事業承継に向けた相続対策とは?事業承継税制も解説

2024年5月13日

事業承継に向けた相続対策とは?事業承継税制も解説

このページのまとめ

  • 経営者が亡くなった後の事業承継は相続を伴い、後継者に相続税が発生する
  • 事業承継を成功させるためには、早いうちから相続対策を行うことが大切
  • 事業承継における相続対策には遺言書の作成や生前贈与の活用、株価対策などがある
  • 相続税や贈与税の負担を軽減するためには、事業承継税制を活用しよう

事業承継というと、遠いことと考えている方も多いでしょう。しかし、事業承継を成功させるためには早めの対策が必要です。特に、相続による事業承継を成功させるためには、遺言書の作成や生前贈与の活用、株価の引き下げや個人保証の解消など、やるべきことは多数あります。

本記事では、相続による事業承継対策を進める重要性や相続対策について解説します。事業承継税制についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

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事業承継とは

事業承継とは、会社や事業を後継者に引き継ぐことです。事業承継では、経営者が交代するだけではなく、会社の経営資源も承継する必要があります。

まずは、事業承継の種類と事業承継の手段について見ていきましょう。

事業承継の3つの種類

事業承継には、大きく以下の3つがあります。

種類概要
親族内承継経営者の子どもや孫など、親族に引き継ぐこと
親族外承継役員や共同創業者など、親族ではない社内の人間に引き継ぐこと
第三者承継社外の第三者に引き継ぐこと

社内に後継者がいる場合は、親族内承継か親族外承継を選択することとなります。一方、社内に後継者がいない場合は第三者承継、つまりM&Aによる事業承継を検討しましょう。

事業承継の手段

事業承継の手段には、贈与、相続、譲渡(売買)の3つがあります。
それぞれの概要とかかる税金は以下のとおりです。

手段概要発生する税金
贈与贈与契約により、後継者に対して無償で自社株式を譲り渡す方法

主に親族内承継で利用される
贈与税
相続経営者が亡くなった後、遺言書や遺産分割協議などによって、後継者に対して株式を譲渡する方法相続税
譲渡(売買)株式を対価と引き換えに譲渡(売買)する方法

親族外承継や第三者承継で利用される
所得税や法人税など

相続と事業承継の違い

相続は、死亡した人の財産を相続人が引き継ぐことです。

一方、事業承継は経営者が存命しているか死亡しているかにかかわらず、後継者に会社や事業を引き継ぐことです。経営者が死亡したことによって行われる事業承継は、相続を伴います。

また、相続を伴う事業承継では、後継者に対して相続税が課せられるのが特徴です。一方、経営者が存命している中で行う事業承継については、後継者に贈与税が課せられます。

関連記事:事業承継とは?成功に向けたポイント方法や進め方を解説

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相続による事業承継対策を進める重要性

相続による事業承継というと、経営者が亡くなった後に進めると思っている方も多いでしょう。

しかし、実は事前の事業承継対策が欠かせません。生前に対策をしていなかった場合、自身が保有する株式は法定相続人に法定相続分相続されます。その結果、意図していた事業承継ができなくなってしまうリスクが高いです。

また、相続による事業承継には相続税がかかります。生前に税金対策を行わなかった結果、多額の相続税が課せられ、後継者に大きな負担をかけてしまう可能性があります。

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事業承継に向けてやるべき相続対策

事業承継に向けて相続対策を行いたい場合は、以下の5つに取り組みましょう。

  • 相続に備えて遺言を作成する
  • 計画的に生前贈与を行う
  • 株価を引き下げる
  • 経営者の個人保証や担保を解消する
  • 事業承継税制を活用する

それぞれ解説します。

相続に備えて遺言を作成する

1つ目は、相続に備えて遺言を作成することです。

遺言を作成することで、特定の推定相続人に特定の遺産を相続させられます。つまり、後継者には会社の株式を相続させ、それ以外の財産を別の推定相続人に相続させることが可能です。

また、遺言を残すことで、相続人による遺産分割協議によって自社株が分散してしまうリスクも回避できます。

計画的に生前贈与を行う

2つ目は、存命のうちに後継者に株主や資産を贈与する方法です。後継者に計画的に贈与することで、相続税負担を軽減できる可能性があります。

その際は、1年あたりの贈与額が110万円以下になるよう調整しましょう。贈与税は、1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を引いた残額に対してかかります。つまり、1年間の贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。

