廃業する会社を買うメリットとは?M&Aについても解説
このページのまとめ
- 廃業する会社を買うことで独立を目指す人が増えている
- 廃業する会社を買うメリットは「コスト削減」「従業員の獲得」など
- 廃業する会社を買う主な方法は「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」
- 買収する際は、簿外債務の有無の調査をしたり従業員のケアをしたりすることが必要
- 廃業する会社を買うときは支援機関を利用することがおすすめ
「起業のために廃業する会社を買うのはあり?」と、気になっている方もいるのではないでしょうか。
廃業する会社を買えば、何もない状態から起業するよりもコストを削減できたりノウハウを獲得できたりと、たくさんのメリットがあります。
本コラムでは、廃業する会社を買うメリットや注意点、かかる費用などについて解説します。また、M&Aの手法の種類や成功事例なども紹介。このコラムを読んで廃業する会社を買うポイントを押さえて、M&Aを成功させましょう。
廃業する会社を買うとは?
会社の合併や買収は欧米では一般的に行われており、「Mergers and Acquisitions(マージャーズ アンド アクイジションズ)」を略してM&A(エムアンドエー)といいます。
買収方法は主に
- 会社を買う=買収
- 会社の経営権を買う=企業買収
- 事業の一部だけを買いとる=事業買収
上記の3種類に分けられます。
廃業と倒産の違い
「廃業」とは会社の事業を畳むことを意味します。
しかし、ニュースでは「廃業」よりも「倒産」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
「廃業」とは、会社の都合で自主的に事業を辞めるケースのことを指します。
一方で「倒産」とは、会社は事業を続けたいものの、債務超過などで自己破産に追い込まれ、止む無く事業をたたむケースを指します。
ただし廃業する場合にも、債務が残っている場合は清算手続きが必要です。
M&Aのしくみ
M&Aには大きく分けて、株式譲渡・事業譲渡・会社分割、3つの買収方法があります。
この章ではこれらを1つずつ解説します。
それぞれの特徴やメリット、デメリットを比較しましょう。
株式譲渡
株式譲渡とは、廃業する会社の株式を買い取ることで、経営権を取得する買収方法です。
基本的には株主が変わるだけであるため、会社名をそのまま使用でき、資産、事業なども全て引き継ぎます。
株式譲渡のメリットは、比較的簡単な手続きだけで買収ができ、買収における時間や手間が抑えられる点です。
デメリットは、前述の通り会社の債務も引き継ぐため、後から簿外債務が発覚し、借金を抱えてしまう恐れがあります。
また、採算が合わない不要な事業まで抱えてしまい、後から大幅な費用がかかる可能性もあります。
こうした事態を防ぐために、財務状況の事前確認やリスク調査を念入りに実施することが重要です。
事業譲渡
事業譲渡とは、廃業する会社から事業の一部もしくは全部を買い取る方法です。
事業譲渡のメリットは、買収対象は事業に限られるため、買い取りたい事業だけを選択できる点です。
株式譲渡と違い、不測の簿外債務や望まない事業を引き継ぐリスクも抱えずに済みます。
デメリットは、各種契約関係の承継について、廃業する会社から個別に承認を得る必要があるため、買収手続きが完了するまでに大幅な時間と手間がかかる点です。
また、廃業する会社の取引先や社内の従業員にも個別の同意を得る必要があるため、目的の事業が買収できずに、廃業する会社側に残ってしまう恐れもあります。
そのため、事業を引き継ぐ前に、取引先や従業員からの承諾を得ておくことが大切です。
会社分割
会社分割とは、事業を包括的に承継する方法です。
会社分割の場合、廃業する会社の法人格は、買い手の法人格に吸収されるため、消滅します。
新たに設立する会社が権利義務を承継する場合は「新設分割」、既に存在する会社が承継する場合は「吸収分割」といいます。
会社分割のメリットは、新会社の株式発行だけで承継が可能なため、手元に十分な資金がなくても、廃業する会社を買収できる点です。
また事業譲渡と違い、各種契約関係の承継について、廃業する会社や取引先、従業員から個別に承認を得る必要がありません。
ただし会社分割で買収するには、株主総会の特別決議による事前承認が必要です。
また労働承継法に基づく継承手続きが必要であるなど、厳しい手続きを要します。
買収のメリット
廃業する会社を買うことで、売り手側と買い手側が得られるメリットを3つ挙げます。
後継者不足による廃業を止められる
売り手側の買収のメリットは、後継者が見つかって廃業せずに済むことです。
中小企業の経営者の高齢化が進み、後継者不足に悩む会社は後を絶ちません。
