このページのまとめ
- 会社譲渡とは、過半数以上の株式を売却して経営権を移転させるM&Aの手法のこと
- 会社譲渡は「株式譲渡」と呼ばれることもある
- 会社譲渡を行うメリットは、売却益が得られることや後継者問題が解決することなど
- 会社譲渡をしても基本的に会社名は変わらず、従業員も働き続けられる
- 支援機関を利用すると、会社譲渡を円滑に進めやすくなる
「会社譲渡とは?」「どう進めれば良いの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
会社譲渡とは、過半数以上の株式を売却して会社の経営権を移転させるM&Aの手法の1つです。多くの場合、支援機関の協力を得ながら相手探しから引き継ぎまで進めていきます。
本コラムでは、会社譲渡の概要やメリット、必要な手続きなどを紹介。また、かかる税金や手数料についても解説しています。会社譲渡に対する理解を深め、実行に向けて動き始めましょう。そのほか、会社譲渡で利用できる支援機関も紹介しているので参考にしてください。
目次
会社譲渡とは
「会社譲渡」とは、会社が保有している株式の過半数以上を第三者に売却することによって、会社の経営権を移転させるM&A手法です。
会社譲渡においては、株式のすべてを売却するケースがほとんどです。株式譲渡によって上がる利益は、株主が受け取ることになります。ほかのM&Aの手法よりも手続きが簡素に済むため、中小企業のM&Aや事業承継においてよく利用されます。
会社譲渡と同じ意味で「株式譲渡」という用語が使用されることがあります。株式譲渡では、会社譲渡と同様に株式を第三者に売却します。ただし、株式譲渡においては、売却する株式の割合が過半数以上とは限りません。売却する株式が過半数を超えない場合は「会社譲渡」と同義にはならないので注意しましょう。
会社譲渡と事業譲渡の違い
「事業譲渡」とは、会社の事業のすべてあるいは一部を第三者に売却するM&A手法です。会社の経営権が移る会社譲渡とは異なり、事業譲渡では事業のみを譲渡します。
また、利益の受取先にも違いがあります。事業譲渡においては、売却することによって得られる利益を受け取るのは会社です。
会社譲渡と会社売却の違い
「会社売却」とは、会社もしくは事業を第三者に譲渡することです。会社売却という言葉は、会社譲渡・株式譲渡・事業譲渡を包括する、広義な意味を示す言葉として使われます。
会社譲渡と会社分割の違い
「会社分割」とは、会社が保有する事業のすべてあるいは一部を切り離してほかの会社に移す、M&Aの手法です。
会社分割には2種類あり、既存の会社に移転させる場合は「吸収分割」と呼び、新設した会社に移転させる場合には「新設分割」と呼びます。
会社譲渡と会社分割の違いは、会社法における組織再編行為に当たるか否かという点です。会社譲渡は株式の売買を伴う取引であるため、組織再編行為には当たりません。一方、会社分割の場合は対価に自社の株式を用いるため、組織再編行為に該当します。
会社譲渡を行う3つの理由
ここでは、会社譲渡を行う3つの理由を紹介します。
1.業績が低迷しているため
会社の業績が低迷していると、会社譲渡が選択肢として挙げられることがあります。自社で行っている事業の業績が振るわない状態が続くと、会社全体の経営状況も悪化してしまう恐れがあります。
負債が積み重なってしまったり、会社の評判が落ちてしまったりする事態も考えられるでしょう。最悪の場合、倒産してしまうかもしれません。そのような事態に陥ってしまう前に会社譲渡をすれば、ある程度の売却額を担保したまま会社を譲れます。
2.生活の資金を得るため
会社譲渡を行う理由の1つは、生活の資金を得るためです。会社譲渡を実施して株式を売却すると、株主である経営者は売却益を受け取れます。
事業の過程で負債(借金)を背負ってしまった場合や、ライフステージの変化によりまとまったお金が必要な場合などにおいては、会社を譲渡して得た利益が生活の支えとなってくれることでしょう。
3.早期退職をするため
経営者が早期退職を望んでいることが理由で、会社譲渡が実施されることがあります。「早期退職」とは、会社で定められている定年よりも前に仕事を辞めることです。早期退職は「アーリーリタイア」と呼ばれることもあります。
早期退職のメリットは、経営者としての重圧から解放されることや、時間ができて好きなことに費やせるようになることなどです。経営者は会社全体に関する責任を背負っているため、簡単には廃業できません。
会社が廃業になれば従業員は路頭に迷い、取引先や顧客にも多大な迷惑をかけるかもしれません。
しかし会社譲渡を実施すれば、会社を存続させたまま早期退職することが叶います。
会社譲渡を行うとどうなる?
