廃業とは?倒産や閉店などとの違いやメリット・デメリットなどを解説

2024年1月5日

廃業とは?倒産や閉店などとの違いやメリット・デメリットなどを解説

このページのまとめ

  • 廃業とは、経営者が事業をやめてしまうこと
  • 2022年度の休廃業・解散数は53,426件
  • 廃業ではなくM&Aを行うことで、事業存続できるケースがある

経営難や後継者不在など、さまざまな理由で検討されるものが廃業です。日本では、2016年以降、毎年5万件以上の企業が休廃業、解散を選択しています。では、廃業を行うためには、どのような方法や手続きを踏めば良いのでしょうか。本記事では、廃業の手続き方法や種類、廃業以外の選択肢なども解説しています。廃業を検討している経営者は、参考にしてください。

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廃業とは

廃業とは、経営者が会社や事業をやめ、終了させることです。現代では、経営難や経営者不在の状況から、廃業を選択する経営者が増加しています。なお、廃業を実施する手続きには、「会社を解散させるケース」と「財産を清算するケース」があります。

廃業にかかる時間は、企業の状況によって異なる点に注意が必要です。負債が少ない企業であれば、3ヶ月から半年ほどで手続きを進められるでしょう。しかし、特別清算のように、債権者への対応が必要なケースもあります。交渉がうまくいかない場合は、数年単位で時間が掛かるケースもあるため注意しましょう。

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企業の休廃業・解散状況

株式会社帝国データバンクの調査によると、2022年度の休廃業・解散数は53,426件でした。3年連続の減少となりましたが、企業倒産数(6,376件)だけに注目すると3年ぶりに前年を上回っています。

黒字状態で廃業を行う企業は54.3%と、過去最低の割合となりました。特に注目されるのは、高齢の代表者が休廃業しているケースが加速している点です。この背景としては、後継者不在や人手不足、物価高などにより事業継続そのものを諦めることなどが挙げられます。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2022年)

新型コロナウイルスの影響も強い

廃業が多い背景には、新型コロナウイルスの影響もあります。新型コロナウイルスの影響により、経済活動が冷え込んだ結果、観光業や飲食業界では厳しい状態が続いています。国や自治体による支援も行われていますが、長期的な経営改善は果たせていないのが現状です。今後も休廃業や解散件数は横ばいが続くと予想されています。

廃業を避けるため、M&Aを実施するケースも

近年では、廃業を避けるためにM&Aを実施するケースが増加しています。事業自体は黒字であり、続ける余力のある企業も多いからです。倒産の背景には、「経営者の高齢化」「事業に対する今後の不安」が多い状況です。そのため、M&Aを行うことで後継者問題や事業に対する不安を解消し、事業を存続させるケースが増加しています。

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廃業が行われる理由 

廃業が行われる理由は、経営難だけではありません。経営に余裕がある企業でも、経営をやめてしまうケースが増加しています。具体的には、次のような理由が影響しているため、覚えておきましょう。

  • 赤字や債務超過
  • 後継者の不在
  • 将来への不安
  • 資金ショート

ここでは、これらの詳しい理由を解説します。

赤字や債務超過

赤字や債務超過が発生してしまうと、経営者は事業を辞めざるを得ません。資金調達が難しくなり、取引先との契約継続も難しくなるからです。事業を続けていても状況は良くならず、完全に資金がなくなってしまうでしょう。このような状況を避けるためにも、赤字や債務超過が改善できないと判断した時点で、廃業を選択するケースが多い状況です。

後継者の不在

後継者がいないことも、経営を辞めてしまう原因になっています。株式会社帝国データバンクの調査によると、2021年度に、後継者がいないと答えた企業は、約16万社でした。割合に表すと、約61.5%の企業が後継者不在に悩んでいます。また、経営者の平均年齢も上がっており、2019年の調査では、62.16歳となりました。このように、後継者不在の企業が多く、経営者も高齢の状況が発生しています。そのため、事業を続けられずに廃業してしまう企業が増加しています。

参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)」、「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)

