企業のM&A|基礎知識に加えて買収のメリット・リスクをあわせて解説

2022年12月10日

企業のM&A|基礎知識に加えて買収のメリット・リスクをあわせて解説

このページのまとめ

  • M&Aには、買い手企業と売り手企業の双方にメリットがある
  • 企業のM&Aのリスクには、簿外債務の発生や顧客離れ、従業員不和などがある
  • 成功させるためには、目的の明確化や分析、綿密な条件交渉などが必要
  • M&Aには専門知識やノウハウが求められるため、専門家への相談がおすすめ

不確実性や不透明性が高まる現代では、市場の動向、消費者ニーズなどのビジネスを取り巻く環境も目まぐるしく変わっています。そうしたなか、M&Aは昨今の事業拡大や成長戦略の1つとして浸透しつつあります。

M&Aにはさまざまな契約・取引があるため、メリットのみならず、リスクについても理解したうえで戦略的な計画を立てる必要があります。

この記事では、M&Aが広まりつつある背景を踏まえつつ、企業のM&Aにおけるメリットやリスク、成功させるポイントについて解説します。

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企業M&Aとは 

企業M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略称で、直訳すると企業の買収や合併を意味します。広義では、株式や事業の一部譲渡、業務提携など、企業間の取引を総称することもあります。

近年では、M&Aの取引対象や手法が多様化しており、売り手と買い手の双方にとっての成長戦略につながる一手として積極的な活用が期待されています。

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企業M&Aで売却する6つのメリット 

M&Aにおける売却とは、事業の全部または一部を他社に売却すること、株式を譲渡することなどが含まれます。売却によって得られるメリットには、以下が挙げられます。

  1. 後継者問題の解決
  2. 従業員雇用の確保
  3. 経営基盤・ブランド力の強化
  4. ノウハウの承継
  5. 個人保証の解除
  6. 創業者利益の獲得

以下で詳しく解説します。

1.後継者問題の解決

後継者問題を解決できることは、売却する企業にとって大きなメリットの1つです。

近年では、経営者の高齢化が進む一方で、少子化の影響で若手人材の確保が難しく、後継者不足の問題が顕在化している企業も少なくありません。

中小企業庁の2020年の報告によると、70代の経営者のうち、後継者不在率は約40%にも上ります。また、廃業理由のおよそ3割が後継者不足の問題という結果も見られました。

M&Aで企業を売却することによって、新たな後継者を迎えることになるため、この問題を速やかに解決できます。

参考:中小企業庁「財務サポート 『事業承継』

2.従業員の雇用を確保

従業員の雇用が確保できることも、企業M&Aで売却するメリットの1つです。

通常、やむを得ず廃業に至った場合、従業員は失業することになってしまいます。しかし、従業員の雇用維持を条件として事業あるいは企業を売却することで、従業員は働き続けられるようになります。

経営が安定した企業に売却すれば、今まで以上に雇用環境が安定化されることも期待できます。

3.経営基盤・ブランド力の強化

事業の売却によってM&Aを実施した場合、企業の経営基盤やブランド力が強化されることもメリットです。

M&Aを実施すれば、譲受企業の人材や顧客情報だけでなく、設備やノウハウ、販路に至るまでを活用できます。売却先が大手の企業であれば、グループ企業の一員としてブランド力を強化できるようになります。

また、不振だった事業を譲渡して切り離したケースでは、残した事業にすべてのコストを割くことが可能になり、経営基盤を再興できます。

4.ノウハウの承継

自社のノウハウを継承できることも、M&Aで売却するメリットといえます。

もしも経営不振や後継者不足によって廃業を選んだ場合には、従業員のもつ技術やノウハウも失われることになります。

一方、M&Aを行った場合は、経営権のみならず、技術やノウハウも企業の資産として承継されます。そのため、これまで培ってきた重要なノウハウを途絶えさせることなく、次の世代へ受け渡すことが可能です。

5.個人保証(経営者保証)の解除

個人保証を解除できる点も、売却側のメリットの1つです。

個人保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人となり、債務を負うことです。中小企業の多くは経営者保証を利用しているため、万が一、経営不振や廃業によって融資返済ができなくなった場合には、経営者個人が返済する必要があります。

