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中小企業で事業譲渡を行う場合のポイントは?注意点を合わせて解説

このページのまとめ

  • 中小企業が事業譲渡を行う理由は、自由度が高いから
  • 事業譲渡は、必要な部分だけ譲渡できるメリットがある
  • 事業譲渡の場合、個別で契約を行うことになるため、漏れに注意する

後継者不在の影響や主力事業に注力するために、事業譲渡を行う中小企業が増えています。ほかのM&A手法よりも自由度が高く、大企業に比べて契約周りが少ない中小企業は動きやすくなるからです。しかし、事業譲渡をスムーズに行うためには、メリットデメリットを理解し、想定できるリスクにも備えることが大切です。本記事では、中小企業が事業譲渡を行うポイントや注意点を解説します。

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中小企業で事業譲渡が行われる理由 

中小企業がM&Aを実施する場合、事業譲渡が行われやすい傾向にあります。では、複数の手法があるM&Aのなかで、なぜ事業譲渡が選ばれるのでしょうか。事業譲渡が選ばれる理由は、ほかのM&A手法よりも、自由度が高いからです。譲渡する範囲を選ぶことができるため、柔軟性が高く、買い手側もリスクを減らすことができます。たとえば、中小企業の場合、経営者が個人的に負債を抱えていたり、簿外債務があったりする可能性もあります。会社全体をM&Aした結果、損害が増えてしまうリスクも考えられるでしょう。一方で、事業譲渡は譲渡の範囲を指定できるため、買収後のリスクを減らすことができます。このことが、中小企業でM&Aを行う場合、事業譲渡が選ばれる理由です。

株式譲渡との違い

株式譲渡との違いは、会社全体が譲渡対象になる点です。「人材」「財務」「設備」など、すべてが対象になります。株式譲渡の注意点は、負債も引き継がれる点です。簿外債務があることを知らずに、トラブルになるケースもあります。

会社分割との違い

会社分割とは、事業を切り離し、別会社に移転する方法です。会社分割の場合は、売却される企業の権利や契約、許認可なども引き継がれます。事業譲渡との大きな違いは、移転される事業を包括的に譲渡する点です。そのため、株式譲渡と同様に、負債も引き継ぐリスクがあります。包括的に譲渡できるため、手続きは事業譲渡よりも簡単です。一方で、必要のない要素も引き継いでしまう可能性がある点に注意しましょう。

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中小企業が売り手側で事業譲渡を行うメリット

中小企業が売り手側で事業譲渡を行うことで、次のようなメリットが生まれます。事業譲渡を検討している企業は、参考にしてください。 

  • 後継者問題が解決する
  • 注力していない事業を手放せる
  • 不動産を継続して保有できる
  • 法人格を維持できる
  • 従業員を継続して雇用できる
  • 資産を残して譲渡可能
  • 譲渡した利益を獲得できる
  • 大企業よりも負担が少ない

後継者問題が解決する

事業譲渡により、後継者問題が解決します。後継者に悩まされている企業は、安心できることでしょう。現代は、経営者の高齢化に伴い、中小企業の後継者問題が発生しています。「後継者が見つからない」「企業全体が高齢化している」などの問題を抱える企業も多いことでしょう。事業譲渡を行えば、他社に事業を譲り渡すため、後継者問題が解決します。企業存続に対する不安を解消できるでしょう。

注力していない事業を手放せる

事業譲渡によって、注力していない事業を手放せる点もメリットです。自社の主力事業に集中できるようになるでしょう。企業によっては、事業を拡大した結果、うまくいかないケースもあります。また、主力事業に使う人材や資源が少なくなり、困ることもあるでしょう。事業譲渡であれば、注力していない事業に絞って譲渡可能です。主力事業を残しながら、M&Aを実行できる点が、メリットになります。