将来への不安

現在の経営が安定していても、余力のあるうちに事業をたたむ経営者も増加しています。事業や業界が今後どのようになるか、不安を抱えている経営者が多いためです。新型コロナウイルスの影響で衰退した業界があるように、急に業績が落ちてしまうこともあります。そのため、余力のあるうちに経営をやめてしまおうと考える経営者も増えました。その結果、黒字状態にも関わらず、廃業してしまう企業が増加しています。

資金ショート

資金がショートしてしまった企業は、経営ができずに廃業を選択せざるを得ません。期日までに必要な支払いができなくなるからです。特に、一度資金面で問題が出た場合、取引している金融機関からの信用も落ちてしまいます。最悪の場合、取引自体ができなくなるケースも発生するでしょう。このような状況に陥った経営者は、倒産や廃業を選択せざるを得なくなります。

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廃業と倒産や休業などの違い

廃業と混同しやすい言葉に、「倒産」「休業」「解散」などがあります。それぞれ意味が異なってくるため、違いを区別しておきましょう。

資金繰り事業継続債務
廃業問題あり不可能状況による
倒産問題あり問題あり状況による
休業状況による状況による状況による
閉店状況による複数店舗あるときは継続状況による
破産問題あり不可能超過
解散状況による問題あり状況による
清算状況による問題あり状況による

※いずれも一般的なケースです。

倒産との違い

倒産とは、経営難で事業が難しくなったり、資金繰りに失敗して支払いができない状況で使用される言葉です。廃業との違いは、完全に事業がなくなったわけではなく、あくまでも停止している状態になる点です。そのため、倒産した会社に対しては、「会社更生法」「民事再生法」などを活用し、再生を目指すケースもあります。株式会社帝国データバンクによると、倒産には、次の6つが該当するとしています。

  • 銀行取引停止処分を受ける
  • 内整理する(代表が倒産を認めた時)
  • 裁判所に会社更生手続開始を申請する
  • 裁判所に民事再生手続開始を申請する
  • 裁判所に破産手続開始を申請する
  • 裁判所に特別清算開始を申請する

参照元:株式会社帝国データバンク「倒産の定義

休業との違い

休業とは、事業を一時的に停止している状態のことです。廃業とは違い、一定期間が過ぎた後に、再開するケースもあります。また、休業の場合は、法人登記を残したままにしておく点も特徴です。

閉店との違い

閉店とは、店舗の営業をやめることです。複数の店舗を所持している場合、1つの店舗を閉める状況でも閉店と呼びます。廃業との違いは、店舗を複数持つ経営者の場合、事業は継続される点です。あくまでも、店舗を閉めることを指すため、違いを区別しておきましょう。

破産との違い

破産とは、会社や個人が債務超過に陥り、負債を整理している状況を指します。廃業の場合は、負債がない場合も多い点も異なっています。破産してしまった場合には、「破産法」に従い、手続きを実施する点も特徴です。

参照元:e-Gov法令検索「破産法

解散との違い

解散とは、企業が事業を停止し、廃業手続きを行うための準備地点のことです。一般的には、株主総会を開き、解散決議を行うことで実施します。注意点は、解散を行った段階では、企業はまだ存続している点です。解散後に清算を行う必要があるため、清算決了までは法人登記が残っています。そのため、解散をしたからといって、即座に企業がなくなるわけではないことを覚えておきましょう。

清算との違い

清算とは、解散を発表した会社が、自社の資産や負債を整理している状態のことです。清算では、「債権の取り立て」「財産換価処分」「債務弁済」などが実施されます。

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廃業のメリット 

廃業を選択することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、2つのメリットを紹介します。

  • 精神的な負担が減る
  • 資産が残る

精神的な負担が減る

精神的な負担やストレスが軽減されることは、経営者にとってメリットになります。企業を経営し、維持していくことは、負担が大きいからです。特に、従業員を雇用している場合は、従業員の生活も守らなければなりません。そのため、自分だけで経営を進めるよりも、大きな負担が掛かってくるでしょう。経営をやめることで、精神的な負担が減る点は、メリットになります。

資産が残る

企業や事業がなくなっても、手元に資産が残ることもメリットです。負債が多い企業や、経営難の企業ではなければ、資金を残せるでしょう。廃業を選択した場合、まずは「借入の返済」「従業員へ給与や退職金の支払い」などを行います。このような清算を終えたあとに、資産が残れば経営者のものになります。破産や倒産などと違い、資金を残しておけることはメリットになるでしょう。

