TOB(公開買付け)手続きの流れと注意点|TOBの事例も紹介します!

2024年7月23日

TOB(公開買付け)手続きの流れと注意点|TOBの事例も紹介します!

このページのまとめ

  • TOBとはM&Aの際に利用される株式公開買付のこと
  • TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」がある
  • 友好的TOBでも失敗する可能性がある

TOBについて検討している方の中には、手続きの流れや注意点などについて疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、TOBの特徴や手続きの流れ、事例について解説します。TOBを検討している方に役立つ情報をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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TOBとは

TOBとは「Take Over Bid」の略称であり、M&Aの際に使用される「株式公開買付」のことです。TOBでは、買収希望者が対象企業の株主に対して公開買付を行い、株式を取得して企業を買収します。

買収企業は、株主に一定の価格で株式を買い取る提案を行い、株主はそれに応じるかどうかを判断します。一般的に、TOBの目的は対象企業の経営権を獲得することです。

ただし、TOBは株主の利益最大化を目指す場合もありますが、一部の株主や経営陣にとっては望ましくないと考えられることもあります。TOBの結果は、買収企業と対象企業の関係や市場の状況によって異なるケースがあるため、注意が必要です。

TOBの種類

TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類があります。

友好的TOBは、ターゲット企業の経営陣や株主の同意を得て進められる買収のことを指します。買収をする企業とターゲット企業の間で合意を形成し、買収の提案も友好的に進めることが可能です。

友好的TOBについて、経営陣や株主は買収のメリットや条件を検討し、協力的に買収を受け入れるケースが少なくありません。そのため、合意に基づいて円滑に手続きが進行できる傾向があると言えるでしょう。ただし、全ての友好的TOBが成功するわけではありません。

一方の敵対的TOBとは、ターゲット企業の経営陣や株主の同意を得ずに行われる買収のことです。買収をする企業は、市場でターゲット企業の株式を取得し、株主に対して買収の提案を行います。

この場合、ターゲット企業の経営陣は買収に反対し、株主は自身の利益を検討して買収の提案に応じるかどうか決定します。敵対的TOBの場合は争議や法的手続きを引き起こし、株主や経営陣の間で対立が生じることもあるため、注意が必要です。

TOBが必要になる株式取得の条件

金融商品取引法によって定められている、TOBが必要になる株式取得の条件は以下の2点です。

  • 株式取得後の所有割合が5%以上になる場合
  • 株式取得後の所有割合が1/3を超える場合

株式取得後の所有割合が5%を超える場合は、TOBによる買付が必要とされています。上場企業などの大手企業が発行する株式を5%取得することは多額の取引となるため、株式市場が大きく変動する可能性があります。

例えば、時価総額50兆円を超え(2024年7月5日時点)で国内首位となっているトヨタ自動車株式会社の場合、株式を5%保有することで発生する取引額は以下の通りです。

つまり、トヨタ自動車株式会社の株式を5%保有するためには約2兆7,600億円の資金が必要です。このように取引額が莫大になる事態を回避するために、5%ルールが設けられています。

また、株式取得後の所有割合が1/3を超える場合にもTOBによる買付が必要です。会社法第309条に基づき、株主総会の特別議決は2/3の賛成を得ることで可決されるため、株式の所有割合が1/3を超えると否決が可能となります。

5%ルールでは買付の人数が10人以下の場合、条件によってはTOBによる買付が不要となるケースもありますが、1/3ルールにおいてはこのような例外はありません。

参考:e-Gov法令検索「金融商品取引法」「会社法

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TOBの手続きの手順

手続きの手順を把握することで、具体的にTOBを検討する際に迷わずにスムーズな手続きができます。
TOPに応募して、自分の所有する株式を売却したい場合の手順は下記のとおりです。

  1. 証券総合口座を開設する
  2. 対象の株式を振替える
  3. 公開買付応募申込書を提出する
  4. 売却代金を受け取る

期日間際になって手続きをすることがないよう、あらかじめ手続きの流れを確認しておきましょう。

1.証券総合口座を開設する

TOBの手続きを行う際には証券会社の口座が必要なので、まずは証券会社にて証券総合口座を開設しましょう。対象となる株式を預けている証券会社を経由して応募する場合には、新たな口座を開設する必要はありません。しかし、別の証券会社を利用している場合には口座開設が必要です。

証券会社によって証券口座の開設にかかる日数は異なりますが、一般的には3~9営業日程度と言われています。TOB専用の口座を開設しなくても応募できる証券会社もありますが、余裕を持って証券口座を開設してください。

