法人売却とは?価格や税金、不動産があるときの節税方法や手続きを解説!

2024年5月21日

法人売却とは?価格や税金、不動産があるときの節税方法や手続きを解説!

このページのまとめ

  • 法人売却とは、株式譲渡や事業譲渡などによって第三者に経営権を移すこと
  • 法人売却をすると「売却益の獲得」や「後継者問題の解決」など、多数のメリットがある
  • 法人売却価格の算定方法は4種類ある
  • 不動産を所有した状態で株式譲渡すれば、法人売却にかかる税金を節税できる
  • 法人売却手続きに必要な書類は自己PR資料や基本的資料、法務関連資料など

法人の売却とは、第三者に経営権を譲渡することです。この記事では法人を売却するときの価格や税金がいくらになるかや、法人名義の不動産がある場合の節税方法を解説します。また、法人売却手続きがどのように進められるかの流れや、売却手続きに必要な書類についても詳しく解説します。

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法人売却とは

法人売却は会社売却ともいい、個人あるいは法人に経営権を譲渡することです。事業売却や合併との違いは、以下のとおりです。

法人売却

  • 会社全体を譲渡すること
  • 経営権を手放すときに行われる

事業売却

  • 事業の一部もしくは全部を第三者に譲渡すること
  • 会社は存続し、特定の事業や複数の事業を他の会社に譲渡す時に行われる

合併

  • 2つ以上の会社を統合して1つにすること
  • 事業規模の拡大などを目的に行われる

ここでは、法人売却と事業売却・合併との違いについて解説します。

事業売却との違い

事業売却とは事業譲渡とも呼ばれます。事業の一部もしくは全部を第三者に譲渡することです。

これに対し、法人売却は会社が持つすべての株式を譲渡し、あらゆる事業や資産を他社へ移転する方法です。

事業売却は特定の事業や複数の事業を譲渡するだけで会社自体がなくなるわけではないのに対し、法人売却は経営権を手放すという点が異なります。

合併との違い

法人売却は、合併とも異なります。合併とは、2つ以上の会社を統合して1つにする手法です。法人を第三者に譲渡する法人売却は法人格が維持されるのに対し、合併は複数の法人を統合する過程で、法人格を失う法人が存在します。

合併には「吸収合併」と「新設合併」があり、吸収合併では吸収される会社の法人格が消滅し、新設合併では合併を行うすべての会社の法人格が消滅します。

このように、法人格を失う会社があるかどうかが法人売却と合併の違いです。

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法人売却の種類

法人売却の種類は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。それぞれの内容をみていきましょう。

株式譲渡

法人売却の株式譲渡とは、オーナーである経営者が所有している自社の株式を第三者へ譲渡することです。

法人としては経営者である株主が変わりますが、運営する事業や会社組織、資産や雇用される従業員に変化はありません。

売却された法人は法人格を失うこともなく、株式譲渡後も売却前と変わらず事業活動を続けられます。

法人売却の株式譲渡は、外部にとっては法人の経営者が変わるだけで、取引もそのまま継続されます。

事業譲渡

法人売却の事業譲渡とは、法人が保有する事業を部分的に、あるいは全てを第三者へ譲渡することです。

売却する事業は、赤字事業や成長事業、あるいは保有する事業全てなどから選択できます。

第三者に売却されるのは事業のため、売却した法人自体の存在は売却前と変わらず、法人格も保持されます。

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法人売却による6つのメリット

法人を売却すると、次のようなメリットがあります。

  • 売却益が得られる
  • 従業員の雇用を確保できる
  • 株式譲渡では債務と個人保証が解消できる
  • 株式譲渡では後継者問題が解決できる
  • 事業譲渡では社名・商号をそのまま使用できる
  • 事業譲渡では本業にリソースを集中できる

ここでは、法人を売却して得られる6つのメリットについて解説します。

1.売却益が得られる

1つ目のメリットは、法人を売却すれば売却益が得られることです。

経営が順調であったり、将来性が見込めたりする場合はよりよい価格で売却できる可能性があります。また、特定の業種を営業するための許認可を持つ法人は、評価が加算されることもあるでしょう。

