M&Aのメリットとデメリットを売り手・買い手別にわかりやすく紹介!

2024年7月30日

M&Aのメリットとデメリットを売り手・買い手別にわかりやすく紹介!

このページのまとめ

  • M&Aには多数のメリットがあり、さまざまな目的から実施されている
  • M&Aの件数は年々増加しており、活発化しているといえる
  • M&Aの売り手のメリットは「後継者問題の解決」や「従業員の雇用維持」など
  • M&Aの買い手のメリットは「事業拡大」や「経営資源の獲得」、「許認可の承継」など

「M&Aを行うことによるメリットには何がある?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
M&Aによる譲受企業(売り手)のメリットは、後継者問題を解決できたりノウハウや技術を獲得できたりするなどです。
また、M&Aによる譲受企業(買い手)は、事業の多角化や事業拡大、人材の獲得などがメリットとして挙げられます。

本コラムでは、M&Aのメリットを売り手と買い手の立場別で詳しく紹介します。

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M&Aとは

「M&A(エムアンドエー)」は「Merger and Acquisition」を略した言葉です。
M&Aとは、複数の企業を一つにする「合併」と、他社の事業や経営権を取得する「買収」のことを表します。

M&Aは、企業の経営戦略や後継者不足問題の解消、希少なノウハウの取得、経営者の早期リタイアなど、さまざまな理由で実施されます。

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M&Aの市場動向

日本企業の大多数を占める中小企業に関するデータをもとに、M&Aの市場動向について読み解いていきます。

中小企業庁の『2018年版 中小企業白書』と『2023年版 中小企業白書』にあるデータを見ると、M&A市場は活気づいているといえます。

1985年から2022年までのM&A件数の推移は、下記のグラフのとおりです。

1985年から2022年までのM&A件数の推移のイメージ

※中小企業庁の『2018年版 中小企業白書』『2023年版 中小企業白書』をもとにグラフを作成

コロナ禍の影響により、2020年には一時的に3,730件に件数が下落しました。
しかし例外的なその年を除外すれば、2022年までの10年間、M&Aの件数は右肩上がりで増えていることになります。
2022年には、過去最多の4,304件をマークしました。

近年、公的なM&A支援制度や優遇税制、補助金、ガイドライン・マニュアルなどが整備されています。
さらに、国のM&A支援機関である事業承継・引継ぎ支援センターが全国47都道府県に敷設されています。
そのほか、民間企業によるM&Aの支援機関も増加中です。

M&Aのニーズの高まりとサポート体制の充実に後押しされ、M&Aの件数は今後ますます増加していくでしょう。

参照元:
独立行政法人 中小企業基盤整備機構『日本を支える中小企業
中小企業庁『2018年版 中小企業白書』第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命
中小企業庁『2023年版 中小企業白書』第2章 新たな担い手の創出
中小企業庁『事業承継の支援策

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【売り手側】M&Aの8つのメリット

M&Aの売り手側(譲渡企業)が得られるメリットは、主に下記の8つです。

  • 後継者不足の問題を解消できる
  • 従業員の雇用を確保できる
  • 技術・ノウハウを残せる
  • スケールメリットを得られる
  • 事業の選択と集中がかなう
  • 早期リタイアができる
  • 創業者利益が手に入る
  • 個人保証から解放される

売り手のM&Aのメリットについて、それぞれ解説します。

1.後継者不足の問題を解消できる

M&Aの売り手企業のメリットの一つに、後継者不足によって生じる問題を解消できることが挙げられます。

後継者問題は「経営者の高齢化が進む一方で、跡継ぎが見つからない」という、昨今の日本で深刻化している現象です。
株式会社帝国データバンクの調査によると、2023年の後継者不在率の全国平均は53.9%です。

後継者不在率は改善傾向をみせていますが、いまだ半数を超える経営者が後継者問題に悩まされています。

M&Aはその解決策として利用されています。
M&Aを実施することによって、事業承継をかなえられます。

参照元:株式会社帝国データバンク『特別企画:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)』(2023年11月21日)