不動産を継続して保有できる

事業譲渡は、必要な不動産を継続して保有できる点もメリットです。譲渡する内容を選択でき、必要なものは残すことができます。企業のなかには、事業とは異なる不動産を所持し、使用しているケースもあるでしょう。株式譲渡などの場合は、会社全体を譲渡するため、不動産も譲渡対象になってしまいます。一方で、事業譲渡の場合は、一部のみ譲渡できます。必要な不動産を継続して保有できる点は、メリットになるでしょう。

法人格を維持できる

法人格を維持したい場合も、事業譲渡であれば継続して使用できます。事業は手放しても、社名は変わらずに使用したいケースに適しています。経営者によっては、事業を手放したあとに、新しい事業を始めたいケースもあるでしょう。事業譲渡であれば、法人格を維持したまま、別の事業を始めることができます。社名を変えたくない、思い入れがあるなどの場合にも、事業譲渡が有効です。

従業員を継続して雇用できる

事業譲渡の場合、従業員を継続して雇用できる点もメリットです。自社に残しておきたい従業員を残しておくことができます。事業譲渡では、譲渡する内容を個別に契約で決定します。そのなかには従業員も含まれており、誰を残すかを選ぶことが可能です。企業によっては、事業譲渡を行ったあとに、従業員を別の事業で雇用したいこともあるでしょう。事業譲渡であれば、従業員を継続して雇用できるメリットがあります。

資産を残して譲渡可能

事業譲渡では、資産を残して置けることもメリットになります。別事業を持っている場合や、新しく次の事業を始める場合に適しています。たとえば、新しい事業のためには設備を残しておきたいケースもあるでしょう。また、人材や権利が必要なケースもあります。事業譲渡であれば、次の事業に必要な資産を残すことができます。新しく始める必要がないことは、メリットになるでしょう。

譲渡した利益を獲得できる

事業譲渡を行うことで、譲渡した利益を獲得できることもメリットです。事業価値が高かったり、将来性を感じてもらえる事業であれば、大きな利益が生まれるでしょう。場合によっては、自社で運営を続けるよりも、利益になるケースもあります。ただし、譲渡時には税金が掛かることは覚えておきましょう。

大企業よりも負担が少ない

中小企業の場合は、大企業よりも負担が少ないメリットがあります。大企業の場合は、税金の額が大きかったり、個別で契約を結ぶことが大変だったりするためです。中小企業であれば、人材や資源は大企業よりも少なく、個別の契約も少なくなります。負担が少なく実行できることは、メリットになるでしょう。

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中小企業が売り手側で事業譲渡を行うデメリット 

事業譲渡を行うことは、デメリットも発生します。実行前に、どのようなデメリットがあるか確認しておきましょう。具体的なデメリットには、次のような内容が挙げられます。

  • 従業員と契約を結びなおす必要がある
  • 取引先とも契約を結びなおす必要がある
  • 譲渡後20年は同じ事業を実施できない
  • 譲渡で得た利益には税金が発生する
  • 株主総会の実施が必要
  • 個別の手続きが多くなる
  • 負債が残るリスクもある

従業員と契約を結びなおす必要がある

事業譲渡の場合、再契約したい従業員と個別で契約を結ぶ必要があるため注意しましょう。契約がうまくいかずに、離職になるリスクが発生します。たとえば、事業譲渡を不満に思う従業員がいた場合、再契約は難しいでしょう。契約を結びなおすことで発生するリスクには、注意してください。

取引先とも契約を結びなおす必要がある

従業員同様、取引先とも個別に契約を結びなおす必要があることを覚えておきましょう。契約を結ぶ手間や費用が掛かる点に注意してください。また、事業譲渡を行った結果、再契約してもらえない場合もあります。再契約が必要になることは、覚えておきましょう。

譲渡後20年は同じ事業を実施できない

事業譲渡をしたあとは、20年間同じ事業を実施できないため注意しましょう。会社法第21条により、「事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域および隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない」と定められているからです。このように、会社法では、競業禁止の法律が定められています。事業譲渡後、すぐに同業を始めようと考えていても、実行できない点に注意しましょう。