M&Aをすることで、経営者は社外や親族以外に事業承継ができ、事業の存続も叶えられます。
事業拡大を狙える
買い手側のメリットは、事業拡大が期待できることです。
一般的に事業をスタートするには、設備投資や人材の確保・マーケット調査・販路の構築などするべきことが多岐にわたり、膨大な時間と費用を要します。
廃業する会社を買うことで、これらの設備や資本、業務のノウハウなども取得できるため、事業設立時にかかる時間と費用を削減できます。
さらに、買い手側のこれまで培ってきたノウハウや資本、設備の共同化などが上手くできれば、相乗効果で事業拡大も見込めるでしょう。
創業者が譲渡益を得られる
売り手側のメリットは、創業者利益が獲得できることです。
株式譲渡によるM&Aを選択すると、廃業する会社の買い手側は、現金を支払うことで株式を保有できます。売り手側にとっては譲渡益となり、保有した潤沢な資金で次の事業を始めたり、悠々自適のセカンドライフをスタートしたりできます。
買収を失敗しないための注意点
ここでは、廃業する会社を買収した後に起こりやすいトラブルや、よくある事例を挙げます。
簿外債務を引き継ぐことがある
本来、企業の負債は全て貸借対照表に記載されるべきですが、何らかの事情で記載されないケースもあり、これを「簿外債務」といいます。
簿外債務は決して珍しくなく、例えば、経営者が個人の保証人であることを会社に報告しないまま計上が漏れていることのほか、未払い残業代も簿外債務にあたります。
簿外債務を引継がないためにも、買収前の調査を徹底して行うことが重要です。
従業員が離れていく可能性がある
廃業する会社を買った後に懸念されることが、従業員が辞めてしまうリスクです。
買い手側が尊大な態度をとって反発が起こる、新しい企業文化になじめずに辞めてしまうなど、従業員が離職してしまうことにはさまざまな原因があります。
従業員は会社にとって大切な資本です。優秀な人材を失うことになれば、買い取った事業自体が失敗してしまう恐れもあります。
従業員の離脱を防ぐためには、M&A前後にわたって、従業員と丁寧なコミュニケーションを重ねることが重要です。
取引先とのトラブルが生まれる
既存の取引先も、買収後の事業運営に大きく影響がある会社にとって重要な資産です。
例えば、取引を継続する理由が、前の経営者の人柄やコネクションによる部分が大きい場合、経営者が変わることで取引を停止されるリスクもあります。
取引を継続するためにも、前の経営者に依頼して今回のM&Aによる取引先にとってのメリットを説明したり、取引先と自ら積極的にコミュニケーションをとったりして、新しく良好な関係を構築しましょう。
M&Aの弊社契約事例
ここでは、実際にあった弊社でのM&A契約事例をご紹介します。
【弊社事例1】株式譲渡|HRテック×マーケティング支援
株式譲渡によるM&Aの事例です。売り手側の会社は国内屈指の導入企業数を誇るASPサービスの展開をしており、株式上場も目指していました。しかしながら自社だけでの事業拡大に限界を感じてM&Aの検討をすることに。一方で買い手側の会社は東証上場、売り手側の会社同様ASPサービスを展開しており業界2位のシェアを誇る企業でしたが、これ以上のシェア拡大に苦戦しているところでした。
事業の親和性が高い両社のM&Aを実行することで、売り手側の会社は上場企業の傘下に入り、さらなる事業拡大を目指せるでしょう。
買い手側の企業は業界トップのシェアを獲得できました。
【弊社事例2】株式譲渡|Web制作×自社プロダクト開発
次の事例も株式譲渡によるM&Aです。
売り手側の会社は、Web制作やアプリケーション開発を扱う会社です。
従業員のエンジニアとしての高い技術力を活かし、自社でプロダクト開発に取り組みたいと思いながらも、会社の規模が小さく、資金面やリソース面から実行に移せずにいました。
そこで弊社でM&Aのサポートをさせていただき、大手企業の傘下に入ることで、これまで実行できずにいた自社でのプロダクト開発を1年経たずして成功させました。
また、大手企業の既存のクライアントから、これまで自社だけでは獲得できなかった案件も依頼を受けるようになり、従業員のスキルアップやリテンションにもつながっています。
M&Aの失敗事例から学ぶ
サラリーマンが廃業する会社を買ったものの、事業に失敗して、買い取った事業を再び売却する事例もあります。
失敗事例の共通点として、M&Aを実行する前の見通しの甘さが挙げられます。
例えば、
- サラリーマン時代に培ったノウハウや経験を生かせる事業なのか
- 顧客や販路、既にいる会社の従業員や取引先との関係性や知見も引き継げるのか
など、M&Aの前にしっかりとリサーチし見極めることが重要です。
実際に会社はどこで購入できるのか?