ここでは、会社譲渡を行うことによる影響について解説します。「経営権」「従業員」「会社名」の処遇を確認していきましょう。
経営権が譲受会社に移る
会社譲渡を行うと、会社の経営権は譲受側の企業に移ります。会社譲渡後、会社の経営の舵を取るのは譲受会社です。会社譲渡後の経営者は退任するか、あるいは引き継ぎ作業を終えてから退任になります。
従業員が譲受会社に引き継がれる
会社譲渡において、基本的に従業員は全員がそのまま譲受会社に引き継がれます。会社譲渡の時点で解雇される恐れはありません。
会社名は基本的には変わらない
取引先や顧客に混乱を生じさせないよう、継続して同じ会社名を使用することがほとんどです。
ただし、会社名を変えられないわけではありません。たとえば買収先の会社にネームバリューがある場合は、グループ会社であることが分かるように会社名に加えることもあります。
会社譲渡の5つのメリット
会社譲渡のメリットは、主に以下の5つです。
- 後継者問題が解決できる
- 譲渡益が得られる
- 従業員の雇用を守ることができる
- 大企業の傘下で発展できる
- 個人保証や担保から解放される
こちらの項で詳しく説明するので、会社譲渡を検討する際の判断材料にしてみてください。
1.後継者問題が解決できる
会社譲渡を実施することによって、後継者問題を解決できます。「後継者問題」とは、会社の経営を引き継いでくれる候補者がおらず、廃業に追い込まれる事態を指す言葉です。
主な要因は、経営者を希望する人材の不足や経営者の高齢化です。後継者問題は特に中小企業で顕著に現れています。会社譲渡を行う相手を見つけて引き継ぐことができれば後継者問題が解消され、今まで築いてきたノウハウなどを守ることができます。
2.譲渡益が得られる
会社譲渡をするメリットの1つは、株式を売却することによって譲渡益が得られることです。会社譲渡の場合、譲渡益は株主である経営者に入ります。
3.従業員の雇用を守ることができる
もし会社が廃業になってしまったら、従業員は職を失ってしまいます。しかし会社譲渡を成功させることができれば、従業員の雇用を確保できます。会社譲渡では従業員の雇用がそのまま譲受会社に移行されるので安心です。
4.大企業の傘下で発展できる
譲受会社が大企業である場合、大企業の傘下での成長が期待できます。大企業は豊富な資金・経営資源を所有しているケースが多く、投資する価値があると判断されれば、今までにない好条件のなかで事業を発展させることが可能です。
5.個人保証や担保から解放される
会社譲渡においては、株式・資産だけでなく、債権や債務なども引き継がれます。個人保証や担保から解放されることは、経営者にとって大きなメリットといえるでしょう。
会社譲渡の5つのリスク
ここでは、会社譲渡を行ううえで考慮すべきリスクを5つ紹介します。
- 経営上に問題があると破談になる
- ロックアップが設定されることがある
- 会社名が変更されることがある
- 従業員・役員の待遇が悪化することがある
- 条件に合致する相手が見つからない
リスクをあらかじめ知り、対策を講じましょう。
1.経営上に問題があると破談になる
会社譲渡を行う過程で譲渡会社に対して実施される調査において、もし経営上の問題が見つかった場合、破談になる恐れがあります。
経営上の問題とは、たとえば簿外債務や情報漏洩、コンプライアンス違反などです。M&Aの途中で破談になると、それまでに費やした多くの時間を無駄にしてしまいます。会社譲渡が破談にならないよう、経営に関する問題を解消して会社をクリーンな状態にしておきましょう。
2.ロックアップが設定されることがある
会社譲渡において、ロックアップが設定されることがあります。「ロックアップ」とは、譲渡会社の経営者を一定期間会社に残留させる契約のことです。別名「キーマン条項」とも呼ばれ、会社の引き継ぎをするために前・経営者を拘束します。
ロックアップの期間が長すぎると前・経営者のモチベーションが下がり、かえって悪影響を及ぼす可能性があることから、3年ほどに定めることが多いようです。「早期退職をしてゆっくりしよう」「新しく起業しよう」と考えている経営者は注意が必要です。
ロックアップの有無やその期間は合意のもとで決定します。話し合いのなかで双方の考えをしっかりすり合わせましょう。
3.会社名が変更されることがある
会社譲渡を実施しても会社名は変わらないことがほとんどですが、変更すること自体は可能です。
譲受会社の意向により、会社名が変更されることもあります。
ステークホルダーに何の告知もなく会社名が変更された場合、従業員や取引先、顧客などに混乱が生じるかもしれません。もし譲受会社が会社名を変えることを望んでいる場合は、「会社名変更の告知」を会社譲渡のスケジュールにあらかじめ組み込みましょう。事前に説明を行い、納得してもらうことが大切です。
4.従業員・役員の待遇が悪化することがある
会社譲渡の場合は雇用契約がそのまま譲受会社に引き継がれます。そのため会社譲渡時、従業員の待遇は基本的に変わらず、解雇もされません。
しかし、会社譲渡のあとは雇用契約や就業規則が変更される可能性があります。従業員・役員の待遇が悪くなる可能性もゼロではありません。今までともに働いてきた社員が不当な扱いを受けないよう、交渉の際に待遇についてすり合わせておくことが必要です。
