医業承継とは?承継の方法や成功させるポイントを紹介

2023年11月28日

医業承継とは?承継の方法や成功させるポイントを紹介

このページのまとめ

  • 医業承継は第三者への継承と親族間での継承の2種類がある
  • それぞれにメリットデメリットが存在する
  • 医業承継の流れは8つのステップがある
  • 準備が不足した状態で継承するとさまざまなトラブルが起こる可能性がある
  • スムーズに継承するために信頼できるコンサルタントに相談しよう

既に経営している医院を引き継ぐ「医業承継」には、第三者への継承と親族間での継承の2種類があり、異なったメリット・デメリットが存在します。トラブルなく継承するためにはそれぞれの特徴を知り、早めに準備をすることが大切です。本コラムでは医業承継を検討する方に向けて、2種類の継承方法とそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。成功させるポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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医業承継は大きな課題

医師の高齢化、後継者問題により、医業承継は近年の課題となっています。

医療機関の経営者は「医師」である必要がありますが、この原則がネックとなり医師不足の日本において後継者の確保は他の業種に比べて厳しい現状です。

その結果、休業や廃業を余儀なくされる医院もあります。地方に住む患者のことを考えれば廃院はなるべく避けたい選択肢ですが、このまま医療機関の後継者確保が進まず、小規模病院の解体が進んでいけば地方から医療機関が撤退する恐れは十分あるでしょう。

また、近年は一般診療所の倒産も増えています。2021年度は新型コロナ感染拡大の影響で受診控えが長引く一方、支援策の効果も薄れて倒産件数は前年よりも増加に転じました。2022年度も本質的な経営改善が遅れたために、過去最多の倒産が発生しています。

後継者問題が深刻化するなか、コロナ禍での医業収入減少が後押しとなって廃業を選択した可能性もあるでしょう。

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医業承継とは?承継と継承の違い

医業承継とは、現在経営している医院・クリニックを引き継ぐことを言います。

医業承継は、「医業継承」と呼ばれることもあります。どちらも医業を受け継ぐという点で変わりありませんが、「承継」は前院長の経営理念など精神的なものを受け継ぐ趣旨があるのに対し、「継承」は財産や事業など、形あるものを受け継ぐという意味合いです。

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医業承継の主な継承方法は2種類

地方の医院を存続させるためには正しく継承を行う必要があります。この医業承継の方法は、大きく分けて「第三者への継承」と「親族間の継承」の2つです。それぞれの特徴についてここでは解説します。

第三者への継承

「第三者への継承」はM&Aを通して親族外に継承する方法です。ここでの第三者とはその医院で働いていた医師や、開業を希望している専門医などが当てはまります。後継者不足が問題となっている現在では、現実的な方法です。
他人に医院を譲るため、経営者と継承先である医師の間との意見のすり合わせが重要です。お互いの意見や要望が合致すれば医業承継が行われます。
また、事例としてはごく僅かですが、第三者に医師の資格がなくとも知事の認可があれば理事長となり継承が可能です。

親族間での継承

親族間で運営を継承する方法は自分の子どもが医師として勤めている場合に第一選択肢に上がる継承方法です。「親族間での継承」は、当然ですが親族が医院を経営している場合に当てはまるので、「第三者への継承」に比べ限定的な継承方法です。
しかし、子どもの専門分野が異なる場合や、そもそも医師ではあるが理事長になることを希望していない場合は継承できない可能性もあります。その場合、子ども以外の親族内継承が次の選択肢に上がります。

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第三者へ医業承継するメリット・デメリット

ここからは、第三者へ承継する場合と親族間で承継する場合のメリット・デメリットを紹介します。

第三者へ医業承継するメリット

第三者への医業承継は、主に以下のメリットがあります。

  • 親族に後継者がいない問題を解消できる
  • 適任者を選任できる

それぞれの内容を解説します。

親族に後継者がいない問題を解消できる

第三者に承継するメリットは、親族内や院内に後継者がいない場合でも病院が残せることです。後継者がいない場合、最悪の場合は廃業することにもなり、スタッフが失業します。地域の住民の生活にも影響を与えるでしょう。

また、現経営者にとっては、第三者に承継することで譲渡対価を確実に得られることもメリットとなります。

適任者を選任できる

第三者への承継は、広く適任者を探して承継できる点がメリットです。長期間勤務している医師などに承継する場合は、経営の一体性を保ちやすいでしょう。
承継する側にとっても、既存の患者がいる状態でカルテを引き継ぐことができ、既存のスタッフも引き継ぐため経営をすぐに開始できる点がメリットです。

内装工事なども不要で、収支の予測を立てやすいでしょう。

第三者へ医業承継するデメリット

病院は設立に際して行政から規制を受けている許認可業であり、非営利が基本となるため、一般的な株式会社のM&Aとは異なる側面が多々あります。

手続きでは譲渡価格の交渉や細かな取り決めなどの煩雑なやりとりがあり、時間がかかることが多い点がデメリットです。

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親族間で医業承継するメリット・デメリット

続いて、親族間で継承する場合のメリット・デメリットについて解説します。親族間では引継ぎがスムーズであるというメリットがありますが、当然第三者への継承と同じく方針で揉める恐れもあるので、対策のために押さえておきましょう。