参照元:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

株価を引き下げる

3つ目は、株価の引き下げです。相続税の税額は株価の影響を受けるため、株価を引き下げることで税額も下げられる場合があります。

具体的には、以下のような方法が効果的です。

  • 役員に退職金を支払う
  • 生命保険に加入して会社の資産を減少させる
  • 事業承継前に設備投資を行う
  • 不良債権を処分する
  • 不動産を購入する

ただし、過度な対策は不当とみなされる恐れがあるため、適切な範囲内で対策しましょう。

経営者の個人保証や担保を解消する

4つ目は、経営者の個人保証や担保を解消することです。

特に中小企業の場合、金融機関からの借り入れに経営者の個人保証がついていたり、資産に担保を設定していたりするケースが見られます。

事業承継の際は、個人保証や担保についても承継しなければなりません。しかし、後継者が引き継ぐために十分な資産を持っていない、あるいは後継者が引き継ぎをためらい、事業承継に失敗してしまう場合があります。

個人保証や担保によって事業承継に失敗するリスクを避けるためには、事業承継前に、早めに金融機関と協議しておくとよいでしょう。借入金がそれほど大きくない場合は、経営者が役員退職金を使って完済することも検討できます。

事業承継税制を活用する

5つ目は、事業承継税制を活用する方法です。事業承継税制では、一定の条件を満たすことで贈与税や相続税の納税が猶予され、のちに免除されます。

事業承継税制については、次の章で詳しく解説します。

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相続税や贈与税が猶予される事業承継税制とは

事業承継税制とは、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度のことです。

一定の要件を満たしている場合、贈与税や相続税の納税が猶予されます。そして、後継者(2代目)から次の後継者(3代目)に株式を承継した場合、あるいは2代目が死亡した時などに、猶予された税金が免除される仕組みです。

事業承継税制には、中小企業が対象となる「法人版事業承継税制」と、個人事業が対象となる「個人版事業承継税制」があります。以下では、法人版事業承継税制について見ていきましょう。

事業承継税制における一般措置と特例措置

事業承継税制には、一般措置と特例措置があります。

特例措置は、2018年度の税制改正によって新たに定められた措置です。事業承継税制の活用を促進することを目的としており、一般措置に比べて受けられる恩恵が大きいという特徴があります。

一般措置と特例措置の違いは以下のとおりです。

項目一般措置特例措置
特例承継計画の提出不要必要
適用期間なし2018年1月1日から2027年12月31日まで
対象株数総株式数の3分の2まで全株式
納税猶予割合贈与:100%
相続:80%
100%
承継パターン複数の株主から1人の後継者への贈与または相続複数の株主から最大3人の後継者への贈与または相続
雇用確保要件承継後5年間、平均8割の雇用を維持する弾力化(実質撤廃)
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除なしあり
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与60歳以上の者から18歳以上の者への贈与

参照元:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」

事業承継税制の対象者

事業承継税制の対象となる企業は、以下のいずれにも該当しない企業です。

  • 上場会社
  • 中小企業者に該当しない会社
  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)

特例措置の対象となるためには、さらに2024年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、2027年12月31日までに自社株を後継者に贈与または相続する必要があります。

参照元:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」

相続税の猶予・免除を受けるための要件

相続税の猶予・免除を受けるためには、先代経営者と後継者それぞれが要件を満たさなければなりません。

先代経営者である被相続人の要件は以下のとおりです。

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 相続開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

後継者である相続人の要件は以下のとおりです。

  • 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること
  • 相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • 相続開始の時において後継者が有する議決権数が、次のAまたはBに該当すること(特例措置の場合)

 A.<後継者が1人の場合>

  • 後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

 B.<後継者が2人または3人の場合>

  • 総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
  • 相続開始の直前において、会社の役員であること(被相続人が70歳未満で死亡した場合および、後継者が都道府県知事の確認を受けた特例承継計画に記載されている者である場合を除く)

参照元:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」

贈与税の猶予・免除を受けるための要件

贈与税の猶予・免除を受ける際も、先代経営者と後継者それぞれが要件を満たす必要があります。

先代経営者である贈与者の要件は以下のとおりです。

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
  • 贈与の時において、会社の代表権を有していないこと