M&Aを実施すれば、この個人保証も譲受企業に承継されるため、経営者が個人保証の義務を負わずに済むようになります。

6.創業者利益の獲得

創業者利益を得られることも、企業や事業を売却するメリットです。

廃業する場合、廃業のためにかかるコストを捻出しなければなりません。一方、M&Aを実施して譲渡すれば、経営者は創業者利益という売却益を得られます。これを元手として、M&A実施後に起業したり新しい事業を始めたりする人もいます。

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企業M&Aで買収する3つのメリット 

M&Aにおける買収とは、会社から株式や事業の全部または一部を取得することを指します。買収する側のメリットとして、以下が挙げられます。

  1. 市場の拡大・事業の多角化
  2. 人材の確保
  3. シナジー効果の発生

以下で詳しく解説します。

1.市場の拡大・事業の多角化

M&Aで買収することで得られるメリットの1つに、市場の拡大や事業の多角化が挙げられます。

同業種の企業とM&Aを行って買収すれば、業界再編が起きて、業界内でのシェアを拡大させることが可能です。また、異業種の場合には、新規事業へのスピーディな参入ができ、事業を多角化させることができます。

また、新規事業の立ち上げにあたっては、買収先の企業のノウハウや設備を使用できるため、自社でゼロから立ち上げる場合と比べて、コストやリスクを低減できるメリットもあります。

2.人材の確保

人材を確保できることも、企業M&Aで買収する大きなメリットです。

有資格者や実績のある人材を取り込むことで、企業の技術開発力や業務の質を高められます。また、新規事業に参入する場合においても、専門的な資格・ノウハウを備えた人材を早く確保できるため、人材育成や研究開発にかかる時間とコストを短縮できます。

とりわけ、調剤薬局や病院などの医療業界、建設業界、運輸業界など、特定の資格や技術が求められる分野では、この目的においてM&Aが実施されることが多くあります。

3.シナジー効果の発生

買収側が期待するメリットとして、シナジーの創出が挙げられます。シナジーとは、M&Aによって得られる企業間での相乗効果のことです。

たとえば、売上やノウハウなどの目に見えるものから、社風や企業価値、従業員同士の雰囲気など目に見えないものまで、さまざまなところで発生します。

買収によってシナジーを創出させることで、企業の成長が促進されるメリットが期待できます。

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M&Aを成功させるための3つのポイント 

企業のM&Aを成功させるためのポイントには、以下の3つが挙げられます。

  1. 理想の相手を探すこと
  2. 条件の調整を徹底させること
  3. 顧客や取引先及び従業員へのケアを怠らないこと

ここからは、それぞれの項目について具体的に解説します。

1.理想の相手を探す

M&Aを実施するにあたって、理想の取引相手を見つけることは非常に重要です。

M&Aは、企業の明暗を分ける戦略であるといっても過言ではありません。企業のデータベースサービスや仲介会社、専門家などを活用しながら、業績や市場のシェアなどの情報を集めて、複数の企業を比較検討することが必要です。

また、対象企業を選定する前には、売却・買収する目的を明確化したうえで、自社の分析や市場調査を実施することが欠かせません。

M&Aの目的を明らかにして、企業を取り巻く外部環境・内部環境を分析することで、具体的な方向性・戦略を立てましょう。

2.条件調整の徹底

M&Aのメリットを享受するためには、対等な関係性を築き、双方の企業にとって有意義な契約になるように条件交渉を行う必要があります。

M&Aを実施する際には、専門家の助言・支援のもと、細部まで徹底して条件をすり合わせておくことが重要です。たとえば、以下のような項目が挙げられます。

  • M&Aの条件
  • 守秘義務
  • 今後の経営方針
  • 人事や内部システム
  • 従業員の雇用条件や労働環境
  • 福利厚生

なお、M&Aの条件交渉では、各種契約書面の作成や相手企業との専門的な交渉、デューデリジェンスの実施などを行います。これらには専門知識やノウハウが求められるため、専門家に依頼することをおすすめします。

3.顧客・取引先・従業員へのケア

顧客・取引先・従業員へのケアを怠らないことも、M&Aを成功させるための重要なポイントです。

M&Aの実施後は、顧客や取引先との契約・関係性に変化が生じる可能性もあります。円滑に売却・買収を行うためには、事前に関係者に説明して、理解を得ておくことが欠かせません。