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廃業のデメリット  

廃業を選択した場合には、デメリットもあります。どのようなデメリットがあるかを知っておきましょう。

  • 従業員を解雇せざるを得ない
  • 取引先に影響を及ぼす
  • 事業がなくなってしまう

ここでは、3つのデメリットを解説するため、参考にしてください。

従業員を解雇せざるを得ない

事業をたたむ場合は、従業員を解雇せざるを得ない点がデメリットになります。従業員の雇用を継続できないからです。従業員を解雇する際は、事前の通告はもちろん、十分な説明が求められます。なぜ事業を終えるのか、納得してもらう必要があるでしょう。従業員が生活に苦しまないように、再就職するためのサポートも含めて話し合うと良いでしょう。

取引先に影響を及ぼす

事業を終えることで、取引先にも影響を及ぼしてしまいます。自社との取引がなくなることで、経営にダメージを受ける取引先がいる可能性も考えておきましょう。たとえば、取引先によっては、自社からの売上が大多数を占めているケースもあります。自社との取引がなくなることで、取引先が経営難に陥ってしまうケースもあるでしょう。また、製品を納品していた場合、取引先は代替品を探す必要があります。取引先に負担を掛けないためにも、あらかじめ伝えておくことが大切です。

事業がなくなってしまう

廃業を選択してしまうと、事業がなくなってしまうこともデメリットです。企業によっては、他社では実施できないサービスを提供しているケースもあるでしょう。事業がなくなってしまうと、これまで培ってきたノウハウや技術、人員などもなくなってしまいます。事業承継ができない場合、これまでの積み重ねがすべてなくなってしまう点がデメリットになるでしょう。

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廃業方法の種類

廃業を行う場合、手続きの選択肢があることを知っておきましょう。違いを理解し、自社に合った方法を選ぶことが大切です。具体的には、次の5つが挙げられます。

  • 自主廃業・通常清算
  • 破産
  • 特別清算
  • 私的整理
  • 経営者保証債務の整理

事業継続が難しいと判断したときには自主廃業か通常清算を選択します。一方、債務超過で事業継続が不可能なときは破産、通常清算ができないときは特別清算です。裁判所を通さずに整理をするときは、私的整理を行います。

ここでは、それぞれの方法を解説します。ぜひ参考にしてください。

自主廃業・通常清算

自分で廃業を選択した場合は、自主廃業、または通常清算になります。早めに廃業・清算することで、資産がある場合は残せる可能性が高まります。いずれも負債よりも資産が上回っている状態であれば、問題なく実施できるでしょう。

自主廃業・通常清算は、株主総会で解散決議を取ってから行います。通常清算の場合は、「債権の取り立て」「財産換価処分」「債務弁済」などを実施します。清算後に残った資産は株主のものになるため、黒字経営の企業であれば、手元に資産を残せるでしょう。

破産

負債の弁済ができない場合には、破産が行われます。破産すると合法的に債務がなくなるというメリットがあります。ただし、手続き自体に経営者は関与できず、破産法と破産管財人に従って手続きが進められることを知っておきましょう。破産の場合は、会社に残った資産はすべて弁済に充てられます。もし、負債が残っていても、企業に支払える能力がありません。そのため、最終的には企業が消滅し、破産手続きが終了になります。

特別清算

通常清算ができない企業は、特別清算を行います。たとえば、債務超過がある企業などで、実施されると覚えておきましょう。

特別清算を実施すると、債権者との話し合いにより債務が軽減されることもあります。特別清算は、裁判所の監督のもと実施されます。協定型と和解型があり、状況に応じて変わることを覚えておきましょう。

参照元:東京商工リサーチ「特別清算

私的整理

私的整理とは、経営者と債権者で、個別に交渉を実施する手続きのことです。破産や特別清算とは異なり、裁判所の監督のもとでは実施されません。非公開で行うこともあり、成功すれば社会に知られることなく対応できる特徴があります。その一方で、私的整理は個人での対応が難しい手続きです。必要な手続きや知識が多く、交渉もまとまらないケースがあるでしょう。