2.従業員の雇用を確保できる

後継者が見つからなかったり業績不振に陥ったりして廃業することになった場合、従業員は雇用を失います。
しかし、M&Aによって他社に会社を売却することができれば、それを免れることが可能です。

従業員の承継を契約内容に含む契約を結び、従業員を譲渡先に引き継いでください。
従業員は雇用を失うことなく、譲渡先の企業で勤務し続けることができます。
会社に貢献してくれていた従業員を守れることは、M&Aの大きなメリットだといえるでしょう。

3.技術・ノウハウを残せる

M&Aで譲渡することのメリットの一つは、会社が持っている技術やノウハウを残せることです。
廃業になれば失われてしまう技術・ノウハウを、譲渡先に承継することで存続させられます。

4.スケールメリットを得られる

M&Aによって会社を売却して大手企業の傘下に入れば、スケールメリットを得ることが可能です。
大手にグループインすることで、企業としての信用が高まったり、コスト削減できたりするなどのメリットを得られます。

5.事業の選択と集中がかなう

事業の選択と集中にも、M&Aが活用できます。
採算がとれていない事業や、非中核事業をM&Aによって売却しましょう。
売却益を得られるうえ、資金や人員などのリソースを注力したいほかの事業に投資できるようになります。

6.早期リタイアができる

経営者が早期リタイア(アーリーリタイア)できることも、M&Aで会社を売却するメリットの一つです。
「早期リタイア」とは、定年を迎えるよりも早い段階で退職することを指します。

M&Aを実施することにより経営権を移行させれば、会社を背負う責務から解放されることになります。
早期リタイア後に第2の人生を歩むこともできるでしょう。

7.創業者利益が手に入る

創業者利益を獲得できることも、M&Aで売却するメリットです。
株式譲渡などのM&Aの手法を用いて創業者が株式を譲り渡した場合、創業者利益を手に入れられます。

8.個人保証から解放される

M&Aのメリットの一つは、個人保証(経営者保証)を解除できる可能性があることです。
個人保証とは、中小企業が企業活動のために融資を受けるケースにおいて、経営者が負う返済義務を意味します。

M&Aの手法や契約内容によっては、経営権の移行とともに個人保証を買い手に承継することが可能です。

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【売り手側】M&Aの4つのデメリット

M&Aの売り手側(譲渡企業)に生じる可能性があるデメリットは、主に下記の4つです。

  • 経営に関する権限が弱まる
  • 取引先や顧客との関係性に影響が出るおそれがある
  • 従業員の待遇が下がるおそれがある
  • 企業文化の統合に手間がかかる

売り手のM&Aのデメリットについて、それぞれ解説します。

1.経営に関する権限が変わる

M&Aで売却を行った場合に生じうるデメリットは、経営権に影響が出ることです。
M&Aのスキームや譲渡内容によっては、経営権を完全に失うこともあります。

M&Aの実施後も経営に携わりたい場合は、経営権を維持できる方法を検討しましょう。

2.取引先や顧客との関係性が悪化するリスクがある

M&Aの売り手側のデメリットは、取引先や顧客との関係性が悪くなるリスクがあることです。
譲受企業の方針により、M&A後に契約内容やサービスの充実度が下がるような変更が発生した場合、取引先や顧客との不和につながるおそれがあります。

こうした事態にならないように、M&Aの検討段階で取引先との契約内容や顧客に提供するサービス内容について、よく話し合いましょう。

3.従業員の待遇が悪化する可能性がある

M&Aで売却を行うときのデメリットとして、従業員の待遇が悪化する可能性があることが挙げられます。

M&Aによって従業員の承継が発生する場合、ほとんどのケースにおいて、従業員の待遇は向上します。
しかし、M&A後に従業員の待遇が下げられることもありえます。
待遇の悪化は、従業員のモチベーション低下や退職を引き起こすおそれがあります。