親族間で医業承継するメリット

親族間で医業承継するメリットは、主に次の2つです。

  • 親や親族からの支援を受けられる
  • 承継の準備期間を長く確保できる

それぞれの内容をみてみましょう。

親や親族からの支援を受けられる

初めての医院経営は難しいことも多く、失敗するリスクもあります。しかし、親族間承継であれば承継後も親や親族の支援を得ながら、円滑に経営を進められる可能性が高いでしょう。経営に関するアドバイスや、資金面での支援も期待できます。
万が一経営が危機に陥ったときでも、サポートを得られる可能性が高いでしょう。

承継の準備期間を長く確保できる

親族間の承継であれば、承継の準備を早くから進められるというメリットがあります。病院を継ぐには経営者としての能力も必要であり、子どもに病院を継ぐ意思があれば、早い段階から経営についての人材育成に時間をかけられるでしょう。準備期間を長く確保することでスムーズな承継が可能になります。

また、個人医院では病院の資産も全て相続税の課税対象になるため、準備期間を長く確保すれば相続対策にも早めに取り掛かれるでしょう。

親族間で医業承継するデメリット

子どもに継承する場合、揉めるケースとして想定されるのは、自分の親がしていた運営方法から大きく改変したい場合です。第三者への継承でも述べたように、急に方針や理念が変わることでスタッフがついていけなくなり、結果としてスタッフの離職の要因となります。
スタッフと揉めて、医院の雰囲気が極端に変わってしまうと、患者からの不信感を募らせることとなり、患者離れのリスクも高くなります。事前に親子間で意識のすり合わせをしておくことが大切です。

関連記事:医療法人のM&A動向を解説!病院買収のスキームやメリット、事例も紹介

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医業承継の流れ

第三者間で医療承継を行う場合、事前に大まかな流れを確認しておきましょう。第三者への医業承継は、次のような手順で行います。

  • 条件の整理
  • 専門家への相談
  • 承継相手との交渉
  • 基本合意書の締結
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終契約書の締結
  • 承継の実施

ここでは、医療承継を進めるためのステップを項目ごとに解説します。

1.条件の整理

まず、譲渡側と承継側ともに、以下のような条件の整理が必要です。

譲渡側:現金・預金・不動産などクリニック・医院の財産を算出し、希望価格を決める
承継側:開業したいクリニック・医院の場所や診療コンセプトなどを整理しておく

承継の手続きにかかる期間は3ヶ月から約1〜2年ほどかかるため、十分に余裕を持って準備してください。

2.専門家への相談

条件を整理したら、専門家に相談しましょう
医業承継の相談先はM&A仲介会社や税理士などの士業専門家、医業コンサルタントなどが適切です。このうち、M&Aの仲介会社であれば、譲渡する医院・クリニックを評価をして、適した相手先候補を紹介してくれます。

医院の開業支援に強い医業コンサルタントは、医業承継においても医院の現状を分析し、引き継ぐ医師に対する支援が可能です。

税理士や公認会計士、弁護士は、資産の売却に関する法務・税務の知識を持ち、適切なアドバイスができるでしょう。

3.承継相手との交渉

承継の相手先候補が決まったら、情報を精査して現地視察などを行います。譲渡価格など承継の条件について交渉を行いましょう。交渉では、承継する側が譲渡側に対して承継する意思を示す「意向証明書」を提出する場合もあります。

意向証明書は譲渡側に対して「譲り受けを具体的に検討したい」という意向を伝えるもので、承継に向けた具体的な話し合いがスムーズに進みます。

4.基本合意書の締結

条件交渉が終わったら、基本合意書(MOU)を締結します。最終契約まで進むという意思表示をするために、双方が合意した内容を記載した書類です。主に交渉の内容やスケジュールなどを明確にし、スムーズに交渉を進めることを目的に締結されます。

基本合意書には基本的に法的拘束力がなく、例外的に独占交渉権の付与や秘密保持義務といった項目には法的拘束力を与えることが多いでしょう。

5.デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結したら、デューデリジェンスを行います。デューデリジェンスとは、医業承継する側が、医院・クリニックの価値やリスクの有無について調査することです。

財務や法務、事業などの面から医院・クリニックの実態調査を行い、承継してよいかどうかを検証します。財務や法務など調査する範囲が広く、税理士や公認会計士、弁護士など専門家の協力のもとに進めます。

6.最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な合意事項を定めた「最終契約書」を締結します。最終契約書は、これまでの条件交渉を通じて確定した合意事項をすべて盛り込んだもので、法的拘束力があります。