まとまった売却益を得られることで、オーナーである経営者自身の引退後をゆとりある生活にするほか、新たな事業を始めるための資金として活用が可能です。

2.従業員の雇用を確保できる

2つ目のメリットは、法人売却をすれば従業員の雇用を確保できることです。

後継者不在による廃業や成績不振に起因する廃業では、勤めていた従業員たちは職を失ってしまいます。

法人を売却すれば、会社は新たな経営者のもとで事業を存続するため、従業員の雇用を確保できます。

法人売却をすれば、廃業や事業撤退を避けられて、大切な従業員達の雇用と暮らしを守れることがメリットです。

3.株式譲渡では債務、個人保証が解消できる

3つ目のメリットとしては、法人売却で株式譲渡をすれば債務や個人補償が解消できることがあげられます。

中小企業のオーナー経営者は、金融機関から融資を受ける際に個人資産を担保として設定している場合があります。

経営が悪化して返済が滞った場合は、オーナー経営者の個人資産から債務支払い義務が発生します。

株式譲渡では法人に関する全てが買い手に引き継がれるため、買い手が新たな債務者になることが特徴です。

4.株式譲渡では後継者問題が解決できる

4つ目のメリットは、株式譲渡をすれば法人が抱えている後継者問題を解決できることです。

中小企業庁の「事業承継を知る」によると、経営者が70代の中小企業では約40%が後継者不在と答えています。また、廃業理由の29%が後継者の不在によるものです。

株式譲渡では、法人が新たな経営者に引き継がれるため経営が存続できます。

法人売却で株式譲渡すれば、法人自体を第三者に引き継ぐことで、後継者問題が解決できます。

5.事業譲渡では社名・商号をそのまま使用できる

5つ目のメリットは、事業譲渡では社名や称号をそのまま使用できることです。

株式譲渡したときには、法人の経営者が変わり営業を続けるため、売却したオーナー経営者は社名や商号を使用できなくなります。

思い入れや愛着がある社名や商号をそのまま使用したいときは、株式譲渡ではなく事業譲渡を選ぶとよいでしょう。

法人売却の事業譲渡では、売却対象はあくまでも事業のため、社名や商号を引き続き使用できるメリットがあります。

6.事業譲渡では本業にリソースを集中できる

6つ目のメリットは、事業譲渡によって本業とのシナジーが薄い事業や不採算事業を切り離すことで、経営リソースを本業に集中できることです。

法人売却で事業譲渡をすれば、事業を売却した売却益やマンパワーなどの経営リソースを、本業へ集中させられるメリットがあります。

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法人売却に伴う5つの注意点

法人の売却にはメリット以外に以下のような注意点があります。

  • 競業避止義務がある
  • 売却後に運営・経営方針が変化する可能性がある
  • 売却後に従業員の雇用条件が変化する可能性がある
  • 売却後に取引先との関係が変化する可能性がある
  • 事業譲渡では準備と手続きに時間がかかる