参照元:私的整理に関するガイドライン研究会 「私的整理に関するガイドライン

経営者保証債務の整理

経営者保証とは、企業が融資を受ける際に、経営者自身が連帯保証人として融資を受けることです。その結果、廃業を選択した場合に、保証人として対応せざるを得なくなります。しかし、企業の負債を経営者個人の資産で補うことは難しいでしょう。

そのような場合に使用される手続きが、経営者保証債務の整理です。経営者保証債務の整理では、中小企業庁と金融庁が定めたガイドラインに従い、手続きを進めます。「自宅不動産」「生計費に使用する預貯金」などは残したまま、債務処理を行えることがあります。

参照元:中小企業庁「経営者保証
参照元:金融庁「「経営者保証に関するガイドライン」における廃業時の保証債務整理に関する参考事例

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廃業の手続き方法:自主廃業・通常清算の場合

ここでは、「自主廃業・通常清算」に関する手続きの流れを解説します。基本的には、次のような流れになるため覚えておきましょう。

  1. 株主総会で解散を決議する
  2. 清算人を決める
  3. 債権の届け出を行う
  4. 財産目録と貸借対照表を作成する
  5. 残余財産の換価と債権の回収を行う
  6. 債務の弁済を行う
  7. 残余財産を分配する
  8. 決算報告を行う
  9. 清算が終わったことを登記する

1つずつ解説するため、参考にしてください。

1.株主総会で解散を決議する

清算を行う場合、株主総会で解散の決議が必要になります。その際、「特別決議」が必要になる点に注意しましょう。特別決議の条件には、「株主総会に株主の半数以上が出席している」「出席した株主のうち、3分の2以上の賛成がある」の2つを満たす必要があります。通常の決議では実施できないことを覚えておきましょう。

2.清算人を決める

清算を行う際には、清算人を決める必要があります。もし、清算人がいない場合には、代表取締役が選定されるため覚えておきましょう。清算人の選定は「株主総会での決議」または「企業であらかじめ決められている」ケースがあります。清算人が決まった後は、法務局で清算人登記を実施しましょう。

3.債権の届け出を行う

清算人決定後は、債務の届け出が必要です。公告を出し、債権者に告知を行いましょう。また、債権者に対して、個別に告知を行うことも求められます。

4.財産目録と貸借対照表を作成する

債務整理を行うために、「財産目録」と「貸借対照表」の作成を行いましょう。財産目録と貸借対照表を作成した後は、株主総会で承認を受ける必要があります。財産目録の記載内容に関しては、次のとおりです。

  • 現金
  • 預貯金
  • 貸付金
  • 売掛金
  • 有価証券
  • 不動産
  • 借入金
  • 買掛金

5.残余財産の換価と債権の回収を行う

弁済に使用する資金を得るために、残余財産の換価と債権の回収を行いましょう。企業に残された資産をお金に変えることで、債務や借金の返済に使用します。たとえば、不動産や有価証券などを売却し、資金に変えられるでしょう。注意点は、安く売却してしまうと、債務の弁済に使う資金が足りなくなることです。弁済に必要な金額を考えながら、資金を作る必要があります。

6.債務の弁済を行う

資産を資金に換えたら、債務の弁済を行いましょう。弁済に必要な資金を所持している場合、弁済を行います。しかし、弁済に必要な資金が足りない場合は、通常清算が実施できないため注意しましょう。なぜなら、すべての弁済が行えない状態で弁済を進めることは、不公平になってしまうからです。もし、通常清算が行えないと判断された場合、「特別清算」または「破産」になるため注意しましょう。

7.残余財産を分配する

弁済終了後、資金が残るケースもあります。その場合、株主に資金を分配しましょう。注意点は、税金の支払いも行う必要がある点です。税金を支払い、それでも残った資金があれば、株主に分配します。