また、「相手企業に誠実さがあるか」や「買収後に業績が上がっていく見込みがあるか」などをM&Aが成約するまでに見極めましょう。
5.条件に合致する相手が見つからない
会社譲渡をしようと決断して相手探しをしても、条件に合う譲渡先が見つからないことがあります。
いつまでも相手が見つからず、最悪の場合は廃業になってしまうかもしれません。
もし会社譲渡の相手探しが難航しているのであれば、条件を見直してみましょう。ただし、条件を妥協しすぎると自らが満足できるM&Aから遠ざかる恐れがあるので注意が必要です。
また、譲渡先を探してくれるプラットフォームを利用し、窓口を広げるのも1つの方法です。金融機関やマッチングサイト、M&Aの仲介会社などの支援機関を活用しましょう。
会社譲渡の流れ・手続きの一例
ここでは、会社譲渡の流れ・手続きを紹介します。
今回紹介するのは、株式に譲渡制限がついている場合の流れ・手続きです。非上場会社によく見られるケースです。
- 会社譲渡の支援機関と契約する
- 価値算定を行う
- 譲渡先を探す
- 会社譲渡の承認請求を行う
- 取締役会・株主総会を実施する
- 株式譲渡契約書を締結する
- 株主名簿の書き換え請求を行う
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付を行う
- 会社譲渡が成立する
- 会社譲渡について公表する
- 引き継ぎを行う
必要な手続きは支援機関の利用有無や取引内容によって変わることがあるので、一例として参考にしてください。
それぞれのプロセスについて詳しく解説します。
1.会社譲渡の支援機関と契約する
会社譲渡を実施するためには、専門的な知識が求められます。財務・税務に関する知識のほか、会社法の知識やM&Aに関するノウハウなど、求められる範囲は幅広いです。社内で専門家をそろえることが難しい場合は、M&Aの支援機関を利用しましょう。
支援機関を利用すれば、譲渡先探しや企業価値算定、契約書の作成など、M&Aのあらゆるプロセスをサポートしてくれます。会社譲渡を安心かつスムーズに進められるでしょう。
2.価値算定を行う
譲渡する会社の価値算定を行います。価値算定を行う際は、時価純資産法や類似会社比較法、DCF法などの手法が用いられます。
価値算定において適切な相場を把握することは、会社譲渡をするうえで大切です。相場からかけ離れた売却額を提示してしまった場合、譲受先が見つからなかったり、安く買いたたかれたりする恐れがあります。
自社にとって有意義な会社譲渡にするために、正しく価値算定をしましょう。
3.譲渡先を探す
会社譲渡を行う相手企業を探します。協力会社や取引先などが候補先の場合は、経営者に会社譲渡の話を持ち掛けてみましょう。
会社譲渡を持ち掛けられるような知り合いがいないときは、支援機関を利用するのがおすすめです。国の支援機関や金融機関、マッチングサイト、M&Aの仲介会社などを活用しましょう。
4.会社譲渡の承認請求を行う
譲渡する株式に譲渡制限が設けられている場合は、株式譲渡の承認請求が必要です。「株式譲渡承認請求書」を作成して提出し、承認・不承認を求めます。
5.取締役会・株主総会を実施する
株式譲渡の承認請求を行ったら、承認決議を採るための会合を実施しましょう。株式譲渡承認請求書を受け取った会社が取締役会設置会社である場合は、取締役会を開催します。
株式譲渡承認請求書を受け取った会社が取締役会を設置しない会社である場合は、臨時株主総会を開きます。
6.株式譲渡契約を締結する
会社譲渡の承認請求が認められたら、株式譲渡契約の締結に移ります。「株式譲渡契約書」を作成し、契約を交わしましょう。
株式譲渡の取引内容によって必要な記載事項は変動する可能性があります。トラブル防止のために、契約書は専門的な知識を持つ人にチェックしてもらいましょう。
7.株主名簿の名義書換請求を行う
株式譲渡契約を締結したら、株主名簿の名義書換請求を行います。株式の譲渡側と譲受側が共同して「株式名義書換請求書」を提出し、会社に株主名簿の書き換えを依頼しましょう。
8.株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付を行う
株主名簿記載事項証明書の交付請求と交付を行いましょう。株主名簿記載事項証明書により、新たな株主に株を譲渡されたことが証明されます。
9.会社譲渡が成立する
各種手続きが完了したら、会社譲渡が成立します。
10.会社譲渡について公表する
会社譲渡が成立して実施することが確実になったら、従業員や融資を受けている金融機関などに向けて公表します。大企業の場合は、必要に応じて各メディア対応もしてください。公表時には、会社譲渡に至った理由や今後の経営の展望などを詳しく説明しましょう。
11.引き継ぎを行う
会社譲渡の実施後に行うことは、引き継ぎの作業です。経営権が移ったあとも会社が繁栄していくよう、漏れなく引き継ぎを進めましょう。
会社譲渡の手続きに関する必要書類
ここでは、会社譲渡の手続きをするうえで求められる書類を紹介します。
- 株式譲渡承認請求書