参照元:e-Gov法令検索「会社法第21条

譲渡で得た利益には税金が発生する

事業譲渡で利益を得た場合、利益に税金が掛かることを覚えておきましょう。譲渡した金額に対して、法人税が掛かります。金額が大きくなるほど、必要となる税金も大きくなる点は、デメリットになるでしょう。

株主総会の実施が必要

事業譲渡を行う場合、株主総会の実施が必要です。規模が大きくなるほど、大変になることを覚えておきましょう。ただし、中小企業の場合には、不要なケースもあります。株式がある場合は、注意しておきましょう。

個別の手続きが多くなる

事業譲渡の場合、個別の手続きが多くなる点がデメリットです。譲渡する内容が多いほど、手間に感じるでしょう。事業譲渡の場合、株式譲渡のように一括での契約はできません。譲渡する内容ごとに、契約が必要です。資産はもちろん、人材や取引先のような契約関係も再契約が必要なため、手続きが多くなる点はデメリットになります。

負債が残るリスクもある

事業譲渡の場合、売り手側は負債が残るリスクもあるため注意しましょう。個別で譲渡内容を決めることで、負債を引き継いでもらえないからです。事業譲渡では、買い手側は譲渡される内容を選択できます。当然、負債に関しては引き継ぐメリットがないため、売り手側に残ってしまいます。このように、事業譲渡の場合には、負債が残ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

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中小企業が買い手側で事業譲渡を行うメリット 

中小企業が買い手側で事業譲渡を行う場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、7つのメリットを紹介するため、参考にしてください。

  • 欲しい事業だけを獲得できる
  • 新規事業に手を出しやすい
  • 従業員を獲得できる
  • 取引先や顧客を継承できる
  • 負債を引き継がなくて済む
  • 節税になる
  • 簿外債務のリスクを回避できる

欲しい事業だけを獲得できる

事業譲渡の場合、欲しい事業だけ獲得できる点がメリットになります。複数の事業を抱えている企業の場合、自社に合った部分だけ選択可能です。もし、株式譲渡などを行う場合は、企業全体の譲渡が求められます。自社に必要ない事業を譲渡されても、扱いきれないケースもあるでしょう。事業譲渡の場合、欲しい事業だけを獲得できます。買収後の事業が、スムーズに進むでしょう。

新規事業に手を出しやすい

事業譲渡であれば、新規事業に手を出しやすい点もメリットです。人材や設備も譲渡されるため、事業が始めやすくなります。一から事業を始める場合、人材や設備など、用意する内容が多くて大変です。一方で、事業譲渡であれば、すでに軌道に乗った事業を引き継ぐことができます。新しく事業を始めるよりも手間をかけずに、新規事業を始められる点がメリットです。

従業員を獲得できる

従業員も同時に獲得できる点も、事業譲渡のメリットです。自社で雇用する手間を省くことができるでしょう。自社で新しく事業を始める場合は、新しい人材の雇用も必要です。採用コストがかかり、採用担当者の仕事も増加します。事業譲渡であれば、既存の従業員を雇用し、勤務してもらうことができます。経験やノウハウを持つ従業員を雇用できる点も、メリットになるでしょう。

取引先や顧客を継承できる

事業譲渡では、取引先や顧客を継承できる点もメリットです。自社で取引先を探す点が省けます。企業が利益を出すためには、取引先や顧客が欠かせません。一から探すとなると、安定するまで時間が掛かることでしょう。事業譲渡の場合は、既存の取引先や顧客を紹介してもらえるため、新しく探す手間が省けます。譲渡後すぐに事業を実施できる点も、メリットになるでしょう。

負債を引き継がなくて済む

事業譲渡の場合、負債を引き継ぐ必要がない点もメリットになります。株式譲渡などとは違い、譲渡内容を選択できるためです。株式譲渡などでは、会社全体を引き継ぐため、引き継ぎたくない負債も付属します。一方で、事業譲渡は選択でき、負債を外して契約可能です。譲渡で発生するリスクを抑えられる点は、事業譲渡のメリットになるでしょう。

