズアウトには、異なる4つの方法があります。

  • 株式等売渡請求
  • 株式併合
  • 全部取得条項付種類株式
  • 株式交換

以上の4つです。
4つの方法は、その手法を実行する条件や手続きの難しさなどに違いがあります。

1.株式等売渡請求によるスクイーズアウト

株式等売渡請求は、特別支配株主のみが行えるスクイーズアウトの手法です。
特別支配株主とは、株主全体の議決権90%以上を保有している株主を指します。特別支配株主は、現金を対価に少数株主を強制的に締め出すことが可能です。特別支配株主が企業からの承認を得た際、少数株主は特別支配株主による株式売買に必ず応じなければなりません。
企業の承認とは、対象企業の取締役会または取締役から過半数の承認を指します。この承認があれば、株主総会での決議を必要としません。
議決権90%以上の保有という条件をクリアできれば、最もシンプルでスピーディな手法です。
株式等売渡請求を利用すれば、最短20日程度でスクイーズアウトを実施できる可能性があります。

2.株式併合によるスクイーズアウト

株式併合とは、発行されている株式の数を減らすために複数の株式を、1株に統合する手法です。併合する比率次第で1株あたりの価格修正が行われますが、株数が減っても企業価値に変化はありません。
スクイーズアウトで行う株式併合は、少数株主が所有している株式を、株主権のない1株未満の状態にすることが目的です。1株未満の株式は「端株」と呼ばれ、端株は株式の効力を失います。
株主併合は、株主が持つ株式の権利に影響を与えるため、株主総会における特別決議で3分の2以上の承認を得ることが必要です。

3.全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウト

全部取得条項付種類株式とは、株主総会を開催し特別決議で3分の2以上の承認を得ることで、株式のすべてを強制的に取得できる株式のことです。
株式を全部取得条項付種類株式に変更する際には、企業が発行している株式の全てを変更する必要があります。また、株式の変更をするためにも、株主総会での決議で3分の2以上の承認を得なければなりません。
種類株式の発行および取得をするために特別決議が必要となり、コスト・時間が比較的かかる方法です。
全部取得条項付種類株式に変更し、少数株主の持ち株が端株になるように調整したうえで、普通株式を対価に買い上げます。そして端株を買い上げて、少数株主を排除します。

4.株式交換によるスクイーズアウト

株式交換によるスクイーズアウトには、株式併合を併用します。
株式交換とは、親会社となる会社が子会社となる会社の株式を全て取得する手法です。株式交換後は、親会社と子会社の間に100%の完全支配関係が生じます。
株式交換を実施するためには、株主総会を開催し、特別決議にて3分の2以上の承認を得ることが必要です。
株式交換後は株式併合を行い、子会社の少数株主の株式を端株にすることでスクイーズアウトの目的を達成します。
また、2017年の税制適格要件の見直し以降、少数株主に対して現金を株式交換の対価として渡すことでもスクイーズアウトの実施が可能です。

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スクイーズアウト方法を4つの観点から比較

スクイーズアウトの異なる4つの方法について、「議決権割合」「株主総会の開催」「株式の端株処理」「株主総会の取消訴訟」という4つの観点を比較した表がこちらです。

株式等売渡請求株式併合全部取得条項付種類株式株式交換
議決権割合9割以上2/3以上2/3以上2/3以上
株主総会の開催不要必要株主総会とともに種類株主総会の開催も必要必要
株式の端株処理不要必要必要不要
株主総会の取消訴訟提起できない提起できる提起できる提起できる

議決権割合は、特別支配株主の株式等売渡請求が9割以上必要になるのに対し、それ以外の方法では株主総会特別決議を可決できればよいことから、2/3以上であれば実施できます。

また、特別支配株主の株式等売渡請求は、株主総会の開催は必要なく、取締役会もしくは取締役の過半数の合意で実行できます。株主総会を開催しないため、当然ながら取消訴訟の提起もできません。

端株とは1株未満の株のことで、会社法上、端株は会社が強制的に買い取ることが可能です。全部取得条項付種類株式や株式併合はこの仕組みを利用し、少数株主の株式を1株未満の端株にして強制的に買い取ります。そのため、株式の端株処理が必要です。

