株式交換とは?実施のメリット・デメリットや事例をわかりやすく解説

2023年11月28日

株式交換とは?実施のメリット・デメリットや事例をわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 株式交換とは、自社の株式を他社に譲渡し、親子会社を成立させる手法
  • 株式交換には、「簡易株式交換」と「略式株式交換」がある
  • 株式交換は、資金ではなく株式を対価にできるメリットがある
  • 株式交換をスムーズに行うためには、M&A仲介会社を利用する

「株式交換を実施したいけど、何から始めて良いか分からない」と考える担当者も多いのではないでしょうか?M&Aで事業を拡大するために、株式交換を選択肢に入れる企業も多いことでしょう。
株式交換をスムーズに進めるためには、株式交換の流れを把握し、準備を進めることが大切です。本コラムでは、株式交換の概要やメリット、実施の流れなどを解説します。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換とは 

株式交換とは、企業が発行した株式を他の企業に引き継ぐことで、親子会社を成立させるM&A手法のことです。株式を引き継いだ側の企業を「完全親会社」、株式を譲渡した側の企業を「完全子会社」と呼びます。また、株主交換には、「簡易株式交換」と「略式株式交換」の2種類があります。

簡易株式交換とは

簡易株式交換とは、株式交換時に親会社が支払う対価が、「親会社の純資産のうち、5分の1以下の場合」で実施できる手法です。簡易株式交換の特徴は、株主総会での決議を実施せずに、株式交換が行える点になります。

株式交換を行う場合、基本的には株主総会で決議が必要です。株主総会の決議で認められなければ、実施が認められません。しかし、株主総会を行うには手間と時間が掛かり、企業への負担が増加します。一方で、簡易株式交換を実施できれば、スムーズに株式交換が実施可能です。そのため、簡易株式交換を行い、M&Aを行う企業も多くなっています。

略式株式交換とは

略式株式交換とは、株主交換を行う前に、「親会社が子会社の議決権のうち、90%以上を所持している状態」で行える方法です。略式株式交換の場合も、株主総会での決議を実施せずに、交換を行えるメリットがあります。ただし、「親会社が非公開企業かつ、譲渡制限株式が交付される場合」「子会社が公開企業かつ、譲渡制限株式が交付される場合」は、株主総会の実施が必要になるため注意しましょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

三角株式交換とは

三角株式交換とは、M&Aの際によく用いられる株式交換の一種です。三角株式交換では、完全子会社となる譲渡企業A社の株式交換の対価として、完全親会社となる譲受企業B社が自社ではなく既に取得していた親会社C社の株式をA社に取得させます。

すると、譲渡企業A社の上には譲受企業B社、そのさらに上には譲受企業の親会社C社という図式ができあがります。B社が譲渡企業A社の株を100%保有したうえで、親会社であるC社がB社の株式を保有すれば、C社はA社を完全子会社とすることができるのがメリットです。

三角株式交換は国を越えたクロスボーダーM&Aで、外国の企業が日本の子会社を介して日本企業を子会社化する際にも活用されます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換と株式移転の違い 

株式交換と混同されやすいものが、株式移転です。株式移転との違いを区別しておきましょう。株式移転とは、既に発行されている会社の株式をすべて、新しく創設する企業に移転させることを指します。すでにある企業に移転しても、株式移転にはならないため注意しましょう。株式移転の場合、新しく創設した会社が成立した日に、株式移転の効果が発生します。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換のメリット 

株式交換実施に向けて、どのようなメリットがあるかを知っておきましょう。ここでは、株式交換で期待できる5つのメリットを紹介します。

  • 株式があれば買収資金が必要ない
  • 経営統合が実施しやすい
  • 株主全員の同意がなくても実施できる
  • 売り手が買い手の経営に参加しやすい
  • 売り手は利益を獲得できる

株式交換でM&Aを実施する際の参考にしてください。

株式があれば買収資金が必要ない

株式を所持している場合、買収資金が必要ない点がメリットです。親会社は自社の株式を対価に、株式交換を行えます。もし、手元に買収に使用できる資金が用意できない場合も、M&Aが実施できるでしょう。

経営統合が実施しやすい

経営統合が実施しやすい点も、メリットに挙げられます。株式交換の場合、子会社は親会社とは別の企業として維持されるからです。そのため、急激に統合を進める必要がありません。たとえば、合併で経営統合を進めた場合、企業風土や体制などの変更から、従業員にも負担をかけてしまいます。一方で、株式交換は子会社がそのまま残るため、急激な変更を行うことなく、経営統合を進められるでしょう。