節税になる

繰越欠損金を所持している場合は、節税になるため覚えておきましょう。通常では、譲渡した利益は法人税となり、29%から42%が掛かります。ただし、「繰越欠損金を所持している」「役員退職慰労金で所得が圧縮可能」などの場合は、株式譲渡よりも税金を抑えられるケースがあります。事業譲渡の方が、節税できるケースもあることを覚えておきましょう。

簿外債務のリスクを回避できる

事業譲渡の場合、簿外債務のリスクを回避できるメリットがあります。個別で契約を結ぶため、帳簿外の債務に対する契約が行われないからです。株式譲渡のように、会社全体を譲渡された場合、予想外の債務が見つかるケースもあります。しかし、事業譲渡の場合は、譲渡内容が明確になるため、簿外債務があっても引き継がずに済みます。想定外の債務を回避できる点は、メリットになるでしょう。

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中小企業が買い手側で事業譲渡を行うデメリット 

中小企業が買い手側で事業譲渡を行う場合の、デメリットも知っておきましょう。具体的には、次の4つのデメリットが予想されます。

  • 獲得したい従業員とは個別契約が必要
  • 取引先と新しく契約を結ぶ必要がある
  • 許認可は再手続きが必要
  • 譲渡で獲得した従業員とうまくいかない可能性がある

獲得したい従業員とは個別契約が必要

事業譲渡の場合、契約したい従業員とは、個別に契約を結ぶ必要があります。一括で結べるわけではないため、注意しましょう。たとえば、従業員が多い事業の譲渡を受ける場合、手続きの手間が掛かります。株式譲渡などとは違い、個別契約が必要な点には注意してください。

取引先と新しく契約を結ぶ必要がある

取引先とも、新しく個別契約が必要になる点もデメリットです。譲渡前に契約がある企業でも、新規の契約が必要になります。場合によっては、再契約を断られてしまうリスクも出てくるでしょう。取引先の紹介はもらえても、契約は結びなおす必要があることは覚えておきましょう。

許認可は再手続きが必要

事業に必要な許認可は、再手続きが必要になるため注意しましょう。譲渡された事業で所持していても、再申請が必要になります。都道府県などの行政機関で、再手続きを行ってください。よくある許認可に関しては、次のような種類があります。

  • 建設業
  • 運送業
  • 学校
  • 薬局

譲渡で獲得した従業員とうまくいかない可能性がある

譲渡で獲得した従業員とうまくいかない可能性にも注意しましょう。契約した結果、トラブルが発生して事業に支障が出るケースもあります。たとえば、新しい経営方針に反発し、トラブルになるケースもあるでしょう。また、自社の従業員とあわずに、トラブルが起こるリスクも想定できます。このように、事業譲渡で従業員を獲得した場合は、トラブルに注意してください。

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事業譲渡で従業員を雇用する場合のポイント 

事業譲渡で従業員を雇用する場合、手続き関係には注意が必要です。具体的には、次の4つの点に関して、手続きを確認しておきましょう。

  • 雇用契約の再締結
  • 給与周りの確認
  • 社会保険の確認
  • 企業年金の確認

雇用契約の再締結

事業譲渡で従業員を雇用する場合、雇用契約は結びなおしになります。該当の従業員には、再契約を行いましょう。また、労働条件や給与などに関しては、再度説明するようにしてください。特に、譲渡前の条件と変更がある場合には、必ず説明するようにしましょう。説明が不十分な場合、従業員の反発を受けたり、離職が発生します。従業員に納得してもらえるように、丁寧な説明を心掛けましょう。

給与周りの確認

企業によって給与の仕組みが違う場合があるため、注意しましょう。従業員の生活に影響するため、事前の確認が求められます。たとえば、毎月25日に支払う企業もあれば、月末に支払う企業もあります。説明もなしに支払日が変われば、従業員は混乱するでしょう。このように、給与の支払いなどに関して、事前に確認が必要です。その際、不利益変更にならないようにも気を付けましょう。