- 取締役決定書
- 臨時株主総会招集の通知
- 臨時株主総会の議事録
- 株式譲渡承認通知書
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
各書類の役割や記載事項を確認し、不備のないようにしましょう。
1.株式譲渡承認請求書
「株式譲渡承認請求書」とは、譲渡制限が定められている株式を譲渡するときに提出する書類です。
提出することで、承認機関に譲渡制限株式を譲渡することを請求します。
株式譲渡承認請求書に記載する基本的な項目は以下のとおりです。
- 日付
- 株式を発行する会社
- 株式を発行する会社の代表者の氏名
- 株主の氏名
- 株主の住所
- 株主の押印
- 株式を譲渡する旨
- 不承認が決議された場合の株主の要望
- 譲渡する株式の種類
- 譲渡する株式の数
- 譲渡先の氏名
- 譲渡先の住所
捺印する印鑑には、株主名簿に登録済みの届出印を押しましょう。届出印が押せない場合は、実印を押したうえで印鑑証明書を添付してください。
2.取締役決定書
「取締役決定書」とは、取締役会を設置していない会社において、会社に関する重要事項を取締役が決定したことを証明する書類です。取締役決定書は、取締役会設置会社における「取締役会議事録」にあたります。
取締役会を設置していない会社では、株式譲渡承認請求書に対する承認決議をするために臨時株主総会を開催しなければなりません。臨時株主総会を開くには、株主総会の招集に関する取締役決定書が必要です。
取締役決定書に記載するべき事項は厳密には定められていませんが、主な内容は以下のとおりです。
- 日付
- 会合の結果
- 決定事項
- 会社名
- 代表取締役の氏名
- 代表取締役の押印
- 取締役の氏名
- 取締役の押印
押印する印鑑について、代表取締役は基本的に会社実印(代表者印)を使用します。
取締役は、認印を押印するのが一般的です。
3.臨時株主総会招集の通知
「臨時株主総会招集の通知」とは、臨時株主総会を開催するために必要な通知書です。
取締役会を設置していない会社において、承認決議をするために臨時株主総会を開催するのであれば、開催の1週間前までに通知を発送しましょう。臨時株主総会招集の通知には、開催日程や場所、議題などを記載してお知らせします。
4.臨時株主総会の議事録
「臨時株主総会の議事録」とは、臨時株主総会で話し合った内容や結果を記録した書類です。臨時株主総会を開催したら、議事録を作成してください。
臨時株主総会の議事録に記載するべき項目は、以下のとおりです。
- 開催日時
- 開催場所
- 議事の経過の要領および結果
- 会社法の規定に基づいて述べられた意見
- 出席した取締役・執行役・会計参与・監査役の氏名または名称
- 議長の氏名
- 議事録の作成者の氏名
議事録は書面で作成するか、電磁的記録をもって作成する必要があります。なお、押印は義務付けられていません。
5.株式譲渡承認通知書
「株式譲渡承認通知書」とは、株式譲渡承認請求書に対する返事となる書類です。株式の譲渡承認をするか否かについて取締役会または臨時株主総会で話し合った結果を、請求を行った株主に通知します。
株式譲渡承認通知書には、以下の内容を記載してください。
- 譲渡承認請求を受けた旨
- 譲渡承認請求を承認した旨
- 譲渡する株式の種類
- 譲渡する株式の数
- 譲渡先の氏名
- 譲渡先の住所
株式譲渡承認通知書は、株式譲渡の承認請求が行われた2週間以内に送りましょう。もし2週間以内に送付できなかった場合、「譲渡承認を決定した」とみなされます。
6.株式譲渡契約書
「株式譲渡契約書」とは、株式を譲渡する際に締結する契約内容が書かれた書類です。譲渡側と譲受側の合意のもとで交わされます。
株式譲渡契約書の記載事項に厳密な定めはありませんが、基本的な記載事項は以下のとおりです。
- 譲渡側の会社情報
- 株主の氏名と住所
- 株式譲渡する株式の銘柄、株数
- 対価の金額、支払い方法、支払い期限
- 株主から除名する際の手続きに関する内容
- 株主名簿の書き換えに関する内容
- 表明保証
- 賠償責任に関する事項
- 契約解除に関する事項
記載事項は株式譲渡の取引内容に沿って、適宜変更してください。
7.株式名義書換請求書
「株式名義書換請求書」とは、株主名簿の記載事項を書き換えるように請求する書類です。株式の譲渡側と譲受側が共同して作成し、会社に提出を行います。
株式名義書換請求書に記載される一般的な内容は以下のとおりです。
- 日付
- 宛名の会社名
- 名義書換を請求する旨
- 株式の種類
- 株式の数
- 株主(現名義人)の氏名
- 株主(現名義人)の住所
- 株主(現名義人)の押印
- 株式の取得者(新名義人)の氏名
- 株式の取得者(新名義人)の住所
- 株式の取得者(新名義人)の押印
捺印には実印を求められることがほとんどです。印鑑証明書を提出する必要がある会社もあります。
8.株主名簿
「株主名簿」とは、会社の株主の一人ひとりに関する基本情報が記載された書類です。すべての株式会社が設立時に作成しなければならない帳簿で、変更があれば適宜更新しています。
株式名簿に法定の様式はありませんが、一般的に記載されている事項は以下のとおりです。