また、従業員についても同様に、雇用条件や労働環境が変化する可能性も含めて説明して、M&Aの実施について不安を取り除いておくことが重要です。

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M&Aにおけるリスク 

M&Aには事業拡大やシナジーの創出などといったメリットがある一方、相手企業との取引条件や実施後の事業体制の変化によってさまざまなトラブルにつながるおそれがあります。

ここでは、M&Aの実施に伴うリスクについて解説します。

売り手側から見た3つのリスク

売り手側から見たリスクには、以下が挙げられます。

  1. 顧客や取引先離れ
  2. 従業員離れ
  3. 従業員の不和

以下で詳しく解説します。

1.顧客や取引先離れ

顧客や取引先が離れてしまう可能性があることは、売り手側から見たリスクといえます。

M&Aによって担当窓口や担当者が変わることは、既存の顧客や取引先に少なからず不安を与えます。また、そのような変更によって手続きやコミュニケーションに齟齬が生じることも考えられます。経営権が移行することで、これまでとの契約内容どおりにはいかなくなる可能性もあるでしょう。

顧客や取引先との関係を維持するためには、事前に契約内容をよく確認して、M&Aの実施について理解を得ておくことが重要です。

2.従業員離れ

従業員が離れてしまう可能性も考えられます。一般的に、M&Aの実施後も従業員の雇用は継続されることとなります。

しかし、新たに契約を結び直すにあたって、従業員の雇用条件が変更される可能性も否定できません。優秀な人材であるほど、不利になるような環境では離れていってしまう可能性があります。

また、離職しない場合であっても、社内体制や風土、待遇などが変わることで、従業員のモチベーションが下がってしまうことも考えられます。

M&Aを実施する際は、雇用の継続だけでなく、雇用条件に関しても慎重に交渉を進めることが望ましいといえます。

3.従業員の不和

従業員の不和もリスクの1つとして挙げられます。M&Aの実施後は、多少なりとも労働環境に変化が生じるものです。たとえば、休暇申請の仕方やスケジュール管理などの事務的な事項から勤務時間外での交流まで、その変化は多岐にわたります。

一見して些細なことに見える点でも、企業文化の違いは大きなストレスになり得ます。新しい環境を作り上げていくためには、これまで異なる文化のなかにいた従業員が双方を尊重し合える環境づくりに配慮することが必要です。

買い手側から見た3つのリスク 

買い手側から見たM&Aのリスクには、以下が挙げられます。

  1. 簿外債務の発生
  2. 顧客や取引先、従業員離れ
  3. 従業員の不和

以下でそれぞれの詳細を解説します。

1.簿外債務の発生

簿外債務の発生は、大きなリスクといえます。

簿外債務とは、貸借対照表上に記載されない債務のことです。売り手企業が簿外債務を抱えたままM&Aを実施すると、買い手企業がこの負債を引き継ぐことになってしまいます。

買い手企業に負債が引き継がれることを防ぐためには、売り手企業に簿外債務の開示を求めるとともに、専門家によるデューデリジェンスを実施して調査することが重要です。

2.顧客・取引先・従業員離れ

既存の顧客や取引先、従業員が離れていく可能性があることもリスクの1つです。

とくに、優秀な人材の働きによって業績を維持していた企業では、その人材が流出してしまうことは大きな損失です。買収後に人材が流出すると、売上や企業価値にまで影響が及ぶことも充分に考えられます。

また、もし顧客や取引先が離れてしまえば、新たに関係性を築くところから始めなければなりません。そのような状況に陥れば、M&Aの恩恵を充分に得ているとは言えないでしょう。

3.従業員の不和

従業員の不和も、買い手側から見たときのリスクの1つです。

M&Aの実施によって運営側の統合がなされても、従業員の間で反発があっては事業の運営が難しくなります。

また、そのような状況下では、シナジー効果の発生も期待できません。新しい企業価値を創出していくためには、売り手企業に在籍していた従業員との調和を図るための対策も必須です。

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まとめ

企業M&Aには、売り手企業・買い手企業の双方にとってメリットがあります。成功させるためには、M&Aの目的を明確化したうえで、市場や対象企業の調査を行うとともに、相手企業と綿密な条件調整を実施する、顧客・取引先・従業員へのケアを行うことがポイントです。

また、企業M&Aにはリスクも伴います。不利な条件での契約締結や、相手企業とのトラブルを防ぐためには、戦略立案や条件交渉、契約書の作成などにあたって、専門家の助言・サポートを受けることが望まれます。

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