株主全員の同意がなくても実施できる

株主全員の同意がなくても実施できる点もメリットです。株主総会で決議されれば、株式交換に反対した株主の株式も、強制的に取得できるためです。株主総会での特別決議は、次の2つの要件を満たした場合に成立するため、覚えておきましょう。

  • 株主総会に半数以上の株主が出席している
  • 株主総会に参加した株主のうち、3分の2以上が賛成している

売り手が買い手の経営に参加しやすい

売り手企業の場合、買い手企業の経営に参加しやすいこともメリットです。株式交換の場合は、売り手企業に対して、買い手企業の株式が交付されます。株式の数が多い場合、買い手企業の議決権を取得できるケースもあるでしょう。このように、売り手企業や子会社であっても、買い手や親会社の経営に参加しやすい点はメリットです。

売り手は利益を獲得できる

売り手企業の場合、利益を獲得できる点もメリットです。買い手企業や親会社の株式を取得し、のちに売ることができます。株式交換を行った結果、シナジーが期待され、株価が上昇するケースもあるでしょう。その際、株式を売却することによって、利益を獲得できます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換のデメリット 

株式交換を行う場合、デメリットもあります。具体的には、次の5つのデメリットに注意しましょう。

  • 株の価値が下がる可能性がある
  • 手続きが複雑である
  • 株主構成が変わるケースもある
  • 株主総会で特別決議が必要
  • 負債や必要のない資産も譲渡されてしまう

ここでは、予想されるデメリットを紹介するため、参考にしてください。

株の価値が下がる可能性がある

株式交換の結果、株の価値が下がるケースもあるため注意しましょう。株式を新しく発行し、株主の人数が増加するパターンがあるからです。たとえば、株主が50人いた企業で株式を新規発行し、株主が10人増えたとします。すると、株主1人あたりの所有率は減少し、株主総会での影響力も少なくなってしまいます。このような状況は「株式の希薄化」とも呼ばれ、株式交換でよく発生する問題です。株の価値が下がってしまう可能性には注意しましょう。

手続きが複雑である

手続きが複雑な点は、デメリットになります。時間も掛かるため、注意しましょう。株式交換を行う場合は、1つ1つの手続きに時間が掛かります。ほかのM&A手法に比べて、長期的に対応が必要になるため注意が必要です。長期化による、担当者への負担にも配慮しましょう。

株主構成が変わるケースもある

買い手企業の場合、株主構成が変わるケースもあるため注意しましょう。親会社の株式が交付された結果、議決権を取得する可能性があるからです。買い手企業にとっては、株主構成が変わることで、経営に意見されてしまうケースがあります。株式交換の結果、経営が進めにくくなるリスクもあることを知っておきましょう。

株主総会で特別決議が必要

株式交換を実施したい場合は、株主総会で特別決議が必要になります。株主総会の実施に、時間や負担が掛かる点もデメリットになるでしょう。また、特別決議を行った結果、株式交換が否決されてしまうケースもあります。その場合、株式交換自体ができなくなってしまうため、注意しましょう。

負債や必要のない資産も譲渡されてしまう

株式交換の場合、負債や必要のない資産も譲渡されるため注意しましょう。株式譲渡とは異なり、包括承継だからです。株式交換の場合、売り手企業全体を引き継ぐ契約になります。そのため、負債や不要な資産を切り分けることができません。事業譲渡のように、必要な資産だけを選べないため、注意しましょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換を実施する場合の流れ

株式交換実施に向けて、どのような流れで行われるか知っておきましょう。基本的には、次のような流れで実施されます。

  • 売り手と買い手で合意する
  • 株式交換契約を締結する
  • 事前開示書類を作成する
  • 株主総会決議を行う
  • 株式の買取請求を行う
  • 株券提出を行う
  • 債権者保護手続の実施
  • 株主交換の効力が発生する
  • 事後開示書類の作成を行う

ここでは、各工程ごとに説明を行うため、参考にしてください。

売り手と買い手で合意する

株式交換を行うためには、売り手と買い手の同意が必要です。この際、売り手企業が子会社、買い手企業が親会社になることを覚えておきましょう。合意するための話し合いでは、株式交換以外のM&A手法に関しても相談が行われます。株式譲渡や事業譲渡など、どの手法が自社に適しているか考えながら進めましょう。M&A仲介会社のような専門家に相談して進めることで、適切な方法を選ぶことができます。