2.対象の株式を振替える

TOB専用の口座を開設したら、次にTOBで売却したい保有株をその口座に振り替えましょう。口座開設と同様に証券会社によって異なりますが、振替をするには相応の日数が必要なため、応募期日間際に依頼をすると間に合わない可能性があります。

証券会社に必要な日数を確認し、期日に余裕を持つことが大切です。

3.公開買付応募申込書を提出する

次に、TOBに応募するための申込書を記入して証券会社に提出しましょう。申込書は応募する証券会社から取り寄せ可能です。場合によっては本人確認書類が必要になるケースもあるため、あらかじめ準備しておいてください。

公開買付応募申込書を提出すると、証券会社から「公開買付申込受付票」を受け取れるので、大切に保管しておきましょう。

4.成立したら売却代金を受け取る

TOBが成立すれば、証券会社から売却代金が支払われます。応募した証券会社から通知書が届き、売却結果を確認することが可能です。

売却代金は応募した際の申込書に記載した方法によって証券会社から支払われます。TOB専用口座を開設した場合には、売却代金を受け取ると口座廃止の手続きが実行される流れです。

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TOB手続きをする前に注意したいこと

TOBの手続きを行う前に注意したいポイントは以下の2点です。

  • 持ち株が多くなる影響を考慮する
  • 友好的なTOBでも失敗する可能性がある

持ち株が多くなる影響を考慮する

TOBの手続きを行う前に注意したい1つ目のポイントは、持ち株が多くなる影響を考慮することです。

株式保有割合が増えることにより、市場の不安定さやリスクに注意を払わなければなりません。また、企業の経営に対する決定権も生まれます。

具体的に、持ち株の保有割合によって得られる決定権は以下の通りです。

持ち株の割合決定権
1/3以上株主総会の特別決議を単独で否決できる
1/2以上株主総会の普通決議を単独で可決できる
取締役の選任と解任、会社の意思決定のほとんどができる
2/3以上株主総会の特別決議を単独で可決できる
自己株式の取得に関する事項や募集株式の募集事項の決定などができる

友好的なTOBでも失敗する可能性がある

TOBの手続きを行う前に注意したい二つ目のポイントは、友好的なTOBでも失敗する可能性があることです。友好的なTOBでも必ずしも成功するわけではなく、失敗のリスクを負う可能性があります。

具体的には、株主の合意獲得ができず、株主の一部がTOBに反対すれば成立しません。TOBが株主の利益や意向に沿わない場合、合意を得ることは難しいでしょう。

また、経済や市場の変動はTOBの結果に影響を与える可能性もあります。金融市場の不安定性や景気後退などの要因により、TOBの条件や実施の意欲が変化する可能性もあるため、注意してください。

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TOBの実施事例

ここでは、日本を代表する企業でのTOBの実施事例を2つご紹介します。

Zホールディングス株式会社

一つ目の事例は、「Zホールディングス株式会社(当時はヤフー)」が「株式会社ZOZO」へのTOBを実施した事例です。Zホールディングス株式会社が株式会社ZOZOへのTOBを実施し、株式会社ZOZOの株式を50.1%取得することになりました。

この取引は約4,000億円の大規模なものとなり、株式会社ZOZOがTOBに賛同していた友好的TOBの事例です。

この友好的TOBにより、ゾゾタウンがPayPayモールに出店するなどの両社のコンテンツを活かしたシナジー(相乗)効果を獲得する結果となりました。
その他、Yahoo!JAPANやソフトバンクのユーザーをゾゾタウンに総客することで、更なるシナジー効果が期待されています。

株式会社コロワイド

2つ目の事例は、外食大手「株式会社コロワイド」が定食チェーンの大戸屋を展開する「株式会社大戸屋ホールディングス」へのTOBを実施した事例です。株式会社コロワイドが株式会社大戸屋ホールディングスへのTOBを実施し、株式会社大戸屋ホールディングスの株式を46.77%保有することになりました。

2020年に開始した敵対的TOBでしたが、2021年時点で株式会社コロワイドが勝利を収める形で終結。経営権を握った株式会社コロワイドは、株式会社大戸屋ホールディングスの取締役の解任やコストの見直しに取り組んでいます。

人件費のコストを削減することで経営難からの脱出を試みましたが、2022年3月期はコロナ禍が長引いたことにより業績未達となりました。コスト削減や効率化が進んで黒字経営を目指しています。

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まとめ

「株式公開買付」を意味するTOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」があり、ルールや手続きの点で注意しなければならないことも少なくありません。友好的TOBでも必ず成功するわけでなく、持ち株が多くなる影響を考慮しなければならないため、それらを理解したうえで実行するのがおすすめです。

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