端数処理手続きは、端数株式を合計した株式について地方裁判所に任意売却許可の申立てを行い、売却代金を少数株主に交付することでスクイーズアウトを完成させます。

それ以外の手法では少数株主の株式を現金と交換する、もしくは売り渡してもらうため、端株処理の必要はありません。

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スクイーズアウトを行う際の4つの注意点

ここでは、スクイーズアウトを実施する際の注意点を紹介します。
注意点は主に以下の4つです。

  • すべての企業が行えるわけではない
  • ある程度の財務余力が必要になる
  • 裁判を起こされる恐れがある
  • 目的の達成に一定の時間がかかる

それでは詳しく解説していきます。

1.すべての企業が行えるわけではない

スクイーズアウトを行うためには、自社で一定割合以上の株式を保有していることが前提条件です。あるいは、一定数の株主からの同意があれば手続きを進めることができます。
特別支配株主の株式等売渡請求によってスクイーズアウトを行う場合は、90%以上の議決権が必要です。
その他の株式併合・株式交換では、全体の3分の2以上の議決権が必要になります。条件を満たしていない場合、株式取得の資金と買取の手間が必要です。
実施する際は、条件を事前に整理しておくことが望ましいでしょう。

2.ある程度の財務余力が必要になる

少数株主の締め出しは、株式の現金買取か株式交換の形式で行われます。そのため、企業経営者や多数派株主側に対価分の財務余力が必要です。少なからず、企業経営者や多数派株主に資金面での負担がかかるでしょう。
また、少数株主を締め出すことで上場廃止が可能ですが、上場廃止を行うことで今まであった投資家からの資金調達方法が失われます。資金調達の手段が失われることも想定したうえでスクイーズアウトが行えるだけの財務余力があるのかどうか、確認する必要があります。

3.裁判を起こされる恐れがある

買取価格は、企業価値評価や市場状況に基づき算出します。しかし、算出した買取価格に少数株主からの同意が得られない場合、裁判に発展する恐れがあります。
少数株主には、企業の買取価格の決定に対して異議申し立てすることが認められています。裁判になる可能性があることも想定し、買取価格の決定を慎重に進めることが望ましいです。

4.目的の達成に一定の時間がかかる

スクイーズアウトは、一定の手続きと手続きに伴う時間が必要です。
手段ごとに、必要になる時間は変わりますが、どの手段であっても、株価の算定は必要です。
株価の算定は第三者の株価算定機関が行うため、ある程度の時間がかかります。
また、書面を作成したり取締役会・株主総会を開催したりすることにも時間を要します。
全ての手順が迅速に進められたとしても、20日間、長くて60日間程度の時間が必要になる可能性があります。

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スクイーズアウトのスキーム

株式等売渡請求・株式併合・全部取得条項付種類株式・現金を対価とする株式交換、これら4つのスクイーズアウトのスキームについて、解説します。
スクイーズアウトのスキームは、各手法ごとに少しずつ異なることが特徴です。
複雑な部分もあるため1つずつ項目に分けて紹介します。

株式等売渡請求のスキーム

株式等売渡請求を用いて行うスクイーズアウトのスキームは以下の通りです。

1.対象企業に請求の通知

特別支配株主は、対象企業に株式売渡請求の通知を行います。
通知する内容は以下の通りです。

  • 株式等売渡請求を行う旨
  • 株式の取得日
  • 買取価格・算定方法
  • 買取費用の割り当て

2.対象企業で請求を承認、通知

通知を行った対象企業からの、株式売渡請求の承認が必要です。
対象企業が取締役会設置会社であれば、取締役会での決議を行います。取締役会非設置会社であれば、取締役のうち過半数からの決定が必要です。
承認期限は、株式取得日の20日前までです。

3.対象企業から売渡株主などに通知あるいは公告

売渡株主に対して、株式売渡請求を承認した旨が通知されます。これにより、スクイーズアウトの準備が整います。
特別支配株主からの株式売渡請求は、対象企業からの承認通知があった時点で成立します。
なお売渡新株予約権者などに対しては、公告によるお知らせも可能です。

4.株式等売渡請求に関する資料を本店に事前備置き

対象企業は、売渡株主へ通知・公告を行った日から取得日後6か月の間、株式売渡請求に関する資料を本店に設置します。なお、対象企業が非公開会社の場合は取得日後1年間です。
内容は、特別支配株主の氏名、株式等売渡請求の条件などです。
書面は買い手が閲覧、謄本または抄本の交付請求ができるようにしておく必要があります。

5.株式の取得

株式等売渡請求を行った特別支配株主は、指定した取得日に売渡株式等をすべて取得します。
なお支払いが完了していない場合にも株式はすべて取得したとみなされます。株主権の行使も可能です。

6.株式等売渡請求に関する資料を本店に事後備置き

株式等売渡請求に関する事後開示資料を、親会社・子会社の双方の本店に備え置きます。資料は全ての株主が閲覧、および謄本または抄本請求が行えるようにすることが必要です。
書面は、取得日から6か月間備え置いてください。非公開会社の場合は取得日から1年間です。