8.決算報告を行う

残余財産の分配が終われば、決算報告を行います。株主総会で報告しましょう。決算報告書を作成し、株主総会で承認を得ます。承認が得られたら、法人格が消滅します。

9.清算が終わったことを登記する

清算が終われば、登記が必要です。決算報告の承認後、2週間以内に登記申請を実施しましょう。登記申請が完了すれば、通常清算の手続きは終了になります。

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廃業の手続き方法:破産の場合

廃業するために、破産を選択するケースもあります。破産の場合は、次のような流れで実施されます。

  1. 専門家に相談する
  2. 破産手続きを開始する
  3. 債務者審尋の実施する
  4. 破産管財人を選ぶ
  5. 債権者集会の開催する
  6. 債権の確定と配当を行う
  7. 破産手続終結決定が行われる

ここでは、破産を行う場合の手続きを詳しく解説するため、参考にしてください。

1.専門家に相談する

破産を決定する前に、まずは専門家に相談しましょう。M&A仲介会社や弁護士に相談を行うことで、どのような方向性で進めるか決められます。その結果、破産を選択した場合には、破産手続きを実施しましょう。

2.破産手続きを開始する

破産手続きを開始する場合、裁判所に申請が必要です。破産の申立書、書類などを提出しましょう。また、破産手続きを行うためには、裁判所に予納金を納める必要があります。予納金の内訳には、「手数料」「官報公告費」「引継予納金」などがあるため、覚えておきましょう。

3.債務者審尋を実施する

破産手続きが終われば、債務者審尋が実施されます。債務者審尋とは、債権者と裁判所が面談を行い、支払いできない状態かどうかを判断する手続きのことです。債務者審尋では、次のような内容を聞かれるケースが一般的になります。

  • 事業内容
  • 破産手続きに至った経緯
  • 負債額
  • 財政状況
  • 債権者の人数

4.破産管財人を選ぶ

裁判所が破産手続きを進めても問題ないと認めた場合、破産手続きが進められます。その後、破産管財人が選ばれ、手続きを進めることになります。経営者は代理人と一緒に、破産管財人と破産に関する相談を行いましょう。

5.債権者集会を開催する

債権者集会を開き、債権者に対して説明を行います。債権者集会とは、裁判所が決めた日程で開催され、破産管財人から説明が行われる会です。具体的には、次のような内容が、債権者集会で説明されます。

  • 破産に至った経緯
  • 財産や資産の状況
  • 負債の状況
  • 資産の換価状況
  • 今後の手続きに関して

6.債権の確定と配当を行う

債権者集会後は、債権の確定と配当が行われます。まずは、債権者が債権届け出を行うため、企業の負債を確定させましょう。もし、弁済後に資金が残っていた場合には、債権者に分配が行われます。

7.破産手続終結決定が行われる

債権の確定と配当が行われることで、破産手続きは終了になります。裁判所から、破産手続終結決定が出された時点で終了です。破産手続きが終われば、企業の法人格が消滅し、負債も消滅します。

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廃業の手続き方法:特別清算の場合

債務超過の企業では、特別清算ののちに廃業を行うケースもあります。特別清算を行う場合、基本的には次のような流れで実施します。

  1. 専門家に相談する
  2. 株主総会で解散決議を行う
  3. 清算人を決める
  4. 解散登記を行う
  5. 財産目録を作る
  6. 債権者に通知する
  7. 特別清算の申し立てを行う
  8. 清算人が清算業務を行う
  9. 協定案または和解案を提出する
  10. 債権者が協定案を決議する
  11. 和解または協定を実施する
  12. 特別清算終結の決定をする

工程ごとに解説するため、参考にしてください。

1.専門家に相談する

廃業を検討している段階で、まずは専門家に相談しましょう。特別清算だけではなく、ほかの手続き方法も選択肢に挙がるためです。専門家と相談し、廃業すべきか、M&Aで事業承継を行うべきかなどを確かめましょう。

2.株主総会で解散決議を行う

特別清算を行うと決まれば、株主総会で解散決議を実施します。この場合の株主総会では、「株主の過半数が出席している」「参加している株主の3分の2以上が賛成している」の2つを満たすことで、解散決議が実施できます。

3.清算人を決める

解散決議と同時に、清算人も決めておきましょう。基本的には、取締役が清算人に選任されます。また、弁護士などのように、別の清算人を決めるケースもあるため覚えておきましょう。