後継者である受贈者は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 贈与の時において、会社の代表権を有していること
  • 贈与の日において、18歳以上であること
  • 贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
  • 贈与の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  • 贈与の時において、後継者の有する議決権数が、次のAまたはBに該当すること(特例措置の場合)
    A.<後継者が1人の場合>
     ・後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
    B.<後継者が2人または3人の場合>
     ・総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

参照元:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」

相続税や贈与税が免除される場合

猶予されていた贈与税や相続税が免除されるのは、主に以下の2つの場合です。

  • 後継者(2代目)が次の後継者(3代目)に株式等を贈与し、次の後継者(3代目)が事業承継税制の適用を受けた場合
  • 後継者(2代目)に相続が発生した場合

つまり、相続税や贈与税の猶予を受けるための要件を満たし続けた状態で、2代目から3代目に事業承継を行うことが求められます。
また、納税猶予期間が始まった後も、定期的に所定の手続きを行わなければなりません。

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事業承継税制を利用するメリット

事業承継税制を利用するメリットは以下のとおりです。

  • 後継者に負担をかけることなく事業承継を行える
  • 株価対策を行う必要がなくなる
  • 親族外承継にも利用できる

事業承継税制を活用することで、相続税や贈与税が猶予・免除されます。株価対策を行うことなく、後継者への負担を軽減できるのが魅力です。

また、事業承継税制は親族外承継にも適用されるため、役員や社外の第三者にかかる負担も軽減できます。

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事業承継税制の注意点

事業承継税制には多くのメリットがある一方、以下のような点には注意が必要です。

  • 取消事由に該当すると利子税が発生する
  • 猶予開始後も都道府県や税務署への報告が必要

それぞれの注意点について解説します。

取消事由に該当すると利子税が発生する

事業承継税制には取消事由があり、該当する場合は、猶予されている税金に加えて利子税の支払いが必要になります。

代表的な取消事由は以下のとおりです。

  • 制度の適用を受けた非上場株式等について、その一部を譲渡等した場合(免除対象贈与を除く)
  • 後継者が会社の代表権を有しなくなった場合
  • 会社が資産管理会社に該当した場合(一定の要件を満たす場合は除く)
  • 基準日における雇用の平均が、承継時の8割を下回った場合(特例措置の場合、猶予は継続されるが理由報告が必要)

つまり、事業承継税制が適用される要件を満たさなくなった場合は、税金の猶予がなくなり、利子税と合わせて税金を納付しなければなりません。

猶予開始後も都道府県や税務署への報告が必要

納税猶予開始期間から5年間は、一定の要件を満たしていることを証明するため、毎年都道府県庁と税務署に報告する必要があります。手続きの手間がかかるのが難点です。
また、5年が経過した後も、3年に1度税務署に届出を行わなければなりません。

税務署には継続届出書と添付書類を、都道府県庁には年次報告書を提出しましょう。

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事業承継税制を利用するなら専門家に相談しよう

「事業承継税制を利用したい」「将来の事業承継に備えて相続対策を行いたい」という場合は、専門家のサポートを受けると安心です。

特に、事業承継税制は利用するための要件や必要な手続きが複雑であり、自社のみで申請するのはハードルが高いでしょう。

事業承継税制をはじめ、事業承継について相談できる代表的な専門家・機関は以下のとおりです。

  • 弁護士や税理士、司法書士、中小企業診断士などの士業
  • 商工会や商工会議所
  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • M&A仲介会社

社内に後継者がおらず、社外の第三者への承継を検討している場合は、M&A仲介会社に相談するとよいでしょう。M&A仲介会社なら、事業承継の相談からM&Aの実行まで、一貫して支援してくれます。

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まとめ

事業承継を成功させるためには、早いうちから事業承継について考え始めることが大切です。後継者に会社の株式を相続させられるよう遺言書を作成する、計画的に生前贈与を行う、株価対策を行う、経営者の個人保証や担保を解消するなど、余裕をもって相続対策を進めましょう。

後継者にかかる相続税や贈与税の負担を軽減したい場合は、事業承継税制の活用が効果的です。しかし、事業承継税制を利用するためには複雑な要件を満たさなければなりません。専門家に相談し、万全の状態で手続きを行うことが大切です。

社内に有望な後継者がいない場合は、M&Aを活用した第三者承継を選択するのも1つの方法です。M&Aについて一貫したサポートを受けたい場合は、M&A仲介会社に相談しましょう。

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