社会保険の確認

社会保険に関しても、手続きに注意が必要です。従業員との再契約によって、脱退と再加入が必要になります。再加入に関しては、手続きに時間を掛けないように注意しましょう。脱退期間に病気になるなどして、トラブルになる可能性もあります。社会保険の再加入手続きを忘れないことと、手続きをスムーズに進めることには注意が必要です。

企業年金の確認

企業年金に関しては、引き継ぎ可能か調べておきましょう。企業ごとに、制度が異なるケースもあります。また、経営者が変わることで、企業年金の年数が引き継がれるかどうかも、従業員にとっては重要です。企業年金に関しても、企業間で仕組みを比較し、譲渡後の対応を決定しましょう。

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中小企業で事業譲渡を実施する際の流れ 

事業譲渡実施に向けて、基本的な流れを知っておきましょう。手続きや契約箇所が多いため、参考にしてください。

  1. 事業譲渡の目的を決める
  2. 事業譲渡の詳細を決める
  3. 事業譲渡先を探す
  4. 秘密保持契約を結ぶ
  5. 基本合意契約を締結する
  6. 売り手企業の調査が実施される
  7. 取締役会および株主総会の実施
  8. 事業譲渡契約を結ぶ
  9. クロージング実行
  10. 譲渡物の名義変更を行う
  11. 臨時報告書を提出する
  12. 公正取引委員会への届出実施
  13. 事業譲渡の成立

1.事業譲渡の目的を決める

まずは事業譲渡に向けて、目的を決めましょう。目的が定まることで、譲渡内容や方法が決まりやすくなります。場合によっては、株式譲渡や会社分割などの方が、良いケースもあります。そもそも事業譲渡が適切かも合わせて、目的と一緒に決めるようにしましょう。

2.事業譲渡の詳細を決める

事業譲渡を行うことが決まれば、事業譲渡の詳細を決めましょう。スムーズに進めるためにも事前に決めておくことが大切です。事前に決めておきたい内容としては、次のような種類があります。

  • スケジュール
  • 譲渡する事業
  • 残しておく事業
  • 希望する譲渡価格

3.事業譲渡先を探す

実際に事業譲渡を行う相手を探しましょう。譲渡先を探す方法には、次のような種類があります。

  • M&A仲介会社
  • マッチングサイト
  • 事業承継・引継ぎ支援センター

譲渡先を探す場合には、専門家やサービスを活用したほうが、より広い範囲で探すことができます。納得いく譲渡先を見つけるためにも、サービスを活用するようにしましょう。

4.秘密保持契約を結ぶ

譲渡先が決まれば、秘密保持契約を結びます。交渉中に情報漏洩が起こることで、トラブルに発展するからです。秘密保持契約を結ぶまでは、譲渡先の情報は伏せられることが一般的です。秘密保持契約締結後に、双方の情報が共有され、実際の交渉に移ります。

5.基本合意契約を締結する

経営者同士の面談後、基本的な内容に問題がなければ基本合意契約を締結します。基本合意契約にて、交渉のおおまかな内容が決まると覚えておきましょう。たとえば、「譲渡のスケジュール」「デューデリジェンスの実施」などを決定します。一方で、譲渡価格のように、現時点では不明瞭な部分もあります。不明瞭な部分を確認し、最終的な契約で確定させることも、基本合意契約で示しておきましょう。

6.売り手企業の調査が実施される

基本合意契約締結後は、売り手企業に関する調査を実施します。この調査をデューデリジェンスと呼ぶため、覚えておきましょう。デューデリジェンスでは、企業価値を算出したり、簿外債務などのリスクを明らかにしたりします。デューデリジェンスが実施されることで、企業の最終的な価値が分かり、譲渡価格に反映されます。