- 株主の氏名または名称
- 株主の住所
- 株主が所有する株式の種類および株式の数
- 各株主の株式の取得日
- 株券番号
株券番号については、実際に株券を発行している株券発行会社の場合に記載します。
9.株主名簿記載事項証明書
「株主名簿記載事項証明書」とは、株式の譲渡側が譲受側に対して「自分が株式の所有者である」ということを証明するための書類です。
株主名簿記載事項証明書には株主名簿に記録されている内容が記載されたうえ、その記載内容が相違ないことを証明する旨が書かれています。
10.株主名簿記載事項証明書交付請求書
「株主名簿記載事項証明書交付請求書」とは、前述の「株主名簿記載事項証明書」の交付を求めることを目的とする書類です。会社に提出することで、株主名簿記載事項証明書の交付を請求します。
株主名簿記載事項証明書交付請求書には、一般的に日付や宛名、証明書の交付を求める旨、株主情報などが記載されます。
会社譲渡でかかる税金
会社(株式)を譲渡すると、その利益に対して税金が発生します。ここからは会社を売却する際に支払わなければならない税金について、ケース別に解説します。
法人にかかる税金
法人が株式を譲渡する場合には、その利益に応じて以下の税金が発生します。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 地方法人税
株式を譲渡して発生した利益は、通常の事業所得と同様に計算されます。国税庁の「No.5759 法人税の税率」によれば、2018(平成30)年4月1日以降、資本金1億円以下の普通法人における法人税の金額は、以下のように設定されています。
- 年800万円以下の部分のみ15.0%(適用除外事業者を除く)
- 年800万円を超える部分は23.2%
そのため一般に、会社譲渡で発生する法人税は「23.2%」と考えてよいでしょう。
ただし適用除外事業者(一般に、過去3年間の平均所得金額が15億円を超える法人)の場合、適用される税率が一部異なります。
また、法人税の他、「法人住民税」「法人事業税」「地方法人税」を含めて考えると、実質的な税金の合計は30.62%~34.59%となります(税額は法人の規模などによって変動)。
個人事業主にかかる税金
個人が株式を譲渡する場合には、その収益に応じて「所得税」「住民税」が発生します。法人の場合と異なり、個人が株式を売却する際には、その収益を他の所得と分けて申告しなければなりません。このような税金は「申告分離課税」と呼ばれています。
国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」によると、課税の対象となる譲渡益は、「譲渡価格-必要経費」の式で算出できます。個人が株式譲渡の譲渡益に対し、支払うべき税金は以下のとおりです。
- 所得税15%
- 住民税5%
つまり個人が株式を譲渡した場合、合計20%の税金の支払いを求められます。また、上場株式と一般株式はそれぞれ分けて申告しなければなりません。
株式の譲渡に際して発生した利益は、通常の確定申告を通して申告します。この場合、分離課税の所得の申告のため「確定申告書の第三表」が必要となります。
参照元:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
※平成25年から令和19年までは所得税に加え、復興特別所得税(基準所得税額に2.1%を乗じた額)を申告・納付する必要があります。
関連記事:会社売却の相場や税金はどれくらい?準備からクロージングまでの流れも解説
会社譲渡時に起こる税務上のトラブル
企業価値に対して正当でない価格で会社を譲渡した場合、税務上のトラブルが発生する場合があります。ここでは会社を譲渡する際に発生する可能性がある、法人税や所得税などに関する問題について解説します。
第三者間取引を実施した場合
実際の企業価値にそぐわない価格で第三者間取引を実施した場合、税務上のトラブルが発生する可能性があります。
例えば本来3億円の株式を、時価の半分以下である1億円で売却した場合、差額の2億円が売り手から買い手への「贈与(売り手が個人の場合)」あるいは「寄附(売り手が法人の場合)」とみなされ得るでしょう。
不当に高い金額で株式を売却した場合も同様で、その場合は買い手から売り手への「贈与」「寄附」として扱われます。また、国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」によると、一定額を超える寄附金の金額は損金の額に算入されないため、注意が必要です。
参照元:国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」
同族会社もしくは関係会社の場合
同族会社や関係会社といった親密な間柄で会社を譲渡する場合でも、同様の問題が生じます。
特に不当に安い価格で会社を譲渡した際には、差額による実質的な収益が「贈与」や「寄附金」と見なされる可能性があるでしょう。
また、同族会社の場合は何らかの形で「不当に税金を安くした」と判断された場合、税務署長の権限で税金の再計算を求められる場合があります(行為計算の否認)。