ここでは、法人の売却に伴う5つの注意点について解説します。

1.競業避止義務がある

1つ目の注意点は、法人を売却後に売り手が買い手の事業活動と競合する同じような事業を行ってはならない、とする競業避止義務です。

事業譲渡においては、会社法の第二十一条で原則20年間は同一および隣接市町村内での競業を禁止する規定があります。また、期間は最長30年間までの延長が可能です。

株式譲渡では会社法の規定はありませんが、契約書で競業避止義務の期間を定めることが一般的です。

競業避止義務の期間は、事業譲渡と株式譲渡どちらの場合も、双方の合意によって契約書で自由に定められます。

実際の契約においては、競業避止義務の期間を2〜5年程度に定めることが多いと言われます。

2.売却後に運営・経営方針が変化する可能性がある

2つ目の注意点は、法人を売却後に経営者が第三者に変わり、運営・経営方針が変化してしまう可能性があることです。

血縁者や社内での経営者交代であれば、好ましくない変化は起こりにくく、修正させることも可能ですが、第三者に経営権が移った場合は経営に対する権限がなくなります。

対策としては、売却交渉時に現在の運営・経営方針維持を条件に加えます。

運営・経営方針の維持はブランドイメージにつながるため、顧客や取引先の信頼を失わないためにも買い手には、自社の方針をきちんと伝えておきましょう。

3.売却後に従業員の雇用条件が変化する可能性がある

3つ目の注意点は、法人を売却後に勤務している従業員を雇用する条件が変化してしまう可能性があることです。

第三者へ経営権が移り、事業規模の拡大によって待遇が改善する可能性もありますが、逆に悪化する可能性もあります。

給与や業務内容、勤務地などの条件が変わることで、従業員の労働意欲の低下を招き、退職や人材流出が起こってしまう可能性もあります。

従業員の雇用を守るためにも、売却交渉時に雇用条件についても話し合いましょう。

買い手にとっても従業員の流出は避けたいため合意を得やすいといえます。

4.売却後に取引先との関係が変化する可能性がある

4つ目の注意点は、法人を売却後に長年付き合いがある取引先との関係が変化してしまう可能性があることです。

第三者へ経営権が移るため、経営方針の変化に伴って取引先との契約条件を変更する可能性があります。

また、担当者が変更され、取引先との関係が悪化してしまうこともあります。

経営権が移ってしまう前に取引先へ事情を説明するとともに、買い手に取引先との契約条件やキーパーソンとなる担当者について引き継ぎしておきましょう。

5.事業譲渡では準備と手続きに時間がかかる

5つ目の注意点は、事業譲渡を選択した場合、交渉や売却のための準備や手続きに時間・手間がかかることです。

法人全ての権利を売却する株式譲渡と違い、事業譲渡では売却対象となる事業ごとに個別の財務諸表が求められます。

また、売却対象の事業に関わる全ての債務や従業員、取引先などとの契約について、確認と地位譲渡手続きで時間がかかります。

このような準備と手続きが終わらなければ事業譲渡が完了できないため、準備期間を十分にとって取り組むことがおすすめです。

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法人売却の流れと手続き

法人を売却するためには、準備段階から始まり譲渡契約の締結を経てクロージングに至るまで、さまざまな手続きがあります。

ここでは、法人売却の流れと手続きについて解説します。

1.法人売却の前準備をする

法人売却を考えたときにまず行わなければならないことは、株式譲渡して経営権を売却するのか、部分的に売却する事業譲渡かを決定することです。

同時に、譲渡のタイミングや従業員の待遇、商品・ブランドの引継ぎなどの条件を検討します。

最終的な売却価格は買い手との合意で決められますが、先ほどお伝えした算定方法を利用して、目安となる売却価格を算定しておきましょう。

交渉の際に使用する資料も、この段階で準備します。

2.買い手を探す

法人の売却先である買い手を探すためには以下に挙げる5つの方法があります。

ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。

M&A仲介会社を利用して探す

1つ目の方法は、M&A仲介会社を利用して買い手を探す方法です。

法人売却を専門に扱う業者のため、自社の名前を明かすことなく、複数の買い手候補を選べます。

買い手候補の数が多ければ、よりよい条件で売却を進められる可能性が広がるでしょう。

また、M&A仲介会社を利用することのメリットは、法人売却の複雑な手続きをサポートしてくれることです。

取引先に買収を打診する

2つ目の方法は、自社の取引先に直接買収を打診する方法です。

付き合いが長い仕入れ先や関連企業が、これに当たります。

事業規模にもよりますが、第三者に経営権が移るなら自社で買収した方が経営上のメリットだと判断されることもあるでしょう。

お互いをよく知っている間柄のため、一度決まれば話がまとまりやすいというメリットがあります。

金融機関に相談する

3つ目の方法は、普段取引があるメインバンクや付き合いのある証券会社などの金融機関に相談する方法です。

金融機関は数多くの地元企業とのつながりがあり、豊富な取引先から買い手を紹介してもらえます。

金融機関の特性上、財務状態を把握しているため、不安なく話を進められるというメリットがあります。

業界団体に相談する

4つ目の方法は、自社が関係している業界団体に相談することです。

自社を含め同業者や関連会社が所属する業界団体なら、自社の事業内容を把握しています。