7.取締役会および株主総会の実施

事業譲渡を進めるためには、取締役会、および株主総会の実施が必要です。取締役会で決定を行うことで、事業譲渡が実施できます。また、売り手側は、「譲渡する事業が全体である場合、または売り手企業資産の5分の1を超える場合」、譲渡が行われる前日までに、株主総会で特別決議が必要になります。買い手側に関しても、「譲渡する事業が全体である場合、または売り手企業資産の5分の1を超える場合」、株主総会の実施が必要になるため、覚えておきましょう。条件を満たさない場合は、簡易事業譲受に該当し、株主総会を省略できます。

8.事業譲渡契約を結ぶ

次に、事業譲渡契約を結び、譲渡内容を決定します。法律による定めはなく、会社ごとで決められることを覚えておきましょう。事業譲渡契約で定める内容に関しては、次のような種類があります。

  • 譲渡内容
  • 譲渡事業の資産価値
  • 譲渡日
  • 守秘義務
  • 競争防止義務
  • 従業員の扱い

9.クロージング実行

事業譲渡契約締結後は、クロージングを行います。クロージングとは、事業譲渡契約を実施してから、実際に譲渡が完了するまでの期間のことです。クロージング期間では、書類の手続きを行ったり、資産に対する支払いを行ったりします。企業間の手続きになるため、1ヶ月以上掛かるケースがほとんどだと覚えておきましょう。

10.譲渡物の名義変更を行う

クロージング中に、譲渡物の名義変更を行いましょう。名義変更を行わなければ、売り手企業の名義のままになってしまうからです。また、従業員の雇用や保険類の手続き、取引先との再契約も進めましょう。

11.臨時報告書を提出する

企業によっては、臨時報告書の提出が必要になることを覚えておきましょう。金融商品取引法により、「有価証券報告書の提出義務がある企業は、事業譲渡によって純資産額が直近の決算書と比べて30%以上増減する場合、または売上高が直近の決算書に比べて10%以上増減する場合は、臨時報告書の提出が必要」と定められています。条件に該当する場合、内閣総理大臣に提出する必要があるため、覚えておきましょう。

参照元:e-Gov法令検索「金融商品取引法

12.公正取引委員会への届出実施

買い手側の企業は、国内の売上高が200億円を超える場合、公正取引委員会への届け出が必要になるケースがあるため注意しましょう。具体的な条件としては、次の3つが挙げられます。

  • 国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部の譲受けをしようとする場合
  • 他の会社の事業の重要部分の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合
  • 他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合

参照元:公正取引委員会「事業等の譲受けの届出制度

13.事業譲渡の成立

必要な手続きが済んでおり、事業譲渡の効力が発生する日時になった場合は、事業譲渡が成立します。事業譲渡の効力日までに、すべての手続きを終わらせておきましょう。

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事業譲渡で発生しやすいトラブル

事業譲渡を進める際には、さまざまなトラブルが発生します。スムーズに譲渡を進めるためにも、どのようなトラブルがあるかを知っておきましょう。よくあるトラブルには、次の4つが挙げられます。

  • 転籍後に離職する人材が出てくる
  • 譲渡後の変化に従業員が対応できない
  • 重要な人材が転籍を拒否する
  • 譲渡内容に漏れがある

転籍後に離職する人材が出てくる

転籍後に離職する人材が出てくるケースに注意しましょう。転籍後の運営方針に対する不満が原因になります。たとえば、経営者が変わり、方針に納得できないケースもあるでしょう。また、事業譲渡に関して十分な説明を受けておらず、不満に思うケースもあります。転籍が成立したからといって、その後に離職が発生しないとは限りません。譲渡前に十分な説明を行うことで、対応しましょう。