贈与税の発生や税金の再計算・再課税を防ぐには、企業価値をきちんと算出した上で、不当と見なされる金額での譲渡を避けなければなりません。
ただし双方に合意があり、売却価格が相場をあまりにも逸脱するものでなければ、企業価値より安い価格での会社の売却も可能です。
会社譲渡の相場価格
会社の譲渡額は、株式市場や所有する資産、ブランド力、将来性などのさまざまな要素によって変動します。
そのため、会社譲渡の相場価格がいくらぐらいになるかは一概には言えません。
会社譲渡をした際の売却価格を知りたい場合は、後述の算定方法を用いて計算しましょう。
会社譲渡における売却価格の3つの算定方法
ここでは、会社譲渡における売却価格を算出するための方法を3つ紹介します。
「時価純資産法(修正簿価純資産法)」「類似会社比較法(マルチプル法)」「DCF法」、いずれかの方法を使って売却価格を算定してみましょう。
それぞれの手法の概要は下記のとおりです。
時価純資産法(修正簿価純資産法) | 時価換算した資産から負債を差し引いて企業価値を算出する方法 |
類似会社比較法(マルチプル法) | 過去に行われた取引をもとに企業価値を算出する方法 |
DCF法 | 事業計画書を使い、将来発生しうる利益を加味して企業価値を算出する方法 |
1.時価純資産法(修正簿価純資産法)
「時価純資産法」とは、純資産の時価により会社譲渡の売却価格を導き出す方法です。「修正簿価純資産法」とも呼ばれます。
売却価格と見なす純資産を算出するには、まずは売却予定の会社が保有する資産と負債、両方の時価を出します。そして、資産の時価から負債の時価を引いてください。
時価純資産法は、時価が変動しやすい土地や赤字を出している事業が資産に多く含まれる場合におすすめの方法です。
時価純資産法は、中小企業で採用されやすい「コストアプローチ」という企業価値算出方法の1つです。
2.類似会社比較法(マルチプル法)
「類似会社比較法」は「マルチプル法」とも呼ばれ、譲渡する会社と似ている上場企業の株価を参考にして売却価格を算出する方法です。
企業の評価指標であるEBITDAのほか、財務諸表の売上高や営業利益、当期純利益などを倍率として用いて計算します。
この手法は業種や規模などがよく似ている上場企業があれば有効となりうる一方、類似する企業がない場合には利用しづらい手法でもあります。
類似会社比較法は株価や類似企業などを用いて企業価値を算出する、「マーケットアプローチ」という手法の1つです。
3.DCF法
「DCF法(Discounted Cash Flow 法)」とは、譲渡する会社が将来的に生み出すであろうキャッシュフローから現在価値を割り引くことによって売却価格を算定する方法です。将来性を加味したうえで会社の価値を算定できます。
各年のキャッシュフローは、以下の計算式を用いて計算することができます。
営業利益×(1-税率)+減価償却費-投資額-運転資金増加額
さらにDCF法では、「株主資本コスト」「負債コスト」をそれぞれ加重平均した「加重平均コスト」を、割引率として使用します。
実際の計算はかなり複雑ですので、公認会計士やM&A仲介会社などに依頼をするのも良いでしょう。
キャッシュフローや現在価値は主観に影響を受けることがあるため、より合理的な計算方法である「モンテカルロDCF法」を用いることがあります。
通常のDCF法とモンテカルロDCF法の違いは、数万回のシミュレーションを作業内容に加えることです。シミュレーションによって出された結果の平均を、会社譲渡の売却価格として算定します。
会社譲渡を成功させる5つのポイント
ここでは、会社譲渡を成功させるためのポイントを5つ紹介します。
- 事前準備をしっかり行う
- 会社の価値を高める
- 会社の経営状態をクリーンにしておく
- 適正価格を見定める
- 会社譲渡の支援機関を利用する
会社譲渡は、社員や会社の今後を左右する大きなターニングポイントです。ポイントを押さえて会社譲渡を進めて、円満な取引にしましょう。
1.事前準備をしっかり行う
会社譲渡を行う際には、入念な事前準備をしましょう。
まずは会社譲渡によって果たしたい目的をはっきりさせてください。目的がはっきりしていないまま進めると、相手に流されて不本意な選択をしてしまう恐れがあります。
また、進める途中で取引を中止することになってしまう事態も起こりえるでしょう。もし中止になった場合、それまでに費やしてきた時間や手数料がすべて無駄になってしまいます。
会社譲渡のタイミングを見計らうことも、大切な事前準備の1つです。タイミングを誤ると、本来の会社の価値よりも安い金額で売却することになる可能性があります。景気や業界の動向、自社の業績などを観察し、自社が正当に評価されるタイミングで会社譲渡に踏み切りましょう。
2.会社の価値を高める
会社譲渡を成功させるためには、会社の価値を高めることが重要です。ユニークな事業を行っていたり、ブランド力が高かったり、ノウハウを備えた従業員が育っていたりすると、評価されやすくなります。
独自性のある強みを持っていれば、会社譲渡の相手が見つかりやすくなるでしょう。また、売却価格も高くなることが期待できます。
3.会社の経営状態をクリーンにしておく