そのため、事業内容の親和性が高い買い手候補を紹介してもらえます。

業界団体の紹介であれば、業界の慣習を理解している買い手が見つかりやすく、売却後の引き継ぎをスムーズに行えることがメリットです。

都道府県の公的機関に相談する

5つ目の方法は、事業引継ぎ支援センターや事業承継ネットワークなど、都道府県の公的機関に相談することです。

後継者の不在による廃業を防ぐため、国は第三者への法人売却を支援しています。

事業引継ぎ支援センターは国の運営で全国の47都道府県に設置され、さらに自治体や商工会議所、金融機関や士業団体などが加わり事業承継ネットワークを運営しています。

公的機関であるため、相談にかかる料金が無料であることがメリットです。

3.秘密保持契約を締結する

買い手候補が見つかったら、秘密保持契約を締結してから社名や詳細情報を開示します。

買い手が買収するかどうかの検討材料として、財務内容や企業秘密など一般に公開されない情報を提供します。

秘密保持契約は、このような秘密情報の漏えいや第三者への開示禁止を定めるものです。

検討だけでなく、デューデリジェンスや譲渡契約締結などの各段階でさまざまな秘密情報を取り扱うため、何を秘密情報として取り扱うかの定義は幅広く設定します。

秘密保持契約を締結後、秘密情報を開示することで検討や交渉が本格化します。

4.トップ面談で情報確認する

トップ面談は買い手が買収を積極的に検討する段階で行われる、売り手法人の経営者と買い手候補法人の経営者による面談です。

実際に顔を合わせて話をすることで、互いの印象や企業理念、ビジネスモデルなどの理解を深めます。

経営者同士の考え方や価値観に通ずるところがあれば、法人売却の手続きや売却後に経営統合する作業もスムーズに進みます。

トップ面談自体には法的な拘束力がなく、1社のみに限らず複数の買い手候補法人の経営者とトップ面談を実施することも可能です。

また、トップ面談は1回で終わりではなく、双方が納得するまで何回も行い、工場や店舗でのプレゼンテーションをすることもあります。

経営者同士が合意すれば交渉の加速が望めるため、重要なプロセスだといえます。

5.基本合意を締結する

トップ面談で双方の経営者が話を進めることに同意した後は、以下7つの条件を確認して基本合意契約書を交わします。

  • 譲渡価額
  • 今後のスケジュール
  • 取引形態(株式譲渡・事業譲渡など)
  • 資産や負債状況
  • デューデリジェンスへの協力
  • 独占交渉権の付与
  • その他の合意事項

基本合意契約書に法的拘束力はありませんが、トラブル防止の効果が見込めます。

基本合意書を締結することで、売買契約へ向けて本格的に始動します。

6.デューデリジェンスに対応する

デューデリジェンスとは、買い手法人が買収前に行う調査です。会計士や税理士、弁護士などの専門家が売り手法人の経営実態やリスクを詳細に分析します。なお、株式譲渡ではなく事業譲渡の場合、デューデリジェンスの対象は売却事業のみです。

売り手法人は財務や税務、法務、人事などの資料を準備して、デューデリジェンスに対応します。

売り手法人は資料の提供や質疑応答などに対し、速やかで行き届いた対応をするために適切な人員配置が求められます。

デューデリジェンスは、専門家に対応しなければならないため難易度が高いといえますが、M&A仲介会社に依頼していれば、サポートを受けられます。

7.譲渡契約を締結する

デューデリジェンス終了後、売り手と買い手双方の売買合意に基づき譲渡契約を締結します。

株式譲渡では株式譲渡契約書、事業譲渡では事業譲渡契約書を作成します。

譲渡契約書に法的に決められた記載事項や規制はありません。一般的には以下のような内容が記載されます。

  • 譲渡金額
  • 資産・負債
  • 譲渡期日
  • 競業避止義務
  • その他の合意事項

法人の全資産が譲渡対象となる株式譲渡と違い、譲渡後のトラブルを防ぐためにも、事業譲渡では譲渡対象の事業や資産を明確に記載しましょう。

8.クロージングする

法人を売却するにはさまざまな準備や手続きが必要であるため、譲渡契約の締結から契約実行のクロージングまで、1か月以上の期間を要します。

公正取引委員会が定める独占禁止法10条2項によって、法人売却を売上高が一定水準を超える企業が行う際は、公正取引委員会に届出後30日経過するまでは実行できないことが定められています。

また、事業譲渡ではクロージングまでに全ての契約ごとに先方の同意が必要です。

取引先ごとの契約確認や許認可再取得、従業員の雇用契約確認などを実施します。

準備期間を経て、クロージング当日は譲渡代金の支払いや重要物の引き渡し、登記などが行われて法人売却の手続きが完了します。

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法人売却の手続きに必要な書類

買い手へのアプローチからデューデリジェンス、クロージングまでの間に必要な書類は多岐にわたります。

デューデリジェンスでは弁護士や税理士のチェックを受けるため、正確で分かりやすい資料が必要です。

具体的には、以下のような書類を用意します。

  • 自社PR資料:具体的な条件交渉の前に、自社を買い手に売り込むための資料
  • 基本的資料:初期段階から用意しておく、会社案内や定款などの資料
  • 法務関連資料:デューデリジェンスでも使われる、自社の経営に関わる全ての契約資料
  • 財務関連資料:デューデリジェンスでも使われる、自社の財政状況や経営成績を表す資料
  • 人事関連資料:デューデリジェンスでも使われる、組織や従業員など人事に関わる資料