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株式併合のスキーム

株式併合を利用して行うスクイーズアウトのスキームは以下の通りです。

1.株主総会の招集準備

株式併合、株主総会開催の旨を決議するための取締役会を開催します。取締役会招集には、取締役会開催の1週間前に各取締役と各監査役へ通知を行いましょう。取締役会開催後は、議事録を作成し、署名・記名押印するよう定められています。
取締役会で決議したら、株主に対して株主総会の招集通知をします。

2.株式併合に関する資料を本店に事前備置き

取締役会で株式併合が決議された際、株式併合の概要・併合割合の適合性、最終年度の貸借対照表などを会社本店に据え置きます。
設置時期は、決議の2週間前あるいは株主への通知または告知の日から、効力発生日の6ヶ月後です。

3.株主総会で特別決議

株主総会で特別決議を行います。株式併合を実行に移すためには、出席した株主の議決権数の3分の2以上の承認を得ることが必要です。

4.株主に個別に通知

株式併合の概要・併合割合について決議された後、株式併合の20日前までに全ての株主に通知する必要があります。あるいは、通知に代わって公告を行ってください。

5.株式併合の実施

株主総会で3分の2以上の承認が得られ、特別決議された日付に株式併合の効力が発生します。
少数株主が保有する1株未満の端株は、経営企業によって買い取られます。

6.株式併合に関する資料を本店に事後備置き

株式併合に関する事後開示資料を、本店に備え置きます。
書面は、株式併合の効力発生日から6か月間が過ぎるまで備え置いてください。

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全部取得条項付種類株式のスキーム

全部取得条項付種類株式を利用して、スクイーズアウトを行う際のスキームは以下の通りです。

1.株主総会の招集準備

全部取得条項付種類株式を実施するためには、株主総会の開催が必要です。
取締役会において株主総会の決議をして、株主へ株主総会の招集通知を送りましょう。

2.全部取得条項付種類株式に関する資料を本店に事前備置き

全部取得条項付種類株式に関する資料を本店に設置します。
設置時期は、株主総会の2週間前もしくは株主に対する通知・公告の日から、取得日後6か月の間です。書面は全ての株主が閲覧、謄本または抄本請求ができるようにします。

3.株主総会で特別決議

株主総会で特別決議を行います。株主総会の特別決議において、出席した株主の議決権数の3分の2以上の承認を得ることが必要です。

4.株主に個別に通知

全部取得条項付種類株式の全取得を行う旨を全ての株主に対し通知する必要があります。取得日の20日前までに通知を行ってください。また、公告で済ませることも可能です。

5.株式の取得および対価の交付

株主総会で決議された日付に、株式の取得が成立します。
株式の取得後、企業は株主に対して、対価を支払うことが必要です。
また、少数株主が所有している端株は企業によって買い取られます。

6.全部取得条項付種類株式に関する資料を本店に事後備置き

全部取得条項付種類株式に関する事後開示資料を、本店に設置します。
書面は、取得日から6か月間が経過するまで備え置いてください。

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現金を対価とする株式交換のスキーム

2017年度の税制適格要件の見直し以降、株式買取の対価が親会社の株式だけでなく、現金が対価として認められるようになりました。
ここでは、現金を対価とする株式交換でのスクイーズアウトを解説します。

1.株式交換契約の締結

親会社と子会社の間で、株式交換契約を締結します。
締結には、事前に親会社と子会社の双方の取締役会での決議が必要です。または、取締役の過半数の承認を得る必要があります。

2.株式交換に関する資料を本店に事前備置き

株式交換に関する事前開示資料を、親会社・子会社の双方の本店に設置しましょう。資料は全ての株主が閲覧、および謄本または抄本請求が行えるようにします。
また、書面は備置開始日から効力発生日の6か月後までの期間、備え置くことが必要です。

3.株主総会の招集準備

株式交換を行うには、株主総会で承認を得なければなりません。
そのため、親会社・子会社の両方で株主総会への招集が必要になります。株主へ、株主総会開催の招集通知を2週間前までに発送します。なお、非上場企業の場合は1週間前までに招集通知を行うのが一般的です。

4.株主総会で特別決議

親会社、子会社双方で株式総会を開催します。
株主総会で、株式交換に関する特別決議が行われます。
承認には、特別決議で、出席株主の3分の2以上の承認を得ることが必要です。

5.株主に個別に通知

効力発生日の20日前までに株式買取請求に関わる全ての株主へ、通知または公告を行う必要があります。
条件次第で、債権者がいる場合には異議申述公告を行います。合わせて個別催告が必要です。