会社譲渡を行うときには、会社に対する信頼性が大切です。会社の経営状態をクリーンにしておくと、会社譲渡が円滑に進みやすくなります。
もしコンプライアンス違反や簿外債務などの問題が交渉の途中で発覚した場合、信頼を失って破談になる恐れがあります。問題点がある場合はできるかぎり早く解決してください。問題点を故意に隠蔽することも避けましょう。
4.適正価格を見定める
満足のいく会社譲渡にするためには、自社を売却した場合の適正価格を知ることが大切です。
適正価格を知ることで、不当に安く買収されることを防げます。自社の状況に応じて適切な算定方法を選び、会社譲渡の売却価格を出しましょう。
5.会社譲渡の支援機関を利用する
会社譲渡を成功させる近道は、会社譲渡の支援機関を利用することです。
会社譲渡を実施するには、専門的な知識・経験が求められます。
また、会社経営と並行しながら会社譲渡の手続きを進めなければならないので、多忙を極めることになります。そのため、会社譲渡に精通した支援機関を利用することがおすすめです。
会社譲渡の支援機関には、M&A仲介会社やマッチングサイト、金融機関などがあります。割ける予算や会社譲渡の内容に合った支援機関を選びましょう。
会社譲渡をサポートしてくれる7つの支援機関
ここでは、会社譲渡をサポートしてくれる支援機関を7つ紹介します。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 商工団体
- 金融機関
- 士業
- FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
- M&Aのマッチングサイト
- M&A仲介会社
それぞれの特色を踏まえて、適切な支援機関を選びましょう。
1.事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業の事業承継をサポートしてくれる、国が設置する支援機関です。第三者への引き継ぎにも対応しています。
事業承継・引継ぎ支援センターを運営するのは独立行政法人中小企業基盤整備機構です。相談窓口は全国各地に設けられています。
在籍している専門家はセンターによって異なるものの、無料で税理士や中小企業診断士といった専門家に相談できる可能性がある点は、特筆すべきポイントだといえるでしょう。
お近くの事業承継・引継ぎ支援センターの所在地については、事業承継・引継ぎ支援センターの公式サイトをご確認ください。
2.商工団体
商工団体とは、中小企業団体や商工会議所、商工会などを指します。地元企業から相手を探したい場合は、商工団体のサポートを受けることもおすすめです。
商工団体は地域とのつながりを大切にしているため、「地元を盛り上げたい」という思いを持って事業に向き合う会社と出会える可能性が高まります。
ただし商工団体は会社譲渡やM&Aを専門としているわけではないため、税務や法律等に関する専門的なアドバイスは受けられない可能性があります。
3.金融機関
金融機関では、会社譲渡をはじめとするM&Aの支援も行っています。金融機関は普段から地元企業と取引をしており、幅広いコネクションを持っています。
会社譲渡の相手に「地域密着型である」という条件を求めるのならば、金融機関の支援を受けることを選択肢に入れましょう。
ただし金融機関の方針や相談する企業側の規模などによっては、十分なサポートを受けられない場合もあります。
4.士業
会社譲渡を支援してくれる士業の種類は、「税理士」「公認会計士」「弁護士」の3つです。
税理士
税理士とは、税務に関して高い専門性を持つ士業です。税理士の独占業務として税務相談・税務代理・税務書類の作成の3つを行うほか、会社譲渡をはじめとするM&Aの支援を行うこともあります。
税理士は、税務や会計の知識を活かして会社譲渡を支援してくれます。税理士がサポートしてくれるサービスは、税務デューデリジェンスや財務デューデリジェンス、会社の価値算定などです。
そのほか、会社譲渡における節税対策も行います。
公認会計士
公認会計士は、会計監査を独占業務として請け負う職業です。会社譲渡においては、会社の価値を評価したり、財務に関するデューデリジェンスに対応したりしています。また、節税対策の相談にも応じています。
複雑な計算が必要な、将来的な利益を加味した企業価値の算出などを行いたい場合にも、公認会計士が力となってくれることでしょう。
弁護士
弁護士とは、法律の専門家です。
会社譲渡における弁護士の仕事は、法務デューデリジェンスや書類作成、リーガルチェックなどです。そのほか、会社譲渡の過程で関係者と対立した際、弁護士が交渉・調整をしてくれます。
会社の譲渡などに関する書類作成の他、従業員との間の雇用契約などについて疑問がある場合にも、弁護士への相談が有効と言えるでしょう。
5.FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とは、資産運用や土地活用、相続問題などについて実践的なアドバイスをする専門家です。会社譲渡をはじめとするM&Aに関する助言業務も行っています。
