相続対策!事業承継税制を活用して納税の負担を減らそう

2023年5月1日

相続対策!事業承継税制を活用して納税の負担を減らそう

このページのまとめ

  • 事業承継の後継者は、主に相続税もしくは贈与税を支払わなければならない
  • 事業承継の対策をしていないと、相続税や贈与税が高額になって後継者に負担がかかる
  • 生前に事業承継税制の活用などの節税対策を進めておくことが大切
  • 事業承継税制とは贈与税や相続税の支払いを猶予する制度で、免除になることもある
  • 事業承継税制は条件が複雑であるため、専門家のアドバイスを受けることがおすすめ

「高額な相続税や贈与税が心配…」「事業承継税制とは?」とお困りの方も多いのではないでしょうか?事業承継の対策をしないと相続税や贈与税の負担が大きくなり、後継者を悩ませてしまう恐れもあります。経営者は事業承継に向けて、早めに準備を始めることが大切です。

本コラムでは、事業承継の節税対策を紹介。生前に準備を行い、相続税や贈与税の負担を減らしましょう。また、事業承継税制の概要やメリット・デメリットなどについても解説しています。

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事業承継とは

「事業承継」とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを指します。
会社の経営権や資金、企業理念、知的資産など、経営に関するすべてのものが承継する対象です。

事業承継の方法には親族内に承継する方法のほか、役員や従業員に承継したり、M&Aによって社外の人に承継したりする方法があります。

事業承継にかかる相続税と贈与税

株式譲渡によって事業承継を実施した場合、引き継ぐ株式に対して税金がかかります。
事業承継でかかる主な税金は、相続税もしくは贈与税のどちらかです。

相続税とは

相続税とは、亡くなった人から財産を引き継いだときにかかります。
相続税が課税される条件は、相続した財産の金額から借金や葬式費用を差し引き、差し引いたあとが額が基礎控除額を超えた場合です。

贈与税とは

贈与税とは、個人から金銭や株式、不動産などの財産を受け取ったときにかかる税金です。
贈与額が基礎控除額である110万円を上回った場合、贈与税を納税する義務が発生します。

関連記事:事業承継とは?成功に向けたポイント方法や進め方を解説

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事業承継の対策をしていないとどうなる?

事業承継に取り組んでおらず、何も対策を講じないまま相続および贈与を行った場合、以下の2つの問題につながることがあります。

多額の相続税や贈与税がかかる

節税対策を怠った状態で事業承継をした場合、多額な納税額が後継者に降りかかってしまいます。
相続税・贈与税が今後の経営の負担になったり、納税額を支払えなくなったりと、後継者を困らせることになるでしょう。

相続をめぐって紛争に発展する

遺言書が残されていない場合、通常は法定相続分に従って相続されます。
また、相続人たちの間で遺産分割協議を行い、話し合いで任意の割合を決めることも可能です。

しかし、協議がまとまらなかった場合は遺産分割調停が申し立てられて、裁判所で争うことになるケースも発生します。

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事業承継は早めに着手することが大切

事業承継の準備をしないまま後継者に引き継いでしまうと、金銭面でも人間関係の面でもトラブルが起きやすくなります。

事業承継を考えたら、できるかぎり早めに準備をスタートさせましょう。

生前にできる相続・事業承継の6つの対策法

ここでは、相続における事業承継に向けた対策法を6つ紹介します。

  1. 相続に関する遺言書を作成する
  2. 個人保証や担保を引き継ぐ
  3. 株式を生前贈与する
  4. 株式を譲渡する
  5. 会社の評価額を下げる
  6. 経営承継円滑化法を活用する

相続・事業承継をスムーズに進めるには、生前にしっかり準備しておくことが大切です。
少しずつ取り掛かりましょう。

1.相続に関する遺言書を作成する

相続について紛争が起こらないように、遺言書を作成してください。
遺言書を用意しておけば、相続する人や遺産の内容を指定することが可能です。

ただし、要式を厳密に守らないと遺言書が無効になってしまう恐れがあります。
遺言書を確実なものにするために、公務員である公証人が関わって作成する「公正証書遺言」を作成することがおすすめです。

2.個人保証や担保を引き継ぐ

経営者個人に付随している個人保証や担保がある場合は、後継者に引き継ぐ準備をしていきましょう。
個人保証の変更の可否は金融機関の判断になるため、早い段階で金融機関に相談してください。
協議を進めておく必要があります。