株式交換契約を締結する

株式交換で行うことが決まれば、株式交換契約の締結を行います。買い手と売り手で、契約を結びましょう。株式交換契約には、次のような内容を記載します。記載漏れがないように注意しましょう。

  • 効力発生の日時
  • 契約を結ぶ企業の情報
  • 株式交換で使用する金銭や株式
  • 株式の割り当てに関する記載

事前開示書類を作成する

契約締結後は、事前開示書類を準備しましょう。株主総会の開催日よりも2週間前に、事前開示書類を本店に用意すると会社法第782条で定められています。事前開示書類は、親会社、子会社ともに必要になるため覚えておきましょう。事前開示書類には、次のような内容を記載してください。

  • 株式交換の内容
  • 株式交換対価の相当性に関する説明
  • 相手企業に関する事項

参照元:e-Gov法令検索「会社法第782条

株主総会決議を行う

株式交換を行うためには、株主総会での決議が必要です。ただし、簡易株式交換、または略式株式交換を行う場合は、株主総会は必要ありません。

株主総会が必要な場合、まずは、株主総会の実施を周知しましょう。公開会社の場合、株主総会が開催される2週間前までに開催通知を発送します。非公開会社の場合は、1週間前までに発送しましょう。

株主総会開催後は、株主総会で特別決議を行います。特別決議では、「株主の半数以上が出席している」「出席者の3分の2以上の賛成」の2点を満たす必要があるため、覚えておきましょう。

株式の買取請求を行う

株式交換を行うために、株式を集めておく必要があります。もし、株式交換に反対する株主がいた場合は、株式の買取請求を行いましょう。買取請求ができる期間は、会社法第785条にて、「株式交換の効力が発生する20日前から、効力発生の前日まで」と定められています。

参照元:e-Gov法令検索「会社法第785条

株券提出を行う

子会社側は、株券の提出が必要になります。その際、「株券発行会社であり、株券を発行している」ことが条件です。該当する場合には、効力が発生する日までに、株券提出を行いましょう。もし、効力発生日までに提出しない場合、株券が無効になってしまうため、注意してください。

債権者保護手続の実施

債権者保護手続が発生するケースもあるため注意しましょう。債権者保護手続とは、M&Aなどの実施で債権者に利害をもたらす場合、公告や催告が必要になることを指します。ただし、株式交換の場合は、株式の移動だけで終わるため、債権者保護手続が必要ないケースが多くなります。

株主交換の効力が発生する

あらかじめ定めた効力発生日になれば、株式交換の効力が発生します。この時点で、買い手側は売り手の株式を所持するため、覚えておきましょう。効力発生時に注意する点は、登記の有無です。売り手側は、株式数に変更がないため、基本的に登記は必要ありません。ただし、買い手が新株を発行して株式交換を行う場合には、株式数に変更があるため、登記を行いましょう。

事後開示書類の作成を行う

株式交換成立後は、事後開示書類の作成と設置を行いましょう。会社法第801条で定められています。事後開示書類には、次のような内容を記載しましょう。

  • 効力発生日
  • 消滅会社と存続会社での手続き経過
  • 存続会社が継承した権利に関する事項
  • 登記変更日

参照元:e-Gov法令検索「会社法第801条

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換実施時の注意点

株式交換実施では、次のような場面に注意しましょう。

  • 株式交換比率に基づいて交付を行う
  • 株価変動リスクを考慮する
  • 端数株式と単元株式の対応を決めておく

株式交換をスムーズに進めるためにも、参考にしてください。

株式交換比率に基づいて交付を行う

株式交換を行う際、買い手企業は売り手企業に対して株式を交付します。その際、株式交換比率が使用されることを覚えておきましょう。株式交換比率とは、売り手が持つ株式の場合、買い手の株式をどれだけもらえるかを示す率のことです。比率に関しては、両企業の企業価値をもとに算出されます。一般的に、企業価値を案出する方法では、次の3種類が用いられます。

企業価値評価方法概要手法
コストアプローチ会社の貸借対照表に基づく修正純資産法、簿価純資産法
マーケットアプローチ上場会社の指標やマーケットでの取引事例に基づくマルチプル法、取引事例比較法
インカムアプローチ会社の生み出す将来キャッシュフローに基づく配当割引モデル、DCF法