4.解散登記を行う

解散が決まれば、登記が必要になります。解散から2週間以内に、解散と清算人に関する登記を実施しましょう。

5.財産目録を作る

清算を行うために、財産目録の作成が必要です。加えて、貸借対照表の作成も行いましょう。財産目録と貸借対照表が作成できたら、株式総会での承認を受けます。

6.債権者に通知する

特別清算では、債権者に対し、債権を申し出ることを通知すると決められています。まず、官報に債権の申し出を公告しましょう。企業が把握している債権者に関しては、個別に通知を行う必要があります。官報での公告と、個別の通知は両方実施しましょう。

7.特別清算の申し立てを行う

特別清算実施に向けて、申し立てを行いましょう。自社の本店を管轄している所在地の、地方裁判所に申請します。裁判所は申し立てを受け、「債務超過の可能性がある」または「清算を行うことが難しい状況である」と判断した場合、特別清算の実施を命じます。しかし、次のようなケースでは、特別清算が認められない可能性もあるため、注意しましょう。

  • 清算決了の見込みがない
  • 債権者の利益に反する
  • 特別清算の申し立て理由が不適当
  • 費用の予納がされていない

8.清算人が清算業務を行う

特別清算が命じられた場合、清算業務を行います。また、債権者集会を行い、債権者に対して報告も行いましょう。債権者に対しては、「会社の財産状況」「財産目録の報告」「今後の方針」などを説明します。

9.協定案または和解案を提出する

特別清算では、債権者に対して、「協定案」または「和解案」を作成します。まず、協定案の場合は、債権者に対する支払い計画をまとめた書類を、裁判所に提出しましょう。また、債権者に関しても、協定案の送付を行ってください。

和解案の場合には、債権者と個別に話し合い、対応を行います。和解案を裁判所に提出して、和解の許可をもらいましょう。

10.債権者が協定案を決議する

協定案提出後は、債権者による決議が必要です。債権者集会を開催し、決議を行いましょう。協定案の決議には、「出席した議決権者の過半数」かつ、「議決権者の総数のうち、3分の2以上の同意」があれば認められます。もし、議決が認められない場合には、破産手続きに移行するため覚えておきましょう。また、和解案を提出し、和解が成立している場合は、協定案の決議は不要です。

11.和解または協定を実施する

協定案、和解案ともに、決められた内容を実施しましょう。協定案の場合は、裁判所の許可をもらい、弁済を進めます。和解案に関しては、個別で決めた内容をもとに、弁済を行いましょう。

12.特別清算終結の決定をする

特別清算が終われば、裁判所が特別清算終結の決定を出します。この際、裁判所で官報公告を行いましょう。公告日の翌日から2週間以内に不服申し立てが行われなければ、特別清算が終結します。その後、特別清算終結に関する登記を行うことで、会社が消滅し、廃業が実行されます。

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廃業の手続き方法:経営者保証債務の整理の場合

経営者が経営者保証を行っている場合、経営者保証債務の整理を行うケースがあります。その場合、基本的には次のような流れで進められます。

  1. 専門家に相談する
  2. 返済猶予を要請する
  3. 弁済計画を決める
  4. 金融機関が弁済計画をもとに対応を決める

ここでは、経営者保証債務の整理を行う場合の、具体的な手続きに関して解説するため、参考にしてください。

1.専門家に相談する

廃業を行う場合、まずは専門家に相談を行いましょう。経営者保証債務の整理の実施だけではなく、清算や事業再生の選択肢もあるからです。専門家に相談し、どの方法を活用するか決めましょう。

2.返済猶予を要請する

経営者保証債務の整理を活用する場合、返済猶予の要請を実施します。債権者に対して、一斉に通告を行いましょう。

3.弁済計画を決める

債権者に対して弁済を行うために、弁済計画を作成します。「財政状況」「資産換価」「資産の処分」などに関して、計画を立てましょう。弁済計画を立てる際も、専門家に相談して進めることで、安心して作成ができます。

4.金融機関が弁済計画をもとに対応を決める

弁済計画作成後は、金融機関に弁済計画を提出します。金融機関が、弁済計画をもとに対応を検討するため覚えておきましょう。弁済計画の同意を得た場合、計画に基づき、弁済を進めます。