ここでは、それぞれの必要書類について解説します。

自社PR資料の種類

自社PR資料とは、具体的な条件交渉の前に、自社を買い手候補に売り込むための資料です。

この資料によって買い手に好印象を持たせられれば、次の段階であるトップ面談に進む可能性があります。

また、トップ面談では買い手候補の経営者から、この資料についての話題が出ることもあります。

自社PR資料として用意するものは、将来性を伝えるための中期事業計画書や、メディア掲載資料などです。

基本的資料の種類

基本的資料とは、初期段階から用意しておく、会社案内や定款などの資料です。

会社案内や定款など自社PR資料で興味を持った買い手候補が最初に確認する資料だけではなく、商業登記簿謄本や株主名簿なども基本的資料に含まれます。

基本的資料に関しては、必要な種類さえ分かれば専門知識がなくても用意できます。

法務関連資料の種類

法務関連資料とは、デューデリジェンスでも使われる、自社の経営に関わる全ての契約資料です。

仕入れ先や販売店などの取引先との契約書や、事業に必要な許認可や設備のリース契約書などを含む全ての契約書類を用意します。

自社の株式に関する株券の発行状況や譲渡履歴などの情報も法務関連資料です。

将来訴訟に発展するリスクを避けるため、ライセンス契約や知的財産権については正確な資料が求められます。

また、すでに訴訟が起きている場合は、隠すことなく情報を提供しましょう。

法務関連資料は、弁護士や法律事務所などによってデューデリジェンスが実施されます。

財務関連資料の種類

財務関連資料とは、デューデリジェンスでも使われる、自社の財政状況や経営成績を表す資料です。

特に重要視されるものが財務三表と呼ばれる損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)で、デューデリジェンスでは3〜5期分が求められます。

また、税務申告書や所有する不動産に関する資料なども財務関連資料です。

財務関連資料は、一般的に公認会計士によってデューデリジェンスが実施されます。

人事関連資料の種類

人事関連資料とは、デューデリジェンスでも使われる、組織や従業員など人事に関わる資料です。

本社や子会社を含む組織図、役員や従業員に関する情報、就業規則や人件費などの資料を用意します。

買い手にとっては、買収後の人材流出を防ぐとともに人件費を抑えるためにも、人事関連資料は重要な資料です。

通常、人事関連資料は、社会保険労務士によってデューデリジェンスが実施されます。

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法人売却価格の4つの算定方法

法人売却価格は、事業が順調で負債をもたない法人や、許認可を保有する法人の評価が高いと言われます。

ここでは、目安となる売却価格を算定するための方法4種類を解説します。

1.DCF法

1つ目の算出方法は、法人売却価格を将来の利益で算定するDCF法です。

DCFとはDiscounted Cash Flowの略で、その事業において将来獲得が見込まれるキャッシュフローの総額からリスク分を割引き、現在の企業価値を評価する方法です。

特許や独自性のある技術を有する法人の評価に適しています。

将来の収益力は事業計画書をもとに計算するため、算定は専門性が高く複雑です。

法人の純資産や過去の実績より将来獲得が見込める利益を重視する方法は合理的で、買い手が上場企業の場合は重視される算定方法といえます。

2.類似会社比較法

2つ目の算定方法は、法人売却価格を同じような事業内容の会社と比較して算定する類似会社比較法です。マルチプル法とも呼ばれ、類似した事業内容・事業規模の法人と比較するために、直感的に理解しやすい方法だといえるでしょう。

類似会社比較法では、同じような事業内容・事業規模の上場企業を3社から5社ほど選び、倍率を計算します。

倍率の計算に使用する数値は、売上高や営業利益、純資産などの重要業績評価指数KPIです。

例として、類似会社が年間売上金額の何倍の金額で売却成立したかが分かれば、自社の売却価格を算定できます。

3.時価純資産法

3つ目の算定方法は、法人売却価格を保有する資産から負債を差し引いた時価で算定する時価純資産法です。

保有する全ての資産の時価総額から負債の時価総額を差し引くだけで計算でき、含み損や含み益を加味するため客観的で正確な評価ができます。

積み上げてきた純資産を評価するため、不動産を保有している中小企業の価格算定に向いています。一方で、将来の成長や利益を評価するベンチャー企業の価値算定には不向きな方法です。