ここでは、各アプローチの概要を解説します。企業によって適切な算出方法が変わるため、専門家に相談しながら算出を行いましょう。

コストアプローチ

コストアプローチとは、会社の貸借対照表に基づく評価手法で、純資産に着目して評価が実施されるのが特徴です。ネットアセットアプローチと呼ばれることもあります。

コストアプローチの具体例としては、以下の2つが挙げられます。

  • 修正純資産法:企業の資産と負債を時価に修正して評価する手法
  • 簿価純資産法:貸借対照表の帳簿価格(簿価)に基づく手法

大企業のM&Aでは活用されることが少ないですが、中小企業のM&Aではコストアプローチが用いられるケースが多いでしょう。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場会社の指標やマーケットでの取引事例に基づいた価値評価の方法です。上場企業の場合は、株価を基準に評価を実施します。

非上場企業は、同類の上場企業を探し出し、財務諸表値を比較と倍率計算をおこないます。その後、比較例として選定した上場企業の株価にそれを掛け合わせることで、対象企業の株価を評価するのが一般的です。

マーケットアプローチの具体例は、次のとおりです。

  • マルチプル法:上場会社の指標に基づく手法
  • 取引事例比較法:他の取引事例に基づく手法

インカムアプローチ

インカムアプローチでは、会社の生み出す将来キャッシュフローに基づいて価値評価をおこないます。市場に動きがあったとしても、企業や資産の将来性に影響が及ばなければ、評価結果に大きな変化は生じません。

そのため、長期的な視野で意思決定をするのに向いている評価方法だといえるでしょう。

インカムアプローチの具体例は、次の2つです。

  • 配当割引モデル:予想される一株あたりの配当額と投資家が要求する利回りを用いて算定
  • DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法):フリーキャッシュフローをベースに割り引いたうえで現在価値に換算して算定

株価変動リスクを考慮する

株式交換の契約を締結した後に、実際に株式交換が実施されるまでには長いときには数ヶ月程度の時間を要します。この期間の間に株価が大きく変動してしまうと、最終的な損失につながってしまう恐れがあるでしょう。

株式交換をスムーズに進めるためには、固定比率方式と変動比率方式の概要とそれぞれを採用した場合の影響を把握しておくことが大切です。

特徴メリット
固定比率方式取引する株式数を契約時に取り決めた値のまま固定する方法株の希薄化を防げる
変動比率方式譲渡企業の株式価値を契約時に固定し、株価変動に応じて交付される株式数が変動する方法資産に大きな影響を与えない

固定比率方式の場合の影響

固定比率方式とは、取引する株式数を契約時に取り決めた値のまま固定する方法です。株式が変動した際にも取引数は影響を受けないため、契約後に受け取る株式の価値が上がれば得をし、逆であれば損をします。

新しい株を発行して交付する予定の場合は、発行した株式が増えるほど1株の価値が希薄化します。固定比率方式では、株式の発行数が変動しないため、株の希薄化が必要以上に進んでしまうことを防げるのが利点です。

変動比率方式の場合の影響

変動利率方式では、譲渡企業の株式価値が契約時に固定されます。そのため、株価の変動に応じて交付される株式の数が増減します。

株価の数に変動はあるものの、受け取れる価値を定めることができるため、資産に大きな影響を与えない点がメリットだといえるでしょう。一方株式を発行する側では、株主構成や株式希薄化の度合いへの影響が予想されます。

端数株式と単元未満株式の対応を決めておく

親会社から交付された株式が、端数株式になってしまった場合の対応を知っておきましょう。交換比率で、「1:0.1」「1:0.25」などの端数が出るケースがあるからです。端数株式が出てしまった場合は、「現金にして払い戻しを行う」「買い手企業が買い取る」などで対応を行うことが一般的です。

同様に、単元株式数を定款で設定している場合は、単元未満株式に注意しなければなりません。株式交換で交付される対価株式が単元株式数未満となってしまった際には、株主が株式の買取を企業に要求できます。

単元未満を切り捨ててしまうと、正確な比率で交換ができません。株式が単元未満になった場合、対応をどのようにするかも決めておきましょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換で発生する税務