参照元:中小企業基盤整備機構「「経営者保証に関するガイドライン」のポイント

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廃業で必要になる書類

廃業を行うためには、書類の提出が必要になります。ここでは、通常清算を行う際に必要な書類を紹介します。特別清算や破産の場合、別の書類も必要になる場合があるため、注意してください。

  • 解散届出書
  • 清算結了届出書
  • 解散確定申告
  • 清算確定申告書
  • 清算結了登記申請書
  • 給与支払事務所の廃止届出書
  • 消費税事務所廃止届
  • 雇用保険適用事務所の廃止届
  • 雇用保険被保険者廃止届
  • 厚生年金保険被保険者資格届
  • 健康保険被保険者資格届
  • 適用事業所全喪届
  • 労働保険確定保険料申告書
  • 労働保険料還付請求書
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【状況別】廃業を回避するための方法

経営を続けることが難しくなっても、廃業以外の選択肢を取れることがあります。具体的には、次のような選択肢も候補に入れてみましょう。

  • 後継者不在の場合
  • 経営難の場合
  • 将来を考えている場合

ここでは、廃業を回避するために実施できる方法をそれぞれ解説します。

後継者不在の場合

後継者不在の場合、外部から後継者を探せます。M&Aを利用して、後継者を探してみましょう。現代では、親族に後継者がいないことで、第三者に事業承継を行う企業が増加しています。事業自体は継続できる状態なのであれば、M&Aを活用して後継者を探してみましょう。

経営難の場合

経営難であっても、採算が見込める事業を売却し、対応できるケースがあります。たとえば、事業譲渡や会社分割であれば、事業だけを他企業に譲渡できるでしょう。経営難であっても、好調な事業を抱えているケースもあります。その場合、採算が見込める事業を譲渡し、譲渡できなかった部分だけを清算しても良いでしょう。

将来を考えている場合

近年では、将来に不安を抱える経営者が増加しています。このような不安を解消するために、M&Aで経営統合を行うのも良いでしょう。経営基盤が安定している企業に統合されたり、グループに入ったりすることで、自社の経営も安定します。統合などであれば従業員の雇用を守れ、事業も存続可能です。自社を残したまま、経営に対する不安も軽減できるでしょう。

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廃業時にM&Aを活用するメリット 

近年では、廃業時にM&Aを活用する経営者が増加しています。では、M&Aを活用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。具体的には、次の4つの理由から、M&Aを活用する経営者が増加しています。

  • 事業を引き継いでもらえる
  • 従業員の雇用を継続できる
  • 取引先に迷惑が掛からない
  • 廃業とは違い資産が残りやすい

ここでは、それぞれのメリットを解説するため、参考にしてください。

事業を引き継いでもらえる

M&Aの活用により、事業を引き継いでもらえる点がメリットになります。自社の事業や技術、ノウハウを後世に残せるでしょう。事業によっては、消滅してしまうことで、社会全体の損失になってしまうケースもあります。経営者にとっても、これまで積み上げてきた事業がなくなってしまうことは苦しいでしょう。M&Aであれば、事業を引き継いでもらえ、自社が積み重ねたノウハウなどを残せます。廃業で事業をなくしてしまうよりも、メリットが大きいでしょう。

従業員の雇用を継続できる

従業員の雇用を継続できる点も、M&Aを活用するメリットです。従業員の生活を守り、安心させられます。事業をたたむ際にネックになるものが、従業員の扱いです。いきなり雇用するわけにはいかず、再就職のサポートに動く必要もあるでしょう。M&Aであれば、買い手企業に対して、自社の従業員を再雇用してもらえるように依頼できます。また、買い手企業も、買収した事業を存続させるためには、ノウハウを持つ従業員の雇用が不可欠です。このように、M&Aを活用すれば、従業員の雇用を継続できる点がメリットになります。