譲渡後の変化に従業員が対応できない

事業譲渡後の変化に、従業員が対応できないケースもあるため注意しましょう。職場環境や働き方を大きく変えることは、混乱につながります。たとえば、譲渡後に買収先の企業に合わせて仕事を進めるケースがあります。その際、前の方法と異なれば、対応できない従業員も出てくるでしょう。従業員は、既存の方法に慣れている状態です。変化に対応できず、生産性が下がったり、利益が下がるリスクも注意しておきましょう。

重要な人材が転籍を拒否する

事業に欠かせない人材が、転籍を拒否する可能性にも注意しましょう。必要な人材が転籍しないことで、事業計画に問題が出る可能性もあります。また、重要な人材が転籍を拒否した結果、ほかの従業員も合わせて転籍を拒否する恐れもあります。全員が転籍を望むわけではなく、拒否される可能性があることも知っておきましょう。

譲渡内容に漏れがある

譲渡内容には漏れがないように、入念に確認しましょう。追加で対応が求められ、手続きが面倒になります。たとえば、「引継ぎ予定の設備を契約書に記載していなかった」「負債に関する譲渡を話し合わなかった」などのケースも想定されます。譲渡内容に漏れがないように、買い手側と売り手側の双方で、入念に確認しましょう。

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中小企業が事業譲渡を実施する際の注意点 

事業譲渡を成功させるために、注意したいポイントがあります。具体的には、次のようなポイントに注意して進めるようにしましょう。

  • 事業譲渡完了までの期間
  • 譲渡時に掛かる税金が多い
  • 法律の問題に注意する
  • 事業継承が効果的なケースもある

事業譲渡完了までの期間

事業譲渡完了までには、長期間掛かることを覚えておきましょう。準備から完了まで、半年前後掛かるケースが一般的です。譲渡をすぐに終わらせようと思っても、準備や調査、手続きに時間が掛かります。余裕をもって、譲渡を始めるようにしましょう。

譲渡時に掛かる税金が多い

事業譲渡では、譲渡時に掛かる税金が多いため注意しましょう。たとえば、買い手側の場合、譲渡された資産に対する消費税が必要です。一方で、売り手側に関しても、譲渡した利益に法人税が課せられます。そのほかにも、登録免許税、不動産取得税のような税金が必要です。譲渡時に必要な税金が多い点には、注意しましょう。

参照元:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表
参照元:東京都主税局「不動産取得税

法律の問題に注意する

事業譲渡を進める際は、法律の問題に注意しましょう。資産承継や契約が多いため、法的な問題も起こりやすくなります。トラブルを避けるためには、弁護士や税理士、M&A仲介会社のような専門家に協力を依頼しましょう。自社だけではM&Aに慣れておらず、ミスをしてしまう恐れがあるからです。事業譲渡は複雑な手続きも多いため、法律の問題には注意しましょう。

事業承継が効果的なケースもある

事業譲渡よりも、事業承継が効果的なケースもあることを覚えておきましょう。事業譲渡よりも手続きが簡単になり、周囲の理解も得やすいからです。目安としては、親族や従業員のように、事業を引き継げる人材がいるかどうかになります。もし、後継者がいない場合は、事業譲渡の方がスムーズになることを覚えておきましょう。

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まとめ 

中小企業がM&Aを行う場合、事業譲渡を選択するケースが増加しています。事業譲渡であれば、譲渡する内容を個別に選択でき、手放したい事業だけを譲渡できるからです。買い手側も、不要な契約を行う必要がなく、個別に対応できる点がメリットになります。ただし、事業譲渡を進める際には、法的なリスクやトラブルが起こりやすくなります。自社で事業譲渡を行ったことがない企業も多いことでしょう。トラブルを避けるためにも、M&A仲介会社のような専門家に、まずは相談してみてください。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、中小企業のM&Aにも対応したM&Aサービスを提供する仲介会社です。

中小企業のM&Aなど、各領域で実績を積み重ねたコンサルタントが、相談から成約まで一貫してサポートを行います。

料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。 M&A成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。  相談に関しては、無料で実施しています。 中小企業のM&Aを検討している際には、お気軽にお問い合わせください。