FAは、基本的に譲渡側の会社か譲受側の会社のどちらかと契約を結んでサポートする「アドバイザリー型」です。契約を結び、契約を結んだ会社の利益が最大化できるように尽力します。
仲介会社ではなくFAを使ったM&Aは、中小企業よりも大企業においてよく採用されています。
6.M&Aのマッチングサイト
M&Aのマッチングサイトを利用すれば、会社譲渡の相手を全国から探せます。マッチングサイトに会員登録しているたくさんの会社の中から、希望条件で絞り込んで相手探しをすることが可能です。
7.M&A仲介会社
M&A仲介会社とは、会社譲渡などのM&Aをトータルにサポートする支援機関です。豊富なノウハウを持ったアドバイザーがM&Aに関する相談から成約まで支援してくれます。
また、M&A仲介会社には各領域の専門家が所属している会社もあり、一貫したサービス提供が可能です。プロセスごとにさまざまな専門家に依頼する必要はありません。
M&A仲介会社の多くが採用している形式は、中立的な立場から支援を行う「仲介型」です。譲渡側の会社と譲受側の会社の両方から話を聞いて調整しながら、会社譲渡を進めます。
M&A支援会社の利用にかかる6つの手数料
M&A仲介会社をはじめとする支援機関を利用する際には手数料がかかります。
主な手数料は以下の6つです。
- 相談料
- 着手金
- 中間金
- デューデリジェンス費用
- リテイナーフィー
- 成功報酬
ただし、すべての手数料を必ず支払うわけではありません。料金設定はそれぞれの支援機関によって異なります。無料に設定している場合もあるので、事前に確認しましょう。
1.相談料
相談料は、会社譲渡の仲介を正式に依頼する前段階の、相談時にかかる手数料です。多くのM&A仲介会社が無料に設定していますが、相談料を有料としている場合もあるので、相談前に確認しましょう。
2.着手金
着手金とは、会社譲渡の仲介を依頼するときに支払う手数料です。着手金は会社譲渡の相手探しや価値算定の費用として使われるため、最終的に会社譲渡が成立しなかった場合も返金されないことがほとんどです。
会社譲渡が不成立になるリスクを考慮すると、着手金不要のM&A仲介会社を探すのがおすすめです。
3.中間金
中間金とは、会社譲渡が成立するまでのプロセスで発生する手数料です。多くの場合、会社譲渡の基本合意をした段階が支払いのタイミングに設定されています。
中間金は基本的に返金されません。基本合意のあとに会社譲渡が白紙にされる可能性もゼロではないので、中間金がかかるかどうかを依頼前にチェックしておきましょう。中間金の目安は成果報酬の1~3割前後とされています。また、成功報酬型の仲介会社であれば、この料金は発生しません。
4.デューデリジェンス費用
デューデリジェンス費用は、譲受側の会社にかかる手数料です。会社譲渡の過程で実施する「デューデリジェンス」にかかる費用を指します。
「デューデリジェンス」とは、買収予定の会社の価値・リスクなどに関する調査を行うことです。財務や法務、税務、人事など、あらゆる観点から相手会社のことを調べます。
必要なデューデリジェンス費用はM&Aの規模や状況によって大きく異なるため、仲介会社に事前に見積もりなどを取ってもらうのが良いでしょう。
5.リテイナーフィー
リテイナーフィーとは、M&A仲介会社と契約することで発生する月額料金です。契約している間、継続して支払い続ける必要があります。
仲介会社がM&Aの相手方を探したり、調査したりしている間に発生する子のリテイナーフィーは、月々100万円を超えることもあれば無料の場合もあるなど、依頼する会社によって大きく異なります。
そのため会社譲渡が短期間で終わる見込みが立っている場合を除き、リテイナーフィーがかからないM&A仲介会社を選ぶことができれば、M&Aに掛かるコストを削減できることでしょう。
6.成功報酬
成功報酬とは、会社譲渡が正式に締結したときに発生する手数料です。会社譲渡が成約しなかった場合は発生しません。
成功報酬は「レーマン方式」という方式で算出されることがほとんどです。レーマン方式では、取引額に応じて手数料率が変動します。
レーマン方式における手数料率は、M&A仲介会社ごとに設定されています。多くのM&A仲介会社で使用されている手数料率は以下のとおりです。
取引額 | 手数料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
たとえば、会社譲渡における取引額が12億円だった場合、成功報酬の計算式は下記のとおりになります。
(5億円×5%)+(5億円×4%)+(2億円×3%)= 5,100万円
取引金額が少額だった場合、各M&A仲介会社が設定する最低報酬金額を支払います。
まとめ
会社譲渡とは、会社が保有する株式の過半数以上(一般には株式のすべて)を売却し、会社の経営権を移転させる行為を指します。株式の譲渡による経営権の移転は、中小企業の事業譲渡によく用いられる一般的な手法です。
後継者の不足や従業員の雇用といった問題を解決するため、会社譲渡を検討する際には「事業承継・引継ぎ支援センター」や商工団体、そしてM&A仲介会社などへ相談を行ってみるのもよいでしょう。
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