取引先に迷惑が掛からない

事業が存続すると、取引先に迷惑が掛からない点もメリットになるでしょう。買い手企業と取引先で契約を結びなおすことで、取引を継続できるからです。廃業で懸念されるポイントが、取引先への影響です。自社からの仕入れがなくなることで、困惑するケースも多いでしょう。M&Aで事業が継続できれば、取引先に迷惑を掛けることもありません。事業をやめることで取引先に迷惑が掛かることを考えると、M&Aで事業承継できることはメリットになるでしょう。

廃業とは違い資産が残りやすい

廃業とは違い、資産が残りやすい点もM&Aを活用するメリットです。事業を売却し、経営者の資金になるからです。廃業する場合では、負債の弁済を行う必要があり、手元に残る資産が少なくなります。一方で、M&Aを活用する場合、企業全体を売却可能です。加えて、従業員の価値やノウハウのような無形資産も企業価値になります。廃業してしまうと、無形資産は資金にならず、企業価値として判断されません。M&Aであれば、無形資産を含めた企業全体を売却できるため、資産が残りやすくなるでしょう。

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廃業に関する相談先

廃業するか悩んだときは、次の相手に相談してみましょう。

  • 公認会計士・税理士
  • 弁護士
  • 金融機関
  • 商工会議所や商工会
  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • M&A仲介会社

それぞれに相談するメリットやデメリットを紹介します。

公認会計士・税理士

顧問会計士や顧問税理士がいるときは相談してみましょう。自社の財務状況や税務状況を熟知しているため、スムーズに相談が進みます。また、財務・税務の専門家として具体的な意見をもらえるのもメリットです。

専門分野以外の業務には対応できないこともあるため、破産手続きなどの実務のサポートは得られない可能性があります。また、顧問の会計士・税理士がいないときは、自社の財務状況などがわかる書類を準備しておく必要がある点にも注意しましょう。

弁護士

弁護士も廃業についての相談が可能です。廃業するときは債権者とのトラブルも想定されるため、法的な手続きを依頼できる弁護士のサポートが必要です。

弁護士は財務や会計の専門家ではないため、経営立て直しなどのアドバイスは得られません。廃業について悩むときは、顧問弁護士がいる場合でも他の相談先にも相談してみましょう。

金融機関

取引のある金融機関に相談するのも一つの方法です。廃業するときは金融機関からの債務も整理する必要があるため、早めに相談することで解決策が見つかるかもしれません。

金融機関によってはM&Aのサポートを実施しており、相手企業の紹介を受けられることもあります。ただし、対象を大企業に限定していることが一般的で、手数料も高めの傾向にある点はデメリットといえます。相談前に確認しておきましょう。

商工会議所や商工会

商工会議所や商工会では、会員向けに無料相談サービスを提供しています。会員になっているときは、相談してみましょう。中小企業の支援実績も豊富なため、廃業以外の解決策が見つかることもあります。

ただし、会員になっていないときは利用できません。また、会員になるためには会費が必要な点、M&Aを実施するときの具体的なサポートを得られない点はデメリットといえます。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継に関するサポートを提供する公的窓口です。誰でも無料相談を利用できるため、気軽に問い合わせられます。

ただし、M&Aを専門とした機関ではないため、対応スピードが遅い可能性があります。状況が切迫する前に相談しましょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aをサポートする民間企業です。そのため、廃業のサポートは受けられない点はデメリットですが、M&Aによる解決策が見付かる可能性がある点はメリットです。負債を抱えていても、事業やブランドの価値が高いと評価されると売却益を受け取れるかもしれません。廃業以外の解決策も視野に入れているときは、相談してみましょう。

M&A仲介会社には法務や税務、財務などの専門家も在籍しているため、M&Aに関わるすべての手続きを任せられます。実務を任せるときには利用料が発生するため、事前に見積もりを取り、おおよその料金を把握してから依頼しましょう。

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まとめ

近年では、廃業を行う企業が増加しています。後継者不在や経営難に悩み、事業を終える選択を行う経営者が多いからです。しかし、事業の継続に悩んだ際でも、廃業を避けることはできます。M&Aを活用して、事業を存続するための選択肢も考えてみましょう。M&Aであれば、事業の継続はもちろん、廃業よりも経営者に資産が残りやすくなるなどのメリットもあります。廃業だけではなく、M&Aも含めて自社に良い方法を検討してみましょう。

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料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。
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