そのため、一方的な契約破棄はできません。一方当事者が最終契約書の内容に違反し、他方当事者に損害が生じた場合には、損害賠償請求ができる旨が定められています。

7.承継の実施

最終契約書に基づいて代金の決済手続きを行い、医院・クリニックを承継する最終手続きを行います。承継の実施では経営権の引き継ぎのほか、保健所への書類提出や行政への申請といった手続きが必要です。

また、通院している患者や勤務している医師、看護師などのスタッフにも説明が必要です。引き継ぎの期間にはある程度の時間がかかることを把握しておきましょう。

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医業承継時に起こりうるトラブル

継承のデメリットでも触れたように信頼関係が構築されていなければ、継承時には経営方針の相違、スタッフの離職、患者離れなどのトラブルを招くことがあります。ここでは医業承継において特に起こりやすいトラブルについて解説します。

経営理念や診察方法に相違がある

経営理念が継承者へ十分に伝わっていないと、前任者と後継者の間で理念の認識に相違が生まれます。その認識の差異がそのまま診察方法の違いにつながり、スタッフと信頼関係を上手く築けないというトラブルにつながります。
また認識の相違による関係の悪化はスタッフに限った話だけではなく、それまでの医院の診療方法を信頼していた患者からも不信感が募り、病院の評判が下がる原因になります。

経営方針が大きく変わりスタッフが退職する

経営方針が変わり、これまで大切にしていた業務を疎かにされると、スタッフが退職する可能性があります。特に前任者とスタッフ間の信頼関係が強く築かれている場合、経営方針や業務内容の変更に対して、スタッフはより強く心理的抵抗を覚える可能性があるので注意が必要です。
これまでの経営方針に賛同しついてきたスタッフ陣であることを十分理解し、医院が長い間大切にしていた方針や業務に対して配慮しましょう。

説明不足が原因で患者が離れる

院長、経営陣が急に交代すると、当然長年通院していた患者は不安定な医院の体制について不信感が募り、患者離れの原因となります。
それまで信頼していた院長がいなくなり、周りのスタッフや診療方法の変更に関してなんの説明もないと、患者が病院間でトラブルがあったのではないかと疑うことは想像に難くありません。
患者に快く通院してもらうためにもきちんとした説明が必要です。

急な継承で現場が混乱する

経営者の急死で継承する場合や突然の引退発表は現場の指揮を乱すなどのトラブルを引き起こします。万が一何も決まっていない段階で継承を進めなければならなくなった場合、後継者選びが難航すればするほど、患者やスタッフを守ることは難しくなります。
経営者が、まだ引退するつもりはないと思っていても何が起こるか分からないので、後継者選びや、継承は早めの段階から進めておきましょう。

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医業承継を成功させるためのポイント3選

医業承継を正しく行えれば、費用を抑え、引き続き地方の医院を存続させられますが、同時にトラブルが起こる可能性もあります。ここでは医業承継を成功させるために必要なポイントを3つ解説します。

信頼できる専門家に相談する

医業承継をするにあたって、税務、会計、法務についての知識が必須です。また、医院が個人か法人かで手続きの方法は違います。この手続きは非常に複雑なものであり、どこかで不備があると開業できない場合もあります。無事に医業承継の手続きを完了するには、専門家の助けが必要となるでしょう。
また、第三者に医院を承継する場合は、M&Aの仲介会社に依頼をすることがおすすめです。M&Aをコンサルティングしてくれる会社に依頼することで、医業承継がスムーズに進みます。また、M&Aの仲介会社は重要事項に関する書面を漏れなく残してくれるので、リスクマネジメントもできます。
M&Aを成功させた実績がある、経験豊富な仲介会社を見つけましょう。

早い時期から準備を始める

医業承継は前もって準備を進める必要があります。例えば医院の業績が悪化してから継承の手続きを始めた場合、経営状態があまり良くない医院の後継者候補は見つかりにくいです。仮に見つかったとしても「居抜き」として扱われ、それまでの医院が積み上げた価値が無くなる可能性があります。高齢化が進んでいる専門医や地方の病院は特に、余裕を持って準備することが必要です。
また、継承による急な院長の交代は、患者、スタッフにとってマイナスなイメージを与えます。継承が必要なタイミングより早く、業者を探し始めましょう。

経営方針や診察スタイルは念入りに確認する

前述の通り、最も多いトラブルは、経営方針の相違や診察スタイルの変更で、それまで勤務していたスタッフや患者が医院に対して不信感を募らせてしまうことです。後継者とスタッフとの間で人間関係のトラブルにつながると、スタッフの離職や、患者離れを引き起こします。
譲渡企業についてよく調べ、その医院の経営方針や理念について院長と後継者で話し合う時間を取り、事前にお互いの方針の認識に差異があるか時間をかけて話し合いましょう。
価値観を共有できる者同士で契約することにより信頼関係も生まれます。

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まとめ

医業承継を成功させるために共通するポイントは、医院の理念や診察スタイルについて差異がないように「継承する側」と「される側」で念入りに話し合い、確認することです。
また、信頼できるM&Aの仲介会社にサポートを依頼することで、双方にとって納得のいく継承が実現しやすくなります。

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