時価純資産法は評価の正確性に加え、貸借対照表があれば計算できる簡便さも、選ばれる理由の1つです。

4.年買法

4つ目の算定方法は、時価純資産法に将来的に見込まれる利益を加味して算定する年買法です。年倍法と表記されることもあります。

時価純資産法は客観的で正確な評価方法ですが、将来の収益性を反映できないという弱点があります。

年買法では時価純資産に数年分の営業利益を加えることで簡単に計算可能で、直感的に理解しやすい価格を算定できます。

中小企業庁が公表している「経営者のための事業承継マニュアル」の第3章でも企業価値の算定方法として紹介しており、手間をかけずに目安価格を算定するために用いられる計算方法です。

営業利益を加算する年数は、売り手と買い手双方の合意で決定されます。

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法人売却にかかる税金

法人を売却して得られる利益には税金が課せられます。

  • 法人を売却する方法が株式譲渡で株主が法人のとき
  • 法人を売却する方法が株式譲渡で株主が個人のとき
  • 法人を売却する方法が事業譲渡のとき

ここでは、それぞれのパターンにおいてかかる税金について解説します。

法人売却で株式譲渡にかかる税金

株式譲渡にはどのような税金が課せられるのでしょうか。

通常は商品やサービスなどの販売によって対価を得た場合に課税されますが、株式は消耗品ではないため、消費税を免れます。

ここでは法人株主と個人株主、それぞれにかかる税金について解説します。

法人売却で法人株主にかかる税金

親会社が子会社の株式を売却するときは、法人である親会社が株主として扱われます。

このため、株式譲渡して利益を得た株主である親会社に法人税が課せられることが特徴です。

法人税は株式を売却して得た売却益だけではなく、本業で得た利益との合計金額に法人税の実効税率である30〜40%を乗じて計算されます。

株式譲渡価格が1億円で、必要経費として取得費が2,000万円、売却委託手数料が1,000万円かかった場合の売却益は7,000万円です。

法人税の実効税率を30%で計算すると、株式譲渡の売却益のみで計算した場合の法人税額は、7,000万円の30%で2,100万円です。

本業の利益が3,000万円の黒字であれば、法人税額は7,000万円+3,000万円=1億円の30%で3,000万円と算出されます。

また、2,000万円赤字の場合、法人税額は7,000万円ー2,000万円=5,000万円の30%で1,500万円です。

法人売却で個人株主にかかる税金

オーナー経営者が自身の持株を売却するときは、経営者である個人が株主として扱われます。

このため、経営者本人に所得税と住民税が課せられることが特徴です。

個人が株式を売却した利益は譲渡所得と呼ばれ、給与所得や事業所得と合算せずに分離課税で計算します。

株式の譲渡所得に対する税率は、所得税15%と住民税5%に令和19年まで加算される復興特別所得税0.315%を加えた、20.315%です。

株式譲渡価格が1億円で、必要経費として取得費が2,000万円、売却委託手数料が1,000万円かかった場合の株式譲渡所得は7,000万円です。

株式譲渡所得に対する税額は、7,000万円の20.315%で1,422万500円と算出されます。

法人売却で事業譲渡にかかる税金

事業譲渡とは法人が所有する事業を部分的、あるいは全てを第三者へ売却することです。

このため、利益を得る法人に法人税が課せられます。

法人税額は、譲渡価格から譲渡した資産と負債の差額を引いた事業譲渡益と、本業の利益を合計して実効税率を当てはめ計算します。

また、譲渡する事業に商品や設備などの課税対象資産を含む場合は消費税が課せられ、納付しなければならないため覚えておきましょう。

なお、事業譲渡のための契約書には印紙税も課せられます。

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法人売却は不動産ごと売却すれば節税できる

不動産所有法人を売却するときは、不動産を所有した状態のまま株式譲渡することで、不動産を個別に売却するより税金を抑えられます。

不動産を個別に売却した場合、売却益には法人税が課税され、実効税率は30%〜40%です。

一方、不動産を所有したまま株式譲渡で法人を売却した場合、譲渡所得に対する税率は20.315%が適用されるため、支払う税金に大きな違いがあります。

不動産を個別に売却する手続きが不要である点もメリットです。

ただし、不動産価格が総資産の70%を超えると「短期所有土地の譲渡に類似する株式等の譲渡」とみなされて節税にならない場合があります。

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まとめ

法人売却は検討を始める準備段階から買い手探し、交渉やデューデリジェンスを経て譲渡契約、クロージング後の経営統合まで、長ければ数年かかる一大事業です。

法人売却を考えたときに大きな負担となる資料作成やデューデリジェンス対応などには、専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。うまく活用して、法人売却をスムーズに進めましょう。

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