また、完済することが可能なのであれば、返済してしまいましょう。
後継者の負担が少なくなります。

3.株式を生前贈与する

自分が存命のうちに株式や資産を後継者に贈与しましょう。
毎年贈与を行う「連年贈与」をする経営者も多いようです。

なお1年あたりの贈与額が110万円を超えると、贈与税がかかってしまいます。
連年贈与をする際には、贈与税が課税されないよう、毎年110万円以下の金額で贈与を行うことがおすすめです。

また、毎年一定額を贈与すると「定期贈与」とみなされてしまい、贈与税の課税対象になります。
生前の贈与を定期贈与とみなされないように、贈与のたびに贈与契約書を作成し、都度1回限りの贈与ということを明確にすると良いでしょう。
そのほか、贈与する金額や時期を毎年同じにしないことも、有効な対策法です。

4.株式を譲渡する

保有する株式を後継者に譲渡しましょう。

株式を購入するための資金は必要ですが、譲渡によって取得した株式は相続財産になりません。
遺留分減殺請求の対象にならないことがメリットです。

5.会社の評価額を下げる

会社の評価額を下げる方法には、以下のようなものがあります。

  • 自己株式を取得する
  • 社員へ決算賞与を支給する
  • 役員に退職金を支給する
  • 資産組み換えをする

会社の評価額を下げておくと、節税対策になります。

6.経営承継円滑化法を活用する

経営承継円滑化法を活用することで、相続や事業承継がスムーズに進めることが可能です。
支援内容には「事業承継税制」や「金融支援」などがあります。

経営承継円滑化法については、次項で詳しく説明します。

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経営承継円滑化法とは

「経営承継円滑化法」とは、中小企業の事業承継を後押しするために制定された法律です。
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」とも呼ばれます。

経営承継円滑化法を有効活用し、事業承継をスムーズに進行しましょう。
経営承継円滑化法の支援内容は主に以下の4つです。

  1. 事業承継税制
  2. 金融支援
  3. 所在不明株主に関する会社法の特例
  4. 遺留分に関する民法の特例

なお、各支援に関する申請マニュアルや申請様式は、中小企業庁の「経営承継円滑化法による支援」に掲載されています。
必要に応じてダウンロードしてください。

それでは、各支援内容について解説します。

1.事業承継税制

「事業承継税制」とは、一定の要件を満たした事業所に対し、引き継ぐ資産にかかる贈与税や相続税の支払いを猶予・免除する制度です。
事業承継税制には個人向けのものと法人向けのものがあります。
要件を満たした者が申請を行い、認定を受けると制度が適用されます。

さらに詳しい情報については後述しますのでご確認ください。

2.金融支援

「経営承継円滑化法における金融支援」とは、後継者が事業承継するために要する資金の調達をサポートする制度です。
都道府県知事の認定を受けることにより、融資や信用保証の特例が適用されます。

経営承継円滑化法における金融支援の類型は、「経営を承継したあとに必要な資金」「これからほかの中小企業者の経営を承継するにあたって必要な資金」「認定日から経営の承継の日までに現経営者の保証が付されている借り入れを借り換えるための資金」の3つです。

3.所在不明株主に関する会社法の特例

「所在不明株主に関する会社法の特例」とは、所在が不明になっている株主が保有する株式の取得にかかる手続きの時間を短縮できる制度です。

「経営困難要件」と「円滑承継困難要件」を満たし、都道府県知事の認定を受けられれば、会社法の特例が適用されます。
特例を受けると、通常だと5年かかる手続きの時間を1年に短縮することが可能です。

4.遺留分に関する民法の特例

「遺留分に関する民法の特例」とは、遺留分をめぐって起こる紛争や事業用資産の分散を防ぐための制度です。

遺留分に関する民法の特例を受けると、後継者に引き継がれる株式などの事業用資産の価額に関して、遺留分を算定するための財産の価額から除外する「除外合意」を行うことができます。
また、遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を、合意時の時価に固定する「固定合意」を行うことも可能です。

遺留分に関する民法の特例を受けるためには、定められた要件を満たし、後継者とすべての推定相続人の合意を得たうえで、経済産業大臣の確認・家庭裁判所の許可を受けてください。