株式交換を行う場合、税務が発生する点にも注意が必要です。ここでは、株式交換を行う際に、どのような税務が発生するかを解説します。

基本的な扱い

まずは、税務でどのような扱いをされているか確認してみましょう。税務では、株式交換は企業間の取引として扱われています。なぜなら、「買い手企業が株式譲渡を行い、売り手企業から財産を得る」そして、「売り手企業は買い手企業の財産を取得する」とみなされるからです。税務では、株式交換で発生した利益と損失を計算し、税金の対象にします。株式交換で利益や損失が発生した場合、課税対象になることを覚えておきましょう。

株式を譲渡した損益に対する課税

株式を譲渡した損益に対して、どのように課税されるか確認しておきましょう。法人の場合は、「株式譲渡で得られる対価額-株式の簿価」で決まります。上場企業の場合、株式交換前の市場価格が適応されるため覚えておきましょう。もし、非上場企業の場合は、国税庁によって定められた内容に従い、対応しましょう。

参照元:国税庁「法第23条から第35条まで(各種所得)共通関係
参照元:国税庁「第2款 有価証券の評価益
参照元:国税庁「第3款 有価証券の評価損

資産に対する課税

資産に対しても課税が行われるため、注意しましょう。株式交換を基準に、時価が上回れば利益、下回れば損失が出るからです。資産に応じて、課税所得が生じるため、覚えておきましょう。

特例的な扱い

株式交換を行う場合、特例措置を受けられるケースもあるため覚えておきましょう。具体的には、次の3種類が特例に挙げられます。

  • 組織再編税制が適用される場合
  • 買い手の株式のみ交付される場合
  • グループ法人税制が適用される場合

それぞれ解説するため、参考にしてください。

組織再編税制が適用される場合

組織再編税制に該当する場合も、税務の特例を受けることができます。そのためには、買い手企業の株式のみが交付されることが必要です。また、株式交換前に、買い手企業と売り手企業に対して、次のような関係性があることも条件になるため覚えておきましょう。

買い手企業が売り手企業の株式を100%所持している場合

  • 株式の100%所持が今後も見込まれる

買い手企業が売り手企業の株式を50%以上、100%未満所持している場合

  • 株式の50%を超える所持が今後も見込まれる
  • 売り手企業の従業員のうち、80%以上を継続して雇用予定
  • 売り手企業の主力事業が今後も運営される

買い手の株式のみ交付される場合

買い手企業の株式のみが交付される場合、利益も損失も発生していないとみなされるため覚えておきましょう。売り手企業の帳簿価格で、買い手の株式を取得したと判断されるからです。ただし、交換時に金銭も交付された場合には、対象外になるため注意しましょう。

グループ法人税制が適用される場合

グループ法人税制も、税務上の特例に該当するため覚えておきましょう。株式交換より前に、買い手と売り手に完全支配関係がある場合、適用されます。グループ法人税制が適用されることで、売り手企業の時価評価が不要になるため覚えておきましょう。また、この場合、株式交換で金銭など株式以外の対応が行われていても、適用されます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換時の仕訳処理

株式交換においては、売り手企業は自社の株主に変更が出るのみであるため、資産には変動が生じず仕訳処理は基本的に発生しません。しかし、次のようなケースでは売り手企業であっても仕分け処理が必要になる場合があります。

  • 株式交換よりも以前に自己株式を保有している場合
  • 非適格株式交換に該当する場合

取引がどのケースに該当するのかを確認し、事前に準備を進めておくと安心です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

株式交換の事例7選

株式交換実現に向けて、これまでに行われた事例を確認してみましょう。ここでは、日本で行われた事例を7つご紹介します。

1. 日本電産と日本電産エレシス

日本電産株式会社は、2020年2月1日に株式交換によって日本電産エレシス株式会社を完全子会社しました。この株式交換の目的は、最重要戦略商品であるトラクションモーター事業の開発促進です。

グループ全体の企業価値向上を目指して、日本電産エレシスの完全子会社化に踏み切りました。ただしすでに日本電産は日本電産エレシスを関連子会社としていたため、業績への影響は軽微であると予想されていた事例の1つです。

参照元:ニデック株式会社「日本電産株式会社による日本電産エレシス株式会社の完全子会社化に関する株式交換契約締結に関するお知らせ」

2. ヤマダホールディングスと大塚家具

2021年、家電専門小売業として業績を築いてきた株式会社ヤマダホールディングスは、新築需要の減少やECサイトの利用拡大などの社会変化を受け、連結親子関係を結んでいた株式会社大塚家具の完全子会社化を決めました。