M&Aを行う前の交渉段階において、従業員の待遇について譲受側としっかり話し合いましょう。

4.企業文化のミスマッチが起こるおそれがある

M&Aで売却するときのデメリットの一つは、企業文化が合わない可能性があることです。
ミスマッチが起こると、従業員の不満が募ったり、シナジー効果が発揮できなかったりすることもあります。

M&Aを検討する際は、譲渡先の企業文化や経営の方向性などをよく確かめてください。
自社の企業文化との相性が良いかどうかも、相手選びの判断基準に加えましょう。
また、M&A後も独立性を保持できるスキームを選ぶこともおすすめです。

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【買い手側】M&Aの8つのメリット

M&Aの買い手側(譲受企業)が得られるメリットは、主に下記の8つです。

  • 事業を多角化できる
  • 低リスクで新規参入がかなう
  • 事業を拡大できる
  • 優れた人材を獲得できる
  • 希少な技術・ノウハウを得られる
  • 相手のブランド力を活用できる
  • 許認可を引き継ぐことができる
  • 経営資源を獲得できる

買い手のM&Aのメリットについて、それぞれ解説します。

1.事業を多角化できる

M&Aを活用するメリットは、事業を多角化できる点です。

M&Aでは、他社の事業を取得できます。
自社にまだない分野の事業を取得して事業を多角化することで、利益を上げたりリスクを分散させたりすることが可能です。

2.低リスクで新規参入がかなう

新規参入するときのリスクを下げられることも、M&Aで買収を行うメリットの一つです。

本来であれば、新たに事業を立ち上げるときには多くの手間と費用が発生します。
そのうえ、経験がない分野であるため、赤字を計上したり競争に負けたりするリスクも高いでしょう。

M&Aを実施することですでに好調な事業を買収すれば、新規参入にかかるコストをカットできるほか、事業失敗のリスクも下げることができます。

3.事業を拡大できる

M&Aで会社や事業を買収するメリットは、事業を拡大できることです。

自社の属する業界および業種の会社・事業を取得すれば、市場におけるシェアを広げられます。
また、事業範囲を広げたい場合、対象の地域で事業を営んでいる会社をM&Aで買収することで、エリア拡大を果たすことも可能です。

4.優れた人材を獲得できる

M&Aを行うメリットの一つは、譲渡企業で働いている優れた人材を獲得できることです。
M&Aのスキームや契約内容によっては、相手の企業に所属している従業員も承継できます。

本来であれば、優秀な人材を育てるには研修や経験を積み重ねてもらう必要があります。
しかしM&Aを活用すれば、すでに即戦力を持つ人材を迎え入れることができます。

5.希少な技術・ノウハウを得られる

M&Aを行うメリットは、相手企業が保有する技術・ノウハウが手に入れられることです。
自社にない技術・ノウハウを獲得することができれば、事業を飛躍的に成長させられたり、新たな分野を開拓できたりと、会社の可能性を広げられます。

6.相手のブランド力を活用できる

M&Aで買収するメリットの一つは、ブランド力を得られることです。

本来、ブランドを確立するためには莫大な時間あるいは費用が必要です。
M&Aによって有名な企業や知名度が高い商品を取り扱う企業を買収できれば、そのブランド力を一挙に手に入れられます。

7.許認可を引き継ぐことができる

M&Aで譲受を行うメリットは、許認可を引き継ぐことができる点です。

許認可は種類によっては取得が難しいものもあります。
新事業に参入しようとする際、許認可が参入障壁となって立ちはだかることがあります。
M&Aによって許認可を承継することができれば、円滑に新規参入することが可能です。

8.経営資源を獲得できる

M&Aを行うメリットは、さまざまな経営資源を獲得できることです。

これまでご紹介したように、M&Aで買収することによって、会社の事業や人材、技術・ノウハウ
ブランド力、許認可などを得ることができます。
経営資源を手に入れられれば、スピード感をもって企業を成長させることが可能です。