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事業承継税制とは

「事業承継税制」とは、承継する資産に関する贈与税および相続税の納税を猶予・免除する制度です。
経営承継円滑化法に基づく認定を受けることによって適用されます。

事業承継税制には、会社の後継者が対象となる「法人版事業承継税制」と、個人事業の後継者が対象となる「個人版事業承継税制」があります。

個人版事業承継税制

「個人版事業承継税制」とは、後継者が先代の経営者から個人の事業用資産を継承した場合に課税される贈与税および相続税を猶予する制度です。
経営承継円滑化法の認定を受けた、青色申告に係る事業の後継者に適用されます。
後継者が死亡した場合は、猶予されている贈与税や相続税の納税が免除となります。

法人版事業承継税制

「法人版事業承継税制」とは、経営承継円滑化法の認定を受けた非上場企業の資産を継承した際にかかる贈与税および相続税の納付を猶予する制度です。
後継者の死亡等があった場合は、猶予を受けている贈与税・相続税は免除されます。

法人版事業承継税制の特例措置

中小企業の事業承継を促進するため、より利用しやすい「法人版事業承継税制の特例措置」が2018年の税制改正で設けられました。
特例措置の適用期限は2018年1月1日から2027年の12月31日までです。

法人版事業承継税制の特例措置を利用するためには、2024年の3月31日までに特例承継計画を策定・提出し、確認を受ける必要があります。
そのうえで、会社・受贈者・贈与者・担保提供に関する要件を満たすことも必要です。

法人版事業承継税制の特例措置では、後継者の数、雇用確保要件、相続時精算課税の適用範囲などの条件が緩和されました。
そして、対象となる株数や相続税の納税猶予割合が増加しています。
さらに、事業の継続が困難な事由が生じた場合、譲渡の対価額に基づいて再計算した納税猶予税額を納付し、当初の納税猶予税額との差額は免除されます。

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事業承継税制を活用する3つのメリット

事業承継税制を活用するメリットは、主に以下の3つです。

  1. 相続税や贈与税の負担が軽減される
  2. 株価対策をしなくて済む
  3. 事業承継の話を切り出しやすくなる

うまく活用すれば負担や手間を減らせて、事業承継を円滑に進めることができます。

1.相続税や贈与税の負担が軽減される

事業承継税制を活用すると、相続税や贈与税の納税が猶予されます。
一度に多額の納税をしなくてもよくなるので、負担が軽くなるでしょう。

また、特例措置では相続税や贈与税の負担額が実質0円になることもあります。
経営の負担にもなりうる相続税・贈与税の負担がなくなることは、大きなメリットだといえます。

2.株価対策をしなくて済む

事業承継を検討する際、後継者の納税の負担を減らすために会社の株式の評価額を下げる方法をとることがあります。
しかし、相続税・贈与税の猶予および免除を受けることができれば、株価対策に躍起になる必要がありません。
株価対策にまつわる煩雑な手続きをしなくて済むのは、事業承継税制を利用するメリットの1つです。

3.事業承継の話を切り出しやすくなる

事業承継税制の特例に期限が設けられていることが、事業承継の話を切り出すきっかけになります。

事業承継税制の特例を受けるためには、2024年の3月31日までに特例承継計画を作成して提出することが必要です。
後継者側から現在の経営者に事業承継の話をすることは躊躇されがちですが、「期限までに計画書を作って提出しなければならない」という名目があれば、話を切り出しやすくなります。

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事業承継税制を活用する3つのデメリット

事業承継税制を活用する場合、デメリットが発生することもあります。

  1. 制度が複雑で分かりづらい
  2. 申請手続きが大変
  3. 取消事由に該当すると利子税が発生する

デメリットをあらかじめ知っておき、事業承継税制を有効活用できるように気を付けましょう。

1.制度が複雑で分かりづらい

事業承継税制が複雑であり、専門家ではない一般の人にとって分かりづらいことはデメリットです。

特例措置は一般措置と比べると要件が緩和されているとはいえ、会社・受贈者・贈与者・担保提供と、多岐にわたって要件が定められています。
そのうえ、守らなければいけないのは最初だけではなく、継続して要件を満たす必要があります。