両者の関係を編成する手段に株式交換を選んだ理由は、大塚家具がヤマダホールディングスの完全子会社となることで、グループのリソースを柔軟に使用できるようにするためです。完全子会社となる大塚家具にとっても機動的な意思決定ができるメリットがあり、長期的なグループ成長への期待が込められています。

参照元:株式会社ヤマダホールディングス「株式会社ヤマダホールディングスによる株式会社大塚家具の完全子会社化に関する株式交換契約締結(簡易株式交換)のお知らせ

3. トヨタ自動車とダイハツ工業

2016年、大手自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社は、日本で最も歴史の長い量産車メーカーであるダイハツ工業株式会社を完全子会社化すると発表しました。簡易株式交換で行うと発表された同M&Aの目的は、自動車産業での競争に対応すること、グループでの協力体制を強化することです。

このように、グループ全体を強化するため、株式交換でM&Aを行うケースもあります。

参照元:ダイハツ工業株式会社「トヨタ自動車株式会社によるダイハツ工業株式会社の株式交換による完全子会社化に関するお知らせ 」

4. メルカリとマイケルの株式交換

2018年、フリーマーケットアプリを運営している株式会社メルカリは、通信業界のマイケル株式会社を子会社化しました。このM&Aは、簡易株式交換で実施されています。

メルカリが運営するフリーマーケットアプリを強化し、事業拡大を目指すのが目的です。このように、株式交換でM&Aを行い、自社の事業を強化するケースも見受けられます。

参照元:株式会社メルカリ「簡易株式交換によるマイケル株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」

5. 日本コロムビアとフェイス

2017年、レコード会社を営んでいた日本コロムビア株式会社が、株式交換で株式会社フェイスの子会社になりました。子会社化により、「組織運営の柔軟性確保」「意思決定のスピードアップ」「リソースの有効活用」が実現できるとしています。

この事例では、両社ともに株主総会を開き、承認決議を受けてM&Aを実施しています。

参照元:株式会社フェイス「株式会社フェイスによる日本コロムビア株式会社の株式交換による完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ」

6. ユーグレナによる簡易株式交換

ユーグレナは2017年、2021年、2022年に簡易株式交換を実施しています。完全子会社とした企業は以下のとおりです。

  • イースター株式会社:自社製品のOEM供給会社
  • 大協肥糧株式会社:有機肥料事業実施企業
  • 株式会社はこ:オンラインマーケティング実施企業

ユーグレナの簡易株式交換事例は、複数の分野の異なる企業を完全子会社化することで、自社の総合力を強化するのが目的です。

参照元:株式会社 ユーグレナ「簡易株式交換公告 ユーグレナ1
参照元:株式会社 ユーグレナ「簡易株式交換公告 ユーグレナ2
参照元:株式会社 ユーグレナ「簡易株式交換公告 ユーグレナ3

7. 三菱ケミカルHDグループ内の三角株式交換

株式会社三菱ケミカルホールディングスは、2016年にグループ内での三角株式交換を実施しています。具体的には、三菱化学を株式交換完全親会社とし、日本化成を株式交換完全子会社とする形で、三菱ケミカルホールディングスの普通株式を対価とする株式交換です。

三角株式交換によって三社のもつ特色ある事業ユニットや技術、販売チャンネル、リソースなどを最大限活用できる仕組みを目指しました。このように事業の成長とグループ力の強化を見据えて、三角株式交換が実施される場合があります。

参照元:株式会社三菱ケミカルホールディングス「三菱化学株式会社による日本化成株式会社の株式交換による完全子会社化に関するお知らせ 」

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

M&Aで相手企業を子会社化する場合、株式交換が用いられます。資金がなくても、株式があれば実行できるため、活用する企業も多い手法です。しかし、手続きが複雑であり、会社法などの法律も絡んできます。トラブルなく進めるためには、専門家の協力が欠かせません。また、M&Aを行う場合は、ほかの手法も選択肢に挙げられるケースも多いでしょう。自社にとって一番良い方法を選ぶために、M&A仲介会社に相談しながら、M&Aを進めてください。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。幅広い領域に精通したコンサルタントが、相談から成約まで一貫してサポートを行います。

料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。
M&A成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。

ご相談も無料で実施しています。
M&Aを検討している際には、お気軽にお問い合わせください。