実際に廃業する会社を買うには、公的機関や仲介会社、ネットのマッチングサイトなどを利用するとよいでしょう。
この章では、上記3種類のメリットや注意点についてそれぞれ解説します。
事業承継・引き継ぎ支援センターを利用する
都道府県ごとに設置されている事業承継・引き継ぎセンターで、会社を買うこともできます。
事業承継・引き継ぎセンターは後継者不足に悩む中小企業を支援するために国が開設した公的機関です。
M&Aについてよく知らない方でも窓口で相談ができ、手続きの流れや疑問点にも答えてもらえるでしょう。
また、希望の予算や業種を伝えて、売り手の中小企業を紹介してもらうことも可能です。
M&A仲介会社に相談する
M&Aに関する業務を専門的に扱っている企業がM&A仲介会社です。
M&Aの仲介会社に相談する場合のメリットには、しっかりとしたM&Aの仲介会社を選べば、幅広い相手からM&Aの候補先を探してもらえることがあげられます。
M&Aの仲介会社はさまざまな種類があるので、サービス内容や成約事例を確認して自社に合った仲介会社を選びましょう。相談は無料で受けている仲介会社も多いので、相談してから見極めるのも一つの手です。
マッチングサイトを使う
M&Aマッチングサイトを利用して、簡単に会社の売却情報を確認できます。
マッチングサイトのメリットは、会社を買う予算や希望の業種を絞り込んで検索できる点です。
どのような会社が売られているのかを、気軽に検索するにはおすすめの方法でしょう。
マッチングサイトに掲載されている会社の規模は多種多様で、300万円程度で購入できる会社もあれば、1,000万円を超える会社も掲載されています。
M&Aに必要な費用
M&A仲介会社にかかる仲介手数料にはさまざまな種類があり、支払う額などはM&A仲介会社ごとに異なります。そのため、M&Aにかかる費用は一概に決められません。
仲介会社へ依頼する際にかかる費用としては、以下のものが挙げられます。
- 事前相談料
- 着手金
- 中間金
- 成功報酬
- 最低手数料
- リテイナーフィー
- デューデリジェンス
- 業務実行に伴う実費
手数料といってもさまざまなものが含まれるため、各M&A仲介会社の費用や支払うタイミングなどを比べるとよいでしょう。費用の内容を前もって知ると、安心してM&Aを進められます。
また、税金、買収対価、株券発行費などもM&Aにかかる費用です。
M&Aを成功させる3つのポイント
廃業した会社を買収した後、事業拡大・成功させるために意識したいポイントを3つご紹介します。
人材を大切にする
買い手側だからといって、偉そうな態度はNG。
特に、中小企業の場合、最も価値のある財産は“人”つまり従業員です。
知識やスキルに加えてノウハウはもちろん、取引先との関係から見えない部分での会社の取り回しなど、人材と技術は切って切り離せないものといえるでしょう。
売り手側の経営者の人間性に惹かれて長年頑張ってきたキーパーソンとなる従業員が、M&Aをきっかけに退職してしまったり、その結果、主要な取引先との関係性が壊れてしまったりすると、企業としての価値が大幅に下がってしまいます。
このような事態に陥らず円滑に事業を引き継ぐために、前の経営者に一定期間、顧問や会長として残ってもらい、アドバイスを仰いだり従業員との摩擦を防ぐケースもあります。
ある程度理解できる業種にする
実際に廃業する会社を買ってみたものの、参入したマーケットに対しての知識やノウハウ不足から想定していた利益を見込めず、やむなく事業を売却・撤退したという事例は枚挙に暇がありません。
サラリーマン時代に培ったノウハウや経験が活かせる事業であれば、マーケットの特徴や事業拡大のために必要な情報を把握しやすいでしょう。
買収後、より的確なマーケット戦略を実行できるため、事業の成功確率が高くなるといえます。
ある程度興味のある業種にする
廃業する会社を買収した後、実際に会社を運営して、事業の規模や利益を伸ばすためには、試行錯誤や創意工夫が必要です。
それらの行動の源泉が湧き出る理由は、やはり取り組む事業に興味関心があってこそでしょう。
まったく興味がない業種だと事業に取り組むモチベーションが保ちにくく、目先の売上ばかり追いかけて疲弊しがちです。
まとめ
廃業する会社を買うためには、複雑な手続きやプロセスが存在し、高度な専門知識も必要とされます。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社ではM&Aや事業承継に精通したコンサルタントが、最初のご相談から実際に会社を買い取るまで、丁寧にご説明・サポートいたします。また、料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型で、M&Aご成約まで無料で利用できます(譲受会社のみ中間金あり)。無料で個別相談会も受付中です。
廃業する会社を買うことを検討している方は、お気軽にご相談ください。