事業承継税制の複雑な仕組みを理解しなければならないことは、活用するうえで大変だと感じる部分になるでしょう。

2.申請手続きが大変

煩雑な手続きを踏まなければならないことは、事業承継税制を利用するデメリットといえるかもしれません。

事業承継税制を利用するためには、さまざまな申請書や証明書を提出することが必要です。
また、法人版事業承継税制の特例措置を受ける場合は、特例承継計画も提出しなければなりません。

さらに、事業承継税制が適用されたあとも、報告書・届出書を都道府県知事および税務署へ継続的に提出する必要があります。

3.取消事由に該当すると利子税が発生する

取消事由に該当してしまうと、本来納める納税額よりも高い税金を支払わなければならなくなることは、事業承継税制を利用するときのリスクになります。

もし事業承継税制の適用を受けたあとに取消事由に該当した場合、利子税を加えて支払わなければなりません。
利息は猶予を受けていた期間に対してかかるので、利子税がかなり高くなってしまうこともあります。

事業承継税制に関するデメリットを解消するためには、専門家のサポートを受けることがおすすめです。
顧問契約を結んでいる税理士や公認会計士に事業承継税制について尋ねてみましょう。

ただし、すべての税理士・公認会計士が事業承継税制に詳しいわけではありません。
事業承継税制に詳しい外部サービスを利用することも選択肢の1つに入れておくと良いでしょう。

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事業承継の5つの相談先

事業承継の相談先には、主に以下の5つがあります。

  1. 事業承継・引継ぎ支援センター
  2. 税理士や公認会計士
  3. 弁護士
  4. 商工会や商工会議所
  5. M&Aの仲介会社

事業承継には専門的な知識やノウハウが必要です。
事業承継をトラブルなく円滑に進行するために、サポートを受けることを検討してみてください。

1.事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業の事業承継を支援することを目的に設置された公的相談窓口です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。

事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口は日本各地に設置されており、事業承継に関する情報の提供や、専門的なアドバイスを受けることが可能です。

事業承継・引継ぎ支援センターは無料で利用できることもあり、他のサポートを受けながらセカンド・オピニオンとして事業承継・引継ぎ支援センターを活用する人もいます。

2.税理士や公認会計士

税理士や公認会計士は、税金のことを詳しく知っている士業です。
事業承継を行うにあたり、特に節税対策について有益なアドバイスをしてくれるでしょう。

税理士や公認会計士は、事業承継税制を利用するために必要な書類の作成や、相続税・贈与税の申告も手伝ってくれます。
そのほか、生前贈与や株式の価値算定なども支援します。

ただし、税理士・公認会計士が事業承継に疎いケースもあるので注意が必要です。
税理士・公認会計士が事業承継に詳しくない場合は、別の支援機関の利用を検討しましょう。

3.弁護士

弁護士は法律のスペシャリストです。
法的なリスクマネジメントをしてくれることが期待できます。

また、事業承継の過程では多くの書類を作成する必要があります。
弁護士は法的な観点で書類をチェックできるので、書類の不備を防止することが可能です。

そのほか、生前の相続に関する対策として遺言書を作成する場合、弁護士が的確なアドバイスをくれるでしょう。

4.商工会や商工会議所

商工会や商工会議所は、地域経済や中小企業の活性化の実現のために活動している団体です。
中小企業の事業承継を支援することも、主な活動のうちの1つです。

細かなサポート内容は各拠点によって異なりますが、事業承継の専門家を紹介してくれたり、低利で融資をあっせんしてくれたりします。
また、地域の中小企業の経営者が集まっているので、事業承継を経験した人から話を聞ける機会もあるでしょう。

5.M&Aの仲介会社

M&Aの仲介会社は、事業承継をはじめとするM&A全般を支援する会社です。
いくつもの事業承継を成功に導いてきたM&Aの仲介会社であれば、豊富な経験に基づいたアドバイスをしてくれるでしょう。

M&Aの仲介会社には、事業承継などのM&Aに関する専門的な知識を持っているコンサルタントが所属しています。
また、士業との連携をとっている仲介会社もあります。
事業承継を行うにあたって求められるあらゆる機能を仲介会社が備えているため、複数箇所に相談する必要はありません。
事業承継の相談から完了まで、一貫した支援サービスを受けられることはM&A仲介会社を利用する大きなメリットです。

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