6.株式取得および対価の交付

株主総会で決議された日付に、親会社による子会社の全株式取得が成立します。この際、子会社の株式を所持していた株主に対して、対価が支払われます。端株は親会社に買い取られます。
株式取得から、2週間以内に変更登記が必要です。2週間経過後も受付可能な場合もありますが、過料が課せられる可能性があるため、速やかに行うことが望ましいでしょう。

7.株式交換に関する資料を本店に事後備置き

株式交換に関する事後開示資料を、親会社・子会社の双方の本店に備え置きます。資料は全ての株主が閲覧、および謄本または抄本請求が行えるようにしてください。
書面を置いておく期間は、株式交換の効力発生日から6か月後までの間です。

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少数株主の対抗策

スクイーズアウトでは、法律で少数株主にも以下のような対抗策が定められています。

  • 売渡株式等の取得をやめることの請求
  • 売渡株式等の取得の無効の訴え
  • 取締役の善管注意義務違反による責任追及

取得をやめることの請求や無効の訴えは、法令違反がある場合もしくは売買価格等が著しく不当な場合に認められる対抗策です。また、合理的な理由なしに特別支配株主からの売渡等請求が取締役会で承認された場合、取締役への責任追及を行うこともできます。

このような対抗策が取られないよう、スクイーズアウトは正当な手続きを踏み、公正な価格で行わなければなりません。

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スクイーズアウトが行われた事例

実際にスクイーズアウトが行われた事例も少なくありません。ここでは、代表的な事例をいくつか紹介します。

Zホールディングス・LINE

ソフトバンクグループの子会社であるZホールディングス株式会社は2021年、経営統合によるシナジーの拡大を目的に、LINE株式会社とヤフー株式会社を中心とした事業の選択と集中による合併方針を決議しました。

株式公開買付と吸収合併、株式交換を用いたスクイーズアウトにより、LINE株式会社の完全子会社化を実現しています。

統合により生まれたZホールディングスは国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなり、国内総利用者3億人という巨大なユーザー基盤を生み出しました。国内で約200を超えるサービスを提供するようになり、社会に新たな価値を創出しています。

参照元:ソフトバンク株式会社「当社完全子会社である汐留Zホールディングス合同会社とLINE株式会社の吸収合併契約締結に関するお知らせ」

佐渡汽船

佐渡汽船は新潟本土から佐渡島を結ぶフェリーを運航する会社です。同社は2022年、みちのりホールディングスの傘下に入るため、東証ジャスダックでの上場を廃止することになりました。

株主をみちのりホールディングスと新潟県・佐渡市などの大株主のみとすることを目的に、普通株式27万株を1株とする株式併合を行うと発表し、普通株式1株あたり30円の金銭を交付するスクイーズアウトが実施されました。

佐渡汽船は債務超過の状態にあったことで、株価の算定価格は問題となることなく手続きが完了しています。

スクイーズアウトによりコスト削減などの経営改革を行い、自力で売上を伸ばすことを目指しています。

参照元:佐渡汽船株式会社「第三者割当による新株式及び新株予約権の発行、定款の一部変更、親会社、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動、自己株式の消却、株式併合及び単元株式数の定めの廃止、株式分割及び単元株式数の定めの新設、並びに、株主に対する新株予約権(非上場)の無償割当についてのお知らせ」

日本製鉄

日本最大手の鉄鋼メーカー・日本製鉄株式会社は、サプライチェーン全体での競争⼒を更に強化するため、日鉄物産を公開買付(TOB)とスクイーズアウトにより連結子会社化・非公開化しました。

TOBで三井物産以外の全株式を取得できなかったことで、株主を同社と三井物産の2社のみとする株式併合によりスクイーズアウトを実施しています。

その結果、日鉄物産は日本製鉄の連結子会社となり、2023年に上場を廃止しました。

今回の連結子会社化・非公開化は、市場の構造変化に適切に対応するため、さらなる連携強化が目的です。グループの収益確保のため、製造から流通・加⼯までの最適化・効率化により、サプライチェーン全体での競争⼒を高めることを目指しています。

参照元:日本製鉄株式会社「日鉄物産㈱に対する公開買い付けによる子会社化・非公開化」

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まとめ

スクイーズアウトとは、少数株主や特定株主が所有する株式を、大株主が強制的に買い取る手法を指します。スクイーズアウトの目的は、M&Aや上場廃止などさまざまです。
スクイーズアウトの方法は主に4つあり、株式等売渡請求・株式合併・全部取得条項付種類株式・現金を対価とする株式交換、これらのいずれかを用います。
スクイーズアウトは会社法や税制などのたくさんのルールがあるため、初心者が実施するには難しいこともあるでしょう。トラブルなく実施するために、専門家へ相談することがおすすめです。

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