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【買い手側】M&Aの4つのデメリット

M&Aの買い手側(譲受企業)に生じる可能性があるデメリットは、主に下記の4つです。

  • PMIに時間と労力を要する
  • 債務を引き継ぐリスクがある
  • シナジー獲得に失敗するおそれがある
  • 従業員のやる気が下がる可能性がある

買い手のM&Aのデメリットについて、それぞれ解説します。

1.PMIに時間と労力を要する

M&Aの実施に際してデメリットになりうることは、PMIが煩雑であることです。

「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」とは、M&A実施後にシナジー効果を最大限に生かすために行う統合作業を指します。
PMIを要する項目は多岐にわたり、以下のようなものがあります。

  • 経営体制
  • 組織
  • 経営理念・企業文化
  • 社内ルール
  • 業務上のITシステム
  • 経理・財務・会計
  • 評価基準

これらの統合作業を行うことでシナジー効果が発揮され、M&Aを成功に導くことが可能になります。
M&Aの検討段階からPMIの重要性を認識し、早めの準備を心がけましょう。

2.債務を引き継ぐリスクがある

M&Aで買収を行うときのデメリットは、簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクがあることです。
「簿外債務」とは、財務諸表に記録されていない、隠された債務を意味します。
「偶発債務」とは、将来的に発生するおそれがある債務のことです。

想定外の債務を負うことは、企業の経営にとってかなりの痛手です。
M&A後に簿外債務・偶発債務が発覚し、苦しめられることがないように、デューデリジェンス(DD、買収監査)を実施して、譲渡企業について入念な調査をしましょう。

3.シナジー獲得に失敗するおそれがある

M&Aを実施したにもかかわらずシナジー効果を獲得できなかった場合、M&Aに費やした時間・コストが無駄になってしまいます。
こうなってしまった場合、M&Aは「失敗した」といえるでしょう。

最大限のシナジー効果を獲得するために、M&Aの計画策定からPMIまでの全プロセスについて、綿密なプランを立てて取り組んでください。

4.従業員のやる気が下がる可能性がある

M&Aで生じうるデメリットとして、従業員のモチベーションが下がる可能性があることが挙げられます。
M&Aの実施によって従業員のやる気を著しく削ぐようなことが起こった場合、従業員が退職してしまうおそれがあります。

特に、買収される譲渡側の従業員のやる気に影響が出る可能性が高いです。
従業員のモチベーションを下げないために、M&Aの契約内容やM&A後の従業員の待遇などに配慮しましょう。買い手だからといって一方的に条件を提示するのではなく、譲渡企業とよく話し合ったうえで決定してください。
また、従業員との面談の機会を設けることも有効です。真摯に対応しましょう。

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まとめ

M&Aの売り手側のメリットとデメリットをまとめると、以下のとおりになります。

売り手側のM&Aのメリット

売り手側のM&Aのデメリット

  • 後継者不足の問題を解消できる
  • 従業員の雇用を確保できる
  • 技術・ノウハウを残せる
  • スケールメリットを得られる
  • 事業の選択と集中がかなう
  • 早期リタイアができる
  • 創業者利益が手に入る
  • 個人保証から解放される
  • 経営に関する権限が弱まる
  • 取引先や顧客との関係性に影響が出るおそれがある
  • 従業員の待遇が下がるおそれがある
  • 企業文化の統合に手間がかかる

また、M&Aの買い手側のメリットとデメリットをまとめたものは以下のとおりです。

買い手側のM&Aのメリット

買い手側のM&Aのデメリット

  • 事業を多角化できる
  • 低リスクで新規参入がかなう
  • 事業を拡大できる
  • 優れた人材を獲得できる
  • 希少な技術・ノウハウを得られる
  • 相手のブランド力を活用できる
  • 許認可を引き継ぐことができる
  • 経営資源を獲得できる
  • PMIに時間と労力を要する
  • 債務を引き継ぐリスクがある
  • シナジー獲得に失敗するおそれがある
  • 従業員のやる気が下がる可能性がある

M&Aを行うことで、買い手企業も売り手企業も多くのメリットを得られます。
デメリットが生じないように対策を講じて、M&Aによる恩恵を最大限に受けましょう。

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